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特許7367973低温プラズマ肌再生のための装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】低温プラズマ肌再生のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/08 20060101AFI20231017BHJP
   A61N 1/44 20060101ALI20231017BHJP
   H05H 1/26 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
A61B18/08
A61N1/44
H05H1/26
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019540536
(86)(22)【出願日】2018-01-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 US2018015418
(87)【国際公開番号】W WO2018140708
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】62/451,337
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519175592
【氏名又は名称】アピックス メディカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】メーガン ダブリュ. メッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ショーン ディー. ローマン
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー エー. コネスキー
(72)【発明者】
【氏名】クラース フレドリック ヨンソン
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】井上 哲男
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106310524(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0029499(US,A1)
【文献】国際公開第2016/114504(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/00
A61N 1/44
H05H 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と底面とを含み、さらに前記上面から前記底面まで延びて貫通して配置された複数の開口を含み、非導電性物質で形成され、前記底面が、治療されるべき患者の皮膚の領域に当てられるように構成されたマスクと、
前記上面から所定距離離れたところから低温プラズマ・ビームを前記マスクの前記上面に印加するように構成された低温プラズマ・アプリケータであって、前記低温プラズマ・ビームが、前記複数の開口によって露出された皮膚の前記領域の部分に接触するとともに前記マスクにおいて前記複数の開口の無い部分によって逸らされて、前記複数の開口によって露出された皮膚の前記領域の部分が前記低温プラズマ・ビームの影響を受けるとともに前記複数の開口の無い部分の下の皮膚の領域が治療されないようにする前記低温プラズマ・アプリケータと、
を備え、
前記マスクは、周囲の温度よりも低い温度を所定期間保持する物質で形成されている、
分画された肌再生のためのシステム。
【請求項2】
前記マスクの前記底面は、前記マスクが前記患者の前記皮膚に粘着することが可能となるように構成された粘着性の裏張りを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記マスクは、前記患者の前記皮膚の起伏に順応するように柔軟に構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記マスクは、所定の厚さと、前記複数の開口のそれぞれの間の所定の間隔と、所定の直径をそれぞれ有する前記複数の開口と、を有し、前記所定のマスク厚さ、開口間隔及び開口直径は、前記マスクの前記上面に印加されるべき前記低温プラズマ・ビームの直径に基づいて選択される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記物質は、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム及び/又はビニル被覆シリカゲルのうちの少なくとも1つである、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
治療中に皮膚の前記領域の表皮の組織を所定の温度より低い状態で保つために、治療されるべき皮膚の前記領域に前記マスクを当てる前に、前記マスクの前記温度は、下げられている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
上面と底面とを含み、さらに前記上面から前記底面まで延びて貫通して配置された複数の開口を含み、非導電性物質で形成され、前記底面が、治療されるべき患者の皮膚の領域に当てられるように構成されたマスクと、
前記上面から所定距離離れたところから低温プラズマ・ビームを前記マスクの前記上面に印加するように構成された低温プラズマ・アプリケータであって、前記低温プラズマ・ビームが、前記複数の開口によって露出された皮膚の前記領域の部分に接触するとともに前記マスクにおいて前記複数の開口の無い部分によって逸らされて、前記複数の開口によって露出された皮膚の前記領域の部分が前記低温プラズマ・ビームの影響を受けるとともに前記複数の開口の無い部分の下の皮膚の領域が治療されないようにする前記低温プラズマ・アプリケータと、
を備え、
前記マスクは、第1の層と第2の層とを含み、前記第1の層は、絶縁性の物質で形成され、前記第2の層は、周囲の温度よりも低い温度を所定期間保持する物質で形成され、治療されるべき皮膚の前記領域に接触する、
分画された肌再生のためのシステム。
【請求項8】
前記マスクは、フェイス・マスク、スリーブ、グローブ及び/又はブーツのうちの少なくとも1つとして構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
上面と底面とを含み、さらに前記上面から前記底面まで延びて貫通して配置された複数の開口を含み、非導電性物質で形成され、前記底面が、治療されるべき患者の皮膚の領域に当てられるように構成されたマスクと、
前記上面から所定距離離れたところから低温プラズマ・ビームを前記マスクの前記上面に印加するように構成された低温プラズマ・アプリケータであって、前記低温プラズマ・ビームが、前記複数の開口によって露出された皮膚の前記領域の部分に接触するとともに前記マスクにおいて前記複数の開口の無い部分によって逸らされて、前記複数の開口によって露出された皮膚の前記領域の部分が前記低温プラズマ・ビームの影響を受けるとともに前記複数の開口の無い部分の下の皮膚の領域が治療されないようにする前記低温プラズマ・アプリケータと、
