IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

<>
  • 特許-作業機械および作業機械の制御方法 図1
  • 特許-作業機械および作業機械の制御方法 図2
  • 特許-作業機械および作業機械の制御方法 図3
  • 特許-作業機械および作業機械の制御方法 図4
  • 特許-作業機械および作業機械の制御方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】作業機械および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
E02F9/22 E
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019134035
(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公開番号】P2021017737
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根田 知樹
(72)【発明者】
【氏名】大井 健
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 健二郎
(72)【発明者】
【氏名】大岩 憲史
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-190749(JP,A)
【文献】特開2010-156134(JP,A)
【文献】特開2011-157789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機と、
作動油によって前記作業機を動作させる油圧シリンダと、
油圧回路を介して前記油圧シリンダに前記作動油を供給する油圧ポンプと、
前記油圧回路のリリーフ圧を、第1の設定圧および前記第1の設定圧よりも高い第2の設定圧のいずれかに設定可能なリリーフ弁と、
前記作業機の制御状態が掘削状態か否かを判断する状態判断部と、
前記油圧回路の前記作動油の圧力および前記作業機の速度を検出する検出部と、
前記作業機の制御状態が掘削状態である場合に、前記油圧回路の前記作動油の圧力および前記作業機の速度の検出値に基づいて前記リリーフ弁のリリーフ圧を前記第1の設定圧から前記第2の設定圧に変更するリリーフ圧変更部とを備える、作業機械。
【請求項2】
前記油圧ポンプは、エンジンによって駆動され、
前記圧力検出部によって検出された前記作動油の圧力が所定値よりも大きい場合には、前記エンジンの回転数を増大させるエンジン調整部をさらに備える、請求項1記載の作業機械。
【請求項3】
前記リリーフ圧変更部は、前記リリーフ弁のリリーフ圧を前記第2の設定圧に変更後、所定時間経過後に前記第1の設定圧に変更する、請求項1記載の作業機械。
【請求項4】
前記リリーフ圧変更部は、前記リリーフ弁のリリーフ圧を前記第2の設定圧に変更後、前記作業機の制御状態が掘削状態でない場合に、前記第1の設定圧に変更する、請求項1記載の作業機械。
【請求項5】
前記作業機は、バケットを有し、
前記リリーフ圧変更部は、前記作業機の制御状態が掘削状態であり、前記油圧回路の前記作動油の圧力が所定期間の間、所定値以上および前記バケットの速度が所定期間の間、所定速度以下である場合に前記リリーフ弁のリリーフ圧を前記第1の設定圧から前記第2の設定圧に変更する、請求項1記載の作業機械。
【請求項6】
前記検出部は、前記油圧回路の前記作動油の圧力および前記作業機の速度の少なくとも一方の検出値を移動平均処理して出力するフィルタ回路を含む、請求項1記載の作業機械。
【請求項7】
作業機と、
作動油によって前記作業機を動作させる油圧シリンダと、
油圧回路を介して前記油圧シリンダに前記作動油を供給する油圧ポンプと、
前記油圧回路のリリーフ圧を、第1の設定圧および前記第1の設定圧よりも高い第2の設定圧のいずれかに設定可能なリリーフ弁と、
前記作業機の制御状態が掘削状態か否かを判断する状態判断部と、
前記油圧回路の前記作動油の圧力および前記作業機の速度を検出する検出部と、
前記作業機の制御状態が掘削状態である場合に、前記油圧回路の前記作動油の圧力および前記作業機の速度の検出値に基づいて前記リリーフ弁のリリーフ圧を前記第1の設定圧から前記第2の設定圧に変更するリリーフ圧変更部とを備え、
前記作業機は、バケットを有し、
前記リリーフ圧変更部は、前記リリーフ弁のリリーフ圧を前記第2の設定圧に変更後、前記油圧回路の前記作動油の圧力が所定値未満および前記バケットの速度が所定速度より大きい速度の少なくとも一方である場合に前記第1の設定圧に変更する、作業機械。
【請求項8】
