(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】エアゾール製品
(51)【国際特許分類】
C09K 3/30 20060101AFI20231017BHJP
A61K 8/33 20060101ALI20231017BHJP
A61K 8/69 20060101ALI20231017BHJP
B05B 9/04 20060101ALI20231017BHJP
B65D 83/58 20060101ALI20231017BHJP
B65D 83/14 20060101ALN20231017BHJP
【FI】
C09K3/30 T
A61K8/33
A61K8/69
B05B9/04
B65D83/58
C09K3/30 J
C09K3/30 R
B65D83/14 100
(21)【出願番号】P 2019114011
(22)【出願日】2019-06-19
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 康斗
(72)【発明者】
【氏名】樫根 秀
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-010757(JP,A)
【文献】特開2014-009022(JP,A)
【文献】特開2008-168193(JP,A)
【文献】特開2015-120140(JP,A)
【文献】特開2016-033121(JP,A)
【文献】国際公開第2018/075864(WO,A1)
【文献】特開2012-162497(JP,A)
【文献】特開2016-113620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性原液と、液化ガスとからなるエアゾール組成物が充填された容器本体と、
前記容器本体に取り付けられるエアゾールバルブと、を有し、
前記水性原液の含有量は、前記エアゾール組成物中、
15~35質量%であり、
前記液化ガスの含有量は、前記エアゾール組成物中、
65~85質量%であり、
前記液化ガスは、ハイドロフルオロオレフィンと、ジメチルエーテルとを含み、
前記ハイドロフルオロオレフィンは、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エンを含み、
前記トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エンの含有量は、前記エアゾール組成物中、25~55質量%であり、
前記ジメチルエーテルの含有量は、前記エアゾール組成物中
25~52質量%であり、
前記エアゾールバルブは、
前記エアゾール組成物の気相部分
をハウジング内に導入する気相導入孔と、
前記エアゾール組成物の液相部分を前記ハウジング内に導入する液相導入孔とを備えており、噴射物が凍結する、エアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール製品に関する。より詳細には、本発明は、火気に対する安全性が高く、噴射対象物上での舞い散りが少なく、噴射物が凍結するエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火気に対する安全性を高めたエアゾール製品が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明は、液化ガスとしてハイドロフルオロオレフィンとLPGとを含む。しかしながら、特許文献1に記載のエアゾール製品は、噴射の勢いが強く、噴射対象物に対して噴きかけると跳ね返りを生じやすい。そのため、噴射されたエアゾール組成物は、舞い散りやすく、噴射対象物以外に付着する場合がある。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、火気に対する安全性が高く、噴射対象物上での舞い散りが少なく、噴射物が凍結するエアゾール製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)水性原液と、液化ガスとからなるエアゾール組成物が充填された容器本体と、前記容器本体に取り付けられるエアゾールバルブと、を有し、前記水性原液の含有量は、前記エアゾール組成物中、10~40質量%であり、前記液化ガスの含有量は、前記エアゾール組成物中、60~90質量%であり、前記液化ガスは、ハイドロフルオロオレフィンと、ジメチルエーテルとを含み、前記ジメチルエーテルの含有量は、前記エアゾール組成物中15~55質量%であり、前記エアゾールバルブは、前記エアゾール組成物の気相部分を前記ハウジング内に導入する気相導入孔と、前記エアゾール組成物の液相部分を前記ハウジング内に導入する液相導入孔とを備えており、噴射物が凍結する、エアゾール製品。
【0008】
このような構成によれば、エアゾール製品は、エアゾール組成物の気相部分をハウジング内に導入する気相導入孔と、エアゾール組成物の液相部分をハウジング内に導入する液相導入孔とが形成されている。このような気相導入孔および液相導入孔によれば、エアゾール組成物は、噴射時に、ハウジング内において気相部分と液相部分とが混合されてから噴射される。これにより、エアゾール製品は、噴射時のエアゾール組成物の勢いを適切に弱めることができる。ところで、一般的なエアゾール組成物は、噴射の勢いが弱まると、噴射物が凍結しにくくなる。しかしながら、本発明のエアゾール製品は、液化ガスとして、ハイドロフルオロオレフィンとジメチルエーテルとを所定量含む。これにより、エアゾール製品は、噴射対象物上でのエアゾール組成物の跳ね返りを抑えて付着しやすくなると共に、噴射物が凍結し得る。また、エアゾール組成物は、可燃性液化ガスであるジメチルエーテルを含有しているにもかかわらず、水性原液を所定量含有し、ハウジング内で液相部分と気相部分を混合して噴射するため、火気に対して安全性が高い。
