(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】包装吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20231017BHJP
A61F 13/47 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
A61F13/15 220
A61F13/47 300
(21)【出願番号】P 2019175588
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小縄 聡子
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-167416(JP,A)
【文献】特開2013-198586(JP,A)
【文献】特開2013-048786(JP,A)
【文献】特開2007-268015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装シートと、前記包装シートによって包装された吸収性物品とを含む包装吸収性物品であって、
前記包装シートは、
第1折り線で折り畳まれた長手方向の一端を含む第1領域と、第2折り線で折り畳まれた前記長手方向の他端を含む第2領域とを有し、前記第1領域が前記第2領域に重ねられるように前記長手方向に折り畳まれ、前記長手方向に直交する幅方向の縁部でシールされてシール部が形成されており、
前記シール部は、前記シールされている前記包装シートの枚数が最も少ない薄ゾーンと、前記薄ゾーンよりも前記シールされている前記包装シートの枚数が多い厚ゾーンとを含み、
前記折り線から所定距離離れた位置に、前記シールされている前記包装シートの剥離の前記長手方向での進行を抑止する剥離抑止部が
、前記薄ゾーンに形成されており、
前記剥離抑止部は、剥離不能に形成された部分を含む、包装吸収性物品。
【請求項2】
包装シートと、前記包装シートによって包装された吸収性物品とを含む包装吸収性物品であって、
前記包装シートは、
第1折り線で折り畳まれた長手方向の一端を含む第1領域と、第2折り線で折り畳まれた前記長手方向の他端を含む第2領域とを有し、前記第1領域が前記第2領域に重ねられるように前記長手方向に折り畳まれ、前記長手方向に直交する幅方向の縁部でシールされてシール部が形成されており、
前記シール部は、前記シールされている前記包装シートの枚数が最も少ない薄ゾーンと、前記薄ゾーンよりも前記シールされている前記包装シートの枚数が多い厚ゾーンとを含み、
前記折り線から所定距離離れた位置に、前記シールされている前記包装シートの剥離の前記長手方向での進行を抑止する剥離抑止部が
、前記薄ゾーンに形成されており、
前記剥離抑止部は、前記縁部における切込み又は切欠きを含む、包装吸収性物品。
【請求項3】
前記薄ゾーンは、前記第1折り線側の第1薄ゾーンと、前記第2折り線側の第2薄ゾーンとを含み、
前記剥離抑止部は、平面視で、前記第1薄ゾーンに形成された第1剥離抑止部、及び前記第2薄ゾーンに形成された第2剥離抑止部を含む、請求項1又は2に記載の包装吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、失禁用パッド、パンティライナー(おりものシート)といった吸収性物品は、衛生面から、また持ち運びを便利にするために、包装シートによって包装された状態で提供されることが一般的である。このような包装された吸収性物品、すなわち包装吸収性物品としては、例えば、細長形状の包装シートが吸収性物品とともに長手方向に折り畳まれ、包装シートの幅方向両縁部がヒートシール等により接合されてシール部が形成されているものが多い。
【0003】
このような包装吸収性物品を開封する場合、使用者は、両縁部のシール部における包装シート同士を互いに剥がす必要がある。その際、シール部において包装シート同士が剥がされる音(剥離音)が発生するが、使用者によってはそのような音を不快に感じる場合がある。そのため、剥離音を低減させる工夫が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、シール部4に、弱接合部41と強接合部42とが、個装体1の中央部側から外方側に向かってこの順に形成された構成が記載されている。当該構成により、開封が容易になり剥離音も小さくできることが記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、シートが剥離される領域自体を低減したものではない。そのため、開封時の状況や使用者の剥がし方等によっては剥離音を十分に低減できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、開封時の剥離音を低減し、剥離音による不快感を十分に低減した包装吸収性物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、包装シートと、前記包装シートによって包装された吸収性物品とを含む包装吸収性物品であって、前記包装シートは、少なくとも1つの折り線で長手方向に折り畳まれ、前記長手方向に直交する幅方向の縁部でシールされてシール部が形成されており、前記折り線から所定距離離れた位置に、前記シールされている前記包装シートの剥離の前記長手方向での進行を抑止する剥離抑止部が形成されている。
【0009】
上記第一の態様によれば、シールされている包装シートの剥離の長手方向での進行を抑止する剥離抑止部が形成されている。そのため、包装吸収性物品の開封時に、シールされている包装シートの剥離を進行させていった時、剥離抑止部が形成された位置で剥離の進行を止めることができる。これにより、包装吸収性物品のシール部のうち包装シートが剥離される部分の長さが短くなり、剥離音が発生する部分が減るため、剥離音をより効果的に低減することができる。
【0010】
本発明の第二の態様は、前記包装シートは、第1折り線で折り畳まれた前記長手方向の一端を含む第1領域と、第2折り線で折り畳まれた前記長手方向の他端を含む第2領域とを有し、前記第1領域が前記第2領域に重ねられるように折り畳まれており、前記シール部は、前記シールされている前記包装シートの枚数が最も少ない薄ゾーンと、前記薄ゾーンよりも前記シールされている前記包装シートの枚数が多い厚ゾーンとを含み、前記薄ゾーンに、前記剥離抑止部が形成されている。
【0011】
上記第二の態様によれば、包装シートが少なくとも三つ折りで吸収性物品を包装した包装吸収性物品であっても、開封時に吸収性物品の取り出しを妨げることなく、シール部の途中で、剥離抑止部にて剥離の進行を抑止できる。
