(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】かつら
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
A41G3/00 G
A41G3/00 E
(21)【出願番号】P 2018121975
(22)【出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-04-30
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】596041009
【氏名又は名称】株式会社ハリウッドマジック
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】島田 広夫
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】柿崎 拓
【審判官】五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-198223(JP,U)
【文献】特許第4498446(JP,B2)
【文献】特開2012-20770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かつらを構成するベースが、ネットシート本体と上記ネットシート本体の内側に設けられたシート状部とから構成され、上記シート状部を両面粘着テープによって頭皮に接着させるように構成したかつらであって、
上記シート状部が、可撓性を有する軟質合成樹脂から構成され、その可撓性を有する軟質のシート状
部の頭皮と対面する表面に、凹凸面が形成され、
上記凹凸面は、浮彫状に加工された凸部と凹部によって構成されて、上記両面粘着テープが上記凸部の頂面に粘着し上記凹部には粘着しておらず、
上記凹凸面は、上記両面粘着テープを上記シート状部から引きはがすときに上記シート状部に加わる引張力を安定させるよう、上記凸部と上記凹部が一定間隔で規則的に並んだ状態に配置され、可撓性を有する軟質の上記シート状
部の損傷を抑え、着脱を繰り返したときの上記ベースにおける可撓性を有する軟質の上記シート状部の損傷を抑えるように構成されている
ことを特徴とするかつら。
【請求項2】
上記凹凸面は、上記凸部と上記凹部が市松模様状に配置されて構成されている
請求項1記載のかつら。
【請求項3】
上記凹凸面は、交差する溝部によって形成された上記凹部と、上記溝部によって画定される突起部によって形成された上記凸部によって構成されている
請求項1記載のかつら。
【請求項4】
上記凹凸面は、交差する突条によって形成された上記凸部と、上記突条によって画定される窪み部によって形成された上記凹部によって構成されている
請求項1記載のかつら。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着テープによって頭皮に固定するかつらに関するものである。
【背景技術】
【0002】
かつらには、両面粘着テープで頭皮に固定するタイプのものがある。
【0003】
図8(A)は、その第1例である(下記特許文献1の
図10(A)である)。この例は、着用者の頭部1に装着されるネットシート本体2からベース3を構成している。上記ベース3のフロント部分に、着用者の生えぎわ部4に臨む生えぎわシート5を連設している。上記生えぎわシート5は、ネット片6により構成されている。上記ベース3には疑似毛から成る頭髪1aが植設される。上記ネット片6には疑似毛から成る前髪1bが植設される。上記生えぎわシート5を、着用者の生えぎわ部4に対して両面接着テープ7から成る粘着手段8により粘着させる。これにより、ネット片6のフロント部分が浮き上がるのを防いでいる。
【0004】
上記第1例では、生えぎわシート5が、多数の網目を構成するネット片6により形成されている。このため、両面接着テープ7が粘着し難く、容易に剥離してしまうという問題がある。
【0005】
図8(B)は、第2例である(下記特許文献1の
