(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】物体検出システム及び物品陳列棚
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20231017BHJP
A47F 5/00 20060101ALI20231017BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20231017BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20231017BHJP
G01S 17/88 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
G01S7/481 A
A47F5/00 Z
G01B11/00 Z
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
G01S17/88
(21)【出願番号】P 2020553821
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2019041577
(87)【国際公開番号】W WO2020090593
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2018202829
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(72)【発明者】
【氏名】内村 淳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-328176(JP,A)
【文献】特開2001-043482(JP,A)
【文献】特開2003-344553(JP,A)
【文献】特開2016-020834(JP,A)
【文献】特開2001-012943(JP,A)
【文献】特開2010-006557(JP,A)
【文献】登録実用新案第3007824(JP,U)
【文献】特開2011-174713(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0070712(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
G01B 11/00 - 11/30
G01C 3/00 - 3/32
G01J 1/00 - 1/60
11/00
G01N 21/00 - 21/01
21/17 - 21/61
G01V 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出領域を通過するように光を射出するとともに、反射された光を受ける測距装置であって、射出される光の光路を変化させる走査を行うよう構成されている、測距装置と、
前記検出領域を通過した光を前記測距装置に向けて反射するように走査範囲内に設けられた反射部材と、
を備え
、
前記反射部材は、第1の部分と、前記第1の部分よりも低い反射率を有する第2の部分とを有し、
前記第1の部分は、前記走査範囲内において、前記測距装置から射出された光が入射される範囲であり、
前記第2の部分は、前記走査範囲内において、前記測距装置から射出された光が入射されない範囲である、
物体検出システム。
【請求項2】
前記反射部材からの反射光のうち、前記反射部材から前記測距装置に向かう反射光の強度は、前記反射部材から前記測距装置以外の方向に向かう反射光の強度よりも強い、
請求項1に記載の物体検出システム。
【請求項3】
前記反射部材は、再帰性反射材及び鏡面反射材の少なくとも一方を含む、
請求項1又は2に記載の物体検出システム。
【請求項4】
前記第2の部分は、前記第1の部分を囲うように配されている、
請求項
1乃至3のいずれか1項に記載の物体検出システム。
【請求項5】
前記第2の部分の基材の表面には、反射率を低減する処理及び光吸収材料で覆う処理の少なくとも一方が施されている、
請求項
1乃至
4のいずれか1項に記載の物体検出システム。
【請求項6】
前記第2の部分の前記基材の表面粗さは、前記第1の部分の基材の表面粗さよりも大きい、
請求項
5に記載の物体検出システム。
【請求項7】
前記測距装置は、対象物から反射された光に基づいて距離情報を取得するLiDAR(Light Detection and Ranging)装置である、
請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の物体検出システム。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の物体検出システムと、
物品を陳列する陳列部と、
を備え、
前記測距装置は、前記陳列部の第1の側部に配されており、
前記反射部材は、前記第1の側部に対向する前記陳列部の第2の側部に配されている、
物品陳列棚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検出システム及び物品陳列棚に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光ビームを路面に向けて照射することにより、車両の寸法を計測する車両計測装置が開示されている。また、特許文献2には、レーザー光を監視対象エリア内に走査させて、反射光を検出することにより侵入物を検出するエリア監視システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-105867号公報
【文献】特開2017-9315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2に記載されているような光を利用する物体検出システムにおいて、用途によっては更なる検出精度の向上が求められる場合がある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、検出精度が向上された物体検出システム及びこれを備えた物品陳列棚を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、検出領域を通過するように光を射出するとともに、反射された光を受ける測距装置であって、射出される光の光路を変化させる走査を行うよう構成されている、測距装置と、前記検出領域を通過した光を前記測距装置に向けて反射するように走査範囲内に設けられた反射部材と、を備える、物体検出システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、検出精度が向上された物体検出システム及びこれを備えた物品陳列棚を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る物体検出システムの概略構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る物体検出システムによる物体検出時の反射光の強度分布を示すグラフである。
【
図3】第1実施形態に係る反射部材の反射面の構成例を示す模式図である。
【
図4】第1構成例に係る測距装置の構造を示す斜視模式図である。
【
図5】第1構成例に係る測距装置の構造を示す正面模式図である。
【
