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特許7368119酢酸セルロースフレークの製造方法、及び乾燥装置
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  • 特許-酢酸セルロースフレークの製造方法、及び乾燥装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】酢酸セルロースフレークの製造方法、及び乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   C08B 3/06 20060101AFI20231017BHJP
   F26B 3/347 20060101ALI20231017BHJP
   F26B 9/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C08B3/06
F26B3/347
F26B9/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019113662
(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公開番号】P2020204002
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-04-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 和史
(72)【発明者】
【氏名】福井 直之
(72)【発明者】
【氏名】玉垣 博章
(72)【発明者】
【氏名】樫村 京一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆司
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/061474(WO,A1)
【文献】特開2018-058941(JP,A)
【文献】特開2017-052961(JP,A)
【文献】特表2019-516023(JP,A)
【文献】特開2015-089914(JP,A)
【文献】特開平07-198257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 3/00
F26B 3/00
F26B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸セルロースフレークの製造方法であって、
キシロース、マンノース及びグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が0.5mol%以上1.0mol%以下、水分含有量が30重量%以上の原料酢酸セルロース中の水分に対し、0.1GHz~33.9GHzの周波数のマイクロ波を照射し、前記原料酢酸セルロースの温度が140℃未満で乾燥する工程を有し、
前記酢酸セルロースフレークは、キシロース、マンノース及びグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が0.5mol%以上1.0mol%以下の酢酸セルロースからなり、
吸光度法色相が0.47cm -1 以下、
水分含有量が2重量%未満、及び
比表面積が9m /g以下である、酢酸セルロースフレークの製造方法。
【請求項2】
前記酢酸セルロースの酢化度が51%以上62%以下である、請求項1に記載の酢酸セルロースフレークの製造方法。
【請求項3】
原料酢酸セルロースを乾燥して酸セルロースフレークを得るための乾燥装置であって、
マイクロ波発振手段から生じた0.1GHz~33.9GHzの周波数のマイクロ波を導入する開口部と、前記開口部においてマイクロ波を内部に拡散するマイクロ波拡散手段とを有する乾燥室を備え、
前記乾燥室内の前記原料酢酸セルロース中の水分に前記マイクロ波を照射し、
前記酢酸セルロースフレークは、キシロース、マンノース及びグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が0.5mol%以上1.0mol%以下の酢酸セルロースからなり、
吸光度法色相が0.47cm -1 以下、
水分含有量が2重量%未満、及び
比表面積が9m /g以下である、乾燥装置。
【請求項4】
前記酢酸セルロースの酢化度が51%以上62%以下である、請求項3に記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸セルロースフレーク、酢酸セルロースフレークの製造方法、及び乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸セルロースは、セルロースの有機酸エステルの一つであって、その用途は衣料用繊維、タバコ・フィルター・チップ、プラスチックス、フィルム、塗料等多岐にわたり、セルロース誘導体の中で最も生産量が多く、工業的に重要なものである。
【0003】