前記リリーフ圧変更部は、前記リリーフ弁のリリーフ圧を前記第2の設定圧に変更後、前記油圧回路の前記作動油の圧力が所定値未満および前記バケットの速度が所定速度より大きい速度である状態が所定期間以上継続した場合に前記第1の設定圧に変更する、請求項7記載の作業機械。
【請求項9】
作業機と、
作動油によって前記作業機を動作させる油圧シリンダと、
油圧回路を介して前記油圧シリンダに前記作動油を供給する油圧ポンプと、
前記油圧回路のリリーフ圧を、第1の設定圧および前記第1の設定圧よりも高い第2の設定圧のいずれかに設定可能なリリーフ弁と、
前記作業機の制御状態が掘削状態か否かを判断する状態判断部と、
前記油圧回路の前記作動油の圧力および前記作業機の速度を検出する検出部と、
前記作業機の制御状態が掘削状態である場合に、前記油圧回路の前記作動油の圧力および前記作業機の速度の検出値に基づいて前記リリーフ弁のリリーフ圧を前記第1の設定圧から前記第2の設定圧に変更するリリーフ圧変更部とを備え、
前記作業機は、バケットを有し、
リリーフ圧変更部は、前記作業機の制御状態が掘削状態であり、前記油圧回路の前記作
動油の圧力が所定値以上および前記バケットの速度が所定速度以下である場合に前記リリーフ弁のリリーフ圧を前記第1の設定圧から前記第2の設定圧に変更する、作業機械。
【請求項10】
前記作業機の制御状態は、自動掘削状態である、請求項1~9のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項11】
作業機の制御状態が掘削状態であるか否かを判断するステップと、
前記作業機の制御状態が掘削状態である場合に前記作業機を動作させる油圧シリンダに油圧回路を介して供給される作動油の圧力および前記作業機の速度を検出するステップと、
前記油圧回路の前記作動油の圧力および前記作業機の速度の検出値に基づいて前記油圧回路のリリーフ弁のリリーフ圧を第1の設定圧から前記第1の設定圧よりも高い第2の設定圧に変更するステップとを備える、作業機械の制御方法。
【請求項12】
バケットを有する作業機の制御状態が掘削状態であるか否かを判断するステップと、
前記作業機の制御状態が掘削状態である場合に前記作業機を動作させる油圧シリンダに油圧回路を介して供給される作動油の圧力および前記作業機の速度を検出するステップと、
前記油圧回路の前記作動油の圧力および前記作業機の速度の検出値に基づいて前記油圧回路のリリーフ弁のリリーフ圧を第1の設定圧から前記第1の設定圧よりも高い第2の設定圧に変更するステップと、
前記リリーフ弁のリリーフ圧を前記第2の設定圧に変更後、前記油圧回路の前記作動油の圧力が所定値未満および前記バケットの速度が所定速度より大きい速度の少なくとも一方である場合に前記第1の設定圧に変更するステップとを備える、作業機械の制御方法。
【請求項13】
バケットを有する作業機の制御状態が掘削状態であるか否かを判断するステップと、
前記作業機の制御状態が掘削状態である場合に前記作業機を動作させる油圧シリンダに油圧回路を介して供給される作動油の圧力および前記作業機の速度を検出するステップと、
前記作業機の制御状態が掘削状態であり、前記油圧回路の前記作動油の圧力が所定値以上および前記バケットの速度が所定速度以下である場合に前記油圧回路のリリーフ弁のリリーフ圧を第1の設定圧から前記第1の設定圧よりも高い第2の設定圧に変更するステップとを備える、作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械の掘削制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等の作業車両が知られている。たとえば、国際公開第2017/138070号(特許文献1)には、油圧ポンプからの作動油を油圧回路を介してブーム、アームおよびバケットを駆動するコントロールバルブに供給して、これらブーム、アームおよびバケットを作動させる構成が開示されている。
【0003】
この点で、特許文献1の油圧ショベルには、油圧回路のリリーフ弁のリリーフ圧を変更してパワーアップする機能が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/138070号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、特許文献1の油圧ショベルは、ホイスト旋回時にパワーアップする機能であり、掘削負荷が高い掘削制御中にパワーアップする機能ではない。これにより掘削制御が正常に動作しない可能性がある。
【0006】
