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特許7368085アスタキサンチンを含有する飲食品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】アスタキサンチンを含有する飲食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20231017BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20231017BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20231017BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20231017BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20231017BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L2/00 F
A61K31/122
A61K31/353
A61P3/02
A61P43/00 121
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018521755
(86)(22)【出願日】2017-06-07
(86)【国際出願番号】 JP2017021153
(87)【国際公開番号】W WO2017213176
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-06-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2016114469
(32)【優先日】2016-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016248990
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516170901
【氏名又は名称】アスタリール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145126
【弁理士】
【氏名又は名称】金丸 清隆
(72)【発明者】
【氏名】富永 久美
(72)【発明者】
【氏名】本江 信子
(72)【発明者】
【氏名】藤下 万結子
【合議体】
【審判長】磯貝 香苗
【審判官】加藤 友也
【審判官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-270095(JP,A)
【文献】特開2015-107960(JP,A)
【文献】特開2006-347927(JP,A)
【文献】特開2009-298740(JP,A)
【文献】特開2006-16409(JP,A)
【文献】北村晃利,富士化学工業のアスタキサンチン「アスタリール(登録商標)」,食品工業,2007,vol.50,no.6,p.30-37
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L33/10
A23L2/52
A61K31/122-31/353
A61K36/05-36/63
A61K131/00
A61P3/02
A61P25/20-25/28
A61P43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)、(b)および(c)から選択される1または2以上のアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分とする飲食品組成物;
(a)精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトの意欲低下改善用飲食品組成物、
(b)精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトの気分の落ち込み改善用飲食品組成物、
(c)精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトのイライラ解消用飲食品組成物。
【請求項2】
下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)から選択される1または2以上のアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分とする飲食品組成物;
(a)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で約0~約160ng/mLのヒト血中アスタキサンチン濃度に等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトの意欲低下改善用飲食品組成物、
(b)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で約0~約160ng/mLのヒト血中アスタキサンチン濃度に等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトの気分の落ち込み改善用飲食品組成物、
(c)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で約0~約160ng/mLのヒト血中アスタキサンチン濃度に等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトのイライラ解消用飲食品組成物、
(d)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で1日当たり約0.1~約0.3mg/体重kgに等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトの意欲低下改善用飲食品組成物、
(e)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で1日当たり約0.1~約0.3mg/体重kgに等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトの気分の落ち込み改善用飲食品組成物、
(f)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で1日当たり約0.1~約0.3mg/体重kgに等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトのイライラ解消用飲食品組成物。
【請求項3】
下記の(a)、(b)および(c)から選択される1または2以上のアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分とする飲食品組成物;
(a)精神的負荷による疲労感を有するヒトの意欲低下改善用飲食品組成物、
(b)精神的負荷による疲労感を有するヒトの気分の落ち込み改善用飲食品組成物、
(c)精神的負荷による疲労感を有するヒトのイライラ解消用飲食品組成物。
【請求項4】
下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)から選択される1または2以上のアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分とする飲食品組成物;
(a)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で約0~約160ng/mLのヒト血中アスタキサンチン濃度に等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、精神的負荷による疲労感を有するヒトの意欲低下改善用飲食品組成物、
(b)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で約0~約160ng/mLのヒト血中アスタキサンチン濃度に等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、精神的負荷による疲労感を有するヒトの気分の落ち込み改善用飲食品組成物、
(c)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で約0~約160ng/mLのヒト血中アスタキサンチン濃度に等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、精神的負荷による疲労感を有するヒトのイライラ解消用飲食品組成物、
(d)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で1日当たり約0.1~約0.3mg/体重kgに等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、精神的負荷による疲労感を有するヒトの意欲低下改善用飲食品組成物、
(e)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で1日当たり約0.1~約0.3mg/体重kgに等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、精神的負荷による疲労感を有するヒトの気分の落ち込み改善用飲食品組成物、
(f)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で1日当たり約0.1~約0.3mg/体重kgに等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、精神的負荷による疲労感を有するヒトのイライラ解消用飲食品組成物。
【請求項5】
アスタキサンチンを投与および/または摂取して下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)の少なくともいずれかを改善または解消する方法(ただし、ヒトに対する医療行為を除く。)
(a)精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトの意欲の低下、
(b)精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトの気分の落ち込み、
(c)精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトのイライラ
(d)精神的負荷による疲労感を有するヒトの意欲の低下、
(e)精神的負荷による疲労感を有するヒトの気分の落ち込み、
(f)精神的負荷による疲労感を有するヒトのイライラ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分として含有する飲食品組成物に関し、より詳細には、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトの頭の回転力低下改善用飲食品組成物、集中力低下改善用飲食品組成物、意欲低下改善用飲食品組成物、気分の落ち込み改善用飲食品組成物、イライラ解消用飲食品組成物、体の軽快さ向上用飲食品組成物、疲労感を有するヒトの活気および/または活力低下改善用飲食品組成物、友好心理向上用飲食品組成物、睡眠の質改善用飲食品組成物、肉体的ストレス解消用飲食品組成物、精神的ストレス蓄積抑制用飲食品組成物、疲労蓄積抑制用飲食品組成物および免疫低下抑制用飲食品組成物から選択される1または2以上のアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分とする飲食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アスタキサンチン(astaxanthin,astaxanthine,3,3’-ジヒドロキシ-β,β-カロテン-4,4’-ジオン)とは、ニンジンのβカロテンやトマトのリコペンと同じカロテノイドの一種であってキサントフィル類に分類される食経験豊富な赤橙色の色素物質である。自然界に広く分布し、身近なところでは甲殻類の殻の他、それらを餌とするマダイの体表やサケ科魚類の筋肉の赤色部分などに見ることができ、フリー体、モノエステル体およびジエステル体の3形態が存在する。
【0003】
工・商業的には天然物由来のものと合成により得られるものが利用されており、天然物由来のものとしては、現在の富士化学グループのアスタリールホールディングス株式会社により、世界初のヘマトコッカス藻の工業的屋内タンク培養によって食品市場へ供給されている、ヘマトコッカス藻由来の天然アスタキサンチンを挙げることができる。
【0004】
アスタキサンチンは、食品添加物の色素として、あるいは養殖魚の色揚げ剤として長年使用されてきたが、ビタミンEの1000倍もの優れた抗酸化作用が見出されてからというもの、医薬品やサプリメントなどの健康食品、基礎化粧品などにおいて利用されているが、その後、アスタキサンチンにおける様々な作用効果が見出され、その用途は拡大の一途を辿っている。
【0005】
そのような作用効果としては、例えば、抗炎症作用、抗動脈硬化作用、血流の改善、疲労の改善、意欲低下を伴う疲労の改善あるいは疲労感知状態の改善(特許文献1)の他、脳機能障害の改善あるいは体を動かすことによりストレスや気分が良くなる効果と同様の効果(特許文献2)、脳内活性酸素発生の抑制(特許文献3)、認知行動能力の向上(特許文献4)、抗不安作用あるいは抗疲労効果(特許文献5)、排泄物の消臭、睡眠の改善、感性の改善、視覚の改善(特許文献6)、ストレスに起因する疲労症状の予防または改善(特許文献7)などを挙げることができ、特に食品の分野においては、昨今の特定保健用食品(トクホ)の他、栄養機能食品や機能性表示食品の登場により、医薬品おける特定の需要者のニーズに適うような具体的な用途の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-347927号公報
【文献】特開2007-126455号公報
【文献】特開2007-314436号公報
【文献】特開2010-270095号公報
【文献】特開2012-025712号公報
【文献】国際公開第2005/058064号パンフレット
【文献】特開平9-124470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1においては、ヒトへの抗疲労試験として、トレッドミル運動を実施して血中乳酸値を測定することで、疲労状態であることが確認されたうえで、アスタキサンチンの投与によってこの疲労状態を減少させる他、疲労感を減少させることができることが示されているが、疲労感を有したままの状態で、アスタキサンチンの摂取により、頭の回転力の低下を改善することができること、集中力の低下を改善することができること、意欲の低下を改善することができること、気分の落ち込みを改善することができること、イライラを解消することができること、体の軽快さを向上させることができること、活気および/または活力の低下を改善することができること、友好心理を向上させること、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠の質を改善あるいは向上させること、肉体的ストレスを軽減、改善あるいは解消させること、精神的ストレスの蓄積を抑制すること、疲労の蓄積を抑制することおよび免疫の低下を抑制することが示されているのではない。特許文献1においては、「疲労は疲労感を伴う疾患である。」との記載がなされているが(段落0002)、「疲労」の状態であるか否かは、本特許文献1の試験例3にも開示されているように、血中乳酸値の測定などによって判断されるが、「疲労感」を有しているか否かは、本明細書実施例にあるように、VAS(Visual Analog Scale)などによって判断される。従って、本願明細書実施例のように、一定の精神的、肉体的負荷を課すような場合は、被験者に個人差が生じるため、「疲労状態ではないが疲労感を有している」、「疲労状態ではあるが疲労感を有していない」という被験者が現れ、「疲労は疲労感を伴う」とは限られない。
