(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】車両用ワイパの連結部材
(51)【国際特許分類】
B60S 1/40 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
B60S1/40 300F
B60S1/40 100B
(21)【出願番号】P 2021026164
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】591012200
【氏名又は名称】株式会社東海理機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高木 佳範
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02348118(GB,A)
【文献】仏国特許出願公開第02738201(FR,A1)
【文献】特開2004-074920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ワイパを構成するワイパブレードのレバーに形成された収容孔内に収容され、前記収容孔内の軸部を回動可能に支持するとともにワイパアームに対して前記レバーを回動可能に連結する樹脂製の連結部材であって、
互いに対向して延びる一対の側壁と、前記一対の側壁同士を連結するとともに前記ワイパアームの先端部に連結される連結部と、前記軸部を回動可能に支持する軸孔と、前記軸孔の周壁の一部を開放するスリットと、を備える本体部と、
前記ワイパアームを前記本体部に対して固定する固定部材と、を備え、
前記本体部は、前記軸孔よりも前記ワイパアームの延在方向の基端側の端部に前記軸孔の中心軸線に沿って延びる軸受け部を有しており、
前記固定部材は、前記軸受け部により回動可能に支持される回動軸と、前記回動軸から延びる一対の腕部と、前記一対の腕部の先端に連結される操作部と、前記操作部から突出するとともに、前記ワイパアームの先端部と弾性的に係合する係合部と、
前記回動軸、前記一対の腕部、及び前記操作部によって構成され、前記ワイパアームが挿通される挿通孔と、を有している、
車両用ワイパの連結部材。
【請求項2】
前記本体部は、前記軸孔よりも前記ワイパアームの延在方向の基端側とは反対側の端部に掛止軸部を有しており、
前記固定部材は、前記掛止軸部に掛け止めされる掛止部を有している、
請求項1に記載の車両用ワイパの連結部材。
【請求項3】
前記掛止軸部は、前記一対の側壁同士を連結している、
請求項2に記載の車両用ワイパの連結部材。
【請求項4】
前記係合部は、前記操作部の基端側から突出しており、
前記掛止部は、前記操作部の先端側から突出しており、
前記掛止部の先端部は、前記掛止軸部に掛け止めされるフック形状を有しており、
前記固定部材は、前記係合部と前記掛止部とを接続するとともに前記操作部との間に空間を形成する接続部を有している、
請求項2または請求項3に記載の車両用ワイパの連結部材。
【請求項5】
前記操作部は、前記係合部が突出する面とは反対側の面に形成された凹部を有している、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の車両用ワイパの連結部材。
【請求項6】
車両用ワイパを構成するワイパブレードのレバーに形成された収容孔内に収容され、前記収容孔内の軸部を回動可能に支持するとともにワイパアームに対して前記レバーを回動可能に連結する樹脂製の連結部材であって、
互いに対向して延びる一対の側壁と、前記一対の側壁同士を連結するとともに前記ワイパアームの先端部に連結される連結部と、前記軸部を回動可能に支持する軸孔と、前記軸孔の周壁の一部を開放するスリットと、を備える本体部と、
前記ワイパアームを前記本体部に対して固定する固定部材と、を備え、
前記本体部は、前記軸孔よりも前記ワイパアームの延在方向の基端側の端部に前記軸孔の中心軸線に沿って延びる軸受け部を有しており、
前記固定部材は、前記軸受け部により回動可能に支持される回動軸と、前記回動軸から延びる一対の腕部と、前記一対の腕部の先端に連結される操作部と、前記操作部から突出するとともに、前記ワイパアームの先端部と弾性的に係合する係合部と、を有しており、
前記操作部は、前記係合部が突出する面とは反対側の面に形成された凹部を有している、
