IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ヨコオの特許一覧

<>
  • 特許-アンテナ装置 図1
  • 特許-アンテナ装置 図2
  • 特許-アンテナ装置 図3
  • 特許-アンテナ装置 図4
  • 特許-アンテナ装置 図5
  • 特許-アンテナ装置 図6
  • 特許-アンテナ装置 図7
  • 特許-アンテナ装置 図8
  • 特許-アンテナ装置 図9
  • 特許-アンテナ装置 図10
  • 特許-アンテナ装置 図11
  • 特許-アンテナ装置 図12
  • 特許-アンテナ装置 図13
  • 特許-アンテナ装置 図14
  • 特許-アンテナ装置 図15
  • 特許-アンテナ装置 図16
  • 特許-アンテナ装置 図17
  • 特許-アンテナ装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20231017BHJP
   H01Q 21/24 20060101ALI20231017BHJP
   H01Q 23/00 20060101ALI20231017BHJP
   H01Q 5/40 20150101ALI20231017BHJP
   H01Q 5/10 20150101ALI20231017BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q21/24
H01Q23/00
H01Q5/40
H01Q5/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019137639
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021022809
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】山保 威
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-054917(JP,A)
【文献】特開2018-191111(JP,A)
【文献】特開平08-008638(JP,A)
【文献】特開2014-022925(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159668(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H01Q 21/24
H01Q 23/00
H01Q 5/40
H01Q 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する基板と、
前記基板の前記第1面から離間して前記基板の前記第1面側に位置し、開口を有する第1導電板と、前記第1導電板と前記基板とを電気的に接続する第1導電部と、を有し、第1周波数帯用の第1エレメントと、
前記基板の前記第1面から離間して前記基板の前記第1面側に位置する第2導電板と、前記第2導電板と前記基板とを電気的に接続する第2導電部と、を有し、前記第1周波数帯より高い第2周波数帯用の第2エレメントと、
を備え、
前記第2導電板は、前記第1導電板の前記開口の内側に位置し、前記第1面に平行な平面において前記第1導電板と重ならず、
前記第1導電部及び前記第2導電部は、前記第1導電板又は前記第2導電板の中心を挟んで互いに反対側に位置するアンテナ装置。
【請求項2】
前記基板の前記第1面から前記第2エレメントの前記第2導電板までの距離は、前記基板の前記第1面から前記第1エレメントの前記第1導電板までの距離以上である、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1エレメントは、複数の前記第1導電部を有し、
前記第2エレメントは、複数の前記第2導電部を有する、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1エレメントは、前記第1導電板の中心周りに90°間隔で位置する少なくとも2つの前記第1導電部と、前記第1導電板の中心周りにおいて前記2つの第1導電部の間に位置する第3導電部と、を有し、
前記第2エレメントは、前記第2導電板の中心周りに90°間隔で位置する少なくとも2つの前記第2導電部と、前記第2導電板の中心周りにおいて前記2つの第2導電部の間に位置する第4導電部と、を有し、
前記第3導電部と前記第4導電部とは、前記第1導電板又は前記第2導電板の中心を挟んで互いに反対側に位置している、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1エレメントのうちの前記第1導電板から前記第1導電部にかけての部分は、前記基板の前記第1面に沿う方向から前記第1面に向かう方向に向けて折り曲げられており、
前記第2エレメントのうちの前記第2導電板から前記第2導電部にかけての部分は、前記基板の前記第1面に沿う方向から前記第1面に向かう方向に向けて折り曲げられている、請求項1から4までのいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1導電板と前記基板との間と、前記第2導電板と前記基板との間と、のうちの少なくとも一方に位置する誘電体をさらに備える、請求項1から5までのいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第1エレメントの前記第1導電板は、前記開口を画定する内縁と、前記内縁の外側に位置する外縁と、を有し、
前記第1導電部は、前記第1導電板の前記外縁に電気的に接続されている、請求項1から6までのいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第1エレメントの前記第1導電板は、前記開口を画定する内縁と、前記内縁の外側に位置する外縁と、を有し、
前記第1導電板の前記外縁は、直線状となっている、請求項1から7までのいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第1周波数帯は、GNSS帯であり、