図10(B)である)。この例は、ネット片6の一部分をウレタン樹脂等の透明又は半透明の樹脂で被覆することによりシート状部9を形成している。このシート状部9を両面接着テープ7から成る粘着手段8により着用者の生えぎわ部4に粘着させる。このようにすれば、生えぎわシート5を着用者の生えぎわ部4に対して確実に粘着させることができる。
【0006】
ここで、かつらに関する先行技術文献として、本出願人は下記の特許文献1~3を把握している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4498446号公報
【文献】特許第4256873号公報
【文献】特開2006-299432号公報
【0008】
上記特許文献1にはつぎの記載がある。
[0006]
本出願人が先に提案した特許文献1及び特許文献2(以下「先行技術」と総称する。)のカツラは、
図10(A)に示すように、着用者の頭部1に装着されるネットシート本体2から成るベース3のフロント部に、着用者の生えぎわ部4に臨む生えぎわシート5を連設し、該生えぎわシート5をネット片6により構成している。ベース3には疑似毛から成る頭髪1aが植設され、ネット片6には疑似毛から成る前髪1bが植設される。
[0010]
(第1比較例)
そこで、
図10(A)に示すように、生えぎわシート5を着用者の生えぎわ部4に対して両面接着テープ7から成る粘着手段8により粘着させれば上記問題を解決できるが、生えぎわシート5は、多数の網目を構成するネット片6により形成されているので、両面接着テープ7が粘着し難く、容易に剥離してしまう。
[0011]
(第2比較例)
このため、
図10(B)に示すように、ネット片6の一部分をウレタン樹脂等の透明又は半透明の樹脂で被覆することによりシート状部9を形成し、該シート状部9を介して、生えぎわシート5を着用者の生えぎわ部4に対し、両面接着テープ7から成る粘着手段8により粘着させれば、確実な粘着が可能になる。しかしながら、ウレタン樹脂等の被膜は、径年変化等により黄ばみを生じる等、透明性を劣化するので、生えぎわシート5の前縁を正面から見たとき、その存在が視認されるおそれがある。
【0009】
上記特許文献2にはつぎの記載がある。
[0015]
上記目的を達成するため、本発明の一態様による、かつらを頭部に止着するために用いる両面接着テープは、両面の粘着層の少なくとも一方の表面が艶消し処理されることにより構成されている。
前記構成において、前記粘着層は、好ましくは、その表面を微小凹凸状に形成することにより艷消し処理が施される。
前記粘着層表面の微小凹凸は、微小突起を形成した押し型具で該粘着層を押圧することにより付与されるか、芯材に粒状の粘着剤をスプレー塗布することにより形成されることができる。或いは、前記粘着層表面の微小凹凸は、ブラスト加工にて付与されてもよい。ブラスト加工の場合、ブラスト材として微細に粉砕したドライアイス又は氷を用いれば、粘着層に凹凸加工を付与した後でブラスト材が溶けるので、ブラスト材が粘着層に残存することがない。
前記微小凹凸の表面粗さは、好ましくは光の波長より大きな波長となるような粗さに形成され、これにより、本発明のかつら止着用両面接着テープの一方の粘着面をかつらの裏面に接着した場合、かつらの外側から光が入射して両面接着テープの粘着面に当たっても微細凹凸により乱反射するので、不自然な光が発生することがない。・・・
【0010】
上記特許文献3にはつぎの記載がある。
[0010]
上記構成によれば、人工皮膚ベースには艶消し剤が添加されると共に、表面が微細な凹凸部により艶消し処理されているので、恰も人の頭部と同程度に艶消しされた頭皮感が得られると共に、微細凹凸が皮膚の皺模様を呈してヒトと同じ皮膚感が得られ、毛髪の隙間を通して外部光が人工皮膚ベースに入射しても、艶消し剤と表面の微細凹凸の存在により、光が乱反射されてかつらベースの存在が露見されにくいかつらを実現できる。さらに、艶消し剤が人工皮膚ベースの表面から所定の深さまで添加されている場合、すなわち、人工皮膚の表面側だけに配合されて、裏面側すなわち装着時に頭皮と密着する内面側の領域には艶消し剤が達していない場合には、人工皮膚ベースの頭皮に接する下側には艶消し剤が配合されず柔軟な状態を維持しているので、特に人工皮膚ベースを接着剤を用いて頭皮に貼着した場合には皮膚の動きに追従し、頭皮との密着性が良好で剥離し難いかつらを提供することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に記載された生えぎわシート5は、額を正面から見たときに視認しやすい位置にある。このため、上記生えぎわシート5は、目視されたときに存在を目立たなくすることが求められる。したがって、上記生えぎわシート5を構成するウレタン樹脂等の被膜は、できるだけ薄くなるように作られる。
