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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】波板状透水材
(51)【国際特許分類】
   E03F 1/00 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
E03F1/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021041131
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141015
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501064033
【氏名又は名称】昭和梱包資材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】森 保啓
【審査官】松本 要
(56)【参考文献】
【文献】特公昭63-053332(JP,B2)
【文献】特開2002-054396(JP,A)
【文献】特開2001-246682(JP,A)
【文献】特開2002-275876(JP,A)
【文献】特開2005-120683(JP,A)
【文献】特開昭50-154362(JP,A)
【文献】特開昭63-214315(JP,A)
【文献】特開2001-254331(JP,A)
【文献】特開2009-001969(JP,A)
【文献】特開2003-239408(JP,A)
【文献】特開平10-262472(JP,A)
【文献】特開平10-227027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-41/04
E02D 1/00-3/115
E02D 29/02-29/02
E02D 17/00-17/20
B32B 1/00-43/00
B09B 1/00-5/00
B09C 1/00-1/10
E03F 1/00-11/00
D04H 1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形機から押し出された直径1~3mmの合成樹脂製の複数本のモノフィラメントを、三次元方向へランダムに湾曲又は屈曲させて相互に絡ませ、内部に連続した空隙を有する状態とし、
絡み合ったモノフィラメント同士の接触部分を接着させて一体化し、
波板状に成形する波板状透水材の製造方法であって、
モノフィラメントの原料として、高密度ポリエチレンを60~80重量部、架橋高密度ポリエチレンを20~40重量部、防曇剤を4~10重量部配合することを特徴とする波板状透水材の製造方法。
【請求項2】
複数本の合成樹脂製のモノフィラメントが三次元方向へランダムに湾曲又は屈曲して絡み合い、内部に連続した空隙を有する状態で一体化され、波板状に成形された波板状透水材と、複数本の合成樹脂製のモノフィラメントが三次元方向へランダムに湾曲又は屈曲して絡み合い、内部に連続した空隙を有する状態で一体化され、平板状に成形された平板状透水材と、樋状ケースとによって構成される排水装置の製造方法であって、
複数枚の波板状透水材と、少なくとも一枚の平板状透水材とを上下に積み重ねて形成された透水材の積層体樋状ケース内に配置
平板状透水材、透水材の積層体の最上層に配置し、
モノフィラメントの原料として、高密度ポリエチレンを60~80重量部、架橋高密度ポリエチレンを20~40重量部、防曇剤を4~10重量部配合することを特徴とする排水装置の製造方法。
【請求項3】
複数本の合成樹脂製のモノフィラメントが三次元方向へランダムに湾曲又は屈曲して絡み合い、内部に連続した空隙を有する状態で一体化され、波板状に成形された波板状透水材と、複数本の合成樹脂製のモノフィラメントが三次元方向へランダムに湾曲又は屈曲して絡み合い、内部に連続した空隙を有する状態で一体化され、平板状に成形された平板状透水材と、防水シートとによって構成される排水装置の製造方法であって、
複数枚の波板状透水材と、少なくとも二枚の平板状透水材とを上下に積み重ねて形成された透水材の積層体の底面及び両側面防水シートによって覆
平板状透水材、透水材の積層体の最上層及び最下層にそれぞれ配置し、