前記第2周波数帯は、SXM帯である、請求項1から8までのいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数のエレメントを備えるアンテナ装置が開発されている。例えば特許文献1に記載されているように、積層型パッチアンテナを備えるアンテナ装置が開発されている。特許文献1のアンテナ装置は、基板(例えば、プリント回路板(PCB))、第1パッチアンテナ及び第2パッチアンテナを備えている。第1パッチアンテナは、第1周波数帯(例えば、Satellite Digital Audio Radio Service(SDARS)周波数帯)用に調整されている。第2パッチアンテナは、第2周波数帯(例えば、Global Positioning System(GPS)周波数帯)用に調整されている。第2パッチアンテナは、基板上に位置している。第1パッチアンテナは、第2パッチアンテナ上に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第7277056号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、複数のエレメントを備えるアンテナ装置の製造を容易にすることを検討した。例えば、特許文献1のアンテナ装置では、第1パッチアンテナ及び第2パッチアンテナの誘電体材料のばらつきに応じてアンテナ装置の特性(例えば、共振周波数)が変動することがある。このため、アンテナ装置の特性の変動を抑制するために、アンテナ装置の製造に複雑なプロセスが要求されることがある。
【0005】
本発明の目的の一例は、アンテナ装置の製造を容易にすることにある。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
第1面を有する基板と、
前記基板の前記第1面から離間して前記基板の前記第1面上に位置し、開口を有する第1導電板と、前記第1導電板と前記基板とを電気的に接続する第1導電部と、を有する第1エレメントと、
前記基板の前記第1面から離間して前記基板の前記第1面上に位置する第2導電板と、前記第2導電板と前記基板とを電気的に接続する第2導電部と、を有する第2エレメントと、
を備え、
前記第2導電板は、前記第1導電板の前記開口の内側に位置するアンテナ装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上述した態様によれば、アンテナ装置の製造を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るアンテナ装置の斜視図である。
図2図1に示した第1エレメントを図1とは反対側から見た斜視図である。
図3図1に示した第2エレメントを図1とは反対側から見た斜視図である。
図4図1に示した基板の第1面の平面図である。
図5図1に示した基板の第2面の平面図である。
図6図1に示したアンテナ装置の一部を示すブロック図である。
図7】第1エレメントの第1給電部(図6の観測点P1)及び第2給電部(図6の観測点P2)のそれぞれにおけるVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)の周波数特性の一例を示すグラフである。
図8】第2エレメントの第1給電部(図6の観測点P3)及び第2給電部(図6の観測点P4)のそれぞれにおけるVSWRの周波数特性の一例を示すグラフである。
図9】第1ハイブリッド回路のうちのダイプレクサに接続された部分(図6の観測点P5)におけるVSWRの周波数特性の一例を示すグラフである。
図10】第2ハイブリッド回路のうちのダイプレクサに接続された部分(図6の観測点P6)におけるVSWRの周波数特性の一例を示すグラフである。
図11】ダイプレクサの入出力部(図6の観測点P7)におけるVSWRの周波数特性の一例を示すグラフである。
図12】第1エレメントの利得(dBi)の指向特性の一例を示す図である。
図13】第1エレメントの軸比(dB)の指向特性の一例を示す図である。
図14】第2エレメントの利得(dBi)の指向特性の一例を示す図である。
図15】第2エレメントの軸比(dB)の指向特性の一例を示す図である。
図16】第1エレメント及び第2エレメントのそれぞれの高さと、第2エレメントの利得の指向特性と、の関係の一例を示すグラフである。
図17】第1の変形例に係るアンテナ装置を示す斜視図である。
図18】第2の変形例に係るアンテナ装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。以下で説明する本実施形態に係るアンテナ装置は、例えば、車載用アンテナ装置として利用することが可能であり、また、車載用以外でもその用途に応じて様々な装置に利用することが可能である。
【0010】
本明細書において、「第1」、「第2」、「第3」等の序数詞は、特に断りのない限り、同様の名称が付された構成を単に区別するために付されたものであり、構成の特定の特徴(例えば、順番又は重要度)を意味するものではない。
【0011】
図1は、実施形態に係るアンテナ装置10の斜視図である。図2は、図1に示した第1エレメント100を図1とは反対側から見た斜視図である。図3は、図1に示した第2エレメント200を図1とは反対側から見た斜視図である。
【0012】
図1を用いて、アンテナ装置10の概要を説明する。アンテナ装置10は、第1エレメント100、第2エレメント200及び基板300を備えている。基板300は、第1面302及び第2面304を有している。第2面304は、第1面302の反対側にある。第1エレメント100は、第1導電板110、2つの第1導電部120及び4つの第3導電部130を有している。第2エレメント200は、第2導電板210、2つの第2導電部220及び4つの第4導電部230を有している。第1導電板110は、基板300の第1面302から離間して基板300の第1面302上に位置している。第1導電板110は、第1面302に対向している。第1導電板110は、第1面302に対向していればよく、平行であっても傾斜していてもよい。また、第1導電板110は、開口112を有している。各第1導電部120は、第1導電板110に接続され、第1導電板110と基板300とを電気的に接続している。各第3導電部130は、第1導電板110に接続され、基板300に挿入されている。第2導電板210は、基板300の第1面302から離間して基板300の第1面302上に位置している。第2導電板210は、第1面302に対向している。第2導電板210は、第1面302に対向していればよく、平行であっても傾斜していてもよい。基板300の第1面302に垂直な方向から見て、第2導電板210は、第1導電板110の開口112の内側に位置している。各第2導電部220は、第2導電板210に接続され、第2導電板210と基板300とを電気的に接続している。各第4導電部230は、第2導電板210に接続され、基板300に挿入されている。
【0013】
本実施形態によれば、第1エレメント100の特性(例えば、共振周波数)は、例えば、第1導電板110の形状の調整、第1導電板110と基板300との間の距離の調整等の簡易な方法によって調整可能となっている。第2エレメント200の特性も、同様にして、簡易な方法によって調整可能になっている。したがって、アンテナ装置10の製造を容易にすることができる。