代表的な酢酸セルロースの工業的製法としては無水酢酸を酢化剤、酢酸を希釈剤、硫酸を触媒とするいわゆる酢酸法が挙げられる。酢酸法の基本的工程は、(1)α-セルロース含有率の比較的高いパルプ原料(溶解パルプ)を、離解・解砕後、酢酸を散布混合する前処理工程と、(2)無水酢酸、酢酸及び酢化触媒(例えば硫酸)よりなる混酸で、(1)の前処理パルプを反応させる酢化工程と、(3)酢酸セルロースを加水分解して所望の酢化度の酢酸セルロースとする熟成工程と、(4)加水分解反応の終了した酢酸セルロースとを反応溶液から沈殿分離、精製、安定化、及び乾燥する後処理工程より成る。
【0004】
また、以上の基本的工程の他、複数の酢酸セルロースの製造方法が特許文献1-4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/061474号
【文献】特開平05-239101号公報
【文献】特開平02-103201号公報
【文献】特開平06-157601号公報
【文献】国際公開第2015/141763号
【文献】国際公開第2016/147884号
【文献】特開2009-159873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、酢酸セルロースの製造に用いる原料としては、α-セルロース含有率の高い、高品位パルプ(溶解パルプ)が使用されている。しかし、世界的な資源の制約とパルプ製造工場の公害問題からコストにみあう高品位のものは得られ難くなることが予想される。一方、原料として、α-セルロース含有率の低い低品位パルプを使用した場合、α-セルロース含有率の低い低品位パルプは、ヘミセルロース含有率が高品位パルプよりも高いため、着色成分が多く含まれており、得られる酢酸セルロースの色相が悪化しやすい。
【0007】
特許文献1では、加水分解反応系内の酸素濃度を3%以下とすることにより、セルロースアセテートの色相を向上することが記載され、酢酸セルロースの乾燥方法として、熱風乾燥が挙げられている。また、特許文献5-7には、食品分野における乾燥方法について記載されている。しかし、これまで酢酸セルロースの乾燥工程による色相等の製品品質への影響は着目されていなかった。
【0008】
本発明者らは、従来の酢酸セルロースの製造方法で採用される乾燥方法では、酢酸セルロース、特にα-セルロース含有率の低い低品位パルプを原料として使用した酢酸セルロースの色相が悪化することを見出し、乾燥方法を改善するに至った。
【0009】
本発明は、低品位のパルプを用いた場合であっても、色相に優れた酢酸セルロースフレークを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第一は、キシロース、マンノース及びグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が0.5mol%以上1.0mol%以下の酢酸セルロースからなり、
吸光度法色相が0.47cm-1以下、水分含有量が2重量%未満、及び比表面積が9m/g以下である、酢酸セルロースフレークに関する。
【0011】
前記酢酸セルロースフレークにおいて、前記酢酸セルロースの酢化度が51%以上62%以下であってよい。
【0012】
本開示の第二は、前記酢酸セルロースフレークの製造方法であって、キシロース、マンノース及びグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が0.5mol%以上1.0mol%以下、水分含有量が30重量%以上の原料酢酸セルロース中の水分に対し、0.1GHz~33.9GHzの周波数のマイクロ波を照射し、前記原料酢酸セルロースの温度が140℃未満で乾燥する工程を有する、酢酸セルロースフレークの製造方法に関する。
【0013】
本開示の第三は、原料酢酸セルロースを乾燥して前記酢酸セルロースフレークを得るための乾燥装置であって、マイクロ波発振手段から生じた0.1GHz~33.9GHzの周波数のマイクロ波を導入する開口部と、前記開口部においてマイクロ波を内部に拡散するマイクロ波拡散手段とを有する乾燥室を備え、前記乾燥室内の前記原料酢酸セルロース中の水分に前記マイクロ波を照射する、乾燥装置に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低品位のパルプを用いた場合であっても、色相に優れた酢酸セルロースフレークを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施例に係る乾燥装置を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[酢酸セルロースフレーク]
本開示の酢酸セルロースフレークは、キシロース、マンノース及びグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が0.5mol%以上1.0mol%以下の酢酸セルロースからなり、吸光度法色相が0.47cm-1以下、水分含有量が2重量%未満、及び比表面積が9m/g以下である。なお、フレークとは、水分含有量が2重量%未満の酢酸セルロースであって、その形状は、鱗片状、粒状、粉状を広く含む薄片状の形状であってよい。
【0017】
(キシロースのモル含量)
