(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】チップ型電流ヒューズ
(51)【国際特許分類】
H01H 85/046 20060101AFI20231017BHJP
H01H 85/08 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
H01H85/046
H01H85/08
(21)【出願番号】P 2019155013
(22)【出願日】2019-08-27
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 洋
(72)【発明者】
【氏名】小口 友規
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 淳
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09673012(US,B2)
【文献】特開2017-174654(JP,A)
【文献】特開平11-096885(JP,A)
【文献】特開2015-156308(JP,A)
【文献】特開2001-243862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
H01H 69/02
H01H 85/00 - 87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の表面における長手方向両端部に形成された第1表電極および第2表電極と、前記絶縁基板の裏面における長手方向両端部に形成された第1裏電極および第2裏電極と、前記絶縁基板の長手方向一端面に形成されて前記第1表電極と前記第1裏電極を接続する第1端面電極と、前記絶縁基板の長手方向他端面に形成されて前記第2表電極と前記第2裏電極を接続する第2端面電極と、前記第1表電極と前記第2表電極との間に
金属薄膜をパターニングして形成されたヒューズエレメントと、を備え、
前記ヒューズエレメントが、前記第1表電極を接続端として前記第2表電極の方向に延びる第1直線部と、前記第2表電極を接続端として前記第1直線部と平行に前記第1表電極の方向に延びる第2直線部と、これら第1直線部と第2直線部を連結する傾斜直線部とからなり、
前記傾斜直線部が前記第1直線部と前記第2直線部に対してそれぞれ鋭角に接続していることを特徴とするチップ型電流ヒューズ。
【請求項2】
請求項1に記載のチップ型電流ヒューズにおいて、
前記ヒューズエレメントは、前記傾斜直線部の中心を対称点とする点対称形状であることを特徴とするチップ型電流ヒューズ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のチップ型電流ヒューズにおいて、
前記傾斜直線部の中心から前記第1裏電極および前記第2裏電極に至る距離が、前記傾斜直線部の中心から前記第1表電極および前記第2表電極に至る距離よりも長く設定されていることを特徴とするチップ型電流ヒューズ。
【請求項4】
請求項1に記載のチップ型電流ヒューズにおいて、
前記第1表電極と前記第2表電極との間をエレメント形成領域とすると、前記第1裏電極と前記第2裏電極は前記エレメント形成領域を投影した裏面領域の外側に形成されていることを特徴とするチップ型電流ヒューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面実装タイプのチップ型電流ヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
チップ型電流ヒューズは、直方体形状の絶縁基板と、絶縁基板の表面における長手方向両端部に形成された一対の表電極と、一対の表電極間に形成されたヒューズエレメントと、ヒューズエレメントを被覆する保護層と、絶縁基板の裏面における長手方向両端部に形成された一対の裏電極と、絶縁基板の長手方向両端面に形成されて対応する表電極と裏電極を接続する一対の端面電極等により主として構成されている。
【0003】
このように構成されたチップ型電流ヒューズにおいては、一対の表電極間に所定の過電流が流れると、ヒューズエレメントに電流が集中して発熱を起こし、ヒューズエレメントが発熱によって溶断することにより、このチップ型電流ヒューズに接続された各種電子機器を保護するようになっている。
