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  • 特許-挟み式加熱調理器具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】挟み式加熱調理器具
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
A47J37/06 306
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019203848
(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公開番号】P2021074312
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】391047455
【氏名又は名称】株式会社石崎電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石崎 博章
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3168302(JP,U)
【文献】特開平9-252933(JP,A)
【文献】特開2019-150416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理対象物を挟んで加熱する下型と上型を備えた挟み式加熱調理器具において、
前記下型における前記上型との対向面に、調理対象物を加熱する加熱部と、底面積が前記加熱部よりも小さい凹状の水受け部とを、熱伝導可能な一体状に設け
前記下型の周縁側には、前記上型に重なり合うように上方へ突出する環状凸部が設けられ、
前記加熱部と前記水受け部は、前記環状凸部の内側に並設され、仕切壁によって仕切られていることを特徴とする挟み式加熱調理器具。
【請求項2】
前記仕切壁が突出する高さを、前記環状凸部が突出する高さよりも小さくしたことを特徴とする請求項1記載の挟み式加熱調理器具。
【請求項3】
前記加熱部の底面には、調理対象物に接するように突出する突起が設けられ、前記突起は、前記環状凸部及び前記仕切壁よりも低く形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の挟み式加熱調理器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のパンを挟んでホットサンドを生成するホットサンドメーカーとして好適な挟み式加熱調理器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、具材を挟んだ一対の食パンを、対向する凹部を有する金属製の上型と下側の間に挟み込み、これら上型及び下型を電熱線等のヒーターにより加熱し、一対の食パン全体を焼き上げるようにしたホットサンドメーカーがある。
ところで、食パンを加熱調理するオーブントースターには、特許文献2に記載されるもののように、水受皿、水案内路、ボイラ(水蒸気発生器)等を備え、ヒーターによる加熱に加えて、前記ボイラにより発生したスチーム(水蒸気)も加えるようにしたものがある。このようなオーブントースターによれば、しっとりとした独特の食感に、パンを焼き上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3209617号公報
【文献】特開2016-171861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、ホットサンドメーカーについても、ヒーターによる加熱に加えてスチームを加えるような調理が求められる。
しかしながら、ホットサンドメーカーの場合、一対の食パンを比較的厚みの薄い上型と下型の間に挟みこむようにしているため、特許文献2の水受皿、水案内路、ボイラ等をそのまま適用するのは困難であり、工夫を要する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するために、以下の構成を具備するものである。
調理対象物を挟んで加熱する下型と上型を備えた挟み式加熱調理器具において、前記下型における前記上型との対向面に、調理対象物を加熱する加熱部と、底面積が前記加熱部よりも小さい凹状の水受け部とを、熱伝導可能な一体状に設け、前記下型の周縁側には、前記上型に重なり合うように上方へ突出する環状凸部が設けられ、前記加熱部と前記水受け部は、前記環状凸部の内側に並設され、仕切壁によって仕切られていることを特徴とする挟み式加熱調理器具。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、調理対象物を下型と上型の間に挟んでスチームに曝すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る挟み式加熱調理器具の一例を示す斜視図である。