本開示の酢酸セルロースフレークにおける酢酸セルロースは、当該酢酸セルロースを構成するキシロース、マンノース及びグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が0.5mol%以上1.0mol%以下である。当該キシロースのモル含量の割合が当該範囲のように高く、α-セルロース含有率が低い場合であっても、本開示の酢酸セルロースフレークは、優れた色相を有する。
【0018】
本開示の酢酸セルロースを構成する糖として、キシロース、マンノース及びグルコースが存在するところ、キシロース、マンノース及びグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合は、以下の方法により求めることができる。
【0019】
酢酸セルロースサンプルの加水分解過程、水酸化ナトリウムによる中和過程、フィルターによるろ過過程を経た後、HPLC(LC-20Aシステム)を用いて、得られたデータからキシロースのみならずその他の構成糖の割合を算出し、5炭糖と6炭糖の合計を基準として、キシロースのモル含量(mol%)を求める。これをキシロース、マンノース及びグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合(mol%)とする。
【0020】
HPLC測定条件は、以下のとおりである。
カラム:TSK-gel Sugar AXG 4.6mmI.D.×15cm(東ソー株式会社)
カラム温度:70℃
移動相:0.5mol/L ホウ酸カリウム緩衝液、PH8.7
移動相流速:0.4mL/min
ポストカラム標識:反応試薬:1w/v%アルギニン・3w/v%ホウ酸
反応試薬流速:0.5mL/min
反応温度:150℃
検出波長:Ex.320nm Em.430nm
【0021】
(吸光度法色相)
本開示の酢酸セルロースフレークの吸光度法色相は、0.47cm-1以下であるところ、当該吸光度法色相は0.46cm-1以下が好ましい。また、当該吸光度法色相は0.44cm-1以上であってよく、0.45cm-1以上であってよい。
【0022】
本開示の酢酸セルロースフレークの吸光度法色相は、以下の方法により求めることができる。酢酸セルロース濃度既知のDMSO溶液をサンプルとして調製し、波長λ=430nmの吸光度及び波長740nmの吸光度をそれぞれ測定して吸光度の差を求め、さらに酢酸セルロース濃度を100%換算して得られた値を吸光度法色相とする。下記式のとおりである。
【0023】
吸光度法色相(cm-1)=吸光度(A-B)/セル厚(cm)/酢酸セルロース濃度(重量%)×100
吸光度:分光光度計 島津製作所社製UV-1700
A:430nmの吸光度(液の黄色味を測定)
B:740nmの吸光度(液の濁りを測定:ベースライン)
酢酸セルロース濃度(重量%):絶乾酢酸セルロース重量(g)/酢酸セルロース溶液全体重量(g)×100
絶乾酢酸セルロース重量(g):酢酸セルロースの重量(g)×(1-含水率(%)/100)
含水率(%):赤外線水分計 METTLER TOLEDO HB43
【0024】
(水分含有量)
本開示の酢酸セルロースフレークは、水分含有量が2重量%未満であるところ、当該水分含有量は1.0重量%未満であってよい。一方、水分が2重量%以上になってくると次工程で加工する際の生産性に影響するため、2重量%未満であることが好ましい。また、当該水分含有量は0重量%以上であってよい。
【0025】
本開示の酢酸セルロースフレークは、水分含有量が2重量%未満となるまで乾燥が進んでいても、優れた色相を有する。
【0026】
酢酸セルロースフレークの水分含有量は、以下の方法により求めることができる。ケット水分計(METTLER TOLEDO HB43)を用いて測定することができる。ケット水分計のアルミ受け皿に含水状態の試料約2.0gを乗せ、重量が変化しなくなるまで120℃で加熱することで加熱前後の重量変化から試料中の水分含量(重量%)が算出できる。
【0027】
(比表面積)
本開示の酢酸セルロースフレークは、比表面積が9m/g以下である。また、当該比表面積は、7.0m/g以上であってよい。従来の熱風乾燥では、140℃以上の高温下、酢酸セルロースの外側から加熱するので、吸光度法色相が悪化するだけでなく、乾燥中に酢酸セルロースが表面から収縮し凝集するため、比表面積が9m/gを超える。
【0028】
本開示の酢酸セルロースフレークの比表面積は、窒素法BET比表面積測定法を用いて求めることができる。試料を予めカンタクローム・インスツルメンツ社製MasterPrep脱気装置を用いて、温度100℃下にて約1時間の間、加熱真空排気した後、比表面積測定装置(カンタクローム・インスツルメンツ社製「Autosorb iQ Station 2」)を用いて、窒素ガス吸着法により相対圧0.05~0.28の範囲において7点程度、窒素吸着を測定し、BET法を適用して比表面積を算出することにより求めることができる。
【0029】
(酢化度)
酢酸セルロースは、酢化度が51%以上62%以下であることが好ましく、51%以上58%以下であることがより好ましく、54%以上58%以下であることがさらに好ましい。
【0030】