図6】第1構成例に係る測距装置の構造を示す上面模式図である。
【
図7】放物線の頂点に反射面が設けられている場合の光路図である。
【
図8】放物線の頂点に反射面が設けられていない場合の光路図である。
【
図9】放物線の頂点に反射面が設けられていない場合の光路図である。
【
図10】第2構成例に係る測距装置の構造を示す上面模式図である。
【
図11】第3構成例に係る測距装置の構造を示す上面模式図である。
【
図12】第4構成例に係る測距装置の構造を示す斜視模式図である。
【
図13】第4構成例に係る測距装置の構造を示す上面模式図である。
【
図14】第4構成例に係る測距装置の対数螺旋反射鏡の断面図である。
【
図15】対数螺旋をなす反射面における光の反射を説明する図である。
【
図16】第5構成例に係る測距装置の構造を示す正面模式図である。
【
図17】第5構成例に係る測距装置の構造を示す上面模式図である。
【
図18】第6構成例に係る測距装置の構造を示す斜視模式図である。
【
図19】第6構成例に係る測距装置の構造を示す上面模式図である。
【
図20】第2実施形態に係る物品陳列棚の構造を示す斜視模式図である。
【
図21】第2実施形態に係る物品陳列棚の構造を示す側面模式図である。
【
図22】第3実施形態に係る物品陳列棚の構造を示す正面模式図である。
【
図23】第4実施形態に係る物品陳列棚の構造を示す側面模式図である。
【
図24】第5実施形態に係る物品陳列棚の構造を示す斜視模式図である。
【
図25】第6実施形態に係る物体検出システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の例示的な実施形態を説明する。図面において同様の要素又は対応する要素には同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化することがある。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る物体検出システムの概略構成を示す模式図である。物体検出システムは、測距装置100、制御装置200及び反射部材800を含む。物体検出システムは、測距装置100と反射部材800との間の検出領域850の中にある対象物10を検出するシステムである。
【0011】
測距装置100は、例えばLiDAR(Light Detection and Ranging)装置である。測距装置100は、所定の範囲に光を走査するように射出し、走査範囲内にある物体から反射された反射光を検出することにより、測距装置100からの距離の分布を取得することができる。
図1では1つの測距装置100が図示されているが、物体検出システムは複数の測距装置100を備える構成であってもよい。なお、本明細書において、光とは、可視光線に限定されるものではなく、赤外線、紫外線等の肉眼で視認できない光を含むものとする。
【0012】
制御装置200は、例えばコンピュータである。制御装置200は、インターフェース(I/F)210、制御部220、信号処理部230及び記憶部240を備える。インターフェース210は、制御装置200と測距装置100の間を有線又は無線により通信可能に接続する装置である。これにより、制御装置200と測距装置100の間は通信可能に接続される。インターフェース210は、例えば、イーサネット(登録商標)等の規格に基づく通信装置であり得る。インターフェース210は、スイッチングハブ等の中継装置を含んでもよい。物体検出システムが複数の測距装置100を備えている場合には、スイッチングハブ等により中継を行うことにより、制御装置200が複数の測距装置100を制御することができる。
【0013】
制御部220は、測距装置100の動作を制御する。信号処理部230は、測距装置100から取得された信号を処理することにより、検出領域850内の対象物10の距離情報を取得する。制御部220及び信号処理部230の機能は、例えば、制御装置200に設けられたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが記憶装置からプログラムを読み出して実行することにより実現され得る。記憶部240は、測距装置100により取得されたデータ、制御装置200の動作に用いられるプログラム及びデータ等を記憶する記憶装置である。これにより、制御装置200は、測距装置100を制御する機能及び、測距装置100で取得された信号を解析する機能を有する。
【0014】
反射部材800は、測距装置100から射出された光を測距装置100に向けて反射する部材である。反射部材800は、測距装置100による走査範囲内に設けられ、検出領域850内を通過した光を測距装置100に向けて反射する。
【0015】
図2は、本実施形態に係る物体検出システムによる物体検出時の反射光の強度分布を示すグラフである。
図2の横軸は、走査方向の位置であり、符号10で示した範囲が、対象物10の存在する範囲である。
図2の縦軸は、測距装置100で受け取られる光に基づく信号強度である。
【0016】
ラベル(a)が付された実線は、対象物10よりも反射率が大きい反射部材800を設けた場合の信号強度分布である。ラベル(b)が付された破線は、対象物10と同程度の反射率であり、かつ、ラベル(a)の例よりも反射率が小さい反射部材800を設けた場合の信号強度分布である。ラベル(c)が付された一点鎖線は、反射部材800を設けない場合の信号強度分布である。なお、ここでの「反射率」とは、反射率が波長依存性を示す場合には、測距装置100が射出して、検出する光、すなわち、センシングに用いられる光の波長における反射率を指すものとする。また、後述の吸収率についても同様である。例えば、測距装置100から射出される光が波長905nmの赤外線である場合には、上述の「反射率」は、波長905nmの赤外線に対する反射率であるものとする。
【0017】
図2に示されるように、反射部材800を設けたことにより、対象物10が設けられた領域の外側での反射光による信号強度が大きくなる。これにより、特に、対象物10がない領域において信号強度を大きくすることができ、S/N(Signal to Noise)比が向上する。
【0018】
LiDAR装置等の測距装置100を用いて光を走査して測距を行う際の空間分解能、距離精度等は、測定点の間隔、測距装置100に用いられている部品の性能等に依存するが、それだけでなく、受信する信号のS/N比にも依存する。本実施形態の物体検出システムでは、対象物10がない領域において信号強度を大きくすることができ、空間分解能、距離精度等が向上する。
【0019】
対象物10の検出においては、対象物10がある領域と対象物10がない領域とを判別する必要があるため、対象物10がある領域だけでなく、対象物10がない領域の空間分解能、距離精度等も検出精度に大きく寄与する。したがって、本実施形態によれば、反射部材800を設けることにより、検出精度が向上された物体検出システムが提供される。
【0020】
なお、ラベル(a)が付された実線とラベル(b)が付された破線との対比から理解されるように、反射部材800の反射率が大きいほど反射光の強度を大きくすることができるため望ましく、一例としては、対象物10の反射率よりも大きいことが望ましい。
【0021】
