(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】非侵襲的な胚の性判別のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/483 20060101AFI20231017BHJP
C12Q 1/04 20060101ALN20231017BHJP
【FI】
G01N33/483 C
C12Q1/04
(21)【出願番号】P 2020552760
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 US2019024995
(87)【国際公開番号】W WO2019191682
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-03
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516191939
【氏名又は名称】テキサス・テック・ユニバーシティー・システム
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】プリーン,サミュエル・ディー
(72)【発明者】
【氏名】ペンローズ,リンジー・エル
(72)【発明者】
【氏名】ウェッセルズ,カラ・イー
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/004107(WO,A1)
【文献】特開2001-045915(JP,A)
【文献】国際公開第2004/072220(WO,A2)
【文献】C.E.Wessels,046 Noninvasive Embryo Assessment Technique to Predict Embryo Cryodamage and Potential Sex Selection.,Jounal of Animal Science,2016年,95(suppl_1),22-23
【文献】S.D. Prien,Preliminary trials of a specific gravity technique in the determination of early embryo growth potential,Human Reproduction,2015年,30(9),2076-2083
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類胚の性別の非侵襲的判定の方法であって、
培地回収プールから垂直方向に延びる管腔を備えるドロップチャンバを通して少なくとも1つの胚を降下させるステップと、
前記ドロップチャンバを通して前記降下する少なくとも1つの胚を測定することによって、前記少なくとも1つの胚を評価するステップであって、前記評価するステップ
は、
センサによって、降下する少なくとも1つの胚を測定することから得られる前記少なくとも1つの胚の降下時間に関連するデータを捕捉するステップと、
前記少なくとも1つの胚の前記降下時間に関連する前記データを処理し、処理された胚データセットを作成するステップと、
前記少なくとも1つの胚の降下時間を、前記胚と類似のサイズおよび形状のビーズの降下時間と比較して、前記胚の重量を推定するステップと、
前記少なくとも1つの胚を分析して、前記少なくとも1つの胚のデータセットに基づいて少なくとも1つの胚の比較データセットを提供するステップと、
前記少なくとも1つの胚を分析することに基づいて、前記少なくとも1つの胚の比重に基づいて、前記少なくとも1つの胚を雄または雌として分類するステップと、
前記ドロップチャンバの前記管腔と流体連通する回収プールから前記胚を回収するステップであって、前記回収プールは、前記ドロップチャンバの前記管腔から胚を受け取ることができる、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記評価するステップは、比重を用いて、前記少なくとも1つの胚の重量、浮力または密度の定量的評価を行うステップを更に含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記評価するステップは、視覚手段、タグ付け、マーカ、コンピュータ化された手段、またはそれらの組合せからなる群のうちの任意のものによって前記降下する少なくとも1つの胚を測定するステップを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記センサは、カメラ、レーザ、光検出センサ、光ファイバセンサ、パイロメータ、赤外線センサ、電気光学センサ、全通ビームセンサ、無線周波数センサ、超音波センサ、拡大デバイス、およびそれらの組合せからなる群のうちの1つまたは複数を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
胞胚期において少なくとも1つの胚の性別を判定するステップであって、前記胚に対する有害な影響を伴わない、ステップを更に含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
2つ以上の胚の性別を判定するために、1つまたは複数のドロップチャンバを利用するステップであって、前記1つまたは複数のドロップチャンバの各々は、前記2つ以上の胚を1つまたは複数の別個の回収プール内に堆積させ、前記2つ以上の胚の性別の判定に続いて、前記2つ以上の胚の回収を可能にすることができる、ステップを更に含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
コンピュータに動作を実行させるためにプロセッサによって実行可能な命令を記憶するコンピュータ可読ストレージ媒体であって、前記動作は、
センサによって、降下する少なくとも1つの胚を測定することにより取得される前記少なくとも1つの胚の降下時間に関するデータを捕捉することと、
前記少なくとも1つの胚の前記降下時間に関する前記データを処理して、処理された胚データセットを作成することと、
前記少なくとも1つの胚の降下時間を、前記胚と類似のサイズおよび形状のビーズの降下時間と比較して、前記胚の重量を推定することと、
前記少なくとも1つの胚を分析して、前記少なくとも1つの胚のデータセットに基づいて少なくとも1つの胚の比較データセットを提供することと、
前記少なくとも1つの胚を分析することに基づいて、前記少なくとも1つの胚の比重に基づいて、前記少なくとも1つの胚を雄または雌として分類することと、
を含む、コンピュータ可読ストレージ媒体。
【請求項8】
前記捕捉する
ことは、前記少なくとも1つの胚の前記降下時間に関するデータを捕捉するステップを更に含み、前記データは、ドロップチャンバの管腔内を降下する前記少なくとも1つの胚の各々を観測することができる前記センサから生成される、請求項
7に記載のコンピュータ可読ストレージ媒体。
【請求項9】
前記センサは、カメラ、レーザ、光検出センサ、光ファイバセンサ、パイロメータ、赤外線センサ、電気光学センサ、全通ビームセンサ、無線周波数センサ、超音波センサ、およびそれらの組合せからなる群のうちの1つまたは複数を含む、請求項
8に記載のコンピュータ可読ストレージ媒体。
【請求項10】
前記降下時間に関連する前記データを処理することは、前記少なくとも1つの胚の適用可能な降下時間を決定することを更に含む、請求項
7に記載のコンピュータ可読ストレージ媒体。
【請求項11】
前記動作は、前記少なくとも1つの胚の各々の比重を計算することを更に含む、請求項
7に記載のコンピュータ可読ストレージ媒体。
【請求項12】
哺乳類胚の性別を判定するためのシステムであって、
a.垂直方向に延びる管腔を備えるドロップチャンバ内に少なくとも1つの胚を挿入することであって、前記ドロップチャンバは成長支持培地組成を更に含む、挿入することと、
b.前記ドロップチャンバを通して前記少なくとも1つの胚を降下させることであって、前記ドロップチャンバを通した前記降下は、生体適合性培地を通した前記胚の降下時間による前記胚の比重の測定を可能にする、降下させることと
、
c.前記ドロップチャンバを通して前記降下する少なくとも1つの胚を測定することによって、前記少なくとも1つの胚を評価することであって、前記評価することは、
センサによって、降下する少なくとも1つの胚を測定することから得られる前記少なくとも1つの胚の降下時間に関連するデータを捕捉し、
前記少なくとも1つの胚の前記降下時間に関連する前記データを処理し、処理された胚データセットを作成し、
前記少なくとも1つの胚の降下時間を、前記胚と類似のサイズおよび形状のビーズの降下時間と比較して、前記胚の重量を推定し、
前記少なくとも1つの胚を分析して、前記少なくとも1つの胚のデータセットに基づいて少なくとも1つの胚の比較データセットを提供し、
前記少なくとも1つの胚を分析することに基づいて、前記少なくとも1つの胚の比重に基づいて、前記少なくとも1つの胚を雄または雌として分類すること、
を含む、システム。
【請求項13】
前記ドロップチャンバを通した前記少なくとも1つの胚の前記降下時間を捕捉するように設計された1つまたは複数のセンサを更に備える、請求項