酢化度を当該範囲にする場合、既知の方法により調整すればよい。原料酢酸セルロースの製造方法における、酢酸セルロースを加水分解する工程の条件(例えば、加水分解温度及び加水分解時間)を変えることにより、任意の酢化度に調製することができる。
【0031】
ここで、酢化度とは、セルロース単位重量当たりの結合酢酸の重量百分率を意味する。酢化度は、ASTM-D-817-91(セルロースアセテート等の試験法)における酢化度の測定及び計算に従う。具体的には、以下のようにして求めることができる。乾燥した酢酸セルロース1.9gを精秤し、アセトンとジメチルスルホキシドとの混合溶媒(容量比4:1)150mlに溶解した後、1N-水酸化ナトリウム水溶液30mlを添加し、25℃で2時間ケン化する。フェノールフタレインを指示薬として添加し、1N-硫酸(濃度ファクター:F)で過剰の水酸化ナトリウムを滴定する。また、前記と同様の方法でブランク試験を行い、下記式に従って酢化度を算出する。
酢化度(%)=[6.5×(B-A)×F]/W
(式中、Aは試料での1N-硫酸の滴定量(ml)、Bはブランク試験での1N-硫酸の滴定量(ml)、Fは1N-硫酸の濃度ファクター、Wは試料の重量を示す)。
【0032】
(カルシウム含量及びマグネシウム含量)
本開示の酢酸セルロースフレークは、カルシウム及びマグネシウムのうち少なくとも1以上を含有してよい。カルシウム又はマグネシウムを含有する場合、そのカルシウム又はマグネシウムは、その製造時に使用される中和剤、安定剤、又は洗浄水に由来する部分が多く、例えば、酢酸セルロースフレーク表面への付着;カルボキシル基又は原料酢酸セルロースの製造時に形成された硫酸エステル部位との静電相互作用により存在している。
【0033】
本開示の酢酸セルロースフレークのカルシウム含量は80ppm以下が好ましい。より色相に優れるためである。また、40ppm以上80ppm以下が好ましく、45ppm以上75ppm以下がより好ましく、45ppm以上70ppm以下がさらに好ましく、60ppm以上70ppm以下が最も好ましい。カルシウム含量が少なすぎると酢酸セルロースフレークの耐熱性が悪化する傾向がある。
【0034】
本開示の酢酸セルロースフレークのマグネシウム含量は5ppm以下が好ましい。より色相に優れるためである。また、4ppm以下がより好ましく、3ppm以下がさらに好ましい。また、1ppm以上が好ましく、2ppm以上がより好ましい。マグネシウム含量が少なすぎると酢酸セルロースフレークの耐熱性が悪化する傾向がある。
【0035】
酢酸セルロースフレークのカルシウム含量及びマグネシウム含量は、それぞれ以下の方法により測定することができる。
【0036】
未乾燥試料3.0gをルツボに計量し、電熱器上で炭化させた後、750~850℃の電気炉で2時間程度灰化させる。約30分放冷した後、0.07%の塩酸溶液25mLを加え、220~230℃で加熱溶解させる。放冷後、溶解液を200mLまで蒸留水でメスアップし、これを検液として標準液と共に原子吸光光度計を用いて吸光度を測定して、検液のカルシウム(Ca)含量又はマグネシウム(Mg)含量を求め、以下の式で換算して、試料のカルシウム(Ca)含量又はマグネシウム(Mg)含量を求めることができる。なお、試料中の水分は、例えばケット水分計(METTLER TOLEDO HB43)を用いて測定することができる。ケット水分計のアルミ受け皿に含水状態の試料約2.0gを乗せ、重量が変化しなくなるまで120℃で加熱することで加熱前後の重量変化から試料中の水分(重量%)が算出できる。
【0037】
【数1】
【0038】
本開示の酢酸セルロースフレークは下記の製造方法により製造できる。また、下記の製造装置を用いて製造することができる。
【0039】
[酢酸セルロースフレークの製造方法]
本開示の第一の酢酸セルロースフレークの製造方法は、キシロース、マンノース及びグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が0.5mol%以上1.0mol%以下、水分含有量が30重量%以上の原料酢酸セルロース中の水分に対し、0.1GHz~33.9GHzの周波数のマイクロ波を照射し、前記原料酢酸セルロースの温度が140℃未満で乾燥する工程を有する。
【0040】
(原料酢酸セルロース)
原料酢酸セルロースは、キシロース、マンノース及びグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が0.5mol%以上1.0mol%以下、水分含有量が30重量%以上である。
【0041】
原料酢酸セルロースは、得られる酢酸セルロースフレークと同様、当該酢酸セルロースを構成するキシロース、マンノース及びグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が0.5mol%以上1.0mol%以下である。
【0042】
原料酢酸セルロースは、水分含有量が30重量%以上であるところ、35重量%以上であってよく、40重量%以上であってよい。また、当該水分含有量は45重量%以下が好ましい。下記の原料酢酸セルロースの製造方法における、酢酸セルロースを沈殿する工程(5)の後、加圧脱水機によって脱水すると、当該水分含有量の範囲になり得、その後、続けて、乾燥工程を施すことが好ましい。