【0004】
ヒューズエレメントを一対の表電極間に一直線状に形成した場合、チップ型電流ヒューズの小型化に伴って表電極間の距離が短くなると、ヒューズエレメントの熱容量が小さくなって耐パルス性が悪くなってしまう。そこで従来、特許文献1に記載されているように、ヒューズエレメントを折り返し形状にすることにより、耐パルス性を良好にしたチップ型電流ヒューズが提案されている。
【0005】
図6は上記特許文献1に記載されたチップ型電流ヒューズの平面図であり、該チップ型電流ヒューズ100は、直方体形状の絶縁基板101の長手方向両端部に形成された第1表電極102および第2表電極103と、これら第1表電極102と第2表電極103との間に形成されたヒューズエレメント104とを備えている。このヒューズエレメント104は、第1表電極102の上部から第2表電極103の上部付近まで水平方向に延びる直線状部104aと、直線状部104aの先端部から直角に延びる直線状部104bと、直線状部104bの先端部から直線状部104aと平行に第1表電極102の中央部付近まで延びる直線状部104cと、直線状部104cの先端部から直角に延びる直線状部104dと、直線状部104dの先端部から直線状部104aと平行に第2表電極103の下部付近まで延びる直線状部104eとからなり、複数の直線を折り返したような形状となっている。
【0006】
このように構成されたチップ型電流ヒューズ100は、ヒューズエレメント104が折り返し形状となっているため、一直線状に形成されたヒューズエレメントに比べて全長が長くなる。その結果、ヒューズエレメント104の熱容量が大きくなり、耐パルス性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されたチップ型電流ヒューズでは、第1表電極102に連続する直線状部104aと第2表電極103に連続する直線状部104eとが熱を逃がしやすい部位(放熱部)となるため、これら直線状部104a,104e間に形成された直線状部104bと直線状部104cおよび直線状部104dにヒューズエレメント104の発熱が集中し、第1表電極102と第2表電極103間に所定の過電流が流れると、当該直線状部104b,104c,104dのいずれかの部位が溶断する。しかしながら、クランク状に連続する直線状部104bと直線状部104cおよび直線状部104dのどの部位が溶断するのかわからないため、溶断するタイミングが安定しないという課題がある。
【0009】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、ヒューズエレメントの溶断タイミングを安定させることができるチップ型電流ヒューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のチップ型電流ヒューズは、直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の表面における長手方向両端部に形成された第1表電極および第2表電極と、前記絶縁基板の裏面における長手方向両端部に形成された第1裏電極および第2裏電極と、前記絶縁基板の長手方向一端面に形成されて前記第1表電極と前記第1裏電極を接続する第1端面電極と、前記絶縁基板の長手方向他端面に形成されて前記第2表電極と前記第2裏電極を接続する第2端面電極と、前記第1表電極と前記第2表電極との間に金属薄膜をパターニングして形成されたヒューズエレメントと、を備え、前記ヒューズエレメントが、前記第1表電極を接続端として前記第2表電極の方向に延びる第1直線部と、前記第2表電極を接続端として前記第1直線部と平行に前記第1表電極の方向に延びる第2直線部と、これら第1直線部と第2直線部を連結する傾斜直線部とからなり、前記傾斜直線部が前記第1直線部と前記第2直線部に対してそれぞれ鋭角に接続していることを特徴としている。
【0011】
このように構成されたチップ型電流ヒューズでは、第1表電極に接続する第1直線部と第2表電極に接続する第2直線部とが熱を逃がしやすい部位となり、これら第1直線部と第2直線部との間に形成された傾斜直線部が両直線部に対して鋭角に接続しているため、ヒューズエレメントの発熱が傾斜直線部の中央付近に集中することになり、傾斜直線部の中央付近を安定したタイミングで溶断させることができる。
【0012】
