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特許7368147搬送シミュレーション装置、及び搬送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】搬送シミュレーション装置、及び搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/90 20060101AFI20231017BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20231017BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20231017BHJP
【FI】
B65G47/90 Z
G05B19/418 Z
G06F30/20
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019159898
(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公開番号】P2021038054
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】大場 雅文
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-191128(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0117766(US,A1)
【文献】特開2017-097427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/90
G05B 19/418
G06F 30/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想的に動作する仮想搬送部と、
所定の条件で仮想物品を前記仮想搬送部に供給する第1仮想物品供給部と、
前記仮想搬送部の仮想的な移動に合わせて前記仮想物品の位置を更新する仮想物品管理部と、を備え、
更新された前記仮想物品の位置は、制御装置に出力され、
前記制御装置は、受信した前記仮想物品の位置に基づいて、ロボットに前記仮想物品を取り出させる動作を実行する
搬送シミュレーション装置。
【請求項2】
前記仮想搬送部は少なくとも1つの仮想レーンを有し、
前記仮想レーンは仮想搬送速度を有し、
前記仮想レーンは前記仮想物品が仮想的に生成される仮想物品生成位置を有し、
前記仮想レーンは実際に配置される搬送部と同じ向きに前記仮想物品を搬送し、
前記仮想物品は前記仮想物品生成位置を基準に所定の範囲内でランダムな補正がかけられた前記仮想レーンの位置で生成される、請求項1に記載の搬送シミュレーション装置。
【請求項3】
前記第1仮想物品供給部は、
前記仮想物品を供給する少なくとも1つの供給スケジュールを有し、
前記供給スケジュールは前記仮想物品の供給レートを含み、
前記供給スケジュールは前記供給レートと前記仮想搬送速度とから決まる間隔で前記仮想物品を前記仮想レーンに供給し、
前記供給スケジュールは前記供給スケジュールが適用される適用時間、又は前記供給スケジュールが適用される間に前記仮想搬送部が移動する移動量を示す供給総距離を含み、
前記供給スケジュールは1つ、又はいくつかを組み合わせて前記仮想レーンの各々に対して実行される、請求項2に記載の搬送シミュレーション装置。
【請求項4】
前記仮想物品管理部により逐次更新される前記仮想物品の位置に所定の物品形状を表示する拡張現実表示部を備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載に搬送シミュレーション装置。
【請求項5】
前記仮想搬送部の動作、及び前記第1仮想物品供給部による前記仮想物品の供給の開始、停止を前記拡張現実表示部から操作可能である、請求項4に記載の搬送シミュレーション装置。
【請求項6】
前記第1仮想物品供給部は供給する前記仮想物品に種類を示す情報を付加する、請求項1に記載の搬送シミュレーション装置。
【請求項7】
物品を搬送する搬送部と、
前記搬送部の移動量を検出する移動量検出部と、
所定の条件で仮想物品を前記搬送部に設定された少なくとも1つの仮想レーンに供給する第2仮想物品供給部と、
前記搬送部の移動量に合わせて前記仮想物品の位置を更新する仮想物品管理部と、を備え、
更新された前記仮想物品の位置は、制御装置に出力され、
前記制御装置は、受信した前記仮想物品の位置に基づいて、ロボットに前記仮想物品を取り出させる動作を実行する
搬送システム。
【請求項8】
前記仮想レーンは前記仮想物品が仮想的に生成される仮想物品生成位置を有し、
前記仮想レーンは前記搬送部と同じ向きに前記仮想物品を搬送し、
前記仮想物品は前記仮想物品生成位置を基準に所定の範囲内でランダムな補正がかけられた前記仮想レーンの位置で生成される、請求項7に記載の搬送システム。
【請求項9】
前記第2仮想物品供給部は、
物品を供給する少なくとも1つの供給スケジュールを有し、
前記供給スケジュールは前記搬送部の移動量に基づく所定の間隔毎に物品を供給し、
前記供給スケジュールは前記供給スケジュールが適用される適用時間、又は前記供給スケジュールが適用される間に前記搬送部が移動する移動量を示す供給総距離を含み、
前記供給スケジュールは1つ、又はいくつかを組み合わせて前記仮想レーンの各々に対して実行される、請求項8に記載の搬送システム。
【請求項10】
前記仮想物品管理部により逐次更新される前記仮想物品の位置に所定の物品形状を表示する拡張現実表示部を備える、請求項7から請求項9のいずれか1項に記載に搬送システム。
【請求項11】
前記搬送部の動作、及び前記第2仮想物品供給部による前記仮想物品の供給の開始、停止を前記拡張現実表示部から操作可能である、請求項10に記載の搬送システム。
【請求項12】
前記第2仮想物品供給部は供給する前記仮想物品に種類を示す情報を付加する、請求項7に記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送シミュレーション装置、及び搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ及びエンコーダ等のセンサを用いて、コンベアにより搬送される物品の位置を検出し、前記センサによる検出結果に基づいてロボットが物品の取り出し作業を行う技術が知られている。例えば、特許文献1参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-16915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述のようなロボットによる物品の取り出し作業等を行うシステムにおいて、センサで検出した物品の流れをシミュレートする場合は、例えば、オフラインソフトが用いられる。