【0012】
本発明の第三の態様では、前記薄ゾーンは、前記第1折り線側の第1薄ゾーンと、前記第2折り線側の第2薄ゾーンとを含み、前記剥離抑止部は、平面視で、前記第1薄ゾーンに形成された第1剥離抑止部、及び前記第2薄ゾーンに形成された第2剥離抑止部を含む。
【0013】
上記第三の態様によれば、最小枚数の包装シートが積層されシールされている薄ゾーンが、吸収性物品の第1折線側及び第2折り線側の両方に存在し、各薄ゾーンに剥離抑止部が形成されている。開封時には通常、包装シートの第1領域を捲って剥がすステップと、その後に第2領域を捲って剥がすステップとを行うが、その両ステップにおいて剥離音が発生する時間長さを低減することができる。
【0014】
本発明の第四の態様では、前記剥離抑止部は、前記シール部の幅を減少させることによって形成される。
【0015】
上記第四の態様によれば、シール部の幅を減少させることで、長手方向に沿ったシール部の合計長さが小さくなる部分が形成される。このような部分は、シール部の形成時にローラ等の圧力が集中し、接合強度が高められる部分であり、剥離抑止部として作用させることができる。また、包装シートを剥がしていく際に剥離は長手方向に進行するが、シールの幅が減少した部分では、剥離の進行が少なくとも部分的に中断されることとなる。中断された剥離の進行の再開のために比較的大きな剥離抵抗が生じ得る。よって、剥離抑止部の剥離の進行の抑止作用を高められる。
【0016】
本発明の第五の態様では、前記剥離抑止部において、前記シール部の前記幅方向内側の輪郭線は、幅方向に対して、幅方向中央側が前記剥離の進行方向前方に傾斜した線を含む。
【0017】
開封時、例えば包装シートの第1領域を捲って剥がすステップでは、剥離が進行する方向(剥離進行方向)は、第1折り線に向かう方向を前方とする長手方向になる。この際、使用者は第1領域の幅方向中央付近を持って剥がすため、シール部の幅方向中央側で剥離が先行し、第1領域が未だ剥がされていない部分と既に剥がされた部分との境界線は、幅方向に平行ではなく、幅方向に対して、幅方向中央側が剥離進行方向前方に傾斜した線となる傾向がある。
【0018】
上記第五の態様によれば、シール部の幅方向内側の輪郭線が、幅方向に対して、幅方向中央側が剥離進行方向前方に傾斜した線を含む。シール部の輪郭線が、上述の境界線(未だ剥がされていない部分と既に剥がされた部分との境界線)に沿っていると、シール部の幅が減少した位置で少なくとも部分的に中断された剥離の進行を再開しようとしても、剥離抵抗が大きいため剥離の進行が抑制される。シール部の幅を小さくしたことと相俟って、剥離の進行を抑止する剥離抑止部の作用を一層大きくすることができる。
【0019】
本発明の第六の態様では、前記剥離抑止部の前記剥離の進行方向後方で前記シール部が不連続になっており、前記シール部の不存在部分が形成されており、前記不存在部分の輪郭が前記幅方向に対して傾斜した線を含む。
【0020】
上記第六の態様によれば、シール部が不連続になっていることで剥離の進行が中断され得る。そして、中断後に剥離の進行を再開するためには比較的大きな剥離抵抗が生じるので、剥離抑止部の剥離進行抑止の作用が大きくなる。また、シール部の不存在部分の輪郭が幅方向に対して傾斜した線を含むので、包装吸収性物品の外部から縁部を介して内部に埃や塵等が入りにくい。剥離抑止部の作用を向上させつつ、包装吸収性物品を衛生に保つことができる。
【0021】
本発明の第七の態様では、前記剥離抑止部は、剥離不能に形成された部分を含む。
【0022】
上記第七の態様によれば、使用者が力を入れて開封をした場合等でも、剥離抑止部の剥離の進行抑止作用をより確実に発揮させることができる。そのため、シール部のうち包装シートが剥離される部分の長さをより確実に短くでき、剥離音を低減できる。
【0023】
本発明の第八の態様では、前記剥離抑止部は、前記縁部における切込み又は切欠きを含む。
【0024】
上記第八の態様によれば、シール部が形成された包装シートの縁部の材料自体が少なくとも部分的に不連続となるため、剥離抑止部の剥離の進行抑止作用をより確実に発揮させることができる。そのため、シール部のうち包装シートが剥離される部分の長さをより確実に短くでき、剥離音を低減できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によれば、開封時の剥離音を低減し、剥離音による不快感を十分に低減した包装吸収性物品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態による包装吸収性物品を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態における剥離抑止部の変形例を示す部分拡大図である。
【
図4】本発明の第1実施形態における剥離抑止部の別の変形例を示す部分図である。
【
図5】本発明の第1実施形態における剥離抑止部のさらに別の変形例を示す部分図である。
【
図6】本発明の第2実施形態による包装吸収性物品を示す図である。
【
図7】本発明の第3実施形態による包装吸収性物品を示す図である。
【
図8】本発明の第3実施形態における剥離抑止部の変形例を示す部分図である。
【
図9】本発明の第4実施形態による包装吸収性物品を示す図である。
【
図10】本発明の第4実施形態における剥離抑止部の変形例を示す部分図である。
【
図11】本発明の第5実施形態による包装吸収性物品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、図面は、発明の理解を助けるための模式的なものである。
【0028】
(包装吸収性物品)
図1に、本発明の一形態による包装吸収性物品100を示す。また、
図2(a)に、
図1のIa-Ia線断面図を示し、
図2(b)に、
図1のIb-Ib線断面図を示す。
【0029】
図1及び
図2に示すように、包装吸収性物品100は、包装シート10と当該包装シート10によって包装された吸収性物品1とを含む。別言すれば、包装吸収性物品100は、その内部に1つの吸収性物品1を収容している個別包装体である。包装シート10は、細長形状、例えば長方形、長楕円形等を有していてよい。包装シート10の寸法は、包装する吸収性物品1の大きさや形状によるが、例えば、包装シート10を広げた状態で、長手方向D1の長さを120~500mm、幅方向D2の長さ(単に幅という場合がある)を75~180mmとすることができる。また、折り畳んだ状態での包装吸収性物品100の長手方向D1の長さは50~160mmであってよい。
【0030】