モノフィラメントの原料として、高密度ポリエチレンを60~80重量部、架橋高密度ポリエチレンを20~40重量部、防曇剤を4~10重量部配合することを特徴とする排水装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降雨によって地中に浸透した水や、地中の湧水を外部へ排出するために地中に埋設される排水装置、或いは、傾斜地や法面等における排水に用いられる排水装置、及び、そのような排水装置の内部に、排水路となる空間を確保するために配置される透水材、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中の浸透水や湧水の外部への排出を目的として地中に埋設される排水装置においては、排水装置内への異物の侵入を防止して、排水路となる空間を確保するために、連続した空隙を多数有する透水材を排水装置内に配置することが行われている。
【0003】
排水装置内に装着される透水材には、様々なタイプのものがあり、例えば、複数本の合成樹脂製のモノフィラメントが三次元方向へランダムに湾曲又は屈曲して絡み合い、内部に連続した空隙を有する状態で一体化されたもの等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-275876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数本のモノフィラメントをランダムに湾曲又は屈曲させて透水材を製造する場合において、厚さ寸法が10~30mm程度の板状或いはシート状に成形することは、それほど難しいことではないが、例えば、排水装置における排水路の断面(長手方向と直交する断面)の大きさに合わせて、横幅寸法及び高さ寸法がいずれも70~100mm程度の大きさの角棒状の透水材を、複数本のモノフィラメントを湾曲又は屈曲させることによって製造しようとする場合、上層部の重量によって下層部が圧縮されてしまう結果、下層部側の密度が必要以上に高くなってしまう等の理由から、モノフィラメントの使用量(即ち、合成樹脂原料の使用量)が増大し、製造コストも増大してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、使用するモノフィラメントの量、及び、製造コストを縮減することができる波板状透水材、及び、その製造方法、並びに、当該波板状透水材を使用した排水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る波板状透水材は、複数本の合成樹脂製のモノフィラメントが三次元方向へランダムに湾曲又は屈曲して絡み合い、内部に連続した空隙を有する状態で一体化され、波板状に成形されていることを特徴としている。尚、この波板状透水材は、長手方向に沿った垂直断面において波形模様が表出する波板状に成形されていることが好ましく、また、モノフィラメントの表面に高さが0.1~0.5mmの凹凸が多数形成され、表面が全体的に粗面として構成されていることが好ましい。
【0008】
本発明に係る波板状透水材の製造方法は、押出成形機から押し出された直径1~3mmの合成樹脂製の複数本のモノフィラメントを、三次元方向へランダムに湾曲又は屈曲させて相互に絡ませ、内部に連続した空隙を有する状態とし、絡み合ったモノフィラメント同士の接触部分を接着させて一体化し、波板状に成形することを特徴としている。
【0009】
尚、モノフィラメントの原料としては、高密度ポリエチレン(粉末)、架橋高密度ポリエチレン(粉末)、及び、防曇剤(粉末)を使用することが好ましい。また、モノフィラメントの原料として、高密度ポリエチレンを60~80重量部、架橋高密度ポリエチレンを20~40重量部、防曇剤を4~10重量部配合することが好ましい。更に、モノフィラメントの表面に、高さが0.1~0.5mmの凹凸を形成することが好ましい。
【0010】
本発明に係る排水装置は、複数本の合成樹脂製のモノフィラメントが三次元方向へランダムに湾曲又は屈曲して絡み合い、内部に連続した空隙を有する状態で一体化され、波板状に成形された波板状透水材と、複数本の合成樹脂製のモノフィラメントが三次元方向へランダムに湾曲又は屈曲して絡み合い、内部に連続した空隙を有する状態で一体化され、平板状に成形された平板状透水材と、樋状ケースとによって構成され、複数枚の波板状透水材と、少なくとも一枚の平板状透水材とを上下に積み重ねて形成された透水材の積層体が樋状ケース内に配置され、平板状透水材が、透水材の積層体の最上層に配置されていることを特徴としている。