しかしながら、実際の工場等の現場とオフラインソフトで再現した環境とでは状況が異なっていることが多々ある。例えば、オフラインソフトの環境で配置されるコンベアが実際の現場で配置されたコンベアの幅や向き等と異なっていることがある。また、オフラインソフトの環境においてロボットの動作に問題が無い場合でも、実際の現場では障害物がある等、実際の現場でないと気付かないことが数多くある。
このように、オフラインソフトを用いて実際の現場と同様の環境で正確に物品の流れをシミュレートすることが困難なことがある。
【0005】
そこで、実際の現場と同様の環境で正確に物品の流れをシミュレートすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の搬送シミュレーション装置の一態様は、仮想的に動作する仮想搬送部と、所定の条件で仮想物品を前記仮想搬送部に供給する第1仮想物品供給部と、前記仮想搬送部の仮想的な移動に合わせて前記仮想物品の位置を逐次更新する仮想物品管理部と、を備える。
【0007】
(2)本開示の搬送システムの一態様は、物品を搬送する搬送部と、前記搬送部の移動量を検出する移動量検出部と、所定の条件で仮想物品を供給する第2仮想物品供給部と、前記搬送部の移動量に合わせて前記仮想物品の位置を逐次更新する仮想物品管理部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
一態様によれば、実際の現場と同様の環境で正確に物品の流れをシミュレートすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る搬送シミュレーションシステムの全体構成を示すブロック図である。
図2】仮想搬送部に設定される仮想レーンの一例を示す図である。
図3】仮想物品供給部が供給スケジュールに基づいて各仮想レーンの仮想物品生成位置で、仮想的に生成された仮想物品を各仮想レーンに供給する場合を例示する図である。
図4】拡張現実表示装置による表示の一例を示す図である。
図5】搬送シミュレーション装置のシミュレーション処理について説明するフローチャートである。
図6】第2実施形態に係る搬送システムの全体構成を示すブロック図である。
図7】搬送部に設定される仮想レーンの一例を示す図である。
図8】拡張現実表示装置による表示の一例を示す図である。
図9】搬送システム2のシミュレーション処理について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
まず、本実施形態の概略を説明する。本実施形態では、搬送シミュレーション装置は、実際の現場における設計段階の図面に基づいて仮想搬送部を仮想空間に配置し、仮想物品供給部が所定の条件で仮想物品を仮想搬送部に供給し、仮想物品管理部が仮想搬送部の移動に合わせて仮想物品の位置を逐次更新することにより、物品の流れをシミュレートする。
【0011】
これにより、本実施形態によれば、「実際の現場と同様の環境で正確に物品の流れをシミュレートする」という課題を解決することができる。
以上が本実施形態の概略である。
【0012】
次に、本実施形態の構成について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、第1実施形態に係る搬送シミュレーションシステム1の全体構成を示すブロック図である。搬送シミュレーションシステム1は、搬送シミュレーション装置100、及び拡張現実表示装置200から構成される。
【0013】
搬送シミュレーション装置100、及び拡張現実表示装置200は、LAN(Local Area Network)やインターネット等の図示しないネットワークを介して、有線又は無線で相互に接続されていてもよい。この場合、搬送シミュレーション装置100、及び拡張現実表示装置200は、かかる接続によって相互に通信を行うための図示しない通信部を備えている。なお、搬送シミュレーション装置100、及び拡張現実表示装置200は、図示しない接続インタフェースを介して、有線又は無線で互いに直接接続されてもよい。
なお、搬送シミュレーション装置100は、拡張現実表示装置200を含んでもよい。
【0014】
<拡張現実表示装置200>
拡張現実表示装置200は、スマートフォン、タブレット端末、ヘッドマウントディスプレイ、拡張現実(AR:Augmented Reality)表示機能付きメガネ等である。拡張現実表示装置200は、CPU等の制御部(図示しない)、及びキーボードやタッチパネル等の入力部(図示しない)とともに、カメラ210、表示部220、通信部230、及び記憶部240を有する。
【0015】
カメラ210は、少なくとも実際の現場を撮像する。
【0016】
表示部220は、液晶ディスプレイ等であり、カメラ210によって撮像された現実空間画像と、後述する搬送シミュレーション装置100により生成されたシミュレーション結果を示すAR画像データとを重畳して表示する。
【0017】
通信部230は、有線又は無線を介して、搬送シミュレーション装置100に接続され、搬送シミュレーション装置100との間の通信を制御する。
【0018】
記憶部240は、ROM等であり、拡張現実表示装置200の動作を制御する制御プログラムや、表示部220に表示されるAR画像を操作するAR画像操作プログラム241を記憶する。
【0019】
拡張現実表示装置200は、図示しない入力部を介したユーザによる入力に応じて、表示部220に表示されるAR画像を選択し、選択されたAR画像に対する操作を行ってもよい。
例えば、拡張現実表示装置200は、記憶部240に記憶されているAR画像操作プログラム241に基づいて、図示しない入力部を介したユーザの入力に応じてAR画像を選択し、選択されたAR画像の位置や姿勢を変更してもよい。また、拡張現実表示装置200は、図示しない入力部を介したユーザの入力に応じてAR画像上でAR画像上のグラフィックの透明度を調節してもよく、AR画像上のインジケータ、文字、数値等のラベルの大きさを調整してもよい。また、拡張現実表示装置200は、図示しない入力部を介したユーザの入力に応じてAR画像上でAR画像上のそれぞれのグラフィックの表示・非表示を切り替えてもよい。
【0020】
<搬送シミュレーション装置100>
図1に示すように、搬送シミュレーション装置100は、制御部110を有する。さらに、制御部110は、仮想搬送部120、仮想物品供給部130、及び仮想物品管理部140を有する。
【0021】