反射部材800の具体的構成について説明する。反射部材800は、反射光の強度を高めるため、測距装置100に向けて強い強度の光を反射するように、乱反射以外の態様で光を反射する部材を少なくとも一部に含んでいることが望ましい。言い換えると、反射部材800からの反射光のうち、反射部材800から測距装置100に向かう反射光の強度は、反射部材800から測距装置100以外の方向に向かう反射光の強度よりも強いことが望ましい。そのような部材は、例えば、再帰性反射材又は鏡面反射材であり得る。
【0022】
再帰性反射材とは、反射光の向きが入射方向の向きとほぼ逆向きになるように構成された反射材である。再帰性反射材に用いられる反射素子の具体例としては、コーナーキューブ、球状レンズ等が挙げられる。また、再帰性反射材の形態は特に限定されず、コーナーキューブ、球状レンズ等を基板上に配列した反射板、コーナーキューブ、球状レンズをフィルム上に配列した反射フィルム、球状レンズを含む反射塗料等が用いられ得る。
【0023】
鏡面反射材は、反射の法則に従って、反射面の法線に対する入射角と反射角とが等しくなるように光を反射する。鏡面反射材は、例えば、鏡面研磨された金属、金属薄膜が成膜されたフィルム、金属光沢塗料等であり得る。
【0024】
再帰性反射材は、光の入射方向がどのような向きであっても入射方向に向けて光を戻す機能を有している。そのため、反射部材800に再帰性反射材を用いた場合には、反射部材800の設置方向が制限されない利点がある。これに対し、反射部材800に鏡面反射材を用いた場合には、入射方向に光を戻すために反射部材800の反射面を入射方向に対して垂直に設置しなければならないという制限があるものの、反射率を高くしやすい利点がある。
【0025】
次に、反射部材800の反射面の構成の具体例を説明する。
図3は、本実施形態に係る反射部材800の反射面800aの構成例を示す模式図である。
【0026】
図3は、反射部材800の反射面800aを光の入射側から見た図である。反射面800aは、第1の部分R1と第2の部分R2とを有する。第2の部分R2における光の反射率は、第1の部分R1における光の反射率よりも低い。言い換えると、第2の部分R2における光の吸収率は、第1の部分R1における光の吸収率よりも高い。
【0027】
測距装置100から射出される光と、反射部材800で反射されて測距装置100に戻り、検出される光は、同じ光路を逆向きに通過する。したがって、反射面800aの中の走査範囲外等のような光路外の構造は、理想的には検出精度には影響しない。しかしながら、測距装置100から射出される光束にはある程度の幅があり、走査範囲外にも光が漏洩し得る。また、反射部材800での反射光には、乱反射の成分が含まれ得るため、走査範囲外で乱反射された光が測距装置100に入射されることもある。このように、現実には、想定されている光路外での反射によりノイズとなる迷光が生じることがある。このような迷光は、検出精度に影響を与え得る。
図3の反射面800aは、光の反射率が低い第2の部分R2を有している。第2の部分R2を適切な位置に配することにより、反射面800aで反射される光のうちの検出精度に影響を与え得る成分を減衰させることができ、検出精度を向上させることができる。
【0028】
第1の部分R1は、測距装置100が射出光を走査させたときに光が入射される範囲であることが望ましく、第2の部分R2は、測距装置100が射出光を走査させたときに光が入射されない範囲であることが望ましい。測距装置100が射出光を走査させたときに、反射面800a上の第2の部分R2で反射された光は迷光となる。そのような光が測距装置100に入射されるとノイズとなるため、走査範囲外からの光の反射率を低くしておくことが望ましい。
【0029】
また、
図3に示されているように、第2の部分R2は、第1の部分R1を囲うように配されていることが望ましい。迷光を生じる反射は走査範囲の周囲で発生する可能性が高いので、第1の部分R1の周囲に光の反射率が低い第2の部分R2を設けることが望ましいためである。
【0030】
次に、第1の部分R1及び第2の部分R2の具体的な形成方法について説明する。反射部材800が再帰性反射材、鏡面反射材等の反射材を備えている場合には、第1の部分R1にはこれらの反射材を配置し、第2の部分R2にはこれらの反射材を配置しないことにより第2の部分R2の反射率を、第1の部分R1の光の反射率よりも低くすることができる。
【0031】
反射部材800の全体がアルミニウム合金等の基材によって構成されている場合には、第1の部分R1と第2の部分R2とは同一の基材により構成されることになる。この場合、第2の部分R2の基材の表面に、反射率を低減する処理を施すことにより、第2の部分R2の反射率を、第1の部分の反射率よりも低くすることができる。
【0032】
この反射率を低減する処理の具体例としては、光吸収性を有する塗料の塗装、光吸収フィルム等の貼付、光吸収薄膜の成膜(例えば、蒸着、めっき)等により第2の部分R2の表面を光吸収材料で覆う処理が適用され得る。また、上述の手法を用いて第1の部分R1と第2の部分R2の表面をそれぞれ異なる材料で覆ってもよい。このような製造方法を用いることにより、第1の部分R1と第2の部分R2とを異なる基材で構成する場合と比べて、簡易に反射部材800を製造することができる。
【0033】
また、光吸収材料で覆う処理の別の例としては、陽極酸化により、反射面800aの表面を酸化させて光吸収材料を形成するものであってもよい。あるいは、第2の部分R2の表面を、第1の部分R1よりも目の荒い研磨材で研磨する等のように第2の部分R2の表面粗さを第1の部分R1の表面粗さよりも大きくすることにより反射率を小さくする処理であってもよい。これらの製造方法によれば、光吸収材料を別途供給することなく簡易に反射部材800を製造することができる。
【0034】
しかしながら、異なる基材を組み合わせて第1の部分R1と第2の部分R2とを構成してもよい。この場合、第2の部分R2の基材には、前記第1の部分の基材よりも反射率が小さい材料が用いられる。例えば、第1の部分R1の基材にアルミニウム合金等の金属を用い、第2の部分R2の基材に樹脂等を用いることにより、反射部材800を軽量化することができる。
【0035】
上述の物体検出システムの構成は一例であり、物体検出システムは、測距装置100及び制御装置200を統括的に制御する装置を更に含んでもよい。また、物体検出システムは、測距装置100内に制御装置200の機能が組み込まれている一体型の装置であってもよい。
【0036】
上述の物体検出システムに用いられ得る測距装置100の構成は特に限定されるものではないが、測距装置100のいくつかの構成例を説明する。
【0037】
<測距装置の第1構成例>
図4は、第1構成例に係る測距装置100の構造を示す斜視模式図である。
図5は、測距装置100を正面から見た構造を示す模式図である。
図6は、測距装置100を上面から見た構造を示す模式図である。これらの図を相互に参照しつつ測距装置100の構造を説明する。なお、各図に示されているx軸、y軸及びz軸は、説明の補助のために付されたものであり、測距装置100の設置方向を限定するものではない。
【0038】
図4に示されるように、測距装置100は、基体110、蓋体120、センサユニット130、放物反射鏡140、位置調整機構150、平面反射鏡160及び取付部170を備える。
【0039】