【0014】
図1から図3を用いて、アンテナ装置10の詳細を説明する。
【0015】
本実施形態において、第1エレメント100及び第2エレメント200は、互いに異なる共振周波数を有している。例えば、第2エレメント200の共振周波数は、第1エレメント100の共振周波数より高くなっている。ただし、第2エレメント200の共振周波数は、第1エレメント100の共振周波数より低くなっていてもよいし、又は同じであってもよい。より具体的には、本実施形態において、第1エレメント100は、GNSS(Global Navigation Satellite System)帯用アンテナ(例えば、GPS(Global Positioning Satellite)帯用アンテナ)として機能し、かつ第2エレメント200は、SXM(Sirius XM)帯用アンテナとして機能する。ただし、本明細書の記載から明らかなように、本実施形態と同様の構成は、上述したアンテナと異なるアンテナにも適用可能である。
【0016】
本実施形態において、基板300の第1面302から第2エレメント200の第2導電板210までの距離は、基板300の第1面302から第1エレメント100の第1導電板110までの距離以上になっている。具体的には、基板300の第1面302に垂直な方向において、基板300の第1面302から第2エレメント200の第2導電板210までの最短距離は、基板300の第1面302から第1エレメント100の第1導電板110までの最短距離以上になっている。この場合、後述するように、第2エレメント200の利得を良好にすることができる。ただし、基板300の第1面302に垂直な方向において、基板300の第1面302から第2エレメント200の第2導電板210までの最短距離は、基板300の第1面302から第1エレメント100の第1導電板110までの最短距離より短くてもよい。
【0017】
第1エレメント100は、板金からなっている。具体的には、第1導電板110、第1導電部120及び第3導電部130は、一体となっている。言い換えると、第1導電部120及び第3導電部130は、第1導電板110に物理的に結合されている。さらに、第1エレメント100のうちの第1導電板110から第1導電部120及び第3導電部130にかけての部分は、基板300の第1面302に沿う方向から基板300の第1面302に向かう方向に向けて折り曲げられている。第1エレメント100は、板金を折り曲げて形成されている。このため、第1導電部120及び第3導電部130を第1導電板110に溶接によって取り付ける場合と比較して、第1エレメント100を容易に製造することができる。ただし、第1エレメント100の製造方法は、この例に限定されない。例えば、第1導電部120及び第3導電部130の少なくとも一方は、板金の折り曲げでなく、例えば溶接による第1導電板110への第1導電部120又は第3導電部130の取り付けによって、第1導電板110と一体となっていてもよい。
【0018】
第1導電板110は、開口112を画定する内縁と、この内縁の外側に位置する外縁と、を有している。第1導電板110の内縁は、四角形の領域(開口112)となっている。ただし、第1導電板110の内縁の形状は、上記四角形状に限定されず、例えば円形や多角形であってもよい。第1導電板110の外縁は、矩形の領域(この四角形は、厳密な四角形でなくてもよい。第3導電部130が第1導電板110から基板300の第1面302に向かう方向に折り曲げられることによって、四角形の四隅が切り取られているような形状となる。すなわち、第1導電板110の外縁の形状は、厳密には、八角形となっている。)となっている。第1導電板110の外縁は、第1導電板110の内側に向けて凹んだ切片又は第1導電板110の外側に向けて突出した突起を有していない。すなわち、第1導電板110の外縁の各辺は、直線状になっている。したがって、第1導電板110の外縁が第1導電板110の内側に向けて凹んだ切片又は第1導電板110の外側に向けて突出した突起を有している場合と比較して、第1エレメント100を折り曲げやすく、第1エレメント100の成型が容易となっている。さらに、第1導電板110の外縁が第1導電板110の内側に向けて凹んだ切片又は第1導電板110の外側に向けて突出した突起を有している場合と比較して、第1導電板110の外縁の各辺の長さ(電気長も含む)の調整が容易であり、第1エレメント100の設計が容易となっている。ただし、第1導電板110の外縁の形状は、上記形状に限定されず、例えば円であってもよい。また、第1導電板110の外縁は、上述した切片又は突起を有していてもよい。
【0019】
4つの第3導電部130(第3導電部130a、第3導電部130b、第3導電部130c及び第3導電部130d)は、第1導電板110の中心周りに90°間隔で位置している。したがって、4つ未満(例えば、2つ)の第3導電部130が設けられている場合と比較して、第1エレメント100を4つの第3導電部130によって基板300に安定して支持することができる。各第3導電部130は、例えばハンダ(不図示)によって、基板300に固定される。本実施形態では、4つの第3導電部130は、第1導電板110の外縁に接続されている。より詳細には、4つの第3導電部130は、第1導電板110の外縁の四隅に接続されている。このようにして、各第3導電部130は、第1導電板110の外縁に電気的に接続されている。ただし、第3導電部130の数及び配置は、図1及び図2に示す例に限定されない。
【0020】
2つの第1導電部120(第1導電部120a及び第1導電部120b)は、第1導電板110の中心周りに90°間隔で位置している。2つの第1導電部120によって2つの給電点が形成される。したがって、第1エレメント100は、円偏波の電波を送受信可能になっている。第3導電部130だけでなく、第1導電部120も用いることで、第1エレメント100を基板300により安定して支持することができる。各第1導電部120は、例えばハンダ(不図示)によって、基板300に固定される。本実施形態では、2つの第1導電部120は、第1導電板110の外縁に接続されている。より詳細には、第1導電部120aは、第1導電板110の外縁のうちの第3導電部130aと第3導電部130bとの間の中心部分に接続されており、第1導電部120bは、第1導電板110の外縁のうちの第3導電部130aと第3導電部130dとの間の中心部分に接続されている。このようにして、各第1導電部120は、第1導電板110の外縁に電気的に接続されている。本実施形態では、第1導電板110の外縁に位置する第1導電部120を基板300の第1面302に向かう方向に折り曲げることで第1エレメント100を形成することができる。このため、第1導電部120が第1導電板110の内縁に接続されている場合と比較して、第1エレメント100を折り曲げやすく、第1エレメント100の製造が容易となっている。ただし、第1導電部120の数及び配置は、図1及び図2に示す例に限定されない。例えば、第1導電部120は、第1導電板110の内縁に接続されていてもよい。また、第1導電部120の数は、給電点が1つのみ形成されるように、1つのみであってもよいし、給電点が3つ以上形成されるように、3つ以上であってもよい。また、第1導電部120の数が複数であっても、給電点の数が第1導電部120の数よりも少なくなっていてもよい。この場合、給電点が形成されていない第1導電部120は、第1エレメント100の支持部として機能している。