包装シート10には、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリエステル、ポリビニルアルコール等の単層又は多層の樹脂フィルムや、不織布、不織布と樹脂フィルムとを積層させたラミネート不織布等の材料を用いることができる。このうち、デザイン性向上の観点からは、樹脂フィルムが好ましい。発色良く、シャープに印刷できるからである。また、樹脂フィルムを用いた場合、シート表面が平坦となるため、接合部におけるシート同士の接合強度を均一にすることができる。一方、風合いやソフト感等の向上の観点からは、不織布等が好ましい。
【0031】
包装吸収性物品100は、広げた包装シート10に吸収性物品1を載置し、包装シート10の端部を含む領域を、吸収性物品1が載置された側へと折り畳むことによって得ることができる。
図1及び
図2の形態では、包装シート10は、包装シート10上に載置された吸収性物品1とともに、包装シート10の長手方向D1に巻き三つ折りされている。より具体的には、包装シート10の長手方向D1の一端11を含む第1領域R1が第1折り線FL1で折り畳まれ、包装シート10の長手方向D1の他端12を含む第2領域R2が第2折り線FL2で折り畳まれている。そして、折り畳みの際には、第1領域R1が第2領域R2の上に重なるように配置される。先に折り畳まれる第2領域R2に含まれる包装シート10の他端12は、第1領域R1が折られた第1折り線FL1に達していないことが好ましい。また、第2領域R2の折り畳み後に第2領域R2の上に重ねるように折り畳まれる第1領域R1に含まれる包装シート10の一端11は、第2領域R2が折られた第2折り線FL2を越えて第2領域R2からはみ出さないことが好ましい。なお、本形態では、第1領域R1と第2領域R2との間の領域を第3領域R3とする。
【0032】
包装シート10が上述のように巻き三つ折りされた後、
図1に示すように、第1領域R1と第2領域R2とにわたるようにタブテープ15が貼着されていることが好ましい。より具体的には、外側に配置された第1領域R1の自由端部、すなわち包装シート10の一端11を跨ぐように、第1領域R1及び第2領域R2にタブテープ15を配置する。また、タブテープ15は、包装シート10の長手方向D1に直交する方向である包装シート10の幅方向D2の中央に配置することが好ましい。タブテープ15が設けられていることで、包装吸収性物品100の開封時には、使用者はタブテープ15を持って第1領域R1を持ち上げることができるので、開封がより容易となる。
【0033】
包装吸収性物品100においては、上述のように巻き三つ折りされた状態で、さらに幅方向D2の両縁部が接合され、シール部20、20が形成されている。シール部20、20において積層され接合された包装シート同士は剥離可能である。ここで、本明細書において、剥離可能とは、使用者が通常の方法で包装吸収性物品を開封する時に、シール部における接合破壊が起こる、すなわち接合されていた包装シート同士が剥離するようになっていることを指す。一方、剥離不能とは、使用者が通常の方法で包装性吸収性物品を開封する時に、シール部における接合解除が起こらない、すなわち接合されていた包装シート同士が剥離せず接合が保持されるようになっていることを指す。
【0034】
シール部20は、重ねられた複数の包装シートの片面から又は両面から圧力及び/又は熱の影響を与えることによって包装シート同士が一体化された接合部分を含む。シール部は、ヒートシール、超音波シール等のシール方法によって形成されているものが好ましく、ヒートシールによって形成されたものが特に好ましい。
【0035】
吸収性物品1は、包装吸収性物品100内で、長手方向D1にわたって収容されているが、
図1及び
図2(b)に示すように、幅方向D2の両縁部に重ならないように収容されている。すなわち、幅方向D2の端部から所定の長さ離れた位置までの間には、吸収性物品1が存在しないようになっている。よって、包装吸収性物品100の縁部では、複数の包装シート10同士が直接積層され、接合されている(
図2(b))。
【0036】
各シール部20は、好ましくは、包装シート10の幅方向D2の端から25mmまでの範囲内に形成されていてよい。また、各シール部20は、上記範囲内の全体にわたって又は一部に形成されていてよく、例えば、上記範囲内で、5mm以上25mm未満の幅の1以上の帯状に形成することができる。包装シート10の幅方向D2の端から所定の幅の領域には、接合部が存在しない部分があってもよい。また、各シール部20の幅は、全体として長手方向D1にわたって一定でなく、多少変化していてもよい。
【0037】
また、接合部分は、シール部20全体にわたって連続して形成されている、すなわち、シール部20の面積が接合部分の面積に概ね等しくなっていてよい。また、シール部20は、微視的に見て複数の接合部分の集合体となっている、すなわち、接合部分の面積の合計が、シール部20の面積より小さくなっていてもよい。後者の場合、シール部20の面積に対する接合部分の面積の合計は、10%以上であると好ましい。また、なお、シール部20が複数の接合部分の集合体である場合、接合部分同士の間隔は、平面視で好ましくは1.5mm未満、より好ましくは1mm未満とすることができる。
【0038】
上述のように、包装吸収性物品100の縁部には吸収性物品1が存在していないので、シール部20、20においては、包装シート同士が直接積層され、接合されている。ここで、各シール部20、20においては、
図2(b)に示すように、包装シートが重ねられている枚数が長手方向D1で異なっている。より具体的には、シール部20は、接合された包装シートの枚数が最少の薄ゾーンと、薄ゾーンより接合されている包装シートの枚数が多い厚ゾーンとを有し得る。例えば、シール部20は、2枚の包装シートが積層され接合された薄ゾーンと、3枚以上の包装シートが積層され接合された厚ゾーンとを有し得る。シール部20の形成方法にもよるが、シール部20における包装シートが積層された枚数が少ない方が、シール工程において圧力及び/又は熱の影響を受けやすくなるので、接合部分の単位面積当たりの接合強度(剥離抵抗)は大きくなる傾向がある。特に、ヒートシールのように熱を利用して包装シートに溶融を生じさせて包装シート同士を溶着させることでシール部20を形成する場合、与える熱の影響が大きいほど、積層された包装シートの枚数が少ない領域の方が接合強度は大きくなる。
【0039】