を備え、
第1の部分と第2の部分とに印加される単位領域あたりのプラズマの量を調整するために、前記マスクの第1の部分に渡って配置される前記開口は、前記マスクの第2の部分に渡って配置される開口の間隔よりも狭い間隔で配置される、
分画された肌再生のためのシステム。
【請求項10】
上面と底面とを含み、さらに前記上面から前記底面まで延びて貫通して配置された複数の開口を含み、非導電性物質で形成され、前記底面が、治療されるべき患者の皮膚の領域に当てられるように構成されたマスクと、
前記上面から所定距離離れたところから低温プラズマ・ビームを前記マスクの前記上面に印加するように構成された低温プラズマ・アプリケータであって、前記低温プラズマ・ビームが、前記複数の開口によって露出された皮膚の前記領域の部分に接触するとともに前記マスクにおいて前記複数の開口の無い部分によって逸らされて、前記複数の開口によって露出された皮膚の前記領域の部分が前記低温プラズマ・ビームの影響を受けるとともに前記複数の開口の無い部分の下の皮膚の領域が治療されないようにする前記低温プラズマ・アプリケータと、
を備え、
第1の部分と第2の部分とに印加される単位領域あたりのプラズマの量を調整するために、前記マスクの第1の部分に渡って配置されるそれぞれの開口の直径は、前記マスクの第2の部分に渡って配置されるそれぞれの開口の直径よりも小さい、
分画された肌再生のためのシステム。
【請求項11】
前記マスクは、前記低温プラズマ・ビームが前記マスクの前記上面上に複数回印加されることができるように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
マスクは、治療されるべき皮膚の前記領域の上で保持されるように構成された手持ちカード型のマスクである、
請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記手持ちカード型のマスクは、ハンドル部と少なくとも第2の部分とを含み、前記ハンドル部は、使用者によって把持されるように構成され、前記第2の部分は、前記患者の少なくとも1つの身体構造の周辺の前記皮膚の治療を容易にするように形成され、前記複数の開口は、前記第2の部分を貫通して配置される、
請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第2の部分は、前記患者の鼻及び目のうちの少なくとも1つの周辺の前記皮膚の治療を容易にするように形成される、
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記手持ちカード型のマスクは、前記患者の少なくとも1つの第2の身体構造の周辺の前記皮膚の治療を容易にするように形成された第3の部分をさらに含む、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記マスクの前記複数の開口と治療されるべき皮膚の前記領域を貫通して配置された第2の複数の開口との位置が合うように、前記マスクの前記複数の開口と治療されるべき皮膚の前記第2の複数の開口とを形成する際にマイクロニードル装置が用いられる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記マスクは、治療されるべき皮膚の前記領域に塗布される流体から構成され、前記流体は、塗布された後治療されるべき皮膚の前記領域上で固まってマスクを形成するように構成される、
請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記マスクは、複数の細長い片として構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
分画された肌再生のためのマスクであって、
上面から底面に延びて貫通して配置された複数の開口を含む前記上面及び底面を備え、前記マスクは非導電性物質で形成され、前記底面は、治療されるべき患者の皮膚の領域に当てられるように構成され、前記上面から所定距離離れたところから低温プラズマ・ビームが前記マスクの前記上面に印加されると、前記低温プラズマ・ビームが、前記複数の開口によって露出された皮膚の前記領域の部分に接触するとともに前記マスクにおいて前記複数の開口の無い部分によって逸らされて、前記複数の開口によって露出された皮膚の前記領域の部分が前記低温プラズマ・ビームの影響を受けるとともに前記複数の開口の無い部分の下の皮膚の領域が治療されないようにし
前記マスクは、第1の層と第2の層とを含み、前記第1の層は、絶縁性の物質で形成され、前記第2の層は、周囲の温度よりも低い温度を所定期間保持する物質で形成され、治療されるべき皮膚の前記領域に接触する、
分画された肌再生のためのマスク。
【請求項20】
前記マスクの前記底面は、前記マスクが前記患者の前記皮膚に粘着することが可能となるように構成された粘着性の裏張りを含む、
請求項19に記載のマスク。
【請求項21】
前記マスクは、前記患者の前記皮膚の起伏に順応するように柔軟であるように構成されている、
請求項19に記載のマスク。
【請求項22】
前記マスクは前記上面と前記底面との間に所定の厚みを有し、前記複数の開口のそれぞれが所定の間隔をおいており、前記複数の開口のそれぞれが所定の直径を有し、前記マスクの前記所定の厚み、開口の間隔及び開口の直径は前記マスクの前記上面に印加される前記低温プラズマ・ビームの直径に基づいて選択される、
請求項19に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる「低温プラズマ肌再生のための装置及び方法」という名称の2017年1月27日に出願された米国仮特許出願第62/451,337号に基づく優先権を主張する。
【0002】
分野
【0003】
本発明は、電気手術並びに電気手術システム及び電気手術装置、特に、低温プラズマ肌再生のための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
関連する技術の説明
【0005】
肌再生は、皺、日焼けによる損傷、加齢によるシミ、にきび跡を含む傷跡、妊娠線、光線性角化症、及び、毛細血管拡張症(例えば、くも状静脈)を取り去るために患者の皮膚にエネルギーを適用することを利用する過程である。肌再生は、概して、剥離性肌再生と非剥離性肌再生とに分類されることができる。より大きな深度で皮膚に影響を与える剥離性肌再生は、回復期間が長くなるが、長期に持続する効果を有する。非剥離性肌再生は、多少より表面的であり、より短期の回復期間を有するが、定期的な再治療を必要とする場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
肌再生は、皮膚問題を治療しようとする患者にとって人気のある選択肢となってきた。しかしながら、現在の技術を使用すると、患者は、長期の回復時間、及び/又は、肌再生治療の受容に際して一貫性のない結果への忍耐が必要となる場合がある。したがって、回復時間を短縮しより一貫性のある結果を提供する肌再生技術についての需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、低温プラズマ肌再生のためのシステム、装置及び方法に関する。本開示の一態様において、分画された肌再生において使用されるためのマスクが提供される。前記マスクは、前記マスクの表面に分散された複数の開口を含む。前記マスクは、粘着性の表面を含む柔軟性の物質で形成されてもよく、その結果、固定されながら患者の皮膚の起伏のある表面に適用されることができる。前記物質は、低温プラズマ・ビームの影響に対して耐性を有している。このようにして、低温プラズマ・ビーム・アプリケータは、前記マスクの表面上に低温プラズマ・ビームを走査するために使用されてもよく、その結果、患者の皮膚のうち前記マスクの前記開口によって露出された部分のみが、前記低温プラズマ・ビームによって治療される。
