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  • 特許-クランプ金具 図1
  • 特許-クランプ金具 図2
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  • 特許-クランプ金具 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】クランプ金具
(51)【国際特許分類】
   E04G 7/14 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
E04G7/14 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023113800
(22)【出願日】2023-07-11
【審査請求日】2023-07-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523263670
【氏名又は名称】有限会社ワークス相模
(74)【代理人】
【識別番号】100199668
【弁理士】
【氏名又は名称】林 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】大津 哲治
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-042551(JP,U)
【文献】特開2013-160038(JP,A)
【文献】特開2015-137538(JP,A)
【文献】特開平11-172912(JP,A)
【文献】特開平09-078829(JP,A)
【文献】特開平11-166319(JP,A)
【文献】国際公開第2022/157516(WO,A1)
【文献】米国特許第04566819(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 7/06- 7/08
E04G 7/12- 7/14
F16B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
資材置き場や建設現場などの野外に、仮設屋根や仮設側壁を施工する際に管材を固定し、前記管材に波板を付設するためのクランプ金具であって、管材の外壁に対応する湾曲部を有する基体と、前記基体に対して一端を揺動自在に軸着され前記管材の外壁に対応する湾曲部を有する蓋体と、前記蓋体に揺動自在に軸着された締結ボルトと、前記締結ボルトを締付けるナットとを備える外側クランプと、管材の外壁に対応する湾曲部を有する基体と、前記基体に対して一端を揺動自在に軸着され前記管材の外壁に対応する湾曲部を有する蓋体と、前記基体に揺動自在に軸着された締結ボルトと、前記締結ボルトを締付けるナットとを備える内側クランプとを有し、前記外側クランプの前記基体の背面と前記内側クランプの前記基体の背面とをお互いに連結固定され、前記外側クランプは、前記管材を囲繞した状態で、前記波板を付設する側となる前記蓋体の外側面が平滑な水平面となることを特徴とするクランプ金具。
【請求項2】
前記外側クランプは、前記基体の前記蓋体が軸着されていない側の端部に所要量突設され、前記締結ボルトのネジ部を受け入れることができる切り欠き部と、前記基体の外側に設けられ前記ナットが密着可能となる平坦面となるナット受部とを有することを特徴とする請求項1に記載のクランプ金具。
【請求項3】
前記外側クランプは、囲繞する前記管材の外径によって変化する外側面の角度を調整するために使用するスペーサーを有することを特徴とする請求項に記載のクランプ金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管材などの細長い部材を連結固定するためのクランプ金具に関し、詳しくは、資材置き場や建設現場などの野外に設置する仮設屋根や仮設側壁に使用するためのクランプ金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、資材置き場や建設現場などの野外に、仮設屋根や仮設側壁を施工するためには、複数の管材を組み立て、その管材の上方に波板を付設して屋根部とし、管材の外側側面に波板を付設して側壁部を形成することが一般的に行われており、その管材を連結固定するために、所謂クランプ金具が使用されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、管材をクランプすべく基体とこの基体に対して一端を揺動自在に連結した蓋体とによって囲繞するようにし、締結ネジとナットとにより締付けることでクランプするクランプ金具本体を形成し、このクランプ金具本体を 