(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】バッテリのバスバーに接続するための接続部材、バッテリ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/503 20210101AFI20231017BHJP
H01M 50/50 20210101ALI20231017BHJP
H01M 50/298 20210101ALI20231017BHJP
H01M 50/526 20210101ALI20231017BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
H01M50/503
H01M50/50 101
H01M50/298
H01M50/526
H01R11/01 Q
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019128003
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-07-04
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503388120
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ベルギー ビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100121533
【氏名又は名称】佐々木 まどか
(72)【発明者】
【氏名】ドゥヴォス,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】マース,ヘンク
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-229615(JP,A)
【文献】特開2013-197017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ(5)のバスバー(10)に接続するための接続部材(1)であって、
前記接続部材(1)は、
- バッテリセル(6)に接続されるように適合された第1の部分(11)と、
- 前記バッテリセル(6)用の支持構造(8)に取り付けられた前記バスバー(10)に接続されるように適合された第2の部分(12)と、を備え、
前記接続部材(1)は、前記第1の部分(11)と前記第2の部分(12)との間に少なくとも2つの屈曲部(7、71、72)を備える
とともに、
前記2つの屈曲部間の中間部分(90)は2つの層(50、51、52)を含み、前記2つの層(50、51、52)は互いに離間されている、
接続部材(1)。
【請求項2】
一方の屈曲部(7、71)の曲率は、他方の屈曲部(7、72)の曲率を反転させたものである、
請求項1に記載の接続部材(1)。
【請求項3】
前記第1の部分(11)の平面は、前記第2の部分(12)の平面と平行でありかつそこから離間されている、
請求項1または2に記載の接続部材(1)。
【請求項4】
前記2つの屈曲部(7、71、72)間の中間部分(90)は直線状である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の接続部材(1)。
【請求項5】
前記2つの層(50、51、52)はシートメタルからなる層である、
請求項
1から4のいずれか一項に記載の接続部材(1)。
【請求項6】
前記2つの層(50、51、52)は前記第1の部分(11)から前記第2の部分(12)まで延在する、
請求項
1から5のいずれか一項に記載の接続部材(1)。
【請求項7】
前記
2つの層(50、51、52)の少なくとも一方はまた、2つのバッテリセル(6)を接続するように適合されたバッテリセルコネクタ(30)の一部でもある、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の接続部材
(1)。
【請求項8】
前記第2の部分(12)は、前記支持構造(8)の前記バスバー(10)に溶接されるように適合されている、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の接続部材(1)。
【請求項9】
前記第1の部分(11)は前記接続部材(1)の端部部分(61)である、
請求項1から
8のいずれか一項に記載の接続部材(1)。
【請求項10】
前記第2の部分(12)は前記接続部材(1)の端部部分(61)である、
請求項1から
9のいずれか一項に記載の接続部材(1)。
【請求項11】
特に電気自動車用のバッテリ(5)であって、
前記バッテリ(5)は、
- バッテリセル(6)と、
- 前記バッテリセル(6)用の支持構造(8)に取り付けられたバスバー(10)と、
- 請求項1から
10のいずれか一項に記載の前記接続部材(1)と、
を備える、バッテリ(5)。
【請求項12】
前記バスバー(10)上への前記屈曲部(7、71、72)の一方の垂直投影(170)は、少なくとも部分的に前記バスバー(10)の接触領域(60)内に位置する、