車両用ワイパの連結部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ワイパの連結部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用ワイパが開示されている。この車両用ワイパは、ワイパアームと、ワイパアームの先端部に連結されるレバーを有するワイパブレードと、ワイパアームに対してレバーを回動可能に連結する樹脂製の連結部材としてのクリップとを備えている。
【0003】
レバーは、クリップが挿入される開口部と、開口部の両側壁間に掛け渡された軸とを備えている。
クリップは、一対の側壁と、両側壁を連結するとともに、ワイパアームの先端部が嵌め込まれる連結部と、ロック部材とを有している。クリップには、一対の側壁及び連結部を貫通する軸孔と、軸孔の周壁の一部を開放するスリットとが形成されている。
【0004】
クリップの延在方向における一方の端部には、一対の側壁の内面から互いに向かい合って突出する一対の回動軸が形成されている。一対の回動軸には、ロック部材が回動可能に連結されている。ロック部材は、ワイパアームの先端部と弾性的に係合する係合部を備えている。
【0005】
クリップは、開口部からレバーの内部に挿入される。レバーの軸がスリットを通じてクリップの軸孔に嵌め込まれることで、レバーに対してクリップが回動可能に支持される。そして、ワイパアームの先端部が連結部に嵌め込まれた状態で、ロック部材を回動させることによりワイパアームの先端部が係合部と連結部との間に挟み込まれるようにして支持される。これにより、クリップに対してワイパアームが固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、こうした車両用ワイパにおいては、クリップに対してワイパアームを固定する際、または、その解除を行う際に、ロック部材の係合部に対して大きな荷重が作用するために塑性変形しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための車両用ワイパの連結部材は、車両用ワイパを構成するワイパブレードのレバーに形成された収容孔内に収容され、前記収容孔内の軸部を回動可能に支持するとともにワイパアームに対して前記レバーを回動可能に連結する樹脂製の連結部材であって、互いに対向して延びる一対の側壁と、前記一対の側壁同士を連結するとともに前記ワイパアームの先端部に連結される連結部と、前記軸部を回動可能に支持する軸孔と、前記軸孔の周壁の一部を開放するスリットと、を備える本体部と、前記ワイパアームを前記本体部に対して固定する固定部材と、を備え、前記本体部は、前記軸孔よりも前記ワイパアームの延在方向の基端側の端部に前記軸孔の中心軸線に沿って延びる軸受け部を有しており、前記固定部材は、前記軸受け部により回動可能に支持される回動軸と、前記回動軸から延びる一対の腕部と、前記一対の腕部の先端に連結される操作部と、前記操作部から突出するとともに、前記ワイパアームの先端部と弾性的に係合する係合部と、を有している。
【0009】
ワイパアームを本体部に対して固定すべく、係合部が本体部に近づく方向に回動軸を中心に固定部材を回動させると、係合部がワイパアームの先端部に当接する。この状態から、固定部材を更に回動させると、係合部がワイパアームの先端部に対して弾性的に係合するとともに固定部材に対して応力が発生するようになる。ここで、上記構成によれば、回動軸と係合部とを連結する一対の腕部が弾性変形して伸びることによって上記応力が吸収されるようになる。したがって、係合部に作用する応力を低減することができ、係合部の塑性変形を抑制することができる。
【0010】
そして、固定部材を更に回動させると、連結部及びワイパアームの先端部がレバーの延在方向において回動軸と係合部とによって挟み込まれた状態となる。これにより、本体部に対してワイパアームが固定される。
【0011】
また、ワイパアームの固定を解除すべく、係合部が本体部から離れる方向に回動軸を中心に固定部材を回動させると、固定部材に応力が発生するようになる。ここで、上記構成によれば、一対の腕部が弾性変形して伸びることによって上記応力が吸収されるようになる。したがって、係合部に作用する応力を低減することができ、係合部の塑性変形を抑制することができる。