2個有してその基体同士を背中合せにして互いが回動自在となるように連結し、前記2個のクランプ金具本体のうちの一方のクランプ金具本体の基体には、締結ネジの揺動取付軸部分に揺動自在に枢支されるストッパーを配し、このストッパーは、適宜金属材で略枠状に形成され、その揺動操作によってストッパーの側面が他方のクランプ金具本体の基体の側面に当接して、両クランプ金具本体同士の回動を適当な角度で阻止できるよう構成した直交型および自在型の双方として利用できる管材連結用クランプ金具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-128194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されたような従来のクランプ金具は、図3(C)示すように、締結ネジ501の揺動取付軸502が基体503に枢支され、締結ネジ501の先端部と、ナット504とが蓋体505の外側に突出することとなり、管材200の上方面や管材200の外側側面に付設される波板300に締結ネジ501の先端部が当接し、管材200の上方面や外側側面に波板300を付設する際に波板300が変形してしまう問題があった。
【0006】
そこで、図3(D)に示すように、波板300を付設する面の管材200と波板300との間隙に、木製の角材などからなる嵩上げ材400を敷設することで、従来のクランプ金具500の締結ネジ501の先端部を回避する処置がとられていた。その嵩上げ材400を敷設することは、当然に仮設屋根や仮設側壁の施工において工数および材料費が増加する問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その具体的目的は、仮設屋根や仮設側壁を施工する際に、嵩上げ材を配設することなく、管材の上方面や外側側面に波板を付設することができるクランプ金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために案出されたものである。詳述するならば、資材置き場や建設現場などの野外に、仮設屋根や仮設側壁を施工する際に管材を固定し、前記管材に波板を付設するためのクランプ金具であって、管材の外壁に対応する湾曲部を有する基体と、前記基体に対して一端を揺動自在に軸着され前記管材の外壁に対応する湾曲部を有する蓋体と、前記蓋体に揺動自在に軸着された締結ボルトと、前記締結ボルトを締付けるナットとを備える外側クランプと、管材の外壁に対応する湾曲部を有する基体と、前記基体に対して一端を揺動自在に軸着され前記管材の外壁に対応する湾曲部を有する蓋体と、前記基体に揺動自在に軸着された締結ボルトと、前記締結ボルトを締付けるナットとを備える内側クランプとを有し、前記外側クランプの前記基体の背面と前記内側クランプの前記基体の背面とをお互いに連結固定され、前記外側クランプは、前記管材を囲繞した状態で、前記波板を付設する側となる前記蓋体の外側面が平滑な水平面となる構成が含まれる。
【0009】
本発明のクランプ金具は、波板を付設する側の管材を固定する外側クランプの締結ボルトが、蓋体に揺動自在に軸着されているので、締結ボルトの先端部が波板を付設する際に波板に当接しないので、嵩上げ材を使用する必要がなく、施工工数と材料費を削減できると共に、締結ボルトの先端部が外側に突設せず、蓋体の外側面が平滑な水平面となることで、波板を安定的に付設することができる効果がある。
【0010】
また、本発明には、前記外側クランプの前記締結ボルトのネジ部を受け入れることができる切り欠き部と、前記基体の外側に設けられ前記ナットが密着可能となる平坦面となるナット受部とが、前記基体の前記蓋体が軸着されていない側の端部に所要量突設されている構成が含まれる。
【0011】
本発明のクランプ金具は、切り欠き部とナット受部とが、基体の前記蓋体が軸着されていない側の端部に所要量突設されているので、締結ボルトの先端部がやや斜め方向に配設されることとなり、管材を締結する作業時の際に、工具を挿入しやすくなる効果がある。
【0012】
さらに、本発明には、前記基体の湾曲部から前記基体の背面との高さを所要の高さにし、前記外側クランプに囲繞する管材と前記内側クランプに囲繞する管材との間隙を所要の間隙とすることで、組立作業の効率が良くなる構成が含まれる。
【0013】
本発明のクランプ金具は、上述の通り外側クランプに囲繞する管材と内側クランプに囲繞する管材との間隙を所要の間隙とすることで、通常足場組立に使用する工具である所謂ラチェットレンチを使用することができ、作業効率が向上する。
【0014】
本発明には、前記外側クランプに、囲繞する前記管材の外径によって変化する外側面の角度を調整するために使用する、スペーサーを有する構成が含まれる。
【0015】
本発明のクランプ金具は、外径が細い管材を囲繞して締結固定すると、蓋体の外側面が管材に対して斜めになってしまうことを、スペーサーを使用して修正し、蓋体の外側面を水平に設定することで、波板を安定的に付設することができる効果がある。
【発明の効果】
【0016】
