(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】作業機械および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
B60T 7/12 20060101AFI20231017BHJP
E02F 9/02 20060101ALI20231017BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20231017BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20231017BHJP
B60T 13/12 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B60T7/12 C
E02F9/02 Z
E02F9/26 B
E02F9/24 B
B60T13/12
(21)【出願番号】P 2019180380
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】岡部 一慶
(72)【発明者】
【氏名】安村 怜仁朱
(72)【発明者】
【氏名】湊 博文
(72)【発明者】
【氏名】北尾 真一
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-314104(JP,A)
【文献】特開2007-253936(JP,A)
【文献】特開2019-108742(JP,A)
【文献】特開2019-031823(JP,A)
【文献】特開平08-218310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 13/00-13/74
E02F 9/02
E02F 9/26
E02F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後進時に車両本体の後方を検出する後方検出部と、
前記車両本体の状態を検出する状態検出部と、
前記後方検出部と前記状態検出部の検出に基づいて、前記車両本体を制動する制御部と、を備
え、
前記制御部は、後進時に前記後方検出部によって障害物を検出し、前記状態検出部で検出された前記車両本体の状態が、予め設定されたブレーキ力による自動ブレーキを作動した場合に不安定になる状態と判断した場合、前記自動ブレーキの制動力を抑制または前記自動ブレーキを停止する、
作業機械。
【請求項2】
前記制御部は、自動ブレーキによる制動、自動ブレーキの制動力を抑制または自動ブレーキを停止する制御を行う、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記自動ブレーキの抑制または停止を報知する第1報知部を更に備え、
前記自動ブレーキの制御は、前記第1報知部による報知を含む、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記後方検出部によって前記車両本体の後方に障害物を検出したことを報知する第2報知部を更に備えた、
請求項1~3のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項5】
サービスブレーキと、
前記サービスブレーキへの作動油の供給量を調整可能なブレーキ弁と、を更に備え、
前記制御部は、前記ブレーキ弁を駆動し前記サービスブレーキを用いて自動ブレーキによる制動を行う、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項6】
前記制御部は、前記ブレーキ弁を調整して前記サービスブレーキの制動力を弱めることによって前記自動ブレーキの制動力を抑制する制御を行う、
請求項
5に記載の作業機械。
【請求項7】
パーキングブレーキを更に備え、
前記制御部は、前記パーキングブレーキを動作させることによって自動ブレーキによる制動を行う、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項8】
前記車両本体は、作業機を有し、
前記車両本体の状態は、前記作業機の姿勢を含む、
請求項1~
7のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項9】
前記車両本体は、作業機を有し、
前記車両本体の状態は、前記作業機の積荷の状態を含む、
請求項1~
7のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項10】
後進時に車両本体の後方を検出する後方検出部と、
前記車両本体の状態を検出する状態検出部と、
前記後方検出部と前記状態検出部の検出に基づいて、前記車両本体を制動する制御部と、を備え、
前記車両本体は、アーティキュレート式であって、
前記車両本体の状態は、アーティキュレート角度を含む、