【0008】
特許文献2においては、アスタキサンチンの投与により、うつ状態のマウスにおけるうつ状態の改善、または老化によってマウスの脳が受ける損傷を改善または予防することができることが示されているのであって、特許文献1と同様、アスタキサンチンの摂取により、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトの頭の回転力の低下を改善することができること、集中力の低下を改善することができること、意欲の低下を改善することができること、気分の落ち込みを改善することができること、イライラを解消することができること、体の軽快さを向上させることができること、活気および/または活力の低下を改善することができること、友好心理を向上させること、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠を改善あるいは向上させること、肉体的ストレスを軽減、改善あるいは解消させること、精神的ストレスの蓄積を抑制すること、疲労の蓄積を抑制することおよび免疫の低下を抑制することが示されているのではない。
【0009】
特許文献3においては、アスタキサンチンの投与により、ラットの脳の酸化障害を効果的に予防することができること、脳梗塞を効果的に予防、治療することができること、脳の活性酸素に起因する様々な病気を予防することができること、脳の老化を抑制することができることが示されているのであって、特許文献1および2と同様、アスタキサンチンの摂取により、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトの頭の回転力の低下を改善することができること、集中力の低下を改善することができること、意欲の低下を改善することができること、気分の落ち込みを改善することができること、イライラを解消することができること、体の軽快さを向上させることができること、活気および/または活力の低下を改善することができること、友好心理を向上させること、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠を改善あるいは向上させること、肉体的ストレスを軽減、改善あるいは解消させること、精神的ストレスの蓄積を抑制すること、疲労の蓄積を抑制することおよび免疫の低下を抑制することが示されているのではない。
【0010】
特許文献4においては、アスタキサンチンの摂取により、高齢者において高次脳機能が関与する認知行動能力を向上させることができること、その結果として高齢者の身体運動能力を向上させることができることが示されているのであって、特許文献1~3と同様、アスタキサンチンの摂取により、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトの頭の回転力の低下を改善することができること、集中力の低下を改善することができること、意欲の低下を改善することができること、気分の落ち込みを改善することができること、イライラを解消することができること、体の軽快さを向上させることができること、活気および/または活力の低下を改善することができること、友好心理を向上させること、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠を改善あるいは向上させること、肉体的ストレスを軽減、改善あるいは解消させること、精神的ストレスの蓄積を抑制すること、疲労の蓄積を抑制することおよび免疫の低下を抑制することが示されているのではない。
【0011】
特許文献5においては、アスタキサンチンの投与により、マウスにおいて抗不安効果、すなわち神経障害、気分障害、人格障害、行動障害、睡眠障害などの不安症の病状を治療、緩和または予防する効果が奏されることが示されているのであって、特許文献1~4と同様、アスタキサンチンの摂取により、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトの頭の回転力の低下を改善することができること、集中力の低下を改善することができること、意欲の低下を改善することができること、気分の落ち込みを改善することができること、イライラを解消することができること、体の軽快さを向上させることができること、活気および/または活力の低下を改善することができること、友好心理を向上させること、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠を改善あるいは向上させること、肉体的ストレスを軽減、改善あるいは解消させること、精神的ストレスの蓄積を抑制すること、疲労の蓄積を抑制することおよび免疫の低下を抑制することが示されているのではない。
【0012】
特許文献6においては、アスタキサンチンの投与により、犬において排泄物消臭効果、睡眠改善効果、感性改善効果、視覚改善効果が奏されることが示されているのであって、特許文献1~5と同様、アスタキサンチンの摂取により、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトの頭の回転力の低下を改善することができること、集中力の低下を改善することができること、意欲の低下を改善することができること、気分の落ち込みを改善することができること、イライラを解消することができること、体の軽快さを向上させることができること、活気および/または活力の低下を改善することができること、友好心理を向上させること、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠を改善あるいは向上させること、肉体的ストレスを軽減、改善あるいは解消させること、精神的ストレスの蓄積を抑制すること、疲労の蓄積を抑制することおよび免疫の低下を抑制することが示されているのではない。
【0013】
特許文献7においては、アスタキサンチンの投与により、マウスにおいて拘束ストレスに対する抑制効果が奏されるとの試験結果から、肉体的ストレスから生じる肉体疲労および精神的ストレスから生じる精神疲労の症状そのもの、あるいはこれらによる健康障害が抑制、予防あるいは改善されることが示されているのであって、特許文献1~6と同様、アスタキサンチンの摂取により、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトの頭の回転力の低下を改善することができること、集中力の低下を改善することができること、意欲の低下を改善することができること、気分の落ち込みを改善することができること、イライラを解消することができること、体の軽快さを向上させることができること、活気および/または活力の低下を改善することができること、友好心理を向上させること、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠を改善あるいは向上させること、肉体的ストレスを軽減、改善あるいは解消させること、精神的ストレスの蓄積を抑制すること、疲労の蓄積を抑制することおよび免疫の低下を抑制することが示されているのではない。
【0014】
すなわち、本発明は、アスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分として含有する、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトに向けた飲食品組成物や飲食品などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、鋭意研究の結果、アスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒト健常男女に対し摂取させることによって、頭の回転力の低下の改善、集中力の低下の改善、意欲の低下の改善、気分の落ち込みの改善、イライラの解消、体の軽快さの向上、活気および/または活力の低下の改善、友好心理の向上、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠の質の改善あるいは向上、肉体的ストレスの軽減、改善あるいは解消、精神的ストレスの蓄積の抑制、疲労の蓄積の抑制、免疫低下の抑制という作用効果を奏することを見出し、さらにはヒトにおいて抗酸化効果を奏せずにこれらの作用効果を奏することを見出し、下記の各発明を完成した。
【0016】
(1)下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および(g)から選択される1または2以上のアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分とする飲食品組成物;
(a)疲労感を有するヒトの頭の回転力低下改善用飲食品組成物、
(b)疲労感を有するヒトの集中力低下改善用飲食品組成物、
(c)疲労感を有するヒトの意欲低下改善用飲食品組成物、
(d)疲労感を有するヒトの気分の落ち込み改善用飲食品組成物、
(e)疲労感を有するヒトのイライラ解消用飲食品組成物、
(f)疲労感を有するヒトの体の軽快さ向上用飲食品組成物、
(g)疲労感を有するヒトの活気および/または活力低下改善用飲食品組成物。
【0017】
(2)下記の(a)、(b)、(c)、(d)および(e)から選択される1または2以上のアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分とする飲食品組成物;
(a)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で約0ng/mL~約160ng/mLのヒト血中アスタキサンチン濃度に等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、疲労感を有するヒトの頭の回転力低下改善用飲食品組成物、
(b)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で約0ng/mL~約160ng/mLのヒト血中アスタキサンチン濃度に等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、疲労感を有するヒトの集中力低下改善用飲食品組成物、
(c)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で約0ng/mL~約160ng/mLのヒト血中アスタキサンチン濃度に等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、疲労感を有するヒトの意欲低下改善用飲食品組成物、
(d)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で約0ng/mL~約160ng/mLのヒト血中アスタキサンチン濃度に等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、疲労感を有するヒトの気分の落ち込み改善用飲食品組成物、
(e)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で約0ng/mL~約160ng/mLのヒト血中アスタキサンチン濃度に等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、疲労感を有するヒトのイライラ解消用飲食品組成物。
【0018】
(3)下記の(a)、(b)、(c)、(d)および(e)から選択される1または2以上のアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分とする飲食品組成物;
(a)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で1日当たり約0.1mg~約0.3mg/体重kgに等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、疲労感を有するヒトの頭の回転力低下改善用飲食品組成物、
(b)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で1日当たり約0.1mg~約0.3mg/体重kgに等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、疲労感を有するヒトの集中力低下改善用飲食品組成物、
(c)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で1日当たり約0.1mg~約0.3mg/体重kgに等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、疲労感を有するヒトの意欲低下改善用飲食品組成物、
(d)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で1日当たり約0.1mg~約0.3mg/体重kgに等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、疲労感を有するヒトの気分の落ち込み改善用飲食品組成物、
(e)アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で1日当たり約0.1mg~約0.3mg/体重kgに等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される、疲労感を有するヒトのイライラ解消用飲食品組成物。
【0019】
(4)疲労感が精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感である、(1)から(3)のいずれか一項のいずれか一項に記載の飲食品組成物。
【0020】
(5)さらにトコトリエノールおよびオリーブ油の少なくともいずれかを含有する、(1)から(4)の少なくともいずれか一項に記載の飲食品組成物。
【0021】
(6)アスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物が、ヘマトコッカス藻を破砕して得られるアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物である、(1)から(5)のいずれか一項に記載の飲食品組成物。
【0022】
(7)ヒトが健常なヒトである、(1)から(6)のいずれか一項に記載の飲食品組成物。
【0023】
(8)下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および(g)から選択される1または2以上のアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分とする飲食品;
(a)疲労感を有するヒトの頭の回転力低下改善用飲食品、
(b)疲労感を有するヒトの集中力低下改善用飲食品、
(c)疲労感を有するヒトの意欲低下改善用飲食品、
(d)疲労感を有するヒトの気分の落ち込み改善用飲食品、
(e)疲労感を有するヒトのイライラ解消用飲食品、
(f)疲労感を有するヒトの体の軽快さ向上用飲食品、
(g)疲労感を有するヒトの活気および/または活力低下改善用飲食品。
【0024】