図示の形態では、薄ゾーンは、2枚の包装シートが積層され接合されているゾーンであり、第1領域R1の第1折り線FL1の側に存在する第1薄ゾーンZ2aと、第2領域R2の第2折り線FL2の側に存在する第2薄ゾーンZ2bとを含む。また、第1薄ゾーンZ2aと第2薄ゾーンZ2bとの間には、3枚の包装シートが積層され接合されている厚ゾーンZ3が形成されている。第1薄ゾーンZ2aでは、包装シート10の第3領域R3と第1領域R1とが接合されており、第2薄ゾーンZ2bでは、包装シート10の第3領域R3と第2領域R2とが接合されており、厚ゾーンZ3では、包装シート10の第3領域R3、第2領域R2、及び第1領域R1がこの順で重ねられ接合されている。包装吸収性物品100の縁部を長手方向D1にわたって同じ条件(温度、圧力等)でシールした場合、一般的に、第1薄ゾーンZ2a及び第2薄ゾーンZ2bにおけるシール強度は、厚ゾーンZ3におけるシール強度よりも大きくなる。
【0040】
図1及び
図2に示すような包装吸収性物品100を開封しようとする場合、使用者は、まず第1領域R1の自由端部(包装シート10の一端11)を持って第1折り線FL1側へと開き、第1領域R1を剥がしていく(第1ステップ)。その際、シール部20、20における第1領域R1の剥離が、第1折り線FL1側に向かって、すなわち
図1の矢印A1の方向へと進行していく。そして、第1領域R1が開かれた後、第2領域R2の自由端部(包装シート10の他端12)を持って第2折り線FL2側へと開き、或いは現れた吸収性物品1の端部を持って第2折り線FL2側へと第2領域R2とともに持ち上げて開き、第2領域R2を第3領域R3から剥がしていく(第2ステップ)。その際、シール部20、20における第2領域R2の剥離が、第2折り線FL2側に向かって、すなわち
図1の矢印A2の方向へと進行していく。開封時のこれらの第1ステップ及び第2ステップのいずれにおいても、シール部20、20においてシールされていた包装シート同士が剥離し、その際に剥離音が発生する。
【0041】
本形態は、上記のような剥離音を効果的に低減するものであり、このような剥離音の低減を、シール部20に、剥離の進行を抑止する剥離抑止部を形成することによって行うものである。以下、剥離抑止部の構成について、詳細に説明する。
【0042】
(第1実施形態)
本形態では、
図1に示すように、各シール部20の第1薄ゾーンZ
2a及び第2薄ゾーンZ
2bにおいて、包装シート10の剥離の進行を抑止する剥離抑止部が形成されている。具体的には、
図1に示すように、包装吸収性物品1の両縁部に形成されたシール部20、20それぞれについて、第1薄ゾーンZ
2aに第1剥離抑止部31が形成されており、第2薄ゾーンZ
2bに第2剥離抑止部32が形成されている(それぞれ、
図1におけるクロスハッチング部分)。但し、剥離抑止部は、
図1に示すように第1薄ゾーンZ
2a及び第2薄ゾーンZ
2bの両方でなく、どちらか一方のみに形成されていてもよい。すなわち、
図1に示す第1剥離抑止部31、31と第2剥離抑止部32、32とのうち、いずれかを省略することができる。
【0043】
第1剥離抑止部31、31及び第2剥離抑止部32、32(合せて剥離抑止部30という場合がある)の形態は、包装シートの剥離の進行を抑止できるものであれば、特に限定されない。
図1に示す形態では、剥離抑止部30は、シール部20の幅を減少させることによって形成されている。
【0044】
シール部は、例えばヒートシールの場合には、一対のローラを用い、その2つのローラの間で加圧しながら通過させることによって形成することができる。例えば、シール部における接合部分に対応する凸部を有するローラと、平坦なローラとの間に、包装シートを吸収性物品1とともに折り畳まれた後の状態で加圧しながら挟んで通過させる。その場合、一般に、吸収性物品とともに折り畳まれた包装シートが搬送される方向は、包装シートの幅方向(
図1のD2)となり、ローラの軸方向は包装シートの長手方向(
図1のD1)となる。その場合、ローラによって一定の力が継続して適用されるが、ローラから包装シートにかかる単位長さ当たりの押圧力(線圧)は、シール部に対応するローラ凸部のデザインによっては必ずしも一定ではない。長手方向D1に沿ったシール部20(若しくはシール部20に含まれる接合部分)の長さの合計が大きい位置では、ローラの力が分散されて、線圧は小さくなり、単位長さ当たりの接合強度(剥離強度)が小さくなる傾向がある。一方、長手方向D1に沿ったシール部20(若しくはシール部20に含まれる接合部分)の長さの合計が小さい位置では、ローラの力が集中し、線圧が大きくなり、単位長さ当たりの接合強度(剥離強度)が大きくなる傾向がある。
【0045】
図1に示すようにシール部20の幅が減少した部分がある場合、長手方向D1に沿ったシール部20の長さの合計が小さい位置が形成されることになる。より具体的には、図示のシール部20は、長手方向D1に沿って見ると、幅方向D2内側において途切れた部分があり、その部分では、シール部20の長手方向D1に沿った長さの合計が、幅方向D2外側の部分より小さくなっている。そのため、図示の形態では、シール部20の幅方向D2内側の部分では、シール部20の接合強度を高めることができる。
【0046】
ここで、接合強度が高められたシール部20の幅方向D2内側の部分は、薄ゾーンZ
2a、Z
2b及び厚ゾーンZ
3に形成されているが、上述のように、シール部の接合強度は、包装シートの積層枚数がより少ない薄ゾーンZ
2aでもともと大きい。よって、シール部20の長手方向D1に沿った長さの合計が小さくなっている幅方向D2内側の部分のうち、薄ゾーンZ
2a、Z
2bにおける部分(
図1におけるクロスハッチング部)が、特に剥離の進行を抑止する作用を十分に奏することができ、この部分が剥離抑止部30となる。
【0047】
また、幅が減少した部分では、長手方向D1で見て剥離の進行が部分的に中断し得る。そして、中断された剥離の進行を再開するには比較的大きな剥離抵抗が部分的に生じる。このことによっても、薄ゾーンZ2a、Z2bに形成された剥離抑止部30による剥離進行抑止作用が高められている。
【0048】
このように、剥離抑止部30が、薄ゾーンZ2a、Z2bにおいて剥離の進行を抑止することで、第1ステップにおける剥離が、剥離抑止部30よりも剥離進行方向前方へは進みにくくなる、又は進まない。そうすると、開封時に包装シートが剥離される部分は、シール部20の全体ではなく、シール部20の一部となる。例えば、第1薄ゾーンZ2aに形成された第1剥離抑止部31があることで、第1ステップにおける剥離は、剥離進行方向A1へは進みにくくなる、又は進まない。よって、シール部20のうち包装シートが剥離される部分は、厚ゾーンZ3のみ、又は厚ゾーンZ3及び第1薄ゾーンZ2aの一部となり得る。すなわち、第1薄ゾーンZ2aの全体又は一部では包装シートが剥がされず、剥離音が生じない。
【0049】