【0011】
尚、この排水装置においては、異物の侵入を防止するための透水性を有するメッシュ状シートを、波板状透水材よりも上層に配置することが好ましい。
【0012】
尚、樋状ケースの代わりに、防水シートを使用することもでき、この場合、透水材の積層体の底面及び両側面が防水シートによって覆われ、平板状透水材が、透水材の積層体の最上層及び最下層に配置されるように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る波板状透水材は、極めて簡単な方法製造することができ、また、合成樹脂原料の使用量を節減し、製造コストを縮減することができる。また、本発明に係る波板状透水材の製造方法においては、成形されたモノフィラメントにおける保水性及び引っ張り強度の向上を期待することができる。更に、本発明に係る排水装置においては、樋状ケース内において、大きな空隙を多数形成することができ、樋状ケース内における水の流動抵抗を小さくすることができ、浸透水を速やかに排水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る波板状透水材1の部分的な外観を示す図であり、(1)は波板状透水材1の部分平面図、(2)は部分側面図である。
図2図2は、図1に示す波板状透水材1を構成する一本のモノフィラメント11の拡大図である。
図3図3は、図1に示す波板状透水材1の製造方法の説明図であり、押出成形機71及びベルトコンベア81等の斜視図である。
図4図4は、図3に示すダイ72の下面側の構造を示す図である。
図5図5は、ベルトコンベア81上に供給され、搬送されるモノフィラメント11の形状の例を示す図である。
図6図6は、図1に示す波板状透水材1の製造方法の説明図であり、押出成形機71及びベルトコンベア81等の側面図である。
図7図7は、図1に示す波板状透水材1の製造方法の説明図であり、波板加工装置91の側面図である。
図8図8は、本発明の第三実施形態に係る排水装置を構成する樋状ケース3の端部付近の斜視図である。
図9図9は、図8に示す樋状ケース3等の断面図(長手方向に沿った垂直断面を示す図)である。
図10図10は、図9に示す樋状ケース3及び透水材の積層体Sを地盤Gと表層Uの境界部に配置した状態を示す断面図である。
図11図11は、図8に示す樋状ケース3の固定具4の斜視図、及び、その使用方法の説明図である。
図12図12は、図8に示す樋状ケース3の横方向連結具5の斜視図、及び、その使用方法の説明図である。
図13図13は、図8に示す樋状ケース3の縦方向連結具6の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、「波板状透水材」として実施することができるほか、「波板状透水材の製造方法」としても実施することができる。更に、波板状透水材を使用した「排水装置」としても実施することができる。以下、添付図面に沿って、本発明の各実施形態について説明する。
【0016】
(第一実施形態: 波板状透水材)
図1は、本発明の第一実施形態に係る波板状透水材1の部分的な外観を示す図であり、(1)は波板状透水材1の部分平面図、(2)は部分側面図である。この波板状透水材1は、複数本の合成樹脂製のモノフィラメント11(直径2mm)が三次元方向(波板状透水材1の長手方向、横幅方向、及び、上下方向)へランダムに湾曲又は屈曲して絡み合い、内部に連続した空隙を多数有する状態で一体化されるとともに、波板状に成形されている。
【0017】
本実施形態の波板状透水材1は、厚さ寸法が10mm、横幅寸法が70mm、長さ寸法が900mmに設定されているが、用途等に応じて適宜寸法を変更することができる。また、モノフィラメント11の直径は、2mmに設定されているが、1~3mmの範囲内で適宜変更することができる。
【0018】
この波板状透水材1における波形形状は、長手方向へ波打つように成形されている。つまり、長手方向に沿った垂直断面において波形模様が表出する波板状に成形されている。尚、図1においては、波板状透水材1の中央部分(長手方向の中央部分)のみが表示されており、図1(2)に示す波形形状が左右の長手方向へ(図示しない左側端部及び右側端部まで)それぞれ連続するように構成されている。