(9)下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および(g)から選択される1または2以上のアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分とする医薬組成物;
(a)疲労感を有するヒトの頭の回転力低下改善用医薬組成物、
(b)疲労感を有するヒトの集中力低下改善用医薬組成物、
(c)疲労感を有するヒトの意欲低下改善用医薬組成物、
(d)疲労感を有するヒトの気分の落ち込み改善用医薬組成物、
(e)疲労感を有するヒトのイライラ解消用医薬組成物、
(f)疲労感を有するヒトの体の軽快さ向上用医薬組成物、
(g)疲労感を有するヒトの活気および/または活力低下改善用医薬組成物。
【0025】
(10)下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および(g)から選択される1または2以上のアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分とする剤;
(a)疲労感を有するヒトの頭の回転力低下改善剤、
(b)疲労感を有するヒトの集中力低下改善剤、
(c)疲労感を有するヒトの意欲低下改善剤、
(d)疲労感を有するヒトの気分の落ち込み改善剤、
(e)疲労感を有するヒトのイライラ解消剤、
(f)疲労感を有するヒトの体の軽快さ向上剤、
(g)疲労感を有するヒトの活気および/または活力低下改善剤。
【0026】
(11)下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および(g)の少なくともいずれかの用途のためのアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有組成物の使用;
(a)疲労感を有するヒトの頭の回転力の低下の改善、
(b)疲労感を有するヒトの集中力の低下の改善、
(c)疲労感を有するヒトの意欲の低下の改善、
(d)疲労感を有するヒトの気分の落ち込みの改善、
(e)疲労感を有するヒトのイライラの解消、
(f)疲労感を有するヒトの体の軽快さの向上、
(g)疲労感を有するヒトの活気および/または活力の低下の改善。
【0027】
(12)(11)において、アスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有組成物の使用が飲食品としての使用である、アスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有組成物の使用。
【0028】
(13)下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および(g)の少なくともいずれかの用途のためのアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有組成物の医薬品としての使用;
(a)疲労感を有するヒトの頭の回転力の低下の改善、
(b)疲労感を有するヒトの集中力の低下の改善、
(c)疲労感を有するヒトの意欲の低下の改善、
(d)疲労感を有するヒトの気分の落ち込みの改善、
(e)疲労感を有するヒトのイライラの解消、
(f)疲労感を有するヒトの体の軽快さの向上、
(g)疲労感を有するヒトの活気および/または活力の低下の改善。
【0029】
(14)アスタキサンチンを投与(摂取)して下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および(g)の少なくともいずれかを改善、向上または解消する方法;
(a)疲労感を有するヒトの頭の回転力の低下、
(b)疲労感を有するヒトの集中力の低下、
(c)疲労感を有するヒトの意欲の低下、
(d)疲労感を有するヒトの気分の落ち込み、
(e)疲労感を有するヒトのイライラ、
(f)疲労感を有するヒトの体の軽快さ、
(g)疲労感を有するヒトの活気および/または活力の低下。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分として含有する飲食品組成物によれば、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒト健常男女に対し、頭の回転力の低下の改善、集中力の低下の改善、意欲の低下の改善、気分の落ち込みの改善、イライラの解消、体の軽快さの向上、活気および/または活力の低下の改善、友好心理の向上、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠の質の改善あるいは向上、肉体的ストレスの軽減、改善あるいは解消、精神的ストレスの蓄積の抑制、疲労の蓄積の抑制、免疫低下の抑制という作用効果を奏する飲食品組成物や飲食品、医薬組成物、剤、これらの用途のための使用、方法などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】検査項目と検査スケジュールを示す図である。
図2】OSA睡眠調査の結果を示す図である。
図3】被験者全員の「疲労感」(「精神的負荷による疲労感」または「精神的負荷および肉体的負荷による疲労感」について、摂取前(0週)における「負荷前」、「精神負荷後(精神的負荷後)」、「両負荷後」および「(両負荷後の)休憩後」におけるVAS(Visual Analog Scale)実測値(平均値)を示す図である。
図4】VAS(Visual Analog Scale)の負荷変化量および摂取変化量を示す表である。
図5】「頭の回転力」因子、「集中力」因子、「意欲」因子、「気分」因子、「イライラ」因子および「体の軽快さ」因子におけるVASの結果を示す図である。
図6】POMS(Profile of Mood States;気分プロフィール試験)の結果を示す図である。
図7】摂取4週後の精神負荷(精神的負荷)の前後における唾液コルチゾール濃度の変化を示す図である。
図8】試験食品摂取前と摂取8週間後における唾液分泌型免疫グロブリンA(sIgA)濃度の変化を示す図である。
図9】摂取前(負荷前)と摂取8週後との、酸化マーカーの推移および変化量を示す図である。
図10】被験者の各種データ、被験者における摂取前(負荷前)、摂取4週後、摂取8週後および摂取12週後の体重、ならびに被験者における摂取4週後、摂取8週後および摂取12週後の血中(血清中)のアスタキサンチン(AX)濃度を示す表である。
図11】摂取8週後の「頭の回転力」因子についての、負荷前からの各測定時点のVASの変化量(プラセボ群プロット;図中の(C)、(F)、(I)および(L))、同因子についてのアスタキサンチン群における負荷前からの各測定時点のVASの変化量と、摂取8週後の血中(血清中)アスタキサンチン濃度との相関(図中の(A)、(D)、(G)および(J))ならびに同因子についてのアスタキサンチン群における負荷前からの各測定時点のVASの変化量と、摂取8週後における1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量との相関(図中の(B)、(E)、(H)および(K))を、それぞれ示す。
図12】摂取8週後の「集中力」因子についての、負荷前からの各測定時点のVASの変化量(プラセボ群プロット;図中の(C)、(F)、(I)および(L))、同因子についてのアスタキサンチン群における負荷前からの各測定時点のVASの変化量と、摂取8週後の血中(血清中)アスタキサンチン濃度との相関(図中の(A)、(D)、(G)および(J))ならびに同因子についてのアスタキサンチン群における負荷前からの各測定時点のVASの変化量と、摂取8週後における1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量との相関(図中の(B)、(E)、(H)および(K))を、それぞれ示す。
図13】摂取8週後の「意欲」因子についての、負荷前からの各測定時点のVASの変化量(プラセボ群プロット;図中の(C)、(F)、(I)および(L))、同因子についてのアスタキサンチン群における負荷前からの各測定時点のVASの変化量と、摂取8週後の血中(血清中)アスタキサンチン濃度との相関(図中の(A)、(D)、(G)および(J))ならびに同因子についてのアスタキサンチン群における負荷前からの各測定時点のVASの変化量と、摂取8週後における1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量との相関(図中の(B)、(E)、(H)および(K))を、それぞれ示す。
図14】摂取8週後の「気分」因子についての、負荷前からの各測定時点のVASの変化量(プラセボ群プロット;図中の(C)、(F)、(I)および(L))、同因子についてのアスタキサンチン群における負荷前からの各測定時点のVASの変化量と、摂取8週後の血中(血清中)アスタキサンチン濃度との相関(図中の(A)、(D)、(G)および(J))ならびに同因子についてのアスタキサンチン群における負荷前からの各測定時点のVASの変化量と、摂取8週後における1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量との相関(図中の(B)、(E)、(H)および(K))を、それぞれ示す。
図15】摂取8週後の「イライラ」因子についての、負荷前からの各測定時点のVASの変化量(プラセボ群プロット;図中の(C)、(F)、(I)および(L))、同因子についてのアスタキサンチン群における負荷前からの各測定時点のVASの変化量と、摂取8週後の血中(血清中)アスタキサンチン濃度との相関(図中の(A)、(D)、(G)および(J))ならびに同因子についてのアスタキサンチン群における負荷前からの各測定時点のVASの変化量と、摂取8週後における1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量との相関(図中の(B)、(E)、(H)および(K))を、それぞれ示す。
図16】摂取12週後の「起床時眠気」因子、「入眠と睡眠維持」因子、「夢み」因子、「疲労回復」因子および「睡眠時間」因子についての、摂取前(負荷前)からのそれぞれの変化量(プラセボ群プロット;図中の(C)、(F)、(I)、(L)および(O))、前記各因子についてのアスタキサンチン群の摂取前(負荷前)からのそれぞれの変化量と、摂取12週後の血中(血清中)アスタキサンチン濃度との相関(図中の(A)、(D)、(G)、(J)および(M))、ならびに前記各因子についてのアスタキサンチン群の摂取前(負荷前)からのそれぞれの変化量と、摂取12週後における1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量との相関(図中の(B)、(E)、(H)、(K)および(N))を、それぞれ示す。
図17】摂取8週後に測定した体重についての、1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量と、摂取8週後であって、負荷前および精神負荷休憩後のVAS(Visual Analog Scale)の数値に基づいて算出した負荷変化量との関係を示す図である。
図18】精神負荷である連続計算の結果を示す図である。
図19】肉体負荷として実施した自転車走行の結果を示す図である。
図20】1粒あたりヘマトコッカス藻抽出物60mg(アスタキサンチンフリー体として6mg)と食用油脂270mgを含有する食品を42日間、2粒/日で摂取した場合のヒト血中(血漿中)のアスタキサンチン濃度変化の推移結果を示す図表である。図中、(A)はヒト血中(血漿中)のアスタキサンチン濃度変化の推移を示し、(B)は当該試験の全データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分として含有する飲食品組成物、飲食品、医薬組成物または剤について詳細に説明する。本発明に係るアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分として含有する飲食品組成物、飲食品、医薬組成物または剤は、これらの用途のための使用、方法への転用が可能である。本発明に係るアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分とする飲食品組成物は、下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)および(g)から選択される1または2以上のアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分とする飲食品組成物である;
(a)疲労感を有するヒトの頭の回転力低下改善用飲食品組成物、頭の回転力低下改善用飲食品、頭の回転力低下改善用医薬組成物または頭の回転力低下改善剤、
(b)疲労感を有するヒトの集中力低下改善用飲食品組成物、集中力低下改善用飲食品、集中力低下改善用医薬組成物または集中力低下改善剤、
(c)疲労感を有するヒトの意欲低下改善用飲食品組成物、意欲低下改善用飲食品、意欲低下改善用医薬組成物または意欲低下改善剤、
(d)疲労感を有するヒトの気分の落ち込み改善用飲食品組成物、気分の落ち込み改善用飲食品、気分の落ち込み改善用医薬組成物または気分の落ち込み改善剤、
(e)疲労感を有するヒトのイライラ解消用飲食品組成物、イライラ解消用飲食品、イライラ解消用医薬組成物または活気向上剤、
(f)疲労感を有するヒトの体の軽快さ向上用飲食品組成物、体の軽快さ向上用飲食品、体の軽快さ向上用医薬組成物または睡眠の質改善剤、
(g)疲労感を有するヒトの活気および/または活力低下改善用飲食品組成物、活気および/または活力低下改善用飲食品、活気および/または活力低下改善用医薬組成物または活気および/または活力低下改善剤。
【0033】
本発明において用いることのできるアスタキサンチンは特に限定されず、天然アスタキサンチンおよび合成アスタキサンチンの少なくともいずれかを用いることができる。天然のアスタキサンチンとしては、例えば、ヘマトコッカスなどの藻類;ファフィアなどの酵母類;エビ、オキアミ、カニなどの甲殻類;イカ、タコなどの頭足類;種々の魚介類;アドニスなどの植物類;Paracoccus sp.N81106、Brevundimonas sp.SD212、Erythrobacter sp.PC6などのバクテリア類;Gordonia sp.KANMONKAZ-1129などの放線菌;Schizochytriuym sp.KH105などのラビリンチュラ類;アスタキサンチン産生遺伝子組み換え生物体;などから得られるアスタキサンチンを挙げることができ、好ましくはヘマトコッカスなどの微細藻類から抽出されるアスタキサンチン、より好ましくはヘマトコッカス藻から抽出されるアスタキサンチンである。また、合成アスタキサンチンとしては、例えば、AstaSana(DSM社)、Lucantin Pink(登録商標)(BASF社)などを挙げることができる。また、天然由来の他のカロテノイドを化学的に変換して得た合成アスタキサンチンとしては、例えば、AstaMarine(PIVEG社)などを挙げることができる。
【0034】
天然のアスタキサンチンが得られるヘマトコッカス藻としては、例えば、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus deroebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)などを挙げることができる。
【0035】
これらヘマトコッカス緑藻類を培養する方法としては、異種微生物の混入・繁殖がなく、その他の夾雑物の混入が少ない密閉型の培養方法が好ましく、そのような培養方法としては、例えば、一部解放型のドーム形状、円錐形状又は円筒形状の培養装置と装置内で移動自在のガス吐出装置を有する培養基(国際公開第1999/050384号パンフレット)を用いて培養する方法の他、ヘマトコッカス藻類に乾燥ストレスを加えて藻類のシスト化を誘発し、そのシスト化した藻類の培養物からアスタキサンチンを採取する方法(特開平8-103288号公報)、密閉型の培養装置に光源を入れ内部から光を照射して培養する方法、平板状の培養槽やチューブ型の培養層を用いる方法を挙げることができる。