制御部110は、CPU、ROM、RAM、CMOSメモリ等を有し、これらはバスを介して相互に通信可能に構成される、当業者にとって公知のものである。
CPUは搬送シミュレーション装置100を全体的に制御するプロセッサである。CPUは、ROMに格納されたシステムプログラム及びアプリケーションプログラムを、バスを介して読み出し、前記システムプログラム及びアプリケーションプログラムに従って搬送シミュレーション装置100全体を制御する。これにより、図1に示すように、制御部110が、仮想搬送部120、仮想物品供給部130、及び仮想物品管理部140の機能を実現するように構成される。RAMには一時的な計算データや表示データ等の各種データが格納される。CMOSメモリは図示しないバッテリでバックアップされ、搬送シミュレーション装置100の電源がオフされても記憶状態が保持される不揮発性メモリとして構成される。
【0022】
<仮想搬送部120>
仮想搬送部120は、例えば、今後実際の現場に設置されるコンベアに対応する、シミュレーションの仮想空間に配置される仮想的なコンベアである。仮想搬送部120には、設計段階の図面に基づいて、長さ、幅、配置される位置及び向き、仮想物品を搬送する速度(以下、「仮想搬送速度」ともいう)のパラメータが設定される。設定されたパラメータに基づいて仮想搬送部120を動作させることで、物品の流れがシミュレートされる。なお、仮想物品は、車体、フレーム、部品、食品、医薬品等の仮想的な物品である。
シミュレーションでは、仮想搬送部120は、設定された一定の仮想搬送速度(例えば、100mm/sec等)で仮想的に動作するため、実際のコンベアのように搬送速度の加減速、いわゆる「脈動」が発生しない。これにより、後述する仮想物品供給部130は、予め設定された供給レートで仮想物品を仮想搬送部120に供給するため、仮想搬送部120は、供給レートと仮想搬送速度で決まる一定間隔で仮想物品を搬送することができる。
以下、特に断らない限り、仮想搬送部120の仮想搬送速度は100mm/secとして説明する。
【0023】
また、仮想搬送部120には、少なくとも1つの仮想レーンが設定される。
図2は、仮想搬送部120に設定される仮想レーンの一例を示す図である。図2に示すように、例えば、2つの異なる種類の物品を仮想搬送部120で搬送する場合、仮想搬送部120には2つの仮想レーン121、122が設定される。
なお、図2では、仮想搬送部120は、設定された仮想搬送速度で三角形の向きに仮想物品を搬送する。そして、仮想搬送部120に設定される座標系(以下、「搬送座標系(Tracking Frame)」ともいう)は、仮想物品が搬送される方向をX軸とし、仮想搬送部120の幅方向をY軸とする。
【0024】
図2に示すように、仮想レーン121は、仮想レーン122の幅より広く設定される。また、後述するように、破線で示す各仮想レーン121、122の中心線の上流側に配置され仮想物品が仮想的に生成される仮想物品生成位置(図示しない)を基準に所定の範囲内で仮想物品の生成位置をY軸方向にランダムに補正するランダムオフセットが設定される。
なお、仮想レーン121が仮想レーン122の幅より広く設定されたが、これに限定されず、仮想レーン121と仮想レーン122との幅は、同じに設定されてもよく、仮想レーン121が仮想レーン122の幅より狭く設定されてもよい。すなわち、仮想レーン121、122の幅は、実際の現場で生産を計画している物品の種類に応じて適宜決定されてもよい。
また、仮想搬送部120には、2つの仮想レーン121、122が設定されたが、1又は3以上の複数の仮想レーンが設定されてもよい。また、仮想レーン121、122が搬送する物品は、互いに異なる種類としたが同じ種類の物品としてもよい。
【0025】
<仮想物品供給部130>
仮想物品供給部130は、所定の条件で仮想物品を仮想搬送部120に供給する。
具体的には、仮想物品供給部130には、所定の条件として供給スケジュールが予め設定される。
供給スケジュールに設定されるパラメータには、例えば、供給レート、及び供給時間(適用時間)又は供給総距離が含まれる。供給レートは、仮想物品供給部130が単位時間当たり仮想レーン121、122に供給する仮想物品の個数を示す。供給時間(適用時間)は、前記供給スケジュールが適用される時間を示す。換言すれば、供給時間は、仮想物品供給部130が前記供給スケジュールに基づいて、仮想レーン121、122に仮想物品を供給する時間を示す。また、供給総距離は、1つの供給スケジュールが適用される間に仮想搬送部120が移動する移動量を示す。例えば、供給スケジュールが「供給時間10秒又は供給総距離1m、及び供給レート30個/分」の場合、仮想物品供給部130により供給される仮想物品の間隔は、200mmと決まる。
なお、供給スケジュールは、少なくとも1つ、又はいくつかを組み合わせて各仮想レーン121、122に対して実行されてもよい。また、供給スケジュールは、仮想レーン121、122毎に異なってもよく、同じでもよい。
【0026】
図3は、仮想物品供給部130が供給スケジュールに基づいて各仮想レーン121、122の仮想物品生成位置で、仮想的に生成された仮想物品71、72を各仮想レーン121、122に供給する場合を例示する図である。なお、図3では、生成される各仮想物品71、72に対してY軸方向にランダムな補正をかける、仮想物品生成位置を基準にした所定の範囲を、ランダム補正エリア131、132として示す。
図3に例示するように、仮想物品供給部130は、仮想レーン121において、「供給時間10秒又は供給総距離1m、及び供給レート30個/分」の供給スケジュールAと、「供給時間10秒又は供給総距離1m、及び供給レート60個/分」の供給スケジュールBとの組み合わせを繰り返し実行する。図3に示すように、仮想物品供給部130は、供給スケジュールAを実行する場合、仮想物品71を200mmの間隔で供給し、供給スケジュールBを実行する場合、仮想物品71を100mmの間隔で供給する。
一方、仮想物品供給部130は、仮想レーン122において、「供給時間10秒又は供給総距離1m、及び供給レート60個/分」の供給スケジュールBと、「供給時間10秒又は供給総距離1m、及び供給レート70個/分」の供給スケジュールCとの組み合わせを繰り返し実行する。これにより、仮想物品供給部130は、供給スケジュールBを実行する場合、仮想物品72を100mmの間隔で供給し、供給スケジュールCを実行する場合、仮想物品71を86mmの間隔で供給する。
なお、図3では、仮想物品71、72の一部を示す。
【0027】