作業機械。
【請求項11】
前記車両本体の状態は、前記車両本体の傾斜を含む、
請求項1~
7のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項12】
後進時に車両本体の後方を検出する後方検出ステップと、
前記車両本体の状態を検出する状態検出ステップと、
前記状態検出ステップによる検出結果と前記後方検出ステップによる検出結果に基づいて、前記車両本体を制動する制御ステップと、を備
え、
前記制御ステップは、後進時に前記後方検出ステップによって障害物を検出し、前記状態検出ステップで検出された前記車両本体の状態が、予め設定されたブレーキ力による自動ブレーキを作動した場合に不安定になる状態と判断した場合、前記自動ブレーキの制動力を抑制または前記自動ブレーキを停止する、
作業機械の制御方法。
【請求項13】
後進時に車両本体の後方を検出する後方検出ステップと、
前記車両本体の状態を検出する状態検出ステップと、
前記状態検出ステップによる検出結果と前記後方検出ステップによる検出結果に基づいて、前記車両本体を制動する制御ステップと、を備え、
前記車両本体は、アーティキュレート式であって、
前記車両本体の状態は、アーティキュレート角度を含む、
作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械の一例であるホイールローダにおいて、後方の障害物を検出し自動で停止する自動停止システムが提案されている。
【0003】
たとえば、非特許文献1では、ホイールローダにステレオカメラを設置し、後進時に障害物を認識した場合にフットブレーキを動作させている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】“NIPPO/ホイールローダー自動停止システム開発/ステレオカメラで障害物対応”2016年7月8日3面、日刊建設工業新聞オンライン、インターネット<URL: https://www.decn.co.jp/?p=72204>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、建設現場等で作業を行っているときは、作業機械が比較的不安定な状態であるときが多く、そのような状態で後進時に急な制動が行われると転倒して作業が中断するおそれがある。また、建設現場などでは、オペレータが慎重に作業を行っているため周囲の障害物を認識している場合が多く、後進時に障害物を検出する毎に制動を行うと作業効率が下がる。
【0006】
本開示は、作業効率を向上することが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本態様に係る作業機械は、状態検出部と、後方検出部と、制御部と、を備える。後方検出部は、車両本体の後方を検出する。状態検出部は、車両本体の状態を検出する。制御部は、後方検出部と状態検出部の検出に基づいて、車両本体を制動する。
【0008】
本態様に係る作業機械の制御方法では、後方検出ステップと、状態検出ステップと、制御ステップと、を備える。後方検出ステップは、車両本体の後方を検出する。状態検出ステップは、車両本体の状態を検出する。制御ステップは、後方検出ステップによる検出結果と状態検出ステップによる検出結果に基づいて、車両本体を制動する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、作業効率を向上することが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示にかかる実施の形態のホイールローダの側面図。
【
図2】
図1のホイールローダの制御システムを示すブロック図。
【
図3】(a)
図2の検出系を示すブロック図、(b)
図2のコントローラの構成を示すブロック図。
【
図4】第1状態を説明するためのホイールローダの側面図。
【
図5】第2状態を説明するためのホイールローダの側面図。
【
図6】第3状態を説明するためのホイールローダの平面図。
【
図7】第4状態を説明するためのホイールローダの側面図。
【
図8】
図1のホイールローダにおける障害物検出による自動ブレーキを説明するための側面図。
【
図9】本開示における実施の形態のホイールローダの制御動作を示すフロー図。
【
図10】本開示の実施の形態の変形例におけるホイールローダの制御動作を示すフロー図。
【
図11】本開示の実施の形態の変形例におけるホイールローダの駆動系、制動系、操作系、報知系、検出系、およびコントローラの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示にかかる作業機械の一例としてのホイールローダについて図面を参照しながら以下に説明する。
【0012】
(ホイールローダの概要)