【0043】
ここで、原料酢酸セルロースは、従来公知の製造方法により製造することができる。例えば、次の製造方法が挙げられる。セルロース源(特に木材パルプ)を解砕する工程(1)、前記解砕したセルロース源(特に木材パルプ)と酢酸とを接触させて前処理する工程(2)、前記前処理をした後、前記セルロース源(特に木材パルプ)を無水酢酸と反応させてアセチル化する工程(3)、前記アセチル化により得られた酢酸セルロースを加水分解する工程(4)、及び前記加水分解によりアセチル置換度が調整された酢酸セルロースを沈殿する工程(5)を有する方法である。前記加水分解工程(4)においては、前記加水分解反応系内の酸素濃度を3%以下とすることが好ましい。
【0044】
原料酢酸セルロースのセルロース源として、低品位の木材パルプ等ヘミセルロース成分であるキシロースが含まれるものを使用する。本明細書において、パルプ又はセルロースは、ヘミセルロース等のセルロース以外の異成分を含有するものを意味する。
【0045】
木材パルプとしては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプが挙げられる。例えば、針葉樹パルプとしては、例えば、トウヒ、マツ、ツゲ等から得られる針葉樹パルプが挙げられる。広葉樹パルプとしては、例えば、ユーカリ、アカシア等が挙げられる。これらのパルプは単独で又は二種以上組み合わせてもよく、例えば、針葉樹パルプと広葉樹パルプとを併用してもよい。
【0046】
木材パルプのα-セルロース含有率は、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。α-セルロース含有率が、当該範囲であれば、酢酸セルロースフレークの吸光度法色相をより低くできる。
【0047】
α-セルロース含有率は、以下のようにして求めることができる。重量既知のパルプを25℃で17.5%と9.45%の水酸化ナトリウム水溶液で連続的に抽出し、その抽出液の可溶部分に対して重クロム酸カリウムで酸化し、酸化に要した重クロム酸カリウムの容量からβ,γ-セルロースの重量を決定する。初期のパルプの重量からβ,γ-セルロース重量を引いた値を、パルプの不溶部分の重量、α-セルロースの重量とする(TAPPI T203)。初期のパルプの重量に対する、パルプの不要部分の重量の割合が、α-セルロース含有率(重量%)である。
【0048】
セルロース源(特に木材パルプ)を解砕する工程(1)は、従来公知の方法を採用できる。例えば、従来公知の湿式解砕法と乾式解砕法を用いて木材パルプを解砕することができる。
【0049】
前記解砕したセルロース源(特に木材パルプ)と酢酸とを接触させて前処理する工程(2)は、従来公知の方法を採用できる。前処理工程(2)において、前処理反応系内の酸素濃度を3%以下とすることが好ましく、1%以下とすることがより好ましい。より色相に優れた酢酸セルロースフレークが得られるためである。
【0050】
酸素濃度は、前処理反応系内に不活性ガスを導入することにより調整できる。不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、及びネオンガス等が挙げられる。酸素濃度は、酸素濃度計を用いて測定することができる。
【0051】
前記セルロース源(特に木材パルプ)を無水酢酸と反応させてアセチル化する工程(3)は、従来公知の方法を採用できる。アセチル化は、例えば、溶媒として酢酸、及び触媒として硫酸の存在下、木材パルプを無水酢酸と反応させることにより進行する。アセチル化する工程(3)において、アセチル化反応系内の酸素濃度を3%以下とすることが好ましく、1%以下とすることがより好ましい。酸素濃度の調整は、前処理工程と同様、反応系内に不活性ガスを導入することにより調整できる。また、アセチル化工程(3)は、減圧条件下又は常圧条件下にて行うことができる。
【0052】
加水分解する工程(4)は、アセチル化後の酢酸セルロースの置換度を所望の値に調整するため加水分解を行う。アセチル置換度の調整は、アセチル化反応停止のために水(水蒸気を含む);希酢酸;又は、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウム若しくは亜鉛等の炭酸塩、酢酸塩、水酸化物若しくは酸化物;等からなる中和剤を添加することにより行うことができる。
【0053】
加水分解工程(4)においては、加水分解反応系内の酸素濃度を3%以下とすることが好ましく、1%以下とすることがより好ましい。これにより、低品位のパルプを用いた場合でも、特に色相に優れる酢酸セルロースフレークを得ることができる。ヘミセルロース成分が分解されにくく、ろ過性に優れた酢酸セルロースフレークを得ることができるため、着色物質が少なく、色相に優れた酢酸セルロースフレークを得ることができる。また、余分な有機溶媒を使用する必要がなく、生産性を阻害しない点においても優れる。なお、酸素濃度の調整は、前処理工程と同様、反応系内に不活性ガスを導入することにより調整できる。
【0054】
