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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】挿管装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20231017BHJP
   A61B 1/267 20060101ALI20231017BHJP
   A61M 16/04 20060101ALI20231017BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
A61B1/045 623
A61B1/045 615
A61B1/267 510
A61M16/04 Z
G02B23/24 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018062119
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019170666
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-07
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】若林 勤
【合議体】
【審判長】樋口 宗彦
【審判官】石井 哲
【審判官】松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0263935(US,A1)
【文献】特開2014-210085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00- 1/32
A61M 11/00- 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の口から目的部位に向かって挿入される長尺形状の挿入部と、前記挿入部の長手方向に沿って延びるように形成されて前記挿入部に対して進退可能に配置された挿管用チューブと、前記挿入部に設けられると共に前記挿入部の先端部近傍に配置されて前記被検者の体内を撮像する撮像部とを備える挿管装置であって、
予め設定された前記目的部位の特徴量に基づいて、前記撮像部で撮像された体内画像から前記目的部位を検出する検出部と、
前記挿管装置と一体及び/または別体に配置され、前記挿入部を操作する操作者に情報を報知する報知部と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記被検者の目的部位に関する情報を報知するように前記報知部を制御する報知制御部とを備え
前記挿入部は前記挿管用チューブの外側に位置し、
前記挿管用チューブの先端部近傍には挿入マークが付されていることを特徴とする挿管装置。
【請求項2】
前記被検者の目的部位に関する情報は、前記挿入部の操作を支援する支援情報である請求項1に記載の挿管装置。
【請求項3】
前記報知部は、前記撮像部で撮像された体内画像を表示する表示部を有し、
前記報知制御部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記挿入部の操作を支援する支援情報を報知するように前記表示部の表示状態を変化させる請求項2に記載の挿管装置。
【請求項4】
前記報知制御部は、前記検出部において前記目的部位が検出された場合に、前記目的部位の位置に部位マークを前記体内画像に重畳して表示させることにより前記支援情報を報知する請求項3に記載の挿管装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記目的部位と異なる非目的部位の特徴量に基づいて前記体内画像から前記非目的部位を検出し、
前記報知制御部は、前記検出部において前記非目的部位が検出された場合に、前記非目的部位の位置に前記部位マークと異なる非部位マークを前記体内画像に重畳して表示させることにより前記支援情報を報知する請求項4に記載の挿管装置。
【請求項6】
前記検出部で検出された前記目的部位の位置と前記挿管用チューブの進行方向に基づいて、前記挿管用チューブを前記目的部位に挿入可能か否かを判定する挿管判定部をさらに有し、
前記報知制御部は、前記挿管判定部の判定結果に基づいて前記表示部の表示状態を変化させることにより前記支援情報を報知する請求項3~5のいずれか一項に記載の挿管装置。
【請求項7】
前記報知制御部は、前記挿管判定部において前記挿管用チューブを前記目的部位に挿入可能と判定された場合に、前記検出部で検出された前記目的部位の位置に前記体内画像に重畳して表示した部位マークの表示状態を変化させることにより前記支援情報を報知する請求項6に記載の挿管装置。
【請求項8】
前記検出部は、前記目的部位と異なる非目的部位の特徴量に基づいて前記体内画像から前記非目的部位を検出し、