【0012】
このような生えぎわシート5を両面接着テープ7で頭皮に接着させると、剥がすときに薄い生えぎわシート5を損傷させやすい。着脱を繰り返すことにより生えぎわシート5の損傷はひどくなり、縁の部分が波打ったり千切れたりしてしまう。そうなると、かつら自体が着用できなくなるし、無理に着用しても生えぎわシート5が目立ってしまうことになる。
【0013】
特許文献2および3に記載の技術はいずれも、かつらベースの表面につや消し加工を行うものであって、上記課題は解決できない。
【0014】
本発明は、上記のような事情に鑑み、つぎの目的を持ってなされたものである。
両面粘着テープによって着脱を繰り返したときのベースの損傷を抑えることができるかつらを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1記載のかつらは、下記の構成を採用した。
かつらを構成するベースが、ネットシート本体と上記ネットシート本体の内側に設けられたシート状部とから構成され、上記シート状部を両面粘着テープによって頭皮に接着させるように構成したかつらであって、
上記シート状部が、可撓性を有する軟質合成樹脂から構成され、その可撓性を有する軟質のシート状部の頭皮と対面する表面に、凹凸面が形成され、
上記凹凸面は、浮彫状に加工された凸部と凹部によって構成されて、上記両面粘着テープが上記凸部の頂面に粘着し上記凹部には粘着しておらず、
上記凹凸面は、上記両面粘着テープを上記シート状部から引きはがすときに上記シート状部に加わる引張力を安定させるよう、上記凸部と上記凹部が一定間隔で規則的に並んだ状態に配置され、可撓性を有する軟質の上記シート状部の損傷を抑え、着脱を繰り返したときの上記ベースにおける可撓性を有する軟質合成樹脂から構成された上記シート状部の損傷を抑えるように構成されている。
【0018】
請求項2記載のかつらは、請求項1記載の構成に加え、下記の構成を採用した。
上記凹凸面は、上記凸部と上記凹部が市松模様状に配置されて構成されている。
【0019】
請求項3記載のかつらは、請求項1記載の構成に加え、下記の構成を採用した。
上記凹凸面は、交差する溝部によって形成された上記凹部と、上記溝部によって画定される突起部によって形成された上記凸部によって構成されている。
【0020】
請求項4記載のかつらは、請求項1記載の構成に加え、下記の構成を採用した。
上記凹凸面は、交差する突条によって形成された上記凸部と、上記突条によって画定される窪み部によって形成された上記凹部によって構成されている。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載のかつらは、かつらを構成するベースが、ネットシート本体と上記ネットシート本体の内側に設けられたシート状部とから構成され、上記シート状部を両面粘着テープによって頭皮に接着させるように構成したかつらである。上記シート状部は、可撓性を有する軟質合成樹脂から構成され、その可撓性を有する軟質のシート状部の頭皮と対面する表面に、凹凸面が形成されている。上記凹凸面は、浮彫状に加工された凸部と凹部によって構成されている。そして、上記凹凸面は、上記両面粘着テープを上記シート状部から引きはがすときに上記シート状部に加わる引張力を安定させるよう、上記凸部と上記凹部が一定間隔で規則的に並んだ状態に配置され、可撓性を有する軟質の上記シート状部の損傷を抑えるように構成されている。これにより、上記かつらは、上記両面粘着テープによって頭皮に固定される。上記かつらを外すときは、上記両面粘着テープを頭皮から剥がすことにより、外すことができる。