図2】同挟み式加熱調理器具の下型の一例を示す平面図である。
図3図2における(III)-(III)線に沿う断面図である。
図4】上型と下型を重ね合わせた状態を示す要部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、調理対象物を挟んで加熱する下型と上型を備えた挟み式加熱調理器具において、前記下型における前記上型との対向面に、調理対象物を加熱する加熱部と、底面積が前記加熱部よりも小さい凹状の水受け部とを、熱伝導可能な一体状に設けた(図1図4参照)。
【0009】
第2の特徴として、前記下型の周縁側には、前記上型に重なり合うように上方へ突出する環状凸部が設けられ、前記加熱部と前記水受け部は、前記環状凸部の内側に並設され、仕切壁によって仕切られている(図4参照)。
【0010】
第3の特徴は、前記仕切壁が突出する高さを、前記環状凸部が突出する高さよりも小さくした(図3及び図4参照)。
【0011】
第4の特徴として、前記加熱部の底面には、調理対象物に接するように突出する突起が設けられ、前記突起は、前記環状凸部及び前記仕切壁よりも低く形成されている(図3及び図4参照)。
【0012】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
挟み式加熱調理器具Aは、調理対象物を挟んで加熱する下型10及び上型20と、これら下型10と上型20の各々に対し裏面側に配設されたヒーター30(図2参照)と、下型10及びヒーター30を外側から覆う下カバー40と、上型20及びヒーター30を外側から覆う上カバー50と、図示しない制御回路とを具備している。
【0013】
下型10は、図示例によれば平面視長方形状に形成され、上型20との対向面に、調理対象物Xを加熱する加熱部11と、底面積が加熱部11よりも小さい凹状の水受け部12とを、熱伝導可能な一体状に有する。
この下型10は、銅やアルミニウム、鉄、ステンレス等、比較的熱伝導率の高い金属材料、又はセラミック等の耐熱性硬質材料から形成され、必要に応じてその表面側にフッ素樹脂コーティング等の耐熱性のコーティングが施される。
【0014】
下型10の周縁側には、上型20に重なり合うように上方へ突出する環状凸部13が設けられ、加熱部11と水受け部12は、環状凸部13の内側に並設され、共通の仕切壁14によって仕切られている。
【0015】
環状凸部13は、下型10の表面の周縁に、全周にわたり連続して設けられる。この下型10における環状凸部13の突端部は、下型10と上型20が閉じた際に(図4参照)、上型20の環状凸部23に対し、全周にわたって接する。
【0016】
環状凸部23の内側には、環状凸部23の突端よりも下方側に、環状平坦面部15が設けられる。この環状平坦面部15は、所定幅の平坦面状に形成され、環状凸部13の内側に沿うようにして、下型10の全周にわたって連続している。
【0017】
加熱部11と水受け部12は、環状凸部13及び環状平坦面部15の内側に並設され、共通の仕切壁14によって仕切られている。
詳細に説明すれば、環状平坦面部15の内側は、底面16を有する凹状に形成され、この凹状の部分の部分が仕切壁14によって、加熱部11と水受け部12に仕切られている。
【0018】
図示例によれば、底面16は平面視略長方形状に形成され、この底面16の四角側部分のうち、対角線上の一方の角側と他方の角側に、それぞれ、仕切壁14が設けられる。
各仕切壁14の平面方向の一端側と他端側は、環状平坦面部15を構成する一辺側部分と他辺側部分に対し、それぞれ接続される。仕切壁14の上端部は、環状平坦面部15と面一である。
【0019】
各仕切壁14が底面16から突出する高さh2は、環状凸部13が同底面16から突出する高さh1よりも小さく設定されている(図4参照)。
このため、下型10と上型20が閉じた状態で、仕切壁14の上側には、スチームを平面方向へ通過させるスペースが確保される。
【0020】
加熱部11は、環状平坦面部15及び二つの仕切壁14の内側に位置する。この加熱部11の底面16は、図3及び図4に示すように、水受け部12の底面16と同じ深さである。
【0021】
加熱部11の底面16には、調理対象物Xの表面に接するように突出する突起17が設けられる。この突起17は、環状凸部13及び仕切壁14よりも低く形成されている。
突起17は、下型10の長辺に対し傾斜する直線状に延設され、一定の間隔を置いて複数平行に設けられる。これら複数の突起17は、略同一の高さである。
これら複数の突起17は、調理時に調理対象物Xの表面に圧接されて、調理対象物Xの表面に、焼き模様を形成する。
【0022】