【0009】
(2)前記ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、前記エアゾール組成物中20~70質量%である、(1)記載のエアゾール製品。
【0010】
このような構成によれば、エアゾール組成物は、火気に対する安全性がより高い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、火気に対する安全性が高く、噴射対象物上での舞い散りが少なく、噴射物が凍結するエアゾール製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[エアゾール製品]
本発明の一実施形態のエアゾール製品は、水性原液と、液化ガスとからなるエアゾール組成物が充填された容器本体と、容器本体に取り付けられるエアゾールバルブとを有する。水性原液の含有量は、エアゾール組成物中、10~40質量%である。液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、60~90質量%である。液化ガスは、ハイドロフルオロオレフィンと、ジメチルエーテルとを含む。エアゾールバルブは、エアゾール組成物の気相部分をハウジング内に導入する気相導入孔と、エアゾール組成物の液相部分をハウジング内に導入する液相導入孔とが形成されている。エアゾール製品は、噴射物が凍結する。以下、それぞれについて説明する。なお、本実施形態において、エアゾール製品が備えるその他の成分や構成は、例示である。そのため、これらその他の成分や構成は、エアゾール製品の技術分野において通常使用され得る成分および構成が採用されてもよい。
【0013】
<エアゾール組成物>
エアゾール組成物は、水性原液と、液化ガスとからなり、容器本体に充填されている。
【0014】
(水性原液)
水性原液は、液化ガスにより冷却されて、噴射対象物上で凍結物を形成するために配合される。水性原液は特に限定されない。一例を挙げると、本実施形態の水性原液は、水および界面活性剤を含有する。
【0015】
・水
水は、溶媒として用いられる。水が含まれることにより、エアゾール組成物は、噴射されると氷状の噴射物を形成する。
【0016】
水は特に限定されない。一例を挙げると、水は、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水等である。
【0017】
水の含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、水は、水性原液中、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。また、水は、水性原液中、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、氷状の噴射物を形成しやすい。また、エアゾール組成物は、火気に対する安全性が高い。
【0018】
・界面活性剤
界面活性剤は、水性原液を液化ガスで効率よく冷却して凍結物を形成するために好適に配合される。
【0019】
界面活性剤は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤等である。界面活性剤は、併用されてもよい。
【0020】
これらの中でも、界面活性剤は、水性原液と液化ガスとを均一に乳化しやすい点から、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルであることが好ましい。
【0021】
界面活性剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤の含有量は、水性原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。また、界面活性剤の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、効率よく冷却して凍結物を形成しやすい。
【0022】
・任意成分
水性原液は、上記水、界面活性剤のほかに、適宜、パウダー、有効成分、アルコール、単糖類、水溶性高分子、油剤等の任意成分を含んでもよい。
【0023】
パウダーは、サラサラ感を付与するなど、使用感を向上させたり、乳化助剤として使用する等のために好適に配合される。パウダーは、エアゾール組成物の液相部分に溶解せず、微細な固体の状態で、エアゾール組成物の液相部分に分散される。
【0024】
パウダーは特に限定されない。一例を挙げると、パウダーは、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、ゼオライト、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム等である。
【0025】
パウダーが配合される場合、パウダーの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、パウダーの含有量は、水性原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、パウダーの含有量は、水性原液中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。パウダーの含有量が上記範囲内であることにより、パウダーを配合することによる効果が得られやすく、かつ、エアゾール組成物は、噴射される際に、噴射通路において詰まりを生じにくい。
