(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】流れ分析装置および流れ分析法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20231017BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20231017BHJP
G01N 31/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
G01N1/00 101G
G01N35/10 K
G01N31/00 S
G01N31/00 T
(21)【出願番号】P 2022529369
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2022019298
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】504049626
【氏名又は名称】ビーエルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 頼博
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207816690(CN,U)
【文献】特許第6903366(JP,B1)
【文献】特開平10-048221(JP,A)
【文献】特許第6947463(JP,B1)
【文献】特開平06-292885(JP,A)
【文献】特表2004-515773(JP,A)
【文献】特開2000-055850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
G01N 35/10
G01N 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を管路に導入するための試料導入部と、
前記管路内を移送される試料に試薬を添加する試薬導入部と、
試薬添加後の試料について定量分析又は定性分析を行う分析部と、を含む流れ分析装置であって、
さらに、試薬が添加された試料に加熱処理を行う加熱部と、
加熱処理後の前記管路内を移送される試料を冷却する冷却部と、
冷却後の前記管路に存する気体を除去する気液分離部と、が備えられており、
前記加熱部は、ヒーターを備えた恒温槽であり、前記加熱部における加熱温度は、試料が50℃以上、140℃以下となるように、設定されており、
前記冷却部は、0.5m~3mの管を含み、当該管の中を試料が移送されるようになっており、
水銀を含む金属元素の濃度を測定するための装置であることを特徴とする流れ分析装置。
【請求項2】
前記管は、コイル部分を含む、請求項
1に記載の流れ分析装置。
【請求項3】
前記管は、前記コイル部分を含むとともに、直線状部分を含んでおり、前記直線状部分の下流に前記コイル部分が配置されている、請求項2に記載の流れ分析装置。
【請求項4】
さらに、マーカーを管路に導入するためのマーカー導入部と、
当該マーカーを検出して検出信号を前記分析部に出力するマーカー検出部と、を含み、
前記分析部は、前記検出信号に基づいて、分析データを取得するようになっている
、請求項1~3のいずれか1項に記載の流れ分析装置。
【請求項5】
前記マーカー導入部と、前記試料導入部とは、前記マーカーと、1以上の所定数の試料とが、交互に管路に導入可能となっている、請求項4に記載の流れ分析装置。
【請求項6】
水銀を含む金属元素の濃度を測定するための装置である、請求項4に記載の流れ分析装置。
【請求項7】
前記分析部は、誘導結合プラズマ質量分析装置、または誘導結合プラズマ発光分光分析装置である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の流れ分析装置。
【請求項8】
前記試薬は硝酸を含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の流れ分析装置。
【請求項9】
前記試薬は塩酸を含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の流れ分析装置。
【請求項10】
管路に導入される試料に対して気泡分節を行い、気泡によって区画された複数のセグメントを管路内に作製する気泡分節部が備えられている、請求項1~
3のいずれか1項に記載の流れ分析装置。
【請求項11】
試料を管路に導入するための試料導入工程と、
前記管路内を移送される試料に試薬を添加する試薬添加工程と、
試薬添加後の試料について定量分析又は定性分析を行う分析工程と、を含む流れ分析法であって、
さらに、試薬が添加された試料に加熱処理を行う加熱工程と、
加熱処理後の前記管路内を移送される試料を冷却する冷却工程と、
冷却後の前記管路に存する気体を除去する気液分離工程と、を含み、
前記加熱処理は、ヒーターを備えた恒温槽で行われ、前記加熱処理における加熱温度は、試料が50℃以上、140℃以下となるように、設定されており、
前記冷却工程において、加熱処理後の前記管路内を移送される試料は、0.5m~3mの管を含む冷却部の、当該管の中を試料が移送される間に冷却され、
水銀を含む金属元素の濃度を測定することを特徴とする流れ分析法。
【請求項12】
気液分離工程後には、気泡分節を行わない、請求項11に記載の流れ分析法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流れ分析装置および流れ分析法に関し、特に水銀を分析対象とする流れ分析装置および流れ分析法に関する。
【背景技術】
【0002】
水銀は強い毒性が確認されたことにより、近年は排出規制の対象となっている。2017年に発効した水俣条約では、水銀及び水銀化合物の人為的な排出から人の健康及び環境を保護することを目的として、鉱山からの水銀産出の禁止、水銀等の輸出入の規制が規定されている。EUでもRoSH指令で、水銀を使用すること、および持ち込むこと等を厳しく規制している。
【0003】
水銀は比較的安易に気化するため、その分析には、還元気化原子吸光法、還元気化原子蛍光法、燃焼気化-金アマルガム-原子吸光法などが使用されている。例えば、水道法に基づく水質検査の方法を定める平成15厚生労働省告示第261号では別表7に水銀は還元気化-原子吸光法により検査を行うことが定められている(非特許文献1参照)。また、昭和46年環境庁告示第59号水質汚濁に係る環境基準では付表2にも水銀を還元気化-原子吸光法により測定することが定められている(非特許文献2参照)。
【0004】
一方、試料中の金属元素を連続的に分析する方法として、管路内に連続的に試料を導入し、試料が流れる管路内に試薬を導入して反応をさせ、分析部で連続的に分析データを計測する流れ分析法が知られている(例えば、特許文献1、2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特許第6947463号
【文献】日本国特許第6903366号
【非特許文献】
【0006】
【文献】平成15厚生労働省告示第261号別表7
【文献】昭和46年環境庁告示第59号付表2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような従来の水銀の分析方法は、試料の前処理に非常に煩雑な手順が必要であった。