【0008】
本開示の他の態様において、分画された肌再生のための方法は、非導電性物質で形成される肌再生のためのマスクを準備する工程と、表面と前記表面を貫通して配置された複数の開口とを含む前記マスクを、治療されるべき患者の皮膚の領域に当てる工程と、複数の開口によって露出された皮膚の領域の部分に低温プラズマ・ビームが接触するように前記マスクの前記表面に低温プラズマ・ビームを印加する工程と、を含む。
【0009】
本開示の他の態様において、分画された肌再生のためのシステムは、非導電性物質で形成され治療されるべき患者の皮膚の領域に当てられるように構成されたマスクであって表面を貫通して配置された複数の開口を含むマスクと、前記複数の開口によって露出された皮膚の領域の部分に接触する低温プラズマ・ビームを前記マスクの前記表面に印加するように構成された低温プラズマ・アプリケータと、を含む。
【0010】
本開示の他の態様において、分画された肌再生のためのマスクが提供される。マスクは、貫通して配置された複数の開口を含む表面を含み、非導電性物質で形成され、治療されるべき患者の皮膚の領域に適用されるように構成される。その結果、低温プラズマ・ビームが前記マスクの前記表面に印加されると、前記低温プラズマ・ビームは、前記複数の開口によって露出された皮膚の領域の部分に接触する。
【0011】
本開示の上記態様及び他の態様、特徴並びに利点は、添付の図面と併せて解釈されるとき、以下の詳細な説明に照らしてより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、本開示によるプラズマの連続的なビームを使用して組織の領域を治療する低温プラズマ・アプリケータの図である。
【0013】
図1B図1Bは、本開示によるプラズマの断続的なビームを使用して組織の領域を治療する低温プラズマ・アプリケータの図である。
【0014】
図2A図2Aは、本開示による分画された肌再生に使用されるためのマスクの上面図である。
【0015】
図2B図2Bは、本開示による図2Aのマスクの側面図である。
【0016】
図2C図2Cは、本開示による複数の層を含むマスクの断面図である。
【0017】
図2D図2Dは、本開示による患者の顔に適用されるように構成されたマスクの上面図である。
【0018】
図2E図2Eは、本開示によるスリーブとして構成されたマスクを示す。
【0019】
図2F図2Fは、本開示によるグローブとして構成されたマスクを示す。
【0020】
図2G図2Gは、本開示によるブーツとして構成されたマスクを示す。
【0021】
図3図3は、本開示によるマスクを使用して患者に低温プラズマ肌再生を行うための方法のフローチャートである。
【0022】
図4A図4Aは、本開示による第1及び第2の手持ちカード型のマスクを示す。
【0023】
図4B図4Bは、本開示による他の手持ちカード型のマスクを示す。
【0024】
図5A図5Aは、本開示によるマイクロニードル装置を示す。
【0025】
図5B図5Bは、本開示による開口を有しないマスクを示す。
【0026】
図5C図5Cは、本開示による図5Bのマスク及び患者の組織上に適用される図5Aのマイクロニードル装置の断面図である。
【0027】
図5D図5Dは、本開示による図5Aのマイクロニードル装置が図5Bのマスク上に適用された後の図5Bのマスク及び患者の組織の断面図である。
【0028】
図6A図6Aは、本開示による患者の組織上でマスクとして凝固する流体を示す。
【0029】
図6B図6Bは、マイクロニードル装置が凝固したマスク上に適用された後の患者の組織上のマスクとして凝固したものを示す。
【0030】
図7図7は、本開示の実施の形態による典型的な単極電気手術システムの図である。
【0031】
図面は本開示の概念を説明するためのものであり、必ずしも本開示を説明するための唯一の可能な構成ではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について説明する。以下の説明では、不必要な詳細で本開示を不明瞭にすることを避けるために、よく知られている機能または構成については、詳細に説明しない。図面および以下の説明において、「基端」という用語は、伝統的なように、使用者により近い装置、例えば器具、装置、アプリケータ、ハンドピース、鉗子などの端部を表すものとする。一方、「末端」という用語は使用者から遠い方の端部を表すものとする。本明細書では、「結合された」という句は、直接的に又は1つもしくは複数の中間構成要素を介して間接的に接続されたことを意味すると定義される。そのような中間構成要素は、ハードウェアベースの構成要素とソフトウェアベースの構成要素の両方を含み得る。
【0033】
本開示は、肌再生のための装置及び方法に関する。本開示の一実施形態では、分画された肌再生において使用されるためのマスクが提供される。前記マスクは、前記マスクの表面に分散された複数の開口を含む。前記マスクは、粘着性の表面を含む柔軟性の物質で形成されてもよく、その結果、固定されながら患者の皮膚の起伏のある表面に適用されることができる。一実施形態において、前記物質は、低温プラズマ・ビームの影響に対して耐性を有している。このようにして、低温プラズマ・ビーム・アプリケータは、前記マスクの表面上に低温プラズマ・ビームを走査するために使用されてもよく、その結果、前記マスクの前記開口によって露出された患者の皮膚の前記部分のみが、前記低温プラズマ・ビームによって治療される。
【0034】
分画された肌再生は、剥離性肌再生と非剥離性肌再生とのハイブリッドとして考えられることができる。分画された肌再生は、間に治療されていない皮膚の領域を有する剥離性肌再生治療の小さな局所的領域を利用する。この組み合わせは、剥離性肌再生に類似の全体的な効果を提供するが、非常に短期の回復時間と同等の耐久性とを有する。
【0035】
例えば、レーザを使用して剥離性肌再生を行う場合において、前記表面層の剥離を引き起こすのに十分なエネルギー密度が前記皮膚に適用される。レーザ分画肌再生において、前記レーザは、連続的に剥離する手法と同等のエネルギー密度で前記皮膚の小さな領域の配列に当てられる。前記レーザ・ビームは、比較的小さなスポット・サイズに集束され、オンおよびオフに変調されながら迅速に再位置決めされることができ、治療される領域の前記配列パターンを生成する。前記レーザ・ビームは、変調されながら、ラスター・パターン、ランダムな「フライング・スポット」手法、又は、所与の領域を治療するための他の走査パターンで走査することができる。それから、レーザ・アプリケータは、新しい領域に移動され、この過程が、繰り返される。照射された光学的ガイド投影が、前記レーザ走査機と共同で使用されて、治療された領域と治療されていない領域とを位置合わせしてもよい。
【0036】
