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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】BNCT治療システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
A61N5/10 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022505911
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007331
(87)【国際公開番号】W WO2021182127
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】62/989,142
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515332207
【氏名又は名称】株式会社J-BEAM
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】古久保 雄二
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-47132(JP,A)
【文献】特開2017-80161(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0255353(US,A1)
【文献】特開2019-216872(JP,A)
【文献】特表2016-521141(JP,A)
【文献】特表2012-521792(JP,A)
【文献】B-NET(Boron-Neutron Emission Tomography)診断装置の実用化開発,2018年度版「地域復興実用化開発等促進事業」の事例集,日本,福島県庁 産業創出課,2019年07月10日,[検索日 2021.03.30],インターネット:<URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/337529.pdf> 103ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子を照射する複数の中性子照射装置を用いて中性子補足療法を行うBNCT治療システムであって、
前記中性子照射装置による中性子照射を制御する中性子照射制御部と、
治療対象者の診断データに基づいて、前記中性子照射制御部による前記中性子照射装置の中性子照射制御態様を策定する中性子照射制御策定部と、
を備え、
前記治療対象者の診断データは、治療対象者にバイオマーカーを投与した場合の吸収線量の全身分布データを含み、
前記中性子照射制御策定部は、
前記治療対象者のバイオマーカー投与時の吸収線量の全身分布データを取得し、
前記治療対象者の全身分布データに基づいて、吸収線量の多い部分を中性子照射範囲として決定し、
前記中性子照射範囲における腫瘍部を特定し、
特定した腫瘍部のサイズ情報に基づいて、同様の腫瘍部のサイズ情報を有する場合に実行された前記複数の中性子照射装置の中性子照射制御態様を取得するプロセスを経て、
前記中性子照射制御部による前記複数の中性子照射装置の中性子照射制御態様を策定することを特徴とするBNCT治療システム。
【請求項2】
請求項1に記載のBNCT治療システムにおいて、
前記中性子照射制御策定部により策定された中性子照射制御態様に基づいて前記中性子照射装置を制御した場合に得られる治療線量分布を算出し、算出した治療線量分布に基づいて前記策定された中性子照射制御態様を検証する検証装置を備えることを特徴とするBNCT治療システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のBNCT治療システムにおいて、
前記中性子照射装置を監視する監視装置を備えることを特徴とするBNCT治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BNCT治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、加速器中性子源と、加速器中性子源が発生する中性子を減速させる減速体とを備え、患者にはホウ素薬剤が投与され、減速体が減速させた中性子が患者の患部へ照射されることによって患者の患部の吸収線量によって、薬剤治療効果比(CBE)が4以上となるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-216872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、薬剤治療効果比を高めるような構成としているが、中性子を患者のどの部分に照射するか等の中性子の照射態様は、医学物理士や医者等により決められており、精度が低かった。
【0006】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、治療対象者の診断データに基づいて、中性子の照射態様を策定することができるBNCT治療システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明のBNCT治療システムは、中性子を照射する複数の中性子照射装置を用いて中性子補足療法を行うBNCT治療システムであって、