したがって、第1領域R1を剥がす第1ステップにおいて、第1剥離抑止部31が形成されていない従来の包装吸収性物品に比べて、シール部分20のうち包装シートが剥離される部分の長さは短くなり、剥離される部分は減る。これにより、剥離音が発生する部分が減り、剥離音を効果的に低減できる。
【0050】
第2薄ゾーンZ2bに形成されている第2剥離抑止部32も、第1剥離抑止部31と同様に作用することができる。すなわち、第2ステップにおける剥離の進行は、第2剥離抑止部32よりも剥離進行方向A2の前方へは進みにくくなる、又は進まない。そうすると、開封時に包装シートが剥離される部分は、厚ゾーンZ3のみ、又は厚ゾーンZ3及び第2薄ゾーンZ2bの一部となり得る。よって、第2ステップにおいても、第2剥離抑止部32が形成されていない従来の包装吸収性物品に比べて、シール部分20のうち包装シートが剥離される部分の長さは短くなり、剥離される部分は減る。これにより、剥離音が発生する部分が減り、剥離音を効果的に低減できる。
【0051】
また、幅を減少させることによって形成される本形態の剥離抑止部30は、シール部20の二次元的なデザイン変更等によって比較的容易に製造することができる。
【0052】
さらに、剥離抑止部30を有することで、開封時に、シール部20のうち、包装シート同士が剥がされずに残される部分が生じるため、その残された部分が袋状となる。例えば第1剥離抑止部31によって、第1薄ゾーンZ2aの全体又は一部でシール部20が残された場合、第1領域R1と第3領域R3とが縁部で接合されたままになり、第1領域R1と第3領域R3とにより袋状部分が形成されるので、使用済みの吸収性物品を廃棄する際にその袋状部分に使用済みの吸収性物品を収容することができる。使用済みの吸収性物品全体を袋状部分に収容できないまでも、使用済みの吸収性物品の一部を袋状部分に差し入れることができるため、包装シートで包みやすくなり廃棄動作が簡単になる。
【0053】
続いて、
図3を参照して、第1実施形態による剥離抑止部30についてより詳細に説明する。例えば
図3(a)は、
図1の部分IIの拡大図、すなわち、第1薄ゾーンZ
2aに形成された第1剥離抑止部31の拡大図である。
図3においては、第1剥離抑止部31の一方(
図1において左上の剥離抑止部)を例として説明するが、第1剥離抑止部31のもう一方及び第2薄ゾーンZ
2bに形成された第2剥離抑止部32についても構成及び機能は同様である。
【0054】
図3(a)に示すように、また上述のように、第1剥離抑止部31は、第1薄ゾーンZ
2aにおけるシール部20の幅方向D2内側の部分である。このように、帯状に長手方向D1に延在するシール部20の幅方向D2内側の縁部が凹部を有することによって、長手方向D1に沿ったシール部20の長さの合計が小さい部分が形成され、第1剥離抑止部31が形成される。
【0055】
第1剥離抑止部31において、シール部20の幅方向D2内側の輪郭線は、
図3(a)に示すように、所定の傾斜線31aを有していてよい。傾斜線31aは、幅方向D2に対し、幅方向D2中央側が剥離の進行方向A1前方に傾斜した線であってよい。
【0056】
開封時の第1ステップ(包装シートの第1領域R1を捲って剥がすステップ)では、剥離進行方向A1は、第1折り線FL1に向かう方向を前方とする長手方向D1になる。この際、使用者は第1領域R1の幅方向D2中央付近を持って剥がすため、シール部の幅方向D2中央側で剥離が先行し、第1領域R1が未だ剥がされていない部分と既に剥がされた部分との境界線B(
図3(a))は、幅方向に平行ではなく、幅方向D2に対して、幅方向D2中央側が剥離進行方向A1前方に傾斜した線となる傾向がある。
【0057】
本形態のように、シール部20の輪郭線が凹部を有し、シール部20が長手方向D1に連続していない部分があると、その位置で長手方向D1の剥離進行が少なくとも部分的に中断することになる。そして、中断後に剥離の進行を再開しようとした際に、比較的大きな剥離抵抗が生じ、包装シート10同士を剥がしにくくなる。その際、シール部20の輪郭線が、第1領域R1が未だ剥がされていない部分と既に剥がされた部分との境界線Bに沿っていると、包装シート10同士はさらに剥がしにくくなる。よって、本形態のように、第1剥離抑止部31においてシール部20の輪郭線が
図3(a)に示すような、境界線Bに沿った傾斜線31aを有すると、第1剥離抑止部31の剥離進行抑止の作用を一層向上させることができる。
【0058】
傾斜線31aの、幅方向D2に対する傾斜角度αは、30~70°であると好ましく、35~60°であるとより好ましい。
【0059】
図3(b)~(f)には、第1剥離抑止部31の変形例を示す。
図3(b)は、シール部20に形成された凹部の形状及びサイズは、
図3(a)に示すものと同じであるが、凹部の位置が、剥離進行方向A1側にずれている例を示す。
【0060】
図3(b)の例では、凹部の底部が第1薄ゾーンZ
2a内にあるように形成されている。このように、シール部20の輪郭線の凹部が形成される位置は限定されない。よって、凹部全体が、第1薄ゾーンZ
2a内にあるように形成されていてもよい。
【0061】
図1並びに
図3(a)及び(b)の例では、第1剥離抑止部31の形成のために設けられているシール部20の輪郭線の凹部の形状は、上底がシール部20の内部を向く台形であるが、凹部の形状は台形に限られず、逆向きの台形、及び台形以外の多角形、並びに多角形以外の形状等とすることができる。
【0062】
例えば、
図3(c)に示すように、シール部20に形成されている凹部が、頂点がシール部20の内部を向く三角形であって、この凹部によって形成されたシール部20の幅が小さくなっている部分を第1剥離抑止部31とすることができる。本例の凹部の三角形は、頂点が、第1薄ゾーンZ
2aと厚ゾーンZ
3との境界上にあるように形成されている。
図3(c)に示す本例でも、第1剥離抑止部31においてシール部20の輪郭線が、幅方向D2に対する傾斜角度αを有する斜線31aを有していてよい。また、第1剥離抑止部31が第1薄ゾーンZ
2aに形成されているのであれば、シール部20の凹部の位置は図示のものに限られない。
【0063】
さらに、
図3(d)に示すように、シール部20に形成されている凹部が部分円、具体的には半円であってもよい。また、
図3(e)及び(f)に示すように、平行四辺形であってもよい。
【0064】
図3(e)では、第1剥離抑止部31は、幅方向D2に対して傾斜角度αの斜線31aを有している。そのため、第1剥離抑止部31の薄ゾーンZ
2aにおける剥離抑止の作用を一層高めることができる。なお、
図3(e)に示すように、シール部20の凹部は、第1薄ゾーンZ
2aと厚ゾーンZ