また、仮想物品供給部130は、ランダム補正エリア131、132においてランダムな補正がかけられた各仮想レーン121、122の位置で仮想物品を生成する。これにより、各仮想物品71、72は、図3に示すように、破線で示す各仮想レーン121、122の中心に対してY軸方向にランダムにずれて供給される。このように、仮想物品71、72が生成される位置をランダムな補正をかけることにより、今後実際の現場に設置されるロボット等と周辺装置とが干渉するか否か、前記ロボット等にはわせたケーブルが絡まないか否か等を確認することができる。
【0028】
また、仮想物品供給部130が供給する仮想物品71、72に物品の種類を示す情報を付加してもよい。
また、仮想物品71、72は矩形で示されたが、これに限定されず、任意の形状で表示されてもよく、実際に生産する物品の形状で表示されてもよい。
また、ランダム補正エリア131、132は、搬送座標系の同じX座標の位置に配置されたが、異なるX座標の位置に配置されてもよい。
また、ランダムな補正は位置だけではなく姿勢も含めてもよい。
【0029】
<仮想物品管理部140>
仮想物品管理部140は、仮想搬送部120の仮想的な移動量に合わせて仮想物品71、72の位置を逐次更新する。
具体的には、仮想物品管理部140は、仮想搬送部120の位置や姿勢、仮想搬送速度、仮想レーン121、122等の設定と、仮想物品供給部130の供給スケジュール等の設定とに基づいて、搬送座標系における仮想物品71、72の位置を逐次更新する。
例えば、仮想物品管理部140は、仮想物品供給部130により仮想レーン121、122に各仮想物品71、72が供給された時刻を基準にして仮想搬送部120の仮想搬送速度に基づいて各仮想物品71、72の移動量を逐次算出する。仮想物品管理部140は、算出された各仮想物品71、72の移動量から各仮想レーン121、122上において各仮想物品71、72の搬送座標系における位置を逐次更新する。これにより、図3に示すように、仮想物品71、72が仮想搬送部120上を今後実際の現場に配置されるコンベア(搬送部)と同じ向きに搬送される様子をシミュレートすることができる。
【0030】
なお、図3に示すように、例えば、実際の現場にロボット300、及びロボット300を制御するロボット制御装置である制御装置400が既に設置されている場合、制御装置400は、搬送シミュレーション装置100から仮想物品71、72の位置のデータを受信してもよい。この場合、制御装置400は、受信したデータに基づいて、仮想物品71、72のそれぞれが破線の矩形で示すロボット300の作業領域80に移動してきた場合、ロボット300に仮想物品71、72を取り出させる動作をさせ、未だ設置されていない排出用コンベア等に仮想物品71、72を置かせる動作をさせてもよい。そうすることで、ロボット300が設計通りに動作するか否か、ロボット300の動作に係る障害物の有無等を確認することができる。また、前述の供給スケジュールAと供給スケジュールBとの組み合わせにより仮想物品71の間隔の粗密を敢えて作った場合に、ロボット300の取り出し作業等においてバッファとしての仮置き台を設ける必要があるか否か等を確認することができる。
【0031】
この場合、ロボット300の座標系と、仮想搬送部120の搬送座標系と、拡張現実表示装置200のカメラ210のカメラ座標系とは予め対応付けられる。例えば、ロボット300の先端部に設けられた設定ツールを、コンベア(仮想搬送部120)が設置される予定の位置に置かれたキャリブレーション治具の複数の所定箇所に接触させることによって、ロボット300及び仮想搬送部120の座標系として用いられる基準座標系が設定されてもよい。また、カメラ210が前記キャリブレーション治具やロボット300に貼られたマークを撮像した画像に基づいて、カメラ210のカメラ座標系が前記基準座標系に関連付けられてもよい。
【0032】
<AR画像の生成処理>
制御部110は、例えば、図示しない記憶部に記憶されたAR画像生成プログラムを実行し、予め設定されたロボット300の動作プログラム、仮想搬送部120における設定、仮想物品供給部130における設定、及び仮想物品管理部140により逐次更新される搬送座標系における各仮想物品71、72の位置に基づいて、仮想搬送部120及び各仮想物品のAR画像データを逐次生成する。
制御部110は、生成したAR画像データを拡張現実表示装置200に送信する。拡張現実表示装置200は、受信したAR画像データの位置及び姿勢をカメラ座標系又は基準座標系に基づいて調整し、カメラ210が撮影した現実空間画像と、受信したAR画像とを表示する。
【0033】
図4は、拡張現実表示装置200による表示の一例を示す図である。
図4に示すように、拡張現実表示装置200の表示部220には、拡張現実表示装置200のカメラ210により撮影されたロボット300及び制御装置400の現実空間画像と、制御部110により生成されたAR画像とが表示される。
表示されるAR画像では、仮想搬送部120は、平面状の仮想のコンベアとして表示され、各仮想物品71、72は、矢印で示す搬送方向MDに仮想搬送速度(例えば、100mm/sec)で搬送される。
【0034】
なお、制御部110は、図4に示すように、仮想搬送部120、及び各仮想物品71、72のAR画像とともに、ランダム補正エリア131、132、作業領域80のAR画像を生成してもよい。そうすることで、ランダム補正エリア131、132と作業領域80との関係、作業領域80と作業員の行動範囲との関係、作業領域80と他のロボットの作業領域との関係、作業内容に対するランダム補正エリア131、132及び作業領域80の大きさ等を、拡張現実表示装置200のユーザが直感的に認識することができる。
【0035】
また、制御部110は、図4に示すように、現在実行されている供給スケジュールA、B、及び各仮想レーン121、122における仮想物品71、72間の距離を示す情報のAR画像を生成してもよい。さらに、仮想物品供給部130が供給する仮想物品71、72に物品の種類を示す情報を付加する場合、制御部110は、付加された仮想物品71、72の物品の種類を示す情報のAR画像を生成してもよい。
そうすることで、拡張現実表示装置200のユーザは、現在の供給スケジュールA、Bによる動作状況や供給される仮想物品71、72の種類を目視しで確認することができ、現在の供給スケジュールA、Bが適切か否かを確認することができる。
【0036】
また、制御部110は、ロボット300の動作制限領域のAR画像を生成してもよい。動作制限領域は、作業員、周辺機器等の周囲に設定される領域であって、ロボット300の動作を停止又は制限する領域である。そうすることで、拡張現実表示装置200のユーザは動作制限領域の設定範囲を直感的に認識することができる。
【0037】
また、制御部110は、図4に示すように、ロボット300に設定される基準座標系OC、及び仮想搬送部120の搬送方向MDのAR画像を生成してもよい。そうすることで、拡張現実表示装置200のユーザは、基準座標系OCと搬送方向MDとの関係を目視しで確認することが可能となり、基準座標系OC等の設定に対する仮想搬送部120の搬送方向MDが適切か否かを確認することができる。