【0012】
上記車両用ワイパの連結部材において、前記本体部は、前記軸孔よりも前記ワイパアームの延在方向の基端側とは反対側の端部に掛止軸部を有しており、前記固定部材は、前記掛止軸部に掛け止めされる掛止部を有していることが好ましい。
【0013】
同構成によれば、固定部材がワイパアームの先端部を連結部に対して固定している状態において、掛止部を本体部の掛止軸部に掛け止めすることにより、本体部に対する固定部材の回動が規制されるようになる。したがって、固定部材によってワイパアームを本体部に対してより確実に固定することができる。
【0014】
上記車両用ワイパの連結部材において、前記掛止軸部は、前記一対の側壁同士を連結していることが好ましい。
同構成によれば、互いに対向する一対の側壁同士が掛止軸部によって連結される。そのため、側壁の剛性を高めることができ、側壁同士が互いに離間することを抑制できる。したがって、掛止軸部に対して掛止部を安定して掛け止めすることができる。
【0015】
上記車両用ワイパの連結部材において、前記係合部は、前記操作部の基端側から突出しており、前記掛止部は、前記操作部の先端側から突出しており、前記掛止部の先端部は、前記掛止軸部に掛け止めされるフック形状を有しており、前記固定部材は、前記係合部と前記掛止部とを接続するとともに前記操作部との間に空間を形成する接続部を有していることが好ましい。
【0016】
同構成によれば、ワイパアームの先端部に対して係合部が係合する際に、接続部は、上記空間に向かって弾性変形する。このとき、係合部に作用する応力が接続部の弾性変形によって吸収されるようになる。したがって、係合部に作用する応力を低減することができ、係合部の塑性変形を一層抑制することができる。
【0017】
掛止部と掛止軸部とは、固定部材が回動する際に互いに干渉する位置に設けられている。そのため、掛止軸部に掛止部を掛け止めする際には、いったん掛止部を弾性変形させることにより掛止軸部を逃がす必要がある。
【0018】
この点、上記構成によれば、接続部の上記弾性変形を利用して、掛止部を係合部に近づく方向に移動させることができ、掛止軸部を逃がすことができる。そして、固定部材の回動に伴って本体部に対してワイパアームが固定されると、弾性変形していた係合部、接続部、及び掛止部が復元することにより、掛止部のフック形状の先端部が掛止軸部に掛止されるようになる。したがって、固定部材の回動に伴って掛止部を掛止軸部に対して容易に掛け止めすることができる。
【0019】
上記車両用ワイパの連結部材において、前記操作部は、前記係合部が突出する面とは反対側の面に形成された凹部を有していることが好ましい。
同構成によれば、作業者は、本体部に対して固定部材を回動させて押し込む際に、操作部に形成された凹部の側面に手指を当てることができる。これにより、操作部に対して作業者の手指が滑りにくくなる。したがって、固定部材による固定作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、係合部の塑性変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】ワイパアームと、レバーと、連結部材とを示す斜視図。
【
図3】ワイパアームと、レバーと、連結部材とを分解して示す分解斜視図。
【
図5】連結部材の本体部が回動規制される様子を示す断面図。
【
図7】(a)~(c)は、連結部材の本体部に対して固定部材を回動させて固定する様子を順に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1~
図7を参照して、車両用ワイパの連結部材の一実施形態について説明する。なお、本実施形態では、右ハンドル車の前部に取り付けられてフロントガラスの払拭面に付着した雨水等を払拭する車両用ワイパの連結部材として本発明を具体化している。
【0023】
<車両用ワイパの基本構成>
図1に示すように、車両用ワイパは、ワイパアーム10と、ワイパブレード20と、連結部材30とを備えている。
【0024】
ワイパアーム10は、アームヘッド(図示略)と、アームヘッドの先端に連結されるリテーナ11と、リテーナ11の先端に固定されるアームピース12とを備えている。アームヘッドの基端は、モータにより回動されるピボット軸に固定されている(いずれも図示略)。
【0025】