本開示の一実施形態において、低温プラズマ・アプリケータが、肌再生のために使用され得る。前記低温プラズマ・アプリケータは、剥離性、非剥離性及び/又は分画された肌再生処置のために使用されることができる。
【0037】
低温プラズマ・アプリケータは、大きく、局所的放出または非付着放出タイプと、直接的放出または付着放出タイプとに分類されることができる。前記局所的または非付着放出低温プラズマ・アプリケータにおいて、前記プラズマ放出は、前記アプリケータに限定され、前記アプリケータ出口ノズルで接地リングまたは同様の構造を使用することができる。前記低温プラズマ・ビームは、主に、アフターグロー・プラズマ効果、加熱されたキャリア・ガス、及び、前記プラズマ・ビームと前記周囲の空気との相互作用によって生成された長寿命ラジカル種、からなる。低温プラズマにおける「低温」という用語は、前記キャリア・ガスのイオン化の程度を指し、前記キャリア・ガスの全体の温度は、摂氏100度を超えてもよいということは、留意されるべきである。熱的なプラズマとは対照的に、低温プラズマの生成の間、前記キャリア・ガスの原子のごく一部だけがイオン化される。キャリア・ガスの例には、典型的な適用温度では依然として化学的に不活性であるヘリウムもしくはアルゴンなどの不活性ガス又は窒素が含まれる。
【0038】
直接的又は付着放出低温プラズマ・アプリケータにおいて、前記アプリケータから前記ターゲット表面例えば患者の皮膚までの連続的な放出経路が存在する。必然的に適度に導電性でなければならない前記ターゲット表面は、前記局所的放出アプリケータのノズル・リング電極と同等の第2の電極として作用する。前記直接的放出低温プラズマ・アプリケータは、加熱されたキャリア・ガスと、前記ターゲット表面との前記プラズマ・ビームの直接的(付着)接触放電と、を介して、前記ターゲット表面にエネルギーを置く。長寿命および短寿命の両方のラジカル種が、前記適用表面に存在する。
【0039】
特に前記直接的放出タイプの低温プラズマ・アプリケータは、前記プラズマ・ビームを空間的にも時間的にも変調すること、又は、マスクを使用することのいずれか一方によって分画効果を生み出すことができる。図1Aを参照して、低温プラズマ・アプリケータ102は、空間的な変調を使用して本開示による分画効果を生み出すことが示されている。図1Aに見られるように、低温プラズマ・アプリケータ102は、プラズマ・ビーム104を生成する。前記プラズマ・ビーム104は、患者の前記皮膚又は組織105の治療される領域106に印加され(例えば左右方向に)領域106を走査される。図1Aの実施の形態において、前記ビーム104は、所定のレベルで前記プラズマ・ビーム104の出力を維持しながら連続的に印加される。前記連続的なビームの印加(すなわち一定の出力)は、図1Aのグラフで示されている。図1Bを参照すると、低温プラズマ・アプリケータ102は、本開示による分画効果を生み出すために時間的な変調を使用することが示されている。本実施の形態において、図1Bに示されるように、前記プラズマ・ビーム104の出力は、グラフ110で示されるように、周期的に変調又はパルス化される。前記ビーム104がパルス化されるとき、一連の治療される領域106が、前記患者の前記皮膚又は組織105上に生成され、治療されない領域108が点在する。変調された又はパルス化されたプラズマ・ビームを生成することができるプラズマ・ジェネレータ又はプラズマ・アプリケータの例は、所有されている米国特許第9,649,143号に記載されており、その内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0040】
図1A及び図1Bに示されるようにプラズマ・ビーム104の空間的及び時間的な変調が肌再生の処置で使用されることができるが、これらの技術にはいくつかの不利益な点が存在する。例えば、前記アプリケータ102の走査速度の不注意による変動は、治療される領域および治療されない領域の位置および長さに同様の変動を生じさせるであろう。隣接する走査線の前記治療される領域と治療されない領域とが最適に配置されるように後続の走査線を位置合わせすることについても潜在的な困難性が存在する。
【0041】
低温プラズマ分画を達成するための代替的な手法は、分画マスクを使用することである。図2A及び図2Bを参照すると、本開示による分画マスク202の平面図が図2Aに示さており、側面断面図が図2Bに示されている。以下に説明されるように、前記分画マスク202は、患者の前記皮膚上で分画された肌再生を行うために低温プラズマ・アプリケータ、例えばアプリケータ102とともに使用されるように構成されている。
【0042】
図2A及び図2Bに見られるように、マスク202は、上面203と底面205とを含む。マスク202は、柔軟であるように構成され、その結果、マスク202は、治療されるべき前記皮膚表面に適合する。さらに、底面205は、粘着性の裏張りを含むことができる。このようにして、底面205は、所望の皮膚表面に適用されることができ、その結果、マスク202は、前記皮膚表面における任意の曲線に適合し、前記粘着性の裏張りによって適切な所に保持されることができる。その上、マスク202は、上面203から底面205まで延びる複数の開口204を含む。それぞれの開口204は、所定のマスク開口又は穴の直径206と隣接する開口204からの所定のマスク開口穴間隔210とを有する。さらに、マスク202は、所定の厚さ208を有する。
【0043】
マスク202は、低温プラズマ・ビーム104に耐性を有し、前記ビーム電圧が開口204の間の領域において電気的破壊を起こさないように十分な絶縁耐力を有する非導電性物質で構成されてもよい。一般的に、限定はされないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、PVC、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのような医療応用で使用される典型的なプラスチックのなどの任意の可塑性物質を使用することができる。このようにして、ビーム104がアプリケータ102によってマスク202上に印加されると、ビーム104は、開口204を通過してのみ前記患者の前記皮膚に到達することが許容される。
【0044】
開口204の直径206及び間隔210並びにマスク厚さ208が、所与の低温プラズマ出力設定、キャリア・ガス流量及びアプリケータ走査速度について所望の効果を達成するために最適化されてもよいことが、理解されるべきである。いくつかの実施の形態において、開口204の直径206及び間隔210並びにマスク厚さ208は、マスク202に印加されるプラズマ・ビーム104のビーム直径に基づいて選択される。
【0045】