【0026】
有効成分は、エアゾール製品の用途や目的などに応じて適宜選択することができる。一例を挙げると、有効成分は、天然香料、合成香料などの各種香料;ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸アルキルアミド-アクリル酸ヒドロキシアルキル-メタクリル酸アルキルアミノアルキル共重合体などの両性型樹脂、およびたとえばアクリル酸アルキル共重合体エマルジョン、アクリル酸アルキル-スチレン共重合体エマルジョン、ビニルピロリドン-スチレン共重合体エマルジョン、アクリル酸-アクリル酸ヒドロキシエステル共重合体エマルジョンなどのエマルジョン系樹脂などのスタイリング剤;l-メントール、カンフル、ハッカ油などの清涼剤;レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸ナトリウム、dl-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、ジベンゾイルチアミン、リボフラビンおよびこれらの混合物などのビタミン類;アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどの酸化防止剤;グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、トリプトファン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンなどのアミノ酸;コラーゲン、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、dl-ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、カゼイン、レシチン、尿素などの保湿剤;パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、パラクロルメタクレゾールなどの殺菌消毒剤;ローヤルゼリーエキス、シャクヤクエキス、ヘチマエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、セージエキス、茶エキス、海藻エキス、プラセンタエキス、シルク抽出液などの抽出液;酸化亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、タンニン酸、クエン酸、乳酸などの収斂剤;アラントイン、グリシルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、アズレンなどの抗炎症剤;ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、緑茶エキスなどの消臭剤;ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゾン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤;酸化亜鉛、酸化チタン、オクチルトリメトキシシラン被覆酸化チタンなどの紫外線散乱剤;アルブチン、コウジ酸などの美白剤;N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)、ジ-n-ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、エチル-ブチルアセチルアミノプロピオネート、イカリジン(ピカリジン)、p-メンタン-3,8-ジオール、3-[アセチル(ブチル)アミノ]プロピオン酸エチル、2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン-1-カルボン酸1-メチルプロピルなどの害虫忌避剤;クロロヒドロキシアルミニウム、イソプロピルメチルフェノールなどの制汗剤;サリチル酸メチル、インドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェンなどの消炎鎮痛剤等である。
【0027】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分の含有量は、水性原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、水性原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が上記範囲内であることにより、有効成分を配合することによる効果が得られやすく、かつ、エアゾール組成物は、有効成分によって発泡性が低下しにくい。
【0028】
アルコールは、水に溶解しにくい有効成分の溶媒として好適に配合される。また、アルコールは、凍結物の状態を調整する等の目的で好適に配合される。
【0029】
アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、アルコールは、エタノール、イソプロパノール等の炭素数が2~3個の1価アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリンなどの多価アルコールである。
【0030】