本開示の目的は、掘削負荷の高い掘削制御が実行される場合にはパワーアップさせることが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面に従う作業機械は、作業機と、作動油によって作業機を動作させる油圧シリンダと、油圧回路を介して油圧シリンダに作動油を供給する油圧ポンプと、油圧回路のリリーフ圧を、第1の設定圧および第1の設定圧よりも高い第2の設定圧のいずれかに設定可能なリリーフ弁と、作業機の制御状態が掘削状態か否かを判断する状態判断部と、油圧回路の作動油の圧力および作業機の速度の少なくとも一方を検出する検出部と、作業機の制御状態が掘削状態である場合に、油圧回路の作動油の圧力および作業機の速度の少なくとも一方の検出値に基づいてリリーフ弁のリリーフ圧を第1の設定圧から第2の設定圧に変更するリリーフ圧変更部とを備える。
【0008】
本開示のある局面に従う作業機械の制御方法は、作業機の制御状態が掘削状態であるか否かを判断するステップと、作業機の制御状態が掘削状態である場合に作業機を動作させる油圧シリンダに油圧回路を介して供給される作動油の圧力および作業機の速度の少なくとも一方を検出するステップと、油圧回路の作動油の圧力および作業機の速度の少なくとも一方の検出値に基づいて油圧回路のリリーフ弁のリリーフ圧を第1の設定圧から第1の設定圧よりも高い第2の設定圧に変更するステップとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の作業機械および作業機械の制御方法は、掘削負荷の高い掘削制御が実行される場合にはパワーアップさせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に基づく作業機械100の外観図である。
図2】実施形態に基づく作業機械100の制御系の構成を説明する図である。
図3】実施形態に基づく作業機械100のポンプコントローラ34の機能ブロックを説明する図である。
図4】実施形態に従うポンプコントローラ34の制御フローを説明する図である。
図5】実施形態に従うポンプ吸収トルクとエンジン回転数との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能の同じである。したがって、それらについての詳細な説明については繰り返さない。
【0012】
<作業機械の全体構成>
図1は、実施形態に基づく作業機械100の外観図である。
【0013】
図1に示されるように、本開示の思想を適用可能な作業機械として油圧により作動する作業機2を備える油圧ショベルを例に挙げて説明する。
【0014】
油圧ショベルは、車両本体1と、作業機2とを備える。
車両本体1は、旋回体3と、運転室4と、走行装置5とを有する。
【0015】
旋回体3は、走行装置5の上に配置される。走行装置5は、旋回体3を支持する。旋回体3は、旋回軸AXを中心に旋回可能である。運転室4には、オペレータが着座する運転席4Sが設けられる。オペレータは、運転室4において油圧ショベルを操作する。走行装置5は、一対の履帯5Crを有する。履帯5Crの回転により、油圧ショベルが走行する。走行装置5は、車輪(タイヤ)で構成されていてもよい。
【0016】
実施形態では、運転席4Sに着座したオペレータを基準として各部の位置関係について説明する。前後方向とは、運転席4Sに着座したオペレータの前後方向をいう。左右方向とは、運転席4Sに着座したオペレータを基準とした左右方向をいう。左右方向は、車両の幅方向(車幅方向)に一致する。運転席4Sに着座したオペレータに正面に正対する方向を前方向とし、前方向とは反対の方向を後方向とする。運転席4Sに着座したオペレータが正面に正対したとき右側、左側をそれぞれ右方向、左方向とする。
【0017】
旋回体3は、エンジンが収容されるエンジンルーム9と、旋回体3の後部に設けられるカウンタウェイトとを有する。旋回体3において、エンジンルーム9の前方に手すり19が設けられる。エンジンルーム9には、エンジン及び油圧ポンプなどが配置されている。
【0018】
作業機2は、旋回体3に支持される。作業機2は、ブーム6と、アーム7と、バケット8と、ブームシリンダ10と、アームシリンダ11と、バケットシリンダ12とを有する。
【0019】
ブーム6は、ブームピン13を介して旋回体3に接続される。アーム7は、アームピン14を介してブーム6に接続される。バケット8は、バケットピン15を介してアーム7に接続される。ブームシリンダ10は、ブーム6を駆動する。アームシリンダ11は、アーム7を駆動する。バケットシリンダ12は、バケット8を駆動する。ブーム6の基端部(ブームフート)と旋回体3とが接続される。ブーム6の先端部(ブームトップ)とアーム7の基端部(アームフート)とが接続される。アーム7の先端部(アームトップ)とバケット8の基端部とが接続される。ブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12はいずれも、作動油によって駆動される油圧シリンダである。
【0020】