図1は、本実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)の構成を示す模式図である。本実施の形態のホイールローダ10は、車両本体1に、車体フレーム2と、作業機3と、一対のフロントタイヤ4、キャブ5、エンジンルーム6、一対のリアタイヤ7、およびステアリングシリンダ9と、を備えている。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、及び「下」とは運転席から前方を見た状態を基準とする方向を示す。また、「車幅方向」と「左右方向」は同義である。
図1では、前後方向をXで示し、前方向を示すときはXf、後方向を示すときはXbで示す。
【0013】
ホイールローダ10は、作業機3を用いて土砂積み込み作業などを行う。
【0014】
車体フレーム2は、いわゆるアーティキュレート式であり、フロントフレーム11とリアフレーム12と、連結軸部13と、を有している。フロントフレーム11は、リアフレーム12の前方に配置されている。連結軸部13は、車幅方向の中央に設けられており、フロントフレーム11とリアフレーム12を互いに揺動可能に連結する。一対のフロントタイヤ4は、フロントフレーム11の左右に取り付けられている。また、一対のリアタイヤ7は、リアフレーム12の左右に取り付けられている。
【0015】
作業機3は、図示しない作業機ポンプからの作動油によって駆動される。作業機3は、ブーム14と、バケット15と、リフトシリンダ16と、バケットシリンダ17と、を有する。ブーム14は、フロントフレーム11に装着されている。バケット15は、ブーム14の先端に取り付けられている。
【0016】
リフトシリンダ16およびバケットシリンダ17は、油圧シリンダである。リフトシリンダ16の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、リフトシリンダ16の他端はブーム14に取り付けられている。リフトシリンダ16の伸縮により、ブーム14が上下に揺動する。バケットシリンダ17の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、バケットシリンダ17の他端はベルクランク18を介してバケット15に取り付けられている。バケットシリンダ17が伸縮することによって、バケット15が上下に揺動する。
【0017】
キャブ5は、リアフレーム12上に載置されており、内部には、ステアリング操作のためのハンドルや、作業機3を操作するためのレバー、各種の表示装置等が配置されている。エンジンルーム6は、キャブ5の後側であってリアフレーム12上に配置されており、エンジン31が収納されている。
【0018】
図2は、ホイールローダ10の制御システムの構成を示すブロック図である。
【0019】
ホイールローダ10は、駆動系21と、制動系22と、操作系23と、報知系24と、検出系25と、コントローラ26(制御部の一例)と、を有する。
【0020】
駆動系21は、ホイールローダ10の駆動を行う。制動系22は、ホイールローダ10の走行中において制動を行う。操作系23は、オペレータによって操作が行われる。オペレータによる操作系23の操作に基づいて駆動系21および制動系22が動作する。報知系24は、操作系23の操作または検出系25による検出結果に基づいて、オペレータに対する報知を行う。検出系25は、車両本体1の状態、および車両本体1の後方の障害物の検出を行う。コントローラ26は、操作系23に対するオペレータの操作および検出系25による検出に基づいて、駆動系21、制動系22、および報知系24の操作を行う。
【0021】
(駆動系21)
駆動系21は、エンジン31と、HST32と、トランスファ33と、アクスル34と、フロントタイヤ4およびリアタイヤ7と、を有する。
【0022】
エンジン31は、例えばディーゼル式のエンジンであり、エンジン31で発生した駆動力がHST(Hydro Static Transmission)32のポンプ32aを駆動する。
【0023】
HST32は、ポンプ32aと、モータ32bと、ポンプ32aとモータ32bを接続する油圧回路32cと、を有する。ポンプ32aは、斜板式可変容量型のポンプであって斜板の角度をソレノイド32dによって変更することができる。ポンプ32aがエンジン31によって駆動されることにより作動油を吐出する。吐出された作動油は、油圧回路32cを通ってモータ32bに送られる。モータ32bは、斜板式ポンプであって、斜板の角度をソレノイド32eによって変更することができる。油圧回路32cは、第1駆動回路32c1と、第2駆動回路32c2と、を有する。作動油が、ポンプ32aから第1駆動回路32c1を介してモータ32bに供給されることにより、モータ32bが一方向(例えば、前進方向)に駆動される。作動油が、ポンプ32aから第2駆動回路32c2を介してモータ32bに供給されることにより、モータ32bが他方向(例えば、後進方向)に駆動される。なお、作動油の第1駆動回路32c1若しくは第2駆動回路32c2への吐出方向はソレノイド32dによって変更することができる。