【0021】
第2エレメント200は、板金からなっている。具体的には、第2導電板210、第2導電部220及び第4導電部230は、一体となっている。言い換えると、第2導電部220及び第4導電部230は、第2導電板210に物理的に結合されている。さらに、第2エレメント200のうちの第2導電板210から第2導電部220及び第4導電部230にかけての部分は、基板300の第1面302に沿う方向から基板300の第1面302に向かう方向に向けて折り曲げられている。第2エレメント200は、板金を折り曲げて形成されている。このため、第2導電部220及び第4導電部230を第2導電板210に溶接によって取り付ける場合と比較して、第2エレメント200を容易に製造することができる。ただし、第2エレメント200の製造方法は、この例に限定されない。例えば、第2導電部220及び第4導電部230の少なくとも一方は、板金の折り曲げでなく、例えば溶接による第2導電板210への第2導電部220又は第4導電部230の取り付けによって、第2導電板210と一体となっていてもよい。
【0022】
第2導電板210は、四角形の形状(この四角形は、厳密な四角形でなくてもよい。第4導電部230が第2導電板210から基板300の第1面302に向かう方向に折り曲げられることによって、四角形の四隅が切り取られているような形状となる。すなわち、第2導電板210の形状は、厳密には八角形となっている。)を有している。第2導電板210の外縁は、第2導電板210の内側に向けて凹んだ切片又は第2導電板210の外側に向けて突出した突起を有していない。すなわち、第2導電板210の外縁の各辺は、直線状になっている。したがって、第2導電板210の外縁が第2導電板210の内側に向けて凹んだ切片又は第2導電板210の外側に向けて突出した突起を有している場合と比較して、第2エレメント200を折り曲げやすく、第2エレメント200の成型が容易となっている。さらに、第2導電板210の外縁が第2導電板210の内側に向けて凹んだ切片又は第2導電板210の外側に向けて突出した突起を有している場合と比較して、第2導電板210の外縁の各辺の長さ(電気長も含む)の調整が容易であり、第2エレメント200の設計が容易となっている。ただし、第2導電板210の形状は、上記形状に限定されず、例えば円形や多角形であってもよい。また、第2導電板210の外縁は、上述した切片又は突起を有していてもよい。
【0023】
4つの第4導電部230(第4導電部230a、第4導電部230b、第4導電部230c及び第4導電部230d)は、第2導電板210の中心周りに90°間隔で位置している。したがって、4つ未満(例えば、2つ)の第4導電部230が設けられている場合と比較して、第2エレメント200を4つの第4導電部230によって基板300に安定して支持することができる。各第4導電部230は、例えばハンダ(不図示)によって、基板300に固定される。本実施形態では、4つの第4導電部230は、第2導電板210の外縁に接続されている。より詳細には、4つの第4導電部230は、第2導電板210の外縁の四隅に接続されている。このようにして、各第4導電部230は、第2導電板210の外縁に電気的に接続されている。ただし、第4導電部230の数及び配置は、図1及び図3に示す例に限定されない。
【0024】
2つの第2導電部220(第2導電部220a及び第2導電部220b)は、第2導電板210の中心周りに90°間隔で位置している。2つの第2導電部220によって2つの給電点が形成される。したがって、第2エレメント200は、円偏波の電波を送受信可能になっている。第4導電部230だけでなく、第2導電部220も用いることで、第2エレメント200を基板300により安定して支持することができる。各第2導電部220は、例えばハンダ(不図示)によって、基板300に固定される。本実施形態では、2つの第2導電部220は、第2導電板210の外縁に接続されている。より詳細には、第2導電部220aは、第2導電板210の外縁のうちの第4導電部230bと第4導電部230cとの間の中心部分に接続されており、第2導電部220bは、第2導電板210の外縁のうちの第4導電部230cと第4導電部230dとの間の中心部分に接続されている。このようにして、各第2導電部220は、第2導電板210の外縁に電気的に接続されている。ただし、第2導電部220の数及び配置は、図1及び図3に示す例に限定されない。例えば、第2導電部220の数は、給電点が1つのみ形成されるように、1つのみであってもよいし、給電点が3つ以上形成されるように、3つ以上であってもよい。また、第2導電部220の数が複数であっても、給電点の数が第2導電部220の数よりも少なくなっていてもよい。この場合、給電点が形成されていない第2導電部220は、第2エレメント200の支持部として機能している。
【0025】
本実施形態において、第1導電板110の中心周りにおいて2つの第1導電部120の間に位置する第3導電部130(第3導電部130a)と、第2導電板210の中心周りにおいて2つの第2導電部220の間に位置する第4導電部230(第4導電部230c)とは、第1導電板110又は第2導電板210の中心を挟んで互いに反対側に位置している。2つの第1導電部120と2つの第2導電部220とは、第1導電板110又は第2導電板210の中心を挟んで対称な位置に位置している。したがって、第1エレメント100の2つの第1導電部120と、第2エレメント200の2つの第2導電部220と、を十分な距離を置いて互いに離すことができる。したがって、第1エレメント100と第2エレメント200との間のアイソレーションを確保することができる。ただし、第1エレメント100及び第2エレメント200のレイアウトは、この例に限定されるものではない。
【0026】
本実施形態において、アンテナ装置10は、2つのエレメント(第1エレメント100及び第2エレメント200)を備えている。ただし、アンテナ装置10は、他のエレメントをさらに備えていてもよい。他のエレメントは、例えば、第2エレメント200を囲むように第2エレメント200の外側に位置していてもよい。