【0008】
本発明の一態様は、前記課題に鑑み開発されたものであり、煩雑な試料の前処理を行わずに、水銀を分析することができるとともに、従来法と同等の精度で水銀を含む試料を分析することが可能な流れ分析装置および流れ分析法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために、流れ分析法により、密閉系で試料の前処理から分析までを連続的に行うことにより、煩雑な前処理を行わずに水銀を分析することができるのではないかと考えた。
【0010】
しかし、本発明者らが、実際に流れ分析法により、管路内に、連続的に水銀を含む試料を導入し、導入した試料が流れる管路内に試薬を導入して加熱して反応をさせ、分析部で連続的に分析データを計測したところ、水銀を適切に分析することはできなかった。
【0011】
そこで、鋭意検討を行った結果、流れ分析法を用いて、試薬が添加された試料に加熱処理を行った後、冷却部を設けて、加熱処理後の前記管路内を移送される試料を冷却したところ、驚くべきことに、煩雑な前処理を行わずとも、試料中の水銀を従来法と同等の精度で、連続的に分析することができることを見出した。
【0012】
すなわち本発明の一実施形態に係る流れ分析装置は、試料を管路に導入するための試料導入部と、前記管路内を移送される試料に試薬を添加する試薬導入部と、試薬添加後の試料について定量分析又は定性分析を行う分析部と、を含む流れ分析装置であって、さらに、試薬が添加された試料に加熱処理を行う加熱部と、加熱処理後の前記管路内を移送される試料を冷却する冷却部と、冷却後の前記管路に存する気体を除去する気液分離部と、が備えられている。
【0013】
また、本発明の一実施形態に係る流れ分析法は、試料を管路に導入するための試料導入工程と、前記管路内を移送される試料に試薬を添加する試薬添加工程と、試薬添加後の試料について定量分析又は定性分析を行う分析工程と、を含む流れ分析法であって、さらに、試薬が添加された試料に加熱処理を行う加熱工程と、加熱処理後の前記管路内を移送される試料を冷却する冷却工程と、冷却後の前記管路に存する気体を除去する気液分離工程と、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、煩雑な前処理を行わずに、水銀を分析することができるとともに、従来法と同等の精度で水銀を含む試料を分析することが可能な流れ分析装置および流れ分析法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態1に係る流れ分析装置の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態2に係る流れ分析装置の概略構成を示す図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る流れ分析装置の部分構成を示す図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る流れ分析装置におけるマーカー検出部の構成を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る流れ分析装置において、気泡分節部により気泡によって区画された複数のセグメントが管路内に作製される様子を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る流れ分析装置において、加熱処理後の管路内の気泡を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る流れ分析装置において、気液分離部で管路に存する気体が除去される様子を模式的に示す図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る流れ分析装置の部分構成を示す図である。
【
図9】実施例において、作成した検量線を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る流れ分析装置における冷却部のコイル部分の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0017】
[1]流れ分析装置
本発明の一実施形態に係る流れ分析装置は、試料を管路に導入するための試料導入部と、前記管路内を移送される試料に試薬を添加する試薬導入部と、試薬添加後の試料について定量分析又は定性分析を行う分析部と、を含む流れ分析装置であって、さらに、試薬が添加された試料に加熱処理を行う加熱部と、加熱処理後の前記管路内を移送される試料を冷却する冷却部と、冷却後の前記管路に存する気体を除去する気液分離部と、が備えられている。
【0018】
前記流れ分析装置によれば、煩雑な前処理を行わずに、水銀を分析することができるとともに、従来法と同等の精度で水銀を含む試料を分析することができるという効果を奏する。さらには、流れ分析装置によれば、試料は外気に触れることなく管路内を移送されることから、水銀の揮発を防ぐことができるので、精度よく測定を行うことができる。
【0019】
[1.1]実施形態1
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る流れ分析装置の概略構成を示す。
【0020】
本発明の実施形態1に係る流れ分析装置は、試料を管路2に導入するための試料導入部1と、マーカーを管路2に導入するためのマーカー導入部8と、前記管路2に導入される試料及びマーカーに対して気泡分節を行い、気泡によって区画された複数のセグメントを前記管路2内に作製する気泡分節部10と、前記管路2内を移送される試料の流れの中に試薬を添加する試薬導入部3と、前記管路2内を移送される、前記試薬が添加された試料に加熱処理を行う加熱部5と、加熱処理後の試料を冷却する冷却部4と、冷却後の前記管路に存する気体を除去する気液分離部7と、前記気液分離部7にて気体が除去された試料について定量分析又は定性分析を行う分析を行う分析部4と、前記マーカーを検出して検出信号を分析部4に出力するマーカー検出部9と、を含み、分析部4は、前記検出信号に基づいて、分析データを取得するようになっている。
【0021】
(試料導入部)
試料導入部1は、試料を管路2に導入するための装置であり、例えば試料をサンプリングして管路2に導入する。本発明の一実施形態において、試料導入部1は、試料を管路2に導く採取管と、前記採取管に吸引力を付与するサンプリング用ポンプとを備えている。前記サンプリング用ポンプにより、試料が管路2内に所定の流量で導入される。
【0022】
(マーカー導入部)
マーカー導入部8は、マーカーを管路2に導入するための装置である。本発明の一実施形態において、マーカー導入部8は、マーカーを管路2に導く採取管と、前記採取管に吸引力を付与するポンプとを備えている。前記マーカーは、マーカー検出部9で検出可能な物質を含んでいればよく、当該物質であってもよいし、当該物質を含む溶液であってもよいし、当該物質を含む分散液であってもよい。
【0023】
ここで、前記マーカー導入部8と、前記試料導入部1とは、前記マーカーと、1以上の所定数の試料が、交互に管路2に導入可能となっている。すなわち、前記マーカー導入部8からの管路2へのマーカーの導入と、前記試料導入部1からの管路2への1以上の所定数の試料の導入とが交互に切り替えられるようになっている。この切り替えは、手動で行われてもよいし、自動で行われるようになっていてもよい。