前記挿管判定部は、前記検出部で検出された前記非目的部位の位置と前記挿管用チューブの進行方向に基づいて、前記挿管用チューブを前記非目的部位に挿入可能か否かを判定し、
前記報知制御部は、前記挿管判定部において前記挿管用チューブを前記非目的部位に挿入可能と判定された場合に、前記表示部に前記挿管用チューブの進行方向を示すために表示されたターゲットマークを消去することにより前記支援情報を報知する請求項6または7に記載の挿管装置。
【請求項9】
前記報知部は、前記操作者が把持する把持部を振動させる振動部、および、前記操作者に警告音を出力する音出力部のうち少なくとも一方をさらに有し、
前記報知制御部は、前記挿管判定部において前記挿管用チューブを前記非目的部位に挿入可能と判定された場合に、前記振動部および前記音出力部のうち少なくとも一方を動作させることにより前記支援情報を報知する請求項8に記載の挿管装置。
【請求項10】
前記表示部は、前記挿管用チューブの進行方向を示すターゲットマークを前記体内画像に重畳して表示し、
前記ターゲットマークは、前記挿管用チューブの外径を示す計測形状を有し、前記挿入部が体内に挿入される挿入量に応じて前記計測形状に対する前記目的部位の大きさが変わることにより、前記挿入部の操作を支援する支援情報を報知する請求項3~9のいずれか一項に記載の挿管装置。
【請求項11】
前記検出部は、前記目的部位として声門を検出する請求項1~10のいずれか一項に記載の挿管装置。
【請求項12】
前記検出部に接続され、前記被検者の目的部位を検出するための特徴量を格納する特徴量格納部を備え、
前記特徴量格納部は、前記挿管装置で測定中の前記被検者から取得された声門の特徴量を格納し、前記格納された特徴量に基づいて、前記検出部は前記被検者の目的部位を検出することを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の挿管装置。
【請求項13】
前記特徴量格納部は、挿管装置で測定中の前記被検者からリアルタイムに取得された声門の特徴量、過去の測定時において取得された声門の特徴量、またはそれらの声門を収集して算出された特徴量の少なくとも1つを格納し、前記格納された特徴量に基づいて、前記検出部は前記被検者の目的部位を検出することを特徴とする請求項12に記載の挿管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、挿管装置に係り、特に、被検者の口から挿入された挿入部に沿って挿管用チューブを目的部位に挿入するための挿管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気管などの目的部位への挿管は、被検者の口から挿入された喉頭鏡で喉頭展開を行い外部から目的部位を直接視認することで、目的部位に向かって挿管用チューブが挿入されていた。しかしながら、目的部位と挿管用チューブの先端部を外部から明確に視認することは困難であり、挿管用チューブを目的部位へスムーズに挿入できないおそれがあった。
【0003】
そこで、目的部位と挿管用チューブの先端部を明確に視認する技術として、例えば、特許文献1には、挿入具を患者の気管へ挿入する際の操作性に優れた挿管支援装置が提案されている。この挿管支援装置は、挿入具の先端が位置する観察部位が撮像手段で撮像され、その撮像された画像がディスプレイ部に表示されるため、気管と挿管用チューブの先端部を画像で明確に視認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-144123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の挿管支援装置は、ディスプレイ部に表示された画像から操作者が気管を容易に認識できない場合などにおいて、気管への挿管に時間を要するおそれがあった。例えば、吐物および血液などで画像が不明瞭となると、気管と食道を速やかに見分けることが困難となる。特に、挿管の経験が浅い非熟練者は、気管の認識に長時間を要するおそれがあった。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、目的部位に速やかに挿管する挿管装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る挿管装置は、被検者の口から目的部位に向かって挿入される長尺形状の挿入部と、挿入部の長手方向に沿って延びるように形成されて挿入部に対して進退可能に配置された挿管用チューブと、挿入部の先端部近傍に配置されて被検者の体内を撮像する撮像部とを備える挿管装置であって、予め設定された目的部位の特徴量に基づいて、撮像部で撮像された体内画像から目的部位を検出する検出部と、挿管装置と一体及び/または別体に配置され、挿入部を操作する操作者に情報を報知する報知部と、検出部の検出結果に基づいて被検者の目的部位に関する情報を報知するように報知部を制御する報知制御部とを備えるものである。