その後、シート状部の凹凸面に残った両面粘着テープを、上記凹凸面から引きはがす。このとき、上記両面粘着テープは凹凸面に貼り付いていて、接着面積が少ない。つまり上記両面粘着テープは凹凸面を形成する凸部の頂部に粘着し、凹部には粘着しない。このため、上記両面粘着テープは凹凸面から容易に引きはがすことができる。したがって、両面粘着テープを引きはがすときにシート状部を損傷させにくく、着脱を繰り返したときのベースの損傷を抑えることができる。また、上記凹凸面を、浮彫状に加工された凸部と凹部によって構成しているため、上記両面粘着テープは浮彫状に加工された凸部の頂部に粘着し、凹部には粘着しない。このため、上記両面粘着テープは凹凸面から容易に引きはがすことができる。したがって、両面粘着テープを引きはがすときにシート状部を損傷させにくく、着脱を繰り返したときのベースの損傷を抑えることができる。さらに、上記凸部が一定間隔で規則的に並んでいるため、両面粘着テープを引きはがすときにシート状部に加わる引張力が安定する。したがって、両面粘着テープを引きはがすときにシート状部を損傷させにくく、着脱を繰り返したときのベースにおける可撓性を有する軟質の上記シート状部の損傷を抑えることができる。
【0024】
請求項2記載のかつらは、上記凹凸面を、上記凸部と上記凹部を市松模様状に配置して構成した。このため、上記両面粘着テープは上記凸部の頂部に粘着し、凹部には粘着しない。このため、上記両面粘着テープは凹凸面から容易に引きはがすことができる。また、上記凸部が規則的に並んでいることから、両面粘着テープを引きはがすときにシート状部に加わる引張力が安定する。したがって、両面粘着テープを引きはがすときにシート状部を損傷させにくく、着脱を繰り返したときのベースの損傷を抑えることができる。
【0025】
請求項3記載のかつらは、交差する溝部によって上記凹部を形成し、上記溝部によって画定される突起部によって上記凸部を形成した。このため、上記両面粘着テープは上記凸部の頂部に粘着し、凹部には粘着しない。このため、上記両面粘着テープは凹凸面から容易に引きはがすことができる。また、上記凸部が規則的に並んでいることから、両面粘着テープを引きはがすときにシート状部に加わる引張力が安定する。したがって、両面粘着テープを引きはがすときにシート状部を損傷させにくく、着脱を繰り返したときのベースの損傷を抑えることができる。
【0026】
請求項4記載のかつらは、交差する突条によって上記凸部を形成し、上記突条によって画定される窪み部によって上記凹部を形成した。このため、上記両面粘着テープは上記凸部の頂部に粘着し、凹部には粘着しない。このため、上記両面粘着テープは凹凸面から容易に引きはがすことができる。また、上記凸部が規則的に並んでいることから、両面粘着テープを引きはがすときにシート状部に加わる引張力が安定する。したがって、両面粘着テープを引きはがすときにシート状部を損傷させにくく、着脱を繰り返したときのベースの損傷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明のかつらの第1実施形態を説明する斜視図である。
【
図3】上記第2のシート状部と両面粘着テープの周辺を示す断面図である。
【
図4】第1実施形態における第2のシート状部の凹凸面を説明する図であり、(A)は凹凸面に形成された貼着面の拡大図、(B)は拡大した断面図である。
【
図5】第2実施形態における第2のシート状部の凹凸面を説明する図であり、(A)は凹凸面に形成された貼着面の拡大図、(B)は拡大した断面図である。
【
図6】第3実施形態における第2のシート状部の凹凸面を説明する図であり、(A)は凹凸面に形成された貼着面の拡大図、(B)は拡大した断面図である。
【
図7】第4実施形態における第2のシート状部の凹凸面を説明する図であり、(A)は凹凸面に形成された貼着面の拡大図、(B)は拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
◆第1実施形態
図1~
図8は、本発明のかつらの第1実施形態を説明する図である。
【0029】
〔全体構造〕
図1は、第1実施形態の概略全体図を示す。