【0024】
トランスファ33は、エンジン31からの出力を前後のアクスル34に分配する。
【0025】
前側のアクスル34には一対のフロントタイヤ4が接続されており、分配されたエンジン31からの出力で回転する。また、後側のアクスル34には一対のリアタイヤ7が接続されており、分配されたエンジン31からの出力で回転する。
【0026】
(制動系22)
制動系22は、ブレーキ弁41と、サービスブレーキ42と、パーキングブレーキ43と、を有する。
【0027】
ブレーキ弁41は、例えばEPC(Electric Proportional Valve)弁であり、サービスブレーキ42に送る作動油の開度を調整することができる。
【0028】
サービスブレーキ42は、アクスル34に設けられている。サービスブレーキ42は、油圧式のブレーキであり、例えばブレーキ弁41の開度が大きいときには制動力が強くなり、ブレーキ弁41の開度が小さいときには制動力が弱くなる。
【0029】
自動ブレーキの機能として、後述するブレーキペダル54が操作されていない場合でもブレーキ弁41がコントローラ26からの指示によって駆動され、サービスブレーキ42が作動する。
【0030】
パーキングブレーキ43は、トランスファ33に設けられている。パーキングブレーキ43としては、例えば、制動状態と非制動状態に切り替え可能な湿式多段式のブレーキや、ディスクブレーキなどを用いることができる。
【0031】
(操作系23)
操作系23は、アクセル51と、FNRレバー52と、パーキングスイッチ53と、ブレーキペダル54と、復帰スイッチ55と、自動ブレーキ解除スイッチ56と、を有する。
【0032】
アクセル51は、キャブ5内に設けられている。オペレータは、アクセル51を操作してスロットル開度を設定する。アクセル51は、アクセル操作量を示す開度信号を生成してコントローラ26へ送信する。コントローラ26は、送信される信号に基づいてエンジン31の回転速度を制御する。
【0033】
なお、アクセル51をオフ状態にすると、エンジン31への燃料供給が停止され、ポンプ32aとモータ32bの斜板が走行の抵抗となるように制御され、内部慣性がはたらくため制動力(後述する弱いブレーキ力)が発生する。
【0034】
FNRレバー52は、キャブ5に設けられている。FNRレバー52は、前進、ニュートラル、または後進の位置をとることができる。FNRレバー52の位置を示す操作信号がコントローラ26に送信され、コントローラ26は、ソレノイド32dを制御して前進または後進を切り替える。また、FNRレバー52がニュートラルの位置の場合、コントローラ26は、ソレノイド32d、32eを制御し、走行抵抗になるようにポンプ32aとモータ32bの斜板をコントロールする。これによって、内部慣性がはたらくため制動力(後述する弱いブレーキ力)が発生する。
【0035】
なお、アクセル51のオフによる制御、およびFNRレバー52のニュートラル位置による制御で生じる制動力も、自動ブレーキに含まれる。
【0036】
パーキングスイッチ53は、キャブ5内に設けられており、オン・オフに状態を切り替え可能なスイッチであり、その状態を示す信号をコントローラ26に送信する。コントローラ26は、送信される信号に基づいてパーキングブレーキ43を制動状態または非制動状態にする。
【0037】
ブレーキペダル54は、キャブ5内に設けられている。ブレーキペダル54は、ブレーキ弁41の開度を調整する。また、ブレーキペダル54は、操作量をコントローラ26に送信する。
【0038】
復帰スイッチ55は、後述する自動ブレーキによって車両本体1が停止した後、停止状態から復帰するためにオペレータによって操作される。
【0039】
自動ブレーキ解除スイッチ56は、自動ブレーキの機能を解除し、自動ブレーキの機能が働かないように設定する。
【0040】
(報知系24)
報知系24は、警報装置61(第2報知部の一例)と、機能OFF通知ランプ62(第1報知部の一例)、自動ブレーキ作動通知ランプ63と、を有する。
【0041】
警報装置61は、後述する検出系25の後方検出部71の検出に基づいて車両本体1の後方に障害物を検出した場合にオペレータに警報を行う。警報装置61は、例えば、ランプを有し、ランプを点灯させてもよい。また、ランプに限らず、警報装置61がスピーカを有し、音を鳴らしても良い。また、モニター等の表示パネルなどに警報を表示させてもよい。
【0042】
機能OFF通知ランプ62は、コントローラ26の判断によって自動ブレーキの機能が抑制(後述する)または停止されている場合に、例えば点灯しオペレータに報知する。また、機能OFF通知ランプ62は、オペレータの判断によって自動ブレーキ解除スイッチ56が操作され自動ブレーキの機能がオフ状態になっている場合に例えば点灯し、オペレータに報知する。また、機能OFF通知ランプ62が消灯している場合には、自動ブレーキの機能を作動することが可能な状態であることを示す。また、機能OFF通知ランプ62は、ランプに限らなくてもよく、音を鳴らしても良い。また、モニター等の表示パネルなどに通知を表示させてもよい。