【0008】
ここで、被検者の目的部位に関する情報は、挿入部の操作を支援する支援情報であることが好ましい。
【0009】
また、報知部は、撮像部で撮像された体内画像を表示する表示部を有し、報知制御部は、検出部の検出結果に基づいて、挿入部の操作を支援する支援情報を報知するように表示部の表示状態を変化させることが好ましい。
【0010】
また、報知制御部は、検出部において目的部位が検出された場合に、目的部位の位置に部位マークを体内画像に重畳して表示させることにより支援情報を報知することが好ましい。
【0011】
また、検出部は、目的部位と異なる非目的部位の特徴量に基づいて体内画像から非目的部位を検出し、報知制御部は、検出部において非目的部位が検出された場合に、非目的部位の位置に部位マークと異なる非部位マークを体内画像に重畳して表示させることにより支援情報を報知することができる。
【0012】
また、検出部で検出された目的部位の位置と挿管用チューブの進行方向に基づいて、挿管用チューブを目的部位に挿入可能か否かを判定する挿管判定部をさらに有し、報知制御部は、挿管判定部の判定結果に基づいて表示部の表示状態を変化させることにより支援情報を報知することが好ましい。
【0013】
また、報知制御部は、挿管判定部において挿管用チューブを目的部位に挿入可能と判定された場合に、検出部で検出された目的部位の位置に体内画像に重畳して表示した部位マークの表示状態を変化させることにより支援情報を報知することができる。
また、検出部は、目的部位と異なる非目的部位の特徴量に基づいて体内画像から非目的部位を検出し、挿管判定部は、検出部で検出された非目的部位の位置と挿管用チューブの進行方向に基づいて、挿管用チューブを非目的部位に挿入可能か否かを判定し、報知制御部は、挿管判定部において挿管用チューブを非目的部位に挿入可能と判定された場合に、表示部に挿管用チューブの進行方向を示すために表示されたターゲットマークを消去することにより支援情報を報知することもできる。
【0014】
また、報知部は、操作者が把持する把持部を振動させる振動部、および、操作者に警告音を出力する音出力部のうち少なくとも一方をさらに有し、報知制御部は、挿管判定部において挿管用チューブを非目的部位に挿入可能と判定された場合に、振動部および音出力部のうち少なくとも一方を動作させることにより支援情報を報知することができる。
【0015】
また、表示部は、挿管用チューブの進行方向を示すターゲットマークを体内画像に重畳して表示し、ターゲットマークは、挿管用チューブの外径を示す計測形状を有し、挿入部が体内に挿入される挿入量に応じて計測形状に対する目的部位の大きさが変わることにより、挿入部の操作を支援する支援情報を報知することが好ましい。
また、検出部は、目的部位として声門を検出することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、検出部が予め設定された目的部位の特徴量に基づいて撮像部で撮像された体内画像から目的部位を検出し、報知制御部が検出部の検出結果に基づいて被検者の目的部位に関する情報を報知するように報知部を制御するので、目的部位に速やかに挿管する挿管装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の実施の形態1に係る挿管装置の構成を示す図である。
図2】装置本体の構成を示すブロック図である。
図3】被検者の口から挿入部が挿入される様子を示す図である。
図4】ターゲットマークを体内画像に重畳して表示した様子を示す図である。
図5】部位マークを体内画像に重畳して表示した様子を示す図である。
図6】実施の形態2において装置本体の構成を示すブロック図である。
図7】声門がターゲットマークに重なるように挿入部を操作した様子を示す図である。
図8】実施の形態3において装置本体の構成を示すブロック図である。
図9】体内画像に含まれる食道が検出された様子を示す図である。
図10】食道がターゲットマークに重なるように挿入部を操作した様子を示す図である。
図11】実施の形態4において装置本体の要部の構成を示すブロック図である。
図12】実施の形態5において装置本体の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1(a)および(b)に、この発明の実施の形態1に係る挿管装置の構成を示す。この挿管装置は、装置本体1を有し、この装置本体1の下部に挿入部2が着脱自在に取り付けられると共に装置本体1の上部に表示部3が設けられている。また、挿入部2の側部に沿って挿管用チューブ4が配置され、挿入部2の先端部近傍に撮像部5が配置されている。なお、図1(b)では、挿管用チューブ4を省略して示している。
【0019】
装置本体1は、操作者が挿管の操作を行うもので、下半部に把持部6が形成されている。把持部6は、操作者が把持しやすいように操作者の手に収まる大きさで柱状に形成されている。