【0019】
図2は、図1に示す波板状透水材1を構成する一本のモノフィラメント11の拡大図である。図示されているように、モノフィラメント11の表面には、高さが0.1~0.5mm程度の小さな凹凸が多数形成されており、表面全体が粗面として構成されている。
【0020】
この波板状透水材1は、土、砂、小石等の目詰まりを好適に回避することができ、また、使用する合成樹脂原料を節減できるという効果を期待することができる。特に、複数枚を積み重ねて使用することにより、より優れた効果を期待できる。
【0021】
(第二実施形態: 波板状透水材の製造方法)
図1に示す波板状透水材1は、次のような方法によって製造することができる。まず、合成樹脂原料を、図3に示す押出成形機71に供給し、押出成形を行って、直径2mm(或いは1~3mm)の線状の合成樹脂(モノフィラメント11)を、ダイ72から下方へ押し出す。ダイ72の下方にはベルトコンベア81が配置されており、ダイ72から押し出されたモノフィラメント11は、ベルトコンベア81上に供給される。尚、ベルトコンベア81上におけるモノフィラメント11の供給位置(ベルトコンベア81の基端側)には、成形品の横幅寸法(70mm)を規定するための一対の平行な側縁ガイド83(間隔寸法:70mm)が配置されている。これらの側縁ガイド83の間隔は、成形品の横幅寸法に応じて適宜変更が可能である。
【0022】
図4は、図3に示すダイ72の下面側の構造を示す図である。図示されているように、このダイ72は、先端側の第一ブロック72a、基端側の第三ブロック72c、及び、それらの中間の第二ブロック72bを有しており、各ブロックの下面には、下向きに開口する直径2mmの小孔73が多数(本実施形態においては合計20個)形成されている。より具体的には、先端側の第一ブロック72a、及び、基端側の第三ブロック72cには、それぞれ7個の小孔73が、横方向(下方に配置されたベルトコンベア81(図3参照)の横断方向)へ等間隔で整列し、中間の第二ブロック72bには、6個の小孔73が横方向へ等間隔で整列するように形成されている。尚、第二ブロック72bの各小孔73の形成位置は、第一ブロック72a及び第三ブロック72cの小孔73に対して半ピッチずれた位置に形成されている。
【0023】
仮に、ダイ72からモノフィラメント11を一本だけ押し出してベルトコンベア81上に供給する場合において、ベルトコンベア81の駆動速度(搬送速度)が、ダイ72からのモノフィラメント11の吐出速度と同一となるように設定した場合、図5(1)に示すようにモノフィラメント11は、ベルトコンベア81上において、概ね直線的な形状で搬送されることになるが、ベルトコンベア81の駆動速度が、モノフィラメント11の吐出速度よりも遅くなるように設定した場合、例えば図5(2)に示すように、モノフィラメント11は、ベルトコンベア81上において、長手方向及び横幅方向へランダムに湾曲又は屈曲するとともに、重なった部分においては上下方向へ湾曲又は屈曲した形状で搬送されることになる。
【0024】
従って、ベルトコンベア81の駆動速度を、モノフィラメント11の吐出速度よりも遅く設定し、図4に示す20個の小孔73からモノフィラメント11を同時に押し出してベルトコンベア81上に供給した場合、まず、ダイ72の基端側の第三ブロック72c(図3図4及び図6参照)から押し出された7本のモノフィラメント11のそれぞれが、図5(2)に示すように、長手方向、横幅方向、及び、上下方向へランダムに湾曲又は屈曲し、隣接するモノフィラメント11等と絡み合った状態で、ベルトコンベア81上を搬送されることになる(第一層)。
【0025】
次に、第一層の上に、それらと半ピッチずれた位置においてダイ72の第二ブロック72bから押し出された6本のモノフィラメント11が、第一層と同様の態様で、ランダムに湾曲又は屈曲し、隣接するモノフィラメント11、及び、第一層のモノフィラメント11等と絡み合った状態で、ベルトコンベア81上を搬送されることになり(第二層)、更に、第二層の上に、それらと半ピッチずれた位置においてダイ72の第一ブロック72aから押し出された7本のモノフィラメント11が、第一層及び第二層と同様の態様で、ランダムに湾曲又は屈曲し、隣接するモノフィラメント11、及び、第二層のモノフィラメント11等と絡み合った状態で、ベルトコンベア81上を搬送されることになる(第三層)。