【0036】
また、本発明において用いることのできるアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物は、例えば、上述したヘマトコッカス藻を、必要に応じて、特開平5-68585号公報などに開示された方法に従い細胞壁を破砕して、アセトン、エーテル、クロロホルムおよびアルコール(エタノール、メタノールなど)などの有機溶剤や、超臨界状態の二酸化炭素などの抽出溶媒・溶剤を加えて抽出したアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物であってもよく、その場合のアスタキサンチン含有抽出物のアスタキサンチン含有量は、好ましくは3~40%(w/w)、より好ましくは3~12%(w/w)、さらに好ましくは5~10%(w/w)である。
【0037】
また、本発明において用いることのできるアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物として、市販品を挙げることができる。そのような市販品としては、例えば、ASTOTS-S、ASTOTS-10O、ASTOTS-ECS、ASTPTS-2.0PW、ASTOTS-3.0MBなどのASTOTSシリーズ(ASTOTSはすべて登録商標;富士フイルム社);アスタリールオイル50F、アスタリールオイル5F、アスタリールパウダー20F、水溶性アスタリール液、アスタリールWS液、アスタリール10WS液、アスタリールACT、アスタビータe、アスタビータスポーツ、アスタメイドなどのアスタリール、アスタビータおよびアスタメイドシリーズ(すべて登録商標;アスタリール社、富士化学工業社);BioAstin(登録商標;サイアノテック コーポレーション社);Astazine TM(BGG Japan社);アスタキサンチンパウダー1.5%、アスタキサンチンパウダー2.5%、アスタキサンチンオイル5%、アスタキサンチンオイル10%(バイオアクティブズジャパン社);アスタキサンチン(オリザ油化社);サンアクティブAX(登録商標)(太陽化学社);ヘマトコッカスWS30(ヤエガキ発酵技研社);AstaMarine(PIVEG社)などを挙げることができる。
【0038】
次に、本発明における組成物におけるアスタキサンチン量は、アスタキサンチンフリー体の換算した重量に基づいており、当該組成物におけるアスタキサンチンの含量は、例えば飲食品においては、0.000001~10重量%、好ましくは0.00001~5重量%の量で含有させることができ、医薬品においては、0.01~99重量%、好ましくは0.1~90重量%の量で含有させることができる。
【0039】
本発明の組成物は、少なくとも数日摂取すればよく、好ましくは1週間摂取するとよく、より好ましくは4週間摂取するとよく、さらに好ましくは8週間摂取するとよく、よりさらに好ましくは12週間摂取するとよく、最も好ましくは長期間摂取すればするほどよい。また、一日あたりの摂取の回数は1回でもよく、複数回でもよい。また、本発明の組成物の摂取量は、成人における一日当たりのアスタキサンチン摂取量がアスタキサンチンフリー体換算で0.03mg~100mg、好ましくは0.05mg~30mgとなるように摂取すればよい。
【0040】
次に、本発明において、「疲労感」とは、疲れ、怠さ、脱力に伴う感情であり、倦怠感とも称される感情という心理学的因子をいう。「疲労感」を有しているか否かは、VAS(Visual Analog Scale)によって測定することができる。より具体的には、10cmの線上に、左端(0.0)が「疲れを全く感じない最良の感覚」、右端(10.0)が「何もできないほど疲れ切った最悪の感覚」と定義し、被験者には自分の気持ちがその線上のどのあたりに相当するかを記入してもらうことで測定することができる。
【0041】
なお、本明細書における実施例では、一律の精神負荷(精神的負荷)、または一律の精神的負荷と一律の肉体負荷(肉体的負荷)を被験者全員に与えることにより、それぞれの被験者が感じる疲労感を、VAS(Visual Analog Scale)によりヒトの精神的負荷による疲労感、精神的負荷および肉体的負荷による疲労感、頭の回転力の低下の改善度、集中力の低下の改善度、意欲の低下の改善度、気分の落ち込みの改善度、イライラの解消度、体の軽快さの向上度について測定が行われていること、POMS(Profile of Mood States;気分プロフィール試験)によりヒトの活気および/または活力低下改善について測定が行われていることから、本明細書においては、「精神疲労」と「精神的負荷による疲労感」、「肉体疲労」と「肉体的負荷による疲労感」のそれぞれについて、明確に区別がなされており、「精神疲労」と「精神的負荷による疲労感」とは、「肉体疲労」と「肉体的負荷による疲労感」とは、明確に異なる。また、本明細書において「精神的負荷による疲労感」とは、例えば図3においては、「(0w)精神負荷後」のポイントにおける疲労感をいい、「精神的負荷および肉体的負荷による疲労感」とは、例えば図3においては、「(0w)両負荷後」のポイントにおける疲労感をいう。この点、同図3の(0w)負荷前から(0w)休憩後までのトータルである「疲労感」が包含して二分される「肉体的疲労感」および「精神的疲労感」とは、明確に異なる。
【0042】
精神的負荷としては、例えば、計算作業課題を与えることによる負荷(計算負荷)、被験者に対して、認知課題を与えることによる負荷(認知負荷)および情報処理課題を与えることによる負荷(情報処理負荷)から選択される1または2以上の負荷を挙げることができる。計算負荷としては、内田クレペリン検査などを挙げることができ、認知負荷としては、ストループテスト(Stroop Test;ST)やTrail Making Test(TMT)などを挙げることができ、情報処理負荷としては、Wisconsin Card Sorting Test(WCST)やVisual Display Terminal(VDT)などを挙げることができる。また、肉体的負荷としては、例えば、運動パフォーマンステストなどの運動負荷を挙げることができる。
【0043】
本発明において、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトにおける、頭の回転力の低下の改善、集中力の低下の改善、意欲の低下の改善、気分の落ち込みの改善、イライラの解消、体の軽快さの向上、活気および/または活力の低下の改善、友好心理の向上、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠の質の改善あるいは向上、肉体的ストレスの軽減、改善あるいは解消、精神的ストレスの蓄積の抑制、疲労の蓄積の抑制、免疫の低下の抑制という作用効果を奏しているか否かは、所定の問診、精神負荷(精神的負荷、計算負荷;内田クレペリン検査)、肉体負荷(肉体的負荷、運動負荷;運動パフォーマンステスト)、各種血液検査、各種尿検査、OSA睡眠調査、VAS(Visual Analog Scale)、POMS(Profile of Mood States;気分プロフィール試験)、唾液採取(唾液コルチゾールおよび唾液分泌型免疫グロブリンA(sIgA)の測定)、体重測定、作業パフォーマンス評価などの検査項目から当業者によって適宜選択のうえ判断、判定することができる。
【0044】
次に、本発明において、アスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物が抗酸化効果を奏しない態様において、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトにおける、頭の回転力の低下の改善、集中力の低下の改善、意欲の低下の改善、気分の落ち込みの改善、イライラの解消、体の軽快さの向上、活気および/または活力の低下の改善、友好心理の向上、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠の質の改善あるいは向上、肉体的ストレスの軽減、改善あるいは解消、精神的ストレスの蓄積の抑制、疲労の蓄積の抑制、免疫の低下の抑制といった効果を奏する場合がある。
【0045】
本発明における「抗酸化効果を奏しない態様」とは、アスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物の抗酸化作用、あるいはトコトリエノールなどの抗酸化能を有する物質とともに摂取される場合はアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物ならびにトコトリエノールなどの抗酸化能を有する物質の抗酸化作用が発揮されない態様をいい、そのような「抗酸化効果を奏しない態様」としては、例えば、ヒト血中(血清中)アスタキサンチン量;1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量;1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量および1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのトコトリエノール摂取量;アスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物とともに摂取される物質の組み合わせであって抗酸化効果を奏しない組み合わせ;評価された酸化ストレスや抗酸化力当たりの摂取量であって抗酸化効果を奏しない量、などを挙げることができる。
【0046】
「ヒト血中(血清中)アスタキサンチン量」については、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で、約0ng/mL~約160ng/mL、あるいは約0ng/mL~約150ng/mL、あるいは約0ng/mL~約140ng/mL、あるいは約0ng/mL~約135ng/mL、あるいは約0ng/mL~約130ng/mL、あるいは約0ng/mL~約120ng/mL、あるいは約0ng/mL~約115ng/mL、あるいは約0ng/mL~約110ng/mL、あるいは約0ng/mL~約100ng/mL、あるいは約0ng/mL~約90ng/mL、あるいは約0ng/mL~約85ng/mL、あるいは約0ng/mL~約80ng/mL、あるいは約5ng/mL~約160ng/mL、あるいは約5ng/mL~約150ng/mL、あるいは約5ng/mL~約140ng/mL、あるいは約5ng/mL~約135ng/mL、あるいは約5ng/mL~約130ng/mL、あるいは約5ng/mL~約120ng/mL、あるいは約5ng/mL~約115ng/mL、あるいは約5ng/mL~約110ng/mL、あるいは約5ng/mL~約100ng/mL、あるいは約5ng/mL~約90ng/mL、あるいは約5ng/mL~約85ng/mL、あるいは約5ng/mL~約80ng/mL、あるいは約10ng/mL~約160ng/mL、あるいは約10ng/mL~約150ng/mL、あるいは約10ng/mL~約140ng/mL、あるいは約10ng/mL~約135ng/mL、あるいは約10ng/mL~約130ng/mL、あるいは約10ng/mL~約120ng/mL、あるいは約10ng/mL~約115ng/mL、あるいは約10ng/mL~約110ng/mL、あるいは約10ng/mL~約100ng/mL、あるいは約10ng/mL~約90ng/mL、あるいは約10ng/mL~約85ng/mL、あるいは約10ng/mL~約80ng/mL、あるいは約15ng/mL~約160ng/mL、あるいは約15ng/mL~約150ng/mL、あるいは約15ng/mL~約140ng/mL、あるいは約15ng/mL~約135ng/mL、あるいは約15ng/mL~約130ng/mL、あるいは約15ng/mL~約120ng/mL、あるいは約15ng/mL~約115ng/mL、あるいは約15ng/mL~約110ng/mL、あるいは約15ng/mL~約100ng/mL、あるいは約15ng/mL~約90ng/mL、あるいは約15ng/mL~約85ng/mL、あるいは約15ng/mL~約80ng/mL、あるいは約20ng/mL~約160ng/mL、あるいは約20ng/mL~約150ng/mL、あるいは約20ng/mL~約140ng/mL、あるいは約20ng/mL~約135ng/mL、あるいは約20ng/mL~約130ng/mL、あるいは約20ng/mL~約120ng/mL、あるいは約20ng/mL~約115ng/mL、あるいは約20ng/mL~約110ng/mL、あるいは約20ng/mL~約100ng/mL、あるいは約20ng/mL~約90ng/mL、あるいは約20ng/mL~約85ng/mL、あるいは約20ng/mL~約80ng/mL、あるいは約25ng/mL~約160ng/mL、あるいは約25ng/mL~約150ng/mL、あるいは約25ng/mL~約140ng/mL、あるいは約25ng/mL~約135ng/mL、あるいは約25ng/mL~約130ng/mL、あるいは約25ng/mL~約120ng/mL、あるいは約25ng/mL~約115ng/mL、あるいは約25ng/mL~約110ng/mL、あるいは約25ng/mL~約100ng/mL、あるいは約25ng/mL~約90ng/mL、あるいは約25ng/mL~約85ng/mL、あるいは約25ng/mL~約80ng/mL、あるいは約30ng/mL~約160ng/mL、あるいは約30ng/mL~約150ng/mL、あるいは約30ng/mL~約140ng/mL、あるいは約30ng/mL~約135ng/mL、あるいは約30ng/mL~約130ng/mL、あるいは約30ng/mL~約120ng/mL、あるいは約30ng/mL~約115ng/mL、あるいは約30ng/mL~約110ng/mL、あるいは約30ng/mL~約100ng/mL、あるいは約30ng/mL~約90ng/mL、あるいは約30ng/mL~約85ng/mL、あるいは約30ng/mL~約80ng/mL、あるいは約35ng/mL~約160ng/mL、あるいは約35ng/mL~約150ng/mL、あるいは約35ng/mL~約140ng/mL、あるいは約35ng/mL~約135ng/mL、あるいは約35ng/mL~約130ng/mL、あるいは約35ng/mL~約120ng/mL、あるいは約35ng/mL~約115ng/mL、あるいは約35ng/mL~約110ng/mL、あるいは約35ng/mL~約100ng/mL、あるいは約35ng/mL~約90ng/mL、あるいは約35ng/mL~約85ng/mL、あるいは約35ng/mL~約80ng/mL、あるいは約40ng/mL~約160ng/mL、あるいは約40ng/mL~約150ng/mL、あるいは約40ng/mL~約140ng/mL、あるいは約40ng/mL~約135ng/mL、あるいは約40ng/mL~約130ng/mL、あるいは約40ng/mL~約120ng/mL、あるいは約40ng/mL~約115ng/mL、あるいは約40ng/mL~約110ng/mL、あるいは約40ng/mL~約100ng/mL、あるいは約40ng/mL~約90ng/mL、あるいは約40ng/mL~約85ng/mL、あるいは約40ng/mL~約80ng/mL、あるいは約45ng/mL~約160ng/mL、あるいは約45ng/mL~約150ng/mL、あるいは約45ng/mL~約140ng/mL、あるいは約45ng/mL~約135ng/mL、あるいは約45ng/mL~約130ng/mL、あるいは約45ng/mL~約120ng/mL、あるいは約45ng/mL~約115ng/mL、あるいは約45ng/mL~約110ng/mL、あるいは約45ng/mL~約100ng/mL、あるいは約45ng/mL~約90ng/mL、あるいは約45ng/mL~約85ng/mL、あるいは約45ng/mL~約80ng/mLのヒト血中アスタキサンチン濃度に等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される場合に、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトの、頭の回転力の低下を改善するという効果、集中力の低下を改善するという効果、意欲の低下を改善するという効果、気分の落ち込みを改善するという効果、イライラを解消するという効果、体の軽快さを向上させるという効果、活気および/または活力の低下を改善するという効果、友好心理を向上させるという効果、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠の質を改善し、あるいは向上させるという効果、肉体的ストレスを軽減、改善あるいは解消するという効果および精神的ストレスの蓄積を抑制するという効果、疲労の蓄積を抑制するという効果、ならびに免疫の低下を抑制するという効果の群から選択される少なくとも1つまたは2つ以上の効果を奏する。