挿入部2は、被検者の口から声門に向かって挿入されるもので、長尺形状を有すると共に先端部側が湾曲するように形成されている。また、挿入部2の側部には、基端部から先端部に延びる溝部7が形成されている。溝部7は、挿管用チューブ4を進退可能に保持するもので挿管用チューブ4に応じた大きさで形成されている。
【0020】
挿管用チューブ4は、管形状を有すると共に挿入部2の溝部7に沿って延びるように形成されている。ここで、挿管用チューブ4は、挿入部2の先端部から進退可能に溝部7に配置されており、溝部7に規制されて所定の進行方向に進行させることができる。また、挿管用チューブ4の先端部近傍には、挿管用チューブ4を声門に挿入する際に目印となる挿入マーク4aが付されている。
撮像部5は、被検者の体内画像を撮像するもので、挿入部2の先端部近傍に前方を向く、すなわち挿入部2の延長線が延びる方向を向くように配置されている。撮像部5は、例えば、CCDイメージセンサなどから構成することができる。
【0021】
表示部3は、撮像部5に接続されて、操作者が挿入部2および挿管用チューブ4を操作するために撮像部5で撮像された体内画像を表示するものである。表示部3は、例えば、液晶ディスプレイなどのディスプレイ装置から構成することができる。
【0022】
次に、装置本体1の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、装置本体1は、撮像部5に接続された画像処理部8を有し、この画像処理部8に表示制御部9および表示部3が順次接続されている。また、画像処理部8は、検出部10および報知制御部11に順次接続され、この報知制御部11が表示制御部9に接続されている。また、検出部10には、特徴量格納部12が接続されている。さらに、画像処理部8、検出部10、報知制御部11および表示制御部9に本体制御部13が接続され、この本体制御部13に操作部14および格納部15がそれぞれ接続されている。
【0023】
画像処理部8は、撮像部5で撮像された体内画像の画像信号を処理して、表示部3に表示させる体内画像を生成するものである。
表示制御部9は、画像処理部8で生成された体内画像を表示するように表示部3を制御するものである。また、表示制御部9は、挿管用チューブ4の進行方向における所定の位置を示すターゲットマークを体内画像に重畳して表示部3に表示させる。ここで、挿管用チューブ4の進行方向は、挿入部2における溝部7の形成方向に基づいて設定、例えば溝部7の延長線上に設定される。
【0024】
特徴量格納部12は、メモリまたはハードディスク等によって構成され、予め撮像された声門の画像からその特徴量を抽出して格納されている。声門の特徴量としては、例えば、声帯の形状値および声帯の色度などが挙げられる。
検出部10は、特徴量格納部12から読み出される声門の特徴量に基づいて、画像処理部8で生成された体内画像から声門を目的部位として検出する。
【0025】
報知制御部11は、検出部10の検出結果に基づいて表示制御部9を介して表示部3の表示状態を変化させることにより、操作者による挿入部2の操作を支援する支援情報を報知する。具体的には、報知制御部11は、検出部10において声門が検出された場合に、声門の位置に部位マークを体内画像に重畳して表示させることにより支援情報を報知する。
ここで、表示部3は、体内画像を表示する機能に加えて、支援情報を報知する機能を有しており、本発明における報知部を構成するものである。
【0026】
操作部14は、操作者が入力操作を行うためのもので、ボタンおよびタッチパネル等から構成することができる。
格納部15は、動作プログラム等を格納するもので、メモリ、ハードディスクおよびSDカード等の記憶装置を用いることができる。
【0027】
本体制御部13は、操作者により操作部14から入力された各種の操作信号等に基づいて挿管装置内の各部の制御を行うものである。
なお、画像処理部8、表示制御部9、検出部10、報知制御部11および本体制御部13は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0028】
次に、この実施の形態の動作について説明する。
まず、図1に示す挿管装置において、図示しない電源部がONされて挿管装置の各部が起動される。続いて、操作者は、図3に示すように、挿入部2を被検者Sの口から声門G1に向かって挿入させる。このとき、挿入部2の先端部近傍に配置された撮像部5により被検者Sの体内画像が撮像されており、図2に示すように、撮像部5から画像処理部8に体内画像の画像信号が順次出力される。画像処理部8は、体内画像の画像信号に基づいて表示部3に表示させる体内画像を生成し、その体内画像を表示制御部9と検出部10にそれぞれ出力する。
【0029】