このかつらは、着用者の頭部に被冠される下向き皿状のネットシート本体15からなるベース14に、疑似毛からなる頭髪12aが植毛されている。また、着用者の少なくとも眉間の上方部位に生えぎわ部13を配置し、上記生えぎわ部13に疑似毛からなる前髪12bが植毛されて構成されている。
【0030】
この例では、上記頭髪12aおよび前髪12bを、後向きに癖付けしたバックスタイルとしている。その植毛密度(単位面積あたりの植毛本数)は、前髪12bから頂部の頭髪12aに向け(図示の矢印B方向)、次第に疎から密となるように植設するのが好ましい。すなわち、植毛密度を頭髪12aよりも前髪12bを疎とすることにより、自然な生えぎわ状態が形成される。また、頭髪12aの植毛密度は、前部(前髪の近傍部)から後部(後頭部)に向けて次第に密となる。
【0031】
ここで、本発明の説明において「疑似毛」とは、着用者の頭部に残存する生存中の地毛に対する意味であり、天然毛または人工毛を問わない。
また、本発明において「生えぎわ部」とは、かつらの装着を必要としない通常の人体の頭部で地毛としての前髪が生えている部分のことである。つまり、かつらを必要とする着用者の額における地毛の生えぎわが概ねM形を描くように眉間の上方で禿げ上がった部分を意味する。したがって、その幅寸法Wは、少なくとも眉間の上方部位を含むが、禿げ上がった部分が幅広いときは、その幅広の部分を包含する意味である。
【0032】
また、
図1では、オールバックスタイルのかつらを示しているが、本発明の説明において「バックスタイル」とは、少なくとも前髪12bの生えぎわを外部から視認できるように、前髪12bを前下がりでなく頭部の上部に向けて後向きに癖付けしたヘアースタイルを意味する。つまり、必ずしもオールバックに限定されるものではない。また、本発明は、バックスタイルのかつらに限定されるものではない。
【0033】
〔ベース14〕
図2は、かつらの内側(着用者の頭部に面する裏側)を示している。
【0034】
上記ベース14を構成するネットシート本体15は、底面視ほぼ楕円状で、着用者の頭部に沿うような球面状に形成されている。上記ネットシート本体15は、着用者の頭部の生えぎわ部13に臨む前部15aから、着用者の地毛が残存する頭部両側に臨む両側部15b,15bと、着用者の地毛が残存する後頭部に臨む後部15cを含んで構成されている。
【0035】
上記ネットシート本体15は、少なくとも伸縮性と通気性を有している。上記伸縮性は、顕著なものである必要はなく僅かな伸縮性でも足り、着用者の頭部にフィットしうるものであれば良い。上記ネットシート本体15には、外側に起立するように多数の頭髪12aが植設される(
図1参照)。
【0036】
〔シート状部16〕
上記ネットシート本体15の内側には、球面のほぼ中央部を残し、前部15a・両側部15b,15bおよび後部15cに沿う周縁部に、可撓性を有する軟質合成樹脂から構成されたシート状部16が固着されている。上記シート状部16は、ネットシート本体15を非伸縮状態に保持し、ネットシート本体15を保形する。
【0037】
上記シート状部16は、ネットシート本体15の内側面にウレタン樹脂やシリコン樹脂等の合成樹脂液を塗布して硬化させる。これにより、上記シート状部16は、適度の弾性と可撓性を有する軟質合成樹脂から構成されたフィルム状またはシート状に形成することができる。着用した状態で上記シート状部16が目視で目立つことがないように、上記シート状部16は、できるだけ薄く形成される。
【0038】
上記かつらは、その内側を着用者の頭部に対面させ、上記シート状部16の裏側の面を着用者の頭皮に対して両面粘着テープ25を介して粘着させ、頭部に固定する。
【0039】
〔凹凸面〕
上記シート状部16における頭皮と対面する部分は、上述したように両面粘着テープ26が貼着される貼着面27として機能する。上記貼着面27には、凹凸面が形成されている。
【0040】
図4は、上記シート状部16の凹凸面を説明する図である。(A)は凹凸面に形成された貼着面27の拡大図、(B)は拡大した断面図である。
【0041】
上記凹凸面は、浮彫状に加工された凸部31と凹部32によって構成されている。