本発明のクランプ金具は、仮設屋根や仮設側壁を設置する際に、嵩上げ材などを配設することなく、管材の上方面や外側側面に波板を付設することができることで、
施工する材料費を削減できると共に、組立作業の効率が向上する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係るクランプ金具の(A)正面図及び(B)側面図である。
図2】本実施の形態に係るクランプ金具の使用状態を示す(A)正面図及び(B)側面図である。
図3】従来のクランプ金具の使用状態を示す(A)正面図及び(B)側面図である。
図4】本発明の他の実施の形態に係るクランプ金具の(A)スペーサーなし及び(B)スペーサーありを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。ただし、図面は模式的に図示しており、実際の寸法や比率等とは必ずしも一致しない。また、図面相互間において、お互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれることがある。
尚、本実施形態において、クランプ金具を管材に装着して使用する状態を基準に屋根用の波板側を外側若しくは上方面、反対側を内側若しくは下方面、側壁用の波板側を外側、反対側を内側と表現する。
【0019】
図1及び図2に示されるように、本発明のクランプ金具100は、外側クランプ10と内側クランプ20とで構成され、外側クランプ10の背面と内側クランプ20の背面とがお互いに連結固定されている。
【0020】
外側クランプ10は、管材200の外壁に対応する湾曲部11Aを有する基体11と、基体11に対して一端を取付軸30で揺動自在に軸着され管材200の外壁に対応する湾曲部12Aを有する蓋体12と、蓋体12にボルト取付軸40で揺動自在に軸着された締結ボルト13と、締結ボルト13を締付けるナット14とで構成されている。
【0021】
内側クランプ20は、管材200の外壁に対応する湾曲部21Aを有する基体21と、基体21に対して一端を取付軸30で揺動自在に軸着され管材200の外壁に対応する湾曲部22Aを有する蓋体22と、基体21にボルト取付軸40で揺動自在に軸着された締結ボルト23と、締結ボルト23を締付けるナット24とで構成され、外側クランプ10の基体11の背面と内側クランプ20の基体21の背面とがお互いに連結固定されている。
【0022】
また、外側クランプ10は、管材200を囲繞した状態で、波板300を付設する側となる蓋体12の外側面が平滑な水平面12Bで形成されている。
さらに、外側クランプ10の締結ボルト13のネジ部を受け入れることができる切り欠き部11Bと、基体11の外側に設けられナット14が密着可能となる平坦面となるナット受部11Cとが、基体11の蓋体12が軸着されていない側の端部に斜め上方に向け所要量突設して形成されている。
【0023】
加えて、外側クランプ10の湾曲部11Aにおける最内部から内側クランプ20の湾曲部22Aにおける最外部までの距離T2で形成される、外側クランプ10に囲繞する管材200と内側クランプ20に囲繞する管材200との間隙を所要の間隙とするために基体11の背面との高さT4と基体21の背面との高さT5を所要の高さに形成されている。
【0024】
また、図4に示されるように、外側クランプ11に、囲繞する管材200の外径D2によって変化する外側面12Bの角度を調整するためには、スペーサー50を使用すれば良い。
具体的には、外径D2が設定よりも細い場合は、図4(A)に示すように外側面12Bが管材200に対して、水平とならず傾斜面となり波板300の安定性が悪くなるため、 図4(B)に示すように、管材200の外周面と湾曲部12Aの内面との間隙にスペーサー50配設し、外側面12Bが管材200に対して水平となるように調整すれば良い。
【0025】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で適宜寸法や形状を変更して実施できる。
【0026】
本実施例では、使用する管材200の外径D1を所謂単管と言われる48.6φの金属製パイプ材に合わせて、湾曲部12Aと湾曲部22Aとの内径を設定した。
また、基体11と蓋体12とは、熱間圧延高張力鋼の金属板で板厚3.2mmを加工して形成し、表面を鍍金加工し、外側面12Bの高さT1は5.0mmに設定した。
【0027】
さらに、基体11は管材200の外径D1が48.6φの金属製パイプ材を囲繞し固定した状態で、締結ボルト13が切り欠き部11Bに挿入された角度αを30度から50度に設定し、通常クランプ金具の固定作業に使用される工具である所謂ラチェットレンチの寸法T3が約50mmであることから、外側と内側の管材200の間隙を60mmとし、基体11の背面との高さT4と基体21の背面との高さT5とを其々30mmで形成した。
【0028】