調理対象物Xは、矩形状に裁断された二枚の食パンの間に具材を挟み込んだものである。特に図示例の食パンは、イギリスパンを裁断した長方形状のパンを想定している。
【0023】
また、上型20は、下型10と共通の部品を上下逆に用いたものであり、下型10と同構成の加熱部21、水受け部22、環状凸部23、仕切壁24、環状平坦面部25、底面26、突起27等を有する。
下型10と上型20は、その一辺側に設けられた軸部18(具体例としてはヒンジ)により、回動可能に接続される。
なお、この上型20は、下型10の環状凸部13に重なるようにすればよく、他例としては、水受け部22を省いた態様等、図示例以外の形状とすることも可能である。
【0024】
ヒーター30は、通電されると発熱する周知の電気ヒーターであり、例えば、ニッケルクロム線や鉄クロム線等の電熱線を用いて構成される。
このヒーター30は、下型10と上型20の各々に対し、その裏面に接するようにして設けられ、図示しない制御回路を介して供給される商用電源によって発熱する。これらヒーター30及び制御回路等は、後述する下カバー40及び上カバー50によって覆われている。
【0025】
下カバー40と上カバー50は、それぞれ、下型10と上型20の裏面側を覆う矩形状に形成される。これら下カバー40と上カバー50には、貫通孔状の手持ち部42,52が設けられる。
【0026】
次に上記構成の挟み式加熱調理器具Aについて、その使用方法や、特徴的な作用効果等を詳細に説明する。
先ず、図1に示すように、下型10と上型20の間を開放した状態で、二つの水受け部12,12に、適量の水が注がれる。そして、加熱部11上には、調理対象物Xが載置される。
【0027】
次に、下型10と上型20を閉じるように回動して、下型10に対し上型20が重ね合わせられる。この重ね合わせ状態では、下型10の環状凸部13に対し、上型20の環状凸部23が環状に重なり合う。
【0028】
次に、図示しないスイッチの操作により、ヒーター30に電気を通電し、下型10及び上型20を加熱する。
ヒーター30の温度や通電時間は、図示しない制御回路によって適宜に制御される。
【0029】
下型10が沸騰温度まで加熱されると、各水受け部12内の水が沸騰して、スチームが発生する。このスチームは、下型10の仕切壁14上側の隙間を通って加熱部11,12間へ入り込み、隣接する突起17,17(及び27,27)の間等を通って両加熱部11,21間の略全面に行き渡る。そして、このスチームは、調理対象物Xに適度な湿り気を与える。
また、下型10と上型20の突起17,27は、調理対象物Xの表面と裏面に圧接されて、これら表裏面に多数の直線状の焼き跡を付ける。
【0030】
よって、上記構成の挟み式加熱調理器具Aによれば、加熱中に調理対象物Xをスチームに曝すことができ、ひいては、調理対象物Xを、表面がカリっとし、中身がしっとりとした食感に焼き上げることができる。また、調理後の調理対象物Xは、その表面に多数の焼き跡が形成されるので、見た目にも好ましい。
【0031】
なお、上記構成によれば、好ましい一例として、水受け部12を下型10の対角線上に二つ配設したが、この水受け部12は、調理対象物Xに直接干渉しないように配設すればよい。他例としては、水受け部12を四つの角部にそれぞれ設けた態様や、水受け部12を角部と角部の間に設けた態様、水受け部12を下型10の辺部分に沿って長尺状に設けた態様等とすることも可能である。
【0032】
また、上記構成によれば、好ましい一例として、下型10及び上型20を電気式のヒーター30によって加熱するようにしたが、他例としては、下型10と上型20が、別体のガスコンロによって直接加熱される態様とすることも可能である。
【0033】
また、上記構成によれば、好ましい一例として、加熱部11と水受け部12を一体の部材である下型10上に形成したが、他例としては、加熱部11と水受け部12の間の熱の伝達を良好にすれば、これら加熱部11と水受け部12を別体の部材から構成することも可能である。
【0034】
また、上記構成によれば、好ましい一例として、下型10と上型20を共通部品とし、下型10と上型20の両方向に突起17,27及び水受け部12,22を設けたが、他例としては、下型10のみに突起17及び水受け部12等を設け、上型を平坦状に形成した態様等、下型10のみに加熱部及び水受け部を有する態様とすることも可能である。
【0035】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0036】
10:下型
11:加熱部
12:水受け部
13:環状凸部
14:仕切壁
17:突起
20:上型
21:加熱部
23:環状凸部
27:突起
30:ヒーター
40:下カバー
50:上カバー
A:挟み式加熱調理器具
X:調理対象物
図1
図2
図3
図4