画像処理部8で生成された体内画像が表示制御部9に入力されると、表示制御部9は、体内画像を表示部3に表示させる。これにより、操作者は、表示部3に表示された体内画像を視認しつつ挿入部2を声門G1に向かって安全に挿入することができる。このとき、表示部3には、図4に示すように、予め設定された挿管用チューブ4の進行方向に対応する位置にターゲットマークM1が表示制御部9により体内画像Rに重畳して表示されている。なお、ターゲットマークM1は、例えば、緑色で表示することができる。
【0030】
一方、画像処理部8で生成された体内画像が検出部10に入力されると、検出部10は、声門G2の特徴量に基づいて体内画像Rに含まれる声門G1を検出する。具体的には、検出部10は、特徴量格納部12に格納された声門G2の特徴量に基づいて体内画像Rに含まれる声門G1を探索する。声門G2の特徴量としては、例えば、声門G1を構成する声帯の形状値および声帯の色度などが挙げられる。声帯は、一般的に、ひだ状に湾曲して延びる形状で且つ白色に近い色を有するなど、特徴的な形状値および色度を有している。このため、声帯の形状値および色度に基づいて体内画像Rを探索することで体内画像Rに含まれる声門G1を確実に検出することができる。
【0031】
なお、特徴量格納部12は、声門G2の特徴量に加えて、声門G2の周辺部位の特徴量、例えば喉頭蓋や披裂軟骨などの特徴量を格納することが好ましい。これにより、検出部10は、特徴量格納部12に格納されている声門G2の特徴量及び声門G2の周辺部位の特徴量に基づいて体内画像Rを探索し、声門G2との類似度および声門G2の周辺部位との関連度に基づいて体内画像Rに含まれる声門G1を高精度に検出することができる。
【0032】
また、特徴量格納部12は、挿管装置で測定中の被検者Sからリアルタイムに取得された声門G2の特徴量、過去の測定時において取得された声門G2の特徴量、他の被検者から過去の測定時に取得された声門G2の特徴量、またはそれらの声門G2を収集して算出された特徴量を格納することができる。なお、声門G2の特徴量は、挿管装置で測定されたものに限られず、外部の医療機器装置などで収集されたものを利用してもよい。
【0033】
なお、特徴量格納部12は、様々な形態の声門G2の特徴量を格納することが好ましい。例えば、病気により変形した声門G2の特徴量、血液および吐物などの遮蔽物が付着した声門G2の特徴量などを格納することができる。これにより、検出部10は、体内画像Rに含まれる声門G1が稀な形態を有する場合であっても、その声門G1を確実に検出することができる。
声門G1の検出結果は、検出部10から報知制御部11に出力される。
【0034】
検出部10の検出結果が報知制御部11に入力されると、報知制御部11は、検出結果に基づいて表示制御部9を介して表示部3の表示状態を変化させることにより、挿入部2の操作を支援する支援情報を報知する。例えば、報知制御部11は、図5に示すように、検出部10において声門G1が検出された場合に、検出部10で検出された声門G1の位置に部位マークM2を体内画像Rに重畳して表示部3に表示させる。これにより、操作者は、体内画像Rにおける声門G1の位置を速やかに把握することができ、声門G1の位置がターゲットマークM1の位置、すなわち挿管用チューブ4の進行方向と一致するように挿入部2の操作を誘導することができる。なお、部位マークM2は、例えば、黄色で表示することができる。
【0035】
このようにして、声門G1とターゲットマークM1の位置が一致し、操作者が挿管用チューブ4を声門G1に挿入可能と判断すると、挿管用チューブ4を前方に進行させて、挿管用チューブ4の先端部を声門G1に挿入させる。このとき、操作者は、挿管用チューブ4の側面に付された挿入マーク4aを指標に挿管用チューブ4の挿入量を調節することにより、挿管用チューブ4を適切な位置まで容易に挿入することができる。
【0036】
本実施の形態によれば、検出部10が予め設定された声門G2の特徴量に基づいて撮像部5で撮像された体内画像Rから声門G1を検出し、報知制御部11が検出部10において声門G1が検出された場合に声門G1の位置に部位マークM2を表示させるため、挿入部2の操作を誘導することができ、挿管用チューブ4を声門G1に速やかに挿入することができる。
【0037】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、報知制御部11は、検出部10で検出された声門G1の位置に部位マークM2を表示することにより挿入部の操作を支援する支援情報を報知したが、検出部10の検出結果に基づいて表示部3の表示状態を変化させることにより支援情報を報知できればよく、部位マークM2を表示させるものに限られるものではない。
例えば、図6に示すように、実施の形態1の報知制御部11に換えて報知制御部21を配置すると共に検出部10と報知制御部21の間に挿管判定部22を新たに配置することができる。
【0038】