12に記載のシステム。
【請求項14】
前記1つまたは複数のセンサは、カメラ、レーザ、光検出センサ、光ファイバセンサ、パイロメータ、赤外線センサ、電気光学センサ、全通ビームセンサ、無線周波数センサ、超音波センサ、拡大デバイス、およびそれらの組合せからなる群のうちの1つまたは複数を含む、請求項
13に記載のシステム。
【請求項15】
コンピュータに動作を実行させるためにプロセッサによって実行可能な命令を記憶するコンピュータ可読ストレージ媒体を更に備え、前記動作は、
センサによって、前記降下する少なくとも1つの胚を測定することにより取得される前記少なくとも1つの胚の前記降下時間に関するデータを捕捉することと、
前記少なくとも1つの胚の前記降下時間に関する前記データを処理して、処理された胚データセットを作成することと、
前記処理された胚データセットに対し比重検出を実行して、前記少なくとも1つの胚の重量を検出することと、
前記少なくとも1つの胚を分析して、前記少なくとも1つの胚データセットに基づいて、前記少なくとも1つの胚の比較データセットを提供することと、
前記少なくとも1つの胚の分析に基づいて、前記少なくとも1つの胚を雄または雌として分類することと
を含む、請求項
12に記載のシステム。
【請求項16】
少なくとも1つの胚の性別の評価に続いて、回収プールからの前記少なくとも1つの胚の回収を更に含む、請求項
12に記載のシステム。
【請求項17】
前記センサは、カメラ、レーザ、光検出センサ、光ファイバセンサ、パイロメータ、赤外線センサ、電気光学センサ、全通ビームセンサ、無線周波数センサ、超音波センサ、拡大デバイス、およびそれらの組合せからなる群のうちの1つまたは複数を含む、請求項
15に記載のシステム。
【請求項18】
2つ以上の胚を評価するために、1つまたは複数のドロップチャンバを利用することであって、前記1つまたは複数のドロップチャンバの各々は、固有の回収プールまたは指定のエリア内に流れ込み、固有の識別情報を有する前記2つ以上の胚の性別を判定することを可能にする、利用することを更に含む、請求項
12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、著作権保護を受ける要素を含む。著作権所有者は、特許商標庁の特許ファイルまたは記録に表示されている形で、何人かによって特許開示が複製されることに対しては異論を唱えないが、それ以外には何であれ全ての著作権の権利を留保する。
関連出願の相互参照
[0002]本出願は、2018年3月30日に出願された、「SYSTEM AND METHOD FOR NON-INVASIVE EMBRYO SEXING(非侵襲的な胚の性判別のためのシステムおよび方法)」と題する米国仮特許出願第62/650,638号に対する優先権を主張する。この仮特許出願は参照によりその全体が全ての目的で本明細書に援用される。
【0002】
[0003]本発明は、包括的には、生殖補助医療技術(ART)の分野に関する。特に、システムは胚の性判別を提供する。開示されるシステムおよび方法は、ヒトの生殖医療ならびに畜産関連製品およびサービスのための多岐にわたるシナリオをサポートする。
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
[0004]なし
【背景技術】
【0003】
[0005]生殖補助医療技術(ART)は、当初は卵管閉塞を有する患者を扱うために開発されたが、アメリカ疾病対策センター(2013)によれば、今や、アメリカの年間出生率の最大2%を占める処置に成長した。1978年の体外受精(IVF)からの最初のヒトの誕生から、刺激プロトコル、受精および培養技法、ドナー配偶子および胚の使用、ならびに患者選択における大幅な進歩を遂げた。更に、着床前診断(PGT)の使用、遺伝子スクリーニングのための細胞の侵襲的採取により、異数性および他の遺伝子欠陥を回避するための胚の改善された選択が可能になった。これらの改善の結果、移植胚数を着実に減少させることを可能にしながら、妊娠率を絶えず増大させることとなった(疾病対策センター、2013)。
【0004】
[0006]しかしながら、ここ35年にわたるARTからの妊娠率の劇的改善にもかかわらず、ARTを用いる患者および医療関係者にとって2つの課題、すなわち、1)多胎妊娠、および、2)個々の胚の繁殖力、が問題点として残っている。これらの課題のうちの第1のものを解決するために、ARTは、単一胚移植(SET)の通常使用を採用してきた。参照によりその全体が援用される特許協力条約(PCT)出願PCT/US2015/038665に教示されているような、胚の比重に基づいて生存の可能性がより高い胚を識別するための技法の導入により、装置を通した下方への流れに基づいて、比重基準を満たす胚を単一胚移植のために選択することができ、望まない多胎妊娠を低減することができるため、効率性および成功率を高めてSETを行うことが可能になった。
【0005】
[0007]ARTおよび他の生殖技術の継続的な発展は、更に別の目的、すなわち胚の性判別に更に焦点を当て、現在のところ、当該技術分野においていくつかの手法が存在する。しかしながら、そのような進歩にかかわらず、効率的でコスト効果の高い性別選択によって胚選択を更に向上させる必要性が残っている。現在の手法は高価であり、時間がかかり、多くの場合に侵襲的であり、多くの場合、遺伝子スクリーニング、識別における高レベルの専門知識、または参照試験所に送られなくてはならない試料を必要とする。理想的には、既知のデバイスを用いた高速でオンサイトで非侵襲的な手法により、コスト効果の高い方式で実施を最大にすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0008]したがって、本発明の目的は、ART処置および関連用途についての胚の「性判別」としても知られる産み分けを行うために、胚のコホート内の推定重量の観測される差を特定することである。本発明は、特に、胚の性別を判定するために比重測定を介して、推定胚盤胞重量に見られる差を特定する。
【0007】
[0009]本発明は、比重、密度および/または推定重量に基づいた初期胚(孵化前)の非侵襲的性判別のためのシステムを提供することによって、当該技術の限界に対処する。システムは、胚の100%の回収を可能にし、発達の最も初期において性別を検出することができる。システムは、収集プール内に延び、胚の回収を可能にするドロップチャンバを含むことができる。更に、システムは、ユーザが選択した、管理された培養条件外の胚生存に適合した胚培地または抗凍結培地で充填されてもよい。
【0008】
[0010]したがって、本発明の目的は、内部収集プールを有する基部と、基部から垂直方向に延びるドロップチャンバと、生体適合性培地組成とを備える、哺乳類胚を性判別するためのデバイスならびに関連するシステムおよび方法を提供することであり、ドロップチャンバは、前記評価の目的で胚を通過させるための管腔を備える。
【0009】
[0011]本発明の別の目的は、少なくとも1つの胚に、培地収集プールから垂直方向に延びる管腔を備えるチャンバを通過させることと、前記チャンバを通した前記降下を観測することによって胚を性判別することとを含む、哺乳類胚を性判別する方法を提供することである。
【0010】
[0012]本発明のシステムは、培地がドロップチャンバの頂部から収集プールまで連続することを可能にする圧力シールを更に含むことができる。システムは、既知の距離にわたる胚の降下時間を特定する「計時ゾーン」を有する。
【0011】
[0013]加えて、胚を回収プール内に流すことを確実にするように圧力シールを開くと、システムは、ドロップチャンバから、収集プールと呼ばれる場合がある回収プール内に培地を放出する。代替的に、ドロップチャンバ自体が、胚の後の回収のための格納容器としての役割を果たしてもよい。システムは、回る、回転する、回転式の、または他の多重ウェルまたは多重ストロー構成を更に備えることができ、ドロップチャンバが、各々が独自の収集プールを有する複数のチャンバを有するか、または収集プールが、性判別等の個々の胚に関する情報を収集できるようにする能力を可能にする。別の態様では、システムは、単一のチャンバの使用を可能にしながら、個々の胚に関する情報の収集を可能にするように、単一のドロップチャンバを複数の収集プールの上に様々な時点に位置決めさせる能力を提供する。
【0012】
[0014]したがって、本発明の目的は、哺乳類胚の性別の非侵襲的判定のためのデバイスであって、基部から垂直方向に延びる管腔を備え、管腔を通して少なくとも1つの胚を降下させることができるドロップチャンバと、少なくとも1つの胚を回収することができる内部回収プールを有する基部と、生体適合性培地組成とを備えるデバイスを提供することであり、ドロップチャンバは、少なくとも1つの胚の降下時間による少なくとも1つの胚の比重の測定のために、少なくとも1つの胚に生体適合性培地を通過させるための管腔を備え、比重測定は、少なくとも1つの胚の適用可能な性別を判定するように動作可能である。1つの態様において、測定は、比重を用いた、少なくとも1つの胚の密度または浮力の定量的評価である。別の態様において、測定は、手動観測または自動である。