【0024】
前記マーカーと、1つの試料が、交互に管路2に導入可能となっている場合は、1つの試料の前に毎回マーカーが管路2に導入される。そして、1つの試料ごとに、マーカーを検出したマーカー検出部9よりマーカーの検出信号が分析部4に出力され、前記検出信号に基づいて、分析部4は分析データを取得する。これにより、試料の導入から分析部4まで、安定して、均一の時間で送液ができない場合であっても、分析データ取得のタイミングがずれることがないため、安定して連続的に試料を測定することができる。
【0025】
また、前記マーカーと、2つ以上の所定数の試料が、交互に管路2に導入可能となっている場合は、2つ以上の所定数の試料の前に1回マーカーが管路2に導入される。そして、マーカーを検出したマーカー検出部9よりマーカーの検出信号が分析部4に出力され、前記検出信号に基づいて、分析部4は前記所定数の試料の分析データを順次取得する。これにより、試料の導入から分析部まで、安定して、均一の時間で送液ができない場合であっても、分析データ取得のタイミングのずれを一定の範囲に減少させることができるため、安定して連続的に試料を測定することができる。前記所定数の上限は、試料の種類、前処理の方法等により、適宜選択すればよいが、例えば80、70、50、20、15、または10であり得る。
【0026】
前記マーカー検出部9で検出可能なマーカーは特に限定されるものではないが、試料中に含まれない物質、および/または、分析の対象である物質以外の物質であることが好ましい。また、マーカーは管路2に導入されてからマーカー検出部9までの間に添加される試薬及び熱により分解されない物質であることが好ましい。例えば、前記マーカーは、分光光度計で検出可能な物質でありうる。かかる物質としても特に限定されるものではなく、例えば、ロジウム、パラジウム、ニッケル、銅、クロム、マンガン、ヨウ素、コバルト、硝酸イオン、リン酸イオン、及びケイ酸イオン等を挙げることができる。或いは、前記物質は、ボルタンメトリー計で検出可能な物質でありうる。かかる物質としても特に限定されるものではなく、例えば、銅、カドミウム、ニッケル、水銀、ヒ素、及びセレン等を挙げることができる。或いは、前記物質は、イオン電極計で検出可能な物質でありうる。かかる物質としても特に限定されるものではなく、例えば、カルシウム、カリウム、ふっ素、及びアンモニア等を挙げることができる。或いは、前記物質は、イオンクロマトグラフィーで検出可能な物質でありうる。かかる物質としても特に限定されるものではなく、例えば、無機酸及び有機酸のイオン、フェノール、ヒドラジン、アミノ酸、並びに多糖類等を挙げることができる。或いは、前記物質は、濁度計で検出可能な物質でありうる。かかる物質としても特に限定されるものではなく、例えば、ふっ酸以外の酸で溶解しない微粒子の物質であるシリカ等を挙げることができる。或いは、前記物質は、蛍光光度計で検出可能な物質でありうる。かかる物質としても特に限定されるものではなく、例えば、ベンゼン、クマリン、及びナフタリン等を挙げることができる。中でも、検出の容易さから、特に好ましいマーカーは、ロジウム、パラジウム、コバルト、ニッケル、及び銅等である。
【0027】
(気泡分節部)
気泡分節部10は、
図5に示すように、前記管路2に導入された試料及びマーカーに対して気泡分節を行い、気泡13によって区画された複数のセグメントを前記管路2内に作製するための装置である。本発明の一実施形態において、気泡分節部10は、気体を管路2に導く気体導入管10aと、前記気体導入管に吸引力を付与する気体導入用ポンプ(図示せず)とを備えている。気泡分節を行うことにより、気泡13で分断された分節液内での渦流により試薬等の混合を好適に行うことができる。また、分節液、すなわち、気泡13によって区画されたそれぞれのセグメントを形成する試料は、気泡13で分断され独立して管路2内を流れるため、試料間相互の拡散を防ぐことができる。気泡分節の気体は、空気であることが好ましいが、アルゴン及びヘリウム等の不活性ガスであってもよいし、窒素及び酸素等の様々な気体を用いることもできる。これらの気体は、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いることもできる。このように、試料が気泡によって分節された、管路内の連続的な流れの中に、試薬を導入し、反応操作を行った後、気泡を除去し、下流に設けた検出器で分析を行う方法は、連続流れ分析法(CFA)と呼ばれる。なお、本明細書において、下流とは、流れ分析の管路内の試料の流れにおける下流を意図する。
【0028】
(試薬導入部)
試薬導入部3は、前記管路2内を移送される試料の流れの中に試薬を添加するための装置である。試薬導入部3は、試薬を管路2に導く試薬導入管と、前記試薬導入管に吸引力を付与する試薬導入用ポンプとを備えている。前記試薬は、試料の前処理において添加される試薬であり得る。前記試薬としては、これに限定されるものではないが、例えば、硝酸、塩酸、硫酸、過塩素酸、リン酸、過酸化水素、及びふっ酸等の酸;L-システイン、金等の水銀の安定化剤;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、過酸化ナトリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸ナトリウム等のアルカリ等を挙げることができる。これらの試薬は単独で用いてもよいし、2種類以上を組合せて用いてもよい。2種類以上の試薬を用いる場合は、複数の試薬導入部3を設けてもよいし、或いは、そのうち少なくとも2種類の試薬を混合して導入できるのであれば、混合できる試薬を混合して1つの試薬導入部3から導入してもよい。前記試薬は、分析対象および分析方法等に応じて適宜選択すればよいが、精度よく水銀を分析するという観点から、硝酸、または硝酸と塩酸との組合せを含むことがより好ましい。また、分析方法として、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を用いる場合には、硝酸、または硝酸と塩酸との組合せを含むことが好ましい。
【0029】
(加熱部)
加熱部5は、前記管路2内を移送される試料に、加熱処理を行うための装置である。加熱部5は、ヒーターを備えた恒温槽でありうる。しかし、加熱部5の構成はこれに限定されるものではなく、超音波分解装置、マイクロウェーブ、及びオートクレーブ分解装置等であってもよい。また、加熱部5内で、前記管路2は、例えばコイルを形成していてもよい。本発明の一実施形態では、加熱部5は、試薬導入部3の下流に備えられる。試薬が添加された試料を、加熱することにより、試料の試薬との反応を促進させ、前処理を行うことができる。加熱部5では、例えば、試料の加熱分解、高温高圧分解を行うことができる。
【0030】
加熱部5における加熱温度は、例えば、試料が50℃以上、60℃以上、70℃以上、或いは80℃以上となるように設定すればよい。加熱温度の上限は140℃以下、130℃以下、或いは120℃以下であることが好ましい。また、試料の加熱時間は、導入された試料の一単位(一つの試料)につき、例えば5分以上、10分以上、或いは20分以上である。加熱時間の上限は、例えば80分以下であり、より好ましくは40分以下である。加熱部5における加熱温度および加熱時間を前述の範囲とすることにより、試料中の水銀化合物を含む化合物を十分に分解することができる。
