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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】電源回路及び無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20231017BHJP
   H03F 3/343 20060101ALI20231017BHJP
   H04B 1/18 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
G05F1/56 310X
H03F3/343 210
H04B1/18 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019162636
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021043487
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-08-20
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】永田 稔
【合議体】
【審判長】林 毅
【審判官】脇岡 剛
【審判官】吉田 美彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-037493号公報(JP,A)
【文献】特開平03-229314号公報(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0169303号(US,A1)
【文献】特開2004-070827号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/445
G05F 1/56
G05F 1/613
G05F 1/618
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号に基づいて、第1電流を出力する、第1回路と、
前記第1電流に応じた第2電流を生成する、第2回路と、
前記第1電流に応じた第1電圧に基づいて、フィードバック電圧を生成する、第3回路と、
前記フィードバック電圧に基づいて、前記駆動信号を生成する、第4回路と、
前記第2電流及び基準電流に基づいた電圧と、前記第1電圧と、を比較して、第2電圧を出力する、第5回路と、
を備える電源回路。
【請求項2】
前記第1回路は、第1トランジスタを備え、
前記第2回路は、前記第1トランジスタとカレントミラーを形成する第2トランジスタを備える、
請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記第3回路は、
前記第1電圧が印加される端子と、基準電位との間に接続される抵抗を備え、前記抵抗を所定の割合で分割した端子から前記フィードバック電圧を出力する、
請求項1又は請求項2に記載の電源回路。
【請求項4】
前記第4回路は、前記フィードバック電圧と、基準電圧との差を増幅する、第1差動増幅器を備える、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の電源回路。
【請求項5】
第1電流を出力する、第1トランジスタと、
前記第1トランジスタの駆動端子と接続し、前記第1トランジスタの出力する電圧及び基準電圧との差に基づいて、駆動電圧を出力する、前記第1トランジスタを駆動する電圧を印加する、第1差動増幅器と、
前記第1トランジスタの出力と、前記第1差動増幅器と、接続し、前記第1電流に基づく第1電圧を前記第1差動増幅器へとフィードバックする、フィードバック回路と、
駆動端子が前記第1トランジスタの駆動端子と接続し、前記第1電流に比例した第2電流を出力する、第2トランジスタと、
前記第1トランジスタの出力と、前記第2トランジスタとの出力と、接続し、前記第2電流及び基準電流に基づいた電圧と、前記第1電圧と、を比較して、第2電圧を出力する、第2差動増幅器と、
を備える電源回路。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれかに記載の電源回路と、
前記第1電圧を電源電圧とし、かつ、前記第2電圧を入力信号に対するバイアス電圧として、前記入力信号を増幅して出力する、増幅回路と、
を備える無線通信装置。
【請求項7】
複数の周波数帯の信号を、前記周波数帯ごとに受信する、複数のアンテナと、
前記アンテナのそれぞれが受信した前記信号の周波数に基づいて、複数の前記増幅回路のうち処理を行う前記増幅回路を選択する、前記アンテナのそれぞれに対応するスイッチと、
をさらに備え、
前記電源回路は、前記増幅回路のそれぞれについて備えられ、対応する前記増幅回路が増幅する前記信号の周波数に基づいて、前記第1電圧及び前記第2電圧が設定される、
請求項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記入力信号は、高周波信号であり、