【0026】
ベルトコンベア81の先端側の上方には、図6に示すように、上下方向へ適宜移動可能で、上方から押圧力を加えることができるプレス用ベルトローラ82が配置されており、ベルトコンベア81との間を通過する成形品の厚さ寸法を(例えば10mmに)揃えることができる。
【0027】
このようにして、20本のモノフィラメント11が三次元方向(長手方向、横幅方向、及び、上下方向)へランダムに湾曲又は屈曲して絡み合い、内部に連続した空隙を多数有し、横幅寸法が約70mm、厚さが約10mmの平板状の成形品(平板状透水材2)を製造する。
【0028】
尚、押出成形機71における成形温度(吐出直後の樹脂の温度)、樹脂の吐出圧(吐出速度)、ベルトコンベア81の上面からダイ72の下面までの高さ寸法、及び、ベルトコンベア81の駆動速度を調整することにより、ベルトコンベア81上における各モノフィラメント11の湾曲又は屈曲の態様(横幅方向への振れ幅、湾曲部分の曲率の平均値等)や、絡み具合を変化させることが可能である。
【0029】
次に、この平板状の成形品(平板状透水材2)を波板加工装置に供給して、波板状に成形する。波板加工装置としては、例えば図7に示すように、一対の無端ベルト装置92,93を上下に配置した装置であって、無端ベルト装置92,93の各ベルトの外周面に、相互に噛み合うような凸部94が等間隔で多数取り付けられ、各無端ベルト装置92,93が相反する方向へ(図7において、上段側の無端ベルト装置92は時計回り方向へ、下段側の無端ベルト装置93は反時計回り方向へ)回転移動するように構成された波板加工装置91を使用することができる。
【0030】
前工程で成形された平板状の成形品(平板状透水材2)を、図7の波板加工装置の入口側(図7において右側)から、無端ベルト装置92,93の間の領域へ供給すると、上段側の無端ベルト装置92の凸部94と、下段側の無端ベルト装置93の凸部94に挟まれて波板状に加工され、波板状透水材1が出口側(図7において左側)から排出される。
【0031】
尚、波板加工装置の上段側の無端ベルト装置92は、上下方向へ(図7に示す下限位置から、上方の上限位置まで)適宜移動可能なように構成されており、上下の無端ベルト装置92,93の間隔を調整することにより、成形される波板の振幅を変更することができ、また、上段側の無端ベルト装置92の下方側を周回する凸部94と、下段側の無端ベルト装置93の上方側を周回する凸部94の間隔が、入口側から供給される平板状の成形品の厚さ寸法よりも大きくなる位置まで上段側の無端ベルト装置92を上昇させることにより、波板加工の工程をパスする(即ち、平板状透水材2を製造する)こともできる。
【0032】
波板加工装置から排出された波板状透水材1(又は、平板状透水材2)は、冷却水槽(図示せず)に搬送されて冷却される。そして、所定の長さ(例えば900mm)の位置で切断される。尚、押出成形直後に、内部及び表面が未硬化の状態のモノフィラメント11同士を接触させ、その状態で冷却すると、接触部分が互いに接着されることになる。従って、上述したような方法によって製造された波板状透水材1は、絡み合った多数のモノフィラメント11が多数の点で接着されて一体化することにより、全体として十分な剛性を有し、安定した形状を維持することができる。尚、波板加工装置への供給前、或いは、波板加工装置からの排出後に、平板状透水材2(又は波板状透水材1)を加熱する工程を実施することにより、絡み合ったモノフィラメント11同士の接触部分を、熱溶着によって更に確実に接着して一体化するようにしても良い。
【0033】
尚、本実施形態においては、モノフィラメントの主原料として、高密度ポリエチレンの粉末が用いられているが、この主原料に対し、副原料として、架橋高密度ポリエチレン、及び、防曇剤を、それぞれ(粉末の状態で)配合することもできる。また、上記主原料と上記副原料の配合は、高密度ポリエチレンを60~80重量部(好ましくは70重量部)、架橋高密度ポリエチレンを20~40重量部(好ましくは30重量部)、防曇剤を4~10重量部(好ましくは7重量部)とすることができる。
【0034】