請求項
11に記載のバッテリ(5)。
【請求項13】
前記バスバー(10)は直線状である、
請求項
11または
12に記載のバッテリ(5)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリのバスバーに接続するための接続部材に関する。更に、本発明は、かかる接続部材を有するバッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
かかる接続部材は、バッテリのバッテリセルをバッテリセル用の支持構造に取り付けられたバスバーに接続するために使用される。しかしながら、かかるバッテリは移動し易く、バッテリセルとバスバーとの間で相対的な移動が生じることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的はしたがって、接続を喪失することなくかかる移動を可能にする解決法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、このことは、バッテリのバスバーに接続するための接続部材であって、バッテリセルに接続されるように適合された第1の部分と、バッテリセル用の支持構造に取り付けられたバスバーに接続されるように適合された第2の部分と、を備え、この接続部材は、第1の部分と第2の部分との間に少なくとも2つの屈曲部を含む、接続部材、を用いて達成される。
【0005】
本発明に係るバッテリは、バッテリセルと、バッテリセル用の支持構造に取り付けられたバスバーと、独創的な接続部材と、を備える。
【0006】
これら2つの屈曲部により、接続部材はフレキシビリティを有する。
【0007】
本発明による解決法を、互いに独立しており所望に応じて互いに任意に組み合わせ可能な、以下の更なる発展形態および有利な発展形態によって、更に改善することができる。
【0008】
一方の屈曲部の曲率は、他方の屈曲部の曲率を反転させたものとすることができる。例えば、一方の屈曲部は右に曲がる屈曲部とすることができ、他方の屈曲部は左に曲がる屈曲部とすることができる。結果として接続部材は、少なくとも部分的にZ字形状またはS字形状を有し得る。このことにより、製造および組み立てを簡単にすることができる。
【0009】
有利な発展形態では、第1の部分の平面を、第2の部分の平面と平行とすることおよびそこから離間させることができる。かかる構成により空間を節約できる可能性がある。
【0010】
第1の部分と第2の部分が平行となることを実現するために、一方の屈曲部の角度を、他方の屈曲部の角度と等しくすることができる。
【0011】
2つの屈曲部の少なくとも一方は、90度の屈曲部とすることができる。かかる屈曲部は製造が容易である。
【0012】
製造を簡単にするために、2つの屈曲部の間の中間部分を直線状とすることができる。代替の構成では、この部分は湾曲していてもまたは別の形状であってもよい。
【0013】
より高いフレキシビリティを達成するために、2つの屈曲部の間の部分は2つの層を含むことができる。これら2つの層は、互いに対して移動できる独立したものとすることができる。
【0014】
フレキシビリティを高めるために、2つの層を互いに離間させることができる。
【0015】
有利な発展形態では、2つの層はシートメタルからなる層とすることができる。かかる構成により、少なくとも一方向においてより高い可撓性が達成され、同時に他の方向において安定性がもたらされる。
【0016】
好ましくは、2つの層は第1の部分から第2の部分まで延在する。このことにより、高度のフレキシビリティが達成される。
【0017】
接続部材全体がシートメタルから成っていてもよい。このことにより製造が容易になり得る。更に、かかる実施形態は、軽量であると同時に安定したものとなり得る。
【0018】
有利な実施形態では、これらの層の少なくとも一方はまた、2つのバッテリセルを接続するように適合されたバッテリセルコネクタの一部でもあり得る。かかる接続部材はしたがって、二重の機能を有することおよびバッテリの設計を単純にすることができる。
【0019】
簡単な取り付け工程を実現するために、第2の部分は、支持構造のバスバーに溶接されるように適合され得る。特に、第2の部分は、超音波によって溶接されるように適合され得る。この溶接方法により、製造を効率的にすることができる。かかる溶接可能性を達成するために、第2の部分は平坦な部分を含むことができる。かかる平坦な部分があれば、溶接デバイスを適用することができる。
【0020】
第1の部分は、接続部材の端部部分とすることができる。したがって、得られる接続部材はコンパクトになり得る。
【0021】
同様に、第2の部分は、接続部材の端部部分とすることができる。
【0022】
第1の部分および/または第2の部分の接触領域は、接触が容易になるように、平面状にすることができる。
【0023】
バッテリの有利な発展形態では、バスバー上への屈曲部の一方の垂直投影は、少なくとも部分的にバスバーの接触領域内に位置する。これにより空間が節約される。