【0047】
ここで、「約0ng/mL」とは、本明細書における血中(血清中)アスタキサンチン濃度の定量の限界値が5ng/mLであり、定量はできなかったものの血中(血清中)アスタキサンチンが検出された場合の値を「約0ng/mL」としている。また、「約5ng/mL」、「約10ng/mL」、「約15ng/mL」、「約20ng/mL」、「約25ng/mL」、「約30ng/mL」、「約35ng/mL」、「約40ng/mL」、「約45ng/mL」、「約85ng/mL」、「約90ng/mL」、「約100ng/mL」、「約110ng/mL」、「約115ng/mL」、「約120ng/mL」、「約130ng/mL」、「約135ng/mL」、「約140ng/mL」、「約150ng/mL」、「約160ng/mL」にいう「約」は、当該血中(血清中)アスタキサンチン濃度の定量に若干のばらつきがあることから付している。
【0048】
血中(血清中)アスタキサンチン濃度の測定手法としては、当業者によって適宜選択可能な手法を用いることができ、そのような手法は特に限定されないが、例えば、採取された血清試料を精製、濃縮したものを逆相系HPLCに供するという手法により測定することができる。
【0049】
「1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量」については、アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で1日当たり約0.1mg~約0.3mg、あるいは約0.1mg~約0.275mg、あるいは約0.1mg~約0.25mg、あるいは約0.1mg~約0.225mg、あるいは約0.1mg~約0.2mg、あるいは約0.125mg~約0.3mg、あるいは約0.125mg~約0.275mg、あるいは約0.125mg~約0.25mg、あるいは約0.125mg~約0.225mg、あるいは約0.125mg~約0.2mg、あるいは約0.15mg~約0.3mg、あるいは約0.15mg~約0.275mg、あるいは約0.15mg~約0.25mg、あるいは約0.15mg~約0.225mg、あるいは約0.15mg~約0.2mg、あるいは約0.175mg~約0.3mg、あるいは約0.175mg~約0.275mg、あるいは約0.175mg~約0.25mg、あるいは約0.175mg~約0.225mg、あるいは約0.175mg~約0.2mg、あるいは約0.2mg~約0.3mg、あるいは約0.2mg~約0.275mg、あるいは約0.2mg~約0.25mg、あるいは約0.2mg~約0.225mg/体重kgに等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される場合に、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトの、頭の回転力の低下を改善するという効果、集中力の低下を改善するという効果、意欲の低下を改善するという効果、気分の落ち込みを改善するという効果、イライラを解消するという効果、体の軽快さを向上させるという効果、活気および/または活力の低下を改善するという効果、友好心理を向上させるという効果、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠の質を改善し、あるいは向上させるという効果、肉体的ストレスを軽減、改善あるいは解消するという効果および精神的ストレスの蓄積を抑制するという効果、疲労の蓄積を抑制するという効果、ならびに免疫の低下を抑制するという効果の群から選択される少なくとも1つまたは2つ以上の効果を奏する。ここで、「約0.1mg」、「約0.125mg」、「約0.15mg」、「約0.175mg」、「約0.2mg」、「約0.225mg」、「約0.25mg」、「約0.275mg」、「約0.3mg」にいう「約」は、当該1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量に若干のぶれがあることから付している。
【0050】
さらにトコトリエノールおよびオリーブ油の少なくともいずれかを含有することにより、「アスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物とともに摂取される物質の組み合わせであって抗酸化効果を奏しない組み合わせ」を実現することができる。
【0051】
トコトリエノールとアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物という組み合わせの場合、それを必要とする対象に対して、1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量がアスタキサンチンフリー体で約0.06~約0.14mgに等しいまたは等価な用量、およびヒト体重1kg当たりのトコトリエノール摂取量が約0.11mg~約0.23mgに等しいまたは等価な用量で摂取(投与)されることにより、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトの、頭の回転力の低下を改善するという効果、集中力の低下を改善するという効果、意欲の低下を改善するという効果、気分の落ち込みを改善するという効果、イライラを解消するという効果、体の軽快さを向上させるという効果、活気および/または活力の低下を改善するという効果、友好心理を向上させるという効果、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠の質を改善し、あるいは向上させるという効果、肉体的ストレスを軽減、改善あるいは解消するという効果、精神的ストレスの蓄積を抑制するという効果、疲労の蓄積を抑制するという効果、ならびに免疫の低下を抑制するという効果の群から選択される少なくとも1つまたは2つ以上の効果を奏する。
【0052】
なお、「酸化ストレスや抗酸化力」を評価する手法としては特に限定されないが、例えば、クレアチニン値を測定して評価する方法、酸化ストレス値(Diacron-Reactive Oxygen Metabolites;d-ROMs)を測定して評価する方法、抗酸化力測定(Biological Antioxidant Potential;BAP)、抗酸化力(BAP)/酸化ストレス(d-ROMs)比(GAP比)を算出して評価する方法、8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)値やマロンジアルデヒド値、酸化LDL、酸化RLP、NADPH酸化酵素、H・グルタチオンなどの酸化ストレスマーカーを測定して評価する方法、酸化ストレス度(Oxdation Stress Index;OSI)を測定して評価する方法などを挙げることができる。
【0053】
また、本明細書において、「抗酸化効果を奏しない態様」は、「統計学的に有意な抗酸化効果を奏しない態様」と置換可能な場合がある。
【0054】
本発明の組成物は、飲食品組成物または医薬組成物であるが、飲食品組成物としては、例えば、当業者によって適宜選択可能な手法により、サプリメント、固形食品、流動食品、飲料などの飲食品とすることができ、医薬組成物としては、例えば、当業者によって適宜選択可能な手法により、カプセル剤、水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、注射剤、坐剤、吸入剤、経鼻剤、経皮剤などの剤とすることができる。
【0055】
一方、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有するヒトにおける、頭の回転力の低下の改善、集中力の低下の改善、意欲の低下の改善、気分の落ち込みの改善、イライラの解消、体の軽快さの向上、活気および/または活力の低下の改善、友好心理の向上、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠の質の改善あるいは向上、肉体的ストレスの軽減、改善あるいは解消、精神的ストレスの蓄積の抑制、疲労の蓄積の抑制あるいは免疫の低下の抑制といった効果を期待して、特定保健用食品などの特別用途食品や栄養機能食品、乳児用調製粉乳、幼児用粉乳などの食品、授乳婦用粉乳などの食品、保健機能食品、病者用食品、乳製品、発酵乳などとして摂取することもできる。さらに、液状、ペースト状、粉末、固形状などの形態を問わず、各種の飲食品に配合することで、飲食品として摂取することもできる。飲食品として、牛乳、清涼飲料、粉末飲料、発酵乳、乳酸菌飲料、酸性飲料、ヨーグルト、チーズ、パン、ビスケット、クラッカー、ピッツァクラスト、調製粉乳、流動食、病者用食品、栄養食品、冷凍食品、食品組成物、加工食品、その他の市販食品などを例示することができる。本発明の組成物を酸性の医薬品や飲食品の形態とした場合には、そのpHは2.0~6.0、好ましくは3.0~5.0に設定することができる。
【0056】
本発明の組成物には、ビタミン類、ペプチド類、ミネラル類、有機酸または短鎖脂肪酸、脂肪酸エステルおよび有機塩基からなる群から選択される少なくとも1つの栄養素を付加的に配合することもできる。あるいは、食味や美観の改善などを目的として、香料、甘味料、酸味料、あるいは着色料などを配合することもできる。なお、本発明の組成物には、トコトリエノールやオリーブオイルを配合することができるが、これに限られず、例えば、ゴマ油、菜種油、サフラワー油、大豆油などの油類も配合することができる。
【0057】
以下、本発明に係るアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を有効成分として含有する飲食品組成物、飲食品、医薬組成物、剤、これらの用途のための使用、方法について、実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
【実施例
【0058】
<試験1>
1.被験者の選択
疲労感を有している20歳以上64歳以下の男性および女性であって、下記の事項に該当しない者を被験者として選択した。
・慢性疲労症候群の疾患がある者
・糖尿病、肝疾患、腎疾患、消化器疾患、末梢血管障害、その他重篤な疾患の既往歴がある者
・心肺機能に障害を示す者
・肝機能及び腎機能検査値が異常を示す者
・消化管の手術を受けたことがある者
・現在、治療中の疾患がある者
・食物及び薬剤アレルギーのある者
・激しいスポーツをする者及びダイエット中の者
・試験食品に含まれている成分が入った健康食品や医薬部外品、医薬品(OTC医薬品や処方箋医薬品を含む)を摂取している者
・アルコールを過剰に摂取している者、あるいは試験前日から当日まで禁酒できない者
に該当しない者を被験者として選択した。
【0059】
具体的には、被験候補者61名を事前検査に来院させ、所定の問診、理学検査、臨床検査などの各検査を実施し、その結果から39名を選択して被験者とした。臨床検査のうちの血液検査においては、総ビリルビン値、AST(GOT)値、ALT(GPT)値、ALP値、LD(乳酸脱水素酵素;LDH)値、γ-GT(γ-GTP)値、クレアチニンキナーゼ(CK)値、総蛋白値、クレアチニン値、尿素窒素値、尿酸値、総コレステロール値、TG(中性脂肪)値、ナトリウム値、カリウム値、クロール値、カルシウム値、マグネシウム値、血清鉄値、血清アミラーゼ値、HDLコレステロール値、LDLコレステロール値、ALB値(改良BCP法)、白血球数、赤血球数、ヘモグロビン値、ヘマトクリット値、赤血球恒数(MCV、MCHおよびMCHC)、血小板数、血糖値(グルコース値)、HbA1c値(NGSP)、クレアチニン値、BAP値、ヒドロペルオキシド値(d-ROMsテスト)および血中(血清中)アスタキサンチン量の各値を測定し、尿検査においては、クレアチニン値および8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)値の各値を測定するとともに、蛋白定性、糖定性、ウロビリノーゲン定性、ビリルビン定性、比重、pH、ケトン体定性、潜血反応について検査し、VAS(Visual Analog Scale)においては問1(疲れの感覚)について調査し、POMS(Profile of Mood States;気分プロフィール試験)においてはTMD(Total Mood Disturbance)得点を算出した。
【0060】
被験者が試験に参加するに際して(事前検査実施前)、試験責任医師は、倫理委員会により承認された最新の説明文書・同意書を被験者へ手渡したうえで、下記の12項目について十分に説明し、被験者への質問に対して被験者が満足できるように回答した。その際、被験者には、質問をするための機会と試験参加の判断を行うための十分な時間が与えられ、試験責任医師は被験者の自由意思に基づく同意を文書で得た。
・本試験の主旨・目的・期間並びに方法
・試験食品の作用、予測される副作用など
・試験実施期間中は被験者を試験責任医師の十分な管理下に置くこと
・被験者は試験の参加に同意しない場合があっても不利益を受けないこと
・被験者が試験への参加に同意した後でも随時これを撤回できること
・本試験において健康被害が発生した場合には適切な処置を受けられること
・本試験への継続参加の意思に影響を与える可能性のある情報が得られた場合には速やかに被験者に伝えられること
・本試験の結果が公表される場合であっても、被験者のプライバシーは保全されること
・被験者が守るべき事項
・被験者が本試験及び被験者の権利に関してさらに情報が欲しい場合、または本試験に関連する健康被害が生じた場合に連絡が取れる窓口
・利益相反について
・その他
【0061】
2.試験食品
下掲の表1および表2に試験食品の内容物組成を示す。ヘマトコッカス藻抽出物120mg(フリー体換算のアスタキサンチン6mg)とヤシ油由来のトコトリエノール混合物10mgとを含むソフトカプセル(アスタビータe;アスタリール社)をアスタキサンチン群向けの試験食品とし、トコトリエノール混合物10mgは含むがヘマトコッカス藻抽出物(アスタキサンチン)を含まない、前記アスタキサンチン群向けの試験食品であるソフトカプセルと外見上識別不能な対照ソフトカプセルを対照群(プラセボ群)向けの試験食品とした。
【0062】
[表1]
【0063】
[表2]
【0064】