架橋高密度ポリエチレンは、高密度ポリエチレンとは性状(流動性等)が異なるため、高密度ポリエチレン(主原料)に対し、架橋高密度ポリエチレン(副原料)を上記のような割合で配合して押出成形を行った場合、合成樹脂原料中の架橋高密度ポリエチレンは、分子が伸びた状態で押出成形機のダイから押し出されることになる。そして、ダイから押し出された合成樹脂(モノフィラメント)が空気に触れると、温度差によって部分的な「縮み」が発生し、その結果、表面に高さ0.1~0.5mmの凹凸が多数形成され、表面が全体的に粗面として構成され、かつ、ランダムに捩れた状態となり、成形されたモノフィラメントにおける保水性及び引っ張り強度の向上を期待することができる。
【0035】
また、副原料として、防曇剤を4~10重量部配合した場合、透水材を構成するモノフィラメントの表面張力を小さくし、撥水性を弱くすることができる。このため、防曇剤を配合したモノフィラメントを用いて透水材を製造した場合、水との馴染みが良くなり、水捌け性能が向上するという効果を期待することができる。
【0036】
(第三実施形態: 排水装置)
本発明の第三実施形態に係る排水装置は、図1に示す波板状透水材1と、図6及び図7に示す平板状透水材2と、図8に示す樋状ケース3とによって構成される。波板状透水材1、及び、平板状透水材2は、複数本の合成樹脂製のモノフィラメント11が三次元方向へランダムに湾曲又は屈曲して絡み合い、内部に連続した空隙を有する状態でそれぞれ一体化されている。
【0037】
樋状ケース3は、図8に示すように、底部31と、左右一対の側壁32とによって樋状に形成されている。尚、側壁32の上縁には、内側へ向かって突出するフラップ34がそれぞれ形成されている。尚、樋状ケース3は、押し出し成形によって形成されており、長手方向と直交する断面が、端面(長手方向についての両端部の端面)と同一の形状となるように構成されている。
【0038】
本実施形態に係る排水装置においては、波板状透水材1と平板状透水材2とを上下に重ねて形成した透水材の積層体Sが、樋状ケース3の内側に配置される。より具体的には、図9に示すように、下層(樋状ケース3の底部31の上)に波板状透水材1を複数枚(本実施形態においては二枚)重ねて配置し、上層(波板状透水材1の上)に、平板状透水材2を複数枚(本実施形態においては二枚)重ねて配置することにより、透水材の積層体Sが構成されている。尚、砂利、砂、土などの異物の侵入を防止するために、透水性を有するメッシュ状シート35(不織布等)を、積層体Sの上層(波板状透水材1よりも上層)(例えば、複数枚の平板状透水材2の間)に配置することが好ましい。
【0039】
透水材の積層体Sの一部として、波板状透水材1を複数枚重ねて樋状ケース3内に配置した場合、図9に示すように、樋状ケース3内において、大きな空隙Vを多数形成することができる。従って、平板状透水材2のみを重ねて積層体Sを構成する場合よりも、合成樹脂原料の使用量を大幅に節減することができ、製造コストを縮減できる。また、樋状ケース3内における水の流動抵抗を小さくすることができ、浸透水を速やかに排水することができる。また、地中に配置する場合でも、問題なく土圧に耐えることができ、排水経路(連続した空間)を樋状ケース3内において永続的に確保することができる。
【0040】
尚、図9においては、二枚の波板状透水材1を重ねて下層に配置し、二枚の平板状透水材2を重ねて上層に配置することによって、透水材の積層体Sを構成しているが、波板状透水材1と平板状透水材2とを、交互に重ねるようにしてもよい。但し、地中に配置する場合には、砂利、砂、土などの異物の侵入を回避する等の観点から、最上層には平板状透水材2を配置することが好ましい。また、袋状に成形したメッシュ状シート35の中に平板状透水材2を挿入し、これを最上層に配置してもよい。
【0041】
図10は、図9に示す樋状ケース3及び透水材の積層体Sからなる排水装置を地盤Gと、砂土、砂利等からなる表層Uの境界部に配置した状態を示す断面図である。水が浸透しにくい地盤Gと、容易に浸透する表層Uとの境界部には、浸透水(雨水等)が溜まりやすく、法面等の傾斜地においては、土砂崩れを引き起こしてしまう危険があり、また、平地においては、軟弱化の原因となる。図10に示すように、この排水装置(樋状ケース3及び透水材の積層体S)を、地盤Gと表層Uとの境界部から排水設備(排水枡、下水道等)まで連続するように配置することにより、浸透水を速やかに排出することができ、上記のような問題を回避することができる。