【0027】
本実施形態において、第1エレメント100は、第3導電部130を有している。ただし、第1エレメント100は、第3導電部130を有していなくてもよい。第1エレメント100が第3導電部130を有していないときであっても、第1導電部120によって第1導電板110を基板300の第1面302から離間して支持することができる。同様にして、第2エレメント200は、第4導電部230を有していなくてもよい。
【0028】
本実施形態において、第1導電板110の中心と、第2エレメント200の中心とは、互いに一致している。ただし、第1導電板110の中心と、第2エレメント200の中心とは、互いにずれていてもよい。
【0029】
本実施形態において、第1エレメント100及び第2エレメント200は、基板300に接地するための導電部を有していない。したがって、このような導電部の形成の必要がなく、第1エレメント100及び第2エレメント200の製造が容易となっている。ただし、第1エレメント100及び第2エレメント200のうちの少なくとも一方は、基板300に接地するための導電部を有していてもよい。
【0030】
本実施形態において、第1導電部120及び第3導電部130は、第1導電板110に物理的に直接接続されている。ただし、第1導電部120及び第3導電部130は、第1導電板110から物理的に離間していてもよく、導電部材(例えば、銅線)を介して、第1導電板110に電気的に接続されていてもよい。同様にして、本実施形態において、第2導電部220及び第4導電部230は、第2導電板210に物理的に直接接続されている。ただし、第2導電部220及び第4導電部230は、第2導電板210から物理的に離間していてもよく、導電部材(例えば、銅線)を介して、第2導電板210に電気的に接続されていてもよい。
【0031】
本実施形態において、第1導電部120及び第3導電部130は、導電板となっている。ただし、第1導電部120及び第3導電部130は、例えば、銅線等の導電性の線であってもよい。第1導電部120は、第1導電板110及び基板300を電気的に接続できればよい。同様にして、第2導電部220及び第4導電部230は、導電板となっている。ただし、第2導電部220及び第4導電部230は、例えば、銅線等の導電性の線であってもよい。第2導電部220は、第2導電板210及び基板300を電気的に接続できればよい。
【0032】
本実施形態では、第2エレメント200を構成する全ての部材(第2導電板210、第2導電部220、第4導電部230)が第1導電板110の開口112の内側に位置している。ただし、第2エレメント200を構成する一部の部材、例えば、第2導電部220は、第1エレメント100の第1導電板110の開口112の内側以外に位置するようにしてもよい。第2エレメント200の第2導電板210を第1エレメント100の第1導電板110の開口112の内側に位置するようにすれば、他は様々な構成を採用することもできる。
【0033】
図4は、図1に示した基板300の第1面302の平面図である。図5は、図1に示した基板300の第2面304の平面図である。
【0034】
図1から図3を参照しつつ図4及び図5を用いて、アンテナ装置10の詳細を説明する。
【0035】
基板300は、例えば、プリント基板(PCB)である。基板300は、2つの第1孔310(第1孔310a及び第1孔310b)、4つの第2孔320(第2孔320a、第2孔320b、第2孔320c及び第2孔320d)、2つの第3孔330(第3孔330a及び第3孔330b)及び4つの第4孔340(第4孔340a、第4孔340b、第4孔340c及び第4孔340d)を有している。基板300は、第1ハイブリッド回路350a、第2ハイブリッド回路350b及びダイプレクサ360をさらに有している。基板300は、配線352a、配線352b、配線352c、配線352d、配線362a及び配線362bをさらに有している。一例において、基板300の中で第1孔310、第2孔320、第3孔330及び第4孔340とその周囲の領域とを除いた領域のうち、第1エレメント100の第1導電板110と重なる領域と、第2エレメント200の第2導電板210と重なる領域とは、固定電位(例えば、接地電位)が印加された導電性パターンを有していてもよい。
【0036】
2つの第1孔310のそれぞれには、互いに異なる第1導電部120が挿入される。すなわち、第1導電部120a及び第1導電部120bは、第1孔310a及び第1孔310bにそれぞれ挿入される。第1孔310aに挿入された第1導電部120aは、配線352aを介して第1ハイブリッド回路350aに電気的に接続される。第1孔310bに挿入された第1導電部120bは、配線352bを介して第1ハイブリッド回路350aに電気的に接続される。第1ハイブリッド回路350aは、配線362aを介してダイプレクサ360に電気的に接続されている。
【0037】
4つの第2孔320のそれぞれには、互いに異なる第3導電部130が挿入される。すなわち、第3導電部130a、第3導電部130b、第3導電部130c及び第3導電部130dは、第2孔320a、第2孔320b、第2孔320c及び第2孔320dにそれぞれ挿入される。基板300の第2面304側において、各第2孔320は、第1固定パターン322に囲まれている。なお、各第2孔320の一部が第1固定パターン322に囲まれていなくてもよい。第1固定パターン322は、第3導電部130を基板300に固定するために設けられている。第3導電部130のうちの基板300に挿入された部分と第1固定パターン322を例えばハンダ付けすることで、第3導電部130を基板300に固定する。第1固定パターン322は、第3導電部130のうちの基板300に挿入された部分を囲み、かつ第3導電部130の当該部分から、例えば、スペースを介して、離間する。したがって、第3導電部130と第1固定パターン322との間に容量を形成することができる。さらに、第3導電部130と第1固定パターン322との間の距離に応じて、この容量を調整して、第1エレメント100の共振周波数を調整することができる。
【0038】
2つの第3孔330のそれぞれには、互いに異なる第2導電部220が挿入される。すなわち、第2導電部220a及び第2導電部220bは、第3孔330a及び第3孔330bにそれぞれ挿入される。第3孔330aに挿入された第2導電部220aは、配線352cを介して第2ハイブリッド回路350bに電気的に接続される。第3孔330bに挿入された第2導電部220bは、配線352dを介して第2ハイブリッド回路350bに電気的に接続される。第2ハイブリッド回路350bは、配線362bを介してダイプレクサ360に電気的に接続されている。