前記加水分解によりアセチル置換度が調整された酢酸セルロースを沈殿する工程(5)においては、酢酸セルロースを含む混合物と水又は希酢酸等の沈殿剤とを混合し、生成した酢酸セルロース(沈殿物)を分離して沈殿物を得、水洗により遊離の金属成分や硫酸成分等を除去することができる。ここで、酢酸セルロースの沈殿物を得る際に用いる沈殿剤としては、希酢酸が好ましい。
【0055】
特に、前記加水分解化工程(4)の後(完全中和の後)、酢酸セルロースの熱安定性を高めるため、水洗の際に、その水に安定剤として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物、特に水酸化カルシウム等のカルシウム化合物を添加することが好ましい。
【0056】
(マイクロ波)
原料酢酸セルロース中の水分に対して照射するマイクロ波の周波数は、0.1GHz~33.9GHzであるところ、17GHzが最も水のマイクロ波の吸収性が良いため好適である。しかし、工業的に使える周波数を考慮すると、900MHz~2.5GHzの周波数で使用することが好ましい。特に、ISMバンドとして工業的に使用が許可されている波長を使用することが好ましい。例えば、周波数2.40GHz~2.50GHz、及び910MHz~920MHzのマイクロ波である。
【0057】
マイクロ波を原料酢酸セルロース中の水分に照射すると、マイクロ波に応じて原料酢酸セルロース中の水が優先的に振動し、その振動による水の温度上昇に伴って、酢酸セルロースフレークの乾燥が進む。
【0058】
原料酢酸セルロース中の水分に対するマイクロ波の照射時間としては、原料酢酸セルロースの温度が140℃以上にならない範囲であれば、特に限定されない。原料酢酸セルロース中の水分に照射されるマイクロ波のエネルギーを大きくすることにより、早く目的の水分含有量に調整して(言い換えれば、乾燥時間を短くして)、照射時間を短くすることが、酢酸セルロースフレークの製造効率に優れるため、好ましい。
【0059】
(温度)
原料酢酸セルロースの温度は、140℃未満とするところ、得られる酢酸セルロースフレークの熱劣化を抑制し、色相により優れたものとするため、120℃以下が好ましく、110℃以下がさらに好ましい。70℃以上であってよい。下記のように熱風乾燥を組み合わせる場合、原料酢酸セルロースの温度は100℃以下が好ましい。
【0060】
原料酢酸セルロースの温度は、例えば、その原料酢酸セルロースの上等に設置するファイバー温度計を用いて測定することができる。
【0061】
(気圧)
原料酢酸セルロースの乾燥中、系内の気圧は特に限定されないが、101.3kPa(常圧)以下が好ましい。乾燥装置によっては、系内の気圧が低すぎると遊離電圧が低下し、乾燥室内にプラズマが発生しやすくなるため、これを避ける観点からは、20kPa以上が好ましい。
【0062】
従来の熱風乾燥によって、例えば、水分含有量30重量%の原料酢酸セルロースを水分含有量2重量%未満まで乾燥すると、乾燥初期は原料酢酸セルロースの水分含有量が多いため、高温になりにくく、糖の分解反応による着色物質の生成が起きにくいが、乾燥後期(減率乾燥期)は、原料酢酸セルロースの水分含有量が少なく、高温(140℃以上)になり、糖の分解反応が促進され、着色物質が生成し、色相が悪化する。
【0063】
一方、本開示のマイクロ波を用いる酢酸セルロースフレークの製造方法によれば、原料酢酸セルロースの内部に瞬間的にマイクロ波が侵入し熱に変換されるため、内部から均一に加熱することができ、また、比誘電率及び誘電損率の大きい水が選択的に加熱される。そのため、固液界面(酢酸セルロースフレークと水の界面)の副反応を抑制して、色相悪化の原因となる着色物質の生成を抑制でき、低品位のパルプを用いた場合であっても、色相に優れた酢酸セルロースフレークが得られる。そのため、着色物質を除去するための精製工程の削減にも繋がる。
【0064】
本開示のマイクロ波を用いる第一の酢酸セルロースフレークの製造方法によれば、下記の第二の酢酸セルロースフレークの製造方法で用いる真空乾燥と同程度に優れた色相を有する酢酸セルロースフレークが得られる上、乾燥時間は従来の熱風乾燥よりも大きく短縮できる。そのため、乾燥工程に必要な時間を大きく短縮でき、精製工程の削減もできる。よって、本開示のマイクロ波を用いる第一の酢酸セルロースフレークの製造方法によれば、非常に効率的に酢酸セルロースを製造することができる。
【0065】
次に、第二の酢酸セルロースフレークの製造方法について述べる。本開示の第二の酢酸セルロースフレークの製造方法は、キシロース、マンノース及びグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が0.5mol%以上1.0mol%以下、水分含有量が30重量%以上の原料酢酸セルロースを気圧20kPa以下、温度70℃未満で乾燥する工程を有する。
【0066】
(温度)
第二の酢酸セルロースフレークの製造方法における、原料酢酸セルロースの温度は、70℃未満とするところ、60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましい。原料酢酸セルロースの温度の下限はないが、気圧に依存する。
【0067】
(気圧)
原料酢酸セルロースの乾燥中、系内の気圧は101.3kPa(常圧)以下が好ましく、20kPa以下がさらに好ましい。また、系内の気圧は0kPa以上であってよい。