例えば、一実施形態において、肌再生処置について、開口直径206は、前記出力設定に応じて1~2mmの間であるビーム104のビーム直径以上である。開口204の間の間隔210は、一般的には、少なくとも1ビーム直径である。マスク厚さ208は、前記開口壁からの冷却ガス・フローのシャドウイング効果によって制限される。プラズマ・ビーム104自体は、イオン化されていない冷却ガス・フローのシースによって囲まれたプラズマ放電の内部コアからなる。マスク202が厚すぎる場合には、マスク202の開口壁との相互作用によって、イオン化されていないビーム・シース・ガス・フローの関連する冷却効果は減少する。このことは、この領域において過度の加熱につながり、前記壁の近傍で望ましくない組織効果を生み出す可能性がある。このことを防ぐために、一実施形態において、マスク厚さ208は、少なくともビーム直径の2分の1であり、好ましくはビーム直径の10分の1である。マスク厚さ208の下限値は、機械的強度及びプラズマ・ビーム104の影響に耐える能力などのマスク物質の考慮事項によって決定される。開口直径206及び間隔210の上限値は、回復時間の向上と所望の生理学的効果の達成とのトレードオフによって大きく決められる。実際的な考慮事項として、開口204がビーム直径の10倍より実質的に大きい場合に、局所組織効果は、マスクが使用されなかった場合と同じである。同様に、開口204間の間隔210がビーム直径の10倍より実質的に大きい場合に、全体的な生理学的効果が減少し、所望の表面再形成結果を達成することができないかもしれない。
【0046】
加えて、治療されるべき領域ごとに変化する皮膚の厚さに関連する異なる考慮事項がある。皮膚の厚さの違いは、上記の治療された組織対治療されていない組織を最適化することにおける違いに帰結する。
【0047】
実際には、マスク202の底面205は、皮膚の治療されるべき領域に適用され、低温プラズマ・アプリケータ102は、マスク202の上面203に渡って走査される。低温プラズマ・ビーム104は、アプリケータ102が所与の開口204上を通過するとき当該開口204に入り込み、ビーム104は、この位置で皮膚に接触する。マスク202の残りの部分(例えば、開口204を含まない部分)は、低温プラズマ・ビーム104を逸らし、開口204の間に治療されていない領域を生み出す。その後マスク202が取り去られると、低温プラズマによる分画された肌再生、すなわち、周辺及び間に治療されていない皮膚の領域を有し前記低温プラズマ・ビームによって影響を受けた小さな局所的領域は、姿を現す。このようにして、治療は、下にある組織によってだけでなく、より短い回復時間に繋がる周辺の治療されていない領域によっても補助されて、影響された局所的領域に行われることができる。
【0048】
選択される物質に応じて、マスク202は、当該マスク202の完全な状態に影響を与えることなく所望の効果を得るのに必要な回数走査されるように構成されることができることは、理解されたい。マスク202上で低温プラズマ・ビーム104を走査する速度は、制御されない。このことは、前記マスクの利点の1つである(すなわち、走査を制御することは、それほど重要ではない)。前記皮膚は、開口204を通じてのみ治療され、操作者の手に頼らない。このようにして、マスク202は、より大きな安全率を提供する。
【0049】
一実施形態において、マスク202は、患者の皮膚の1つ以上の領域に適用されるように任意の所望の形状(例えば、長方形、円形等)の複数の細長い片として構成されることができる。
【0050】
マスク202は、患者の任意の皮膚表面に使用されるように構成されることができることは、理解されたい。例えば、マスクの長さ207及び幅209は、皮膚のより大きな又はより小さな表面領域を収容するように選択されることができる。
【0051】
他の実施形態において、マスク202は、低温(すなわち、周囲の温度又は周囲環境の温度よりも低い温度)を長時間保持する物質、例えば、それに限定されないが、スポーツ傷害の治療のためのゲル・パックに使用されるものなどのヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム又はビニル被覆シリカゲル等で形成されている。マスク202は、患者の組織に適用される前にマスク202の温度を低下するために冷蔵され、治療中に前記患者の表皮の組織を冷たく保つことができる。
【0052】
例えば、マスク202の温度は、患者の皮膚に接触するマスク202の表面205が所定の温度設定値、例えば、華氏45度を下回るように(例えば、冷蔵又はその他の手段によって)冷やされることができる。他の温度設定値は、本開示の範囲内にあると考えられる。一実施形態において、マスク202は、マスク202が適用されるべき皮膚又は組織表面の表面温度よりも少なくとも低い温度に冷やされる。マスク202が適用されるべき皮膚の表面温度は、肌再生の処置が行われる前に皮膚の表面温度を温度センサで計測することによって決定されることができる。あるいは、皮膚の表面温度は、経験的に決定される通常の平均表面皮膚温度(平均は、通常の周囲の温度設定で決定される)に基づいて決定又は推定されることができる。一実施形態において、通常の平均表面皮膚温度は、華氏90度から華氏97度の間であり、マスク202は、少なくとも華氏90度未満に冷やされる。
【0053】
一実施形態において、マスク202は、多層からなり、各層は、治療中に患者の表皮の組織を冷たく保つために異なる熱伝達特性を有している。例えば、図2Cを参照すると、本開示によるマスク202は、第1の層230と第2の層232とを含むことが示されている。患者の皮膚又は組織から離れた方を向くマスク202の側面又は表面203は、物質230の第1の層で形成され、患者の皮膚又は組織に対向する側面又は表面205は、物質232の第2の層で形成されている。上記のように、表面205は、適用された後患者の皮膚に粘着するように粘着性の裏張りで構成されることができることは、理解されたい。第1の層230は、断熱性の物質で形成されている。第2の層232は、長時間低温(すなわち、周囲の温度より低い温度)を保持する物質(例えば、上記の物質のうちのいずれか)で形成されている。層230及び層232は、患者の表皮の組織により効果的な冷却効果を提供するように構成されている。層230は、熱が患者の組織からマスク202へのみ流れマスク202から前記周囲の環境へ流れないように、層232をマスク202の周囲の前記環境から絶縁する。このようにして、周囲の環境からの熱の吸収が減少されて、周囲の環境による層232の温度上昇が減少されるので、層232は、長時間より低い又はより冷えた温度をより効果的に保持する。
【0054】
加えて、マスク202は、患者の身体の異なる部分を収容するように形作られ修正されることができる。例えば、図2Dを参照すると、本開示によるマスク222の上面図が示されており、マスク222は、患者の顔に適用されるように構成されている。図2Dに見られるように、マスク222は、複数の開口223を含む患者の顔を実質的に覆うように形作られることができる。さらに、マスク222は、患者の目、鼻及び口のための開口224、226、228を含むことができる。一実施形態において、患者の顔は、例えば、マスク222が患者の顔の寸法に正確に合うように3次元画像装置で走査されることができる。
【0055】
患者の顔に適用されるように構成されているマスクが図2Dに示されているが、マスク202は、所望される通りに患者の身体の他の部分に適用されるように構成されることができる。例えば、マスク202は、患者の足、手、胸等に適用されるように構成されることができる。図2Eを参照すると、一実施形態において、表面203において開口204を含むマスク202は、患者の腕又は足に適用されるようにスリーブとして構成されることができる。スリーブは、患者の関節(例えば、膝又は肘)を収容するための屈曲部211を含むことができる。図2F及び図2Gを参照すると、他の実施形態において、マスク202は、患者の手又は足に適用されるようにグローブ又はブーツとして構成されることができる。身体のどの領域が治療されているかに応じて低温プラズマ・ビームの異なる出力レベルが利用されることができることは、理解されたい。例えば、マスクが首などの身体の他の部分に適用される場合には、より低い出力レベルが、過度の回復時間を防ぐために必要とされるかもしれない。逆に、くも状静脈除去のために足にマスクを適用する場合には、より高い出力レベルが要求されてもよい。