試験食品をそれぞれアルミ包装し、試験に直接関与しない者が乱数を用いて試験食品への割付番号の付与を無作為に行い、被験者に配布することにより、アスタキサンチンを含まないカプセルを摂取する対照群(プラセボ群)およびアスタキサンチン6mg(ヘマトコッカス藻抽出物120mgおよびヤシ油由来のトコトリエノール混合物10mg)を含むカプセルを摂取するアスタキサンチン群を設定した。割付表は割付担当者が封緘し、割付表開封時まで密封保管した。解析対象者およびデータが固定した後、割付担当者は割付表を開封して情報の開示を行った。
【0065】
3.試験実施期間と実施医療機関
次に、当社から富士化学工業社(富山県中新川郡)に依頼を行い、富士化学工業社を通じてワンネスサポート社(大阪府大阪市)に試験を委託し、2015年8月から2015年12月の間、みうらクリニック(大阪府大阪市)において試験を実施した。なお、本試験は、試験実施計画書、ヘルシンキ宣言(2013年改訂)に基づく倫理的原則、および「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(2015年改訂)」を厳守するとともに、みうらクリニックの倫理審査委員会の承認のもとに実施した。
【0066】
4.試験食品の摂取
試験食品の摂取においては、プラセボ対照ランダム化二重盲検化並行群間比較試験を採用し、アスタキサンチンを含まないカプセルを摂取する対照群(プラセボ群)とアスタキサンチン6mg(ヘマトコッカス藻抽出物120mgおよびヤシ油由来のトコトリエノール混合物10mg)を含むカプセルを摂取するアスタキサンチン群の2群を二重盲検法により比較した。試験食品の摂取量は、1日2回、1回あたり1粒(1日計2粒、アスタキサンチン12mg(ヘマトコッカス藻抽出物240mgおよびヤシ油由来のトコトリエノール混合物20mg))とし、被験者には朝食および夕食後(朝食を摂らない場合は、当日の初回食後)に、水またはぬるま湯で30分以内に摂取させた。摂取期間は8週間(OSA睡眠調査についてのみ12週間)とし、被験者は、摂取開始日から終了までの毎日、試験食品の摂取状況、飲酒や運動の状況を日誌に記入した。
【0067】
5.検査項目と検査スケジュール
図1に検査項目と検査スケジュールを示す。被験者39名の選択については上述した1.の通りである。選択後、被験者39名を摂取前(摂取0週・負荷前)に来院させ、精神負荷(精神的負荷、計算負荷;内田クレペリン検査)および肉体負荷(肉体的負荷、運動負荷;運動パフォーマンステスト)を実施し、負荷の前後および休憩後に所定の問診、OSA睡眠調査、VAS(Visual Analog Scale)、POMS(Profile of Mood States;気分プロフィール試験)、唾液採取(唾液コルチゾールおよび唾液分泌型免疫グロブリンA(sIgA)の測定)、血液検査(クレアチニン値、BAP値、ヒドロペルオキシド値(d-ROMsテスト)および血中(血清中)アスタキサンチン量の測定)、尿検査(クレアチニン値および8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)値の測定)、体重測定などを実施した後、試験食品を12週間連続摂取させた。摂取4週後、8週後および12週後に再び被験者を来院させ、摂取4週後にはPOMS、OSA睡眠調査および尿検査を除く同内容であって血液検査については一部について、摂取8週後にはOSA睡眠調査を除く同内容について、摂取12週後にはOSA睡眠調査、体重測定および一部の血液検査のみについて、それぞれ実施した。
【0068】
[5-1]自覚的症状の評価
精神負荷(精神的負荷、計算負荷;内田クレペリン検査)の前にOSA睡眠調査を、精神的負荷と肉体負荷(肉体的負荷、運動負荷;運動パフォーマンステスト)の前後にVASおよびPOMSを、それぞれ実施した。
(1)OSA睡眠調査
「山本由華吏,田中秀樹,高瀬美紀,山崎勝男,阿住一雄,白川修一郎:中高年・高齢者を対象としたOSA睡眠調査票(MA版)の開発と標準化,脳と精神の医学,vol.10,p401-409,1999」で報告されている方法に従い、被験者にOSA睡眠調査票の各項目について評価させて分析した。調査回数は検査日の朝(負荷前)の1回とした。なお、OSA睡眠調査票(MA版)は、第1因子:起床時眠気、第2因子:入眠と睡眠維持、第3因子:夢み、第4因子:疲労回復、第5因子:睡眠時間の5因子形16項目から構成されており、4肢選択式で記入させ換算表により得点化して分析した。
【0069】
(2)VAS(Visual Analog Scale)
被験者に対する設問は、「疲労感(「精神的負荷による疲労感」または「精神的負荷および肉体的負荷による疲労感」)(疲れを全く感じない最良の感覚-何もできないほど疲れ切った最悪の感覚)」、「頭の回転力(頭がすっきりしている-頭がぼんやりする)」、「集中力(極めて集中力がある-全く集中できない)」、「意欲(非常に意欲がわいている-意欲が全くわかない)」、「気分(非常に生き生きしている-この上なく沈んだ気分である)」、「イライラ(全くイライラしない-非常にイライラする)」、「体の軽快さ(非常に体が軽く感じる-非常に体が重たく感じる)」の計7問を用いた。100mmの水平な直線上に、設問に関して左端が最大の状態、右端が最小の状態とし、被験者にその時の状態を直感で線を引かせ、左端より定規で測定し数値化した。調査は、検査日の朝(負荷前)と肉体と精神の両負荷後および検査日の終わり(休憩後)に加え、精神負荷(精神的負荷、計算負荷;内田クレペリン検査)後および精神負荷後(精神的負荷後)の休憩後にも実施し、一日に計5回行った。一過性の疲労の変化を評価するために、精神的負荷後、精神的負荷後の休憩後、両負荷後および休憩後の数値から負荷前の数値を差し引いた負荷変化量を算出した。また、試験食品摂取による影響のみを評価するために、摂取4週後および摂取8週後の負荷前の数値化から摂取0週の負荷前(摂取前)の数値を差し引いた摂取変化量を算出した。
【0070】
(3)POMS(Profile of Mood States;気分プロフィール試験)
生活の質(QOL)またはストレスの度合いを数値化することを目的として、不安、緊張などの情動(感情・気分)を評価するための様々な評価試験が開発されているが、中でもPOMSは、ストレス反応の結果惹起されるほぼ全ての感情または気分を総合評価するのに非常に有用である。
POMSは、McNairら(1971)によって開発され、65項目の質問に答えることによって、7つの尺度、すなわち、怒りと敵意(Anger-Hostility:AH)、混乱と当惑(Confusion-bewilderment:CB)、抑うつと落ち込み(Depression-Dejection:DD)、疲労と無気力(Fatigue-impotence:FI)、緊張と不安(Tension-Anxiety:TA)、活気と活力(Vigor-Action:VA)および友好(Friendship:F)から構成される一時的な感情または気分の状態を同時に測定することができる評価試験である。上記7つの尺度のうち、怒り-敵意(AH)、混乱-当惑(CB)、抑うつ-落ち込み(DD)、疲労-無気力(FI)、緊張-不安(TA)は陰性の感情因子であり、活気-活力(VA)および友好(F)は陽性の感情因子である。POMSはスポーツ選手の心身チェックやコンディション調整、介護や福祉の分野での気分、疲労度の状態チェックや環境改善のために利用され、種々の実験的研究の効果判定に信頼性が高く非常に敏感な尺度であることが実証されている。
【0071】
POMS2日本語版成人用短縮版(金子書房社)に従い、被験者に対し、35項目の質問に対する「今の気分」における回答を、5件法(0=まったくなかった、1=少しあった、2=まあまああった、3=かなりあった、4=非常に多くあった)自己記入式により求めた。各項目の回答は、POMSの 得点集計法に基づき、怒り-敵意、混乱-当惑、抑うつ-落ち込み、疲労-無気力、緊張-不安、活気-活力、友好の7つの尺度ごとの粗得点をまとめ、換算表によりTMD得点に換算した。調査は、検査日の朝(負荷前)と精神負荷(精神的負荷、計算負荷;内田クレペリン検査)後に加え、検査日の終わり(休憩後)にも実施し、一日に計3回行った。一過性の疲労の変化を評価するため、精神負荷後(精神的負荷後)および休憩後の数値から負荷前の数値を差し引いた負荷変化量算出した。また、試験食品摂取による影響のみを評価するために、摂取8週後の負荷前の数値化から摂取0週の負荷前(摂取前)の数値を差し引いた摂取変化量を算出した。
【0072】
[5-2]唾液コルチゾールおよび唾液分泌型免疫グロブリンA(sIgA)の測定
精神負荷(精神的負荷)の生化学的指標として調査した唾液コルチゾールは、血中コルチゾールと相関が高く測定が簡便なことからストレスマーカーとして利用されており、人前でのスピーチや暗算などの急性の精神的ストレスや高強度の持続的な運動によって上昇することが知られている。なお、唾液コルチゾール濃度には概日変動があり、朝は高く夜にかけて減少することが知られているため、本試験の精神負荷(精神的負荷、計算負荷;内田クレペリン検査)は午前中に実施した。また、唾液分泌型免疫グロブリンA(sIgA)はB細胞によって作られる抗体の一種であり、口腔、気道、腸管などの粘膜上における病原体の増殖を防ぐ役割を有しており、唾液におけるsIgAの減少は上気道感染の発症と関連していること、および唾液中のsIgAの量が慢性的ストレス下で減少し、リラックス状態では増加することが知られている。
【0073】
(1)唾液コルチゾールの測定
被験者に歯磨きをさせた後、綿(Salivette)を2分間噛まずに口に含み唾液を十分に染み込ませることにより被験者の唾液を採取した。被験者に対する唾液採取回数は検査日の朝(負荷前)および精神負荷(精神的負荷、計算負荷;内田クレペリン検査)後の2回とし、唾液のコルチゾール量は競合法による化学発光免疫測定法(CLIA)定量キット(シーメンスヘルスケア社、ケミルミACS-EコルチゾールII)を用いて計測した。
【0074】
(2)唾液分泌型免疫グロブリンA(sIgA)の測定
被験者に対する唾液採取は検査日の朝(負荷前)に行い、[5-2](1)と同様にして被験者の唾液を採取した。採取した唾液のsIgA量は、酵素免疫抗体法(EIA)定量キット(医学生物学研究所社、EIA s-IgAテスト)により計測した。
【0075】
[5-3]精神負荷(精神的負荷)および肉体負荷(肉体的負荷)ならびに作業パフォーマンス評価
精神負荷(精神的負荷、計算負荷;内田クレペリン検査)を実施した後、60分間の休憩を設け、次いで肉体負荷(肉体的負荷、運動負荷;運動パフォーマンステスト)を実施した。
【0076】
(1)精神負荷(精神的負荷、計算負荷;内田クレペリン検査)
精神的負荷として、被験者に内田クレペリン検査(精神技術研究所社)を用いた連続計算を行わせた。詳細には、並んでいる隣り合った2つの数字を順に足し、その下一桁(1の位)の数のみ記入し、1分毎にすばやく次の行に計算を移らせるという、15分間のひと桁の足し算(3、4、5、6、7、8、9の組み合わせ)を5分の休憩をはさんで前半15分、後半15分の計30分間行わるという内容であった。終了後、作業量、正答率および誤答数をカウントし、テスト後半の結果からテスト前半の結果を差し引いた後半変化量を算出し、精神的負荷の作業パフォーマンスとした。
【0077】
(2)肉体負荷(肉体的負荷、運動負荷;運動パフォーマンステスト)
肉体的負荷として、自転車エルゴメーターを用いた自転車走行を行わせた。詳細には、男性には80W、女性には70Wの一定負荷を掛け、男性は心拍数120~130HR、女性は110~120HRを維持するようにペダルの回転数を調整させ、30分間漕ぎ続けさせるという内容であった。終了後、30分間の走行距離を計測し、肉体的負荷の作業パフォーマンスとした。
【0078】
[5-4]血中(血清中)のアスタキサンチン濃度(アスタキサンチンフリー体)(trans体)の測定
血中(血清中)のアスタキサンチン濃度の測定は摂取4週後、摂取8週後および摂取12週後に、各群の被験者に対して行った。ただし、測定限界値は5ng/mLであるため、以下において測定限界値を下回る場合は約0ng/mLとしている。
(1)サンプル処理
被験者から採取された血清または血漿試料100μLに、Butylhydroxytoluene(BHT;50μg/mL)エタノール溶液500μL、100ng/mLの内部標準(Ethyl 8’-apo-beta-caroten-8’-oate、Carote Nature、1010)アセトン溶液100μL、蒸留水500μLを加え、ボルテックスミキサーで15秒間激しく撹拌した後、ヘキサン5mLを添加してさらに、ボルテックスミキサーで15秒間激しく撹拌した。この攪拌工程を3回行った後、3500rpmの回転条件下で10分間遠心分離した。遠心分離後の上清4mLを回収し、メッシュが0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した。得られたろ液を遠心エバポレーターで濃縮したのち、アセトン150μLに再溶解させ、逆相系HPLCに供した。一方、100ng/mLのアスタキサンチン標準試薬(Astaxanthin、ALEXIS BIOCHEMICALS、460-031-M250)アセトン溶液100mLに、10μg/mLの内部標準(Ethyl 8’-apo-beta-caroten-8’-oate)アセトン溶液1mLを合わせて調整した標準溶液を、同様に逆相系HPLCに供して、得られたピーク面積比の比較によりアスタキサンチン濃度を求めた。
【0079】
(2)HPLC条件
HPLCは島津LC20Aシリーズ(ポンプ:LC-20AD、デガッサ:DGU-20A5R、オートサンプラー:SIL-20AC、カラムオーブン:CTO-20AC、検出器:SPD-20AV、システムコントローラー:CBM-20A)を、分析カラムはYMC-Carotenoid(4.6×250mm、粒径5μm)をそれぞれ用いた。移動相はA液(メタノール)、B液(Tert-Butyl methyl ether)およびC液(1%リン酸水溶液)を用い、開始時にA液とB液の混合比が93:5(%比)、4分でB液が16%、7分で22.5%、25.6分で48.75%、33.2分で90%となるようにグラジエント溶出を行い、41.5分までB液90%の組成を維持したのち、41.7分に開始時の混合比に戻し、53.4分まで開始時の組成で溶出した。C液は常に2%の組成とし、カラムオーブンは16℃とし、UV/VIS検出器により検出波長470nmで測定を行い、流量は1mL/分とした。
【0080】
[5-5]その他の測定
血液検査(BAP値、ヒドロペルオキシド値(d-ROMsテスト))、尿検査(クレアチニン値および8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)値の測定)、体重測定を実施した。血液検査については精神負荷(精神的負荷、計算負荷;内田クレペリン検査)の前と肉体負荷(肉体的負荷、運動負荷;運動パフォーマンステスト)の後であって、摂取前(負荷前)、ならびに摂取4週後、摂取8週後および摂取12週後の少なくともいずれかに行い、尿検査は精神的負荷の前であって、摂取前(負荷前)および摂取8週後に行った。また、体重測定は精神的負荷の前後であって、摂取前(負荷前)、摂取4週後、摂取8週後および摂取12週後に行った。
【0081】
6.休憩と検査日の食事
被験者には、精神負荷(精神的負荷、計算負荷;内田クレペリン検査)後の休憩の開始10分以内に2個のおにぎりと100mLの水を、肉体負荷(肉体的負荷、運動負荷;運動パフォーマンステスト)後の休憩の60分間に100mLの水を、それぞれ摂取させた。
【0082】
7.統計解析