前記中性子照射装置による中性子照射を制御する中性子照射制御部と、
治療対象者の診断データに基づいて、前記中性子照射制御部による前記中性子照射装置の中性子照射制御態様を策定する中性子照射制御策定部と、
を備え、
前記治療対象者の診断データは、治療対象者にバイオマーカーを投与した場合の吸収線量の全身分布データを含み、
前記中性子照射制御策定部は、
前記治療対象者のバイオマーカー投与時の吸収線量の全身分布データを取得し、
前記治療対象者の全身分布データに基づいて、吸収線量の多い部分を中性子照射範囲として決定し、
前記中性子照射範囲における腫瘍部を特定し、
特定した腫瘍部のサイズ情報に基づいて、同様の腫瘍部のサイズ情報を有する場合に実行された前記複数の中性子照射装置の中性子照射制御態様を取得するプロセスを経て、
前記中性子照射制御部による前記複数の中性子照射装置の中性子照射制御態様を策定することを特徴とする。
【0008】
本発明のBNCT治療システムによれば、治療対象者の診断データに基づいて、中性子照射制御部による中性子照射装置の中性子照射制御態様を策定することができる。これにより、医学物理士や医者等により中性子照射制御態様を決めるものに比べて、個人の技量によるバラツキがなく、安定した高精度の中性子照射制御態様を策定することができる。
【0009】
[2]前記中性子照射制御策定部により策定された中性子照射制御態様に基づいて前記中性子照射装置を制御した場合に得られる治療線量分布を算出し、算出した治療線量分布に基づいて前記策定された中性子照射制御態様を検証する検証装置を備えることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、実際に治療対象者に中性子照射を行う前に、策定された中性子照射制御態様を検証することができる。
【0011】
[3]前記中性子照射装置を監視する監視装置を備えることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、中性子照射装置が正しく動作しているかを監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】BNCT治療システムを示す概略図。
図2】第1~第6中性子照射装置を示す図。
図3】中性子照射装置とベースと移動台とを示す概略の側面図。
図4】バイオマーカー投与時の吸収線量の全身分布データ。
図5】患者の全身データを示す図。
図6】中性子照射範囲を入力した患者の全身データを示す図。
図7】照射シーケンスを示す図。
図8】中性子照射範囲におけるX-Y平面の線量分布を示す図。
図9】X-Y平面の線量分布を患者PAの輪郭情報に重畳して表示した図。
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
【0015】
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0016】
図1は、実施形態のBNCT治療システム2の一例を示す図である。以下では、一例として、ホウ素薬剤がBPAである場合について説明する。ここで、BPAは、10Bを含んだ化合物である。また、以下では、説明の便宜上、患者の患部のうち、がん細胞を含む部分を腫瘍部又は単に腫瘍と称し、がん細胞を含まない部分を正常組織と称して説明する。
【0017】
BNCT治療システム2は、中性子補足療法を行うものであり、中性子を照射する第1~第6中性子照射装置3A~3Fと、第1~第6中性子照射装置3A~3Fによる中性子照射を制御する制御装置4とを有するヘクサトロン3を備える。ヘクサトロン3(第1~第6中性子照射装置3A~3F)と、制御装置4とは、例えば、病院に配置されて使用される。
【0018】
また、BNCT治療システム2は、患者PA(治療対象者)の診断データに基づいて、治療計画(制御装置4による第1~第6中性子照射装置3A~3Fの中性子照射制御態様)を策定するHOP(HexaVision Oncology Panel)5と、各部を監視するHSP(HexaVision SCADA Panel)6と、システム全体を管理する管理部7とを備える。HOP5と、HSP6と、管理部7とは、例えば、ヘクサトロン3(第1~第6中性子照射装置3A~3F)を製造・販売する会社に設置されて使用される。各部は、例えば、Internal LANで接続されている。
【0019】
第1~第6中性子照射装置3A~3Fは、同じ構造の装置であり、第1中性子照射装置3Aを例に説明を行う。
【0020】
第1中性子照射装置3Aは、加速器中性子源11と、減速体12とを備える。減速体12の一例は、厚さ10[cm]~20[cm]のフッ化アルミニウム(AlF)を含んで構成される。
【0021】
加速器中性子源11は、中性子を発生させる。加速器中性子源11の一例は、静電加速器を含んで構成される。ここで、加速器中性子源11の中性子源強度は、例えば、4.0×1010~8.0×1010[neutrons/sec]程度である。
【0022】