【0013】
[0015]本発明は、プロセッサと、プロセッサに結合されたセンサであって、光学システムは、管腔を備えるドロップチャンバを通した少なくとも1つの胚の降下を観測することができる、センサと、プロセッサに結合されたメモリであって、コンピュータに動作を実行させるためにプロセッサによって実行可能なコンピュータ可読命令を記憶し、動作は、センサによって、降下する少なくとも1つの胚を測定することにより取得される少なくとも1つの胚の降下時間に関するデータを捕捉することと、少なくとも1つの胚の降下時間に関するデータを処理して、処理された胚データセットを作成することと、処理された胚データセットに対し比重検出を実行して、少なくとも1つの胚の重量を検出することと、少なくとも1つの胚を分析して、胚データセットに基づいて、少なくとも1つの胚の比較データセットを提供することと、少なくとも1つの胚の分析に基づいて、少なくとも1つの胚を雄または雌として分類することとを含む、メモリと、を備える自動測定デバイスを更に備えることができる。
【0014】
[0016]1つの態様において、センサは、カメラ、レーザ、光検出センサ、光ファイバセンサ、パイロメータ、赤外線センサ、電気光学センサ、全通ビームセンサ、無線周波数センサ、超音波センサ、拡大デバイス、およびそれらの組合せからなる群のうちの1つまたは複数を含む。
【0015】
[0017]デバイスの1つの態様において、ドロップチャンバ管腔は、前記回収プール内に流れ込み、胚の降下および回収のための連続した流体培地を可能にすることができる、近位部分および遠位部分の双方において開いた連続降下チャンバを更に備える。別の態様において、ドロップチャンバ管腔は、管腔から別個の容器内に胚の排出を方向付けることができる閉じた下端を含む。別の態様において、ドロップチャンバは、ドロップチャンバの管腔を通した胚の降下の視覚化および計時のために透明である。更に別の態様において、ドロップチャンバは、胚の評価のための指定された計時ゾーンまたは他の計時機構を更に備える。別の態様において、デバイスは、各々が複数の胚を別個の回収プールまたは容器内に堆積させ、固有の識別情報を有する複数の胚の評価を可能にする、1つまたは複数のドロップチャンバを備える。
【0016】
[0018]本発明の更なる目的は、評価が、胞胚期における少なくとも1つの胚の性別の非侵襲的評価であり、この少なくとも1つの胚に対する有害な影響を伴わないことである。
[0019]本発明の別の目的は、哺乳類胚の性別の非侵襲的判定の方法を提供することであり、この方法は、培地回収プールから垂直方向に延びる管腔を備えるドロップチャンバを通して少なくとも1つの胚を降下させることと、前記ドロップチャンバを通して降下する少なくとも1つの胚を測定することによって、少なくとも1つの胚を評価することであって、前記評価するステップは、少なくとも1つの胚の性別の判定のために、生体適合性培地組成を通して降下する少なくとも1つの胚の推定重量を測定することを含む、評価することと、ドロップチャンバの管腔と流体連通する回収プールから胚を回収することであって、回収プールは、ドロップチャンバの管腔から胚を受け取ることができる、回収することとを含む。1つの態様において、評価するステップは、比重を用いて、少なくとも1つの胚の重量、浮力または密度の定量的評価を行うことを更に含む。別の態様において、評価するステップは、視覚手段、タグ付け、マーカ、コンピュータ化された手段、またはそれらの組合せからなる群のうちの任意のものによって降下する少なくとも1つの胚を測定することを含む。
【0017】
[0020]別の態様において、評価するステップは、センサによって、降下する少なくとも1つの胚を測定することにより取得された少なくとも1つの胚の降下時間に関するデータを捕捉することと、少なくとも1つの胚の降下時間に関するデータを処理して、処理された胚データセットを作成することと、処理された胚データセットに対し比重検出を実行して、少なくとも1つの胚の重量を検出することと、少なくとも1つの胚を分析して、少なくとも1つの胚データセットに基づいて少なくとも1つの胚の比較データセットを提供することと、少なくとも1つの胚の分析に基づいて、少なくとも1つの胚を雄または雌として分類することとを更に含む。
【0018】
[0021]別の態様において、データを捕捉するためのセンサは、カメラ、レーザ、光検出センサ、光ファイバセンサ、パイロメータ、赤外線センサ、電気光学センサ、全通ビームセンサ、無線周波数センサ、超音波センサ、拡大デバイス、およびそれらの組合せからなる群のうちの1つまたは複数を含む。
【0019】
[0022]本発明は更に、胞胚期において少なくとも1つの胚の性別を判定することができ、胚に対する有害な影響を伴わない。
[0023]本発明は更に、2つ以上の胚の性別を判定するために、1つまたは複数のドロップチャンバを利用することができ、1つまたは複数のドロップチャンバの各々は、2つ以上の胚を1つまたは複数の別個の回収プール内に堆積させ、2つ以上の胚の性別の判定に続いて、2つ以上の胚の回収を可能にすることができる。
【0020】
[0024]本発明の別の目的は、コンピュータに動作を実行させるためにプロセッサによって実行可能な命令を記憶するコンピュータ可読ストレージ媒体を提供することであり、動作は、センサによって、降下する少なくとも1つの胚を測定することにより取得される少なくとも1つの胚の降下時間に関するデータを捕捉することと、少なくとも1つの胚の降下時間に関するデータを処理して、処理された胚データセットを作成することと、処理された胚データセットに対し比重検出を実行して、少なくとも1つの胚の重量を検出することと、少なくとも1つの胚を分析して、少なくとも1つの胚データセットに基づいて、少なくとも1つの胚の比較データセットを提供することと、少なくとも1つの胚の分析に基づいて、少なくとも1つの胚を雄または雌として分類することとを含む。
【0021】
[0025]1つの態様において、捕捉するステップは、少なくとも1つの胚の降下時間に関するデータを捕捉するステップを更に含み、前記データは、ドロップチャンバの管腔内を降下する少なくとも1つの胚の各々を観測することができるセンサから生成される。
【0022】
[0026]別の態様において、センサは、カメラ、レーザ、光検出センサ、光ファイバセンサ、パイロメータ、赤外線センサ、電気光学センサ、全通ビームセンサ、無線周波数センサ、超音波センサ、およびそれらの組合せからなる群のうちの1つまたは複数を含む。
【0023】
[0027]別の態様において、降下時間に関連するデータを処理することは、少なくとも1つの胚の適用可能な降下時間を決定することを更に含む。別の態様において、比重検出を実行することは、少なくとも1つの胚の各々の比重を計算することを更に含む。
【0024】
[0028]本発明の更に別の目的は、哺乳類胚の性別を判定するためのシステムを提供することであり、このシステムは、垂直方向に延びる管腔を備えるドロップチャンバ内に少なくとも1つの胚を挿入することであって、前記ドロップチャンバは成長支持培地組成を更に含む、挿入することと、前記ドロップチャンバを通して前記少なくとも1つの胚を降下させることであって、前記ドロップチャンバを通した前記降下は、生体適合性培地を通した胚の降下時間による胚の比重の測定を可能にする、降下させることとを含み、比重測定は、胚の適用可能な性別の判定を可能にする。
【0025】
[0029]1つの態様において、システムは、ドロップチャンバを通した少なくとも1つの胚の降下時間を捕捉するように設計された1つまたは複数のセンサを更に備える。別の態様において、1つまたは複数のセンサは、カメラ、レーザ、光検出センサ、光ファイバセンサ、パイロメータ、赤外線センサ、電気光学センサ、全通ビームセンサ、無線周波数センサ、超音波センサ、拡大デバイス、およびそれらの組合せからなる群のうちの1つまたは複数を含む。別の態様において、システムは、コンピュータに動作を実行させるためにプロセッサによって命令を記憶するコンピュータ可読ストレージ媒体を備え、動作は、センサによって、降下する少なくとも1つの胚を測定することにより取得される少なくとも1つの胚の降下時間に関するデータを捕捉することと、少なくとも1つの胚の降下時間に関するデータを処理して、処理された胚データセットを作成することと、処理された胚データセットに対し比重検出を実行して、少なくとも1つの胚の重量を検出することと、少なくとも1つの胚を分析して、少なくとも1つの胚データセットに基づいて、少なくとも1つの胚の比較データセットを提供することと、少なくとも1つの胚の分析に基づいて、少なくとも1つの胚を雄または雌として分類することとを含む。
【0026】
[0031]別の態様において、システムは、少なくとも1つの胚の性別の評価に続いて、回収プールからの少なくとも1つの胚の回収を可能にする。更に別の態様において、センサは、カメラ、レーザ、光検出センサ、光ファイバセンサ、パイロメータ、赤外線センサ、電気光学センサ、全通ビームセンサ、無線周波数センサ、超音波センサ、拡大デバイス、およびそれらの組合せからなる群のうちの1つまたは複数を含む。