挿管判定部22は、検出部10で検出された声門G1の位置と挿管用チューブ4の進行方向とに基づいて、挿管用チューブ4を声門G1に挿入可能か否かを判定する。すなわち、挿管判定部22は、検出部10で検出された声門G1の位置が挿管用チューブ4の進行方向に存在するか否かを判定する。ここで、挿管用チューブ4の進行方向は、例えば、挿入部2における溝部7の形成方向に基づいて設定することができる。
【0039】
報知制御部21は、挿管判定部22の判定結果に基づいて表示制御部9を介して表示部3の表示状態を変化させることにより、操作者による挿入部2の操作を支援する支援情報を報知する。具体的には、報知制御部21は、挿管判定部22において挿管用チューブ4を声門G1に挿入可能と判定された場合に、体内画像Rに重畳して表示された部位マークM2の表示状態を変化させることにより支援情報を報知する。
【0040】
このような構成により、実施の形態1と同様に、検出部10が声門G2の特徴量に基づいて体内画像Rに含まれる声門G1を検出する。検出された声門G1の位置が検出部10から挿管判定部22に入力されると、挿管判定部22は、声門G1の位置と、挿管用チューブ4の進行方向、すなわちターゲットマークM1の位置とに基づいて、挿管用チューブ4が声門G1に挿入可能か否かを判定する。
【0041】
例えば、図5に示すように、声門G1の位置とターゲットマークM1の位置が異なる場合には、挿管判定部22は、挿管用チューブ4が声門G1に挿入不可能と判定する。一方、声門G1の位置とターゲットマークM1の位置が一致する場合には、挿管判定部22は、挿管用チューブ4が声門G1に挿入可能と判定する。例えば、図7に示すように、操作者が、声門G1とターゲットマークM1が重なるように挿入部2を操作した場合には、検出部10で検出される声門G1の位置とターゲットマークM1の位置とが一致し、挿管判定部22は、挿管用チューブ4を声門G1に挿入可能と判定する。
挿管判定部22は、判定結果を報知制御部21に出力する。
【0042】
挿管判定部22の判定結果が報知制御部21に入力されると、報知制御部21は、挿管判定部22の判定結果に応じて、表示制御部9を介して、表示部3の表示状態を変化させることにより、操作者による挿入部2の操作を支援する支援情報を報知する。
具体的には、報知制御部21は、挿管判定部22において挿管用チューブ4を声門G1に挿入不可能と判定された場合には、実施の形態1と同様に、検出部10で検出された声門G1の位置に黄色の部位マークM2を表示させる。一方、報知制御部21は、挿管判定部22において挿管用チューブ4を声門G1に挿入可能と判定された場合には、部位マークM2を黄色と異なる色に変化させる。
【0043】
このように、部位マークM2の色を変化させることにより、声門G1の位置と挿管用チューブ4の進行方向が一致するように挿入部2の操作を誘導することができ、操作者は挿管用チューブ4が声門G1に挿入可能であることを容易に把握することができる。
なお、部位マークM2は、例えば、黄色から緑色に変化させることができる。
【0044】
ここで、ターゲットマークM1は、挿管用チューブ4の外径を示す計測形状を有することが好ましい。例えば、ターゲットマークM1は、図7に示すように、中央部に挿管用チューブ4の外径に応じた隙間Lを形成する計測形状を有することができる。これにより、挿入部2が体内に挿入される挿入量に応じて隙間Lに対する声門G1の大きさ、例えば声帯D間の距離が変わるため、操作者による挿入部2の操作を支援する支援情報を報知することができる。
具体的には、ターゲットマークM1の隙間Lに対して声帯D間の距離が小さい場合には、挿入部2の挿入量が少ない、すなわち挿入部2の先端部が声門G1に対して遠くに位置していると判断し、挿入部2を声門G1に向かってさらに挿入させる。また、挿入部2の挿入位置をより高精度に調節するために、距離だけでなく声門G1の大きさも判別して挿入量の大小を判別することが好ましい。これにより、操作者は、挿入部2が被検者の体内の所定の挿入位置まで挿入されている、すなわち挿管用チューブ4の先端部が声門G1に対して適切な距離に位置していることを容易に把握することができ、挿入部2を所定の挿入位置に誘導することができる。
【0045】
このようにして、操作者は、挿管用チューブ4を声門G1に挿入可能と判断すると、挿管用チューブ4を前方に進行させて、挿管用チューブ4の先端部を声門G1に挿入する。
本実施の形態によれば、挿管判定部22が挿管用チューブ4を声門G1に挿入可能か否かを判定し、報知制御部21が挿管判定部22の判定結果に基づいて表示部3の表示状態を変化させることにより支援情報を報知するため、声門G1の位置と挿管用チューブ4の進行方向が一致するように挿入部2の操作が誘導され、挿管用チューブ4を声門G1に速やかに挿入することができる。
【0046】
実施の形態3
上記の実施の形態1および2において、検出部10は、声門G1と異なる非目的部位を検出することもできる。
例えば、図8に示すように、実施の形態2の検出部10、特徴量格納部12、挿管判定部22および報知制御部21に換えて、検出部31、特徴量格納部32、挿管判定部33および報知制御部34をそれぞれ配置することができる。