減速体12は、加速器中性子源11が発生した中性子を、治療に最適なエネルギーまで減速させる。減速体12により減速された中性子は、患者PAの腫瘍に照射される。図3に示される例では、患者PAが、例えば腹部に腫瘍のある患者であり、中性子が、患者PAの腹部の皮膚表面の所定の領域から、患部PAの腫瘍へ照射される。
【0023】
BNCTにおいて、点滴などで患者PAに、中性子照射腫瘍部に溜まる特徴を持つ薬剤とホウ素とを化合したBPA(ホウ素薬剤)が投与されると、患者PAの腫瘍部が、投与されたBPAを取り込む。BPAを取り込んだ腫瘍部に中性子(熱中性子)が照射されると、腫瘍部内でホウ素と中性子との核反応で放射線(例えば、アルファ線、Liなど)が発生する。発生した放射線は、腫瘍部にダメージを与える。その結果、BNCTでは、腫瘍部が高い選択性で破壊される。
【0024】
第1~第6中性子照射装置3A~3Fから中性子線が患者PAの患部に照射された場合、中性子と当該患部に含まれる水素原子核、窒素原子核、BPAに含まれるホウ素原子核が核反応を起こし、核反応の結果生じた陽子線、炭素原子核線、アルファ線、リチウム原子核線などの高エネルギー粒子線が患部組織にエネルギーを付与する。また、この場合、当該患部には、 第1~第6中性子照射装置3A~3Fによる中性子線の照射に伴って生成されたガンマ線のうちの一部のガンマ線のエネルギーが吸収される。
【0025】
ヘクサトロン3(第1~第6中性子照射装置3A~3F)は、病院に設けられた照射室内に配置される。この照射室には、ベース16と、このベース16に水平方向に移動可能に取り付けられた移動台17と、この移動台17を移動させる移動部18とが設けられている。
【0026】
移動台17は、患者PAが乗せられ、第1~第6中性子照射装置3A~3Fで囲まれた部分を水平方向(図3における左右方向)に移動可能に設けられている。移動台17は、中性子線を通過可能に設けられている。移動部18は、制御装置4により駆動が制御される。
【0027】
HOP5は、患者PAの診断データに基づいて、治療計画(制御装置4による第1~第6中性子照射装置3A~3Fの中性子照射制御態様)を策定するものであり、メモリ(図示せず)に記憶された治療計画策定プログラムを読み込んで、治療計画を策定する。
【0028】
HSP6は、ヘクサトロン3(第1~第6中性子照射装置3A~3F)、制御装置4、HOP5等を監視する。
【0029】
管理部7は、ヘクサトロン3(第1~第6中性子照射装置3A~3F)、制御装置4、HOP5、HSP6に加えて、周知の放射線エリアモニタ、出入管理システム、冷却システム、ガス・真空システム等(いずれも図示せず)を監視する。また、管理部7には、HOP5により治療計画を策定する場合の用いる各種臨床データが保存されている。臨床データは随時アップデートされる。
【0030】
患者PAに対して治療を行う病院では、患者PAにバイオマーカー投与時の吸収線量の全身分布データ(Planar画像(DICOM))(図4参照)を取得する。また、病院では、患者PAのCT画像やMRI画像を取得する。そして、病院は、患者PAの診断データとして、患者PAのPlanar画像(DICOM)、CT画像、及びMRI画像を、HOP5に送信する。なお、CT画像及びMRI画像は、少なくとも一方を送信すればよい。
【0031】
図5に示すように、HOP5は、患者PAのPlanar画像(DICOM)に基づいて、患者PAの全身データを作成して表示部(図示せず)に表示し、この患者PAの全身データにおいて、頭頂部をゼロとしたZ軸を生成する。例えば、患者PAの身長が172cmである場合、頭頂部をZ=ゼロとすると、足裏部がZ=172cmとなる。
【0032】
HOP5は、バイオマーカー投与時のPlanar画像(DICOM)、CT画像、及びMRI画像に基づいて、治療計画としての中性子の照射シーケンスを作成する。
【0033】
中性子の照射シーケンスの作成として、図6に示すように、HOP5は、バイオマーカー投与時の吸収線量の全身分布を表すPlanar画像(DICOM)、CT画像、及びMRI画像に基づいて、中性子照射範囲(本実施形態では、Z=62cmを中心とした所定範囲)を決定する。例えば、バイオマーカー投与時のPlanar画像(DICOM)において、バイオマーカーの吸収線量が多い部分を、Z軸上における中性子照射範囲(Z=62cmを中心とした所定範囲)とする。なお、HOP5の管理者と患者PAの担当医とが相談して、バイオマーカー投与時のPlanar画像(DICOM)、CT画像、及びMRI画像に基づいて、中性子照射範囲を決定するようにしてもよい。
【0034】
ここで、患者PAに腫瘍部に溜まる特徴を持つ薬剤とホウ素とを化合したBPA(ホウ素薬剤)を投与した場合、腫瘍部のホウ素濃度が高くなる。バイオマーカーの吸収線量は、ホウ素濃度と比例することから、バイオマーカーの吸収線量が多い部分は、ホウ素濃度の高い腫瘍部となる。
【0035】
次に、HOP5は、バイオマーカー投与時のPlanar画像(DICOM)、CT画像、及びMRI画像に基づいて、中性子照射範囲(Z=62cmを中心とした所定範囲)における腫瘍部を特定する。そして、HOP5は、特定した腫瘍部の情報(サイズ等)に基づいて、管理部7に保存された各種臨床データを参照して、同様の腫瘍部の情報(サイズ等)を有する場合に実行された第1~第6中性子照射装置3A~3Fの中性子照射制御態様(図7参照)を取得する。