基体110は、矩形の板状の部材であり、測距装置100の筐体の一部として機能する。また、基体110は、センサユニット130、放物反射鏡140、平面反射鏡160等を所定の位置に固定する機能を有する。
【0040】
蓋体120は、基体110を覆う蓋であり、測距装置100の筐体の一部として機能する。基体110及び蓋体120で囲まれた筐体の内部空間には、放物反射鏡140、位置調整機構150及び平面反射鏡160が配される。
【0041】
センサユニット130は、2次元LiDAR装置である。センサユニット130は、
図5に示されるように、回転軸uを中心にした回転走査が可能である。センサユニット130はレーザー光を射出するレーザー装置と、対象物10で反射された反射光を受けて電気信号に変換する光電変換素子とを備える。センサユニット130は、
図4に示されるように基体110及び蓋体120の下方に形成された切り欠きに配置される。センサユニット130から射出された光は放物反射鏡140の反射面140aに入射される。
【0042】
センサユニット130による距離検出手法の例としては、TOF(Time Of Flight)方式が用いられ得る。TOF方式とは、光を射出してから、反射光を受け取るまでの時間を計測することにより、距離を測定する方法である。
【0043】
なお、センサユニット130から射出されるレーザー光は、可視光線であってもよいが、赤外線等の不可視光線であってもよい。後述する物品陳列棚の入出品検出用途等においては、利用者に不快感を与えないため、射出光が不可視光線であることが望ましい。当該レーザー光は、例えば、波長905nmの赤外線であり得る。
【0044】
放物反射鏡140は、反射面140aを有する反射鏡である。反射面140aは、回転軸uに垂直な断面(
図5におけるxy平面)において、回転軸u上の点を焦点とする放物線をなしている。言い換えると、センサユニット130は、反射面140aがなす放物線の焦点の近傍に配されており、回転軸uは、反射面140aがなす放物線の焦点を通る位置に配されている。回転軸uは、
図5におけるz軸と平行である。当該放物線の方程式は、放物線の頂点の座標をP(0,0)、焦点の座標をF(a,0)としたとき、以下の式(1)で表される。
【数1】
【0045】
放物線の数学的性質により、センサユニット130から射出された光が反射面140aで反射されると、射出光の角度によらず、反射光の射出方向は放物線の軸と平行になる。すなわち、
図5に示されるように、センサユニット130からの射出角度が異なる光路L1と光路L2において、反射面140aでの反射光は互いに平行となる。このように、反射面140aの焦点にセンサユニット130を配置することにより、射出光の回転に応じて光路がy軸方向に平行移動する平行走査が可能となる。
【0046】
なお、放物反射鏡140の材料は、例えばアルミニウムを主成分とするアルミニウム合金であり得る。この場合、反射面140aは、例えば、アルミニウム合金の表面を鏡面研磨又はメッキ加工により平滑化することにより形成され得る。なお、後述する他の放物反射鏡についても同様の材料及び工法により形成され得る。
【0047】
平面反射鏡160は、少なくとも一部が平面をなしている反射面160aを有する反射鏡である。反射面160aは、反射面140aにおける反射光の光路上に設けられている。
図5及び
図6に示されるように、平面反射鏡160は、反射面140aで反射された光の向きを、xy平面内とは異なる向きに変化させる。より具体的には、平面反射鏡160での反射光は、略z軸方向、すなわち、回転軸uと略平行な方向となる。平面反射鏡160での反射光は、測距装置の外部に射出される。これにより、測距装置100からの射出光の向きは、反射面140aの軸に平行な方向に限定されなくなる。
【0048】
なお、平面反射鏡160の材料も放物反射鏡140と同様に、例えばアルミニウムを主成分とするアルミニウム合金であり得る。この場合、平面反射鏡160の反射面160aは、反射面140aと同様の平滑化により形成されてもよいが、鏡面光沢を有するアルミニウム合金の板を基材に貼り付けることにより形成されてもよい。なお、後述する他の平面反射鏡についても同様の材料及び工法により形成され得る。
【0049】
ここで、蓋体120は、平面反射鏡160での反射光を吸収、反射等しないように構成されている。具体的には、例えば、蓋体120のうちの平面反射鏡160での反射光が通過する領域が透過性を有する材料で形成され得る。透過性を有する材料の例としてはアクリル樹脂が挙げられる。あるいは、蓋体120のうちの平面反射鏡160での反射光が通過する領域を空洞とするような窓が設けられていてもよい。
【0050】
取付部170は、測距装置100を物品陳列棚等に取り付けて固定する部分である。取付部170により固定することにより、測距装置100は、あらゆる向きに取り付けることができる。位置調整機構150は、測距装置100を物品陳列棚等に取り付ける際に平面反射鏡160の位置を微調整するための機構である。なお、位置調整機構150に代えて、平面反射鏡160を移動させる駆動機構が設けられていてもよい。
【0051】
図5及び
図6に示されている光路L1、L2は、センサユニット130から外部に光が射出される場合の光路について示したものである。これに対し、対象物10で反射され、測距装置100に入射された光は、光路L1、L2と略同一の経路を逆向きに通過して、センサユニット130で受け取られる。
【0052】
本構成例の測距装置100は、放物反射鏡140の厚さ、センサユニット130の配置位置の制約等に起因して、放物反射鏡140の軸方向に厚い構造となる。これに対し、本構成例の測距装置100は、放物反射鏡140で反射された光を反射させる平面反射鏡160を備えている。平面反射鏡160は、測距装置100からの射出光の向きを放物反射鏡がなす放物線の軸の方向と異なる向きに変化させることができる。そのため、本構成例の測距装置100は、光の射出方向を放物反射鏡140の軸方向と異なる向きにすることができるため、光の射出方向の厚さを小さくすることができる。これにより、本構成例の測距装置100は、物品陳列棚の間等の狭い場所への設置が容易となる。したがって、本構成例によれば、設置場所の自由度が向上された測距装置100が提供される。
【0053】
また、本構成例の測距装置100において、放物反射鏡140の反射面140aは放物線の頂点を除くように設けられている。この構成の理由について、
図7乃至
図9を参照して説明する。
【0054】
図7は、放物線の頂点Pに反射面140bが設けられている場合における光路図である。説明の簡略化のため、センサユニット130は、反射面140bの焦点Fに配置された点光源として簡略に表示されている。焦点Fから射出された光が放物線の軸と平行でない場合(頂点Pに向かう向きではない場合)には、反射光は焦点Fを通過しない。しかしながら、焦点Fから射出された光が放物線の軸と平行(頂点Pに向かう向き)であり、頂点Pで反射された場合には、反射光は焦点Fを通過する。したがって、センサユニット130から射出された光が、センサユニット130に再入射する。この場合には、対象物10からの反射光とは異なる反射光をセンサユニット130が受け取ることにより測定された信号に対してノイズが生じることがある。このように、放物線の頂点Pに反射面140bが設けられている場合には、検出精度が低下し、十分な検出精度が確保できない場合がある。