図4に示すように、管材200を例えば、枠組み足場に使用する外径D2が42.7φの金属製パイプ材を囲繞する際にスペーサー50を使用する。スペーサー50は、所要の厚みを有する樹脂製若しくは金属製で形成し、管材200の外周面と湾曲部12Aの内面との間隙にスペーサー50を配設し固定すれば良い。
【0029】
次に、上述の実施例を踏まえ、仮設屋根を設置する手順を説明する。複数の管材200を組立後に、従来のクランプ金具500を使用すると、屋根部分と側壁部分は図3(C)示すように、締結ネジ501の揺動取付軸502が基体503に枢支され締結ネジ501の先端部と、ナット504とが蓋体505の外側に突出することとなり、管材200の上方面や管材200の外側側面に付設される波板300に締結ネジ501の先端部が当接し、管材200の上方面や側面に波板300を付設する際に波板300が変形してしまうため、図3(D)示すように、波板300を付設する面の管材200と波板300との間隙に、木製の角材などからなる嵩上げ材400を敷設して、パイプボルト70を管材200に係止した後に、波板固定ボルト部60を波板300に形成した取付孔(図示せず)に挿通し、波板300の外側より波板固定ナット80を螺合して固定するのが一般的であった。
【0030】
それに対し、本願発明のクランプ金具10を屋根部や側壁部に使用する場合は、図2に示すように、管材200の外側に、外側面12Bが5.0mm程度突出するのみであるために、波板300は僅かに変形するのみであり、嵩上げ材400を使用する必要はなく、パイプボルト70を管材200に係止した後に、波板固定ボルト部60を波板300に形成した取付孔(図示せず)に挿通し、波板300の外側より波板固定ナット80を螺合して固定することができる。
【0031】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、上記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、本実施形態及び本実施例では、熱間圧延高張力鋼の金属板を加工して形成したが、それに限定するものではなく、ステンレス合金、炭素鋼鋼材など、足場用管材を支持固定できる強度を有するものであれば良い。
【0032】
すなわち、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態及び実施例に対し、形状、材質、数量、使用用途、位置若しくは配置等に対して当業者が様々な変更を加えることができるものである。従って、既に開示した形状等の限定をした記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に示したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状等の限定を一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0033】
10 外側クランプ
11 基体
11A 湾曲部
11B 切り欠き部
11C ナット受部
12 蓋体
12A 湾曲部
12B 外側面
13 締結ボルト
13A サドルバンド
13B 固定ネジ
14 ナット
20 内側クランプ
21 基体
21A 湾曲部
22 蓋体
22A 湾曲部
23 締結ボルト
24 ナット
30 取付軸
40 ボルト取付軸
50 スペーサー
60 波板固定ボルト部
70 パイプボルト
80 波板固定ナット
100 クランプ金具
200 管材
300 波板
400 嵩上げ材
500 従来のクランプ金具
501 締結ネジ
502 揺動取付軸
503 基体
504 ナット
505 蓋体
T1 外側面12Bの高さ
T2 湾曲部11Aの最内部から湾曲部22Aの最外部までの距離
T3 ラチェットレンチの寸法
T4 基体11の背面までの高さ
T5 基体21の背面までの高さ
α 締結ボルト13が切り欠き部11Bに挿入された角度


【要約】
【課題】仮設屋根や仮設側壁を施工する際に、嵩上げ材を配設することなく、管材の上方面や外側側面に波板を付設することができるクランプ金具を提供する。
【解決手段】管材200の外壁に対応する湾曲部11Aを有する基体11と、基体11に対して一端を揺動自在に軸着され管材200の外壁に対応する湾曲部12Aを有する蓋体12と、蓋体12に揺動自在に軸着された締結ボルト13と、締結ボルト13を締付けるナット14とを備える外側クランプ10と管材200の外壁に対応する湾曲部21Aを有する基体21と、基体21に対して一端を揺動自在に軸着され管材200の外壁に対応する湾曲部22Aを有する蓋体22と、基体21に揺動自在に軸着された締結ボルト23と、締結ボルト23を締付けるナット24とを備える内側クランプ20とを有し、外側クランプ10の基体11の背面と内側クランプ20の基体21の背面とがお互いに連結固定されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4