ブーム6は、中心軸であるブームピン13を中心に旋回体3に対して回転可能である。アーム7は、ブームピン13と平行な中心軸であるアームピン14を中心にブーム6に対して回転可能である。バケット8は、ブームピン13およびアームピン14と平行な中心軸であるバケットピン15を中心にアーム7に対して回転可能である。
【0021】
なお、バケット8、作業機2は、本開示の「バケット」、「作業機」の一例である。
〔制御系の構成〕
図2は、実施形態に基づく作業機械100の制御系の構成を説明する図である。
【0022】
図2を参照して、作業機械100は、ブームシリンダ10と、アームシリンダ11と、バケットシリンダ12と、旋回モータ24と、コントローラ26と、エンジンコントローラ30と、エンジン38と、油圧ポンプ40と、メインバルブ25と、リリーフ弁44と、ポンプ圧力センサ32と、ポンプコントローラ34と、自己圧減圧弁46と、EPC弁50とを備えている。
【0023】
エンジン38は、例えば、ディーゼル式のエンジンであり、エンジンコントローラ30の制御に従って制御される。具体的には、エンジンコントローラ30は、図示しない燃料噴射装置からの燃料の噴射量を制御することにより、エンジン38の出力トルクと回転数とを制御する。
【0024】
油圧ポンプ40は、エンジン38によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ40は、エンジン38の回転数に応じて作動油の吐出量を変化させる固定容量型の油圧ポンプである。なお、本例においては、1つの油圧ポンプ40を用いた構成について説明するが、特にこれに限られず複数の油圧ポンプを用いた構成とすることも可能である。
【0025】
メインバルブ25は、油圧ポンプ40から供給される作動油を受けて、ブームシリンダ10,アームシリンダ11,バケットシリンダ12および旋回モータ24にそれぞれ作動油を分配して供給する。
【0026】
コントローラ26は、EPC弁50に指令電流を出力する。EPC弁50は、コントローラ26からの指令電流に従って、メインバルブ25を制御する。
【0027】
実施形態に従うコントローラ26は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ等で構成され、メモリに格納されている制御プログラムを実行することにより、作業機2を制御する。一例として、メモリには、作業機2を自動制御して複数の作業工程を実行する制御プログラムが格納されている。具体的には、複数の作業工程として、作業地形に対して作業機2を用いて掘削動作を実行する掘削工程、旋回体3により旋回動作する旋回工程、掘削動作によりバケット8に抱え込まれた掘削対象物に対して作業機2を用いて排土動作する排土工程を含む。
【0028】
コントローラ26は、自動制御の複数の作業工程の各作業工程を示す状態データをメモリに保持するとともに、当該状態データをポンプコントローラ34に出力する。一例として、コントローラ26は、自動掘削状態データ、自動旋回状態データ、自動排土状態データの少なくともいずれかの状態データを保持するとともに、当該状態データをポンプコントローラ34に出力する。ポンプコントローラ34は、コントローラ26から出力された状態データに基づいて、例えば自動掘削状態であることを判断することが可能である。
【0029】
なお、本例においては、コントローラ26が状態データを出力する場合について説明するが特にこれに限られず、ポンプコントローラ34がコントローラ26にアクセスしてメモリに格納された状態データを取得するようにしても良い。
【0030】
油圧ポンプ40から出力された作動油は、自己圧減圧弁46によって一定の圧力に減らされてパイロット用に供給される。
【0031】
ポンプ圧力センサ32は、油圧ポンプ40とメインバルブ25との間の油圧回路内の作動油の圧力を検出する。
【0032】
リリーフ弁44は、油圧ポンプ40と、メインバルブ25との間の流路を有する油圧回路に接続されている。また、リリーフ弁44は、油圧回路が所定のリリーフ圧よりも高い場合には開いて作動油をタンクへ流す。リリーフ弁44により油圧回路を流れる作動油の圧力を所定の圧力以下に補償することが可能となる。リリーフ弁44は、所定のリリーフ圧を第1の設定圧あるいは第1の設定圧よりも高い第2の設定圧に変更可能に設けられている。
【0033】
ポンプコントローラ34は、ポンプ圧力センサ32で検出された油圧回路の作動油の圧力のデータの入力を受ける。ポンプコントローラ34は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12からのシリンダ長のデータの入力を受ける。ポンプコントローラ34は、コントローラ26から自動制御の状態に関するデータの入力を受ける。ポンプコントローラ34は、ポンプ圧力センサ32で検出された油圧回路の作動油の圧力のデータ、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12からのシリンダ長のデータ、自動制御の状態に関するデータとに基づいてリリーフ弁44のリリーフ圧を調整する。