【0047】
特徴量格納部32は、声門G2の特徴量を格納すると共に声門G1と異なる非目的部位、例えば食道の特徴量を格納する。食道の特徴量としては、例えば、食道の形状値および食道の色度などが挙げられる。
検出部31は、特徴量格納部32から読み出される声門G2の特徴量に基づいて、撮像部5で撮像された体内画像Rから声門G1を目的部位として検出する。また、検出部31は、特徴量格納部32から読み出される食道の特徴量に基づいて、撮像部5で撮像された体内画像Rから食道を非目的部位として検出する。
【0048】
挿管判定部33は、検出部31で検出された声門G1の位置と挿管用チューブ4の進行方向とに基づいて、挿管用チューブ4を声門G1に挿入可能か否かを判定する。また、挿管判定部33は、検出部31で検出された食道の位置と挿管用チューブ4の進行方向とに基づいて、挿管用チューブ4を食道に挿入可能か否かを判定する。
【0049】
報知制御部34は、検出部31において食道が検出された場合に、表示部3の表示状態を変化させることにより操作者による挿入部2の操作を支援する支援情報を報知する。また、報知制御部34は、挿管判定部33において挿管用チューブ4を声門G1に挿入可能と判定された場合に、表示部3の表示状態を変化させることにより支援情報を報知する。さらに、報知制御部34は、挿管判定部33において挿管用チューブ4を食道に挿入可能と判定された場合に、表示部3の表示状態を変化させることにより支援情報を報知する。
【0050】
このような構成により、検出部31が、食道の特徴量に基づいて体内画像Rに含まれる食道を検出すると、報知制御部34が、食道の位置に部位マークM2と異なる非部位マークを体内画像Rに重畳して表示させる。例えば、図9に示すように、検出部31が体内画像Rに含まれる食道G3を検出すると、報知制御部34が、食道G3の位置に部位マークM2と異なる色の非部位マークM3を体内画像Rに重畳して表示させる。このように、非部位マークM3の色を部位マークM2の色と変えて表示することにより、操作者は非目的部位である食道G3の存在を容易に認識することができ、表示部3に声門G1が表示されるように挿入部2の操作を誘導することができる。
なお、非部位マークM3は、例えば赤色で表示することができる。
【0051】
このとき、食道G3がターゲットマークM1に重なるように挿入部2が操作されると、検出部31で検出される食道G3の位置とターゲットマークM1の位置とが一致することになる。このため、挿管判定部33は、挿管用チューブ4を食道G3に挿入可能と判定する。
報知制御部34は、挿管判定部33において挿管用チューブ4を食道G3に挿入可能と判定されると、表示部3の表示状態を変化させることにより操作者に挿入部2の誤操作を報知する。
【0052】
例えば、報知制御部34は、図10に示すように、体内画像Rに重畳して表示されたターゲットマークM1と非部位マークM3を消去することにより、操作者に挿入部2の誤操作を報知する。このように、ターゲットマークM1と非部位マークM3を消去することにより、操作者は、挿入部2の誤操作に確実に気付くことができ、食道G3への挿管を未然に防ぐことができる。
ここで、操作者は、表示部3に表示された体内画像Rを注視して操作するため、挿入部2の誤操作を警告音などで報知しても気付かないおそれがある。そこで、報知制御部34が、表示部3の表示状態を変化させることで、操作者に挿入部2の誤操作を確実に報知することができる。なお、報知制御部34は、ターゲットマークM1のみを消去して操作者に挿入部2の誤操作を報知してもよい。
【0053】
このようにして、操作者は、挿入部2の誤操作を認識すると、再び声門G1の位置を探索し、実施の形態1と同様にして挿管用チューブ4が声門G1に挿入される。
本実施の形態によれば、検出部31が予め設定された食道G3の特徴量に基づいて撮像部5で撮像された体内画像から食道G3を検出し、報知制御部34が検出部31の検出結果に基づいて表示部3の表示状態を変化させることにより、表示部3に声門G1が表示されるように挿入部2の操作を誘導することができ、挿管用チューブ4を声門G1に速やかに挿入することができる。
【0054】
実施の形態4
上記の実施の形態1~3では、挿入部2の操作を支援する支援情報は、表示部3の表示状態を変化させて報知したが、報知部で報知することができればよく、表示部3に限られるものではない。
例えば、図11に示すように、実施の形態3において振動部41と音出力部42を報知部として新たに配置し、この振動部41と音出力部42を報知制御部34に接続することができる。
【0055】
振動部41は、装置本体1において把持部6を振動させて操作者に挿入部2の誤操作を報知するものである。振動部41は、例えばバイブレータなどから構成することができる。