アルコールが配合される場合、アルコールの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルコールの含有量は、水性原液中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、アルコールの含有量は、水性原液中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。アルコールの含有量が上記範囲内であることにより、アルコールを配合することによる効果が得られやすく、かつ、エアゾール組成物は、アルコールによって凍結物が低下しにくい。
【0031】
水溶性高分子は、水性原液に液化ガスの気化熱をより効率よく伝えて噴射物を凍結しやすくする等の目的で好適に配合される。
【0032】
水溶性高分子は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子は、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド(ポリクオタニウム4)、塩化ジメチルジアクリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(ポリオクタニウム7)、塩化-O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム10)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム22)、塩化-O-[2-ヒドロキシ-3-(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ポリオクタニウム24)、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体(ポリクオタニウム39)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体液(ポリクオタニウム51)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩・N,N-ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール(ポリクオタニウム52)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体(ポリクオタニウム61)、メタクリロイルオキシエチレンホスホリルコリン、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸ナトリウム(ポリクオタニウム65)などのカチオン性ポリマー;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系高分子;キサンタンガム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガムなどのガム質;デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー等である。
【0033】
水溶性高分子が配合される場合、水溶性高分子の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子の含有量は、水性原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、水溶性高分子の含有量は、水性原液中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。水溶性高分子の含有量が上記範囲内であることにより、水溶性高分子を配合することによる効果が得られやすく、かつ、水性原液の粘度が高くなり過ぎず、エアゾール組成物の噴射物が凍結しやすい。
【0034】
油剤は、使用感を良くしたり、櫛通りをよくする等の目的で好適に配合される。
【0035】
油剤は特に限定されない。一例を挙げると、油剤は、ジメチコン、メチルポリシロキサン、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル;流動パラフィン、イソパラフィンなどの炭化水素油;ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、ジネオペンタン酸ジエチルペンタンジオール、ジ-2-エチルへキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジラウリン酸ジエチレングリコール、ジステアリン酸ジエチレングリコール、ジイソステアリン酸ジエチレングリコール、ジオレイン酸ジエチレングリコール、ジラウリン酸トリエチレングリコール、ジステアリン酸トリエチレングリコール、ジイソステアリン酸トリエチレングリコール、ジオレイン酸トリエチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、トリ2-エチルへキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロシキシステアリン酸エチルヘキシルなどのエステル油;オリーブ油、ツバキ油、トウモロコシ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヤシ油などの油脂;イソステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸;オレイルアルコール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコール等である。