【0031】
図6は、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置において、加熱処理後の管路内の気泡を模式的に示す図である。
図6に示すように、加熱処理により、気泡分節部10にて導入された気泡13は膨張する。また、試料と試薬の反応が気体発生を伴う場合があり、かかる場合には、加熱処理により、発生した気体も膨張する。当該反応により発生し膨張した気体は、分節液中に気泡14として分散するか、或いは気泡分節部10にて導入された気泡13と一体となる。このとき試料に含まれる水銀の少なくとも一部は、加熱処理により気化して、気泡13または気泡14の気相に移る。
【0032】
図1の例では、流れ分析装置は、1つの試薬導入部3と、その下流に備えられている1つの加熱部5とからなる前処理ユニットを備えているが、1つの試薬導入部3の代わりに、複数の試薬を添加するために、複数の試薬導入部3が加熱部5の上流に備えられていてもよい。
【0033】
また、
図1の例では、流れ分析装置は、1つの試薬導入部3と、その下流に備えられている1つの加熱部5とからなる前処理ユニットを備えているが、1つまたは複数の試薬導入部3と、その下流に備えられている1つの加熱部5と、その加熱部5の下流であって分析部4の上流にさらに試薬導入部3が備えられていてもよい。加熱部5の下流であって分析部4の上流に備えられた試薬導入部3では、試薬として例えば硝酸、塩酸、または硝酸と塩酸とを添加してもよい。誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を用いる場合には、加熱部5の上流または加熱部5の下流であって分析部4の上流において硝酸溶液に塩酸を添加することにより、水銀をより安定して測定することができる。
【0034】
また、
図1の例では、流れ分析装置は、前処理ユニットを1つ備えているが、流れ分析装置は、複数の前処理ユニットを備えていてもよく、かかる場合、複数の前処理ユニットはそれぞれ異なる数の試薬導入部3を備えていてもよい。複数の前処理ユニットを備えていることにより、例えば、加熱下で酸分解を行った後、再度酸を添加して加熱下で酸分解を行う形態の前処理を行うことができる。複数の試薬導入部3が備えられている場合、各試薬導入部3により添加される試薬は同じであっても異なっていてもよい。
【0035】
また、
図1の例では、試薬導入部3は、気泡分節部10の下流に備えられているが、試薬導入部3の配置はこれに限定されるものではない。試薬導入部3は、気泡分節部10の上流に備えられていてもよい。複数の試薬導入部3が備えられている場合は、気泡分節部10の上流および下流に試薬導入部3が備えられていてもよい。或いは、試薬導入部3により導入する試薬が、マーカーを検出させるための試薬(例えば、発色液等)である場合もあり、かかる場合、試薬導入部3は加熱部5の下流に備えられることもある。或いは、前処理に用いられる試薬を導入するための1又は複数の試薬導入部3が加熱部5の上流に備えられ、且つ、マーカーを検出させるために用いられる試薬を導入するための1又は複数の試薬導入部3が加熱部5の下流に備えられていてもよい。
【0036】
(冷却部)
冷却部6は、加熱部5で加熱処理された後の前記管路2内を移送される試料を冷却する装置である。冷却部6は、その中を試料が移送されるようになっている、0.5m~3.0mの管を含むことが好ましい。前記管路2は、冷却部6の前記管の両端と接続されており、加熱部5で加熱処理された後の前記管路2内を移送される試料は、そのまま連続的に冷却部6の前記管内を移送され、前記管を通過した試料は、引き続き連続的に管路2を移送される。言い換えれば、冷却部6の前記管が、管路2となる。前記管路2と冷却部6の前記管の両端との接続部分は、管内を移送される試料および気体が管路内に密閉されるように接続されている。前記管路2の内径と、冷却部6の前記管の内径とは、試料を連続的に移送できれば、同じであっても異なっていてもよい。
【0037】
加熱部5で加熱処理された後の前記管路2内を移送される試料は、前記管に導入され、前記管内を移送される間に冷却される。前記管の長さは、より好ましくは0.7m~2.5mであり、さらに好ましくは1.0m~2.0mである。前記管の長さが0.5m以上であれば、加熱処理された試料が前記管内を移送される間に十分に冷却されるため好ましい。従来の、加熱部の下流に気液分離部を備えた流れ分析装置では、加熱部から気液分離部までの管路の長さは通常0.5cm~20cmであった。水銀を対象としない分析では、加熱部から気液分離部までの管路を長くする必要はなかった。管路内の試料が高温の状態で気体を除去しても、測定対象の元素が気体とともに除去されるという問題がなかったためである。水銀を測定の対象とする場合は、管路内の温度が高温である状態では水銀は気相側に含まれるため、管路内の温度を下げて水銀を液相に戻すことにより、水銀が気体とともに除去されることを回避することができる。また、前記管の長さが3m以下であれば、試料の移送に時間がかかりすぎないため、分析に要する時間を短縮することができるとともに、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0038】
冷却部6における冷却方法は特に限定されるものではないが、例えば、加熱処理された試料が移送される前記管路2を、空冷する方法、或いは水等の冷媒で冷却する方法(例えば、水冷する方法、氷水にて冷却する方法)等を挙げることができる。
【0039】
前記管の材質は、管内を移送される試料に不活性な材質であれば特に限定されるものではないが、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂;ガラス;PEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)等を挙げることができる。なお、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置における管路2の材質についても、管内を移送される試料に不活性な材質であれば特に限定されるものではなく、例えば、前述した管と同様の材質を使用することができる。
【0040】
前記管の内径は、これに限定されるものではないが、好ましくは0.5mm~3.0mmであり、より好ましくは1.2mm~2.5mmであり、さらに好ましくは1.5mm~2.3mmであり、特に好ましくは1.8mm~2.2mmであり、最も好ましくは1.9mm~2.1mmである。前記内径が0.5mm以上であれば、当該管内に試料を適度な速度で移送することができる。また、前記内径が3.0mm以下であれば、当該管内を移送される試料が、当該管の管壁に接触する頻度が増え、それゆえ試料をより早く冷却することができるため好ましい。
【0041】
前記管の形状は特に限定されるものではなく、直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。中でも前記管は、コイル部分を含むことが好ましい。前記コイル部分の形状は、例えば、螺旋形、8の字螺旋形等である。
図10に前記コイル部分の例を模式的に示す。