【0039】
4つの第4孔340のそれぞれには、互いに異なる第4導電部230が挿入される。すなわち、第4導電部230a、第4導電部230b、第4導電部230c及び第4導電部230dは、第4孔340a、第4孔340b、第4孔340c及び第4孔340dにそれぞれ挿入される。基板300の第2面304側において、各第4孔340は、第2固定パターン342に囲まれている。なお、各第4孔340の一部が第2固定パターン342に囲まれていなくてもよい。第2固定パターン342は、第4導電部230を基板300に固定するために設けられている。第4導電部230のうちの基板300に挿入された部分と第2固定パターン342を例えばハンダ付けすることで、第4導電部230を基板300に固定する。第2固定パターン342は、第4導電部230のうちの基板300に挿入された部分を囲み、かつ第4導電部230の当該部分から、例えば、スペースを介して、離間する。したがって、第4導電部230と第2固定パターン342との間に容量を形成することができる。さらに、第4導電部230と第2固定パターン342との間の距離に応じて、この容量を調整して、第2エレメント200の共振周波数を調整することができる。
【0040】
第1固定パターン322は、第1導電部120と第1固定パターン322との間だけでなく、第1導電板110と第1固定パターン322との間にも実効的な容量が形成されるように配置されている。例えば、第1導電板110と第1固定パターン322とが重なり合う領域の面積が大きくなるように第1固定パターン322の面積を大きくして、第1導電板110と第1固定パターン322との間の容量を大きくすることができる。これにより、第1エレメント100の共振周波数を下げることができる。また、第2固定パターン342は、第2導電板210と第2固定パターン342との間に実効的な容量が形成されるように配置されている。同様に、第2導電板210と第2固定パターン342とが重なり合う領域の面積が大きくなるように第2固定パターン342の面積を大きくして、第2導電板210と第2固定パターン342との間の容量を大きくすることができる。これにより、第2エレメント200の共振周波数を下げることができる。
【0041】
図6は、図1に示したアンテナ装置10を示すブロック図である。図1から図5を参照しつつ図6を用いて、アンテナ装置10の動作の一例を説明する。
【0042】
アンテナ装置10が電波を受信するとき、第1ハイブリッド回路350aは、第1エレメント100の第1導電部120aから出力された信号(後述する観測点P1を通る信号)の位相と、第1エレメント100の第1導電部120bから出力された信号(後述する観測点P2を通る信号)の位相と、を互いに90°ずらして、位相が互いに90°ずれたこれらの信号の合成によって生成される合成信号(後述する観測点P5を通る信号)をダイプレクサ360に出力する。一方、第2ハイブリッド回路350bは、第2エレメント200の第2導電部220aから出力された信号(後述する観測点P3を通る信号)の位相と、第2エレメント200の第2導電部220bから出力された信号(後述する観測点P4を通る信号)の位相と、を互いに90°ずらして、位相が互いに90°ずれたこれらの信号の合成によって生成される合成信号(後述する観測点P6を通る信号)をダイプレクサ360に出力する。ダイプレクサ360は、第1ハイブリッド回路350aから出力された合成信号(後述する観測点P5を通る信号)と、第2ハイブリッド回路350bから出力された合成信号(後述する観測点P6を通る信号)と、を合成することで生成される信号(後述する観測点P7を通る信号)を出力する。
【0043】
アンテナ装置10が電波を送信するとき、ダイプレクサ360は、ダイプレクサ360に入力された信号(後述する観測点P7を通って入力された信号)を2つの信号(後述する観測点P5を通る信号と観測点P6を通る信号)に分離して、分離された2つの信号の一方及び他方を第1ハイブリッド回路350a及び第2ハイブリッド回路350bにそれぞれ出力する。第1ハイブリッド回路350aは、ダイプレクサ360から出力された信号(後述する観測点P5を通る信号)を2つの信号(後述する観測点P1を通る信号と観測点P2を通る信号)に分割し、これら2つの信号の位相を互いに90°ずらして、位相が互いに90°ずれたこれら2つの信号の一方及び他方を第1エレメント100の第1導電部120a及び第1導電部120bにそれぞれに出力する。そして、第1導電板110により円偏波の電波を送信する。一方、第2ハイブリッド回路350bは、ダイプレクサ360から出力された信号(後述する観測点P6を通る信号)を2つの信号(後述する観測点P3を通る信号と観測点P4を通る信号)に分割し、これら2つの信号の位相を互いに90°ずらして、位相が互いに90°ずれたこれら2つの信号の一方及び他方を第2エレメント200の第2導電部220a及び第2導電部220bにそれぞれ出力する。そして、第2導電板210により円偏波の電波を送信する。
【0044】
次に、図7から図15を用いて、実施形態に係るアンテナ装置10の各種特性のシミュレーション結果を説明する。図7から図15では、第1エレメント100のサイズは、45mm×45mm×8mmであり、第2エレメント200のサイズは、25mm×25mm×9mmである。すなわち、第2エレメント200の高さ(9mm)は、第1エレメント100の高さ(8mm)よりも高くなっている。第1エレメント100の高さは、基板300の第1面302に垂直な方向における、基板300の第1面302から第1エレメント100の第1導電板110までの最短距離である。第2エレメント200の高さは、基板300の第1面302に垂直な方向における、基板300の第1面302から第2エレメント200の第2導電板210までの最短距離である。図7から図15において、第1エレメント100は、GPS周波数帯においてアンテナとして動作しており、及び第2エレメント200は、SXM周波数帯においてアンテナとして動作している。
【0045】
図7は、第1エレメント100の第1給電部(図6の観測点P1、図1の第1導電部120a)及び第2給電部(図6の観測点P2、図1の第1導電部120b)のそれぞれにおけるVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)の周波数特性の一例を示すグラフである。観測点P1及び観測点P2におけるVSWRは、周波数1525MHz付近において、おおよそ3となっている。
【0046】