【0055】
これに対し、本構成例の測距装置100においては、
図8に示されているように、放物線の頂点Pを除くように反射面140aが設けられている。したがって、焦点Fから射出された光が放物線の軸と平行であった場合であっても反射されることはない。したがって、センサユニット130への反射光の再入射は生じないため、検出精度の低減を抑制することができる。以上のように、本構成例によれば、放物反射鏡140の反射面140aが放物線の頂点を除くように設けられていることにより、検出精度が向上された測距装置100が提供される。
【0056】
なお、
図7においては、反射面140aが放物線の軸の片側に配置されているが、
図9に示す変形例のように、反射面140cが放物線の頂点Pを除く両側に配置される構成であってもよい。この変形例に相当する具体的な構成例については後述する。
【0057】
<測距装置の第2構成例>
次に、第2構成例として、平面反射鏡を平行移動させることが可能な測距装置の構成例を説明する。上述の構成例と共通する要素についての説明は省略又は簡略化する。
【0058】
図10は、本構成例の測距装置101を上面から見た構造を示す模式図である。本構成例の測距装置101は、位置調整機構150に代えて駆動機構151を備えており、平面反射鏡160に代えて平面反射鏡161を備えている。駆動機構151は、平面反射鏡161を放物反射鏡140の軸方向(
図10中のx軸方向)に平行に駆動させる。駆動機構151は、モータ等の駆動装置を含む。また、駆動機構151は、エンコーダ等の平面反射鏡161の位置情報を取得する装置を含む。これらの装置は制御装置200により制御される。また、駆動機構151により取得された平面反射鏡161の位置情報は、制御装置200に供給される。
【0059】
駆動機構151により平面反射鏡161が駆動され、x軸方向に平行移動すると、平面反射鏡161での反射光も同様にx軸方向に平行移動する。これにより、本構成例の測距装置101は、平面反射鏡161での反射光をx軸方向に平行移動させる走査が可能となる。また、第1構成例と同様に、本構成例の測距装置101は、平面反射鏡161での反射光をy軸方向に平行移動させる走査も可能である。したがって、本構成例の測距装置101は、第1構成例と同様の効果が得られることに加え、x軸方向、y軸方向の2次元の走査とz軸方向の距離測定とを組み合わせることにより、3次元の位置情報の取得が可能な3次元センサ装置として機能する。
【0060】
<測距装置の第3構成例>
次に、第3構成例として、平面反射鏡を回転移動させることが可能な測距装置の構成例を説明する。第1構成例と共通する要素についての説明は省略又は簡略化する。
【0061】
図11は、本構成例の測距装置102を上面から見た構造を示す模式図である。本構成例の測距装置102は、位置調整機構150に代えて駆動機構152を備えており、平面反射鏡160に代えて平面反射鏡162を備えている。駆動機構152は、平面反射鏡162をy軸に平行な回転軸vを中心として回転させるように駆動させる。回転軸vの位置は、回転に応じて平面反射鏡162での反射光の向きが変わるような位置であればよく、例えば、放物反射鏡140の反射光が通過する経路上であり得る。駆動機構152は、モータ等の駆動装置を含む。また、駆動機構152は、エンコーダ等の平面反射鏡162の角度情報を取得する装置を含む。これらの装置は制御装置200により制御される。また、駆動機構152により取得された平面反射鏡162の角度情報は、制御装置200に供給される。
【0062】
駆動機構152により平面反射鏡162が駆動され、平面反射鏡162が回転移動すると、平面反射鏡162での反射光の向きも回転する。これにより、本構成例の測距装置102は、平面反射鏡162での反射光の向きを回転移動させる走査が可能となる。また、第1構成例と同様に、本構成例の測距装置102は、平面反射鏡162での反射光をy軸方向に平行移動させる走査も可能である。したがって、本構成例の測距装置102は、第1構成例と同様の効果が得られることに加え、回転軸vでの回転移動、y軸方向の平行移動及び距離測定を組み合わせることにより、3次元の位置情報の取得が可能な3次元センサ装置として機能する。
【0063】
<測距装置の第4構成例>
次に、第4構成例として、対数螺旋反射鏡を更に備えた測距装置の構成例を説明する。上述の構成例と共通する要素についての説明は省略又は簡略化する。
【0064】
図12は、第4構成例に係る測距装置300の構造を示す斜視模式図である。
図13は、測距装置300を上面から見た構造を示す模式図である。これらの図を相互に参照しつつ測距装置300の構造を説明する。なお、
図12及び
図13において、基体110、蓋体120、取付部170等の光路の説明に必要のない要素については図示を省略していることがある。
【0065】
測距装置300は、センサユニット130、放物反射鏡340、駆動機構351、対数螺旋反射鏡361及び平面反射鏡362、363、364、365を備える。放物反射鏡340は、反射面340a、340bを有する。反射面340a、340bは、回転軸uに垂直な断面(
図12におけるxy平面)において、回転軸u上の点を焦点とする放物線をなしている。反射面340aと反射面340bは、
図13に示されているようにxz平面において、互いに垂直な位置関係になっている。
【0066】
センサユニット130からx軸の負方向に射出された光は、反射面340aにおいてz軸方向に反射され、その後、反射面340bにおいて、対数螺旋反射鏡361に向かってx軸の正方向に反射される。反射面340a、340bで2回反射をさせて光路をz方向にシフトさせることにより、放物反射鏡340での反射光がセンサユニット130により阻害されないようにすることができる。また、反射光がセンサユニット130に再入射しないため、
図7乃至
図9を参照して述べた説明と同様の理由により、検出精度を向上させることができる。
【0067】
対数螺旋反射鏡361は、柱状の形状をなしており、その側面に対数螺旋をなす反射面361aを有する。センサユニット130から射出された光は、反射面361aにより反射される。対数螺旋反射鏡361は、回転軸wを中心として駆動機構351により回転可能である。このとき、対数螺旋反射鏡361の角度に応じて、反射面361aで反射される光は平行移動する。
【0068】
図14及び
図15を参照して対数螺旋反射鏡361の構造をより詳細に説明する。
図14は、本構成例に係る対数螺旋反射鏡361の、回転軸wに垂直な面における断面図である。対数螺旋反射鏡361の側面である反射面361aは、回転軸wに垂直な断面において、4個の対数螺旋が連続的に連結された閉曲線をなしている。このように対数螺旋が連続的に連結された閉曲線とすることにより、センサユニット130から射出される光が入射し得る反射面361aのすべてが、回転軸wに対して垂直な断面において対数螺旋をなす構成が実現される。これにより、光が対数螺旋反射鏡361のどの面に入射された場合であっても反射光を走査に活用することができる。なお、対数螺旋は、等角螺旋又はベルヌーイの螺旋と呼ばれることもある。
【0069】