図3に示すように、アームピース12の先端部には、先端が折り返されて形成された取付部13が設けられている。取付部13には、連結部材30によってワイパブレード20が連結される。
【0026】
<ワイパブレード20>
図1に示すように、ワイパブレード20は、樹脂製のレバー21と、ゴム製のブレードラバー(図示略)とを有している。
【0027】
レバー21は、ワイパアーム10の取付部13に連結される長尺状のメインレバー22と、カバー部材23と、ヨークレバー24とを有している。
なお、以降において、レバー21の延在方向(
図1の左右方向)を延在方向L、レバー21の幅方向(
図1の上下方向)を幅方向W、レバー21の高さ方向(
図1の紙面直交方向)を高さ方向Hとして説明する。
【0028】
延在方向Lにおけるメインレバー22の両側に対してそれぞれカバー部材23が連結されている。詳しくは、カバー部材23は、メインレバー22の両端に回動可能に連結されたヨークレバー24を介して連結されている。2つのカバー部材23は、それぞれメインレバー22の両端に対して外面が連なるように延在方向Lに沿って延びている。
【0029】
メインレバー22及び2つのカバー部材23は、ヨークレバー24を外方から覆っている。2つのヨークレバー24と2つのカバー部材23とによって、払拭面に当接するブレードラバー(いずれも図示略)が保持されている。
【0030】
幅方向Wにおけるメインレバー22及び2つのカバー部材23の一側(
図1の下側)の側面22a,23aは、高さ方向Hの一側(
図1の紙面奥側)に近づくほど幅方向Wの一側(
図1の下側)に位置するように傾斜したフィン面である。側面22a,23aが車両走行時の走行風を受けることにより、ブレードラバーが払拭面に押し付けられる(いずれも図示略)。
【0031】
レバー21は、延在方向Lにおけるレバー21の中央部において幅方向Wと高さ方向Hの双方に沿って延びる仮想平面V(
図1参照)に対して対称な形状を有している。
図2及び
図3に示すように、延在方向Lにおけるメインレバー22の中央部には、平面視矩形状の開口部25aと、開口部25aに連なる収容孔25とが形成されている。収容孔25には、開口部25aから挿入された連結部材30が収容される。収容孔25は、メインレバー22を高さ方向Hに貫通している。収容孔25は、互いに対向する一対の側壁部25bと、側壁部25b同士を連結する一対の連結壁部25cとによって構成されている。一対の側壁部25bは、延在方向Lに沿って延在している。一対の連結壁部25cは、幅方向Wに沿って延在している。開口部25aは、高さ方向Hにおける一対の側壁部25b及び一対の連結壁部25cの端縁のうち他側(
図3の上側)の端縁によって構成されている。
【0032】
図4に示すように、メインレバー22は、軸部26と、第1規制突部27と、第2規制突部28とを有している。
軸部26は、延在方向Lにおける収容孔25の中央部に設けられている。軸部26は、一対の側壁部25b同士の間に掛け渡されている。軸部26は、幅方向Wに沿って延びている。なお、本実施形態では、軸部26は、金属製であり、インサート成形によりメインレバー22と一体に成形されている。なお、軸部26を樹脂製とし、一対の側壁部25bと一体に成形することもできる。
【0033】
第1規制突部27は、延在方向Lにおける収容孔25の一側(
図4の右側)に設けられている。第1規制突部27は、一対の側壁部25bの内面から突出している。一対の第1規制突部27は、幅方向Wに沿う軸線(図示略)上に並んでいる。
【0034】
第2規制突部28は、延在方向Lにおける収容孔25の他側(
図4の左側)に設けられている。第2規制突部28は、一対の側壁部25bの内面から突出している。一対の第2規制突部28は、幅方向Wに沿う軸線(図示略)上に並んでいる。
【0035】
図5に示すように、第1規制突部27と第2規制突部28とは、高さ方向Hにおいて軸部26に対して開口部25aとは反対側に設けられている。両規制突部27,28は、延在方向Lにおいて軸部26を挟んで設けられている。詳しくは、延在方向Lに直交するとともに軸部26の中心を含む仮想平面Vに対して対称な形状である。なお、ここでいう「対称」は厳密に対称の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね対称の場合も含まれる。