図8は、第2エレメント200の第1給電部(図6の観測点P3、図1の第2導電部220a)及び第2給電部(図6の観測点P4、図1の第2導電部220b)のそれぞれにおけるVSWRの周波数特性の一例を示すグラフである。観測点P3及び観測点P4におけるVSWRは、周波数2340MHz付近において、おおよそ2となっている。
【0047】
図9は、第1ハイブリッド回路350aのうちのダイプレクサ360に接続された部分(図6の観測点P5)におけるVSWRの周波数特性の一例を示すグラフである。観測点P5におけるVSWRは、周波数1375.42MHzから1775.42MHzにかけて3未満となっている。
【0048】
図10は、第2ハイブリッド回路350bのうちのダイプレクサ360に接続された部分(図6の観測点P6)におけるVSWRの周波数特性の一例を示すグラフである。観測点P6におけるVSWRは、周波数2238.75MHzから2438.75MHzにかけて2未満となっている。
【0049】
図11は、ダイプレクサ360の入出力部(図6の観測点P7)におけるVSWRの周波数特性の一例を示すグラフである。観測点P7におけるVSWRは、周波数おおよそ1850MHz付近を除いて周波数1400MHzから2400MHzにかけて3未満となっている。
【0050】
図12は、第1エレメント100の利得(dBi)の指向特性の一例を示す図である。第1エレメント100の利得は、ボアサイト(図12において逆三角形の内部に1が記載された箇所)において0.6dBiとなっている。
【0051】
図13は、第1エレメント100の軸比(dB)の指向特性の一例を示す図である。第1エレメント100の軸比は、ボアサイト(図13において逆三角形の内部に1が記載された箇所)において4.3dBとなっている。
【0052】
図14は、第2エレメント200の利得(dBi)の指向特性の一例を示す図である。第2エレメント200の利得は、ボアサイト(図14において逆三角形の内部に1が記載された箇所)において1.8dBiとなっている。
【0053】
図15は、第2エレメント200の軸比(dB)の指向特性の一例を示す図である。第2エレメント200の軸比は、ボアサイト(図15において逆三角形の内部に1が記載された箇所)において3.1dBとなっている。
【0054】
次に、図16のシミュレーション結果を用いて、第1エレメント100の高さと第2エレメント200の高さとの関係がアンテナ装置10の特性に与え得る影響を説明する。
【0055】
図16は、第1エレメント100及び第2エレメント200のそれぞれの高さと、第2エレメント200の利得の指向特性と、の関係の一例を示すグラフである。図16の実施例1から実施例3のそれぞれにおけるアンテナ装置10は、VSWRがほぼ同じになるように調整されている。図16の下側から上側に向かう方向は、基板300の第1面302から第2エレメント200の第2導電板210に向かう方向になっている。
【0056】
図16の実施例1では、第2エレメント200の高さが第1エレメント100の高さより1mm高くなっている。すなわち、基板300の第1面302に垂直な方向において、基板300の第1面302から第2エレメント200の第2導電板210までの最短距離は、基板300の第1面302から第1エレメント100の第1導電板110までの最短距離より長くなっている。
【0057】
図16の実施例2では、第2エレメント200の高さが第1エレメント100の高さと等しくなっている。すなわち、基板300の第1面302に垂直な方向において、基板300の第1面302から第2エレメント200の第2導電板210までの最短距離は、基板300の第1面302から第1エレメント100の第1導電板110までの最短距離と等しくなっている。
【0058】
図16の実施例3では、第2エレメント200の高さが第1エレメント100の高さより1mm低くなっている。すなわち、基板300の第1面302に垂直な方向において、基板300の第1面302から第2エレメント200の第2導電板210までの最短距離は、基板300の第1面302から第1エレメント100の第1導電板110までの最短距離より短くなっている。
【0059】
図16の二点鎖線で囲まれた領域において、利得は、実施例3、実施例2及び実施例1の順に高くなっている。この結果から、第1導電板110に対する第2導電板210の高さが高いほど、放射効率が高いといえる。
【0060】
図17は、第1の変形例に係るアンテナ装置10を示す斜視図である。本変形例に係るアンテナ装置10は、以下の点を除いて、実施形態に係るアンテナ装置10と同様である。
【0061】
アンテナ装置10は、誘電体400をさらに備えている。誘電体400は、第1導電板110と基板300との間及び第2導電板210と基板300との間の双方に位置している。言い換えると、誘電体400は、第2導電板210と重なる領域から第1導電板110と重なる領域にかけて広がっている。誘電体400によって、第1導電板110と基板300との間の容量を増加させることができ、アンテナ装置10が誘電体400を備えていない場合に比べて、第1エレメント100の性能を維持したまま第1導電板110の大きさを小さくすることができる。同様にして、誘電体400によって、第2導電板210と基板300との間の容量を増加させることができ、アンテナ装置10が誘電体400を備えていない場合に比べて、第2エレメント200の性能を維持したまま第2導電板210の大きさを小さくすることができる。
【0062】
誘電体400は、中実であってもよいし、中空であってもよい。誘電体400は、基板300、第1導電板110又は第2導電板210に取り付けられた誘電体部材であってもよいし、又は基板300上に堆積された誘電体層であってもよい。誘電体400が誘電体層であるとき、第1導電板110及び第2導電板210は、誘電体層(誘電体400)上にパターニングによって形成されてもよい。図17に示す例では、第1エレメント100の各第1導電部120は、誘電体400の外側に位置しており、第2エレメント200の各第2導電部220は、誘電体400に形成された孔に挿入されている。第2導電部220を誘電体400に挿入することで、第2導電部220を誘電体400によって支持することができる。ただし、第1エレメント100の各第1導電部120も、誘電体400に形成された孔に挿入されていてもよい。第1導電部120を誘電体400に挿入することで、第1導電部120を誘電体400によって支持することができる。
【0063】
誘電体400の高さ(厚さ)は、第1導電板110と基板300との間の容量と、第2導電板210と基板300との間の容量と、に応じて変化させることができる。基板300の第1面302に垂直な方向において、誘電体400は、例えば、第1導電板110と基板300との間の領域の全体に亘って位置していてもよいし、又は第1導電板110と基板300との間の領域の一部分にのみ位置していてもよい。或いは、誘電体400は、例えば、第2導電板210と基板300との間の領域の全体に亘って位置していてもよいし、又は第2導電板210と基板300との間の領域の一部分にのみ位置していてもよい。