【0036】
油剤が配合される場合、油剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、油剤の含有量は、水性原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、油剤の含有量は、水性原液中、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。油剤の含有量が上記範囲内であることにより、油剤を配合することによる効果が得られやすい。また、エアゾール組成物は、乾燥性が低下しにくく、べたつきを生じにくい。
【0037】
水性原液の調製方法は特に限定されない。水性原液は、従来公知の方法により調製することができる。たとえば、水性原液は、上記界面活性剤、任意成分を水や温水に添加することにより調製され得る。
【0038】
(液化ガス)
液化ガスは、エアゾール容器内では蒸気圧を有する液体であり、外部に噴射されると気化して水性原液を冷却して噴射対象物上で噴射物を凍結させるために配合される。液化ガスは、ハイドロフルオロオレフィンとジメチルエーテルとを含む。
【0039】
ハイドロフルオロオレフィンは特に限定されない。一例を挙げると、ハイドロフルオロオレフィンは、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン、トランス-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン等である。これらの中でも、ハイドロフルオロオレフィンは、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(HFO-1234Ze)を含むことが好ましい。
【0040】
ハイドロフルオロオレフィンの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、エアゾール組成物中、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。また、ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、エアゾール組成物中、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましい。ハイドロフルオロオレオフィンの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、火気に対する安全性がより高い。
【0041】
ジメチルエーテル(DME)の含有量は、エアゾール組成物中、15質量%以上であればよく、18質量%以上であることが好ましい。また、ジメチルエーテルの含有量は、エアゾール組成物中、55質量%以下であればよく、52質量%以下であることが好ましい。ジメチルエーテルの含有量が15質量%未満である場合、エアゾール製品は、噴射したエアゾール組成物が噴射対象物に付着しにくくなる。一方、ジメチルエーテルの含有量が55質量%を超える場合、エアゾール製品は、分離しやすく、安定して凍結した噴射物を形成しにくくなる。
【0042】
液化ガスは、上記ハイドロフルオロオレフィンおよびジメチルエーテルに加え、他の液化ガスが含まれてもよい。他の液化ガスは特に限定されない。一例を挙げると、他の液化ガスは、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンおよびこれらの混合物からなる液化石油ガス等である。液化ガスは、併用されてもよい。
【0043】
液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、60質量%以上であればよく、65質量%以上であることが好ましい。また、液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、90質量%以下であればよく、85質量%以下であることが好ましい。液化ガスの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、火気に対する安全性がより高い。
【0044】
エアゾール組成物全体の説明に戻り、エアゾール組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール組成物は、水性原液を容器本体に充填し、容器本体にエアゾールバルブを取り付け、その後、液化ガスを充填することにより製造し得る。
【0045】
次に、本実施形態のエアゾール製品について説明する。本実施形態のエアゾール製品は、上記したエアゾール組成物が充填される容器本体と、容器本体に取り付けられるエアゾールバルブと、エアゾールバルブに取り付けられる噴射部材とを主に備える。
【0046】
<容器本体>
容器本体は、エアゾール組成物が充填される耐圧容器であり、有底筒状容器である。容器本体の開口部には、エアゾールバルブが装着される。
【0047】
容器本体の材質は特に限定されない。一例を挙げると、容器本体の材質は、アルミニウム、ブリキ等の金属、各種合成樹脂、耐圧ガラス等である。
【0048】
<エアゾールバルブ>
エアゾールバルブは、容器本体の開口を閉止して密封するための部材である。また、エアゾールバルブは、ハウジングと、容器本体の内外を連通するステム孔が形成されたステムと、ステム孔の周囲に取り付けられ、ステム孔を閉止するためのステムラバーとを主に備える。