【0038】
また、AR画像において仮想物品71、72は、立方体で表示されたが、任意の形状で表示されてもよく、実際に生産する物品の形状で表示されてもよい。
また、拡張現実表示装置200は、搬送シミュレーション装置100からシミュレーション結果のデータを取得してAR画像を生成してもよい。
また、AR画像は三次元画像であってもよく、二次元画像であってもよい。
また、基準座標系OCの関連付けは自動で行われてもよく、拡張現実表示装置200のユーザが直接AR画像を操作して手動で座標系を合わせてもよい。
【0039】
<搬送シミュレーション装置100のシミュレーション処理>
次に、第1実施形態に係る搬送シミュレーション装置100のシミュレーション処理に係る動作について説明する。
図5は、搬送シミュレーション装置100のシミュレーション処理について説明するフローチャートである。ここで示すフローは、シミュレーション処理が行われる間繰り返し実行される。
【0040】
ステップS11において、仮想物品供給部130は、供給スケジュールに基づいて、仮想物品71、71を仮想搬送部120の各仮想レーン121、122に供給する。
【0041】
ステップS12において、仮想物品管理部140は、仮想搬送部120の仮想的な移動に合わせて仮想物品71、72の位置を逐次更新する。
【0042】
ステップS13において、制御部110は、予め設定されたロボット300の動作プログラム、仮想搬送部120における設定、仮想物品供給部130における設定、及びステップS12で逐次更新された各仮想物品71、72の位置に基づいて、仮想搬送部120及び各仮想物品71、72のAR画像を逐次生成する。
【0043】
以上により、第1実施形態の搬送シミュレーション装置100は、実際の現場における設計段階の図面に基づいて仮想空間内に配置された仮想搬送部120上に仮想物品71、72を生成し、予め設定された仮想搬送速度で仮想物品71、72を搬送することで、物品の流れをシミュレートする。これにより、搬送シミュレーション装置100は、実際の現場と同様の環境で正確に物品の流れをシミュレートすることができる。
また、搬送シミュレーション装置100は、シミュレーション結果に基づいてAR画像を生成し、実際の現場の現実空間画像とAR画像とを拡張現実表示装置200に表示する。これにより、拡張現実表示装置200のユーザは、実際の現場に周辺機器が無い状態で、設計段階の図面に基づいてロボット300の動作と干渉する障害物が実際の現場にあるか否か等を確認することができ、ロボット300のパフォーマンスが期待通りか否かを確認することができる。
以上、第1実施形態について説明した。
【0044】
<第2実施形態>
第2実施形態では、搬送システム2は、実際の現場に搬送部が設置され、仮想物品供給部130aが所定の条件で仮想物品を搬送部に供給し、仮想物品管理部140aが搬送部の移動量に合わせて仮想物品の位置を逐次更新することにより、物品の流れをシミュレートする点が、第1実施形態と異なる。
これにより、搬送システム2は、実際の現場と同様の環境で正確に物品の流れをシミュレートすることができる。
以下に、第2実施形態について説明する。
【0045】
図6は、第2実施形態に係る搬送システムの全体構成を示すブロック図である。なお、図1に示した要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
図6に示すように、搬送システム2は、拡張現実表示装置200、ロボット300、制御装置400、及び搬送部500を有する。
【0046】
<搬送部500>
搬送部500は、実際の現場に設置された物品を搬送するコンベアであり、モータ510、及びパルスコーダ520を含む。
モータ510は、制御装置400からの制御指令に基づいて駆動することにより、搬送部500を動作させる。
パルスコーダ520は、移動量検知部として搬送部500の移動量をモータ510の出力軸の回転位置及び回転量として逐次検出する。パルスコーダ520は、検出値を制御装置400に送信する。なお、パルスコーダ520に替えて、エンコーダ等でもよい。
なお、第2実施形態に係る搬送シミュレーションでは、搬送部500のパラメータとして、搬送部500の長さ、幅、配置される位置及び向きが設定される。また、搬送部500の移動量は、制御装置400からの制御指示に基づいて実際に搬送部500が動作することにより、パルスコーダ520により検出された検出値から算出される。すなわち、搬送部500を実際に動作させることで、物品の流れがシミュレートされる。
搬送部500を動作させる理由は、制御装置400が搬送部500のモータ510を一定の速度で制御したとしても、搬送速度の加減速、いわゆる「脈動」が発生し、物品の一定間隔での供給が難しい。そこで、後述する仮想物品供給部130aは、搬送部500の移動量に基づく所定の間隔毎に仮想物品を供給することで、一定間隔の供給を実現する。
【0047】
また、搬送部500の物品を搬送する面には、少なくとも1つの仮想レーンが設定される。
図7は、搬送部500に設定される仮想レーンの一例を示す図である。図7に示すように、例えば、2つの異なる種類の物品を搬送部500で搬送する場合、搬送部500には2つの仮想レーン501、502が設定される。
なお、図7では、搬送部500は、下側から上側に搬送方向として仮想物品を搬送する。このため、図2の場合と同様に、搬送方向をX軸とし、搬送部500の幅方向をY軸とする搬送座標系(図示しない)が搬送部500に設定される。
【0048】
図7に示すように、仮想レーン501は、図2の場合と同様に、仮想レーン502の幅より広く設定される。また、破線で示す各仮想レーン501、502の中心線上の上流側に配置され仮想物品が仮想的に生成される仮想物品生成位置(図示しない)を基準にして仮想物品の生成位置をY軸方向にランダムに補正するランダム補正エリア511、512が設定される。
なお、仮想レーン501が仮想レーン502の幅より広く設定されたが、これに限定されず、仮想レーン501と仮想レーン502との幅は、同じに設定されてもよく、仮想レーン501が仮想レーン502の幅より狭く設定されてもよい。すなわち、仮想レーン501、502の幅は、実際の現場で生産を計画している物品の種類に応じて適宜決定されてもよい。
また、搬送部500には、2つの仮想レーン501、502が設定されたが、1又は3以上の複数の仮想レーンが設定されてもよい。また、仮想レーン501、502が搬送する物品は、互いに異なる種類としたが同じ種類の物品としてもよい。
【0049】
<制御装置400>