【0027】
[0032]システムは、複数の胚を評価するために、1つまたは複数のドロップチャンバを利用することであって、1つまたは複数のドロップチャンバの各々は、固有の回収プールまたは指定のエリア内に流れ込み、固有の識別情報を有する複数の胚の性別を判定することを可能にする、利用することを更に含むことができる。別の態様において、システムは、2つ以上の胚を評価するために、1つまたは複数のドロップチャンバを利用することができ、1つまたは複数のドロップチャンバの各々は、固有の回収プールまたは指定のエリア内に流れ込み、固有の識別情報を有する2つ以上の胚の性別を判定することを可能にする。
【0028】
[0033]本開示の上記のおよび他の目的、特徴および利点は、添付の図面に示されるように、実施形態の以下の説明から明らかとなるであろう。添付の図面において、参照符号は、様々な図を通じて同じ部分を参照する。図面は必ずしも縮尺通りでなく、本開示の原理を示すことに重点が置かれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】[0034]使用のために設計された本発明のデバイスを示す図である(視覚化を容易にするために蓋が図から取り除かれていることに留意されたい)。
【
図1B】[0035]取外し可能な蓋構成を有するフォームファクタにおける、水平方向に位置決めされた本発明のデバイスを示す図である。
【
図2】[0036]2日間にわたる24時間間隔での本発明のシステムを通した対照(非熱露出)および加熱死滅胚の降下時間の比較を示す図である。
【
図3】[0037]本発明のシステムを通した5日間にわたる対照(非熱露出)胚の降下時間を示す図である。
【
図4】[0038]本発明のシステムを通して「懸濁された」27のドナー動物からの207の1細胞胚の降下時間の比較を示す図である。
【
図5】[0039]算術平均(N=160)の両側にクラスタ化する2つの胞胚期胚集団の平均降下時間を示す図である。
【
図6】[0040]本発明の1つの実施形態の方法の流れ図である。
【
図7】[0041]自動測定を用いた本発明のデバイスを示す図である。
【
図8】[0042]胚降下の自動測定のための本発明のコンピューティングデバイスの詳細図である。
【
図9】[0043]本発明のシステムを用いた性判別成功率を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[0044]本発明の様々な実施形態の作成および使用が以下で詳細に論じられるが、本発明は、多岐にわたる特定のコンテキスト、製品またはサービスにおいて具現化することができる多くの適用可能な発明概念を提供することが理解されるべきである。本明細書において論じられる特定の実施形態は、本開示を作成および使用する特定の方式の例にすぎず、本開示の範囲を限定するものではない。
【0031】
[0045]本明細書に述べる全ての公開資料および特許出願は、本開示が関係する当業者の技能レベルを示す。全ての公開資料および特許出願は、各個々の公開資料および特許出願が参照により援用されることが特にかつ個々に示されているのと同程度に、参照により本明細書に援用される。
【0032】
[0046]ここで、本発明は、本明細書の一部を形成し、例示として具体的な例示的実施形態を示す添付の図面を参照して、以下でより完全に説明される。しかしながら、主題は、様々な異なる形態で具現化してもよく、したがって、カバーまたはクレームされる主題は、本明細書に記載された例示的な実施形態に限定されないと解釈されることを意図し、例示的な実施形態は、単に説明のために提供される。同様に、クレームまたはカバーされる主題の合理的に広い範囲が意図される。とりわけ、主題は、例えば、方法、デバイス、コンポーネント、またはシステムとして具現化してもよい。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されることを意図するものではない。
【0033】
[0047]明細書および特許請求の範囲を通じて、用語は、文脈において、明示的に述べられた意味を越えて、示唆されまたは暗示された微妙な意味を有することがある。同様に、「1つの実施形態では」という語句は、本明細書において用いられるとき、必ずしも同じ実施形態を指すものではなく、「別の実施形態では」という語句は、本明細書において用いられるとき、必ずしも異なる実施形態を指すものではない。例えば、クレームされる主題が、全体的または部分的に例示的な実施形態の組合せを含むことが意図される。
【0034】
[0048]一般に、専門用語は、文脈における使用から少なくとも部分的に理解することができる。例えば、「および」、「または」または「および/または」などの用語は、本明細書において用いられるとき、そのような用語が用いられる文脈に少なくとも部分的に依存することができる様々な意味を含むことができる。通常、「または」が「A」、「B」、または「C」などのリストを関連付けるために用いられる場合、「または」は、本明細書では包括的な意味で用いられるA、BおよびC、ならびに、本明細書では排他的な意味で用いられるA、BまたはCを意味するように意図される。加えて、文脈に少なくとも部分的に応じて、「1つまたは複数」という用語は、本明細書において用いられるとき、単数の意味における任意の特徴、構造または特性を説明するために用いられてもよく、または複数の意味における特徴、構造または特性の組合せを説明するために用いられてもよい。同じように、「a」、「an」、または「the」などの用語は、ここでも、文脈に少なくとも部分的に応じて、単数の使用法を伝えるか、または複数の使用法を伝えるように理解することができる。加えて、「に基づいて」という用語は、排他的な要素のセットを伝えることを必ずしも意図するものではないとして理解することができ、代わりに、ここでも、文脈に少なくとも部分的に依存して、必ずしも明示的に記載されてない追加の要素の存在を可能にすることができる。
【0035】
[0049]胚は、卵巣実質内の単一の顆粒膜細胞層に取り囲まれた初期胚を含む一次または原子卵胞内の卵原細胞として、母体の発達の出生前期において生命を開始する。この期間中に卵巣内に見られる卵胞の数は、雌が一生涯で有することになる最高の数であり、閉経時に枯渇するまで、寿命の残りにわたって、主に卵胞閉鎖に起因して徐々に減少することになる。この発達期間中、卵原細胞は減数分裂工程および染色体再配置を開始し、最終的に、遺伝子学的に固有の卵母細胞がもたらされる。この工程は、前期の指示段階中、休眠状態となり、出生後までその状態に留まる。未来の時点に更なる発達が再開する。その時点において、原始卵胞を取り囲む顆粒膜細胞が急増し始め、卵母細胞の周りに複数の層を作成する(2~3)。この発達段階において、構造は二次卵胞と呼ばれる。これは、ホルモンの影響とは無関係に生じることができるが、更なる発達は、適切なホルモンカスケードがなければ失速することになる。ホルモンの存在下で、低率の卵胞が最終的に流体で満たされた大きな腔所(洞)に発展し、齧歯類では0.2~0.3mm、ヒトでは2~5mmとなり、三次卵胞として分類されることになる。
【0036】
[0050]正常な条件下のヒトにおいて、単一卵胞は完全に拡大し、排卵して(グラーフ卵胞と呼ばれる)、卵母細胞を受精の可能性のために卵管内に解放する。排卵した卵母細胞は、次に、漏斗部に捕捉され、受精の可能性のために卵管内に移される。この発達段階において、卵母細胞の解剖学的構造は核を有し、この核は前期Iの網糸期から再活動化され、減数分裂を継続している。核は、卵黄膜によって取り囲まれた大きな(100μmを超える直径の)細胞内に収容される。膜の直下には、表層粒の集合体がある。卵黄膜は、放出された染色体の第1の組、すなわち第1極体を含む囲卵腔によって取り囲まれる。透明帯と呼ばれる保護タンパク質の殻が卵母細胞全体を取り囲む。哺乳類において、透明帯は、2つ以上の精子が卵母細胞に入ることを防ぐ役割を果たす障壁であるが、受精後に囲卵腔内に複数の精子が現れることは一般的である。正常な条件下で、精子細胞は、先体領域から解放されたエステラーゼ、アクロシンおよびノイラミニダーゼ等の酵素を用いて透明帯の溶解を引き起こし、卵母細胞内への経路を可能にする。透明帯反応は、精子細胞の頭部が卵黄膜と融合するときに開始される。次に、表層粒が卵黄膜と融合し、表層粒の内容物を卵母細胞の囲卵腔内に流入させる。表層粒によるこの工程は、透明帯反応の原因となるとみなされているものである。精子細胞が卵黄膜を横切るのに成功すると、透明帯は、「透明帯反応」、すなわちタンパク質における構造変化を受け、卵黄膜は、精子の貫通を防ぐように変性され、双方の事象により、多精受精(2つ以上の精子による卵母細胞の受精)が生じないことが確保される。
【0037】