【0036】
<連結部材30>
図2及び
図3に示すように、連結部材30は、ワイパアーム10の取付部13に連結される本体部31と、本体部31に対してワイパアーム10を固定する固定部材40とを有している。
【0037】
本体部31は、互いに対向する一対の側壁32と、一対の側壁32同士を連結する連結部33と、軸孔34と、スリット34aとを有している。
一対の側壁32は、延在方向Lに沿って延びている。幅方向Wにおける一対の側壁32同士の間の長さは、幅方向Wにおける取付部13の長さよりもわずかに大きい。
【0038】
連結部33は、延在方向Lにおける一対の側壁32の中央部から他側(
図3の左側)の端部までの部分を連結している。
図5及び
図7に示すように、延在方向Lにおける連結部33の一側(
図7の右側)の端部は、ワイパアーム10の取付部13の内面形状に沿った円弧形状を有している。同端部が取付部13に嵌まり込むことにより連結部33がワイパアーム10の取付部13に連結される。
【0039】
軸孔34は、延在方向Lにおける本体部31の中央部に設けられている。軸孔34は、一対の側壁32と連結部33とを幅方向Wに貫通している。
スリット34aは、軸孔34の周壁の一部を高さ方向Hの一側(
図5の下側)に開放している。
【0040】
スリット34aを通じて、メインレバー22の軸部26が軸孔34に嵌め込まれることでメインレバー22に対して本体部31が回動可能に支持される。
本体部31は、軸孔34よりもワイパアーム10の延在方向の基端側の端部に、軸受け部35と、スリット35aとを有している。すなわち、軸受け部35及びスリット35aは、延在方向Lにおける連結部33の他側(
図5の左側)の端部に形成されている。軸受け部35は、連結部33を幅方向Wに貫通する孔である。スリット35aは、軸受け部35の周壁の一部を延在方向Lの他側(
図5の左側)に開放している。
【0041】
本体部31は、軸孔34よりもワイパアーム10の延在方向の基端側とは反対側の端部に掛止軸部36を有している。掛止軸部36は、延在方向Lにおける一対の側壁32の一側(
図3の右側)の端部を連結している。掛止軸部36は、幅方向Wに沿って延びている。
【0042】
本体部31は、第1当接部37と、第2当接部38とを有している。
第1当接部37は、延在方向Lにおける本体部31の一側(
図5の右側)に設けられている。第1当接部37は、高さ方向Hにおける一対の側壁32の一側(
図5の下側)の端部を切り欠いて設けられている。
【0043】
図5に示すように、第1当接部37は、第1規制突部27に対して当接することで、連結部材30が軸部26を中心として第1方向X(同図における時計回り方向)に回動することを規制するように構成されている。
【0044】
第2当接部38は、延在方向Lにおける本体部31の他側(
図5の左側)に設けられている。すなわち、第2当接部38は、延在方向Lにおいて軸孔34を挟んで第1当接部37とは反対側に設けられている。第2当接部38は、高さ方向Hにおける一対の側壁32の一側(
図5の下側)の端部を切り欠いて設けられている。
【0045】
図5に二点鎖線で示すように、第2当接部38は、第2規制突部28に対して当接することで、連結部材30が軸部26を中心として第1方向Xとは反対の第2方向Y(同図における反時計回り方向)に回動することを規制するように構成されている。
【0046】
<固定部材40>
図3、
図6、及び
図7に示すように、固定部材40は、回動軸41、一対の腕部42、操作部43、係合部44、掛止部45、及び接続部46を有している。
【0047】
回動軸41は、幅方向Wに沿って延在している。回動軸41は、スリット35aを通じて軸受け部35に嵌め込まれている。これにより、固定部材40は、本体部31に対して軸受け部35の軸線(図示略)を中心に回動可能に支持されている。
【0048】
回動軸41の両端には、一対の腕部42が連結されている。
一対の腕部42の先端には、平板状の操作部43が連結されている。高さ方向Hにおける操作部43の他側(
図3の上側)の面には凹部43aが設けられている。延在方向Lにおける凹部43aの他側(
図3の左側)の端部は、円弧形状を有している。
【0049】
回動軸41、一対の腕部42、及び操作部43によってワイパアーム10の取付部13が挿通される挿通孔47が構成されている。