【0043】
自動ブレーキ作動通知ランプ63は、自動ブレーキが作動している状態であることをオペレータに通知し、復帰スイッチ55による復帰動作が必要なことを通知する。なお、復帰スイッチ55が操作され自動ブレーキが解除されると、自動ブレーキ作動通知ランプ63が消灯する。
【0044】
なお、自動ブレーキ作動通知ランプ63は、ランプに限らなくてもよく、音を鳴らしても良い。また、モニター等の表示パネルなどに通知を表示させてもよい。
【0045】
上述のように報知系24によるオペレータに対する情報の報知の手段は、ランプ、音、モニター等適宜選択することができる。
【0046】
(検出系25)
図3(a)は、検出系25を示すブロック図である。
【0047】
検出系25は、後方検出部71と、状態検出部72と、を有する。
【0048】
後方検出部71は、車両本体1の後方の障害物を検出する。後方検出部71は、例えば、
図1に示すように車両本体1の後端に取り付けられているが、後端に限らなくても良い。
【0049】
後方検出部71は、例えばミリ波レーダを有している。送信アンテナから発したミリ波帯の電波が障害物の表面で反射して戻ってくる様子を受信アンテナで検出し、物体までの距離を測定することができる。状態検出部72による検出結果がコントローラ26に送信され、コントローラ26は、後進時に所定範囲内に障害物が存在することを判定できる。なお、ミリ波レーダに限らなくてもよく、例えばカメラなどであってもよい。
【0050】
状態検出部72は、車両本体1の状態を検出する。状態検出部72による検出は、後進時に予め設定された強さの設定ブレーキ力で自動ブレーキを機能させた場合に、車両本体1の状態が転倒予防の必要があるような状態(不安定になる状態の一例)であるか、転倒予防の必要がなく停止可能な状態であるかをコントローラ26によって判定するために行われる。
【0051】
また、状態検出部72による検出は、後進時に予め設定された強さの設定ブレーキ力よりも弱いブレーキ力で自動ブレーキを機能させた場合に、車両本体1の状態が転倒予防の必要があるような状態(不安定になる状態の一例)であるか、転倒予防の必要がない状態であるかをコントローラ26によって判定するために行われる。
【0052】
状態検出部72は、各種センサを有し、例えば、(第1状態)作業機の姿勢、(第2状態)荷の状態、(第3状態)車両本体の姿勢の一例としてのアーティキュレート角度、(第4状態)路面状況、および速度を検出する。
【0053】
図4は、ホイールローダ10が転倒予防の必要があるような(第1状態)作業機の姿勢の状態であることを示す図である。
【0054】
状態検出部72は、(第1状態)作業機の姿勢を検出するために、例えばブーム角度センサ72a及び速度センサ72gを有している。ブーム角度センサ72aによってブーム14が所定閾値よりも上昇されていることが検出され、速度センサ72gによって後進時の速度が所定閾値以上であることが検出されると、コントローラ26の判定部81は、設定ブレーキ力または弱いブレーキ力で制動を行うことによって転倒予防の必要がある状態であると判定する。なお、ブーム角度センサ72aに限らずカメラを設けて画像解析を行うことによって、作業機3の姿勢を判定してもよい。なお、判定に用いられる所定閾値は、設定ブレーキ力による制動のときと弱いブレーキ力による制動のときで適宜変更するほうが好ましく、後述する(第2状態)、(第3状態)および(第4状態)でも同様である。
【0055】
図5は、ホイールローダ10が転倒予防の必要があるような(第2状態)荷の状態であることを示す図である。
【0056】
状態検出部72は、(第2状態)荷の状態を検出するために、リフトシリンダ16の圧力を検出する圧力センサ72b、ブーム角度センサ72a、バケット15がチルト状態であるか否かを検出するためのベルクランク角度センサ72dを有している。バケット15がチルト状態であるか否かは、バケットシリンダ17の長さによって決まる。ブーム角度センサ72aによるブーム角度とベルクランク角度センサ72dによるベルクランク角度から、予め記憶するテーブルに基づいてバケットシリンダ17の長さが算出され、バケット15がチルト状態であるか否かを検出することができる。
【0057】
コントローラ26の判定部81は、圧力センサ72bによって所定以上の荷Wを積んでおり、ブーム14が所定閾値よりも上昇されており、チルト状態であり、速度センサ72gによって後進時の速度が所定閾値以上であることが検出された場合に、設定ブレーキ力または弱いブレーキ力で制動を行うことによって転倒予防の必要がある状態であると判定する。なお、チルト状態を検出するために、ベルクランク角度センサ72dを使用せずに、バケット15等の作業機の位置が検出可能なセンサ(近接センサなど)を用いてもよく、任意にセンサを設定可能である。また、荷の状態を検出するために、カメラを設けて画像解析を行ってもよい。