制御装置400は、当業者にとって公知のロボット制御装置であり、制御情報に基づいて動作指令を生成し、生成した動作指令をロボット300に送信する。これにより、制御装置400は、ロボット300の動作を制御する。また、制御装置400は、搬送部500の動作も制御する。なお、ロボット300に替えて工作機械等の場合、制御装置400は、数値制御装置等でもよい。
図6に示すように、制御装置400は、制御部410を有する。さらに、制御部410は、仮想物品供給部130a、及び仮想物品管理部140の機能を有する。
【0050】
なお、制御部410は、CPU、ROM、RAM、CMOSメモリ等を有し、これらはバスを介して相互に通信可能に構成される、当業者にとって公知のものである。
CPUは制御装置400を全体的に制御するプロセッサである。CPUは、ROMに格納されたシステムプログラム及びアプリケーションプログラムを、バスを介して読み出し、前記システムプログラム及びアプリケーションプログラムに従って制御装置400全体を制御する。これにより、図6に示すように、制御部410が、仮想物品供給部130a、及び仮想物品管理部140aの機能を実現するように構成される。
【0051】
<仮想物品供給部130a>
仮想物品供給部130aは、所定の条件で仮想物品を搬送部500に供給する。
具体的には、仮想物品供給部130aには、所定の条件として供給スケジュールが予め設定される。
供給スケジュールに設定されるパラメータには、例えば、供給時間(適用時間)又は供給総距離、及び所定の間隔が含まれる。例えば、供給スケジュールが「供給時間10秒又は供給総距離1m、及び所定の間隔200mm」の場合、仮想物品供給部130aは、搬送部500の移動量に基づく200mmの間隔毎に仮想物品を供給する。
なお、供給スケジュールは、少なくとも1つ、又はいくつかを組み合わせて各仮想レーン501、502に対して実行されてもよい。また、供給スケジュールは、仮想レーン501、502毎に異なってもよく、同じでもよい。
【0052】
例えば、仮想物品供給部130aは、図7に示すように、仮想レーン501において、「供給時間10秒又は供給総距離1m、及び所定の間隔200mm」の供給スケジュールA1と「供給時間10秒又は供給総距離1m、及び所定の間隔100mm」の供給スケジュールB1との組み合わせを繰り返し実行する。この場合、仮想物品供給部130aは、搬送部500のパルスコーダ520から受信する検出値から搬送部500の移動量を逐次算出し、供給スケジュールA1を実行する場合、搬送部500の移動量が200mm増加する毎に仮想物品71を供給する。また、仮想物品供給部130aは、供給スケジュールB1を実行する場合、搬送部500の移動量が100mm増加する毎に仮想物品71を供給する。
一方、仮想物品供給部130aは、図7に示すように、仮想レーン502において、「供給時間10秒又は供給総距離1m、及び所定の間隔100mm」の供給スケジュールB1と「供給時間10秒又は供給総距離1m、及び所定の間隔86mm」の供給スケジュールC1との組み合わせを繰り返し実行する。これにより、仮想物品供給部130aは、供給スケジュールB1を実行する場合、搬送部500の移動量が100mm増加する毎に仮想物品72を供給し、供給スケジュールC1を実行する場合、搬送部500の移動量が86mm増加する毎に仮想物品72を供給する。
なお、図7では、図3の場合と同様に、仮想物品71、72の一部を示す。
【0053】
また、仮想物品供給部130aは、ランダム補正エリア511、512においてランダムな補正がかけられた各仮想レーン501、502の位置で仮想物品を生成する。これにより、各仮想物品71、72は、図7に示すように、破線で示す各仮想レーン501、502の中心に対してY軸方向にランダムにずれて供給される。このように、仮想物品71、72が生成される位置をランダムな補正をかけることにより、実際の現場に設置されたロボット300と周辺装置とが干渉するか否か、ロボット300にはわせたケーブルが絡まないか否か等を確認することができる。
また、仮想物品供給部130aは、供給する仮想物品71、72に物品の種類を示す情報を付加してもよい。
【0054】
<仮想物品管理部140a>
仮想物品管理部140aは、搬送部500の移動量に合わせて仮想物品71、72の位置を逐次更新する。
具体的には、仮想物品管理部140aは、搬送部500の位置や姿勢、移動量、仮想レーン501、502等の設定と、仮想物品供給部130aの供給スケジュール等の設定とに基づいて、搬送座標系における仮想物品71、72の位置を逐次更新する。
例えば、仮想物品管理部140aは、仮想物品供給部130aにより各仮想レーン501、502に各仮想物品71、72が供給された時刻を基準にして、搬送部500のパルスコーダ520から受信する検出値から搬送部500の移動量を逐次算出する。仮想物品管理部140aは、算出された搬送部500の移動量に合わせて各仮想レーン121、122上の仮想物品の搬送座標系における位置を逐次更新する。これにより、図7に示すように、仮想物品71、72が搬送部500上を搬送部500と同じ向きに搬送される様子をシミュレートすることができる。
【0055】
<AR画像の生成処理>
制御部410は、例えば、図1の制御部110と同様に、図示しない記憶部に記憶されたAR画像生成プログラムを実行し、予め設定されたロボット300の動作プログラム、搬送部500における設定、仮想物品供給部130aにおける設定、及び仮想物品管理部140aにより逐次更新される各仮想物品71、72の位置に基づいて、各仮想物品71、72のAR画像データを逐次生成する。
制御部410は、生成したAR画像データを拡張現実表示装置200に送信する。拡張現実表示装置200は、受信したAR画像データの位置及び姿勢をカメラ座標系又は基準座標系に基づいて調整し、カメラ210が撮影した現実空間画像と、受信したAR画像とを表示する。
【0056】
なお、ロボット300の座標系と、搬送部500の搬送座標系と、拡張現実表示装置200のカメラ210のカメラ座標系とは予め対応付けられる。例えば、ロボット300の先端部に設けられた設定ツールを、搬送部500に置かれたキャリブレーション治具の複数の所定箇所に接触させることによって、ロボット300及び搬送部500の座標系として用いられる基準座標系OCが設定されてもよい。また、カメラ210が前記キャリブレーション治具やロボット300に貼られたマークを撮像した画像に基づいて、カメラ210のカメラ座標系が前記基準座標系OCに関連付けられてもよい。
【0057】
図8は、拡張現実表示装置200による表示の一例を示す図である。