係合部44は、操作部43の基端側から突出している。係合部44は、操作部43において凹部43aが形成された面とは反対側の面から突出している。係合部44は、取付部13の外面に沿う湾曲した係合面44aを有している。係合部44は、ワイパアーム10の取付部13の外面に対して弾性的に係合する。
【0050】
掛止部45は、操作部43の先端側から突出している。掛止部45は、操作部43において係合部44が突出する面と同一の面から突出している。掛止部45の先端部は、本体部31の掛止軸部36に掛け止めされるフック形状を有している。
【0051】
接続部46は、板状であり、係合部44と掛止部45とを接続している。接続部46は、操作部43との間に空間Sを形成している。接続部46は、延在方向Lにおける一側(
図6の右側)に向かうほど、操作部43に近づくように傾斜している。詳しくは、接続部46は、係合部44に接続される第1部分46aと、第1部分46a及び掛止部45に接続される第2部分46bとを有している。操作部43に対する第1部分46aの傾斜角度は、操作部43に対する第2部分46bの傾斜角度よりも大きい。
【0052】
本実施形態の作用について説明する。
図7(a)~(c)に示すように、ワイパアーム10を本体部31に対して固定すべく、係合部44が本体部31に近づく方向に回動軸41を中心に固定部材40を回動させると、係合部44がワイパアーム10の取付部13に当接する。この状態から、固定部材40を更に回動させると、係合部44がワイパアーム10の取付部13に対して弾性的に係合するとともに固定部材40に対して応力が発生するようになる。ここで、上記構成によれば、回動軸41と係合部44とを連結する一対の腕部42が弾性変形して伸びることによって上記応力が吸収されるようになる。
【0053】
そして、固定部材40を更に回動させると、連結部33及びワイパアーム10の取付部13がレバー21の延在方向Lにおいて回動軸41と係合部44とによって挟み込まれた状態となる。これにより、本体部31に対してワイパアーム10が固定される。
【0054】
また、ワイパアーム10の固定を解除すべく、係合部44が本体部31から離れる方向に回動軸41を中心に固定部材40を回動させると、固定部材40に応力が発生するようになる。ここで、上記構成によれば、一対の腕部42が弾性変形して伸びることによって上記応力が吸収されるようになる。
【0055】
本実施形態の効果について説明する。
(1)本体部31は、軸孔34よりもワイパアーム10の延在方向の基端側の端部に軸孔34の中心軸線に沿って延びる軸受け部35を有している。固定部材40は、軸受け部35により回動可能に支持される回動軸41と、回動軸41から延びる一対の腕部42と、一対の腕部42の先端に連結される操作部43と、操作部43から突出するとともに、ワイパアーム10の取付部13と弾性的に係合する係合部44とを有している。
【0056】
こうした構成によれば、上述した作用を奏する。したがって、係合部44に作用する応力を低減することができ、係合部44の塑性変形を抑制することができる。
(2)本体部31は、軸孔34よりもワイパアーム10の延在方向の基端側とは反対側の端部に掛止軸部36を有している。固定部材40は、掛止軸部36に掛け止めされる掛止部45を有している。
【0057】
こうした構成によれば、固定部材40がワイパアーム10の取付部13を連結部33に対して固定している状態において、掛止部45を本体部31の掛止軸部36に掛け止めすることにより、本体部31に対する固定部材40の回動が規制されるようになる。したがって、固定部材40によってワイパアーム10を本体部31に対してより確実に固定することができる。
【0058】
(3)掛止軸部36は、一対の側壁32同士を連結している。
こうした構成によれば、互いに対向する一対の側壁32同士が掛止軸部36によって連結される。そのため、側壁32の剛性を高めることができ、側壁32同士が互いに離間することを抑制できる。したがって、掛止軸部36に対して掛止部45を安定して掛け止めすることができる。
【0059】
(4)係合部44は、操作部43の基端側から突出している。掛止部45は、操作部43の先端側から突出している。掛止部45の先端部は、掛止軸部36に掛け止めされるフック形状を有している。固定部材40は、係合部44と掛止部45とを接続するとともに操作部43との間に空間Sを形成する接続部46を有している。