【0034】
なお、油圧ポンプ40、リリーフ弁44およびブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12は、本開示の「油圧ポンプ」、「リリーフ弁」および「油圧シリンダ」の一例である。
【0035】
図3は、実施形態に基づく作業機械100のポンプコントローラ34の機能ブロックを説明する図である。
【0036】
図3に示されるように、ポンプコントローラ34は、状態判断部102と、圧力検出部103と、バケット速度検出部104と、リリーフ圧変更部106と、エンジン調整部108とを含む。
【0037】
状態判断部102は、コントローラ26から自動制御の状態に関するデータの入力を受けて、作業機の制御状態が自動掘削状態か否かを判断する。
【0038】
圧力検出部103は、ポンプ圧力センサ32で検出された油圧回路の作動油の圧力のデータの入力を受ける。
【0039】
バケット速度検出部104は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12のそれぞれに設けられたセンサからのシリンダ長データの入力を受け付ける、当該シリンダ長データに基づいてバケット速度を検出する。
【0040】
リリーフ圧変更部106は、圧力検出部103で入力を受け付けた油圧回路のポンプ圧と、バケット速度検出部104で検出されたバケット速度と、状態判断部102で判断された作業機の制御状態とに基づいてリリーフ弁44のリリーフ圧を変更する。
【0041】
リリーフ弁44は、第1の設定圧に予め設定されている。リリーフ圧変更部106は、所定条件が成立した場合に、リリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧よりも高い第2の設定圧に変更する。
【0042】
エンジン調整部108は、エンジン38の回転数を調整するようにエンジンコントローラ30に指示する。
【0043】
なお、状態判断部102、圧力検出部103、バケット速度検出部104、リリーフ圧変更部106、エンジン調整部108は、本開示の「状態判断部」、「圧力検出部」、「速度検出部」、「リリーフ圧変更部」、「エンジン調整部」の一例である。
【0044】
<ポンプコントローラの制御>
図4は、実施形態に従うポンプコントローラ34の制御フローを説明する図である。
【0045】
図4を参照して、ポンプコントローラ34は、自動掘削モードであるか否かを判断する(ステップS2)。具体的には、状態判断部102は、コントローラ26からの状態データの入力を受けて自動掘削モードであるか否かを判断する。
【0046】
ステップS2において、ポンプコントローラ34は、自動掘削モードであると判断しない場合(ステップS2においてNO)には、ステップS2の判断を繰り返す。
【0047】
一方、ステップS2において、ポンプコントローラ34は、自動掘削モードであると判断した場合(ステップS2においてYES)には、作動油の圧力を検出する(ステップS4)。具体的には、圧力検出部103は、ポンプ圧力センサ32で検出された作動油の圧力を取得する。なお、圧力検出部103は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12のヘッド側とボトム側に取り付けた圧力センサで検出された作動油の圧力を取得しても良い。
【0048】
次に、ポンプコントローラ34は、取得した圧力が所定値以上であるか否かを判断する(ステップS6)。具体的には、リリーフ圧変更部106は、圧力検出部103で取得した作動油の圧力が所定値以上の圧力であるか否かを判断する。ポンプ圧力センサ32で検出された作動油の圧力が所定値以上の圧力であると判断される場合には、掘削負荷の高い作業工程と判断することが可能である。
【0049】
ステップS6において、ポンプコントローラ34は、作動油の圧力が所定値以上であると判断した場合(ステップS6においてYES)には、バケット速度を取得する(ステップS7A)。リリーフ圧変更部106は、バケット速度検出部104に対してバケット速度を算出するように指示する。バケット速度検出部104は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12からのシリンダ長のデータに基づいて作業機2のバケット8の速度を算出する。バケット速度検出部104は、算出したバケット8の速度をリリーフ圧変更部106に出力する。