【0036】
図7に示す第1~第6中性子照射装置3A~3Fの中性子照射制御態様は、4回(4クール)中性子照射を行うもので、各クールにおける第1~第6中性子照射装置3A~3Fの照射時間を有する。なお、各クール間は、所定時間の時間を空けるようにされている。
【0037】
このように、HOP5は、治療計画としての中性子の照射シーケンスとして、患者PAのZ軸上における中性子照射範囲の中心(Z=62cm)と、第1~第6中性子照射装置3A~3Fの中性子照射制御態様を取得する。
【0038】
次に、HOP5は、上記のように策定した治療計画としての中性子の照射シーケンスの妥当性を確認する。
【0039】
先ず、HOP5は、バイオマーカー投与時の吸収線量の全身分布を表すPlanar画像(DICOM)に基づいて、中性子照射範囲(Z=62cmを中心とした所定範囲)において、照射シーケンスとしての第1~第6中性子照射装置3A~3Fの中性子照射制御態様で中性子照射を行った場合のX-Y平面の線量分布を生成する。
【0040】
ここでも、バイオマーカーの吸収線量が多い部分は、ホウ素濃度の高い腫瘍部となることを用いて、バイオマーカーの吸収線量が多い部分に中性子照射が行われた場合のX-Y平面の線量分布を生成する。
【0041】
図8に示すように、HOP5は、中性子照射範囲(Z=62cmを中心とした所定範囲)におけるX-Y平面の線量分布を表示部に表示し、このX-Y平面の線量分布において、治療線量が所定値(例えば、1GyE)未満の部分(バイオマーカーの吸収線量が少ない部分)を、例えば青色で表示し、治療線量が所定値(1GyE)以上の部分(バイオマーカーの吸収線量が多い腫瘍部)を、例えば赤色(図8では黒色の2個の丸)で表示する。
【0042】
図9に示すように、HOP5は、上記X-Y平面の線量分布を、患者PAの輪郭情報(3Dデータ)に重畳して表示する。HOP5は、バイオマーカー投与時のPlanar画像(DICOM)、CT画像、及びMRI画像に基づいて、患者PAの輪郭情報(3Dデータ)を生成する生成部を備える。
【0043】
HOP5の管理者や患者PAの担当医等は、中性子照射範囲(Z=62cmを中心とした所定範囲)におけるX-Y平面の線量分布、X-Y平面の線量分布を治療対象者の輪郭情報(3Dデータ)に重畳したデータを確認して、治療計画としての中性子の照射シーケンスの妥当性を確認する。
【0044】
例えば、腫瘍部ではない正常組織で、治療線量が所定値(1GyE)以上となっている場合には、妥当性がないと判断し、腫瘍部のみ、治療線量が所定値(1GyE)以上となっている場合には、妥当性があると判断する。なお、腫瘍部ではない正常組織で、治療線量が所定値(1GyE)以上となっている場合には、妥当性があると判断し、腫瘍部のみ、治療線量が所定値(1GyE)以上となっている場合には、妥当性がないと判断するようにしてもよい。
【0045】
治療計画としての中性子の照射シーケンスに妥当性があると判断された場合、HOP5は、照射シーケンスとして、患者PAのZ軸上における中性子照射範囲の中心(Z=62cm)と、第1~第6中性子照射装置3A~3Fの中性子照射制御態様とを、第1~第6中性子照射装置3A~3Fが設置された病院に送信する。また、照射シーケンスの各情報は、管理部7に保存される。
【0046】
また、照射シーケンスには、トータル線量(ホウ素線量+ガンマ線量+水素線量+その他線量)の情報、照射シーケンスの具体的な治療プロトコル(治療計画書)、第1~第6中性子照射装置3A~3Fの動作プログラム、移動台17の動作プログラム等が含まれる。
【0047】
病院に設置された制御装置4は、受信した照射シーケンスに基づいて、第1~第6中性子照射装置3A~3F、移動台17を動作させて、患者PAに中性子照射を行う。この際、照射シーケンスに含まれる第1~第6中性子照射装置3A~3Fの動作プログラム、移動台17の動作プログラムを読み込んで動作させることで、容易に照射シーケンスに沿った中性子照射を行うことができる。
【0048】
BNCTにおいて、点滴などで患者PAに、中性子照射腫瘍部に溜まる特徴を持つ薬剤とホウ素とを化合したBPA(ホウ素薬剤)が投与されると、患者PAの腫瘍部が、投与されたBPAを取り込む。BPAを取り込んだ腫瘍部に中性子(熱中性子)が照射されると、腫瘍部内でホウ素と中性子との核反応で放射線(例えば、アルファ線、Liなど)が発生する。発生した放射線は、腫瘍部にダメージを与える。その結果、BNCTでは、腫瘍部が高い選択性で破壊される。
【0049】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態では、BNCT治療システム2として、HSP6、管理部7を加えているが、これらは、システムに含まないようにしてもよい。
【0051】
上記実施形態では、中性子照射装置を6個設けているが、中性子照射装置は複数設けあれていればよく、2~5個、7個以上でもよい。
【符号の説明】
【0052】
2…BNCT治療システム、3A~3F…第1~第6中性子照射装置、4…制御装置、5…HOP(中性子照射制御策定部)(検証装置)、6…HSP(監視装置)、7…管理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9