図10の(a)は螺旋形のコイル部分であり、(b)は8の字螺旋形のコイル部分である。前記管が、前記コイル部分を含むことにより、管内を移送される試料が、管内を旋回しながら移送されるため、試料が攪拌および混合されるため、試料を冷却すると同時に、気相中の水銀が、液相により移行しやすくなる。それゆえ、水銀が気化することによる損失を防止して、精度の高い分析を行うことができるため、好ましい。
【0042】
前記管が前記コイル部分を含む場合、当該管は、前記コイル部分のみからなる管であっても、前記コイル部分と直線状の部分とを含む管であってもよいが、より精度の高い分析を行う観点から、前記コイル部分を含むとともに、直線状の部分を含んでいることがより好ましい。その理由は明らかではないが、前記コイル部分は、試料が攪拌および混合されるため、試料を冷却すると同時に、気相中の水銀を液相に移行させるという機能を有し、直線状の部分は試料をより効率的に冷却する機能を有するので、両者を組み合わせることにより、水銀が気化することによる損失をより有効に防止できるためであると推測される。前記コイル部分および前記直線状の部分の配置はこれに限定されるものではないが、例えば、前記直線状部分の下流に前記コイル部分が配置される構成を挙げることができる。かかる構成によれば、加熱処理後の試料が前記直線状部分にて主に冷却されて試料中に気体として存在した水銀が液体となった後、前記コイル部分にて、攪拌および混合されて、液相に移行すると考えられる。かかる場合、前記管の前記直線状部分の長さと前記コイル部分の長さの割合は、例えば、1:1~10:1であり、より好ましくは2:1~5:2である。なお、ここで、前記管の前記直線状部分の長さと前記コイル部分の長さの割合における、「前記コイル部分の長さ」とは前記コイル部分を形成する管の長さ、すなわちコイル部分を直線状に引き延ばした場合の管の長さを意図する。また、前記直線状部分の下流に前記コイル部分が配置される構成においては、前記直線状部分の下流に前記コイル部分が配置される構成の下流に、さらに第2の直線状部分が存在してもよい。かかる場合、前記管の前記直線状部分の長さと前記コイル部分の長さの割合とは、前記コイル部分の上流の前記直線状部分の長さと前記コイル部分の長さの割合を意図し、第2の直線状部分の長さは考慮しない趣旨である。
【0043】
或いは、前記直線状部分の下流に前記コイル部分が配置される構成が、複数回、例えば2~10回繰り返されていてもよい。かかる場合も、「前記コイル部分の長さ」は、前述したとおりである。また、前記直線状部分の下流に前記コイル部分が配置される構成が、複数回繰り返された構成の下流に、さらに最後段の直線状部分が存在してもよい。かかる場合、前記管の前記直線状部分の長さと前記コイル部分の長さの割合とは、複数の前記コイル部分の上流の前記直線状部分の長さの合計と複数の前記コイル部分の長さの合計の割合を意図し、最後段の直線状部分の長さは考慮しない趣旨である。
【0044】
前記コイル部分の螺旋形、8の字螺旋形等の螺旋のターン数も特に限定されるものではないが、例えば、1ターン~20ターンであり、より好ましくは2ターン~10ターンであり、さらに好ましくは4ターン~7ターンである。前記ターン数が1ターン以上であれば、試料がより均一に撹拌および混合されるので、試料を冷却すると同時に、気相中の水銀が、液相により移行しやすくなるため好ましい。また、前記ターン数が20ターン以下であれば装置のコンパクト化や、分析に係る時間の短縮を図れるため好ましい。
【0045】
前記コイル部分の形状が、例えば螺旋形である場合、その螺旋形の外直径(「コイル径」という)は、特に限定されるものではないが、例えば、10mm~70mmであり、より好ましくは15mm~60mmであり、さらに好ましくは20mm~50mmであり、最も好ましくは25mm~40mmである。前記コイル径が、10mm以上であれば、安定的に液を送流できるため好ましい。また、前記コイル径が70mm以下であれば、液をより適正に混合できるため好ましい。
【0046】
前記コイル部分の形状が、例えば螺旋形である場合、そのコイルピッチは、特に限定されるものではないが、例えば、0.7mm~40mmであり、より好ましくは0.8mm~30mmであり、さらに好ましくは0.9mm~25mmである。前記コイルピッチが、0.7mm以上であれば、好ましい管径の管を巻いたコイル部分を形成できるため好ましい。また、前記コイルピッチが40mm以下であれば、コイル部分のサイズが場所を取らないサイズであるため好ましい。
【0047】
前記コイル部分の形状が、例えば8の字螺旋形である場合、その8の字の最大長さは、螺旋形の場合のコイル径と同様であり、そのピッチは、螺旋形の場合のコイルピッチと同様である。
【0048】
冷却部6における冷却温度は、例えば、試料が30℃以下、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下となるように冷却すればよい。また、試料の冷却時間は、試料が十分に冷却されることができる時間であれば特に限定されるものではないが、導入された試料の一単位につき、例えば2分以上、3分以上であり、或いは5分以上である。冷却時間の上限は、導入された試料の一単位につき、例えば15分である。冷却部6における冷却温度および冷却時間を前述の範囲とすることにより、試料中に気体として存在する水銀を液体とすることができる。
【0049】
冷却部6は、加熱部5と気液分離部7との間に配置され、冷却部6で冷却された前記管路2内を移送される試料および気泡13、14は、管路2内を気液分離部7に移送される。
【0050】
(気液分離部)
気液分離部7は、前記管路2内に存する気体を順に除去するための装置である。
図7は、気液分離部7で管路2に存する気体が除去される様子を模式的に示す図である。
図7に示すように、気液分離部7は、前記管路2の下流方向に、水平方向または下方に向かって試料を続けて移送する管路(管路2)と、上方に向かって枝分かれする脱気管7aと、を具備する三方管7bと、前記水平方向または下方に向かって試料を続けて移送する管路2に吸引力を付与するポンプ(図示せず)と、前記脱気管に吸引力を付与する脱気ポンプ(図示せず)とを備えている。
【0051】
図7に示すように、前記管路2に存する気体(気泡13、14)は上方に向かって浮き上がるため、前記三方管の上方向に向かって枝分かれする前記脱気管を通じて除去(脱気)される。
【0052】
(分析部)
分析部4は、試薬添加後の試料であって、加熱部5で加熱処理され、加熱処理後に冷却部6で冷却され、冷却後に気液分離部7で気体が除去された試料について分析を行う装置である。本発明の一実施形態において、分析部4は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)装置であり得る。しかし、分析部4は、これに限定されるものではなく、どのような分析装置であってもよく、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)装置、原子吸光光度計、誘導結合プラズマトリプル四重極質量分析装置、イオン電極計、又は分光光度計であってもよい。分析部4は、水銀の有無又は濃度のみを測定するための装置に限定されるものではなく、他の金属元素を一括で測定できる装置であることも好ましい。また、分析は、定量分析であるか、定性分析であるかを問わない。
【0053】
(マーカー検出部)