図8に示すように、拡張現実表示装置200の表示部220には、拡張現実表示装置200のカメラ210により撮影されたロボット300、制御装置400、及び搬送部500の現実空間画像と、制御部410により生成されたAR画像とが表示される。
AR画像では、各仮想物品71、72は、矢印で示す搬送方向MDに搬送部500上を搬送される。
【0058】
そして、制御装置400は、例えば、仮想物品71、72の位置のデータに基づいて、仮想物品71、72のそれぞれが破線の矩形で示すロボット300の作業領域80に移動してきた場合、ロボット300に仮想物品71、72を取り出させる動作をさせ、図示しない物品排出用コンベア等に仮想物品71、72を置かせる動作をさせてもよい。そうすることで、ロボット300が設計通りに動作するか否か、ロボット300の動作に係る障害物の有無等を確認することができる。また、前述の供給スケジュールA1と供給スケジュールB1との組み合わせにより仮想物品71の間隔の粗密を敢えて作った場合に、ロボット300の取り出し作業等においてバッファとしての仮置き台を設ける必要があるか否か等を確認することができる。
【0059】
<搬送システム2のシミュレーション処理>
次に、第2実施形態に係る搬送システム2のシミュレーション処理に係る動作について説明する。
図9は、搬送システム2のシミュレーション処理について説明するフローチャートである。ここで示すフローは、シミュレーション処理が行われる間繰り返し実行される。
【0060】
ステップS21において、仮想物品供給部130aは、供給スケジュールに基づいて、所定の間隔毎に仮想物品71、71を搬送部500の各仮想レーン501、502に供給する。
【0061】
ステップS22において、仮想物品管理部140aは、搬送部500の移動量に合わせて仮想物品71、72の位置を逐次更新する。
【0062】
ステップS23において、制御部410は、予め設定されたロボット300の動作プログラム、搬送部500における設定、仮想物品供給部130aにおける設定、及びステップS22で逐次更新された各仮想物品71、72の位置に基づいて、仮想物品71、72のAR画像を逐次生成する。
【0063】
以上により、第2実施形態の搬送システム2は、実際の現場に設置された搬送部500上に仮想物品71、72を生成し、搬送部500の移動量に合わせて仮想物品71、72を搬送することで、物品の流れをシミュレートする。これにより、搬送システム2は、実際の現場と同様の環境で正確に物品の流れをシミュレートすることができる。
また、搬送システム2は、シミュレーション結果に基づいてAR画像を生成し、実際の現場の現実空間画像とAR画像とを拡張現実表示装置200に表示する。これにより、拡張現実表示装置200のユーザは、搬送部500が設置された状態で、ロボット300と周辺機器との干渉や、ロボット300の動作と干渉する障害物が実際の現場にあるか否か等を確認することができ、ロボット300のパフォーマンスが期待通りか否かを確認することができる。
以上、第2実施形態について説明した。
【0064】
以上、第1実施形態及び第2実施形態について説明したが、上述の実施形態に限定されるものではなく、目的を達成できる範囲での変形、改良等を含む。
【0065】
<変形例1>
上述の第1実施形態では、搬送シミュレーション装置100は、1つのコンピュータとしたが、これに限定されない。例えば、搬送シミュレーション装置100は、制御装置400に含まれてもよい。
また、搬送シミュレーション装置100の仮想搬送部120、仮想物品供給部130、及び仮想物品管理部140の一部又は全部を、例えば、サーバが備えるようにしてもよい。また、クラウド上で仮想サーバ機能等を利用して、搬送シミュレーション装置100の各機能を実現してもよい。
さらに、搬送シミュレーション装置100は、搬送シミュレーション装置100の各機能を適宜複数のサーバに分散される、分散処理システムとしてもよい。
【0066】
また同様に、第2実施形態に係る制御装置400の仮想物品供給部130a、及び仮想物品管理部140aの一部又は全部を、例えば、サーバが備えるようにしてもよい。また、クラウド上で仮想サーバ機能等を利用して、制御装置400の各機能を実現してもよい。
さらに、制御装置400は、制御装置400の各機能を適宜複数のサーバに分散される、分散処理システムとしてもよい。
【0067】
<変形例2>
また例えば、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、ロボット300が物品を取り出す等の作業を行うことを前提とする場合の物品の流れをシミュレーションしたが、これに限定されない。例えば、ロボット300が物品に加工、組立、検査、観察等の他の作業を行うシステムに、搬送シミュレーション装置100や搬送システム2の構成を適用することができる。
また、ロボット300を用いないシステムに搬送シミュレーション装置100や搬送システム2の構成を適用することができる。ロボット300を用いないシステムとしては、ロボット300に替えて、複数の塗装ガン(所定の装置)が仮想搬送部120又は搬送部500の上流側の所定位置に配置される自動塗装システム、洗浄ノズル(所定の装置)が仮想搬送部120又は搬送部500の上流側の所定位置に配置される洗浄システム等でもよい。
また、ロボット300を用いないシステムが検査システムの場合、例えば、ロボット300に替えて検査用センサ(所定の装置)が仮想搬送部120又は搬送部500の上流側に配置され、制御装置400は、検査用センサの検出画像を用いた画像処理及び判定を行ってもよい。
【0068】
<変形例3>
また例えば、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、拡張現実表示装置200は、ロボット300等の現実空間画像と、仮想物品71、72等を含むAR画像とを表示したがこれに限定されない。例えば、拡張現実表示装置200は、記憶部240に記憶されているAR画像操作プログラム241に基づいて、仮想搬送部120や搬送部500の動作、及び仮想物品供給部130、130aによる仮想物品71、72の供給の開始、停止を操作できるようにしてもよい。
【0069】
なお、第1実施形態に係る搬送シミュレーション装置100、及び第2実施形態に係る搬送システム2に含まれる各機能は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせによりそれぞれ実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0070】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(Non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(Tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAMを含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(Transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は、無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0071】