[0051]卵母細胞および精子の膜の融合が完了すると、精子細胞の頭部および尾部は、卵母細胞の細胞質内に進むことになる。精子細胞が細胞質内に完全に貫入すると、卵母細胞の第2減数分裂が活性化され、第2極体が生成され、核が雌性前核になることが可能になる。精子の尾部が退化するにつれ、精子細胞の核が拡大し始め、雄性前核を形成する。これらの2つの前核の存在は、受精が成功したことを実証する。雄性前核および雌性前核は次に、染色体の単一の二倍体凝集に融合し、受精卵を生成する。
【0038】
[0052]受精の工程が完了すると、受精卵は卵割を受ける。卵割は、透明帯内の有糸分裂による細胞分裂の工程であり、結果として細胞数が増えるが、サイズは増大しない。卵割を受けている細胞は割球と呼ばれる。初期の1細胞受精卵は、有糸分裂により分裂し、結果として2細胞(2割球)胚となる。次に、2細胞胚は分裂し続け、4、8、16細胞胚を生成し、最終的に子宮内に入る。各割球分裂または卵割によって、より細胞質の少ない、より小さな細胞が得られる。この段階において、割球は、互いに密に整列し始め、細胞間の接着が増大し、桑実胚と呼ばれる構造化された複合体が生成される。桑実胚は、内部細胞間に形成されるギャップ結合、および胚の外部の細胞間に形成される密なギャップ結合により凝縮し続けることになる。次の数日間に、子宮からの流体が胚に染み込みだし、胞胚腔と呼ばれる、流体で満たされた腔所が生成されることになる。腔所がより多くの流体で満たされるにつれ、個々の割球は外方に透明帯の内壁に押し付けられ、胚盤胞が生成される。細胞について何らかの分化が行われ、栄養膜と呼ばれる、上皮壁内を覆う外部細胞塊になり、胎盤となるものもあれば、胚盤胞の片極(polar end)でまとまり、内部細胞塊または胚結節を形成し、胚となるものもある。胚盤胞が拡張し、成長するにつれ、透明帯を押すようになる。この圧力は、割球からのタンパク質分解酵素の放出と結合して、帯を薄くし、最終的に破断させ、胚が解放されることを可能にする。これは孵化と呼ばれる。胚盤胞が孵化した後、栄養膜は、子宮と結合し、子宮との関係を確立し、成長に必要な栄養源を得るために着床する。
【0039】
[0053]生殖補助医療技術(ART)は、ここ30年にわたって大幅な進歩を遂げた。管理プロトコル、培養技法および培地の改善は、同時に移植胚数を減少させながら、妊娠率を絶えず増大させることに役立った。偶発的妊娠の観点での成功率をかつて測定したプログラムは、今や、日常的に、40%~60%の年間成功率を報告している。全てのARTプログラムの最終的な目標は、高い妊娠率を維持しながら、単一胚移植に向かうことである。侵襲的処置は、妊娠率を増大させるものではあるが、流産率の増大にもつながる。処置のコスト、投薬および外科的処置に関連するリスク、および妊娠の陰性結果がカップルに及ぼす精神的負担を考えると、多胎妊娠のリスクを制限しながら、非侵襲的で、より主観の入らない、より高い妊娠率につながる胚選択における任意の改善により、女性のリプロダクティブ・ヘルスが大幅に改善されることとなる。
【0040】
[0054]着床前診断(PGT)は、胚の性判別のための効果的な方法であることがわかった。また、侵襲的方法および非侵襲的方法を含む、胚の性判別を提供することができるいくつかの技法が当該技術分野において既知である。
【0041】
[0055]侵襲的な胚の性判別方法は、中でも、(i)核型分析、(ii)性染色質同定、(iii)Y特異DNAプローブ、(iv)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を含む。
[0056]核型分析は、胚の性別を判定する侵襲的方法であり、いくつかの細胞が胚から除去され、コルヒチンを用いて培養されるが、これにより細胞は分裂(有糸分裂)を止める。次に、細胞はX染色体またはY染色体の観測のために溶解および染色される。この方法は安価であるが、これらの技法は胚に重大な損傷を引き起こす可能性があり、更には訓練を受けた人員を必要とし、実行に12時間以上かかる可能性がある。
【0042】
[0057]性染色質の同定は、胚の性別の判定の別の方式である。この侵襲的方法は、雌細胞内に存在する2つのX染色体のうちの1つの不活性化の結果として生じるバー小体を同定することに焦点を当てる。したがって、雌胚からの細胞はバー小体を示すことが予期される。しかしながら、この技法は、染色質の一貫性に起因して、全てのタイプの哺乳類を性判別することが可能なわけではない。更に、全ての細胞にバー小体が存在するわけではない場合があり、誤診断につながる。更に、大量の細胞が必要とされ、結果として胚に潜在的損傷が生じる。
【0043】
[0058]Y特異DNAプローブ技法は、別の侵襲的技法であり、胚からいくつかの細胞を取得することと、DNAを露出させ、Y染色体特異プローブとの雑種を形成し、これにより雄胚の検出を可能にすることを伴う。このプロセスは、効果的であり、高度に正確だが、侵襲的なままであり、高価で時間がかかる。
【0044】
[0059]PCR方法は、Y染色体特異DNAの増幅を可能にし、最も信頼性が高く、一般的に用いられている胚の性判別の方法である。この方法は、小さな数の細胞の除去を伴い(通常、胚に外傷を与えない)、感度が高く、正確で、信頼性がある。しかしながら、他の技法のように、プロセスは技術的技能を必要とし、時間がかかる。
【0045】
[0060]それにもかかわらず、上記の複数の処置は侵襲的であり、リスクを伴わないものではないとみなされ、場合によっては誤った結果をもたらす可能性がある。また、これらの処置は時間がかかり、機器への多大な投資を必要とする。多数のグループが、胚の性判別を改善する非侵襲的手段を探索してきた。しかしながら、これまで、従来の形態学単独、または上記の技法、特にPCR方法と結合された形態学に対する代替を見つけることにほとんど進歩がなされてこなかった。
【0046】
[0061]利用可能な非侵襲的な胚の性判別方法は、数ある中でも、(i)X連鎖性酵素の検出、(ii)メタボロミクス評価、および(iii)H-Y抗原の検出を含む。
[0062]X連鎖性酵素の検出を用いると、胚は、試験処置中の損傷または操作を受けないため、非侵襲的とみなされる。雌胚における2つのX染色体の存在は、酵素である、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)、ホスホグリセリン酸キナーゼ、A-ガラクトシダーゼおよびヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)の増大を表す。次に、そのような酵素は胚内で試験され、雌胚が雄胚よりも高い濃度を提示することを示唆する。しかしながら、この手法には、この方法を用いて胚が測定される必要がある時間に部分的に起因して、胚の生存能力が低減するという制限がある。
【0047】
[0063]メタボロームプロファイリングは、光学および非光学分光法を用いた別の非侵襲的技法であり、余剰培地の主要な態様が分析されるが、信頼性およびバイアス一貫性により、多くの場合に不正確な結果となる。
【0048】
[0064]H-Y抗原の検出を用いる際、胚は、抗体を用いて或る期間(30~60分)にわたってインキュベートされ、次に蛍光染料を含む抗体を用いて更なる期間(30~60分)にわたってインキュベートされる。H-Y陽性の雄が蛍光を発するのに対し、H-Y陰性の雌は蛍光を発しない。H-Y方法は、ほとんどの哺乳類種と共に用いることができ、高い成功率(約85%)を有する。しかしながら、胚は、この工程に長期間留まらなくてはならない。また、染料は、弱毒性とみなされるため、この技法は侵襲的とみなされる。更に、試薬および機器要件が多くの場合に大きく、高価である。
【0049】
[0065]したがって、本開示の実施形態は、比重に基づいた胚の性別の非侵襲的判定のためのデバイスならびに関連するシステムおよび方法を提供することである。雄と雌との間の染色体のサイズの差に基づいて、雌の胚は、雄の胚よりも僅かに重いことが判明している。差は非常に小さいが、実際は、本明細書に示した実施形態を用いて検出可能である。現在のところ、着床前診断は、子が遺伝的異常を有することになるか否か、および胚の性別への洞察を提供することができるが、この技法は非常に侵襲的であり、技能の高い個人が高価な器具を用いることを必要とする。ここで、以前に開示された装置のこの新たな適合を用いて、親になろうとする人が、子の性別を選択することができる可能性があり、家畜生産者が需要に基づいて好ましい性別を選択することができるようになる。
【0050】
[0066]胚盤胞において、各々がXXまたはXY染色体の対合を有する約300個の細胞が存在する。X染色体とY染色体との間に非常に小さな重量差が存在し、細胞数(n=300)を乗算されると、差が検出可能になる。この原理は、平均の1標準偏差内でのみ胚に適用され、同じ母からの胚間のみで反映することができる。
【0051】
[0067]1つの例において、多数の胞胚期胚の観測が行われ、169のマウス胚が本発明のシステムを通して降下された。胚盤胞は、平均でクラスタ化することが予期されたが、正常な胚の降下時間は平均付近でクラスタ化し、全体パターンが上記で説明したベル型曲線となるのに対し、曲線の絶対ピークは、実際に、確立された平均の両側の2つの別個のクラスタを有して二分化され、胚の2%未満が2つのクラスタ間のギャップにおける降下時間を有することが観測された。