音出力部42は、装置本体1において警告音を出力して操作者に挿入部2の誤操作を報知するものである。音出力部42は、例えばスピーカーなどから構成することができる。なお、音出力部42は、挿管装置の外部機器、例えば生体情報モニタ、除細動器および人工呼吸器などに配置することもできる。
【0056】
このような構成により、実施の形態3と同様に、挿管判定部33が、挿管用チューブ4を食道G3に挿入可能と判定すると、報知制御部34が、表示部3の表示状態を変化させる。さらに、報知制御部34は、振動部41を振動させると共に音出力部42から警告音を出力させる。このように、表示部3の表示状態の変化に加えて振動と警告音が出力されるため、操作者は挿入部2の誤操作をより確実に認識することができる。
【0057】
本実施の形態によれば、報知制御部34が、挿管判定部33において挿管用チューブ4を食道G3に挿入可能と判定された場合に振動部41を振動させると共に音出力部42から警告音を出力するため、操作者に挿入部2の誤操作をより確実に報知することができる。
なお、本実施の形態において、報知部は、表示部3を除いて、振動部41および音出力部42のうち少なくとも一方から構成してもよい。
【0058】
実施の形態5
上記の実施の形態1~4では、検出部が、声門G1を目的部位として検出したが、目的部位は操作者が任意に選択することができ、声門G1に限られるものではない。
例えば、図12に示すように、実施の形態1の検出部10に換えて検出部51を配置すると共に特徴量格納部12に換えて特徴量格納部52を配置することができる。
【0059】
特徴量格納部52は、声門G2の特徴量を格納すると共に食道G3の特徴量が格納されている。
検出部51は、声門検出モードと食道検出モードを切り換え可能に構成され、声門検出モードでは声門G1を目的部位として検出し、食道検出モードでは食道を目的部位として検出する。
【0060】
このような構成により、操作者が操作部14を操作して検出部51を食道検出モードとすると、検出部51が、特徴量格納部52に格納された食道G3の特徴量に基づいて、撮像部5で撮像された体内画像Rから食道G3を検出する。続いて、報知制御部11が、検出部51において食道G3が検出された場合に、食道G3の位置に部位マークを表示させる。これにより、操作者は、体内画像Rにおける食道G3の位置を容易に認識して、挿管用チューブ4を食道G3に速やかに挿入することができる。
【0061】
本実施の形態によれば、検出部51が、声門G1を目的部位として検出する声門検出モードと食道G3を目的部位として検出する食道検出モードとを切り換え可能に構成されているため、操作者の目的に応じた挿管を確実に行うことができる。
【0062】
なお、上記の実施の形態1~5では、報知制御部は、ターゲットマークM1、部位マークM2および非部位マークM3の色を変化させたが、表示部3の表示状態を変化させることができればよく、これに限られるものではない。例えば、報知制御部は、ターゲットマークM1、部位マークM2および非部位マークM3の形状を変化させてもよく、また表示部3に挿入部2の操作を支援する支援情報を文字で表示してもよい。
また、上記の実施の形態1~5では、表示部3は、装置本体1に一体に設けられたが、撮像部5で撮像された体内画像Rを表示できればよく、装置本体1と別体に配置することもできる。
【0063】
また、上記の実施の形態1~5では、検出部の検出結果に基づいて報知制御部が表示部3の表示状態を変化させたが、表示部3の表示状態を変化させることができればよく、報知制御部に限られるものではない。例えば、検出部の検出結果に基づいて表示制御部9が表示部3の表示状態を変化させてもよい。
【0064】
また、上記の実施の形態1~5では、報知制御部は、挿入部2の操作を支援する支援情報を報知するように報知部を制御したが、被検者の目的部位に関する情報を報知できればよく、支援情報に限られるものではない。例えば、検出部が被検者の口腔内の腫瘍、喀痰および熱傷の有無等の情報を検出し、報知制御部が検出部で検出された情報に基づいて被検者の目的部位の状態を示す観察情報を報知するように報知部を制御してもよい。これにより、操作者は、被検者の目的部位の状態に応じて適切な治療を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
1 装置本体、2 挿入部、3 表示部、4 挿管用チューブ、4a 挿入マーク、5 撮像部、6 把持部、7 溝部、8 画像処理部、9 表示制御部、10,31,51 検出部、11,21,34 報知制御部、12,32,52 特徴量格納部、13 本体制御部、14 操作部、15 格納部、22,33 挿管判定部、41 振動部、42 音出力部、R 体内画像、M1 ターゲットマーク、M2 部位マーク、M3 非部位マーク、S 被検者、G1、G2 声門、D 声帯、G3 食道、L 隙間。
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