この実施形態では、上記凹凸面は、上記凸部31と上記凹部32が市松模様状に配置されて構成されている。つまり、上記凸部31の頂面31Aと上記凹部の底面32Aが、前後左右に交互に配置されている。
図4(A)では、配置をわかりやすくするために、上記凸部31の頂面31Aを塗りつぶし、上記頂面31A以外の凹部32を白色で示している。上記凹凸面は、塗りつぶされた頂面31Aが両面粘着テープ26に粘着し、それ以外の白色部分に両面粘着テープ26は粘着しない。
【0042】
この例では、上記凸部31は四角錐台状であり、上記凹部32はそれを反転させた形状の窪みである。
【0043】
上記凹凸面は、ネットシート本体15の内側面にウレタン樹脂やシリコン樹脂等の合成樹脂液を塗布して硬化させて上記シート状部16を形成する段階で、上記合成樹脂液が固まりきらないときに、上記貼着面27に対して型を押し当て、その状態で上記合成樹脂液を硬化させることにより、形成することができる。
【0044】
このようにすることにより、上記貼着面27に上記両面粘着テープ26を貼り付けたときに、上記両面粘着テープ26は、凹凸面を形成する凸部31の頂面31Aに粘着し、凹部32には粘着しない。つまり、図示の着色した面にだけ両面粘着テープ26が粘着する。したがって、シート状部16の貼着面27に対する両面粘着テープ26の接着面積が少なくなる。シート状部16の凹凸面に残った両面粘着テープ26を、上記凹凸面から引きはがすときに容易に引きはがすことができ、シート状部16を損傷させにくく、着脱を繰り返したときのベース14の損傷を抑えることができる。
【0045】
〔第1実施形態の作用効果〕
【0046】
第1実施形態のかつらは、かつらを構成するベース14の少なくとも一部に、可撓性を有する軟質合成樹脂から構成されたシート状部16を設けている。上記シート状部16における頭皮と対面する部分には、凹凸面を形成した。上記かつらを着用するときは、上記凹凸面に両面粘着テープ26を貼り付け、ベース14を着用者の頭部にかぶせる。これにより、上記かつらは、上記両面粘着テープ26によって頭皮に固定される。上記かつらを外すときは、上記両面粘着テープ26を頭皮から剥がすことにより、外すことができる。その後、シート状部16の凹凸面に残った両面粘着テープ26を、上記凹凸面から引きはがす。このとき、上記両面粘着テープ26は凹凸面に貼り付いていて、接着面積が少ない。つまり上記両面粘着テープ26は凹凸面を形成する凸部31の頂面31Aに粘着し、凹部32には粘着しない。このため、上記両面粘着テープ26は凹凸面から容易に引きはがすことができる。したがって、両面粘着テープ26を引きはがすときにシート状部16を損傷させにくく、着脱を繰り返したときのベース14の損傷を抑えることができる。
【0047】
第1実施形態のかつらは、上記凹凸面を、浮彫状に加工された凸部31と凹部32によって構成している。このため、上記両面粘着テープ26は浮彫状に加工された凸部31の頂面31Aに粘着し、凹部32には粘着しない。このため、上記両面粘着テープ26は凹凸面から容易に引きはがすことができる。したがって、両面粘着テープ26を引きはがすときにシート状部16を損傷させにくく、着脱を繰り返したときのベース14の損傷を抑えることができる。
【0048】
第1実施形態のかつらは、上記凸部31が一定間隔で規則的に並んでいる。このため、両面粘着テープ26を引きはがすときにシート状部16に加わる引張力が安定する。したがって、両面粘着テープ26を引きはがすときにシート状部16を損傷させにくく、着脱を繰り返したときのベース14の損傷を抑えることができる。
【0049】
第1実施形態のかつらは、上記凹凸面を、上記凸部31と上記凹部32を市松模様状に配置して構成した。このため、上記両面粘着テープ26は上記凸部31の頂面31Aに粘着し、凹部32には粘着しない。このため、上記両面粘着テープ26は凹凸面から容易に引きはがすことができる。また、上記凸部31が規則的に並んでいることから、両面粘着テープ26を引きはがすときにシート状部16に加わる引張力が安定する。したがって、両面粘着テープ26を引きはがすときにシート状部16を損傷させにくく、着脱を繰り返したときのベース14の損傷を抑えることができる。
【0050】