【0068】
本開示の第二の酢酸セルロースフレークの製造方法によれば、優れた色相を有する酢酸セルロースフレークが得られる。
【0069】
本開示の第一及び第二の酢酸セルロースフレークの製造方法は、その乾燥工程において、本開示の目的の範囲内で、従来の熱風乾燥を組み合わせることもできる。
【0070】
[乾燥装置]
本開示の乾燥装置は、原料酢酸セルロースを乾燥して前記酢酸セルロースフレークを得るための乾燥装置であって、マイクロ波発振手段から生じた0.1GHz~33.9GHzの周波数のマイクロ波を導入する開口部と、前記開口部においてマイクロ波を内部に拡散するマイクロ波拡散手段とを有する乾燥室を備え、前記乾燥室内の前記原料酢酸セルロース中の水分に前記マイクロ波を照射するものである。
【0071】
本開示の乾燥装置の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は、一実施例に係る乾燥装置を説明する概念図である。乾燥装置1は、4つのマイクロ波発振手段2と、2つの導波管3と、乾燥室4とを備える。マイクロ波発振手段2及び乾燥室4は、導波管3を介して接続されている。乾燥室4の開口部5に導波管3が接続されている。また、開口部5には、マイクロ波拡散手段6として回転羽が設けられている。1つの乾燥室4に対する、マイクロ波発振手段2及び導波管3の数は、それぞれ4つ及び2つに限られない。いずれも1つ又は2つ以上であってよい。
【0072】
マイクロ波発振手段2によって発生した0.1GHz~33.9GHzの周波数のマイクロ波が、導波管3を経由して、乾燥室4の開口部5に届き、開口部5に設けられたマイクロ波拡散手段6によって、乾燥室4の内部で拡散される。そして、乾燥室4の内部で反射又は拡散したマイクロ波が乾燥室4の内部に置かれた原料酢酸セルロース7中の水分に照射される。なお、原料酢酸セルロースは、乾燥室4の内部に設置された金網11に重ねた耐火レンガ12の上に置くことができる。
【0073】
導波管3にはアイソレーター(図示しない)が設けられる。アイソレーターは、マイクロ波発振手段2から発生し、導波管3又は乾燥室4から反射したマイクロ波が、マイクロ波発振手段2に戻り、マイクロ波発振手段2からのマイクロ波の発生が不安的になる又は停止すること、マイクロ波発振手段2を破壊すること等を避けるために設けられる。
【0074】
乾燥室4には、乾燥室4の内部に、温度計挿入口8、乾燥空気等の気体を送り込むガス仕込み口9、及び乾燥室4の内部を減圧する真空ポンプ接続口10が設けられる。原料酢酸セルロース7の温度変化は、乾燥室4の内部の温度計挿入口8から温度計を乾燥室4の内部に挿入して測定する。
【0075】
乾燥装置1には、従来の熱風乾燥装置が接続されてもよい。このとき熱風乾燥装置によって、原料酢酸セルロースを加熱する温度は、室温以上で原料酢酸セルロースにおける糖の分解反応が促進されない温度以下が好ましく、具体的には、20℃以上120℃が好ましく、100℃以下であってよい。
【実施例
【0076】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。また、下記の実施例及び比較例に記載の各物性は以下の方法で評価した。
【0077】
<酢化度>
酢化度(%)は、前記のASTM-D-817-91(セルロースアセテート等の試験法)における酢化度の測定及び計算に従って求めた。
【0078】
<キシロースの割合>
酢酸セルロースサンプルの加水分解過程、水酸化ナトリウムによる中和過程、フィルターによるろ過過程を経た後、HPLC(LC-20Aシステム)を用いて、得られたデータからキシロースのみならずその他の構成糖の割合を算出し、キシロースのモル含量の割合(mol%)を算出した。
【0079】
HPLC測定条件は、以下のとおりである。
カラム:TSK-gel Sugar AXG 4.6mmI.D.×15cm(東ソー株式会社)
カラム温度:70℃
移動相:0.5mol/L ホウ酸カリウム緩衝液、PH8.7
移動相流速:0.4mL/min
ポストカラム標識:反応試薬:1w/v%アルギニン・3w/v%ホウ酸
反応試薬流速:0.5mL/min
反応温度:150℃
検出波長:Ex.320nm Em.430nm
【0080】
<吸光度法色相>
(1)酢酸セルロースの含水率測定
赤外線水分計(METTLER TOLEDO HB43)を用いて、酢酸セルロースの含水率を測定し、記録用紙に記録した。
【0081】
(2)吸光度の測定
まずサンプル調製を行った。1)三角フラスコにDMSO95.00gを計量した。2)三角フラスコにスターラー回転子を入れ、セロファン、シリコン栓をして攪拌した。3)酢酸セルロースサンプル5.00gを薬包紙等に計量し攪拌している三角フラスコ内に添加した。4)セロファン、シリコン栓をしてスターラーで1hr攪拌した。5)回転振盪機(高速)で2hr振盪した。6)回転振盪機から取り外した後30分間静置し脱泡し、サンプルを調製した。
【0082】