【0058】
図6は、ホイールローダ10が転倒予防の必要があるような(第3状態)アーティキュレート角度の状態を示す図である。
【0059】
状態検出部72は、(第3状態)アーティキュレート角度θを検出するためにアーティキュレート角度センサ72eを有している。アーティキュレート角度センサ72eは、リアフレーム12に対するフロントフレーム11の傾斜角度を検出する。
【0060】
コントローラ26の判定部81は、アーティキュレート角度センサ72eによって検出値θが所定角度以上と検出され、速度センサ72gによって後進時の速度が所定閾値以上であることが検出された場合、設定ブレーキ力または弱いブレーキ力で制動を行うことによって転倒予防の必要がある状態であると判定する。
【0061】
図7は、転倒予防の必要があるような(第4状態)路面状況の状態であることを示す図である。
【0062】
図7では、ホイールローダ10が傾斜面Rに配置されている状態が示されている。
【0063】
状態検出部72は、車体角度センサ72fを有している。コントローラ26の判定部81は、車体角度センサ72fで検出される検出値に基づいて、ホイールローダ10が傾斜した路面Rに配置されていることを判定することができる。
【0064】
コントローラ26の判定部81は、車体角度センサ72fによって傾斜角が所定角度以上と検出され、速度センサ72gによって後進時の速度が所定閾値以上であることが検出された場合、設定ブレーキ力または弱いブレーキ力で制動を行うことによって転倒予防の必要がある状態であると判定する。なお、車体角度センサ72fの代わりにIMU(Inertial Measurement Unit)を用いても良い。
【0065】
(コントローラ26)
コントローラ26は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリと、ストレージを含む。コントローラ26は、ストレージに記憶されているプログラムを読み出してメインメモリに展開し、プログラムに従って所定の処理を実行する。なお、プログラムは、ネットワークを介してコントローラ26に配信されてもよい。
【0066】
図3(b)は、コントローラ26の構成を示すブロック図である。
【0067】
コントローラ26は、判定部81と、ブレーキ指示部82と、報知指示部83と、を有する。なお、コントローラ26は、一つに限らず複数設けられてもよく、判定部81、ブレーキ指示部82、および報知指示部83の各機能も複数のコントローラに分かれて設けられていてもよい。
【0068】
判定部81は、自動ブレーキの制御に関する判定を行う。判定部81は、障害物判定部84と、状態判定部85と、を有する。
【0069】
障害物判定部84は、後進時に障害物が存在するか否かを判定する。後進とは、タイヤが後ろ向きに回っていることである。障害物判定部84は、例えば、フロントタイヤ4もしくはリアタイヤ7が後方に向かって回転していること、またはFNRレバー52が後進位置であること等によって車両本体1が後進状態であることを検出する。障害物判定部84は、後進状態を検出している状態において、検出系25の後方検出部71から所定範囲内における障害物の検知情報を受け取ると、障害物が存在すると判定する。
【0070】
状態判定部85は、ホイールローダ10が、
図4~
図7に示す状態(第1状態)~(第4状態)であるか否かを判定し、速度にも基づいて、後進時に設定ブレーキ力での制動または弱いブレーキ力を作動した場合に転倒予防の必要な状態であるか否かを判定する。
【0071】
ブレーキ指示部82は、障害物判定部84の判定結果と状態判定部85の判定結果に基づいて、自動ブレーキの制御を行う。本明細書における自動ブレーキとは、障害物判定部84の判定結果と状態判定部85の判定結果に基づいて、自動で車両本体1に制動力を作動させることであり、後述するようにサービスブレーキ42による制動力だけに限られるものではない。
【0072】
障害物判定部84によって障害物が存在すると判定し、状態判定部85によって車両本体1の状態が予め設定した設定ブレーキ力を作動した場合に転倒予防が必要ない状態と判定した場合、ブレーキ指示部82は、エンジン31への燃料供給を停止し、ブレーキ弁41を操作することによってサービスブレーキ42を駆動して車両本体1を停止させる。
【0073】