前記増幅回路は、高周波増幅回路である、
請求項又は請求項に記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電源回路及び無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低ノイズ高周波増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)に流れる電流を設定するバイアス回路は、RF信号が入力されるトランジスタとゲートが共有接続されるトランジスタを設け、基準電流源との間でカレントミラーを構成している。しかしながら、LNAで使用するトランジスタは、良好な高周波特性を得るためにゲート長の短いトランジスタを使用する場合が多い。このため、カレントミラーを構成した場合、ペア性が悪く、電流のばらつきが大きくなると言う問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-019631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一実施形態は、電流のばらつきの小さい出力を可能とする、電源回路及びこの電源回路を備える無線通信装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、電源回路は、第1回路と、第2回路と、第3回路と、第4回路と、第5回路と、を備える。第1回路は、駆動信号に基づいて、第1電流を出力する。第2回路は、前記第1電流に応じた第2電流を生成する。第3回路は、前記第1電流に応じた第1電圧に基づいて、フィードバック電圧を生成する。第4回路は、前記フィードバック電圧に基づいて、前記駆動信号を生成する。第5回路は、前記第1電流及び前記第2電流に基づいて、第2電圧を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態に係る電源回路の概略図。
図2】一実施形態に係る電源回路の一例に係る回路図。
図3】一実施形態に係る電源回路の接続例を示す回路図。
図4】一実施形態に係る電源回路の実装例を示す図。
図5】一実施形態に係る電源回路の一例に係る回路図。
図6】一実施形態に係る電源回路の一例に係る回路図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0008】
図1は、本実施形態に係る電源回路1の概略図である。電源回路1は、第1回路10と、第2回路12と、第3回路14と、第4回路16と、第5回路18と、を備える。この電源回路1は、例えば、LNAに対する、電源電圧Vlna(第1電圧)と、入力RF(Radio Frequency)信号に対するバイアス電圧Vbias(第2電圧)と、を出力する。電源回路1は、例えば、リニアレギュレータ、より具体的には、LDO(Low Dropout)電源である。
【0009】
第1回路10は、スイッチング素子を備え、駆動信号が入力されると、電源回路1の電源電圧Vddから第1電流I1を生成して出力する。電源回路1は、この第1電流I1と、後述する第3回路14の抵抗値により電圧(例えば、接地面からの電位差)を形成し、この電圧をLNAの電源電圧Vlna(第1電圧)として出力する。
【0010】
第2回路12は、スイッチング素子を備え、駆動信号が入力されると、電源電圧Vddから第1電流I1と比例する第2電流I2を生成して出力する。
【0011】
第3回路14は、第1回路10が出力する第1電流I1により電源電圧Vlnaを生成することが可能なインピーダンスを備える。この第3回路14は、第1回路10が出力した電流に対して、外部において負荷が接続され、負荷電流が流れた場合に、駆動信号を制御するために、第1電流I1と負荷電流Iloadとの差に基づいた電圧をフィードバックするフィードバック電圧Vfbを生成する。
【0012】
第4回路16は、フィードバック電圧Vfbと、基準電圧Vrefとに基づいて、第1回路10及び第2回路12の駆動信号を制御する。
【0013】
基準電圧Vrefは、例えば、定常状態、すなわち、電源回路1が所定の電圧をVlnaとして出力している状態において、第1回路10が所定の電流を出力するように設定される。この所定の電流は、第2回路12に流れる電流が基準電流Irefとなるように定義される。例えば、第1回路10の出力電流と、第2回路12の出力電流との比が80:1である場合には、第1回路10から80×Irefの電流が流れるように設定される。
【0014】
第5回路18は、第1電流I1から負荷電流Iloadを引いた値により第3回路により生成される電圧と、第2電流I2から基準電流Irefを引いた値により生成される電圧と、に基づいて、バイアス電圧Vbias(第2電圧)を出力する。
【0015】
図2は、一実施形態に係る電源回路1の実装の一例を示す図である。電源回路1は、第1回路として第1トランジスタP1を、第2回路として第2トランジスタP2を、第3回路として抵抗Rf、Rsを、第4回路として第1差動増幅器Amp1を、第5回路として第2増幅器Amp2を備える。