3との間の境界から距離を置いた位置に形成されていてもよい。
【0065】
図4に、第1実施形態のさらに別の変形例を示す。
図4は、
図1に示す包装吸収性物品100の左側部分を示す図であり、第1剥離抑止部31及び第2剥離抑止部32を示している。
図4に示す例では、剥離抑止部30は薄ゾーン全体にわたって形成されている。より詳細には、第1剥離抑止部31が第1薄ゾーンZ
2a全体にわたって形成されており、第2剥離抑止部32が第2薄ゾーンZ
2b全体に亘って形成されている。これにより、開封時に使用者が包装シートを強く引っ張っても、第1ステップでは第1薄ゾーンZ
2aの接合を、第2ステップでは第2薄ゾーンZ
2bの接合を維持しやすくなる。
【0066】
図4(a)に示す例では、シール部20に、第1薄ゾーンZ
2aと厚ゾーンZ
3との境界に跨って凹部が形成されており、第1薄ゾーンZ
2a全体にわたってシール部20の幅が徐々に狭くなるよう構成されている。そのため、幅方向D2内側の部分において、長手方向D1に沿ったシール部20の長さの合計が、幅方向D2外側の部分に比べて小さくなっている。このような部分は高い線圧で形成されているので、接合強度が大きくなる。
【0067】
図4(b)に示す例では、シール部20の幅方向D2の中心は、薄ゾーンZ
2a、Z
2bと厚ゾーンZ
3とで同じであるが、薄ゾーンZ
2a、Z
2bにおいて、シール部20の幅が幅方向D2の両側から減らされている。そして、図示の例では、長手方向D1端部に向かうほどシール部20の幅が徐々に小さくなる部分が、厚ゾーンZ
3を薄ゾーンZ
2a、Z
2b側に越えた位置に形成されている。これにより、薄ゾーンZ
2a、Z
2bにおいて、シール部20の長手方向D1に沿った長さの合計が小さくなる部分が形成され、そのような部分では、シール部形成時の線圧が高く、接合強度が大きくなっており、剥離進行抑止の作用を奏することができる。
【0068】
なお、上述の形態(
図1~
図4)では、第1剥離抑止部31の形成のために減少させたシール部20の幅は、幅を減少させていない位置でのシール部20の幅に対して、好ましくは20~80%、より好ましくは30~70%とすることができる。
【0069】
図5に、第1実施形態における剥離抑止部30のさらに別の変形例を示す。
図5も、
図4と同様、
図1に示す包装吸収性物品100の左側部分を示す図であり、第1剥離抑止部31及び第2剥離抑止部32を示している。
図5の例においても、剥離抑止部30(第1剥離抑止部31及び第2剥離抑止部32)は、幅を減少させることで形成されているが、幅をゼロにした位置がある、すなわち、シール部20が長手方向D1に不連続になる点で、上述の他の第1実施形態(
図1~
図4)と異なる。
【0070】
図5(a)の例では、シール部20の不連続部分(シール部20の不存在部分)は、厚ゾーンZ
3と第1薄ゾーンZ
2aとの境界付近にあり、幅方向D2内側で第1折り線FL1に近付く方向に傾斜した帯状となっている。開封時、使用者は、例えば第1領域R1を剥がす第1ステップで、剥離進行方向A1に向かって、第1折り線FL1に向かって剥離動作を進行させていくが、第1領域R1の剥離は、シール部20の上記の不連続部分で中断する。そして、剥離の進行を再開しようとした場合、特に大きな剥離抵抗が生じるので、剥離抑止部30での剥離の進行抑止の作用を一層向上させることができる。
【0071】
図5(b)に示す例でも、
図5(a)に示す例と同様に、厚ゾーンZ
3と薄ゾーンZ
2a、Z
2bとの境界付近で、シール部20の不連続部分(シール部20の不存在部分)が形成されているが、シール部20のデザインは
図5(a)のものとは異なる。このように、幅ゼロとなる位置を形成する
図5に示す例では、様々なデザインのシール部20を形成することができる。
図5(b)に示す例でも、剥離の進行の中断後に再開しようとする際に剥離抵抗が大きくなるため、剥離抑止部30での剥離の進行抑止作用を向上させることができる。
【0072】
図5(c)に示す例は、
図5(a)及び(b)に示す例と同様に、厚ゾーンZ
3と薄ゾーンZ
2a、Z
2bとの境界でシール部20が不連続になっていることで、剥離の進行抑止作用を奏するものであるが、薄ゾーンZ
2a、Z
2bにおけるシール部20の形状のデザイン性が高められている。
図5(c)の例では、薄ゾーンZ
2a、Z
2bにおけるシール部20は、複数のハート形が連なった形状を有している。これらのハート形は連続していても不連続になっていてもよい。このように、シール部20のデザイン性を高めておくことで、シール部20の他の部分との区別しやすくなる。よって、例えば、包装シートや包装吸収性物品を収容するパッケージ等に説明書きを加えておくことで、使用者に、剥離抑止部30において包装シートが剥がしにくくなっていることを伝えることができる。
【0073】
図5(a)~(c)の例では、シール部20は長手方向D1に不連続となっているが、シール部20が不存在部分の輪郭が幅方向D2に対して傾斜した線を含む。すなわち、幅方向D2と平行に仮想線を引いた場合、その仮想線は、長手方向D1のどの位置であっても、シール部20と重なるように構成されている。これにより、包装吸収性物品100の縁部から埃や塵が侵入することを防ぐことができ、収容された吸収性物品を衛生的に保つことができる。
【0074】
なお、
図5に示すいずれの例でも、第2剥離抑止部32の構成及び機能は、第1剥離抑止部31と同様である。
【0075】
(第2実施形態)
図6に、第2実施形態による包装吸収性物品200を示す。包装吸収性物品200の全体的な構成は第1実施形態(
図1~
図5)と同様であるが、シール部20の幅を局所的に変更せず、剥離抑止部30'(第1剥離抑止部31'及び第2剥離抑止部32')を形成している。
【0076】
図6の例では、長手方向D1に延びるシール部20は、幅方向D2外側に位置する弱シール部20wと、幅方向D2内側に位置する強シール部20sとを有する。弱シール部20wでは、単位面積当たりの接合強度が比較的弱く、強シール部20sでは、単位面積当たりの接合強度が比較的強くなっている。このような接合強度の強弱の違いは、シール部をロール対を用いて形成する場合には、ロールの表面に形成されている、接合部分に対応する凸部の高さを変更すること、若しくは単位面積当たりの凸部の面積を変更すること、又はその両方で得ることができる。図示の例では、幅方向D2内側に接合強度が強い部分があるが、この部分のうち特に薄ゾーンZ
2a、Z
2bにおける部分が、高い接合強度を示す部分であり、剥離抑止部としての作用を奏することができる。
【0077】
(第3実施形態)