【0052】
[0068]ARTの全ての態様における進化により、技法は、研究者および立法者の双方が、単一胚移植が標準となることを要求するところまで進歩した。本発明のデバイスは、単独で、または他の技法と組み合わせて、個々の胚性別の判定、およびこのためSETのための胚選択における前進を表すことができる。
【0053】
[0069]したがって、比重、密度および/または推定重量に基づいた初期胚(孵化前)の非侵襲的性判別のためのシステムを提供することが本発明の実施形態である。1つの実施形態において、システムは、胚の100%の回収を可能にし、発達の最も初期において性別を検出することができる。胚密度の推定は、胚の性別を判定する、非侵襲的で客観性のある方式である。胚の脂質含有量/生化学的含有量の推定は、生体または食品生産物における脂質含有量を推定する一般的手段となっている比重技法によって取得される。比重決定は、胚の密度の決定に役立つ水置換を伴う。等しいサイズの物体の重量の差は、密度のみに基づくため、この発達段階における胚の密度は重量の推定値とならなくてはならない。したがって、胚重量の推定は、ART用途のための生存能力のある胚の胚性別選択の更なる推定につながる。更に、本明細書における例は主にインビボで生成された胚に対処するが、本発明は、IVFおよびフラッシング胚にも適用可能である。
【0054】
[0070]フローケミストリーの研究は、静的バッチ製造ではなく流れの中での化学的反応の研究である。マイクロ流体デバイスは、ドロップチャンバ、すなわち、どちらも一定の速度でいくらかの流体の一定流が流れるチューブまたはチャネルとして説明することができる。特定の反応または材料を互いに分離するためのガス気泡または溶媒スペーサが存在する分割されたフローシステムも用いられてもよい。そのようなシステムは、優れた熱および質量移動能力等の多くの利点を有し、増大した反応速度のために指数関数的に高いまたは低い温度での厳密な温度制御を可能にすることがわかった。また、マイクロ流体デバイスは弾性不安定性を有し、これにより、デバイス内の流体が何であれその流体と粒子との間の誘起拡散、反応、または材料が流体を通って進むことが可能になることが示された。
【0055】
[0071]1つの実施形態において、本発明は、胚の重量を評価し、これにより前記胚の性判別を行うための比重手段を提示する。真のマイクロ流体環境ではないが、胚の上を流体が流れるのではなく、胚が流体を通って進むという点で、胚が比重チャンバを通って降下する際に胚にマイクロ流体効果を与える。
【0056】
[0072]別の実施形態において、システムは、収集プール(the collection pool)とも呼ばれる収集プール(a collection pool)内に延び、胚の回収を可能にする、ドロップチャンバ(the drop chamber)と呼ばれるドロップチャンバ(a drop chamber)で構成される。更なる実施形態において、システムは、ユーザが選択した、制御下の培養条件外の胚生存に適合した胚培地を含み、これを用いて動作する。また更なる実施形態では、システムは、成長支持胚培地(すなわち、実際に胚成長を促進する培地)である胚培養物を含み、これを用いて動作する。
【0057】
[0073]更に別の実施形態では、システムは、ドロップチャンバの頂部から収集プールまで培地が連続することを可能にする圧力シールを含む。システムは、既知の距離にわたる胚の降下時間を特定する「計時ゾーン」を有する。計時ゾーンは、マーク、エッチング、顔料もしくはインク、または計時ゾーンの上界および下界を指定する他の方法によって指定することができる。ドロップチャンバとしての役割を果たす管腔を備えるドロップチャンバは、好ましくは透明であるか、または関心対象の胚の降下の検出および評価を可能にするための適用可能な計時ゾーンに関連するセクションで構成される。更なる実施形態において、評価は、視覚手段を通じた、またはタグ付け、マーカによる評価を含む、関心対象の胚の下方の動きを検出する他の手段による、または計時ゾーンを通じた降下中に関心対象の胚を検出するように設計されたプログラム可能なロジックを有するプロセッサを利用するコンピュータ化された手段による任意の観測または評価を意味する。
【0058】
[0074]更なる実施形態において、システムは、胚を回収収集プール内に流すことを確実にするように圧力シールを開くと、ドロップチャンバから回収収集プール内に培地を放出し、これによりドロップチャンバの管腔と収集プールとの間の流体連通を生成する。前記システムが、潜在的に、静置培養よりも胚成長率を増大させることが本発明の好ましい実施形態である。
【0059】
[0075]更に別の実施形態において、システムは、任意選択の回る、回転する、回転式の、または他の多重ウェルまたは多重ストロー構成を有することができ、ドロップチャンバが、各々が独自の回収プールを有する複数のチャンバを有するか、または収集プールが、個々の胚に関する情報を収集できるようにする能力を可能にする。別の実施形態では、単一のチャンバの使用を可能にしながら、個々の胚に関する情報の収集を可能にするように、単一のドロップチャンバが複数の回収プールの上に様々な時点に位置決めされる。
【0060】
[0076]本発明の図面を参照すると、様々な態様が記載されている。デバイスの機能を変更することなく、丸ではなく四角のドロップチャンバ、または異なる収集プール等の他の構成が用いられてもよい。
図1Aは、使用のために設計された比重システムを示す(視覚化を容易にするために蓋が図から取り除かれていることに留意されたい)。ドロップチャンバ102は、収集プールまたはリザーバ104の上に位置決めされる。ドロップチャンバ102の外径はドロップチャンバ102の降下チャンバとしての役割を果たす内側管腔101の監視を可能にする。生体適合性培地が内側管腔101内、および収集プール103内に維持される。ドロップチャンバの下端105が、ドロップチャンバ102の管腔101と収集プール103との間に流体連通が存在することを可能にするために、ドロップチャンバ102は収集プール103の垂直方向に上に位置決めされる。収集プール104の外面は、培地を含むように設計される。収集プールの構成は、円筒形、矩形、または周囲の機器および器具と適合するのに必要な任意の形状とすることができる。胚は、ドロップチャンバの開放端の頂部に配置され、管腔101は比重チャンバを表し、胚は培地を通して沈むことを可能にされる。次に、胚は評価を受ける。1つの実施形態において、胚の降下速度は、「計時ゾーン」とラベル付けされたドロップチャンバの、マーク付けされたまたは他の形で区別可能なセクションを通過する際に測定される。例えば、計時ゾーンは、長さが10cm以下である場合がある。1つの実施形態において、計時ゾーンは5cmである。別の実施形態において、計時ゾーンは2cmである。好ましい実施形態において、計時ゾーンは1cmである。計時が完了すると、胚は、収集プールの中央セクション内に降下し続ける。収集プールは、培地内の胚を受けることが可能な標準的な器官培養皿または他のリザーバを表すことができ、培地は1つの実施形態では生体適合性であってもよく、別の実施形態では成長支持性であってもよい。
【0061】
[0077]
図1Bを参照すると、本発明の代表的なデバイスが、蓋構成106で、水平方向に位置決めされて示されている。この位置決めは胚の評価の実行の観点では非機能的である。蓋106は、収集プール104の外側部分によって収容された内側収集プールの保護および加圧を可能にする。管腔101は、収集プール104から遠位方向に延びるドロップチャンバ102内に提示される。蓋106における開口107は、収集プール104内に挿入し、管腔101と内側収集プール104との間の流体連通を達成する目的で、ドロップチャンバ102を受けることが可能である。本発明の目的として、胚の降下は、垂直でない任意の姿勢にドロップチャンバ102を位置決めすることによって影響を受ける場合があるため、デバイスは、評価を行うためには垂直方向に位置決めされなくてはならない。次に、蓋106は、胚を容易に回収し、培養物に戻すために、除去することができる。
【0062】
[0078]
図2は、2日間にわたって24時間間隔での本発明のデバイスを通した対照(非熱露出)および加熱死滅胚の降下時間の比較を示す。対照胚は、以前の研究において報告されたものと同様のパターンを実証した一方で、加熱死滅胚は、劇的に異なる降下パターンを示した。異なる降下パターンが膜の完全性における変化に起因する期待値(P<0.001)。
【0063】
[0079]
図3は、5日間にわたる対照(非熱露出)胚の、本発明のデバイス内の降下時間を示す。降下時間における変化は、胚が経時的に成長し続けるにつれ、胚細胞数の増大による影響を受けるように見えることに留意されたい(時点0時間-1細胞段階、96時間-胚盤胞)。異なる文字を有するバーは測定時間間の差を示す(P<0.02)。
【0064】
[0080]