マーカー検出部9は、気液分離部7と分析部4との間で、管路2から、管路2内を順次流れる前記試料及び前記マーカーを抜き出す分岐管と結合されている。言い換えれば、気液分離部7で気体が除去された後であって、分析部4に導入される前の段階で、管路2は2つに分岐され、一方(分岐後も管路2と称する)は分析部4と、他方(分岐管と称する)はマーカー検出部9と結合されている。マーカー検出部9は、前記管路2から前記分岐管を介して抜き出した液体を連続的に測定し、前記マーカーを検出すれば、検出信号を分析部4に出力する。そして、本発明の一実施形態では、分析部4は、前記検出信号を受け取れば、分析データの取得を開始する。本発明の一実施形態において、マーカー検出部9は、分光光度計であり、マーカーにロジウムが含まれる場合は、ロジウムを検出したときに、検出信号を分析部4に出力する。しかし、マーカー検出部9は、分光光度計に限定されるものではなく、例えば、ボルタンメトリー計、イオン電極計、イオンクロマトグラフィー、濁度計及び蛍光光度計であり得る。分析部4及びマーカー検出部9には、それぞれ、管路2及び前記分岐管から、順次流れる前記マーカー及び前記試料が同じタイミングで導入される。或いは、分析部4及びマーカー検出部9に、順次流れる前記マーカー及び前記試料が導入されるタイミングは、同じではなくずれていてもよい。前記タイミングがずれている場合は、分析部4よりも、マーカー検出部9に、順次流れる前記マーカー及び前記試料が早いタイミングで導入される必要がある。また、前記の一実施形態では、分析部4は、前記検出信号を受け取れば、分析データの取得を開始するようになっているが、前記検出信号を受け取った後、所定時間後に分析データの取得を開始するように設定してもよい。
【0054】
本発明の一実施形態において、分析部4とマーカー検出部9とは、前述のように並列に配置されている。しかし、分析部4とマーカー検出部9とは、
図4に示す実施形態のように、直列に配置されていてもよい。
図4に示す実施形態では、マーカー検出部9は、気液分離部7と分析部4との間に配置されている。気液分離部7で気体が除去された後であって、分析部4に導入される前の段階で、マーカー検出部9は、前記管路2から導入される液体を連続的に測定し、前記マーカーを検出すれば、検出信号を分析部4に出力する。そして、分析部4は、前記検出信号を受け取った後、分析データの取得を開始する。この場合は、分析部4が到達した試料を測定できるように、分析データの取得を開始するタイミングを調節すればよい。例えば、分析部4が前記検出信号を受け取った後、所定時間後に分析データの取得を開始するように設定すればよい。
【0055】
図1の例では、気液分離部7で気体が除去された試料は、その下流のマーカー検出部9または分析部4に移送されるが、気液分離部7とマーカー検出部9または分析部4との間に、さらに試料を混合するための混合コイルが備えられていてもよい。混合コイルはコイル状に形成された管路2であり、試料が混合コイルを通過するときに、管路2内を流れる試料が混合される。混合コイルの形状は特に限定されるものではないが、
図10に示される形状と同様の形状でありうる。
【0056】
前述の実施形態1に係る流れ分析装置によれば、管路内に、連続的に試料を導入し、気泡分節を行い、試薬を導入し、加熱部で反応を促進させ、冷却部で試料および気泡を冷却することにより気化した水銀を液相中に移行させた後に気液分離部で気体を除去することにより、水銀が気化することによる損失を防止して、分析部で連続的に分析データを計測することができる。また、当該流れ分析装置が、マーカーを管路に導入するためのマーカー導入部と、当該マーカーを検出して検出信号を前記分析部に出力するマーカー検出部とを含み、前記分析部が、前記検出信号に基づいて、分析データを取得することにより、安定して連続的に試料を測定することができる。
【0057】
通常、流れ分析装置が気液分離部を備える場合、その下流側に新たに気体を管路に導く気泡分節装置が備えられていることが多いが、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置では、気液分離部と分析部との間に、新たに気体を管路に導く気泡分節装置は備えられていない。これにより、試料中の水銀が揮発することなく分析部4に導入されるので、水銀の揮発による分析精度の低下を防ぐことができる。
【0058】
また、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置は、加熱部5の下流側から、加熱部5に、試料の流れに抗する圧力を付与する加圧部を備えていてもよい。
図3および
図8は、加熱部5の下流側から、または冷却部6の下流側から、試料の流れに抗する圧力を付与する加圧部12を備える流れ分析装置の一例を示す部分概略図である。
図3および
図8の例では、気液分離部の下流側に備えられた加圧部12から、試料の流れに抗する圧力を付与する。前記加圧部12は、例えば、コンプレッサーとバルブとを備えている。かかる加圧部を備えることにより、加熱部5において高温高圧で試料の分解を行うことができる。それゆえ、有機物等を含む不純物の分解と水銀の溶液への溶解が効率よく進めることができるため好ましい。前記加圧部12により付与される圧力は、加熱部5における加熱温度および加熱時間等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、0.14MPa以下であり、場合により0.1MPa未満の負圧を含む。前記圧力は、より好ましくは、0.1MPa超0.13MPa以下ある。
【0059】
また、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置では、試料導入部として、オートサンプラーを使用することができる。また、サンプリングの前に、超音波ホモジナイザー又は攪拌器を備えて、試料の粉砕、及び/又は攪拌を行ってもよい。
【0060】
或いは、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置は、管路の途中に、さらに希釈部を備えていてもよい。これにより、試料の濃度に応じて希釈を行う必要がある場合に、流れ分析装置中で、自動的に所望の希釈を行うことができる。かかる希釈部としては、市販の自動希釈装置を好適に用いることができる。
【0061】
さらに、本発明の一実施形態に係る流れ分析装置は、固体等の液体以外の試料を前処理して液体試料を調製する装置を、試料導入部に組み込んだ装置、又は、試料導入部の上流に組み込んだ装置であってもよい。流れ分析装置は、液体の試料を流れ分析法を用いて分析する装置であり、固体等の液体以外の試料はそのまま測定することばできない。そのため、固体等の液体以外の試料を前処理して液体試料を調製する装置を組み込むことにより、固体等の液体以外の試料の前処理から分析に至るまでを一貫して行うことができる。かかる装置としては、固体等の液体以外の試料を全自動で前処理する装置がより好ましく、例えば、試薬添加、混合、加熱、メスアップを全自動で行う全自動酸分解前処理装置を好適に用いることができる。
【0062】
[1.2]実施形態2
図2は、本発明の実施形態2に係る流れ分析装置の概略構成を示す。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0063】