図7に、第3実施形態による包装吸収性物品300を示す。包装吸収性物品300の全体的な構成は第1実施形態(
図1~
図4)と同様であるが、本形態では、シール部20が、剥離抑止部30(第1剥離抑止部31及び第2剥離抑止部32)に換えて剥離抑止部40(第1剥離抑止部41及び第2剥離抑止部42)を有している。
【0078】
本形態における剥離抑止部40(第1剥離抑止部41及び第2剥離抑止部42)は、剥離不能に形成された部分を含む。本形態で、剥離抑止部40を形成する手段は特に限定されない。例えば、剥離抑止部40は、シール部20が形成された後、シール部20の剥離可能な接合部分が形成される条件よりも高い条件(例えば、高温及び/又は高圧)で、薄ゾーン(第1薄ゾーンZ2a及び第2薄ゾーンZ2b)内で包装シート同士を、剥離不能に圧着又は融着させて形成してもよい。また、包装吸収性物品300を製造する際の包装シート10の折り畳み時に、薄ゾーン内に剥離抑止部40が形成されるように接着剤を塗布してもよい。或いは、剥離抑止部40は、シール部20が形成された後、縫製により形成してもよい。
【0079】
図7の例のように、剥離抑止部40が、剥離不能に形成されていることで、剥離抑止部40の剥離進行抑止作用を確実に発揮させることができる。よって、開封時に使用者が大きな力を加えた場合でも、シール部20のうち包装シートの剥離が起こる部分を減らすことができ、剥離音を効果的に低減することができる。
【0080】
図7の例では、剥離抑止部40は、シール部20の幅方向D2にわたって形成されているが、シール部20の幅方向D2の一部にわたって形成されていてもよい。また、剥離抑止部40は、図示のような直線状でなく、曲線状であってもよい。また、所定パターンの繰返しによる形状、例えばジグザグ状や波状に形成されていてもよい。
【0081】
図8に、第3実施形態における剥離抑止部40の変形例を示す。
図8に示すように、剥離抑止部40は、幅方向D2に延びる線状でなく、長手方向D1及び幅方向D2に広がる所定の平面図形の形状を有していてもよい。
【0082】
例えば、
図8(a)の例では、剥離抑止部40(第1剥離抑止部41及び第2剥離抑止部42)は、菱形を有する。このように、剥離抑止部40(第1剥離抑止部41及び第2剥離抑止部42)は、三角形、四角形等の多角形、円形、楕円形、星形、ハート形等の形状を有していてよい。ここで、剥離不能な剥離抑止部40が視認できるように形成されていれば、包装吸収性物品300のデザイン性を向上させることができる。
【0083】
また、
図8(b)に示すように、剥離抑止部40(第1剥離抑止部41及び第2剥離抑止部42)は、薄ゾーン(第1薄ゾーンZ
2a及び第2薄ゾーンZ
2b)の全体に形成されていてもよい。これにより、薄ゾーン(第1薄ゾーンZ
2a及び第2薄ゾーンZ
2b)における包装シート同士の接合が強固になり、薄ゾーン(第1薄ゾーンZ
2a及び第2薄ゾーンZ
2b)をより一層開きにくくすることができる。使用者が強い力で開封した場合等にも、剥離進行抑止の作用をより確実にすることができる。
【0084】
なお、薄ゾーン(第1薄ゾーンZ2a又は第2薄ゾーンZ2b)に形成されている剥離抑止部40は、薄ゾーンと厚ゾーンZ3との間の境界から、好ましくは2~40mm、より好ましくは3~20mm離れて形成することができる。これにより、開封時に第1領域R1を剥がす第1ステップが終わった段階で、第2領域R2全体が露出できるようにし、第2領域R2を剥がす第2ステップで、第2領域R2が掴みにくく或いは持ち上げにくくなることを防止することができる。また、製造誤差により厚ゾーンが剥離不能となって開封できなくなる可能性を低減できる。
【0085】
(第4実施形態)
図9に、第4実施形態による包装吸収性物品400を示す。包装吸収性物品400の全体的な構成は第1実施形態(
図1~
図5)等と同様であるが、本形態では、シール部20が、剥離抑止部30(第1剥離抑止部31及び第2剥離抑止部32)又は剥離抑止部40(第1剥離抑止部41及び第2剥離抑止部42)に換えて、剥離抑止部50(第1剥離抑止部51及び第2剥離抑止部52)を有している。
【0086】
図9に示すように、本形態における剥離抑止部50(第1剥離抑止部51及び第2剥離抑止部52)は、シール部20に形成された切込みである。このように、剥離抑止部50(第1剥離抑止部51及び第2剥離抑止部52)を、薄ゾーンに形成された切込み(ミシン目等の部分的な切込みも含む)として形成することで、包装吸収性物品400の縁部の材料自体が不連続となり、シール部20における剥離の進行の連続性が少なくなる、又はなくなる。これにより、例えば、第1剥離抑止部51では、開封時に第1領域R1を剥がす第1ステップで、第1薄ゾーンZ
2aで剥離の進行が停止し、第1薄ゾーンZ
2aにおける第1剥離抑止部51より長手方向D1外側の部分において、包装シートが剥離しにくくなるか、又は剥離しない。そのため、シール部20のうち、開封時に包装シートが剥離する部分が低減し、剥離音を効果的に低減することができる。
【0087】
図10に、第4実施形態における剥離抑止部50(第1剥離抑止部51及び第2剥離抑止部52)の変形例を示す。
図10の例では、剥離抑止部50は、切込みではなく、切欠き、すなわち、所定面積の部分が包装吸収性物品400の縁部から除去されている部分として形成されている。本例も、
図9の例と同様、剥離抑止部50(第1剥離抑止部51及び第2剥離抑止部52)において、開封時に剥離の進行を抑止することができる。
【0088】
本形態における切込み又は切欠きである剥離抑止部50は、シール部20を形成した後、カッター等で個装体(包装吸収性物品)を切り離す際に同時に形成することができる。また、第1薄ゾーンZ2aに形成される第1剥離抑止部51は、第1薄ゾーンZ2aと厚ゾーンZ3との間の境界から、好ましくは1~8mm、より好ましくは2~5mm離れて形成することができる。これにより、開封時に第1領域R1を剥がす第1ステップが終わった段階で、第2領域R2全体が露出できるようにし、第2領域R2を剥がす第2ステップで、第2領域R2が掴みにくく或いは持ち上げにくくなることを防止することができる。
【0089】
(第5実施形態)
上述の第1実施形態から第4実施形態では、包装シート10を吸収性物品1とともに巻き三つ折りして包装吸収性物品100~400を作製していた。しかし、包装シート10による吸収性物品1の包み方は、必ずしも図示のような三つ折りによる折り畳みでなくてもよい。包装シート10は、第1領域R1が第2領域R2の上に配置されるようにできるのであれば、例えば、四つ折り、又は五つ折り以上に折り畳んでもよい。その場合には、第1領域R1を重ねる前に、第2領域R2の端部側を予め内側又は外側に折り込んでおけばよい。