上記構成のチップ型電流ヒューズにおいて、ヒューズエレメントが傾斜直線部の中心を対称点とする点対称形状、具多的には、両端部が第1直線部と第2直線部に連続する平面視Z形状であると、傾斜直線部の中央付近で安定的に溶断させることができる。
【0013】
また、上記構成のチップ型電流ヒューズにおいて、傾斜直線部の中心から第1裏電極および第2裏電極に至る距離が、傾斜直線部の中心から第1表電極および第2表電極に至る距離よりも長く設定されていると、ヒューズエレメントの発熱が絶縁基板の裏側の第1裏電極および第2裏電極から放熱されにくくなるため、傾斜直線部の中央付近を安定的に溶断させることができる。
【0014】
また、上記構成のチップ型電流ヒューズにおいて、第1表電極と第2表電極との間をエレメント形成領域とすると、第1裏電極と第2裏電極がエレメント形成領域を投影した裏面領域の外側に形成されていると、傾斜直線部の中央付近を安定的に溶断させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のチップ型電流ヒューズによれば、第1直線部と第2直線部との間に形成された傾斜直線部が両直線部に対して鋭角に接続しているため、ヒューズエレメントの溶断タイミングを安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態例に係るチップ型電流ヒューズの平面図である。
【
図3】該チップ型電流ヒューズに備えられるヒューズエレメントの説明図である。
【
図4】該チップ型電流ヒューズの製造工程を示す平面図である。
【
図5】該チップ型電流ヒューズの製造工程を示す断面図である。
【
図6】従来例に係るチップ型電流ヒューズの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明すると、
図1は本発明の実施形態例に係るチップ型電流ヒューズの平面図、
図2は
図1のII-II線に沿う断面図である。
【0018】
図1と
図2に示すように、本実施形態例に係るチップ型電流ヒューズは、直方体形状の絶縁基板1と、絶縁基板1の表面における長手方向両端部を除く領域に形成された蓄熱層2と、蓄熱層2と一部が重なるように絶縁基板1の表面における長手方向両端部に形成された第1表電極3および第2表電極4と、第1表電極3と第2表電極4を導通するように蓄熱層2上に形成されたヒューズエレメント5と、ヒューズエレメント5を覆う内部保護層6と、第1表電極3および第2表電極4の一部と内部保護層6の全体を覆う保護層7と、絶縁基板1の裏面における長手方向両端部に形成された第1裏電極8および第2裏電極9と、絶縁基板1の長手方向一端面に形成されて第1表電極3と第1裏電極8を接続する第1端面電極10と、絶縁基板1の長手方向他端面に形成されて第2表電極4と第2裏電極9を接続する第2端面電極11と、によって主として構成されている。
【0019】
絶縁基板1は、後述する大判基板を縦横の分割溝に沿って分割して多数個取りされたものであり、大判基板の主成分はアルミナを主成分とするセラミックス基板である。
【0020】
蓄熱層2は、ガラスペーストを塗布(例えば、スクリーン印刷)・焼成したり、ポリイミド樹脂等の樹脂を塗布(例えば、スピンコート)・硬化したものであり、絶縁基板1の表面中央部を覆うように矩形状に形成されている。
【0021】
第1表電極3と第2表電極4およびヒューズエレメント5は、ヒューズとして溶断可能な金属薄膜(例えば、Cu、Ag、Au、Al等)を絶縁基板1の表面全体にスパッタリングまたは蒸着し、これをフォトリソグラフィによりパターニングしたものである。第1表電極3と第2表電極4は絶縁基板1の長手方向両端部に矩形状に形成されており、ヒューズエレメント5は第1表電極3と第2表電極4との間に平面視でZ形状に形成されている。なお、ヒューズエレメント5の詳細な構成については後述する。
【0022】
内部保護層6は、内部保護材料(例えば、ガラスペーストやシリコーン樹脂等)を塗布(例えば、スクリーン印刷)して乾燥・焼成したものであり、第1表電極3および第2表電極4の一部とヒューズエレメント5の全体を覆うように矩形状に形成されている。
【0023】
保護層7は、エポキシ系樹脂ペーストを塗布(例えば、スクリーン印刷)して加熱硬化したものであり、第1表電極3および第2表電極4の一部と内部保護層6の全体を覆うように矩形状に形成されている。
【0024】