【0060】
こうした構成によれば、ワイパアーム10の取付部13に対して係合部44が係合する際に、接続部46は、上記空間Sに向かって弾性変形する。このとき、係合部44に作用する応力が接続部46の弾性変形によって吸収されるようになる。したがって、係合部44に作用する応力を低減することができ、係合部44の塑性変形を一層抑制することができる。
【0061】
掛止部45と掛止軸部36とは、固定部材40が回動する際に互いに干渉する位置に設けられている。そのため、掛止軸部36に掛止部45を掛け止めする際には、いったん掛止部45を弾性変形させることにより掛止軸部36を逃がす必要がある。
【0062】
この点、上記構成によれば、接続部46の上記弾性変形を利用して、掛止部45を係合部44に近づく方向に移動させることができ、掛止軸部36を逃がすことができる。そして、固定部材40の回動に伴って本体部31に対してワイパアーム10が固定されると、弾性変形していた係合部44、接続部46、及び掛止部45が復元することにより、掛止部45のフック形状の先端部が掛止軸部36に掛止されるようになる。したがって、固定部材40の回動に伴って掛止部45を掛止軸部36に対して容易に掛け止めすることができる。
【0063】
(5)操作部43は、係合部44が突出する面とは反対側の面に形成された凹部43aを有している。
こうした構成によれば、作業者は、本体部31に対して固定部材40を回動させて押し込む際に、操作部43に形成された凹部43aの側面に手指を当てることができる。これにより、操作部43に対して作業者の手指が滑りにくくなる。したがって、固定部材40による固定作業を容易に行うことができる。
【0064】
(6)一対の側壁32は、第1当接部37を有している。一対の側壁32は、延在方向Lにおいて軸孔34を挟んで第1当接部37とは反対側に設けられた第2当接部38を有している。一対の側壁部25bの内面には、第1当接部37に当接することで軸部26を中心とした連結部材30の第1方向Xへの回動を規制する第1規制突部27が設けられている。一対の側壁部25bの内面には、第2当接部38に当接することで軸部26を中心とした連結部材30の第1方向Xとは反対の第2方向Yへの回動を規制する第2規制突部28が設けられている。第1規制突部27と第2規制突部28とは、高さ方向Hにおいて軸部26に対して開口部25aとは反対側であり、且つ延在方向Lにおいて軸部26を挟んで設けられている。
【0065】
こうした構成によれば、第1規制突部27と第2規制突部28とが、高さ方向Hにおいて軸部26に対して開口部25aとは反対側に設けられている。これにより、メインレバー22の開口部25aに対して連結部材30を挿入して組み付ける際に、第1規制突部27及び第2規制突部28が連結部材30に干渉しにくくなる。また、第1当接部37の位置と第2当接部38の位置とを入れ替えるように連結部材30を反転させた姿勢であっても、メインレバー22の開口部25aに対して連結部材30を挿入して組み付けることができる。
【0066】
更に、上記のように連結部材30を反転させた姿勢においては、メインレバー22の軸部26を中心に連結部材30が第1方向Xへ回動すると、第2当接部38がメインレバー22の第1規制突部27に当接することにより、連結部材30の第1方向Xへの回動が規制される。また、メインレバー22の軸部26を中心に連結部材30が第2方向Yへ回動すると、本体部31の第1当接部37がレバーの第2規制突部28に当接することにより、連結部材の第2方向Yへの回動が規制される。したがって、右ハンドル車と左ハンドル車とでワイパブレード20及び連結部材30を共通化することが可能となる。
【0067】
(7)第1当接部37及び第2当接部38は、一対の側壁32の双方に設けられている。第1規制突部27及び第2規制突部28は、一対の側壁部25bの双方に設けられている。
【0068】
こうした構成によれば、メインレバー22の軸部26を中心とした連結部材30の回動をより確実に規制することができる。
また、各当接部37,38及び各規制突部27,28に作用する負荷を抑えることができる。
【0069】
(8)第1規制突部27と第2規制突部28とは、延在方向Lに直交するとともに軸部26の中心を含む仮想平面Vに対して対称な形状である。