【0016】
電源回路1は、入力端子inと、出力端子out1、out2を備える。入力端子inは、正側の電源電圧Vddが入力される端子である。図2においては、接地面が記載されているが、この入力端子inと対になる負側の電源電圧として、接地端子が備えられていてもよい。また、接地ではなく、Vddに対応する負の電圧が印加される入力端子を備えていてもよい。
【0017】
出力端子out1は、外部へと出力する電源電圧Vlnaを出力する。外部の負荷としては、例えば、LNAが接続される。出力端子out2は、このLNAのRF信号の入力のバイアス電圧Vbiosを出力する。
【0018】
第1トランジスタP1は、例えば、p型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)であり、ソースが入力端子inと接続され、ゲートが第1差動増幅器Amp1と接続され、ドレインが出力端子out1と接続される。この第1トランジスタP1は、ソースに電源電圧Vddが印加され、ゲートに駆動電圧Vgateが印加される。ゲートに印加される駆動電圧Vgateにより、ドレインから出力される第1電流I1が制御される。
【0019】
第2トランジスタP2は、例えば、p型のMOSFETであり、ソースが入力端子inと接続され、ゲートが第1差動増幅器Amp1の出力と接続され、ドレインには定電流が流される。この第2トランジスタP2は、ソースに電源電圧Vddが印加され、ゲートに駆動電圧Vgateが印加される。ゲートに印加される駆動電圧Vgateにより、ドレインから出力される第2電流I2が制御される。
【0020】
第2トランジスタP2は、例えば、第1トランジスタP1とゲートを共有接続し、カレントミラーを形成してもよい。この場合、第1トランジスタP1と第2トランジスタP2のドレイン電流の比は、任意に設定することが可能であり、使用用途、外部負荷等、種々の状況により設計することが可能である。
【0021】
また、第2トランジスタP2のドレインは、基準電流源と接続され、基準電流Irefがドレインから流れる。このように、基準電流Irefがドレインと接続されることにより、第2トランジスタは、ゲートに印加された駆動電圧Vgateを増幅して出力する増幅器として動作する。
【0022】
このように、第2トランジスタP2は、第1トランジスタP1に比例する電流を出力するカレントミラーとして、かつ、ゲートに印加された駆動電圧Vgateにゲインを掛けて出力する増幅器として動作する。すなわち、第2トランジスタP2は、第1トランジスタP1のドレイン側の電圧にゲインを掛けて出力する増幅器として動作する。
【0023】
抵抗Rfは、一方の端子が第1トランジスタP1のドレインと接続され、他方の端子が抵抗Rsを介して接地される。抵抗Rf、Rsの合成抵抗に定常状態における第1トランジスタP1のドレインからの電流が流れることにより、外部負荷に出力する電源電圧Vlnaが生成される。これらの抵抗により、フィードバック電圧Vfbが、Vlan×Rs/(Rs+Rf)として出力される。
【0024】
第1差動増幅器Amp1は、非反転入力が抵抗Rf、Rsの間のノード(上記の抵抗Rfの他方の端子)と接続あれ、反転入力に基準電圧Vrefが印加され、出力が第1トランジスタP1のゲート及び第2トランジスタP2のゲートと接続される。この第1差動増幅器Amp1は、フィードバック電圧Vfbを基準電圧Vrefと比較して、これらの電圧の差を増幅して駆動電圧Vgateとして出力する。
【0025】
第2差動増幅器Amp2は、非反転入力が第2トランジスタP2のドレインと接続され、反転入力が第1トランジスタP1のドレインと接続され、出力が出力端子out2と接続される。この第2差動増幅器Amp2は、第2トランジスタP2のドレインと、第2トランジスタP1のドレインとの電位差を増幅して、出力端子out2を介してバイアス電圧Vbiasを出力する。
【0026】
全体的な動作について、説明する。
【0027】
負荷が接続されていない状態において、電源電圧Vddが入力端子inに接続されると、ゲートに-Vrefに比例する電圧が印加され、第1トランジスタP1と第2トランジスタP2がオンとなり、第1電流I1と第2電流I2がドレインから出力される。ここで、Vrefは、各トランジスタのしきい値電圧の絶対値よりも大きいとする。
【0028】
第1トランジスタP1のドレイン電流である第1電流I1により、抵抗Rf、Rsに基づいて、第1トランジスタP1のドレインの電位が定義される。抵抗Rf、Rsにより、このドレインの電圧のRs/(Rs+Rf)倍の電圧がフィードバック電圧Vfbとして、第1差動増幅器Amp1の非反転入力に入力される。
【0029】
第1差動増幅器Amp1は、フィードバック電圧Vfbと、基準電圧Vrefとの差を増幅した駆動電圧Vgateを、第1トランジスタP1及び第2トランジスタP2のゲートへと印加する。Vgateの値は、フィードバック電圧Vfbにより大きくなるため、第1トランジスタP1及び第2トランジスタP2のドレイン電流が減少する。