【0064】
本変形例おいて、第1エレメント100は、図1に示した第3導電部130を有していない。第1エレメント100が第3導電部130を有していていなくても、誘電体400上に第1導電板110を搭載することで、第1導電板110を基板300の第1面302から離間して位置させることができる。ただし、第1エレメント100は、第3導電部130を有していてもよい。この場合、第3導電部130は、誘電体400の外側に位置していてもよいし、又は誘電体400に形成された孔に挿入されていてもよい。同様にして、本変形例において、第2エレメント200は、図1に示した第4導電部230を有していない。ただし、第2エレメント200は、第4導電部230を有していてもよい。この場合、第4導電部230は、誘電体400に形成された孔に挿入されていてもよい。
【0065】
図18は、第2の変形例に係るアンテナ装置10を示す斜視図である。本変形例に係るアンテナ装置10は、以下の点を除いて、実施形態に係るアンテナ装置10と同様である。
【0066】
アンテナ装置10は、第1誘電体410及び第2誘電体420をさらに備えている。第1誘電体410は、第1導電板110と基板300との間に位置している。第2誘電体420は、第2導電板210と基板300との間に位置している。第1誘電体410及び第2誘電体420は、互いに離間している。第1誘電体410によって、第1導電板110と基板300との間の容量を増加させることができ、アンテナ装置10が第1誘電体410を備えていない場合に比べて、第1エレメント100の性能を維持したまま第1導電板110の大きさを小さくすることができる。同様にして、第2誘電体420によって、第2導電板210と基板300との間の容量を増加させることができ、アンテナ装置10が第2誘電体420を備えていない場合に比べて、第2エレメント200の性能を維持したまま第2導電板210の大きさを小さくすることができる。さらに、第1誘電体410と第2誘電体420とが互いに離間しているため、第1誘電体410と第2誘電体420とが図17に示すように互いに接続されている場合と比較して、第1導電板110と基板300との間の容量と、第2導電板210と基板300との間の容量と、を個別に調整することが容易となっている。
【0067】
第1誘電体410と第2誘電体420の各々は、中実であってもよいし、中空であってもよい。第1誘電体410は、基板300又は第1導電板110に取り付けられた誘電体部材であってもよいし、又は基板300上に堆積された誘電体層であってもよい。第1誘電体410が誘電体層であるとき、第1導電板110は、誘電体層(第1誘電体410)上にパターニングによって形成されてもよい。図18に示す例では、各第1導電部120は、第1誘電体410の外側に位置している。ただし、各第1導電部120は、第1誘電体410に形成された孔に挿入されていてもよい。この場合、第1誘電体410によって第1導電部120を支持することができる。第2誘電体420についても、第1誘電体410と同様の態様を採用することができる。
【0068】
第1誘電体410の高さ(厚さ)は、第1導電板110と基板300との間の容量に応じて変化させることができる。基板300の第1面302に垂直な方向において、第1誘電体410は、第1導電板110と基板300との間の領域の全体に亘って位置していてもよいし、又は第1エレメント100と基板300との間の領域の一部分にのみ位置していてもよい。第2誘電体420の高さ(厚さ)も同様にして決定することができる。
【0069】
本変形例では、第1導電板110と基板300との間と、第2導電板210と基板300との間と、の双方に誘電体が位置している。ただし、誘電体は、第1導電板110と基板300との間と、第2導電板210と基板300との間と、の一方のみに位置していてもよい。すなわち、第1導電板110と基板300との間と、第2導電板210と基板300との間と、のうちの少なくとも一方に誘電体が位置していてもよい。
【0070】
本変形例において、第1エレメント100は、図1に示した第3導電部130を有していない。第1エレメント100が第3導電部130を有していていなくても、第1誘電体410上に第1導電板110を搭載することで、第1導電板110を基板300の第1面302から離間して位置させることができる。ただし、第1エレメント100は、第3導電部130を有していてもよい。この場合、第3導電部130は、第1誘電体410の外側に位置していてもよいし、又は第1誘電体410に形成された孔に挿入されていてもよい。同様にして、本変形例において、第2エレメント200は、図1に示した第4導電部230を有していない。ただし、第2エレメント200は、図1に示した第4導電部230を有していてもよい。この場合、第4導電部230は、第2誘電体420の外側に位置していてもよいし、又は第2誘電体420に形成された孔に挿入されていてもよい。
【0071】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び変形例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0072】
10 アンテナ装置
100 第1エレメント
110 第1導電板
112 開口
120 第1導電部
120a 第1導電部
120b 第1導電部
130 第3導電部
130a 第3導電部
130b 第3導電部
130c 第3導電部
130d 第3導電部
200 第2エレメント
210 第2導電板
220 第2導電部
220a 第2導電部
220b 第2導電部
230 第4導電部
230a 第4導電部
230b 第4導電部
230c 第4導電部
230d 第4導電部
300 基板
302 第1面
304 第2面
310 第1孔
310a 第1孔
310b 第1孔
320 第2孔
320a 第2孔
320b 第2孔
320c 第2孔
320d 第2孔
322 第1固定パターン
330 第3孔
330a 第3孔
330b 第3孔
340 第4孔
340a 第4孔
340b 第4孔
340c 第4孔
340d 第4孔
342 第2固定パターン
350a 第1ハイブリッド回路
350b 第2ハイブリッド回路
352a 配線
352b 配線
352c 配線
352d 配線
360 ダイプレクサ
362a 配線
362b 配線
400 誘電体
410 第1誘電体
420 第2誘電体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18