【0050】
次に、ポンプコントローラ34は、バケット速度が所定速度以下であるか否かを判断する(ステップS7B)。具体的には、リリーフ圧変更部106は、バケット速度検出部104から出力されたバケット速度が所定速度以下(例えば速度が0)であるか否かを判断する。バケット速度検出部104から出力されたバケット速度が所定速度以下であると判断される場合には、掘削負荷の高い作業工程と判断することが可能である。
【0051】
ステップS7Bにおいて、ポンプコントローラ34は、所定速度以下であると判断した場合(ステップS7BにおいてYES)には、リリーフ圧を第2の設定圧に設定する(ステップS8)。具体的には、リリーフ圧変更部106は、バケット速度検出部104から出力されたバケット速度が所定速度以下であると判断した場合にはリリーフ弁44のリリーフ圧を第2の設定圧に変更する。
【0052】
次に、ポンプコントローラ34は、リリーフ圧を第2の設定圧に設定してから所定期間経過したか否かを判断する(ステップS10)。リリーフ圧変更部106は、リリーフ圧を第2の設定圧に設定してから所定期間経過したか否かを判断する。
【0053】
一方、ステップS10において、ポンプコントローラ34は、リリーフ圧を第2の設定圧に設定してから所定期間経過していないと判断した場合(ステップS10においてNO)には、ステップS10の判断を繰り返す。
【0054】
次に、ポンプコントローラ34は、ステップS10において、リリーフ圧を第2の設定圧に設定してから所定期間経過したと判断した場合(ステップS10においてYES)には、リリーフ圧を第1の設定圧に設定する(ステップS12)。そして、処理を終了する(エンド)。具体的には、リリーフ圧変更部106は、リリーフ圧を第2の設定圧に設定してから所定期間経過したと判断した場合にはリリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧に変更する。これにより、長期間の間、リリーフ圧を高い状態に維持することによる油圧回路の負荷を軽減することが可能である。
【0055】
一方、ステップS6において、ポンプコントローラ34は、作動油の圧力が所定値以上でないと判断した場合(ステップS6においてNO)には、ステップS4に戻り、上記処理を繰り返す。
【0056】
一方、ステップS7Bにおいて、ポンプコントローラ34は、バケット速度が所定速度以下でないと判断した場合(ステップS7BにおいてNO)には、ステップS4に戻り、上記処理を繰り返す。
【0057】
実施形態においては、リリーフ圧変更部106は、コントローラ26から出力される制御の状態が自動掘削モードであり、油圧回路の作動油の圧力が所定圧以上、かつ、バケット8の速度が所定速度以下(例えば停止状態)である場合に、リリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧よりも高い第2の設定圧に変更する。
【0058】
リリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧から第2の設定圧に変更することにより油圧回路内の作動油の圧力を高めることが可能である。したがって、掘削負荷の高い自動掘削の制御を実行する場合に、メインバルブ25と接続される作業機2の出力を上昇(パワーアップ)させて動作させることが可能となる。
【0059】
なお、上記の実施形態のリリーフ圧変更部106は、所定条件として、自動掘削モードが実行されており、油圧回路の作動油の圧力が所定圧以上、かつ、バケット8の速度が所定速度以下である場合に、リリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧よりも高い第2の設定圧に変更する場合について説明した。これに限られず、リリーフ圧変更部106は、自動掘削モードであり、油圧回路の作動油の圧力およびバケット8の速度の少なくとも一方に基づいてリリーフ弁44のリリーフ圧を変更しても良い。具体的には、リリーフ圧変更部106は、自動掘削モード、かつ、油圧回路の作動油の圧力が所定圧以上およびバケット8の速度が所定速度以下の少なくとも一方である場合に、リリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧よりも高い第2の設定圧に変更してもよい。
【0060】
なお、上記の例においては、リリーフ圧変更部106は、所定期間の間、リリーフ圧が第2の設定圧として設定されていると判断した場合にはリリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧に変更する場合について説明した。
【0061】