第1裏電極8と第2裏電極9は、銀を主成分とするAg系ペーストを塗布(例えば、スクリーン印刷)して乾燥・焼成したものであり、絶縁基板1の裏面における長手方向両端部に矩形状に形成されている。第1表電極3と第1裏電極8および第2表電極4と第2裏電極9はそれぞれ対応する位置に形成されているが、第1裏電極8と第2裏電極9の面積は第1表電極3と第2表電極4の面積に比べて小さめに形成されている。したがって、絶縁基板1の表面に形成された第1表電極3と第2表電極4との間をエレメント形成領域とすると、第1裏電極8と第2裏電極9はエレメント形成領域を投影した裏面領域の外側に配置されている。
【0025】
第1端面電極10と第2端面電極11は絶縁基板1の長手方向両端面に端面電極材料をスパッタリングまたは蒸着したもの(例えば、Ni/Cr2層、NiCr合金、Ni/Ti2層、NiTi合金)であり、これら第1端面電極10と第2端面電極11は、対応する第1表電極3と第1裏電極8間および第2表電極4と第2裏電極9間を導通するように形成されている。図示省略されているが、第1端面電極10と第2端面電極11の表面は外部電極によって被覆されており、この外部電極はNiメッキ層とSnメッキ層の2層構造となっている。
【0026】
図3は前述したヒューズエレメント5の説明図である。
図3に示すように、ヒューズエレメント5は、第1表電極3の図中上部を接続端として、絶縁基板1の長手方向と平行して第2表電極4の方向に延びる第1直線部5aと、第2表電極4の図中下部を接続端として第1直線部5aと平行に第1表電極3の方向に延びる第2直線部5bと、これら第1直線部5aと第2直線部5bを連結する傾斜直線部5cとからなり、この傾斜直線部5cは第1直線部5aと第2直線部5bに対してそれぞれ鋭角に接続している。ここで、第1直線部5aと第2直線部5bの水平方向の長さは同じに設定されており、ヒューズエレメント5は、傾斜直線部5cの中心Oを対称点とする点対称形状、具体的には平面視Z形状となっている。
【0027】
次に、本実施形態例に係るチップ型電流ヒューズの製造工程について、
図4と
図5を用いて説明する。なお、
図4(a)~(f)はこの製造工程で用いられる大判基板を表面的に見た平面図、
図5(a)~(f)は
図4(a)~(f)の長手方向中央部に沿った1チップ相当分の断面図をそれぞれ示している。
【0028】
まず、絶縁基板1が多数個取りされる大判基板を準備する。この大判基板には予め1次分割溝と2次分割溝が格子状に設けられており、両分割溝によって区切られたマス目の1つ1つが1個分のチップ領域となる。
図4と
図5には1個分のチップ領域に相当する大判基板20Aが代表して示されているが、実際は多数個分のチップ領域に相当する大判基板に対して以下に説明する各工程が一括して行われる。
【0029】
すなわち、この大判基板20Aの表面にガラスペーストを塗布(例えば、スクリーン印刷)した後、これを乾燥・焼成することにより、
図4(a)と
図5(a)に示すように、大判基板20Aの表面中央部に矩形状の蓄熱層2を形成する。
【0030】
次に、大判基板20Aの裏面にAg系ペーストを塗布(例えば、スクリーン印刷)した後、これを乾燥・焼成することにより、
図4(b)と
図5(b)に示すように、大判基板20Aの裏面に所定間隔を存して対向する第1裏電極8と第2裏電極9を形成する。
【0031】
次に、大判基板20Aの表面全体にCuやAg等の金属薄膜をスパッタリング(または蒸着)によりデポジットし、これをフォトリソグラフィによりパターニングすることにより、
図4(c)と
図5(c)に示すように、所定間隔を存して対向する第1表電極3および第2表電極4と、これら第1表電極3と第2表電極4間に跨るヒューズエレメント5とを一体形成する。このヒューズエレメント5は蓄熱層2上に平面視でZ形状に形成されており、第1表電極3を接続端として、絶縁基板1の長手方向と平行して第2表電極4の方向に延びる第1直線部5aと、第2表電極4を接続端として第1表電極3の方向に延びる第2直線部5bと、これら第1直線部5aと第2直線部5bを連結する傾斜直線部5cとを有している。傾斜直線部5cは第1直線部5aと第2直線部5bに対して鋭角に接続しており、傾斜直線部5cの中心から第1表電極3および第2表電極4に至る最短距離よりも、傾斜直線部5cの中心から第1裏電極8および第2裏電極9に至る最短距離の方が長くなっている。