【0024】
同じく空間を節約するために、バスバーを覆うように端部部分を配置して、超音波溶接用の空間をより多く残すことができる。端部部分はバスバーを越えて突出することができる。溶接ソノトロードをバスバーの境界にある突出部に配置することができ、このとき封止特性への影響がこの重なりによって防止される。これとは別の場合、例えば端部部分がバスバーと、例えばバスバーの側面と面一に終端する場合、端部部分とソノトロードとの間の距離に注意する必要がある。
【0025】
製造を単純化するために、バスバーは直線状とすることができる。このことは特に、接続部材の有利な設計によって可能となる。
【0026】
装着された位置では、第2の部分を第1の部分の下方に位置することができる。
【0027】
ここで本発明について、有利な実施形態を使用し、図面を参照して、例示的なものとしてより詳細に記載する。記載する実施形態は可能な構成に過ぎないが、それらにおいて、上記したような個々の特徴を、互いに独立的に提供できるか、または省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】バッテリ上の接続部材についての、第1の実施形態の概略側面図である。
【
図2】バスバーを有する接続部材の概略側面図である。
【
図4】バスバーと一緒になった接続部材の概略斜視図である。
【
図5】2つの異なる状態にある、バスバーに取り付けられた接続部材の概略側面図である。
【
図6】ソノトロードと一緒にバスバーに取り付けられた接続部材の概略側面図である。
【
図7】ソノトロードと一緒にバスバーに取り付けられた接続部材の概略斜視図である。
【
図8】バスバーと一緒になった接続部材についての、第2の実施形態の概略側面図である。
【
図9】接続部材の第1の実施形態を示す概略斜視図であり、カバーを透明にして示した、バッテリの更なる要素とともに接続部材を示す図である。
【
図10】カバーを不透明にした
図9の実施形態を示す図である。
【
図11】第1の実施形態の接続部材への封止材の適用を示す概略斜視図である。
【
図12】第1の実施形態の接続部材への封止材の適用を示す、更なる概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、バッテリ5のバッテリセル6を、バッテリセル6用の支持構造8に取り付けられたバスバー10に接続するために使用される、接続部材1が示されている。支持構造8は、バッテリ5に機械的支持および安定性を与えることができる。
【0030】
バッテリセル6は、並んだ複数のバッテリセル6の中で最後のものである。このバッテリセル6は、バスバー10に電気接続しなければならない。
【0031】
バスバー10は、バッテリセル6から蓄積された電流および電圧を導通する。バスバー10は、バッテリセル6を機械的に支持する支持構造8に取り付けられる。特定の作業の間、例えばバスバー10の装着中、またはバッテリ5が取り付けられている電気自動車の移動中、バッテリセル6は、支持構造8、したがってバスバー10に対して相対的に移動することができる。したがって、バッテリセル6とバスバー10との間の電気接続を維持するためには、バッテリセル6とバスバー10との間である程度の可動性(movability)が必要である。
【0032】
かかるフレキシビリティ(flexibility)を提供するために、接続部材1は第1の屈曲部7、71と第2の屈曲部7、72とを備え、これらは、接続部材1がバッテリセル6に接触する場所である第1の部分11と、接続部材1がバスバー10に接触する場所である第2の部分12と、の間に位置する。
【0033】
第1の屈曲部7、71の曲率は、第2の屈曲部7、72の曲率を反転させたものまたはこれと対合するものである。第1の屈曲部7、71は右曲がりの屈曲部81であり、一方、第2の屈曲部7、72は左曲がりの屈曲部82である。したがって、接続部材1は、S字形状またはZ字形状を有する。
【0034】
弛緩した状態では、第1の屈曲部7、71は、90°である角度101を有する。第2の屈曲部7、72は、この弛緩した状態では、同じく90°である角度102を有する。この結果、第1の部分11によって画定される平面110は、第2の部分12によって画定される平面120と平行であり、かつ平面120まで距離150だけ離間される。したがって、第1の部分11および第2の部分12は、他方の部分11、12に大きな機械的応力を及ぼすことなく、および電気的接触を失うことなく、互いに対して移動することができる。
【0035】
例えば
図2に見ることができるように、第1の屈曲部7、71と第2の屈曲部7、72との間の中間部分90は、2つの層50、51、52を含む。2つの層50、51、52の間には間隙55が存在して、2つの層50、51、52が互いに離間されるようになっている。これらの層の各々は、シートメタル(金属薄板)から製作される。この結果、接続部材1は、中間部分90が単一のより厚い要素である構成と比較した場合よりも、高いフレキシビリティを有する。簡単な製造を維持するために、中間部分90は直線状である。