一方で、掘削負荷が低くなった場合には、リリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧に変更するようにしてもよい。
【0062】
例えば、作業機の速度が回復した場合にはリリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧に変更するようにしてもよい。具体的には、リリーフ圧変更部106は、バケット8の速度が所定速度を超えた場合にはリリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧に変更するようにしてもよい。あるいは、リリーフ圧変更部106は、油圧回路の作動油の圧力が所定圧未満となった場合にはリリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧に変更するようにしてもよい。
【0063】
また、リリーフ圧変更部106は、掘削状態が終了したと判断した場合には、リリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧に変更するようにしてもよい。例えば、リリーフ圧変更部106は、コントローラ26からの自動制御の状態に関するデータの入力に基づいて掘削状態が終了して旋回状態に動作が移行したと判断した場合には、リリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧に変更するようにしてもよい。あるいは、視覚センサを用いてバケット8の刃先が地面から出たと判断した場合には、掘削状態が終了したと判断してリリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧に変更するようにしてもよい。具体的には、リリーフ圧変更部106は、視覚センサを用いてバケット8の刃先が現況地形高さを超えたと判断した場合にはリリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧に変更するようにしてもよい。あるいは、作業機の姿勢に基づいて掘削状態が終了したと判断した場合には、リリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧に変更するようにしてもよい。具体的には、リリーフ圧変更部106は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12からのシリンダ長のデータに基づいてバケット8の姿勢がバケット8の内部の土を抱え込んだ姿勢であると判断した場合にはリリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧に変更するようにしてもよい。
【0064】
<変形例1>
自動掘削モード中に障害物(例えば岩など)に衝突して瞬間的にバケット8の速度が0になったり、作動油の圧力が所定値以上になる可能性がある。その場合に、リリーフ圧変更部106は、リリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧よりも高い第2の設定圧に変更する可能性がある。
【0065】
本変形例1においては、当該誤動作を防止する方式について説明する。
具体的には、リリーフ圧変更部106は、誤動作を防止するために掘削負荷の高い状態が所定期間継続するか否かを条件に加える。
【0066】
例えば、リリーフ圧変更部106は、所定条件として、自動掘削モードが実行されており、油圧回路の作動油の圧力が所定期間、所定値以上を継続し、かつ、バケット8の速度が所定期間、所定速度以下を継続している場合にリリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧よりも高い第2の設定圧に変更してもよい。
【0067】
別の方式として、フィルタ回路を用いて移動平均処理した後の計測値を用いて判定してもよい。
【0068】
具体的には、圧力検出部103に移動平均処理するフィルタ回路を設けて、当該フィルタ回路を通過した後の計測値をリリーフ圧変更部106に出力するようにしても良い。あるいは、バケット速度検出部104に、移動平均処理するフィルタ回路を設けて、当該フィルタ回路を通過した後の算出値をリリーフ圧変更部106に出力するようにしても良い。
【0069】
実施形態の変形例1に基づく処理により突発的に生じた外乱を除去することが可能となり、誤動作を防止することが可能である。
【0070】
なお、本例においては、リリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧から第2の設定圧に変更する場合の条件について説明したが、リリーフ弁44のリリーフ圧を第2の設定圧から第1の設定圧に変更する場合についても同様に適用可能である。
【0071】
<変形例2>