図15は、対数螺旋をなす反射面における光の反射を説明する図である。対数螺旋Spは、極座標における動径をr、極座標における偏角をθ、θの値がゼロのときのrの値をa、対数螺旋の中心を通る直線と対数螺旋の接線とのなす角度をbとしたとき、以下の式(2)の極方程式で表される。
【数2】
【0070】
ここで、対数螺旋Spの外側から式(2)の極方程式の原点Oに向かう入射光I11、I21と、その反射光I12、I22との関係について考える。入射光I11、I21が対数螺旋Spで反射する点における接線をt1、t2とし、その法線をS1、S2とする。入射光I11は、対数螺旋Spの動径r1の点において反射し、入射光I21は、対数螺旋Spの動径r2の点において反射するものとする(ただし、r1≠r2)。このとき、対数螺旋Spの性質により、入射光I11と接線t1とのなす角度及び入射光I21と接線t2とのなす角度はいずれもbとなる。したがって、入射光I11と法線S1のなす入射角φと、入射光I21と法線S2のなす入射角φは同一の角度となる。また、反射光I12と法線S1のなす反射角φと、反射光I22と法線S2のなす反射角φも同一の角度となる。φ及びbが弧度法で表現された角度である場合、φとbの関係は、以下の式(3)のようになる。
【数3】
【0071】
以上のことから、対数螺旋Spの外側から原点Oに向かう入射光I11は、対数螺旋Spのどの点で反射した場合においても同じ反射角φで反射することがわかる。そのため、原点Oを中心として対数螺旋Spを回転させた場合、対数螺旋Spへの入射光I11が反射する点は変化するが、反射光I12が反射する方向は変化しないため、反射光I12は平行移動する。
【0072】
本構成例の対数螺旋反射鏡361は、この性質を利用するため、回転軸wに垂直な断面において、反射面の少なくとも一部を、回転軸wが原点Oとなる対数螺旋としている。これにより、対数螺旋反射鏡361を回転軸wで回転させることにより、反射面361aで反射される光が平行移動するような走査が可能となる。
【0073】
再び
図13に戻り、対数螺旋反射鏡361での反射光による平行走査について説明する。対数螺旋反射鏡361で反射された光は、対数螺旋反射鏡361の角度に応じて、平面反射鏡362又は平面反射鏡364のいずれかに入射し反射される。平面反射鏡362で反射された光は、平面反射鏡363で反射され、測距装置300の外部に射出される。このときの射出方向は、z軸の正方向である。平面反射鏡364で反射された光は、平面反射鏡365で反射され、測距装置300の外部に射出される。このときの射出方向は、z軸の負方向である。
【0074】
対数螺旋反射鏡361が
図13に示されているように時計回りに回転すると、測距装置300から射出される光は、光路L5から光路L6に向かって平行移動する。射出光が光路L6である状態で更に対数螺旋反射鏡361が回転すると、射出光は光路L6から光路L7に不連続に変化する。その後、射出光は光路L7から光路L8に向かって平行移動し、光路L8から光路L5に不連続に変化する。このように、本構成例の測距装置300は、z軸の正方向と負方向の異なる向きを交互に走査することができる。
【0075】
これにより、本構成例の測距装置300は、射出光をx軸方向に平行移動させる走査が可能である。また、第1構成例と同様に、本構成例の測距装置300は、射出光をy軸方向に平行移動させる走査も可能である。したがって、本構成例の測距装置300は、第1構成例と同様の効果が得られることに加え、x軸方向、y軸方向の2次元の走査とz軸方向の距離測定とを組み合わせることにより、3次元の位置情報の取得が可能な3次元センサ装置として機能する。更に、本構成例の測距装置300は、z軸の正方向の走査と負方向とを交互に走査することができるため、1台の測距装置300で互いに異なる2方向の測距を行うことができる。
【0076】
<測距装置の第5構成例>
次に、第5構成例として、2つの光学系を備えた測距装置の構成例を説明する。上述の構成例と共通する要素についての説明は省略又は簡略化する。
【0077】
図16は、第5構成例に係る測距装置400を正面から見た構造を示す模式図である。
図17は、測距装置400を上面から見た構造を示す模式図である。これらの図を相互に参照しつつ測距装置400の構造を説明する。
【0078】
測距装置400は、第1の光学系401と、第2の光学系402とを備える。第1の光学系401は、センサユニット130、放物反射鏡140及び平面反射鏡160を備える。第1の光学系401は、第1構成例の測距装置100と同一のものであるため、説明を省略する。なお、第1の光学系401の上面図は、
図6と同様である。
【0079】
第2の光学系402は、放物反射鏡440及び平面反射鏡460を備える。放物反射鏡440は、反射面440aを有している。反射面440aは、回転軸uに垂直な断面(
図16におけるxy平面)において、回転軸u上の点を焦点とする放物線をなしている。放物反射鏡440は、放物反射鏡140と線対称な構造を有している。また、平面反射鏡460は、平面反射鏡160と線対称な構造を有している。放物反射鏡140と放物反射鏡440は、放物線の軸に対して対称な位置に配置される。また、平面反射鏡160と平面反射鏡460は、放物線の軸に対して対称な位置に配置される。なお、第2の光学系402の各要素を格納する筐体の構造は、例えば、第1構成例の
図4で示した筐体をy方向に反転させたものであり得る。
【0080】
センサユニット130から図中の左下方向に光が射出された場合には、反射面440aに入射される。反射面440aで反射された光は、光路L9、L10のように放物線の軸と平行になる。反射面440aで反射された光は、
図17に示されるように、第2の光学系402の外部に射出される。
【0081】
ここで、放物反射鏡140の反射面140a及び放物反射鏡440の反射面440aはいずれも放物線の頂点を除くように設けられている。この構成は
図9に示されている光路図に相当する。これにより、
図7乃至
図9の説明で述べたように、放物線の頂点での反射光がセンサユニット130に再入射されないため、検出精度の低減を抑制することができる。したがって、本構成例においても第1構成例と同様に、検出精度が向上された測距装置400を提供することができる。更に、本構成例では、2つの光学系を用いることにより、射出光の走査範囲を広くすることができる。
【0082】
<測距装置の第6構成例>
次に、第6構成例として、対数螺旋反射鏡及び2つの放物反射鏡を備えた測距装置の構成例を説明する。上述の構成例と共通する要素についての説明は省略又は簡略化する。
【0083】
図18は、第6構成例に係る測距装置301を斜めから見た構造を示す模式図である。
図19は、測距装置301を上面から見た構造を示す模式図である。本構成例の測距装置301は、第4構成例における測距装置300において、放物反射鏡340を第5構成例の放物反射鏡140及び放物反射鏡440に置き換えたものである。本構成例においても第4構成例と同様の効果が得られる。また、本構成例では、第4構成例の場合と比べ、放物反射鏡の構造が簡略化される。
【0084】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態として、第5構成例の測距装置400を備えた物品陳列棚を説明する。上述の実施形態と共通する要素についての説明は省略又は簡略化する。
【0085】
図20は、第2実施形態に係る物品陳列棚500の斜視模式図である。