なお、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0072】
以上を換言すると、本開示のシミュレーション装置、及び搬送システムは、次のような構成を有する各種各様の実施形態を取ることができる。
【0073】
(1)本開示の搬送シミュレーション装置100は、仮想的に動作する仮想搬送部120と、所定の条件で仮想物品71、72を仮想搬送部120に供給する仮想物品供給部130と、仮想搬送部120の仮想的な移動に合わせて仮想物品71、72の位置を逐次更新する仮想物品管理部140と、を備える。
この搬送シミュレーション装置100によれば、実際の現場と同様の環境で正確に物品の流れをシミュレーションすることができる。
【0074】
(2)仮想搬送部120は少なくとも1つの仮想レーン121、122を有し、仮想レーン121、122は仮想搬送速度を有し、仮想レーン121、122は仮想物品71、72が仮想的に生成される仮想物品生成位置を有し、仮想レーン121、122は実際に配置される搬送部と同じ向きに仮想物品71、72を搬送し、仮想物品71、72は仮想物品生成位置を基準にランダム補正エリア131、132内でランダムな補正がかけられた仮想レーン121、122の位置で生成されてもよい。
そうすることで、仮想レーン121、122毎に異なる種類の物品を搬送することができ、異なる供給レートで物品を搬送することができる。また、ランダム補正により、今後実際の現場に設置されるロボット等と周辺装置とが干渉するか否か、前記ロボット等にはわせたケーブルが絡まないか否か等を確認することができる。
【0075】
(3)仮想物品供給部130は、仮想物品71、72を供給する少なくとも1つの供給スケジュールA、B、Cを有し、供給スケジュールA、B、Cは仮想物品71、72の供給レートを含み、供給スケジュールA、B、Cは供給レートと仮想搬送速度とから決まる間隔で仮想物品71、72を仮想レーン121、122に供給し、供給スケジュールA、B、Cは供給スケジュールが適用される適用時間、又は供給スケジュールが適用される間に仮想搬送部120が移動する移動量を示す供給総距離を含み、供給スケジュールA、Bは1つ、又はいくつかを組み合わせて仮想レーン121、122の各々に対して実行されてもよい。
そうすることで、ロボットの取り出し作業等において仮置き台が必要か否かのバッファ機能等を確認することができる。
【0076】
(4)仮想物品管理部140により逐次更新される仮想物品71、72の位置に所定の物品形状を表示する拡張現実表示装置200が備えられてもよい。
そうすることで、拡張現実表示装置200のユーザは、実際の現場に周辺機器が無い状態で、設計段階の図面に基づいてロボット300等と周辺機器との干渉等を確認することができ、ロボット300等のパフォーマンスが期待通りか否かを確認することができる。
【0077】
(5)仮想搬送部120の動作、及び仮想物品供給部130による仮想物品71、72の供給の開始、停止を拡張現実表示装置200から操作可能であってもよい。
そうすることで、拡張現実表示装置200のユーザは、動作を確認しつつ、仮想搬送部120の仮想搬送速度や、仮想物品供給部130の供給スケジュール等を変更することができる。
【0078】
(6)仮想物品供給部130は供給する仮想物品71、72に種類を示す情報を付加してもよい。
そうすることで、拡張現実表示装置200のユーザは、供給される仮想物品71、72の種類を目視しで確認することができる。
【0079】
(7)本開示の搬送システム2は、物品を搬送する搬送部500と、搬送部500の移動量を検出するパルスコーダ520と、所定の条件で仮想物品71、72を供給する仮想物品供給部130aと、搬送部500の移動量に合わせて仮想物品71、72の位置を逐次更新する仮想物品管理部140aと、を備える。
この搬送システム2によれば、(1)と同様の効果を奏することができる。
【0080】
(8)搬送部500は少なくとも1つの仮想レーン121、122を有し、仮想レーン121、122は仮想物品71、72が仮想的に生成される仮想物品生成位置を有し、仮想レーン121、122は搬送部500と同じ向きに仮想物品71、72を搬送し、仮想物品71、72は仮想物品生成位置を基準にランダム補正エリア131、132内でランダムな補正がかけられた仮想レーン121、122の位置で生成されてもよい。
そうすることで、(2)と同様の効果を奏することができる。
【0081】
(9)仮想物品供給部130aは、物品を供給する少なくとも1つの供給スケジュールA1、B1、C1を有し、供給スケジュールA1、B1、C1は搬送部500の移動量に基づく所定の間隔毎に物品を供給し、供給スケジュールA1、B1、C1は供給スケジュールが適用される適用時間、又は供給スケジュールが適用される間に搬送部500が移動する移動量を示す供給総距離を含み、供給スケジュールA1、B1は1つ、又はいくつかを組み合わせて仮想レーン121、122の各々に対して実行されてもよい。
そうすることで、(3)と同様の効果を奏することができる。
【0082】
(10)仮想物品管理部140aにより逐次更新される仮想物品71、72の位置に所定の物品形状を表示する拡張現実表示装置200を備えてもよい。
そうすることで、(4)と同様の効果を奏することができる。
【0083】
(11)搬送部500の動作、及び仮想物品供給部130aによる仮想物品71、72の供給の開始、停止を拡張現実表示装置200から操作可能であってもよい。
そうすることで、(5)と同様の効果を奏することができる。
【0084】
(12)仮想物品供給部130aは供給する仮想物品71、72に種類を示す情報を付加してもよい。
そうすることで、(6)と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 搬送シミュレーションシステム
2 搬送システム
100 搬送シミュレーション装置
120 仮想搬送部
130、130a 仮想物品供給部
140、140a 仮想物品管理部
200 拡張現実表示装置
300 ロボット
400 制御装置
500 搬送部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9