図4は、変更された比重チャンバとしての役割を果たす、本発明のデバイスを通して「降下した」27のドナー動物からの207の1細胞胚の降下時間の比較を示す。降下時間は10~140秒の範囲をとったが、集団平均の+20秒で70%を超える胚がクラスタ化された。更に、個々の胚のデータは、より高速な降下時間に向けた傾斜を示唆し、これは部分的に、母体組成の影響に起因する。
【0065】
[0081]
図5は、算術平均の両側に形成された2つのクラスタを実証する160の胚からのデータを示す。確立された比は、雌子孫と雄子孫との出生に見られる約49%対51%または同じ比率である。
【0066】
[0082]
図6は、例示的な実施形態による胚の性別を判定する例示的な方法の流れ図を示す。方法600は、本発明内において方法600を実行するための複数の手段が存在するため、例として提供される。本明細書および図において説明される実施形態は、方法600を実行することができ、方法600の示される順序は、
図6に提示されているのと異なる順序で実行されることが可能である。
【0067】
[0083]降下ステップ601は、管腔を備えるドロップチャンバ内に少なくとも1つの胚を配置することによって実行される。管腔内で、生体適合性培地が利用される。胚は培地内を降下することが可能である。評価ステップ602は、ドロップチャンバの管腔を通した少なくとも1つの胚の降下を測定することができる。そのような評価ステップ602は、カメラ、レーザ、光検出センサ、光ファイバセンサ、パイロメータ、赤外線センサ、電気光学センサ、全通ビームセンサ、無線周波数センサ、超音波センサ、拡大デバイス、およびそれらの組合せ等の自動化された評価および分類ができるセンサに対する視覚評価を含むことができる様々な検知技法によって実行されることが可能である。センサを用いるとき、降下時間に関するセンサデータを捕捉するために捕捉ステップ603が実行される。そのようなデータは、処理ステップ604を実行して胚データセットを作成することができるプロセッサに提供される。このデータセットは、限定ではないが、胚直径、胚細胞カウント、向き等を含む他の胚特性を更に含むことができる。処理ステップ604に続いて、少なくとも1つの胚の重量を検出するために、処理された胚データセットに対する比重検出を提供するための検出ステップ605が実行される。次に、少なくとも1つの胚を分析して、胚データセットに基づいて少なくとも1つの胚の比較データセットを提供するための分析ステップ606が実行される。少なくとも1つの胚の分析に基づいて、少なくとも1つの胚を雄または雌として分類するための分類ステップ607が実行される。次に、この分類ステップ607は、分析されたデータセットに基づいて雄胚または雌胚として提示することができる。少なくとも1つの胚の評価に続いて、回収ステップ608を介して胚を回収プールから回収することができる。回収ステップ608は、格納に続いて未来の日付に行われてもよい。次に、回収された胚は、本発明の方法の非侵襲的性質に基づいて利用されることが可能である。別の実施形態において、少なくとも1つの胚は、格納および輸送のためにドロップチャンバの管腔内に保持することができる。格納は、従来の格納容器内での凍結保存を含むことができる。別の実施形態において、ドロップチャンバは、1つまたは複数の回収プールまたは容器と流体連通する。これらは更に、除去および所望のロケーションへの輸送のために封止および/または構成されることが可能である。処理されたセンサデータに関して、プロセッサは更に、少なくとも1つの胚を1つまたは複数の回収プール内に方向付け、これによりソート機能を提供するために1つまたは複数の弁または開閉組立体を作動させることができる場合がある。
【0068】
[0084]別の実施形態では、本発明のシステムは、発生能、生存率、凍結保存後の生存、トリソミーまたは異数性のような欠陥等の胚特性を判定することができる。これは、細胞カウントおよび直径等の追加の胚データを更に含む場合がある。これらのデータは更に、精度を更に高めるか、または比較データ/しきい値を確立するために、センサデータと組み合わせることができる。
【0069】
[0085]
図7は、少なくとも1つのプロセッサ106、少なくとも1つのメモリ708および少なくとも1つのストレージデバイス708を含むことができるデバイス702を示す。いくつかの実施形態によれば、デバイス702は、任意の形態のコンピューティングデバイス、例えばスマートフォン、タブレット、ラップトップおよびデスクトップコンピューティングデバイスを表すことができる。
【0070】
[0086]いくつかの実施形態によれば、プロセッサ706は、デバイス702が様々な技法を実施して、ドロップチャンバの管腔を通した少なくとも1つの胚の降下時間を測定することによって胚の性別を検出することを可能にするために、メモリ708およびストレージデバイス708と協働するように構成することができる。いくつかの実施形態によれば、ストレージデバイス708は、デバイス702にアクセス可能なストレージデバイス、例えば、ハードドライブ、ソリッドステートドライブ(SSD)、マスストレージデバイスおよびリモートストレージデバイスを表すことができる。
【0071】
[0087]いくつかの実施形態では、ストレージデバイス708は、デバイス702の内部のストレージデバイスである。ストレージデバイス708は、デバイス702に搭載されたオペレーティングシステム(OS)ファイルシステムボリュームを記憶するように構成することができ、ここで、OSファイルシステムボリュームは、デバイス702と互換性のあるOS710を含む。特に、デバイス702がスマートフォンである場合のOS710の例は、Google Android(登録商標)、Research in MotionのBlackBerry OS、MicrosoftのWindows Phone(登録商標)OSおよびAppleのiOS(登録商標)を含む。
【0072】
[0088]更に
図7を参照すると、OS710は、デバイス702上で実行するための様々なプロセス、例えば、OSデーモン、ネイティブOSアプリケーション(例えば、アプリケーション716)、ネイティブOSアプリケーション、ユーザアプリケーション等を可能にする。例えば、アプリケーション716は写真アプリケーション、メールアプリケーション、カメラアプリケーション、および連絡アプリケーションとすることができる。加えて、OS710は、診断アプリケーション718をデバイス702上で実行することを可能にする。
【0073】
[0089]未加工の標本は、カメラアプリケーションまたは診断アプリケーション718等のデバイス702上で実行する1つまたは複数のアプリケーションによって捕捉することができる。例えば、未加工の標本は、OS710にネイティブの、またはアプリケーションストアから別個にインストールされたカメラアプリケーションを用いて捕捉することができる。1つの実施形態において、未加工の標本は、カメラアプリケーションによって捕捉され、診断アプリケーション718に送信される。他の実施形態において、診断アプリケーション718は、表示のために、少なくとも1つの胚の観測された特性、およびセンサ701によって観測されるその胚の降下および/または重量特性を表示することができるグラフィカルユーザインタフェースをレンダリングするように構成される。センサ701は、カメラ、レーザ、光検出センサ、光ファイバセンサ、パイロメータ、赤外線センサ、電気光学センサ、全通ビームセンサ、無線周波数センサ、超音波等とすることができる。
【0074】
[0090]
図8は、いくつかの実施形態による、本明細書に記載の様々な技法を実施するのに用いられる
図1のデバイスを表すことができるコンピューティングデバイス800の詳細な図を示す。
図8に示すように、コンピューティングデバイス800は、コンピューティングデバイス800の全体動作を制御するためのマイクロプロセッサまたはコントローラを表すプロセッサ802を含むことができる。コンピューティングデバイス800は、コンピューティングデバイス800のユーザがコンピューティングデバイス800と対話することを可能にするユーザ入力デバイス808も含むことができる。例えば、ユーザ入力デバイス808は、ボタン、キーパッド、ダイアル、タッチスクリーン、オーディオ入力インタフェース、視覚/画像捕捉入力インタフェース、センサデータの形態の入力等の様々な形態をとることができる。例示的な実施形態において、ユーザ入力デバイス808は、ドロップチャンバの管腔を通じた少なくとも1つの胚の降下を観測することができる光学センサまたはレーザセンサとすることができる。また更に、コンピューティングデバイス800は、プロセッサ802によって(例えば、グラフィックスコンポーネントを介して)ユーザに情報を表示する(例えば、未加工のまたは処理された標本を表示する)ように制御することができるディスプレイ810を含むことができる。データバス816は、少なくとも、ストレージデバイス840、プロセッサ802およびコントローラ813間のデータ転送を容易にすることができる。コントローラ813を用いて、機器制御バス814を通じて異なる機器とインタフェースし、この機器を制御することができる。コンピューティングデバイス800は、データリンク812に結合するネットワーク/バスインタフェース811も含むことができる。無線接続の場合、ネットワーク/バスインタフェース811は無線送受信機を含むことができる。