図21は、物品陳列棚500の側面模式図である。これらの図を相互に参照しつつ物品陳列棚500の構造を説明する。
【0086】
物品陳列棚500は、物品540を陳列するための棚であり、例えば、商業施設に設置される商品陳列棚であり得る。物品陳列棚500は、棚510と、2つの測距装置400と、反射部材800とを備える。2つの測距装置400は、棚510の一方の側部(第1の側部)に配置されている。また、反射部材800は、反射面800aが測距装置400の側を向くように、棚510の他方の側部(第2の側部)に配置されている。棚510は、棚板530で区分された4つの陳列部520を備える。陳列部520には商品等の物品540が陳列される。すなわち、測距装置400と反射部材800とは、陳列部520の前面を間に挟んで対向している。また、陳列部520は、物品540の出し入れを行うための開口部570を有する。なお、測距装置400及び陳列部520の個数は図示されたものに限定されるものではなく、複数であっても単数であってもよい。
【0087】
測距装置400は、第5構成例で述べた第1の光学系401と、第2の光学系402とを備えた装置である。第1の光学系401又は第2の光学系402を通過してz軸の正方向に射出される光は、陳列部520の開口部570の前面を横切るように通過する。これにより、陳列部520の開口部570の前面には測距装置400による検出領域550が形成される。顧客560が陳列部520から物品540を取り出した場合、あるいは、取り出した物品540を陳列部520に戻した場合には、物品540及び顧客560の手が検出領域550を通過する。測距装置400は、検出領域550を通過する物品540又は顧客560の手を検出することにより物品540の出し入れの検出を行う。陳列部520に複数の物品540が配置され得る場合には、測距装置400は、出し入れを行った位置又は出し入れを行った物品540の形状を検出することにより、出し入れを行った物品540を特定してもよい。
【0088】
反射部材800には第1実施形態で述べたものと同様のものが用いられ得る。
図20においては、反射部材800は棚510とは別の部材として図示されているが、棚510の一部が反射部材800として機能するものであってもよい。また、物品陳列棚500が設置される商業施設の壁が反射部材800として機能してもよい。
【0089】
本実施形態の物品陳列棚500は、測距装置400を備えることにより、陳列されている物品540の出し入れの検出を行うことができる。この機能は、例えば、商品の管理、盗難の防止等に用いられ得る。また、上述のように測距装置400は、光の射出方向の厚さが小さいため、物品陳列棚500の側面の狭い場所に設置することが可能である。これにより、物品陳列棚500全体の大きさを低減することができる。
【0090】
また、本実施形態の物品陳列棚500は、反射部材800を備えることにより、第1実施形態で述べたものと同様の理由により、物品540の出し入れ等による検出領域550内の物体の検出精度が向上されている。
【0091】
必須ではないが、
図20に示されているように棚板530のy軸方向の位置は、第1の光学系401と、第2の光学系402の間とすることが望ましい。第5構成例の測距装置400は、第1の光学系401と、第2の光学系402の間が不感領域となるが、この不感領域に棚板530を配置することにより、不感領域を実質的に少なくすることができる。
【0092】
上述の不感領域に棚板530を配置する構成は、言い換えると以下のように説明することもできる。
図20において、上から1段目と3段目の陳列部520を第1の陳列部と呼び、上から2段目と4段目の陳列部520を第2の陳列部と呼ぶ。また、第1の陳列部に対応する開口部570を第1の開口部と呼び、第2の陳列部に対応する開口部570を第2の開口部と呼ぶ。このとき、
図20に示されるように、第1の光学系401から射出される光は、第1の開口部の前面を横切るように配置され、第2の光学系402から射出される光は、第2の開口部の前面を横切るように配置される。この場合において、第1の陳列部と第2の陳列部とは、互いに、棚板530で区分されており、棚板530の位置が第1の光学系401と、第2の光学系402の間の不感領域に対応している。
【0093】
なお、本実施形態の物品陳列棚500に設置される測距装置の一例として第5構成例の測距装置400を挙げたが他の構成例の測距装置を用いてもよい。
【0094】
[第3実施形態]
次に、本発明の第8実施形態として、第2実施形態に対して測距装置の配置を変更した物品陳列棚を説明する。上述の実施形態と共通する要素についての説明は省略又は簡略化する。
【0095】
図22は、第3実施形態に係る物品陳列棚501の正面模式図である。本実施形態の物品陳列棚501は、棚511と、棚511の周囲に配置された2つの測距装置400a、400cと、2つの反射部材800とを備える。本実施形態の物品陳列棚501においては、測距装置及び反射部材の配置が第2実施形態におけるものと異なる。測距装置400aは棚511の左側面に配置されている。測距装置400cは棚511の上面に配置されている。2つの反射部材800は棚511の右側面及び下面に配置されている。各測距装置400から射出される光は、陳列部521の前面を横切るように通過し、向かい合う反射部材800により反射される。これにより、陳列部521の開口部571の前面には測距装置400による検出領域が形成され、測距装置400は、物品540の出し入れの検出を行うことができる。
【0096】
また、本実施形態の物品陳列棚501においても、第2実施形態と同様に、反射部材800を備えることにより、物品540の出し入れ等による検出領域550内の物体の検出精度が向上されている。
【0097】
また、測距装置400a(第1のセンサ装置)は、z軸方向である第1の方向に光を射出し、測距装置400c(第2のセンサ装置)はy軸方向である第2の方向に光を射出するので、これらは光の射出方向が互いに垂直である。これにより、2方向から顧客560が物品540の出し入れを行った場所を検出することができ、更に検出精度が向上する。
【0098】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態として、第2実施形態に対して測距装置の配置を変更した物品陳列棚を説明する。上述の実施形態と共通する要素についての説明は省略又は簡略化する。
【0099】
図23は、第4実施形態に係る物品陳列棚502の側面模式図である。本実施形態の物品陳列棚502は、棚511の形状と、第2の光学系402の配置が第2実施形態におけるものと異なる。本実施形態の棚511は、最下段の棚板531が顧客側に突出している。これに対応させるため、最下段に設けられた第2の光学系402は、その上段の第1の光学系401に対して、角度θをなすように傾けて設けられている。これにより、最下段に設けられた第2の光学系402により形成される検出領域551は、その上段の第1の光学系401により形成される検出領域550に対して角度θをなしている。これにより、段ごとに棚板の幅が異なる棚に対しても適切な位置に検出領域を配置させることができる。第2の光学系402を傾けて配置する際には、第1の光学系401内のセンサユニット130の回転軸uを中心に第2の光学系402を回転させることにより、平行走査が可能な光学配置を維持したまま検出領域を傾けることができる。