【0090】
図11及び
図12に、包装シート410を吸収性物品1とともに巻き四つ折りして得た包装吸収性物品500を示す。
図11は、包装吸収性物品500の平面図であり、
図12(a)は、
図11のIIIa-IIIa線断面図であり、
図12(b)は、
図11のIIIb-IIIb線断面図である。包装吸収性物品500は、包装シート410の折り方が異なっているが、それ以外の構成及び機能は、上述の第1実施形態から第4実施形態と同様である。
【0091】
包装吸収性物品500は、包装シート410と、当該包装シート410によって包装された吸収性物品1とを含む。包装吸収性物品500を得るためには、包装シート410の上に吸収性物品1を載置した後、包装シート410の他端412を有する第2領域R2を折る前に、第2領域R2の、他端412側の部分を長手方向D1内側に、吸収性物品1が載置されている側へと、第2折り線FL2と他端412との間の第3折り線FL3にて折り畳み、その後は、第1実施形態で説明した折り畳み方と同様にして折り畳む。巻き四つ折りされた後には、幅方向D2両縁部をシールすることによりシール部420、420が形成されている。
【0092】
包装吸収性物品500においても、包装シートが重ねられている枚数が長手方向D1で異なっている。すなわち、シール部420、420は、接合された包装シートの枚数が最小の最少の薄ゾーンと、薄ゾーンより接合されている包装シートの枚数が多い厚ゾーンとを有している。図示の形態では、シール部420は、第1領域R1が折られた第1折り線FL1側に位置する、2枚の包装シートが積層され接合されている第1薄ゾーンZ2aと、第1薄ゾーンZ3に隣接する、3枚の包装シートが積層され接合された第1厚ゾーンZ3と、第1厚ゾーンZ3に隣接する、4枚の包装シートが積層され接合された第2厚ゾーンZ4と、第2厚ゾーンZ4に隣接する、2枚の包装シートが積層され接合された第2薄ゾーンZ2bとを有している。
【0093】
本形態においても、各シール部420には、剥離抑止部430が形成されている。より具体的には、
図10に示すように、第1薄ゾーンZ
2aに第1剥離抑止部431、431が、第2薄ゾーンZ
2bに第2剥離抑止部432、432が形成されている。剥離抑止部430(第1剥離抑止部431及び第2剥離抑止部432)の構成及び機能は、第1実施形態(
図1)で説明したものと同様とすることができる。
【0094】
以上、いくつかの実施形態を挙げて説明したが、各実施形態で説明した特徴は任意に組合せすることができる。例えば、
図1に示す形態において、第1剥離抑止部及び第2剥離抑止部の一方を、第1実施形態の変形例による構成、又は第2実施形態若しくは第3実施形態による構成に換えた形態も、本開示に含まれる。また、第5実施形態(
図11及び
図12)における剥離抑止部を、
図1以外に示されたいずれかの構成に換えてもよい。
【0095】
また、包装吸収性物品100の包装構造並びに吸収性物品の大きさ及び種類等に応じて、使用者の第1ステップ及び第2ステップでの開封動作の力の入れ方等に応じて、第1剥離抑止部及び第2剥離抑止部のいずれか一方のみを有する構成としてもよいし、両方を有する構成としてもよい。
【0096】
(吸収性物品)
本発明の実施形態において用いられる吸収性物品1は、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、軽失禁用パッド等であってよい。本明細書では、吸収性物品1平面視で細長形状を有しているが、吸収性物品1の平面視形状は図示のものに限られない。吸収性物品1は、例えば、包装シートとともに折り畳まずに包装シートによって包装される形状のもの、例えば正方形を含む正多角形、円形等の形状の体液吸収パッド等であってもよい。吸収性物品1が細長形状である場合、吸収性物品1の全長は、200~420mmとすることができ、吸収性物品1の幅は50~110mmとすることができる。
【0097】
吸収性物品1は、液不透過性の裏面シート、吸収体、及び液透過性の表面シートがこの順に積層されてなる構造を有していてよい。裏面シートとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材を用いることができる。ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、透湿性を有するものが用いられてもよい。
【0098】
表面シートとしては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0099】
吸収体は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent poLymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。
【0100】
吸収体の厚みは、0.5~25mmの範囲内とすることができ、1.5~6.5mmの範囲であると好ましい。吸収体は、体液排出口に対応させる領域(体液排出口対応領域)や、体液排出口対応領域より後方の、臀部の溝に対向する領域を、膨出させた構造とすることもできる。
【0101】
上記吸収体4は、表面シート及び裏面シートからはみ出さない寸法及び形状を有し、吸収体の前方及び後方の端縁部では、裏面シートと表面シートとの外縁がホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合されている。また、吸収体の側方の外方においては、幅方向両端部に長手方向に沿ってサイド不織布が設けられていてもよい。サイド不織布としては、撥水処理不織布又は親水処理不織布を使用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 吸収性物品
10、410 包装シート
11、411 長手方向の一端
12、412 長手方向の他端
15、415 タブテープ
20、420 シール部
30、30'、40、50、430 剥離抑止部
31、31'、41、51、431 第1剥離抑止部
31a 傾斜線
32、32'、42、52、432 第2剥離抑止部
100、200、300、400、500 包装吸収性物品
A1 第1ステップの剥離進行方向
A2 第2ステップの剥離進行方向
B 剥離されていない部分と剥離された部分との境界線
D1 包装シートの長手方向
D2 包装シートの幅方向
FL1 第1折り線
FL2 第2折り線
R1 第1領域
R2 第2領域
R3 第3領域
Z2a 薄ゾーン(第1薄ゾーン)
Z2b 薄ゾーン(第2薄ゾーン)
Z3 厚ゾーン(第1厚ゾーン)
Z4 厚ゾーン(第2厚ゾーン)