【0049】
ハウジングは、略筒状であり、ステムとスプリングを収容する。ステムは、略円筒状の部位であり、噴射時にハウジング内に取り込まれたエアゾール組成物が通過するステム内通路が形成されている。ステム内通路の下端近傍には、ハウジング内の空間とステム内通路とを連通するステム孔が形成されている。ステムの上端には、エアゾール組成物を噴射するための噴射部材が取り付けられる。ステムラバーは、ステム孔の周囲に取り付けられ、ハウジングの内部空間と外部とを適宜遮断するための部材である。ステムラバーは、円盤状の部材であり、非噴射時において、内周面をステムのステム孔が形成された外周面と密着させて、ステム孔を閉止する。
【0050】
本実施形態のエアゾール製品は、ハウジングの側面に、気相導入孔が設けられており、ハウジングの底面に、液相導入孔が設けられている。
【0051】
気相導入孔は、ハウジングの側面に形成された横孔(貫通孔)であり、容器本体内のエアゾール組成物の気相部分と、ハウジング内部とを連通する。エアゾール製品は、噴射時にハウジング内と外部とが連通すると、外部との圧力差に従って、エアゾール組成物の気相部分が気相導入孔を介してハウジング内に導入される。
【0052】
液相導入孔は、ハウジングの底面に形成された縦孔(貫通孔)であり、容器本体内のエアゾール組成物の液相部分と、ハウジング内部とを連通する。エアゾール製品は、噴射時にハウジング内と外部とが連通すると、外部との圧力差に従って、エアゾール組成物の液相部分が液相導入孔を介してハウジング内に導入される。
【0053】
エアゾール製品は、噴射時に気相導入孔を介してハウジング内に導入されたエアゾール組成物の気相部分と、液相導入孔を介してハウジング内に導入されたエアゾール組成物の液相部分とが、ハウジング内において混合される。これにより、エアゾール組成物は、気相導入孔が設けられていない場合と比較して、噴射の勢いが弱められる。その結果、噴射されたエアゾール組成物の勢いを弱め、噴射対象物上での跳ね返りを抑える。
【0054】
一方、エアゾール製品は、ハウジング内においてエアゾール組成物の気相部分と液相部分とを混合することにより、噴射物中に占める液体の液化ガスの割合を低下させる。ここで、一般的には、エアゾール組成物は、気相導入孔が設けられると、気相導入孔が設けられていない場合と比較して、噴射物は凍結しにくくなる。しかしながら、本実施形態のエアゾール組成物は、ハイドロフルオロオレフィンとジメチルエーテルを所定量含む。これにより、気相導入孔が設けられている場合であっても、エアゾール組成物は、噴射物が凍結し得る。
【0055】
ハウジング内においてエアゾール組成物の気相部分と液相部分とを適切に混合するために、気相導入孔の寸法(断面積)は、0.03mm2以上であることが好ましく、0.07mm2以上であることがより好ましい。また、気相導入孔の寸法は、0.8mm2以下であることが好ましく、0.6mm2以下であることがより好ましい。また、液相導入孔(断面積)の寸法は、0.2mm2以上であることが好ましく、0.4mm2以上であることがより好ましい。また、液相導入孔の寸法は、3.0mm2以下であることが好ましく、1.8mm2以下であることがより好ましい。さらに、液相導入孔に対する気相導入孔の断面積の比率は、0.05以上であることが好ましく、0.07以上であることがより好ましい。また、液相導入孔に対する気相導入孔の断面積の比率は、0.6以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましい。
【0056】
また、ハウジング内においてエアゾール組成物の気相部分と液相部分とをより適切に混合するために、ステム孔の寸法(断面積)は、0.1mm2以上であることが好ましく、0.15mm2以上であることがより好ましい。また、ステム孔の寸法は、0.8mm2以下であることが好ましく、0.5mm2以下であることがより好ましい。
【0057】
さらに、ハウジング内においてエアゾール組成物の気相部分と液相部分とをより適切に混合するために、容器本体内の圧力(25℃)は、0.3MPa以上であることが好ましく、0.4MPa以上であることがより好ましい。また、容器本体内の圧力は、0.6MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以下であることがより好ましい。
【0058】
(噴射部材)
噴射部材は、エアゾール組成物を噴射するための部材であり、ステムの上端に取り付けられる。噴射部材は、ノズル部と、使用者が指等により操作する操作部とを主に備える。ノズル部は、略円筒状の部位であり、エアゾール組成物が通過する噴射通路が形成されている。噴射通路の先端には開口(噴射孔)が形成されている。噴射孔からは、エアゾール組成物が噴射される。噴射孔の数および形状は特に限定されない。噴射孔は、複数であってもよい。また、噴射孔の形状は、略円形状、略角形状等であってもよい。
【0059】
噴射部材の噴射孔の寸法は特に限定されない。一例を挙げると、噴射孔の寸法(直径)は、0.3mm2以上であることが好ましく、0.5mm2以上であることがより好ましい。また、噴射孔の寸法は、3.0mm2以下であることが好ましく、2.5mm2以下であることがより好ましい。噴射孔の寸法が上記範囲内であることにより、エアゾール製品は、凍結物による噴射孔内の詰まりを抑えることができる。
【0060】