【0030】
この動作は、第1トランジスタP1の電圧が、設定された外部への電源電圧Vlnaに収束するまで継続し、最終的に、第1トランジスタP1の出力する電圧が電源電圧Vlnaとなり、定常状態となる。また、定常状態においては、第1トランジスタP1のドレイン電位と、第2トランジスタP2のドレイン電位との差が増幅されて、第2差動増幅器Amp2の出力端子の電圧が、バイアス電圧Vbiasとなる。
【0031】
定常状態において、所望の電源電圧Vlnaと、所望のバイアス電圧Vbiasが得られるように各回路素子を設定する。さらに、この定常状態において、第2トランジスタP2のドレイン電流が基準電流Irefとなるように、基準電圧Vref、基準電圧Irefを設定する。また、先に基準電圧Vref、基準電流Irefを設定しておき、定常状態において電源電圧Vddを入力すると、出力端子out1には電源電圧Vlnaが、出力端子out2には、バイアス電圧Vbiasが印加されている状態になるように各素子の値を決めてもよい。
【0032】
次に、負荷、例えば、LNAが出力端子out1、out2に接続されている状態を考える。
【0033】
図3は、電源回路1にLNA2を接続した例を示す図である。LNA2は、一例として単純なものを示したものであり、さらに複雑な構成であってもよい。例えば、nMOSFETを複数段カスケード接続にしたもの等であってもよく、いずれにせよ、本実施形態を限定するものではない。
【0034】
電源回路1の出力端子out1は、LNA2の電源入力端子LNA_inと接続され、電源回路1の出力端子out2は、RF信号が電源回路1に伝達されないように抵抗を介してLNA2のバイアス入力としてバイアス端子LNA_biasと接続される。また、LNA2のRF信号入力端子RF_inには、入力信号であるVrfが入力される。入力信号Vrfは、Vbiasによりバイアスが加えられてトランジスタN1のゲートに印加される。トランジスタN1により入力信号Vrfにゲインが掛けられて出力端子RF_outから出力される。
【0035】
電源回路1にRF信号が入力されていないLNA2が接続されると、出力端子out1から負荷電流Iloadが流れる。この負荷電流Iloadは、抵抗Rf、Rsにより生成される電圧を低下させる。このため、電源回路1の出力端子out1から出力される電圧の低下が発生する。
【0036】
フィードバック電圧Vrefの低下により、第1差動増幅器Amp1の出力する電圧がより低くなり、第1トランジスタP1のドレイン電流が高くなる。同様に、第2トランジスタP2のゲートに印加される駆動電圧Vgateが下がるので、第2トランジスタP2のドレイン電流が増大する。
【0037】
この結果、一時的に第1トランジスタP1のドレイン電圧が低くなると、第2トランジスタP2のドレイン電圧が高くなるので、第1トランジスタP1のドレイン電圧が定常状態へと復帰するまでの間、第2差動増幅器Amp2からは、定常状態よりも高い電圧が出力される。そして、前述した動作と同様に、時定数的に十分な時間が経過すると、定常状態へと至る。
【0038】
このように、負荷電流Iloadが増大すると、バイアス電圧Vbiasが高くなり、トランジスタN1のドレイン電流を大きくする。
【0039】
逆に、定常状態から負荷電流Iloadが少なくなると、第1トランジスタP1のドレイン電圧が高くなる。第1トランジスタP1のドレイン電圧が高くなると、フィードバック電圧Vrefもそれに伴い高くなり、第1トランジスタP1のゲート及び第2トランジスタP2のゲートに印加される駆動電圧Vgateが高くなる。駆動電圧Vgateが高くなるので、第1トランジスタP1のドレイン電流I1及び第2トランジスタP2のドレイン電流I2が少なくなる。
【0040】
この結果、一時的に第1トランジスタP1のドレイン電圧が高くなると、第2トランジスタP2のドレイン電圧が低くなるので、第1トランジスタP1のドレイン電圧が定常状態へと復帰するまでの間、第2差動増幅器Amp2からは、定常状態よりも低い電圧が出力される。そして、前述した動作と同様に、時定数的に十分な時間が経過すると、定常状態へと至る。
【0041】
このように、負荷電流Iloadが減少すると、バイアス電圧Vbiasが低くなり、トランジスタN1のドレイン電流を小さくする。なお、バイアス電圧Vbiasが低くなった場合においても、入力RF信号の最小値の絶対値を上回るようにバイアス電圧Vbiasが出力されるようにしておくことにより、RF信号の劣化を回避することが可能である。
【0042】
上記に示すように、負荷電流Iloadが増大/減少すると、バイアス電圧Vbiasが高く/低く制御され、RF信号が入力されるLNA2内のトランジスタN1のドレイン電流を増大/減少させる。換言すると、電源回路1、特に、第1トランジスタP1がLNA2に流れる負荷電流Iloadをモニタし、それに応じた電流がトランジスタN1に流れるようにバイアス電圧Vbiasを制御する。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、LNAに印加するバイアス電圧を、LNA自体に流れる負荷電流に基づいて制御することが可能となる。LNA自体に流れる負荷電流のモニタは、電源回路1の電源電圧を出力する第1トランジスタP1において実行される。しかしながら、第1トランジスタP1とLNAの増幅トランジスタN1は、ゲートを共有接続する訳ではないので、第1トランジスタP1のゲートを高周波に適した設計にする必要がなく、ゲート長を高周波信号の受信に用いるトランジスタに比べて長くすることが可能である。