こうした構成によれば、メインレバー22に対する連結部材30の組み付け姿勢によらず、メインレバー22の軸部26を中心とした連結部材30の回動の規制態様を同一にすることができる。
【0070】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・凹部43aは、本実施形態で例示したような形状に限定されず、例えば、延在方向Lにおける凹部43aの他側(
図3の左側)の端部が幅方向Wに沿って延びる直線状を有しているものであってもよい。
【0071】
・凹部43aは、省略してもよい。
・接続部46は、第1部分46a及び第2部分46bを有するものに限定されず、操作部43に向かって膨らむ湾曲板状にすることもできる。
【0072】
・接続部46は、省略することができる。
・掛止軸部36は、本実施形態で例示したように、一対の側壁32同士を連結するものに限定されず、一対の側壁32からそれぞれ突出するものであってもよい。また例えば、一対の側壁32のうち少なくとも一方の側壁32の内面から他方の側壁32に向かって突出するものであってもよい。
【0073】
・掛止部45は、省略してもよい。この場合、掛止軸部36を省略することができる。
・第1規制突部27及び第2規制突部28は、本実施形態で例示したように延在方向Lに直交するとともに軸部26の中心を含む仮想平面Vに対して対称な形状であるものに限定されない。規制突部27,28は、高さ方向Hにおいて軸部26に対して開口部25aとは反対側であり、且つ延在方向Lにおいて軸部26を挟んで設けられているものであれば、その範囲で配置を適宜変更してもよい。こうした構成を備える車両用ワイパによれば、上記(6)に記載の作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【0074】
・第1当接部37及び第2当接部38は、一対の側壁32の双方に設けられているものでなくてもよい。すなわち、第1当接部37は、一対の側壁32の少なくとも一方に設けられており、第2当接部38は、一対の側壁32の少なくとも他方に設けられているものであればよい。この場合、第1規制突部27は、第1当接部37と対応する位置にのみ設けるようにすればよい。第2規制突部28についても同様である。
【0075】
・本発明に係る連結部材は、レバー21の形状が仮想平面Vに対して対称なワイパブレード20を備える車両用ワイパに適用されるものに限定されず、レバー21の形状が仮想平面Vに対して非対称なワイパブレード20を備える車両用ワイパに対して適用されるものであってもよい。
【0076】
・本発明に係る連結部材が適用される車両用ワイパは、ワイパブレード20及び連結部材30を右ハンドル車と左ハンドル車とで共通化できるものに限定されない。すなわち、車両用ワイパは、本実施形態で例示したように軸部26を挟んで設けられた規制突部27,28と、軸孔34を挟んで設けられた当接部37,38とによって連結部材30の回動規制を行うものに限定されず、その規制態様は適宜変更してもよい。例えば、延在方向Lにおける軸部26及び軸孔34の両側のうち、一側のみに凹凸の関係により第1方向X及び第2方向Yの双方への連結部材30の回動を規制する規制構造を設けるようにしてもよい。この場合、規制突部27,28のうちいずれか一方を省略することができる。また、この場合、規制突部の配置は適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0077】
L…延在方向
W…幅方向
H…高さ方向
X…第1方向
Y…第2方向
V…仮想平面
S…空間
10…ワイパアーム
11…リテーナ
12…アームピース
13…取付部
20…ワイパブレード
21…レバー
22…メインレバー
22a…側面
23…カバー部材
23a…側面
24…ヨークレバー
25…収容孔
25a…開口部
25b…側壁部
25c…連結壁部
26…軸部
27…第1規制突部
28…第2規制突部
30…連結部材
31…本体部
32…側壁
33…連結部
34…軸孔
34a…スリット
35…軸受け部
35a…スリット
36…掛止軸部
37…第1当接部
38…第2当接部
40…固定部材
41…回動軸
42…腕部
43…操作部
43a…凹部
44…係合部
44a…係合面
45…掛止部
46…接続部
46a…第1部分
46b…第2部分
47…挿通孔