【0056】
図2Aを再び参照すると、マスク202の開口204が表面203の前記領域に一様に分散されていることが示されているが、他の実施形態において、開口204の間隔210は、患者の皮膚の特定の領域での前記肌再生治療について異なる強度レベルを達成するために表面203の異なる部分に対して異ならせてもよい。例えば、開口204は、患者の皮膚の異なる部分に印加される単位領域あたりのプラズマの量を調整するために、マスク表面203の一部において非常に狭い間隔で配置され(すなわち、マスク穴間隔210は、所定の値又は距離よりも小さい)、マスク表面203の他の部分において狭くない間隔で配置されてもよい(すなわち、マスク穴間隔210は、所定の値又は距離よりも大きい)。他の実施形態において、開口204の直径206は、患者の皮膚の特定の領域での肌再生治療について単位領域当たりの異なる強度レベル又はプラズマを達成するためにマスク202の異なる部分において調整されることができる。
【0057】
図3を参照すると、本開示による分画された肌再生のためのマスク202(又は上記もしくは下記の任意の他のマスク)を使用する方法300のフローチャートが示されている。ステップ302において、肌再生マスク202が準備される。上記のように、マスク202は、患者の身体の特定の部分(例えば、図2Cに示されているように患者の顔)で使用するように構成されることができる。ステップ304において、肌再生マスク202は、治療されるべき皮膚に適用される。ステップ306において、低温プラズマ・ビームは、患者から離れる方向に向いたマスク202の表面(すなわち、表面203)上に印加される。例えば、低温プラズマ・ビーム・アプリケータ102は、マスク202の表面203にプラズマ・ビーム104を走査するために使用されることができ、プラズマ・ビーム104は、マスクの開口204のみを通過し、それゆえ、開口204によって露出された皮膚の前記領域のみを治療する。
【0058】
マスク上へのプラズマ・ビームの走査は、例えば少なくとも2回通過することで繰り返されることができることは、理解されたい。一実施形態において、ステップ306におけるように、プラズマ・ビームの1回通過が適用され、続いて、ステップ308において、治療された皮膚に塩水を適用することによって乾燥した組織が取り去られる。一実施形態において、ステップ308の治療された皮膚に塩水を適用する工程は、塩水を浸したガーゼ・パッドで治療された皮膚を拭く工程を更に含む。次に、ステップ310において、第2通過が適用される。特定の実施形態において、所定の冷却期間は、ステップ306の最初の工程とステップ310における次の工程との間で実施されることができる。他の実施形態において、第2の通過が第1の通過の開始点と同じマスク202上の点で開始されるので、通過間には十分な遅延がある。したがって、第1の通過が終了し第2の通過が始まろうとしているときまでに、第1の通過の初めで治療された組織は、冷却するための時間があった。
【0059】
本開示は、1回、2回又はそれ以上の回数の通過が実施される処置を考慮していることは、更に理解されたい。低温プラズマ・ビームの各通過の後、治療された領域は、次の通過までに乾燥された組織を取り去るために塩水を浸したガーゼ・パッドで拭かれる。一実施形態において、マスク202の穴又は開口204は、塩水が治療された皮膚又は組織に到達することを可能にするのに十分な大きさを有している。他の実施形態において、マスク202は、治療された皮膚を拭く前に取り去られてもよい。この実施形態において、マスク202は、第2の通過の前に、治療された皮膚上の同じ特定の点にアクセスできるように組織上で再位置合わせされる必要がある。一実施形態において、マスク202は、マスクを位置合わせするために利用される少なくとも2つの追加的な開口を含むことができる。低温プラズマの第1の通過の前に、使用者は、治療されるべき皮膚に少なくとも2つの追加的な開口を通じて例えばマーカーで印を付けることができる。第1の通過で低温プラズマ・ビームを印加するとき、使用者は、これらの追加的な開口を避けることができる。治療された皮膚からマスク202を取り除いて拭いた後、マスク202は、治療された皮膚の印を付けられた部分に追加的な開口を位置合わせすることによって、位置合わせされてもよい。
【0060】
本開示の一実施形態において、マスク202は、粘着性の裏張りを含むことの代替的な方法として手持ちカードとして構成されることができる。この実施形態において、マスク202の端又は角は、使用者によって所望される通りに治療されるべき皮膚の領域の上(すなわち接触位置)または近傍(すなわち直上)にマスク202が配置されることができるように、処置の間使用者によって持たれるように構成されることができる。このようにして、使用者は、低温プラズマ及びマスク202を上記の方法で使用して肌再生を行うために患者の所望の身体の任意の部分に手持ちカード型マスクを移動させることができる。一実施形態において、マスク202が使用されている間、使用者の手がマスク202及び治療領域から更に離れることができるように、手持ちカード型マスクは、マスク202の端又は角から延び使用者によって把持されるように構成されるハンドルを含む。いくつかの実施形態において、ハンドルは、治療されるべき表面へのマスク202の配置を補助するためにマスク202の表面203に対して鋭角で延びることができる。
【0061】
いくつかの実施形態において、手持ちカード型マスク202は、患者の身体の異なる部分に関連する様々な処置をサポートするために所定の形状に構成されることができる。例えば、手持ちカード型マスク202は、患者の瞼に肌再生を行うために患者の目に又は目の上に配置されるように患者の目の形状に構成されることができる。手持ちカード型マスク202は、例えば、それに限定されないが、患者のあご、頬、首等に類似する形状のような他の形状に構成されることができることは、理解されたい。いくつかの実施形態において、手持ちカード型マスク202の所定の部分は、敏感な領域に近接する皮膚領域が治療されるとき、使用者の身体の敏感な領域(例えば、唇、目、鼻等)を保護するために開口を有さないで構成されることができる。
【0062】
他の実施形態において、カード型マスクは、患者の1つ以上の身体構造(例えば、目又は鼻)の周辺の治療を容易にするように構成されることができる。例えば、図4Aを参照すると、本開示による手持ちカード型マスク402及び450が示されている。マスク402及び450は、任意の適切な物質で形成され、マスク202に関係して上記に記載された任意の特徴を含むことができることは、理解されたい。
【0063】