【0042】
図11(1)は、図8に示す樋状ケース3の固定具4の斜視図であり、図9(2)は、その使用方法の説明図である。この固定具4の上端部には、樋状ケース3のフラップ34の外側を部分的に覆うように嵌着できる係止部41が形成されており、図11(2)に示すように、係止部41をフラップ34の外側に嵌着することにより、長手方向のいずれの位置においても、固定具4を樋状ケース3に対して好適に装着できるように構成されている。また、固定具4の下端の水平な脚部42には、貫通孔43が形成されており、この貫通孔43を介して固定ピン44を設置対象(例えば、地盤G、或いは、コンクリート躯体等)に打ち込むことにより、樋状ケース3(排水装置)を、地盤G等の表面に対してしっかりと固定することができる。
【0043】
図12(1)は、図8に示す樋状ケース3の横方向連結具5の斜視図であり、図12(2)は、その使用方法の説明図である。この横方向連結具5の上端部には、樋状ケース3のフラップ34の外側を部分的に覆うように嵌着できる係止部51、及び、水平な脚部52が、左右両側にそれぞれ形成されており、図12(2)に示すように、複数の樋状ケース3を横方向(長手方向と直交する方向)へ並列配置する際に、隣り合う二つの樋状ケース3の間に配置し、左右の係止部51を隣り合う樋状ケース3の各フラップ34に対して嵌着することにより、樋状ケース3の長手方向のいずれの位置においても、横方向連結具5を装着することができ、二つの樋状ケース3を横方向に連結することができ、排水装置の設置を平面二次元方向へ展開することができ、排水有効範囲を面方向へ拡張することができる。
【0044】
図13は、図8に示す樋状ケース3の縦方向連結具6の斜視図である。この縦方向連結具6は、底部61と、底部61上に立設された平行な二枚の側壁62(樋状ケース3を装着できる間隔を有する)とによって構成され、底部61の延長部61a(底部61の一部であって、側壁62よりも外側へ突出した部分)には、貫通孔63が形成されている。また、側壁62の上部には、樋状ケース3のフラップ34の外側を部分的に覆うように嵌着できる係止部64が形成されている。
【0045】
縦方向に連結しようとする二つの樋状ケース3の端部同士を、図13において破線で示す位置において突き合わせ、それら二つの樋状ケース3の接合部に図示しない合成樹脂製粘着テープ(例えば、50mm幅程度のブチルゴムテープ等)を貼り付けて連結し、当該接合部を下方側及び左右両側から覆うように、かつ、係止部64によってフラップ34の接合部を覆うように、縦方向連結具6を装着し、延長部61aの貫通孔63を介して固定ピン(図示せず)を設置対象物(地盤、コンクリート躯体等)に打ち込むことにより、縦方向連結具6、及び、樋状ケース3の接合部を、設置対象物の表面に対して固定することができる。
【0046】
(第四実施形態: 排水装置)
第三実施形態に係る排水装置においては、図9に示すように、波板状透水材1と平板状透水材2とを重ねて構成した透水材の積層体Sが、樋状ケース3の内側に配置されているが、樋状ケース3の代わりに防水シートを使用し、図10に示す透水材の積層体Sの底面及び両側面を防水シートによって覆うことにより、より簡易な構造の排水装置として構成することもできる。この場合、透水材の積層体Sの最下層、及び、最上層に、平板状透水材2をそれぞれ配置することが好ましい。
【符号の説明】
【0047】
1:波板状透水材、
11:モノフィラメント、
2:平板状透水材、
3:樋状ケース、
31:底部、
32:側壁、
34:フラップ、
35:メッシュ状シート、
4:固定具、
41:係止部、
42:脚部、
43:貫通孔、
44:固定ピン、
5:横方向連結具、
51:係止部、
52:脚部、
6:縦方向連結具、
61:底部、
61a:延長部、
62:側壁、
63:貫通孔、
64:係止部、
71:押出成形機、
72:ダイ、
72a:第一ブロック、
72b:第二ブロック、
72c:第三ブロック、
73:小孔、
81:ベルトコンベア、
82:プレス用ベルトローラ、
83:側縁ガイド、
91:波板加工装置、
92,93:無端ベルト装置、
94:凸部、
G:地盤、
S:透水材の積層体、
U:表層、
V:空隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13