次に、吸光度の測定を行った。サンプル調製後直ちに、つまり回転振盪機から取り外した後30分間静置し脱泡した後直ちに、島津製作所社製UV-1700にて波長λ=430nm及び740nmの吸光度を測定した。具体的には、1)測定する30分以上前に装置の電源を入れ、装置が安定化したことを確認した。2)10cmガラスセルにレファレンス、ブランク液としてDMSOを入れベースライン補正を行った。3)三角フラスコ内のサンプルを気泡が発生しないように10cmガラスセルに移した。4)手前の測定側セルをサンプルが注入されたガラスセルに入れ替えた。5)スタートボタンを押して測定を開始した。6)表示された測定結果を記録用紙に記録した。
【0083】
(3)吸光度法色相
以下の計算式で得られた数値を酢酸セルロースのその溶媒における「吸光度法色相」値とした。
吸光度法色相(cm-1)=吸光度(A-B)/セル厚(cm)/酢酸セルロース濃度(重量%)×100
吸光度:分光光度計 島津製作所社製UV-1700
A:430nmの吸光度(液の黄色味を測定)
B:740nmの吸光度(液の濁りを測定:ベースライン)
酢酸セルロース濃度(重量%):絶乾酢酸セルロース重量(g)/酢酸セルロース溶液全体重量(g)×100
絶乾酢酸セルロース重量(g):酢酸セルロースの重量(g)×(1-含水率(%)/100)
含水率(%):前記赤外線水分計で測定した値
【0084】
<水分含有量>
試料中の水分は、ケット水分計(METTLER TOLEDO HB43)を用いて測定した。ケット水分計のアルミ受け皿に含水状態の試料約2.0gを乗せ、重量が変化しなくなるまで120℃で加熱することで加熱前後の重量変化から試料中の水分(重量%)を算出した。
【0085】
<比表面積>
予め試料をMasterPrep脱気装置(カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社)を用いて、温度100℃下にて約1時間の間、加熱真空排気した後、比表面積測定装置(カンタクローム・インスツルメンツ社製「Autosorb iQ Station 2」)を用いて、窒素ガス吸着法により相対圧0.05~0.28の範囲においてBET式(1)を求めた。
【0086】
【数2】

ここで、Pは吸着平衡における吸着質の気体の圧力、Pは吸着平衡における吸着質の飽和蒸気圧、Wは吸着平衡圧Pにおける吸着量、Wmは単分子吸着量、CはBET定数である。x軸を相対圧力P/P、y軸を1/[W・{(P/P)-1}]としてプロット(BETプロット)すると線形となる。このプロットは7点行ったものであり、その直線の勾配と切片の和の逆数から単分子吸着量Wmを得た。
【0087】
次いで、比表面積Ssは下記式により求まる。
Ss=(Wm・N・Acs・M)/w
ここで、Nはアボガドロ数、Mは分子量、Acsは吸着断面積、wはサンプル重量である。窒素ガス分子の吸着断面積Acsを0.162nm(16.2Å)として、固体試料1gあたりの表面積である比表面積を求めた。
【0088】
(実施例1)
水分含有量32.3重量%の原料酢酸セルロースを調製した。
【0089】
図1に示す乾燥装置1を用い、常圧(101.3kPa)下、乾燥室4内に、原料酢酸セルロース約8gを置き、マイクロ波発振手段2から2.45GHzのマイクロ波を発振出力1600Wにて発生させて原料酢酸セルロース中の水分に照射して、乾燥した。照射時間は8分間であり、原料酢酸セルロースの温度は120℃未満を保持した。得られた酢酸セルロースフレークについて、各物性を測定した結果は表1に示す。
【0090】
(実施例2)
発振出力を1200Wに代え、マイクロ波の照射時間を10分間とした以外は、実施例1と同様にして、酢酸セルロースフレークを得た。得られた酢酸セルロースフレークについて、各物性を測定した結果は表1に示す。
【0091】
(実施例3)
発振出力を3200Wに代え、マイクロ波の照射時間を4.5分間とした以外は、実施例1と同様にして、酢酸セルロースフレークを得た。得られた酢酸セルロースフレークについて、各物性を測定した結果は表1に示す。
【0092】
(実施例4)
酢酸セルロースフレークを乾燥室4内に置き、マイクロ波を発生させず、ガス仕込み口9から乾燥室4内に乾燥空気を19L/分の速度で送りこみ、同時に、真空ポンプ接続口10から乾燥室4内の空気を引いて、真空(20kPaA)にして乾燥し、乾燥時間を14時間とし、原料酢酸セルロースの温度は65℃を保持した以外は、実施例1と同様にして、酢酸セルロースフレークを得た。得られた酢酸セルロースフレークについて、各物性を測定した結果は表1に示す。
【0093】
(比較例1)
マイクロ波を発生させず、ガス仕込み口9から乾燥室4内に乾燥熱風を27L/分の速度で30分間送り込んで140℃で乾燥した以外は、実施例1と同様にして、酢酸セルロースフレークを得た。得られた酢酸セルロースフレークについて、各物性を測定した結果は表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
実施例の酢酸セルロースフレークは、キシロース、マンノース及びグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が0.5mol%以上1.0mol%以下の酢酸セルロースからなるにもかかわらず、吸光度法色相が0.47cm-1以下の優れた色相を有することわかる。
図1