【0032】
次に、大判基板20Aの表面側にガラスペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、
図4(d)と
図5(d)に示すように、第1表電極3および第2表電極4の一部とヒューズエレメント5の全体を覆う内部保護層6を形成する。これにより、ヒューズエレメント5が蓄熱層2と内部保護層6間にサンドウィッチされる。
【0033】
次に、大判基板20Aの表面側にエポキシ系樹脂ペーストを塗布(例えば、スクリーン印刷)した後、これを加熱硬化することにより、
図4(e)と
図5(e)に示すように、第1表電極3および第2表電極4の一部と内部保護層6の全体を覆う保護層7を形成する。
【0034】
次に、大判基板20Aを一次分割溝に沿って短冊状基板20Bに1次分割した後、この短冊状基板20Bの分割面に端面電極材料をスパッタリングまたは蒸着(例えば、Ni/Cr2層、NiCr合金、Ni/Ti2層、NiTi合金)することにより、
図4(f)と
図5(f)に示すように、短冊状基板20Bの両端部に第1端面電極10と第2端面電極11を形成する。この第1端面電極10により対応する第1表電極3と第1裏電極8間が導通されると共に、第2端面電極11により対応第2表電極4と第2裏電極9間が導通される。
【0035】
しかる後、短冊状基板20Bを二次分割溝に沿って複数のチップ状基板に2次分割した後、これらチップ状基板に対して電解メッキを施してNi-Snメッキ層を形成することにより、第1端面電極10と第2端面電極11の表面を覆う外部電極(図示せず)を形成する。このようにして
図1,2に示すチップ型電流ヒューズが完成する。
【0036】
以上説明したように、本実施形態例に係るチップ型電流ヒューズは、第1表電極3と第2表電極4間に形成されたヒューズエレメント5が、第1表電極3を接続端として、絶縁基板1の長手方向と平行して第2表電極4の方向に延びる第1直線部5aと、第2表電極4を接続端として第1直線部5aと平行に第1表電極3の方向に延びる第2直線部5bと、これら第1直線部5aと第2直線部5bを連結する傾斜直線部5cとからなり、この傾斜直線部5cが第1直線部5aと第2直線部5bに対してそれぞれ鋭角に接続した構成となっている。したがって、第1表電極3に接続する第1直線部5aと第2表電極4に接続する第2直線部5bが熱を逃がしやすい部位(放熱部)となり、これら第1直線部5aと第2直線部5bとの間に形成された傾斜直線部5cが両直線部5a,5bに対して鋭角に接続しているため、ヒューズエレメント5の発熱が傾斜直線部5cの中央付近に集中することになり、傾斜直線部5cの中央付近を安定したタイミングで溶断させることができる。
【0037】
また、本実施形態例に係るチップ型電流ヒューズでは、ヒューズエレメント5が傾斜直線部5cの中心Oを対称点とする点対称形状(平面視Z形状)となっているため、傾斜直線部5cの中央付近で安定的に溶断させることができる。しかも、傾斜直線部5cの中心から第1表電極3および第2表電極4に至る最短距離よりも、傾斜直線部5cの中心から第1裏電極8および第2裏電極9に至る最短距離の方が長くなっているため、ヒューズエレメント5の発熱が絶縁基板1の裏側の第1および第2裏電極8,9から放熱されにくくなり、傾斜直線部5cの中央付近を安定的に溶断させることができる。さらに、絶縁基板1の表面に形成された第1表電極3と第2表電極4との間をエレメント形成領域とすると、第1裏電極8と第2裏電極9がエレメント形成領域を投影した裏面領域の外側に形成されているため、この点からも傾斜直線部5cの中央付近を安定的に溶断させることができる。
【0038】
なお、上記実施形態例では、ヒューズエレメント5における第1直線部5aと第2直線部5bおよび傾斜直線部5cの互いの長さがほぼ等しくなっているが、これら各直線部5a,5b,5cの相対的長さは上記実施形態例に限定されず、例えば、第1直線部5aと第2直線部5bに対して傾斜直線部5cの長さを十分に短くしたものであっても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 絶縁基板
2 蓄熱層
3 第1表電極
4 第2表電極
5 ヒューズエレメント
5a 第1直線部
5b 第2直線部
5c 傾斜直線部
6 内部保護層
7 保護層
8 第1裏電極
9 第2裏電極
10 第1端面電極
11 第2端面電極