マスク402は、使用者によって把持されるように構成されたハンド部408と、患者の鼻430を囲む領域について上記した肌再生処置を行うために形成された部分406と、を含む。部分406は、第1の延長部材410と第2の延長部材412とを含み、第1の延長部材410及び第2の延長部材412は、それぞれ複数の開口404を含む。延長部材410、412は、互いに対してある角度でハンドル部408から延びる。このようにして、図4Aに示されるように、マスク402が患者の鼻430に近接して配置されるとき、第1の延長部材(例えば、延長部材410)は、患者の頬に関連する患者の鼻430に隣接する皮膚上に配置され、第2の延長部材(例えば、延長部材412)は、患者の鼻430の真下(例えば、患者の鼻430と上唇との間)の皮膚上に配置される。使用において、マスク408は、患者の鼻430の近くで所望される通りに操作され配置されることができ、患者の鼻430に隣接する皮膚は、延長部材410、412上で、1回以上の通過を使用して低温プラズマ・ビームを印加することによって治療されることができる。
【0064】
マスク450は、使用者によって把持されるように構成されたハンドル部458と、患者の目440を囲む上瞼444及び下瞼442について上記した肌再生処置を行うために形成された部分456と、を含む。一実施形態において、部分456は、患者の目の湾曲した外形に一致するように湾曲する。部分456は、複数の開口454を含む。使用において、マスク450は、部分456が患者の上瞼444又は下瞼442上に配置されるように患者の目440に近接して配置される。このようにして、上瞼444又は下瞼442は、部分454上で、1回以上の通過を使用して、低温プラズマ・ビームを印加することによって治療されることができる。一実施形態において、ハンドル部458は、ハンドル部458が部分456からある角度で離れる向きに延びるように屈曲部459を含んでもよい。屈曲部459は、ハンドル部458が患者の顔の不規則な突出部(例えば、患者の鼻430)によって妨げられることがない状態でマスク450を使用できるように構成される。
【0065】
マスク402、450は本開示の教示によって患者の鼻430及び目440の周りの領域を治療するために形成されているが、患者の他の身体構造(例えば、患者の唇又は耳)の周りの領域を治療するために形成されている他の手持ちカード型マスクが使用されることができることは、理解されたい。
【0066】
一実施形態において、手持ちカード型マスクは、多様な身体構造の周りの領域を治療するように多様な形状で構成されることができる。例えば、図4Bを参照すると、本開示によるマスク470が示されている。マスク470は、第1の部分476と、第2の部分478と、第3の部分480と、を含む。部分476は、使用者の目(例えば、図4Aで示される上瞼444又は下瞼442)の周りの領域の治療を容易にするように形成され、部分480は、(例えば、図4Aで示されているように)使用者の鼻の周りの領域の治療を容易にするように形成されている。部分470、480は、複数の開口474を含む。部分470,480は、使用者によって把持されるようにハンドルとして構成される部分478の両端に配置される。使用において、マスク470は、ハンドル478部を介して把持され、患者の鼻又は目のいずれかを囲む領域を所望される通りに治療するために使用者によって回転されることができる。
【0067】
本開示の他の実施形態において、マスク202は、開口204を有さないで構成されることができる。この実施形態において、マスク202が使用者の皮膚に適用された後、マイクロニードル装置、例えばマイクロニードル・ローラは、マスク202及び/又は使用者の皮膚を貫通する穴又は開口を開けるために使用されることができる。
【0068】
例えば、図5Aを参照すると、本開示によるマイクロニードル・ローラ500の斜視図が示されている。マイクロニードル・ローラ500は、使用者によって把持されるように構成された部分502を有するハンドル504と、円柱状のローラ・ユニット510に連結されるように構成された部分506と、を含む。円柱状のローラ・ユニット510は、複数のディスク512を含み、複数のディスク512のそれぞれは、各ディスク512の周面から延びる複数のマイクロニードル514を含む。円柱状のローラ・ユニット510は、ユニット510がマスクの表面上で転動できるように、軸又はピン・シャフト508を介して部分506に回転可能に連結されている。例えば、図5Bを参照すると、本開示によるマスク550が示されている。マスク550は、マスク202に関係して上記に記載された任意の適切な物質で形成されることができる。マスク550は、表面553を含む。示されてはいないが、マスク550は、表面553の反対側にも表面を含む。表面553の反対側の表面は、患者の皮膚にマスク550を適用するための粘着性の裏張りを含むことができる。図5Bに示されるように、マスク550の表面553は、開口を含まない。
【0069】
図5Cを参照すると、本開示によるローラ500及びマスク550の断面図が示されている。使用において、マスク550は、患者の皮膚又は組織560に適用され、ローラ500の円柱状のローラ・ユニット510は、ピン514がマスク550及び/又は組織560を刺すようにマスク550上で転動する。図5Dを参照すると、ローラ550がマスク550及び組織560から取り去られると、ローラ500のピン514によって作られた開口552は、マスク550及び組織560を貫通して延びるように残される。マスク550が患者の皮膚又は組織560にマスク550を粘着させる粘着性の裏張りを含むので、マスク550の中に作られた複数の開口と組織560の中に作られた複数の開口とは、位置が合う(マスク550の中に作られた開口と組織560の中に作られた開口とは、共に開口552を形成する)。開口552がマスク550及び組織560の中に作られた後、低温プラズマ・ビームが患者の組織560を治療するために、1回以上の通過を使用して、マスク550上に印加されてもよい。一実施形態において、開口552が患者のマスク550及び組織560を共に貫通して延びるので、マスク550に印加された低温プラズマ・ビームが組織560の表面の下まで入り込み、より効果的な肌再生治療が実現される。
【0070】
マスク550及び組織560の上に適用されるローラ500によって作られる開口552の数、密度、間隔及び直径は、ローラ500を使用することによって構成され得ることを理解されたい。例えば、開口552の数及び密度を増加するために、ローラ500は、マスク550及び組織560の上に複数回適用され、異なる角度から転動されることにより、より多くの開口552が作られる。他の実施形態において、ローラ500は、開口552に含まれる所望の密度、間隔及び直径に基づいて異なる直径及び間隔のピンをそれぞれ有する多様な異なるローラ・ユニット510を含んでもよい。異なるローラ・ユニット510は、ハンドル504に交換可能に取り付けられ、開口552について所望の密度、間隔及び直径を達成するために所望される通りにマスク550及び組織560に適用されることができる。
【0071】