【0036】
また2つの層50、51、52間の間隔により、2つの層50、52、51の間の摩擦も回避され、このことによりフレキシビリティが更に高まる。このフレキシビリティを最大にするために、この二層構造は、第1の部分11から第2の部分12まで延在する。この実施形態では、2つの層50、51、52は、少なくとも第1の部分11から第2の部分12まで延在する。
【0037】
第2の部分12は接続部材1の端部部分61である。層50、51、52はいずれも、第2の部分12で終端する。
【0038】
ただし、第1の部分11については状況が異なる。第1の層51は第1の部分11で終端するが、第2の層52はより遠くまで延在し、バッテリのセルコネクタ30の、2つのバッテリセル31を互いに接続するために使用される部分を形成する。例えば、
図3に見ることができるように、バッテリセル6の電極のピン(図示せず)の接触を可能にするための、孔31が存在する。
【0039】
図4に見ることができるように、第2の部分12をバスバー10に溶接することができる。2つの平面110、120の間の距離150に起因して、バスバー10は直線状とすることができ、困難な製造ステップを必要とするような上方向への曲げを必要としない。
【0040】
図5では、フレキシビリティを追加する利点を見ることができる。接続部材1の2つの状態が示されている。第1の、弛緩した状態(relaxed condition)201は、例えば
図2に示す状態に対応している。第2の状態202では、バッテリセル6および/またはバスバー10に力がかかり、その結果、これら2つの間の相対的な移動が存在し、これら2つの間の距離は、第1の、弛緩した状態201の場合よりも大きい。この結果、第1の部分11および第2の部分12もまた互いに対して移動し、接続部材1はより直線に近い構成となる。第1の屈曲部7、71、72の角度101、102は、この時点でより大きくなっている。示されている曲がりは、接続部材が
図2の構成に戻ることができるように、可逆的であり得る。
【0041】
図6および
図7では溶接工程が示されており、これらにおいては、第2の部分12はバスバー10の接触領域60に溶接されている。ソノトロード160は、接触方向Cに沿って第2の部分12をバスバー60に押し付ける。その後の超音波印加の結果、第2の部分12とバスバー60とが接続する。
図6において最もよく見ることができるように、接続部材1は、屈曲部7、71、72の投影170の少なくとも一部171が接触領域60内に位置するようにして、接触領域60の上方に位置する。このことにより、接触方向Cに対して垂直である垂直方向Pおよびバスバー10が延在する長手方向Lにおいて、空間が節約される。
【0042】
同様に、第1の部分11を、例えば溶接によって、バッテリセル6に取り付けることができる。
【0043】
同じく空間を節約するために、バスバー10を覆うように端部部分61を配置して、超音波溶接用の空間をより多く残すことができる。溶接ソノトロード160をバスバー10の境界にある突出部に配置することができ、このとき封止特性への影響がこの重なりによって防止される。端部部分61、ここでは第2の部分12は、バスバー10の側面15を越えて突出している。
【0044】
図8には、2つの屈曲部7、71、72がバスバー10の接触領域60の上方に位置しない、したがって2つの屈曲部7、71、72の投影170が接触領域60の上に位置しない、更なる実施形態が示されている。かかる実施形態は製造がより容易である。
【0045】
図9および
図10では、接続部材1がバッテリセル6に取り付けられた状態で示されている。
図9では、カバー180が透明な状態で示されている。更に、固定要素190を固定するための器具191、例えばねじが、概略的に示されている。この器具191を回転によって動作させるとき、接続部材1に力がかかる。しかしながら、有利な構成に起因して、バッテリセル6とバスバー10との間の移動が接続部材1により可能となるため、この力はこれら2つの間の接続に対してほとんど影響を及ぼさない。
【0046】
図11および
図12に見ることができるように、例えばバスバー10と第2の部分12との間の漏斗状の部分に、封止材195を容易に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 接続部材
5 バッテリ
6 バッテリセル
7 屈曲部
8 支持構造
10 バスバー
11 第1の部分
12 第2の部分
15 側面
20 シートメタル
30 バッテリセルコネクタ
31 孔
40 平坦な部分
50 層
51 第1の層
52 第2の層
55 間隙
60 接触領域
61 端部部分
71 第1の屈曲部
72 第2の屈曲部
81 右曲がりの屈曲部
82 左曲がりの屈曲部
90 中間部分
101 第1の角度
102 第2の角度
110 第1の平面
120 第2の平面
150 距離
160 ソノトロード
170 投影
171 投影の一部
180 カバー
190 固定手段
195 封止材
201 第1の状態
202 第2の状態
C 接触方向
P 垂直方向
L 長手方向