VAS(Visual Analog Scale)、POMS(Profile of Mood States;気分プロフィール試験)および作業パフォーマンスは対照群(プラセボ群)とアスタキサンチン群の群間比較を実施し、studentのt検定を行った。OSA、唾液コルチゾール濃度の値、唾液sIgA濃度の値、クレアチニン値、BAP値、d-ROMs値、d-ROMs/BAP比および8-OHdG値は群内比較を実施し、対応のあるt検定を行った。数値は平均値と標準誤差で示し、有意水準は両側5%未満を有意差あり、両側10%未満5%以上を傾向ありとした。また、クレアチニン値、BAP値、d-ROMs値、d-ROMs/BAP比、8-OHdG値および血中(血清中)アスタキサンチン量については平均値と標準偏差を算出した。
【0083】
<試験2>
本試験は、アスタキサンチンを長期間摂取することにより血中(血漿中)のアスタキサンチン濃度がどのように変化するのかを確認するためのヒト試験である。すなわち、試験1においては摂取終了時(摂取12週後)の血中(血清中)のアスタキサンチンの濃度が測定されているが、摂取期間が12週より短い場合の血中(血漿中)アスタキサンチン濃度がどのようになるかを確認するためのヒト試験である。
1.被験者
20歳以上50歳未満の健常な日本人男女10名
2.試験食と摂取
被験者は、1粒あたりヘマトコッカス藻抽出物60mg(アスタキサンチンフリー体として6mg)と食用油脂270mgを含むカプセルを42日間、朝食30分後に1日2粒(アスタキサンチンフリー体として12mg/日)を水とともに摂取した。
3.採血およびアスタキサンチン定量
カプセル摂取開始から1日後、6日後、13日後、20日後、27日後、34日後および42日後に採血を行い、血漿を得た。試験1における[5-4]の手法に従って血漿中のアスタキサンチン濃度をHPLCにより測定した。
【0084】
<結果1>
1.被験者背景
対照群(プラセボ群)19名(男性8名、女性11名)とアスタキサンチン群20名(男性9名、女性11名)が被験者となった。対照群の被験者の平均年齢は48.2歳(25~64歳)、アスタキサンチン群の平均年齢は48.7歳(21~61歳)で、両群の平均年齢の間に有意差は認められなかった。試験開始後、アスタキサンチン群で1名の被験者が脱落し、アスタキサンチン群は合計19名となった。脱落者を除いたアスタキサンチン群の平均年齢は49.0歳であり、対照群の平均年齢との間に有意差は認められなかった。試験食品の摂取率は、対照群が96.5%、アスタキサンチン群が98.1%で、両群の摂取率の間に有意差は認められなかった。評価にあたり、解析対象除外基準に該当した被験者はなく、全被験者を対象として解析を行った。
【0085】
2.自覚的症状の評価
[2-1]OSA睡眠調査
OSA睡眠調査の結果を図2に示す。図2に示すように、第1因子(起床時眠気)、第2因子(入眠と睡眠維持)、第3因子(夢み)、第4因子(疲労回復)および第5因子(睡眠時間)の5因子のうち、摂取前(負荷前)と比較して、アスタキサンチン群では第5因子(睡眠時間)について有意傾向的に上昇した。また、有意差を確認できなかったものの、摂取前(負荷前)と比較して、アスタキサンチン群では第1因子(起床時眠気)、第2因子(入眠と睡眠維持)および第4因子(疲労回復)について大きな上昇の幅が認められた。
【0086】
以上の結果、アスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物は、本試験においては、従来知られている睡眠障害を改善するという作用効果ではなく、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠の質、疲労感、特に精神負荷(精神的負荷、計算負荷)による疲労感、あるいは精神負荷(精神的負荷、計算負荷)および肉体負荷(肉体的負荷、運動負荷)による疲労感を有する健常なヒトにおける睡眠の質を改善あるいは向上する効果を奏することが明らかとなった。
【0087】
なお、3日間に亘り、就床のおよそ1時間前にカモミール茶200mLを飲用した場合(佐藤定子他、第42回(平成23年度)日本看護学会論文集、成人看護II、2012年、第80~83ページ)と比較して、第5因子(睡眠時間)の改善幅について本試験結果の方が大きいことが分かった。
【0088】
[2-2]VAS(Visual Analog Scale)
VASの結果を図3図4および図5に示す。図3に示すように、精神的負荷による疲労感の有無を示すポイントである摂取前(0週)の精神的負荷後においては、被験者全員の平均値が精神的負荷による疲労感を有していること、精神的負荷および肉体的負荷による疲労感の有無を示すポイントである摂取前(0週)の両負荷後においては、被験者全員の平均値が精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有していることが分かり、しかも摂取前(0週)の負荷前と比較して有意であることから、摂取前(0週)の両負荷後においては、被験者全員の平均値が精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を顕著に有していることが分かる。また、当該結果は一過性の疲労を評価する負荷変化量を示すのであるが、図4に示すように、「気分」因子におけるアスタキサンチン群では、摂取4週後の両負荷後について、対照群と比較して有意に改善し、摂取8週後の両負荷後および摂取4週後の(両負荷後の)休憩後について、対照群と比較して有意傾向的に改善した。また、精神的な疲労感に関する「イライラ」因子におけるアスタキサンチン群では、摂取8週後の精神負荷後(精神的負荷後)および(両負荷後の)休憩後について、対照群と比較して有意に改善した。また、「体の軽快さ」因子におけるアスタキサンチン群では、摂取8週後の両負荷後について、対照群と比較して有意に向上し、摂取8週後の(両負荷後の)休憩後について、対照群と比較して有意傾向的に向上した。さらに、「頭の回転力」因子におけるアスタキサンチン群では、摂取4週後および摂取8週後の両負荷後および(両負荷後の)休憩後について、対照群と比較して有意傾向的に改善、向上し、「集中力」因子におけるアスタキサンチン群では、摂取8週後の両負荷後および(両負荷後の)休憩後について、対照群と比較して有意傾向的に改善、向上し、「意欲」因子におけるアスタキサンチン群では、摂取8週後の両負荷後について、対照群と比較して有意傾向的に向上した。さらに、図5に示すように、「頭の回転力」因子または「集中力」因子におけるアスタキサンチン群では、対照群と比較して、精神負荷後(精神的負荷後)、両負荷後および(両負荷後の)休憩後において頭の回転力の低下または集中力の低下を改善し、特に両負荷後および(両負荷後の)休憩後においては有意傾向的に改善した。また、「意欲」因子および「気分」因子におけるアスタキサンチン群では、対照群と比較して、精神的負荷後、両負荷後および(両負荷後の)休憩後において意欲の低下または気分の落ち込みを改善し、特に両負荷後においては有意傾向的に改善した。また、「イライラ」因子におけるアスタキサンチン群では、対照群と比較して、精神的負荷後、両負荷後および(両負荷後の)休憩後においてイライラを解消(イライラの悪化を改善)し、特に精神的負荷後および(両負荷後の)休憩後においては有意に改善した。また、「体の軽快さ」因子におけるアスタキサンチン群では、対照群と比較して、精神的負荷後、両負荷後および(両負荷後の)休憩後において体の軽快さを向上させ(体の軽快さの悪化を改善し)、特に両負荷後においては有意に改善し、(両負荷後の)休憩後においては有意傾向的に改善した。
【0089】
以上の結果、アスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物は、疲労感、特に精神負荷(精神的負荷)による疲労感、あるいは精神的負荷および肉体負荷(肉体的負荷)による疲労感を有する健常なヒトの、頭の回転力の低下を改善し、集中力の低下を改善し、意欲の低下を改善し、気分の落ち込みを改善し、イライラを解消(イライラの悪化を改善)し、体の軽快さを向上させる(体の軽快さの悪化を改善する)効果を奏することが明らかとなった。
【0090】
[2-3]POMS(Profile of Mood States;気分プロフィール試験)
POMSの結果を図6に示す。当該結果は一過性の疲労を評価する負荷変化量を示すのであるが、図6に示すように、一過性の疲労を評価する負荷変化量については、摂取8週後の休憩後について、「活気-活力(VA)」因子において、アスタキサンチン群は対照群と比較して有意傾向的に高値を示した。試験食品摂取による影響のみを評価する摂取変化量(摂取8週後-摂取前(負荷前))については、「友好(F)」因子において、アスタキサンチン群は対照群と比較して有意に高値を示した。
【0091】
以上の結果、アスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物は、疲労感、特に精神負荷(精神的負荷)による疲労感、あるいは精神負荷および肉体負荷(肉体的負荷)による疲労感を有する健常なヒトの活気および/または活力の低下を改善し、疲労感、特に精神負荷(精神的負荷)による疲労感、あるいは精神負荷および肉体負荷(肉体的負荷)による疲労感を有する健常なヒトにおける友好心理を向上させあるいは高める効果を奏することが明らかとなった。
【0092】
なお、2週間に亘り、朝夕に鰹だしを摂取した場合(石崎太一他、日本食品科学工学会誌、第53巻、第4号、2006年4月、第225~228ページ)と比較して、「活気-活力(VA)」因子の改善幅について本試験結果の方が大きく、その他「怒り-敵意(AH)」因子、「疲労-無気力(FI)」および「混乱-当惑(CB)」の改善幅について本試験結果の方が大きいことが分かった。
【0093】
また、42~54日間に亘り、朝夕に分けてケルセチン250mgおよびイソケルセチン100mgを摂取した場合(Kevin A.他、MILITARY MEDICINE、第176巻、第5号、2011年5月、第565~572ページ)と比較して、「活気-活力(VA)」因子の改善幅について本試験結果の方が大きく、ケルセチン250mgおよびイソケルセチン100mgを摂取した場合の方は改善幅がマイナス(むしろ悪化している)ことが分かった。
【0094】
3.生化学的指標の評価
[3-1]唾液コルチゾール
摂取4週後の精神負荷(精神的負荷)の前後における唾液コルチゾール濃度の変化を図7に示す。図7に示すように、摂取4週後では、アスタキサンチン群の精神負荷後(精神的負荷後)の唾液コルチゾール濃度は精神負荷前(精神的負荷前)の唾液コルチゾール濃度と比較して有意に低下したが、対照群(プラセボ群)の唾液コルチゾール濃度は精神負荷前後(精神的負荷前後)において有意な変化はなかった。また、摂取8週後の精神的負荷の前後での唾液コルチゾール濃度(μg/dL)について、対照群における精神的負荷前の値は0.38±0.03であり、精神的負荷後の値は0.40±0.05であった。一方、アスタキサンチン群における精神的負荷前の値は0.44±0.03であり、精神的負荷後の値は0.38±0.03であった。
【0095】
以上の結果、アスタキサンチン群における唾液コルチゾールの低下により疲労感、特に精神負荷(精神的負荷)による疲労感、あるいは精神的負荷および肉体負荷(肉体的負荷)による疲労感を有する健常なヒトの肉体的ストレスが軽減したことが客観的に示され、アスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物は、疲労感、特に精神的負荷による疲労感、あるいは精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有する健常なヒトの肉体的ストレス疲労を軽減、改善あるいは解消するといった効果を奏することが明らかとなった。
【0096】
[3-2]唾液分泌型免疫グロブリンA(sIgA)
試験食品摂取前と摂取8週間後における唾液分泌型免疫グロブリンA(sIgA)濃度の変化を図8に示す。図8に示すように、対照群(プラセボ群)の摂取8週後の唾液sIgA濃度は摂取前(負荷前)の唾液sIgA濃度と比較して有意に低下したが、アスタキサンチン群の唾液sIgA濃度は摂取8週後までに有意な変化はなかった。また、唾液sIgA濃度(μg/mL)について、対照群における摂取前(負荷前)の値は36.1±4.0であり、摂取8週後の値は29.2±3.0であった。一方、アスタキサンチン群における摂取前(負荷前)の値は46.5±8.2であり、摂取8週後の値は41.9±5.5であった。
【0097】
精神的ストレスや疲労が蓄積すると風邪や口唇ヘルペスに罹りやすくなるが、以上の結果から、アスタキサンチン摂取により精神的ストレスの蓄積、疲労の蓄積および免疫の低下を抑えることができることが示唆された。すなわち、アスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物は、疲労感、特に精神負荷(精神的負荷)による疲労感、あるいは精神的負荷および肉体負荷(肉体的負荷)による疲労感を有する健常なヒトの精神的ストレスの蓄積、疲労の蓄積および免疫の低下を抑制するといった効果を奏することが明らかとなった。
【0098】
[3-3]酸化マーカーの推移と変化量
摂取前(負荷前)と摂取8週後との、酸化マーカーの推移および変化量を図9に示す。図9に示すように、摂取前(負荷前)と摂取8週後におけるクレアチニン値、BAP値、d-ROMs値およびd-ROMs/BAP比には、いずれも有意差が認められなかった。
【0099】
以上の結果から、疲労感、特に精神負荷(精神的負荷)による疲労感、あるいは精神的負荷および肉体負荷(肉体的負荷)による疲労感を有する健常なヒトにおいて、アスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物が、統計学的に有意な抗酸化効果を奏しない態様にて、頭の回転力の低下の改善、意欲の低下の改善、気分の落ち込みの改善、イライラの解消、体の軽快さの向上、活気および/または活力の低下の改善、友好心理の向上、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠の質の改善あるいは向上、肉体的ストレスの軽減、改善あるいは解消、精神的ストレスの蓄積の抑制、疲労の蓄積の抑制、免疫の低下の抑制といった効果を奏することが示唆されたことから、上述したアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物を摂取することによる、疲労感、特に精神的負荷による疲労感、あるいは精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有する健常なヒトにおける頭の回転力の低下の改善、意欲の低下の改善、気分の落ち込みの改善、イライラの解消、体の軽快さの向上、活気および/または活力の低下の改善、友好心理の向上、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠の質の改善あるいは向上、肉体的ストレスの軽減、改善あるいは解消、精神的ストレスの蓄積の抑制、疲労の蓄積の抑制、免疫の低下の抑制という効果は、ヒト体内における酸化、抗酸化とは必ずしもリンクしないことが明らかとなった。
【0100】
[3-4]血中(血清中)アスタキサンチン濃度