本開示の他の実施形態において、本開示によるマスクは、患者の皮膚又は組織560に適用される流体を使用して作られることができる。一実施形態において、前記流体は、加圧されたスプレー缶又は他の流体適用装置(例えば、スプレー・ガン)を使用して、前記患者の皮膚又は組織560に適用されることができる。他の実施形態において、前記流体は、クリームとして構成され、患者の皮膚又は組織560に適用されることができる。いずれの場合においても、前記流体は、患者の皮膚又は組織560に適用された後に凝固するか固まって固体のマスクになるように構成される。流体が凝固して固体のマスクになった後、マスクと皮膚又は組織560とは、マスク及び組織に開口を作るためにマイクロニードル装置、例えばマイクロニードル・ローラ500によって穴をあけられることができる。例えば、図6Aを参照すると、患者の組織650に適用された流体600が示されている。流体600が適用された後所定の期間後、流体600は、固まってマスクになるように構成されている。図6Bを参照すると、固まってマスク602になった後の流体600が示されている。固まってマスク602になった後、マイクロニードル装置、例えばローラ500は、固まったマスク602に1回以上適用され、マスク602及び組織650を貫通する開口604を形成する。
【0072】
ここで用いられているように、「マスク」という用語は、本開示の原則により行われる肌再生処置の間治療されるべき皮膚又は組織表面に直接的に又は近接して適用されることができる任意の物質を表すということは、理解されたい。前記マスクは、本明細書で開示された任意の物質又は本開示の(低温プラズマのマスクへの印加を含む)前記肌再生処置をサポートするように構成された他の適切な物質から形成されることができる。
【0073】
アプリケータ102は、任意のタイプの低温プラズマ・ビーム・アプリケータであってよいということは、理解されたい。例えば、図7は、全体として10で示される例示的な単極電気手術システムを示す。単極電気手術システム10は、電気手術装置10のために発電する12で示される電気手術発電機(ESU)と、導電性板又は導電性支持表面22に横たわる患者20の手術部位又は手術ターゲット領域18にプラズマ・ストリーム又はプラズマ・ビーム16を生成し印加する14で示されるプラズマ・ジェネレータ又はプラズマ・アプリケータと、を備える。電気手術発電機12は、プラズマ・ジェネレータ14に高周波電気エネルギーを供給するために電源(図示せず)に連結された一次と二次とを含む24で示される変圧器を含む。典型的に、電気手術発電機12は、いかなる電位も基準にされていない絶縁された浮遊電位を備える。したがって、電流は、アクティブな電極と戻り電極との間を流れる。前記出力が絶縁されておらずアースを基準にしている場合、電流は、アース電位を有する領域に流れる可能性がある。これらの領域と患者との接触面が比較的小さい場合、望まれない燃焼が発生する可能性がある。
【0074】
プラズマ・ジェネレータ14は、流体流ハウジング29の中に少なくとも部分的に配置される電極28を有し、変圧器24に連結されてそこから高周波電気エネルギーを受信し、プラズマ・ビーム16を生成する又は作るためにハンドピース又はホルダー26の流体流ハウジング29に送り込まれた希ガスを少なくとも部分的にイオン化するハンドピース又はホルダー26を備える。高周波電気エネルギーは、変圧器24の二次側からアクティブな導線30を通じてハンドピース26の中の電極28(集合的にアクティブな電極)に送り込まれ、患者20の手術部位18に印加するためのプラズマ・ビーム16を生成する。さらに、いくつかの実施形態において、電流制限コンデンサ25は、患者20に供給される電流の量を制限するために電極28と直列で設けられている。
【0075】
電気手術発電機12への戻り経路は、患者20の組織及び体液を通しており、導体板又は支持部材22と、変圧器24の二次側への戻り導線32(集合的に戻り電極)とは、絶縁された浮遊電位回路を完成している。
【0076】
他の実施形態において、電気手術発電機12は、いかなる電位も基準としない絶縁された非浮遊電位を備える。電気手術発電機12に戻るプラズマ電流は、組織及び体液並びに患者20を通している。そこから、戻り電流回路は、プラズマ・ジェネレータ・ハンドピース26と外科医とが結合された外的な静電容量を通じ、そして、変位電流を通じて、完成される。前記静電容量は、とりわけ、患者20の身体的なサイズによって決定される。そのような電気手術装置および発電機は、Koneskyに共同所有されている米国特許第7,316,682号に記載されており、その内容は、全体において、参照により本明細書に組み入れられる。
【0077】
いくつかの実施形態において、変圧器24は、プラズマ・ジェネレータ・ハンドピース26の中に配置されることができることは、理解されたい。この構成において、他の変圧器、例えば、降圧変圧器、昇圧変圧器又はそれらの任意の組合せは、ハンドピース26内の変圧器に適切な電圧及び電流を供給するために発電機12内に設けられることができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、アプリケータ102は、折り畳み式の羽を有する低温プラズマ・アプリケータであることができることは、理解されたい。そのような電気手術装置は、共同所有されている米国特許第9,060,765号に記載されており、その内容は、全体において、参照により本明細書に組み入れられる。
【0079】
示され説明された様々な特徴は交換可能であり、すなわち一実施形態に示された特徴は他の実施形態に組み入れられてもよいことは、理解されたい。
【0080】
前記開示は、特定の好ましい実施形態を参照しながら示され説明されてきたが、形態及び詳細において様々な変更が、添付された特許請求によって定義されるように、前記開示の精神及び範囲から逸脱することなく作られることができることは、当業者によって理解されるであろう。
【0081】
さらに、前述の文章は、数多くの実施形態の詳細な説明を行っているが、本発明の方的な範囲は、この特許出願の最後に記載された特許請求の範囲の言葉によって定義されることは、理解されるべきである。前記詳細な説明は、あらゆる可能性のある実施形態を説明することは不可能ではないが現実的ではないので、例示的なものとしてのみ解釈されるべきであり、あらゆる可能性のある実施形態を説明してはいない。現在の技術またはこの特許出願の提出日以降に開発された技術のいずれかを使用して多数の代替的な実施形態を実施することができ、それらも、依然として特許請求の範囲内に入る。
【0082】
ある用語がこの特許出願において「本明細書では、用語「」は、…を意味するものとして定義される。」という文章又は同様の文章を用いて明確に定義されていない限り、明確であろうと示唆されていようとその用語の普通の意味を超えてその用語の意味を制限する意図はなく、その用語は、この特許出願の(特許請求の範囲の文言以外の)任意の節でおこなわれた任意の説明に基づいて範囲を限定されるように解釈されるべきではない。この特許出願の最後の特許請求の範囲において述べられている任意の用語が単一の意味と一致する方法でこの特許出願において言及されている限りにおいて、このことは、読者を混乱させないように明確さの目的でのみなされており、そのような特許請求の範囲の用語が示唆又はその他の方法で単一の意味に限定されるということは、意図されていない。最後に、特許請求の範囲の要素が任意の構造の記述なしに手段および機能を述べることによって定義されていない限り、任意の特許請求の範囲の要素の範囲が35 U.S.C.§112、第6番目の段落の適用に基づいて解釈されるということは、意図されていない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7