本発明の実施形態2に係る流れ分析装置は、気泡で分節されていない試料の管路内の流れの中に、試薬を導入し、反応操作を行った後、下流に設けた検出器で分析を行う、フローインジェクション分析法(FIA)を使用する方法である。
【0064】
本発明の実施形態1に係る流れ分析装置は、キャリヤーを管路2に導入するキャリヤー導入部11と、試料を管路2内のキャリヤーの流れの中に導入するための試料導入部1と、マーカーを管路2内のキャリヤーの流れの中に導入するためのマーカー導入部8と、前記管路2内を移送される試料の流れの中に試薬を添加する試薬導入部3と、前記管路2内を移送される、前記試薬が添加された試料に加熱処理を行う加熱部5と、加熱処理後の試料を冷却する冷却部4と、冷却後の前記管路に存する気体を除去する気液分離部7と、前記気液分離部7にて気体が除去された試料について定量分析又は定性分析を行う分析を行う分析部4と、前記マーカーを検出して検出信号を分析部4に出力するマーカー検出部9と、を含み、分析部4は、前記検出信号に基づいて、分析データを取得するようになっている。
【0065】
実施形態2に係る流れ分析装置は、試料を管路2に導入するための試料導入部1およびマーカーを管路2に導入するためのマーカー導入部8の上流にキャリヤー導入部11が備えられており、気泡分節部が設けられていない以外は
図1に示す流れ分析装置と同じ構成である。
【0066】
実施形態2に係る流れ分析装置は、フローインジェクション分析法(FIA)による分析装置であり、キャリヤー導入部11により、キャリヤーを管路2に導入し、キャリヤーが流れる管路2内の流れの中に、試料導入部1により試料を導入し、マーカー導入部8によりマーカーを導入する。
【0067】
前記キャリヤーは、前処理及び試料の分析に好ましくない影響を及ぼさない液体であれば特に限定されるものではなく、例えば、水、界面活性剤、酸性溶液、及びアルカリ性溶液等を挙げることができる。
【0068】
実施形態2に係る流れ分析装置のその他の構成については、実施形態1において説明したとおりであるので、説明を省略する。
【0069】
[2]流れ分析法
以下に、本発明の一実施形態に係る流れ分析法について説明する。なお、説明の便宜上、[1]の流れ分析装置にすでに記載した事項については、その説明を繰り返さない。
【0070】
本発明の一実施形態に係る流れ分析法は、試料を管路に導入するための試料導入工程と、前記管路内を移送される試料に試薬を添加する試薬添加工程と、試薬添加後の試料について定量分析又は定性分析を行う分析工程と、を含む流れ流れ分析法であって、さらに、試薬が添加された試料に加熱処理を行う加熱工程と、加熱処理後の前記管路内を移送される試料を冷却する冷却工程と、冷却後の前記管路に存する気体を除去する気液分離工程と、を含む。
【0071】
前記試料導入工程は、試料を管路に導入する工程であり、例えばサンプリング装置により、複数の試料を、それぞれサンプリングして、所定の流量で、順次連続的に管路に導入する。
【0072】
前記試薬添加工程は、前記管路内を移送される試料の流れの中に試薬を添加する工程であり、試薬は前述の試薬導入部により添加される。
【0073】
前記分析工程は、前記管路に沿って移送される試料について分析を行う工程である。ここで、前記分析には、分析対象の有無の検出又は濃度の測定が含まれる。また、分析は、定量分析であるか、定性分析であるかを問わない。分析方法も特に限定されるものではなく、どのような分析であってもよいが、例えば、誘導結合プラズマ質量分析法、誘導結合プラズマ発光分光分析法、原子吸光光度法、誘導結合プラズマトリプル四重極質量分析方法、イオン電極分析法、又は分光光度分析法を挙げることができる。
【0074】
前記分析対象も特に限定されるものではないが、例えば、水道水、地下水、海水、湖水、工場などからの各種廃水、イオン交換水、超純水、試薬、医薬品、ならびに半導体用および工業用に用いる試薬など、各種水性試料を挙げることができる。本発明の一実施形態に係る流れ分析法によれば、水銀を分析対象として分析を行う場合に、煩雑な前処理を行わずに、水銀を分析することができるとともに、従来法と同等の精度で水銀を含む試料を分析することが可能であるという効果を奏する。また、本発明の一実施形態に係る流れ分析法は、水銀を含む金属元素の一斉分析に好適に使用することができる。そのため、これまで揮発することにより分析が困難であった水銀とその他金属元素との一斉分析が可能となる。
【0075】
前記加熱工程は、前記試薬添加工程で、試薬が添加された試料に加熱処理を行う工程であり、前記冷却工程は、前記加熱工程で加熱処理された後の前記管路内を移送される試料を冷却する工程であり、前記気液分離工程は、前記冷却工程で冷却された後の前記管路に存する気体を除去する工程であり、前記気液分離工程で気体が除去された試料を、分析工程で分析する。
【0076】
本発明の一実施形態に係る流れ分析法は、前記試料導入工程と、前記試薬添加工程と、前記加熱工程と、前記冷却工程と、前記気液分離工程と、前記分析工程とを含む流れ分析法であって、試料導入工程と、次の試料導入工程との間に、マーカーを管路に導入するマーカー導入工程を含む。ここで、前記マーカー導入工程と、前記試料導入工程とは、前記マーカーと、1以上の所定数の試料とが、交互に管路に導入されるように行われることが好ましい。
【0077】
また、本発明の一実施形態に係る流れ分析法は、当該マーカーを検出して検出信号を分析装置に出力するマーカー検出工程を含み、前記分析工程は、前記検出信号に基づいて、分析データを取得する。
【0078】
本発明の一実施形態に係る流れ分析法は、連続流れ分析法(CFA)を使用する方法であってもよいし、フローインジェクション分析法(FIA)を使用する方法であってもよい。本発明の一実施形態に係る流れ分析法が連続流れ分析法(CFA)を使用する方法である場合は、流れ分析法は、前記管路に導入される試料及びマーカーに対して気泡分節を行い、気泡によって区画された複数のセグメントを前記管路内に作製する気泡分節工程を含む。本発明の一実施形態に係る流れ分析法がフローインジェクション分析法(FIA)を使用する方法である場合は、流れ分析法は、前記試料導入工程及び前記マーカー導入工程の前に、キャリヤー導入工程を含み得る。
【0079】
[3]まとめ
本発明の一実施形態は以下の構成を包含する。
【0080】
<1>試料を管路に導入するための試料導入部と、前記管路内を移送される試料に試薬を添加する試薬導入部と、試薬添加後の試料について定量分析又は定性分析を行う分析部と、を含む流れ分析装置であって、さらに、試薬が添加された試料に加熱処理を行う加熱部と、加熱処理後の前記管路内を移送される試料を冷却する冷却部と、冷却後の前記管路に存する気体を除去する気液分離部と、が備えられていることを特徴とする流れ分析装置。
【0081】
<2>前記冷却部は、0.5m~3mの管を含み、当該管の中を試料が移送されるようになっている、<1>に記載の流れ分析装置。
【0082】
<3>前記管はコイル部分を含む、<2>に記載の流れ分析装置。
【0083】
<4>さらに、マーカーを管路に導入するためのマーカー導入部と、当該マーカーを検出して検出信号を前記分析部に出力するマーカー検出部と、を含み、前記分析部は、前記検出信号に基づいて、分析データを取得するようになっている、請求項<1>~<3>のいずれかに記載の流れ分析装置。
【0084】