【0044】
このように、電源回路1に用いる出力に関するトランジスタは、例えば、ゲート長を短くする等、高周波信号向けに設計されている必要はないので、LNAのRF信号が入力されるトランジスタとの良好なペア性能を確保することができ、バイアス電圧を出力するトランジスタも安定して動作させることができる。このため、LNAの電流のばらつきが小さいバイアス電圧を出力することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態に係る電源装置1によれば、所定の電流を流す定電流源を確保することにより適切なバイアス電圧を出力することができる。このことより、バイアス電圧を出力する回路に対してトリミング、電流調整等の回路の設置面積を削減することが可能となり、より柔軟の回路設計を行うこともできる。
【0046】
なお、図2図3においては、基準電流源、基準電圧源は、電源回路1の外部に備えられているが、これらは電源装置1の内部に備えられていてもよい。また、図示を省略しているが、電源電圧Vddは、電源電圧が必要となる適切な箇所、例えば、第1差動増幅器Amp1に接続されてもよい。これらの図は、本実施形態の要点となる箇所を描いたものであり、この他に適切な回路素子、例えば、抵抗、キャパシタ、ダイオード等が別途備えられることを除外するものではない。
【0047】
図4は、本実施形態に係る電源回路1の実装例を示す図である。電源回路1及びLNA2は、無線通信装置3に実装される。
【0048】
無線通信装置3は、アンテナ300、・・・、30Nと、共振器310、・・・、31N、と、入力側スイッチ320、・・・、32Nと、電源回路330a、・・・、330x、33Na、・・・、33Nxと、LNA340a、・・・、340x、34Na、・・・、34Nxと、出力側スイッチ350と、を備える。図4は、無線通信装置3の受信側の機能を示したものであり、これ以外の機能を除外するものではない。
【0049】
無線通信装置3は、複数のアンテナ300、・・・、30Nにより、複数の周波数帯の信号を受信する。信号は、例えば、RF信号である。
【0050】
複数のアンテナ300、・・・、30Nは、例えば、それぞれのアンテナに対応する周波数帯の信号を受信する。これら複数のアンテナ300、・・・、30Nは、異なる周波数帯に含まれる同じ周波数の受信を除外するものではない。例えば、周波数帯がBand7(2620-2690MHz)とBand41(2496-2690MHz)の電波を受信するアンテナがそれぞれ備えられていてもよい。
【0051】
共振器310、・・・31Nは、対応するアンテナが受信した信号のノイズを除去する。また、信号を増幅させてもよい。共振器310は、信号の品質により、必須のものではなく、省略してもよい。
【0052】
入力側スイッチ320は、各周波数帯に含まれる電波をさらに細かく分類し、適切なLNAを選択し、選択したLNAに受信した信号が出力されるように接続する。また、電源回路についても、選択したLNAに対応する電源回路が起動するように、イネーブル信号を併せて送信してもよい。
【0053】
電源回路330a、・・・、330xは、前述した実施形態における電源回路1をそれぞれ備える。LNA340a、・・・、340xは、前述した実施形態におけるLNA2をそれぞれ備える。
【0054】
LNAは、入力側スイッチにおいて選択されたものがアクティブとなり、適切な周波数の信号が入力される。電源回路は、対応するLNAに適した設計となっており、適切な電源電圧及び適切なバイアス電圧をLNAへと出力する。入力側スイッチにより接続された適切なLNAにより、受信したRF信号を増幅して出力する。
【0055】
出力側スイッチ350は、選択されたLNAと、無線通信装置3の処理回路とを選択して接続し、LNAからの出力を適切な処理回路へと出力する。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る電源回路1は、無線通信装置3において、種々の周波数帯から選択され、また、当該周波数帯に含まれる周波数(例えば、10MHz程度の帯域を持つ)の信号を適切に処理するLNAに対して、それぞれ備えられる。
【0057】
図5は、電源回路1の別の形態に係る回路図を示す。第5回路18は、前述の実施形態とは異なり、第3増幅回路Amp3と、第3トランジスタP3と、カレントミラー180と、を備える。図5において、参照電流源が電源回路1に備えられているが、これには限られず、参照電流源は電源回路1の外部に備えられてもよく、この場合、参照電流源を入力するための端子が電源回路1に備えられていてもよい。