【0100】
なお、角度θの範囲は、例えば、160度より大きく180度より小さい範囲に設定される。第1の光学系401と第2の光学系402はx方向に縦長な形状であるため、角度θが160度以下になると部材同士が干渉する場合があるためである。
【0101】
また、本実施形態の物品陳列棚502においても、第2実施形態及び第3実施形態と同様に、反射部材800を備えることにより、物品540の出し入れ等による検出領域550、551内の物体の検出精度が向上されている。
【0102】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態として、第6構成例の測距装置301を備えた物品陳列棚を説明する。上述の実施形態と共通する要素についての説明は省略又は簡略化する。
【0103】
図24は、第5実施形態に係る物品陳列棚503の斜視模式図である。本実施形態の物品陳列棚503は、棚510、512と、2つの測距装置301と、2つの反射部材800とを備える。2つの測距装置301は、棚510の側面と棚512の側面との間に配置されている。また、2つの反射部材800は、いずれも反射面800aが測距装置301の側を向くように、棚510の他方の側面及び棚512の他方の側面に配置されている。第6構成例の測距装置301は2方向に光を射出し、検出領域を形成することができるため、測距装置301は左右の棚510、512の両方に対して物品540の出し入れの検出を行うことができる。これにより、例えば、第5構成例の測距装置400を設置した場合と比べ、測距装置の設置個数を削減することができる。なお、本実施形態の物品陳列棚503に用いる測距装置は、第4構成例の測距装置300であってもよい。
【0104】
また、本実施形態の物品陳列棚503においても、第2実施形態乃至第4実施形態と同様に、反射部材800を備えることにより、物品540の出し入れ等による検出領域550内の物体の検出精度が向上されている。
【0105】
上述の実施形態において説明した装置は以下の第6実施形態のようにも構成することができる。
【0106】
[第6実施形態]
図25は、第6実施形態に係る物体検出システム900の概略構成を示すブロック図である。物体検出システム900は、測距装置901と、反射部材902とを備える。測距装置901は、検出領域を通過するように光を射出するとともに、反射された光を受ける。測距装置901は、射出される光の光路を変化させる走査を行うよう構成されている。反射部材902は、検出領域を通過した光を測距装置901に向けて反射するように走査範囲内に設けられている。
【0107】
本実施形態によれば、検出精度が向上された物体検出システム900が提供される。
【0108】
[変形実施形態]
なお、上述の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を、他の実施形態に追加した実施形態、あるいは他の実施形態の一部の構成と置換した実施形態も本発明を適用し得る実施形態であると理解されるべきである。
【0109】
上述の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0110】
(付記1)
検出領域を通過するように光を射出するとともに、反射された光を受ける測距装置であって、射出される光の光路を変化させる走査を行うよう構成されている、測距装置と、
前記検出領域を通過した光を前記測距装置に向けて反射するように走査範囲内に設けられた反射部材と、
を備える、物体検出システム。
【0111】
(付記2)
前記反射部材からの反射光のうち、前記反射部材から前記測距装置に向かう反射光の強度は、前記反射部材から前記測距装置以外の方向に向かう反射光の強度よりも強い、
付記1に記載の物体検出システム。
【0112】
(付記3)
前記反射部材は、再帰性反射材を含む、
付記1又は2に記載の物体検出システム。
【0113】
(付記4)
前記反射部材は、鏡面反射材を含む、
付記1乃至3のいずれか1項に記載の物体検出システム。
【0114】
(付記5)
前記反射部材は、第1の部分と、前記第1の部分よりも低い反射率を有する第2の部分とを有する、
付記1乃至4のいずれか1項に記載の物体検出システム。
【0115】
(付記6)
前記第1の部分は、前記走査範囲内において、前記測距装置から射出された光が入射される範囲であり、
前記第2の部分は、前記走査範囲内において、前記測距装置から射出された光が入射されない範囲である、
付記5に記載の物体検出システム。
【0116】
(付記7)
前記第2の部分は、前記第1の部分を囲うように配されている、
付記5又は6に記載の物体検出システム。
【0117】
(付記8)
前記第1の部分には、再帰性反射材又は鏡面反射材が設けられており、
前記第2の部分には、再帰性反射材及び鏡面反射材がいずれも設けられていない、
付記5乃至7のいずれか1項に記載の物体検出システム。
【0118】
(付記9)
前記第2の部分の基材の表面には、反射率を低減する処理が施されている、
付記5乃至8のいずれか1項に記載の物体検出システム。
【0119】
(付記10)
前記第2の部分の前記基材の表面は、光吸収材料により覆われている、
付記9に記載の物体検出システム。
【0120】
(付記11)
前記第2の部分の前記基材の表面粗さは、前記第1の部分の基材の表面粗さよりも大きい、
付記9に記載の物体検出システム。
【0121】
(付記12)
前記測距装置は、対象物から反射された光に基づいて距離情報を取得するLiDAR(Light Detection and Ranging)装置である、
付記1乃至11のいずれか1項に記載の物体検出システム。
【0122】
(付記13)
付記1乃至12のいずれか1項に記載の物体検出システムと、
物品を陳列する陳列部と、
を備える、物品陳列棚。
【0123】
(付記14)
前記測距装置は、前記陳列部の第1の側部に配されており、
前記反射部材は、前記第1の側部に対向する前記陳列部の第2の側部に配されている、
付記13に記載の物品陳列棚。
【0124】
この出願は、2018年10月29日に出願された日本出願特願2018-202829を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0125】
10:対象物
100、101、102、300、301、400、400a、400c、901:測距装置
110:基体
120:蓋体
130:センサユニット
140、340、440:放物反射鏡
140a、140b、140c、160a、340a、340b、361a、440a、800a:反射面
150:位置調整機構
151、152、351:駆動機構
160、161、162、362、363、364、365、460:平面反射鏡
170:取付部
200:制御装置
210:インターフェース
220:制御部
230:信号処理部
240:記憶部
361:対数螺旋反射鏡
401:第1の光学系
402:第2の光学系
500、501、502、503:物品陳列棚
510、511、512:棚
520、521:陳列部
530、531:棚板
540:物品
550、551、850:検出領域
560:顧客
570、571:開口部
800、902:反射部材
900:物体検出システム
R1:第1の部分
R2:第2の部分