<5>前記マーカー導入部と、前記試料導入部とは、前記マーカーと、1以上の所定数の試料とが、交互に管路に導入可能となっている、<4>に記載の流れ分析装置。
【0085】
<6>前記分析部は、誘導結合プラズマ質量分析装置、または誘導結合プラズマ発光分光分析装置である、<1>~<5>のいずれかに記載の流れ分析装置。
【0086】
<7>前記試薬は硝酸を含む、<1>~<6>のいずれかに記載の流れ分析装置。
【0087】
<8>前記試薬は塩酸を含む、<1>~<7>のいずれかに記載の流れ分析装置。
【0088】
<9>水銀を含む金属元素の濃度を測定するための装置である、<1>~<8>のいずれかに記載の流れ分析装置。
【0089】
<10>管路に導入される試料に対して気泡分節を行い、気泡によって区画された複数のセグメントを管路内に作製する気泡分節部が備えられている、<1>~<9>のいずれかに記載の流れ分析装置。
【0090】
<11>試料を管路に導入するための試料導入工程と、前記管路内を移送される試料に試薬を添加する試薬添加工程と、試薬添加後の試料について定量分析又は定性分析を行う分析工程と、を含む流れ分析法であって、さらに、試薬が添加された試料に加熱処理を行う加熱工程と、加熱処理後の前記管路内を移送される試料を冷却する冷却工程と、冷却後の前記管路に存する気体を除去する気液分離工程と、を含むことを特徴とする流れ分析法。
【0091】
<12>気液分離工程後には、気泡分節を行わない、<11>に記載の流れ分析法。
【実施例】
【0092】
以下に示す実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定解釈されるものではなく、各実施例に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施例も、本発明の範囲に含まれることとする。
【0093】
[装置]
流れ分析装置としては
図1に示す流れ分析装置において、
図1中のBの部分が
図4の構成である分析装置を使用した。当該流れ分析装置は、試料を管路2に導入するための試料導入部1と、マーカーを管路2に導入するためのマーカー導入部8と、前記管路2に導入された試料及びマーカーに対して気泡分節を行う気泡分節部10と、前記管路2に沿って管路内を移送される試料の流れの中に試薬を添加する試薬導入部3と、前記管路2に沿って移送される試料に加熱処理を行う加熱部5と、加熱処理後の試料を冷却する冷却部6と、冷却後の前記管路に存する気体を除去する気液分離部7と、前記気液分離部7にて気体が除去された試料について定量分析又は定性分析を行う分析を行う分析部4と、前記マーカーを検出して検出信号を分析部4に出力するマーカー検出部9と、を含み、分析部4は、前記検出信号に基づいて、分析データを取得するようになっている。気液分離部7と分析部4との間には新たに気体を管路に導入する気泡分節部は備えられていない。
【0094】
前記気泡分節の気体として空気を使用し4秒に1回の割合で管路2に導入した。前記試薬として、1モル/L硝酸と1モル/Lの塩酸との容積比1:1の混合液を使用した。マーカーとしては、パラジウムを使用し、パラジウムはパラジウムの硝酸酸性溶液(パラジウムの濃度:100mg/L)として管路2に導入した。前述のパラジウムの硝酸酸性溶液と、試料とは、交互に管路2に導入した。また、マーカー検出部9の検出装置として分光光度計(ビーエルテック株式会社製、SCIC4000)を用い、分析部4の分析装置として誘導結合プラズマ質量分析装置(アジレントテクノロジー株式会社製、Agilent 7800 ICP-MS)を用いた。
【0095】
加熱部5にはその下流側から、コンプレッサーにより、試料の流れに抗する圧力を付与する0.13MPaの圧力を付与し、加熱部5における加熱温度は、試料が100℃となるように設定した。
【0096】
冷却部6には、長さが1.5m、内径2.0mmのPFAチューブを用いた。当該チューブは、加熱部5の出口から順に、1.2mの直線状の部分、0.6mのコイル部分、および0.3mの直線状の部分からなるものであった。前記コイル部分のターン数は5であり、コイル径は40mm、コイルピッチは3.0mmであった。また冷却は空冷により行い、冷却部6の周囲温度は15℃であった。
【0097】
マーカー検出部9と分析部4とは、
図4に示すように、直列に配置されており、気液分離部7で除去された試料は、分析部4に導入される前の段階で、マーカー検出部9で連続的に測定された後、分析部4に移送される。マーカー検出部9は、前記マーカーを検出すれば、検出信号を分析部4に出力し、そして、分析部4は、前記検出信号を受け取った後、分析データの取得を開始した。
【0098】
[実施例1:検量線の作成]
1モル/L硝酸と1モル/Lの塩酸との容積比1:1の混合液と、超純水とを容積比1:100で混合した希釈液を用いて、水銀を濃度範囲0.01μg/L~1μ/Lの範囲で含む標準液を調製し、前記流れ分析装置を使用して検量線を作成した。
【0099】
得られた検量線は、
図9に示すように、良好な直線関係を示すことが確認された。
【0100】
[実施例2:ダム湖底水の分析]
前記流れ分析装置を使用して、試料中の金属元素の濃度を測定した。試料として、ダム湖底水を測定した。また、その試料に0.05μg/Lと0.5μg/Lとになるように水銀を添加して添加回収試験を行った。
【0101】
表1に試料の測定結果及び添加回収試験の結果を示す。
【0102】
【表1】
[実施例3:伏流水の分析]
試料として、伏流水を測定した以外は実施例2と同様にして、試料の測定及び添加回収試験を行った。
【0103】
[実施例4:水道水の分析]
試料として、水道水を測定した以外は実施例2と同様にして、試料の測定及び添加回収試験を行った。
【0104】
表1に示す結果より、ダム湖底の有機物が多い試料、伏流水及び水道水のいずれにおいても、高い回収率が得られた。従来の公定法による分析においても同等の回収率が得られていることから、前記流れ分析装置および流れ分析法によれば、従来法と同等の精度で水銀を含む試料を分析することが可能なことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明によれば、煩雑な前処理を行わずに、水銀を分析することができるとともに、従来法と同等の精度で水銀を含む試料を連続的に分析することができる流れ分析装置および流れ分析法を提供することができる。
【0106】
このような構成によれば、環境水、水道水等の汚染を低減に貢献できる。これにより、持続可能な開発目標(SDGs)の目標14・15の達成に貢献できる。
【符号の説明】
【0107】
1 試料導入部
2 管路
3 試薬導入部
4 分析部
5 加熱部
6 冷却部
7 気液分離部
8 マーカー導入部
9 マーカー検出部
10 気泡分節部
11 キャリヤー導入部
12 加圧部
13 気泡
14 気泡
【要約】
煩雑な前処理を行わずに、水銀を分析することができるとともに、従来法と同等の精度で水銀を含む試料を分析することが可能な流れ分析装置を提供することを課題とする。試料導入部(1)と、試薬導入部(3)と、分析部(4)と、を含む流れ分析装置であって、さらに、試薬が添加された試料に加熱処理を行う加熱部(5)と、加熱処理後の前記管路内を移送される試料を冷却する冷却部(6)と、冷却後の前記管路に存する気体を除去する気液分離部(7)と、が備えられている流れ分析装置により課題を解決する。