【0058】
第3増幅器Amp3は、前述の第2増幅器Amp2の代わりに備えられるものであり、非反転端子が第1トランジスタP1のドレインと接続され、反転端子が第2トランジスタP2のドレインと接続される。第3増幅器Amp3は、第1トランジスタP1のドレインの電圧、すなわち、出力電圧と、第2トランジスタP2のドレインの電圧との差を増幅して出力する。
【0059】
第3トランジスタP3は、例えば、p型のMOSFETであり、ゲートが第3増幅器Amp3の出力と接続され、ソースが第2トランジスタP2のドレインと接続され、ドレインがカレントミラー180を介して接地する。第3増幅器Amp3の出力する電圧がしきい値電圧を下回ると、第3トランジスタP3はオンとなり、ソースからドレインへと電流が流れる。
【0060】
カレントミラー180は、第3トランジスタP3のドレインと接地点の間と、参照電流源及び出力端子out2と接地点の間と、に備えられる。カレントミラー180は、第3トランジスタP3のドレインから出力される電流を、参照電流側に所定の比率をもってミラーリングする。すなわち、第3トランジスタP3のドレイン電流が多くなるほど、参照電流Irefから接地点へと流す電流が多くなり、出力端子out2から出力されるバイアス電圧Vbiasを低くする。
【0061】
このような第5回路18を備えることにより、負荷電流が多くなった場合には、第3増幅器Amp3の出力電圧が低くなる。第3増幅器Amp3の出力電圧が低くなると、第3トランジスタP3のドレイン電流が増加する。第3トランジスタP3のドレイン電流が増加すると、出力端子out2側からカレントミラー180を介して接地点へと流れる電流が増加し、出力端子out2の電位、すなわち、バイアス電圧Vbiasが低くなる。
【0062】
一方で、負荷電流が少なくなった場合には、第3増幅器Amp3の出力電圧が高くなる。第3増幅器Amp3の出力電圧が高くなると、第3トランジスタp3のドレイン電流が減少する。第3トランジスタP3のドレイン電流が減少すると、出力端子out2側からカレントミラー180を介して接地点へと流れる電流が減少し、出力端子out2の電位、すなわち、バイアス電圧Vbiasが高くなる。
【0063】
このように、外部の負荷により電源電圧Vlnaの増減にしたがい、バイアス電圧Vbiasも増減する。この結果、図5に係る電源回路1においても、前述の実施形態と同様の効果をそうすることが可能となる。
【0064】
図6は、電源回路1のさらなる別の例を示す回路図である。電源回路1において、参照電圧Vrefを電源電圧Vlnaと同じ電圧とすることも可能である。この場合、図6に示すように、第3回路14を省略することも可能である。第3回路14の代わりに、第1トランジスタP1のドレインと、第1増幅器Amp1の非反転端子とを接続する配線が備えられる。このように接続することにより、第1トランジスタP1のドレインの電位をそのまま第1増幅器Amp1にフィードバックすることができる。
【0065】
このように、参照電圧Vrefを電源電圧Vlnaと同じ電圧とすることにより、第3回路14を省略してもよい。この場合、第5回路18を、さらに、図5に示す第5回路としてもよい。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0067】
例えば、前述の全ての実施形態において、n型MOSFETは、状況に応じ、p型のMOSFETとしてもよく、p型のMOSFETは、状況に応じ、n型のMOSFETとしてもよい。さらに、MOSFETは、同様の機能を有する他のトランジスタ、例えば、バイポーラトランジスタ等、電圧、電流又はその他の外部からのスイッチング信号により、スイッチング素子として機能するものを用いてもよい。例えば、バイポーラトランジスタを用いる場合には、本明細書中の説明又は請求項中における、ゲート、ソース、ドレインは、それぞれ、ベース、コレクタ(エミッタ)、エミッタ(コレクタ)と適切な組み合わせに読み替えてもよい。いずれに読み替える場合においても、ゲートに印加する電圧、又は、ベースに加える電流の大きさ等、スイッチングに用いる物理量は、各素子の特性により、適切に上述した機能を有するものと同等の動作を行うように、適宜読み替えることができるものである。
【符号の説明】
【0068】
1:電源回路、
10:第1回路、
12:第2回路、
14:第3回路、
16:第4回路、
18:第5回路、
180:カレントミラー
P1、P2、P3:トランジスタ、
Rf、Rs:抵抗、
Amp1、Amp2、Amp3:差動増幅器、
2:LNA、
N1:トランジスタ、
3:無線通信装置、
300、・・・、30N:アンテナ、
310、・・・、31N:共振器、
320、・・・、32N:入力側スイッチ
330a、・・・、330x、33Na、33Nx:電源回路
340a、・・・、340x、34Na、34Nx:LNA
350:出力側スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6