被験者の各種データならびに被験者における摂取前(負荷前)、摂取4週後、摂取8週後および摂取12週後の血中(血清中)のアスタキサンチン(AX)濃度を図10に示し、摂取8週後の「頭の回転力」因子、「集中力」因子、「意欲」因子、「気分」因子および「イライラ」因子についての、負荷前からの各測定時点のVASのそれぞれの変化量(プラセボ群プロット)を図11図15の(C)、(F)、(I)および(L)に示し、「頭の回転力」因子、「集中力」因子、「意欲」因子、「気分」因子および「イライラ」因子についてのアスタキサンチン群における負荷前からの各測定時点のVASのそれぞれの変化量と、摂取8週後の血中(血清中)アスタキサンチン濃度との相関を図11図15の(A)、(D)、(G)および(J)に示し、摂取12週後の「起床時眠気」因子、「入眠と睡眠維持」因子、「夢み」因子、「疲労回復」因子および「睡眠時間」因子についての、摂取前(負荷前)からのそれぞれの変化量(プラセボ群プロット)を図16の(C)、(F)、(I)、(L)および(O)に示し、前記各因子についてのアスタキサンチン群の摂取前(負荷前)からのそれぞれの変化量と、摂取12週後の血中(血清中)アスタキサンチン濃度との相関を図16の(A)、(D)、(G)、(J)および(M)に示す。
【0101】
図11図15の(C)、(F)、(I)および(L)、図11図15の(A)、(D)、(G)および(J)、図16の(C)、(F)、(I)、(L)および(O)、ならびに図16の(A)、(D)、(G)、(J)および(M)に示すように、ヒト血中(血清中)アスタキサンチン濃度により、疲労感、特に精神的負荷(精神的負荷)による疲労感、あるいは精神的負荷および肉体負荷(肉体的負荷)による疲労感を有する健常なヒトにおいて、頭の回転力の低下の改善、集中力の低下の改善、意欲の低下の改善、気分の落ち込みの改善、イライラの解消、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠の質の改善あるいは向上といった効果によって差があることが分かり、より具体的には、アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で約0ng/mL~約160ng/mLのヒト血中アスタキサンチン濃度に等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される場合に、特に精神的負荷(精神的負荷)による疲労感、あるいは精神的負荷および肉体負荷(肉体的負荷)による疲労感を有する健常なヒトの、頭の回転力の低下を改善するという効果、集中力の低下を改善するという効果、意欲の低下を改善するという効果、気分の落ち込みを改善するという効果、イライラを解消するという効果、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠の質を改善し、あるいは向上させるという効果を奏することが明らかとなった。また、図11図15のいずれの因子についても、精神負荷後(精神的負荷後)と比較して精神負荷休憩後(精神的負荷休憩後)の方が効果を奏し、両負荷後と比較して精神的負荷休憩後の方が効果を奏し、両負荷後と比較して両負荷休憩後の方が効果を奏し、精神的負荷後と比較して精神的負荷休憩後および両負荷休憩後のいずれもが効果を奏した。
【0102】
すなわち以上の結果、上述したアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物が統計学的に有意な抗酸化効果を奏しない態様の1つとして、血中(血清中)アスタキサンチン量を挙げることができることが明らかとなった。
【0103】
[3-5]1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量
<試験1>の[5-5]に記載の通り、体重測定は摂取前(負荷前)、摂取4週後、摂取8週後および摂取12週後に行った。被験者の各種データならびに被験者における摂取前(負荷前)、摂取4週後、摂取8週後および摂取12週後の体重を図10に示し、摂取8週後の「頭の回転力」因子、「集中力」因子、「意欲」因子、「気分」因子および「イライラ」因子についての、負荷前からの各測定時点のVASのそれぞれの変化量(プラセボ群プロット)を図11図15の(C)、(F)、(I)および(L)に示し、前記各因子についてのアスタキサンチン群の摂取前(負荷前)からのそれぞれの変化量と、摂取8週後における1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量との相関を図11図15の(B)、(E)、(H)および(K)に示し、摂取12週後の「起床時眠気」因子、「入眠と睡眠維持」因子、「夢み」因子、「疲労回復」因子および「睡眠時間」因子についての、摂取前(負荷前)からのそれぞれの変化量(プラセボ群プロット)を図16の(C)、(F)、(I)、(L)および(O)に示し、前記各因子についてのアスタキサンチン群の摂取前(負荷前)からのそれぞれの変化量と、摂取12週後における1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量との相関を図16の(B)、(E)、(H)、(K)および(N)に示す。
【0104】
図11図15の(C)、(F)、(I)および(L)、図11図15の(B)、(E)、(H)および(K)、図16の(C)、(F)、(I)、(L)および(O)、ならびに図16の(B)、(E)、(H)、(K)および(N)に示すように、アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で1日当たり約0.1mg~約0.3mg/体重kgに等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される場合に、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有する健常なヒトの頭の回転力の低下を改善するという効果、集中力の低下を改善するという効果、意欲の低下を改善するという効果、気分の落ち込みを改善するという効果、イライラを解消するという効果、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢みおよび睡眠時間といった睡眠の質を改善し、あるいは向上させるという効果を奏することが明らかとなった。
【0105】
すなわち以上の結果、上述したアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物が統計学的に有意な抗酸化効果を奏しない態様の1つとして、1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量を挙げることができることが明らかとなった。
【0106】
また、摂取8週後に測定した体重についての、1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量と、摂取8週後であって、負荷前および精神負荷(精神的負荷、計算負荷;内田クレペリン検査)休憩後のVAS(Visual Analog Scale)数値に基づいて算出した負荷変化量との関係を考察した。1回の体重測定当たりの試験食品の摂取量は、1粒(アスタキサンチン6mg(ヘマトコッカス藻抽出物120mgおよびヤシ油由来のトコトリエノール混合物10mg))の摂取である。その結果を図17に示す。図17に示すように、「頭の回転力」因子において改善・向上が見られた被験者体重の最小値は48.3kg、改善・向上が見られた被験者体重の最大値は88.5kgであり、「集中力」因子において改善・向上が見られた被験者体重の最小値は48.3kg、改善・向上が見られた被験者体重の最大値は88.5kgであり、「意欲」因子において向上が見られた被験者体重の最小値は44.3kg、向上が見られた被験者体重の最大値は69.5kgであり、「気分」因子において改善・向上が見られた被験者体重の最小値は44.3kg、改善・向上が見られた被験者体重の最大値は69.5kgであり、「イライラ」因子において改善・軽減・解消が見られた被験者体重の最小値は44.3kg、改善・軽減・解消が見られた被験者体重の最大値は69.5kgであった。
【0107】
すなわち、「精神的疲労感」因子において改善・解消が見られる1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン(アスタキサンチンフリー体)摂取量は0.159mg~0.248mg、「頭の回転力」因子において改善・向上が見られる体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量は0.136mg~0.248mg、「集中力」因子において改善・向上が見られる体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量は0.136mg~0.248mg、「意欲」因子において向上が見られる体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量は0.173mg~0.271mg、「気分」因子において改善・向上が見られる体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量は0.173mg~0.271mg、「イライラ」因子において改善・軽減・解消が見られる体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量は0.173mg~0.271mgであった。
【0108】
以上の結果、上述したアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物が統計学的に有意な抗酸化効果を奏しない態様の1つとして、1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン(アスタキサンチンフリー体)摂取量を挙げることができ、詳細には、アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で約0.1mg~約0.3mg/体重kgに等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される場合に、疲労感、特に精神負荷(精神的負荷)による疲労感、あるいは精神的負荷および肉体負荷(肉体的負荷)による疲労感を有する健常なヒトにおいて、頭の回転力の低下の改善、集中力の低下の改善、意欲の低下の改善、気分の落ち込みの改善、イライラの解消といった効果を奏することが分かり、より具体的には、アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で1日当たり約0.1mg~約0.3mg/体重kgに等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される場合に、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有する健常なヒトの頭の回転力の低下を改善するという効果、集中力の低下を改善するという効果、意欲の低下を改善するという効果、気分の落ち込みを改善するという効果、イライラを解消するという効果を奏することが明らかとなった。
【0109】
すなわち以上の結果、上述したアスタキサンチンおよび/またはアスタキサンチン含有抽出物が統計学的に有意な抗酸化効果を奏しない態様の1つとして、1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量を挙げることができることが明らかとなった。
【0110】
なお、1日当たりの、ヒト体重1kg当たりのアスタキサンチン摂取量およびヒト体重1kg当たりのトコトリエノール摂取量に換算した場合は、アスタキサンチンが、アスタキサンチンフリー体で約0.06~約0.14mg/体重kgに等しいまたは等価な用量およびトコトリエノールが約0.11mg~約0.23mg/体重kgに等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される場合に、疲労感、特に精神負荷(精神的負荷)による疲労感、あるいは精神的負荷および肉体負荷(肉体的負荷)による疲労感を有する健常なヒトにおいて、頭の回転力の低下の改善、集中力の低下の改善、意欲の低下の改善、気分の落ち込みの改善、イライラの解消といった効果を奏し、より具体的には、アスタキサンチンが、それを必要とする対象に対して、アスタキサンチンフリー体で1日当たり約0.06~約0.14mg/体重kgに等しいまたは等価な用量およびトコトリエノールが約0.11mg~約0.23mg/体重kgに等しいまたは等価な用量で摂取(投与)される場合に、疲労感、特に精神的負荷による疲労感または精神的負荷および肉体的負荷による疲労感を有する健常なヒトの頭の回転力の低下を改善するという効果、集中力の低下を改善するという効果、意欲の低下を改善するという効果、疲労感を有するヒトの気分障害を改善するという効果、気分の落ち込みを改善するという効果、イライラを解消するという効果を奏する。
【0111】
4.作業パフォーマンス評価
精神負荷(精神的負荷)である連続計算の結果を図18に示す。図18に示すように、摂取8週後の正答率と誤答数の後半変化量においてアスタキサンチン群は対照群と比較して有意な改善を示した。また、肉体負荷(肉体的負荷)として実施した自転車走行の結果を図19に示す。図19に示すように、摂取4週から8週までに走行距離において群間における有意差はみられなかった。
【0112】
以上の結果、精神的な疲労感の改善は、作業パフォーマンスの向上と合わせアスタキサンチンの抗精神疲労効果を強く支持するものと考えられる。
【0113】
また、細胞レベルでは、アスタキサンチンは長中鎖脂肪酸の取り込みに関わるミトコンドリア外膜上の脂肪分解律速酵素カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-1(CPT-1)の酸化修飾を阻害することが知られている。また、これによりアスタキサンチンを摂取した動物ではミトコンドリアでのβ酸化がより亢進され、運動中のエネルギー基質として脂質の利用が促進された結果、代償的に糖の利用が節約され、筋肉中および肝臓中のグリコーゲン量の減少が抑制され、血中のグルコースの低下が抑えられることも知られている。筋グリコーゲンは運動時のエネルギー供給源であり、アスタキサンチンはエネルギー基質の枯渇を抑制することで筋疲労の軽減に効果を発揮すると考えられおり、また、脳内のグリコーゲンの低下は精神疲労に関与していることが知られていることから、発明者らは、アスタキサンチンによる生体内グリコーゲンの節約効果は肉体疲労と精神疲労の両方の抑制に働くと考えている。
【0114】
<結果2>
試験2におけるアスタキサンチンを長期間摂取することによるヒト血中(血漿中)のアスタキサンチン濃度変化の推移結果
結果を図20に示す。図20に示すように、1粒あたりヘマトコッカス藻抽出物60mg(アスタキサンチンフリー体として6mg)と食用油脂270mgを含有する食品を42日間、1日2粒ずつ摂取した場合は、概ね摂取開始から6日を経過したところで、ヒト血中(血漿中)アスタキサンチン濃度が約200ng/mLの値となる辺りからプラトーとなっていることが分かる。これらの結果から、少なくともアスタキサンチン含有食品を摂取し続けている限り、ヒト血中(血漿中)アスタキサンチン濃度は低下しないことが明らかとなった。
【0115】
<有害事象>
試験開始後の検査日に来院できなかった1名の被験者を脱落としたものの、試験期間を通じて有害な自覚症状を訴えた被験者はなく、医師の診察で特記すべき異常は認められなかった。また、これまでに、12mg/日のアスタキサンチンと40mg/日のトコトリエノールを8週間摂取した場合においても有害事象は認められておらず、本試験においても有害事象は認められなかった。
図1
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図5
図6
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図20