【0075】
[0091]上述したように、コンピューティングデバイス800は、単一のディスクまたはディスクの集合体(例えば、ハードドライブ)を備えることができるストレージデバイス840も含む。いくつかの実施形態では、ストレージデバイス840は、フラッシュメモリ、半導体(ソリッドステート)メモリ等を含むことができる。コンピューティングデバイス800は、ランダムアクセスメモリ(RAM)820およびリードオンリーメモリ(ROM)822も含むことができる。ROM822は、不揮発性の方式で実行されるプログラム、ユーティリティまたはプロセスを記憶することができる。RAM820は、揮発性のデータストレージを提供することができ、コンピューティングデバイス800上で実行されるアプリケーションの動作に関する命令を記憶する。
【0076】
[0092]当業者であれば、本発明の方法およびシステムは、多くの態様で実施してよく、そのため、前述の例示的な実施形態および例によって限定されないことを認識するであろう。更に、本開示においてフローチャートとして提示され、説明されている方法の実施形態は、技術のより完全な理解を提供すべく例として提供されている。開示されている方法は、本明細書に提示されている動作および論理フローに限定されない。様々な動作の順序が変更される代替的な実施形態、およびより大きな動作の一部として説明されるサブ動作が独立して実行される代替的な実施形態が考えられる。
【0077】
[0093]以下の例は、本発明の例示的な実施形態を提供する。本開示の目的として、様々な実施形態が説明されてきたが、このような実施形態は、本開示の教示をそれらの実施形態に限定するとみなさるべきではない。本開示において説明されているシステムおよびプロセスの範囲内に留まるような結果を取得すべく、様々な変更および修正を上記で説明された要素および動作に対し行ってもよい。
例1:システムのための比重チャンバの設計
[0094]最初の研究は、完全に培地を充填された0.5mLのストローを用いて行われた。ドロップチャンバとしての役割を果たす培地を充填されたストローは、開放端が上端にあり、胚がメニスカス配置され、解剖顕微鏡を通じて観測されながら、重力に応じて降下することができるように、地面に対し垂直に位置決めされた。比重技法は密度を測定すると認識されているが、物体の形状およびサイズが等しい場合、密度は重量の推定に非常に近い。したがって、設定された距離にわたる胚の降下時間を測定し、この降下時間を胚と類似のサイズおよび形状のビーズの降下時間と比較することによって、また、ビーズの既知の密度および直径を用いて、以下でより詳細に示すように、胚重量を推定することを可能にする数式が導出された。
【0078】
[0095]本発明のシステムは、胚が器官培養皿の中心ウェル内への降下を完了することを可能にする。皿の蓋は、ドロップチャンバの挿入のために蓋に開口を設けることによって、降下チャンバを収容するように変更され、使用中の降下チャンバ内の流体レベルを維持するための圧力シールも備える。胚を試験する前に、ビーズ対照を用いた以前の実験を用いて、確立された数式が検証された。100パーセントのビーズが下方の中心ウェル内で回収された。標準曲線が再確立されると、一連の1細胞胚(N=35)が、標準的なプロトコルを用いて以前に刺激された4体のマウス(CB6F1マウス:マサチューセッツ州バーリントン所在のCharles Rivers)から収集され、回収を試験するためにチャンバを通された。ほとんどの胚が自動的に下方の中心ウェル内に位置することがわかった。また、降下チャンバの壁に付着した僅かな胚をすすいで、中心ウェル内に入れることができ、システムを通して「降下した」100%の胚が回収されたこともわかった。胚は次に、培地内に配置され、最小の2つの分裂周期にわたって発達を継続するか否かが判断された。
【0079】
[0096]生細胞が、生命を維持するのに必要な化学的性質を確立するために、生細胞の半透膜に依存することは十分確立されている。膜の半透過特性が損なわれると、細胞成分の漏れを引き起こし、細胞内の化学的性質の変化を引き起こし、したがって、理論上、水が細胞を出入りする際に細胞重量の大きな変化を引き起こす。この手法を用いて、本発明のデバイスは、死滅後の胚の比重の変化に基づいて、生体胚および死滅胚間の差を検出することができる。この仮説を証明するために、一連の5体のマウス(N=79)から過刺激後に胚が収集された。各マウスからの胚は、2つの処置間で等分された。胚の第1の群(N=39)は、計量され、次に、48時間の期間にわたって、10%の血清およびハムF-10培地(カリフォルニア州サンタアナ所在のIrvine Scientific)を用いた標準培地内に配置された。第1の群の初期評価との一貫性を確保するために、胚の第2の群(N=39)も計量されたが、次に、これらの胚の培養皿を30分にわたって60℃のホットプレート上に配置することによって死滅された。加熱死滅の後、これらの胚は、対照と同じ培養条件下に配置された。全ての胚が、培地内で24時間後および48時間後に本発明のデバイスを用いて再計量され、対照は120時間後まで24時間ごとに計量された(
図2を参照)。
【0080】
[0097]上述したように、比重は重量ではなく密度の尺度であることが認識される。しかしながら、測定されている物体の形状およびサイズが一定に保たれる場合、密度により重量を推定することができる。最も拡張していない胚(受精卵から初期胞胚期)の一貫性のあるサイズおよび形状を与えられると、本発明のデバイスは、重量の推定をもたらすはずである。最初の研究は、チャンバ内に収集プールを含む本発明のデバイスが、胚の100%の回収を実証するのみでなく、回収された胚が2~4の分裂周期を通じて正常な速度で発達し続けたことも示す。更に、チャンバ培地は変化せず、対照ホウケイ酸ガラスビーズの降下時間の反復的測定(データは示されていない)は、以前のチャンバにおいて行われた測定と類似であったため、同じ曲線を胚重量の推定に用いることができる。以前の研究によって示唆されているように、胚の成長の予測、および初期胚重量と胚の発達との関係の正当性が証明された未来の調査において、浮力が有用な手段となり得ることがわかった。しかしながら、マウスの胚盤胞を用いた生存率研究を行う際、データポイントは、単に得られる測定を可視化するために、散布図に配置された。クラスタを観測すると、1つではなく2つの集中クラスタが存在することが観測された。更に、2つのクラスタは、各々、外れ値のクラスタではなく、データポイントの50%を含んだ。
図5を参照されたい。結果は、2つの等しい群となり、クラスタが雄および雌クラスタを表すことを示唆した。一般的知識から、一般的動物集団は、約50%の雄および50%の雌(典型的には、51%の雄および49%の雌)である。更に、X染色体がY染色体よりも大きく、重いことが十分確立されている。
【0081】
[0098]これを立証するために、本発明のシステムにおいて、600のウシの胚が試験され、胚の性別を判定するためにPCRが追加で用いられた。胞胚期における胚の降下時間を測定する際、胚が周囲細胞(栄養膜)の外形、この周囲細胞の内部の細胞の集合体(内部細胞塊/発達中の胎児とも呼ばれる胚結節)および中空の空の腔所(胞胚腔)を保有することが観測された。興味深いことに、降下した全ての胚が、降下中、内部細胞塊に先導されて降下した。この「頭部が先」の向きは、胚の最も重い部分が実際に最初に落下し、胞胚腔がその頂部でパラシュート降下したことを意味する。より大きく、より拡張した胚が生体適合性培地においてより多くの抗力および抵抗を有するため、システムは、少なくとも1つの胚を分析する際に胚の直径を計上する。この観測は、胚比重/浮力の測定が、胚降下速度を駆動する大きな塊に起因することを更に支持するものである。この予期しない観測は、全ての個々の胚が、そのような小さな有機体である場合であっても同じ向きで降下することを可能にする。したがって、X染色体重量は、Y染色体重量と比較して、胚降下時間において差をなすことができる。例えば、ウシは60の染色体を有し、X染色体またはY染色体が染色体数全体のうち1/60のみであることを意味する。更に、染色体は、タンパク質、脂質、水、塩、基質等と共に、細胞内の小さな成分にすぎない。総細胞組成におけるこの低率は、一見したところ、ドロップチャンバ内の測定降下時間において検出することができる胚浮力に影響を及ぼさず、侵襲的手段を用いない胚の性別/性の測定および分類を可能にする。雄胚を雌胚と判別する唯一の他の方法は、細胞生検および着床前診断を通じたものである。
【0082】
[0099]
図9は、胚性別予測に関する本発明の成功率に関するデータを示す。2つのシステムが、胚の降下時間の評価によって70%を超える成功をもたらすことができた。胚性別の検出の更なる精度は、本発明のシステムに、評価ステップ中にセンサによって取得することができる、胚細胞数または胚直径に関するデータを組み込ませることによって得られる。