上記の実施形態においては、掘削負荷の高い自動掘削の制御を実行する場合に、リリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧から第2の設定圧に変更することにより油圧回路内の作動油の圧力を高めて作業機2の出力を上昇(パワーアップ)させる場合について説明した。この点で、リリーフ圧変更部106は、リリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧よりも高い第2の設定圧に変更するとともに、エンジン調整部108にエンジンの回転数を調整するように指示する。
【0072】
図5は、実施形態に従うポンプ吸収トルクとエンジン回転数との関係を説明する図である。
【0073】
図5に示されるように、エンジン38のエンジン出力特性線EL1が示されている。そして、エンジン出力特性線EL1と、ポンプ吸収トルク特性線PLとに基づいてポンプ吸収トルクがエンジン出力トルクとマッチング点でマッチングするようにEPC弁50で制御される。本例においては、ポンプ吸収トルク特性線PL1と、ポンプ吸収トルク特性線PL2とが設けられており、通常時には、ポンプ吸収トルク特性線PL1とエンジン出力特性線EL1とのマッチング点M1でマッチングするように制御される。そして、掘削負荷の高い自動掘削の制御を実行する場合には、ポンプ吸収トルク特性線PL1をポンプ吸収トルク特性線PL2に変更する。これにより、ポンプ吸収トルク特性線PL1とエンジン出力特性線EL2とのマッチング点M2でマッチングするように制御される。具体的には、エンジン調整部108は、エンジンコントローラ30に指示してエンジン回転数を上昇させる。
【0074】
実施形態の変形例2においては、掘削負荷の高い自動掘削の制御を実行する場合に、リリーフ弁44のリリーフ圧を第1の設定圧から第2の設定圧に変更することにより油圧回路内の作動油の圧力を高めるとともに、エンジン回転数を上昇させることにより作業機2の出力をさらに上昇(パワーアップ)させることが可能である。
【0075】
上記の実施形態では、主に自動掘削の制御を実行する場合に作業機2の出力を上昇させる方式について説明したが特に自動掘削の制御の際に限られず、通常の掘削制御を実行する場合にも同様に適用可能である。具体的には、コントローラ26からの制御の状態に関するデータの入力に基づいて掘削状態と判断した場合には、図4で説明したフローを実行するようにしてもよい。例えば、ステップS2における自動掘削モードであるか否かの判断処理の代わりに、掘削状態であるか否かを判断する処理を実行して、掘削状態であれば図4で説明したステップS2以降のフローを実行するようにしてもよい。あるいは、視覚センサを用いてバケット8の刃先が地面に入ったと判断した場合には、掘削状態であると判断して図4で説明したステップS2以降のフローを実行するようにしてもよい。あるいは、作業機の姿勢に基づいて掘削状態であると判断した場合には、図4で説明したステップS2以降のフローを実行するようにしてもよい。
【0076】
上記の実施形態では、バケット速度検出部104は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12からのシリンダ長のデータに基づいて作業機2のバケット8の速度を算出する方式について説明したが、これに限られず、IMU(inertial measurement unit)を用いてバケット8の速度を検出しても良い。
【0077】
運転室4の前面に取り付けた視覚センサ(Lidar、ステレオカメラ等)を用いて、バケット8の特徴量を取得し、当該特徴量の動きに基づいてバケット8の速度を検出してもよい。あるいは、バケット8にマーカを取り付けて当該マーカの動きに基づいてバケット8の速度を検出しても良い。
【0078】
上記の実施形態では、作業機械の一例として油圧ショベルを挙げているが油圧ショベルに限らず、ブルドーザ、ホイールローダ等の他の種類の作業機械にも適用可能である。
【0079】
以上、本開示の実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
1 車両本体、2 作業機、3 旋回体、4 運転室、4S 運転席、5 走行装置、5Cr 履帯、6 ブーム、7 アーム、8 バケット、8A 刃先、9 エンジンルーム、10 ブームシリンダ、11 アームシリンダ、12 バケットシリンダ、13 ブームピン、14 アームピン、15 バケットピン、19 手すり、21 アンテナ、21A 第1アンテナ、21B 第2アンテナ、26 コントローラ、30 エンジンコントローラ、32 ポンプ圧力センサ、38 エンジン、40 油圧ポンプ、44 リリーフ弁、46 自己圧減圧弁、50 EPC弁。
図1
図2
図3
図4
図5