◆第2実施形態
図5は、第2実施形態におけるシート状部16を説明する図である。(A)は拡大した裏面図、(B)は拡大した断面図である。
この例では、上記シート状部16は、上記凹凸面が、交差する溝部によって形成された上記凹部32と、上記溝部によって画定される突起部によって形成された上記凸部31によって構成されている。
この例では、上記凸部31は四角錐台状に形成される。
【0051】
第2実施形態のかつらは、交差する溝部によって上記凹部32を形成し、上記溝部によって画定される突起部によって上記凸部31を形成した。このため、上記両面粘着テープ26は上記凸部31の頂面31Aに粘着し、凹部32には粘着しない。このため、上記両面粘着テープ26は凹凸面から容易に引きはがすことができる。また、上記凸部31が規則的に並んでいることから、両面粘着テープ26を引きはがすときにシート状部16に加わる引張力が安定する。したがって、両面粘着テープ26を引きはがすときにシート状部16を損傷させにくく、着脱を繰り返したときのベース14の損傷を抑えることができる。
【0052】
それ以外は、上記第1実施形態と同様であり、同様の作用効果を奏する。
【0053】
◆第3実施形態
図6は、第3実施形態におけるシート状部16を説明する図である。(A)は拡大した裏面図、(B)は拡大した断面図である。
この例では、上記シート状部16は、上記凹凸面が、交差する突条によって形成された上記凸部31と、上記突条によって画定される窪み部によって形成された上記凹部32によって構成されている。
【0054】
第3実施形態のかつらは、交差する突条によって上記凸部31を形成し、上記突条によって画定される窪み部によって上記凹部32を形成した。このため、上記両面粘着テープ26は上記凸部31の頂面31Aに粘着し、凹部32には粘着しない。このため、上記両面粘着テープ26は凹凸面から容易に引きはがすことができる。また、上記凸部31が規則的に並んでいることから、両面粘着テープ26を引きはがすときにシート状部16に加わる引張力が安定する。したがって、両面粘着テープ26を引きはがすときにシート状部16を損傷させにくく、着脱を繰り返したときのベース14の損傷を抑えることができる。
【0055】
それ以外は、上記第1実施形態と同様であり、同様の作用効果を奏する。
【0056】
◆第4実施形態
図7は、第4実施形態におけるシート状部16を説明する図である。(A)は拡大した裏面図、(B)は拡大した断面図である。
この例では、上記シート状部16は、上記凹凸面が、突条によって形成された上記凸部31と、上記突条に挟まれた部分に形成された上記凹部32によって縞状に構成されている。このため、上記両面粘着テープ26は上記凸部31の頂面31Aに粘着し、凹部32には粘着しない。このため、上記両面粘着テープ26は凹凸面から容易に引きはがすことができる。また、上記凸部31が規則的に並んでいることから、両面粘着テープ26を引きはがすときにシート状部16に加わる引張力が安定する。したがって、両面粘着テープ26を引きはがすときにシート状部16を損傷させにくく、着脱を繰り返したときのベース14の損傷を抑えることができる。
【0057】
◆変形例
以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は図示した実施形態に限定する趣旨ではなく、各種の態様に変形して実施することができ、本発明は各種の変形例を包含する趣旨である。
【0058】
たとえば、上記各実施形態では、平面状とした凸部31の頂面31Aに両面粘着テープ26を粘着させるようにしたが、凸部31の両面粘着テープ26を粘着させる頂部は、湾曲した凸面状にすることもできる。
【符号の説明】
【0059】
1:頭部
1a:頭髪
1b:前髪
2:ネットシート本体
3:ベース
4:生えぎわ部
5:生えぎわシート
6:ネット片
7:両面接着テープ
8:粘着手段
9:シート状部
12a:頭髪
12b:前髪
13:生えぎわ部
14:ベース
15:ネットシート本体
15a:前部
15b:両側部
15c:後部
16:シート状部
26:両面粘着テープ
27:貼着面
31:凸部
31A:頂面
32:凹部
32A:底面