図8は、後進時に障害物Sを検出し、車両本体1を停止させた状態を示す図である。車両本体1の状態が安定しており、障害物Sの手前で車両本体1が停止するような予め設定された設定ブレーキ力(制動力ともいえる)が作動するようにサービスブレーキ42を操作しても転倒予防の必要がない場合には、サービスブレーキ42で設定ブレーキ力を作動させて車両本体1を停車させることができる。なお、この時、障害物Sの手前で車両本体1を停止させるような設定ブレーキ力を作動させるためにブレーキ弁41の開度が大きく設定される。
図8では、停止した車両本体1が二点鎖線で示されている。
【0074】
なお、設定ブレーキ力による自動ブレーキは、上記のようにサービスブレーキ42によって車両本体1を制動させなくてもよく、パーキングブレーキ43を作動させてもよい。この場合、障害物判定部84によって障害物Sが存在すると判定し、状態判定部85によって車両本体1の状態が予め設定した設定ブレーキ力を作動した場合に転倒予防が必要ない状態と判定した場合、ブレーキ指示部82は、エンジン31への燃料供給を停止する。そして、ブレーキ指示部82は、パーキングブレーキ43を制御して、車両本体1を制動する。
【0075】
また、障害物判定部84によって障害物が存在すると判定し、状態判定部85によって車両本体1の状態が弱いブレーキ力を作動した場合に転倒予防の必要がない状態と判定した場合、ブレーキ指示部82は、エンジン31への燃料供給を停止しブレーキ弁41の開度を小さく設定し、弱いブレーキ力が作動するようにサービスブレーキ42を制御する。ここで、弱いブレーキ力とは、設定ブレーキ力に比べて小さく設定されている。このように弱いブレーキ力を作動させることは、自動ブレーキの制動力を抑制することの一例に相当する。
【0076】
なお、弱いブレーキ力は、ブレーキ弁41の開度の調整によって生じさせることに限らず、オペレータが単にアクセル51をオフにするだけでも生じる。アクセル51をオフ状態にすると、エンジン31への燃料供給が停止され、ポンプ32aとモータ32bの斜板が走行の抵抗となるように制御されるため、弱いブレーキ力が作動する。
【0077】
ブレーキ指示部82は、オペレータがアクセル51をオフにした場合の制御を行って弱いブレーキ力を作動させてもよい。
【0078】
すなわち、障害物判定部84によって障害物が存在すると判定し、状態判定部85によって車両本体1の状態が弱いブレーキ力を作動した場合に転倒予防の必要がない状態であると判定されたとき、ブレーキ指示部82は、例えばエンジン31への燃料供給を停止し、ポンプ32aとモータ32bの斜板が走行の抵抗となるように制御し、弱いブレーキ力を作動させる。
【0079】
また、弱いブレーキ力は、オペレータがニュートラルの位置になるようにFNRレバー52を操作することによっても作動される。このため、障害物判定部84によって障害物が存在すると判定し、状態判定部85によって車両本体1の状態が弱いブレーキ力を作動した場合に転倒予防の必要がない状態であると判定されたとき、ブレーキ指示部82は、設定ブレーキ力を作動させる制御を行わずに、オペレータがニュートラルの位置になるようにFNRレバー52を操作した場合の制御を行う。これによって、ポンプ32aとモータ32bの斜板が走行の抵抗となるように制御され、弱いブレーキ力が発揮される。このように弱いブレーキ力を与えることが可能なため、たとえ不安定な状態であっても姿勢を安定させることができる。
【0080】
また、障害物判定部84によって障害物が存在すると判定し、状態判定部85によって車両本体1の状態が弱いブレーキ力を作動した場合に転倒予防の必要がある状態と判定した場合、コントローラ26は、自動ブレーキを作動させない。
【0081】
報知指示部83は、障害物判定部84によって障害物Sが存在すると判定された場合に、警報装置61を作動させる。
【0082】
また、報知指示部83は、障害物判定部84によって障害物Sが存在すると判定され、状態判定部85によって車両本体1の状態が設定ブレーキで制動を行うと転倒予防の必要がある状態と判定した場合、予め設定された設定ブレーキ力を作動させる機能がオフされていることを示す機能OFF通知ランプ62を点灯させる。
【0083】
また、報知指示部83は、自動ブレーキによって車両本体1が停車した後、オペレータによって復帰スイッチ55が操作され、自動ブレーキが解除された場合、解除をオペレータに報知するために自動ブレーキ作動通知ランプ63を点灯させる。さらに、報知指示部83は、オペレータが自動ブレーキ解除スイッチ56を操作して設定ブレーキ力を作動させる機能をオフした場合には、機能OFF通知ランプ62を点灯させる。
【0084】
<動作>
次に、本実施の形態のホイールローダ10の制御動作について説明する。
【0085】
図9は、本実施の形態のホイールローダ10の障害物検出に関する制御動作を示すフロー図である。
【0086】