本実施形態のエアゾール製品は、噴射部材が押し下げられると、エアゾールバルブのステムが下方に押し下げられる。これにより、ステムラバーが下方に撓み、ステム孔が開放される。その結果、容器本体内と外部とが連通する。容器本体内と外部とが連通すると、容器本体内の圧力と外部との圧力差によって、エアゾール組成物の気相部分および液相部分がハウジング内に取り込まれ、混合される。次いで、エアゾール組成物は、ステム孔、ステム内通路を通過し、噴射部材に送られ、その後、噴射孔から噴射される。
【0061】
本実施形態のエアゾール製品から噴射されたエアゾール組成物は、水性原液が液化ガスにより冷却され、噴射対象物上でシャーベット状の噴射物を形成する。エアゾール組成物は、噴射される前に、ハウジング内において液相部分と気相部分とが混合され、噴射の勢いが弱められている。そのため、噴射されたエアゾール組成物は、噴射対象物上で跳ね返りにくく、付着しやすい。また、エアゾール組成物は、ジメチルエーテルとトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エンとを所定量含有しているため、噴射物中に気相部分が含まれていても、噴射対象物上で凍結しやすい。さらに、エアゾール組成物は、噴射される前に、ハウジング内において液相部分と気相部分とが混合されることにより、
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0063】
(実施例1)
以下の処方(単位:質量%)に従って、水性原液を調製し、25gの水性原液1をアルミニウム製耐圧容器に充填した。次いで、エアゾールバルブを取り付けて耐圧容器の開口部を閉止し、噴射部材を取り付けた。容器内の圧力は、0.43MPa(25℃)であった。
【0064】
<水性原液>
精製水 98.4
PPG-8セテス-20(*1) 0.5
タルク(*2) 0.5
フェノキシエタノール(*3) 0.5
ヒドロキシエチルセルロース(*4) 0.1
合計 100.0(質量%)
*1:PBC-44(商品名)、日光ケミカルズ(株)製
*2:クラウンタルクJS(商品名)、松村産業(株)製
*3:フェノキシエタノールーS(商品名)、四日市合成(株)製
*4:HEC-850SE(商品名)、ダイセルファインケム(株)製
【0065】
(実施例1~11、比較例1~6)
表1に記載の処方およびエアゾール製品の寸法にしたがって、それぞれの実施例および比較例のエアゾール製品を調製した。なお、ハイドロフルオロオレフィンは、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(Ze)を使用した。
【0066】
【0067】
実施例1~11および比較例1~6において調製したエアゾール製品を用いて、以下の評価方法により、エアゾール製品の噴射時の付着性、噴射物の状態、および、火炎長を評価した。結果を表1に示す。
【0068】
<付着性>
エアゾール製品を25℃に調整された恒温水槽中に1時間浸漬し、エアゾール組成物を25℃に調整した。恒温水槽からエアゾール製品を取り出し、噴射対象物(タオル)に対して、10cm離れた距離から、3g噴射した。エアゾール組成物の付着性を以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:エアゾール組成物は、噴射対象物上での跳ね返りがほとんど無く、ほぼ全量が付着した。
△:エアゾール組成物は、噴射対象物上での跳ね返りが少しあったが、大部分が付着した。
×:エアゾール組成物は、噴射対象物上での跳ね返りが多く、周囲に飛び散った。
【0069】
<噴射物の状態>
エアゾール製品を25℃に調整された恒温水槽中に1時間浸漬し、エアゾール組成物を25℃に調整した。恒温水槽からエアゾール製品を取り出し、噴射対象物(タオル)に対して、10cm離れた距離から、3g噴射した。噴射物の状態を以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○1:噴射物は、立体的に凍った。
○2:噴射物は、平面的に凍った。
×:噴射物は、凍らなかった。
【0070】
<火炎長>
エアゾール製品を25℃に調整された恒温水槽中に1時間浸漬し、エアゾール組成物を25℃に調整した。恒温水槽からエアゾール製品を取り出し、垂直5cmの炎に対して、15cm離れた距離から、噴射から3秒後の火炎長を測定した。火炎長の状態を以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
◎:火炎伸びは認められなかった。
○:火炎長が45cm以下であった。
×:火炎長が46cm以上であった。
【0071】
表1に示されるように、本発明の実施例1~11のエアゾール製品は、いずれも、エアゾール組成物の跳ね返りがないか、少なく、舞い散りが起こりにくかった。また、噴射物は、氷結し、かつ、火気に対する安定性が高かった。一方、DMEの含有量は少なかった比較例1は、噴射対象物上に噴射すると跳ね返りが多く、周囲に飛び散った。DMEの含有量は少なかった比較例2は、噴射対象物上に噴射すると跳ね返りが多く、周囲に飛び散り、噴射物は凍らなかった。DMEを配合せず、LPGを含む比較例3は、噴射対象物上に噴射すると跳ね返りが多く、周囲に飛び散った。DMEを配合せず、比較例3のLPGとZeの配合を入れ替えた比較例4は、噴射対象物上に噴射すると跳ね返りが多く、周囲に飛び散り、火炎長が46cm以上あった。実施例1から気相導入孔を無くした比較例5は、噴射対象物上に噴射すると跳ね返りが多く、周囲に飛び散った。比較例3から気相導入孔を無くし、原液を減らし、LPGを増やした比較例6は、噴射対象物上に噴射すると跳ね返りが多く、周囲に飛び散り、火炎長が46cm以上あった。