はじめに、ステップS10において、コントローラ26の障害物判定部84が、車両本体1の後進時に障害物が検出されたか否かを判定する。障害物判定部84は、例えば、フロントタイヤ4もしくはリアタイヤ7が後方に向かって回転していること、またはFNRレバー52が後進位置であることによって車両本体1の後進状態を検出する。障害物判定部84は、後進が行われていることを検出している状態において、検出系25の後方検出部71から所定範囲内における障害物の検知情報を受け取ると、障害物が存在すると判定する。
【0087】
なお、ステップS10において、障害物が存在すると判定されない場合は、ステップS11においてコントローラ26は自動ブレーキを作動させずに制御が終了する。
【0088】
ステップS10において、障害物が存在すると判定された場合、ステップS12において、状態判定部85が、弱いブレーキ力を作動した場合に転倒予防が必要な状態であるか否かを判定する。
【0089】
状態判定部85は、状態検出部72のブーム角度センサ72a、圧力センサ72b、ベルクランク角度センサ72d、アーティキュレート角度センサ72e、車体角度センサ72f、および速度センサ72gから車両本体1の状態を取得し、上記(第1状態)~(第4状態)の転倒予防が必要な状態に該当するか否か判定する。
【0090】
ステップS12において車両本体1の状態が弱いブレーキ力を作動した場合に転倒予防が必要な状態であると判定されたときには、ステップS13において、コントローラ26はブレーキ力を作動させずに制御が終了する。
【0091】
ステップS12において車両本体1の状態が弱いブレーキ力を作動した場合に転倒予防が必要ない状態と判定されたときには、ステップS14において状態判定部85が、車両本体1の状態が設定ブレーキ力を作動した場合に転倒予防が必要な状態であるか否かを判定する。設定ブレーキ力とは、障害物Sの手前で停止可能な上述した強いブレーキ力である。
【0092】
ステップS14において車両本体1の状態が設定ブレーキ力を作動した場合に転倒予防が必要な状態であると判定されたときには、ステップS15においてコントローラ26のブレーキ指示部82は、エンジン31への燃料供給を停止し、ブレーキ弁41の開度を小さく設定して弱いブレーキ力が作動するようにサービスブレーキ42を制御し、制御が終了する。なお、上述したように、弱いブレーキ力は、エンジン31への燃料供給を停止し、ポンプ32aとモータ32bの斜板が走行の抵抗となるように制御することによって生じさせてもよい。
【0093】
ステップS14において車両本体1の状態が設定ブレーキ力を作動した場合に転倒予防が必要ない状態と判定された場合には、ステップS16において、コントローラ26のブレーキ指示部82は、アクセル51をオフすることによってエンジン31への燃料供給を停止し、ブレーキ弁41を操作することによってサービスブレーキ42を設定ブレーキ力で駆動して車両本体1を停止させる。これによって制御が終了する。なお、上述したようにパーキングブレーキ43を作動させて設定ブレーキ力を出しても良い。
【0094】
以上のように、転倒予防の必要性がない範囲で設定ブレーキ力または弱いブレーキ力を作動させて車両本体1に制動をかけることができる。
【0095】
また、例えば、ステップS15において弱いブレーキ力でブレーキを作動させて制御が終了した後に再び制御が開始され、次にステップS10において障害物が検出されない場合、ステップS11においてブレーキの作動がされず、弱いブレーキ力が停止される。このように後進途中に障害物が存在しなくなった場合にも適切に自動ブレーキの制御を行うことができる。後進途中に障害物が現れた場合も同様である。
【0096】
<特徴>
(1)
実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)は、後方検出部71と、状態検出部72と、コントローラ26(制御部の一例)と、を備える。後方検出部71は、後進時に車両本体1の後方を検出する。状態検出部72は、車両本体1の状態を検出する。コントローラ26は、状態検出部72と後方検出部71の検出に基づいて、車両本体1を制動する。
【0097】
これにより、車両本体1の状態と後方の検出結果によって自動ブレーキの制御を変えることができる。たとえば、オペレータが荷を積載する等して車両本体1が不安定な場合には、自動ブレーキの制御を抑制することができる。また、車両本体1が安定した状態で転倒の予防が必要ではない場合には、自動ブレーキによって車両本体1を制動して停止させることができる。
【0098】
(2)
実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、コントローラ26(制御部の一例)は、自動ブレーキによる制御、または自動ブレーキの制動力を抑制する制御を行う。
【0099】
これにより、例えば、作業機械が不安定な場合には、自動制御部の制動を抑制することができる。
【0100】
(3)
実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)は、機能OFF通知ランプ62(第1報知部の一例)を更に備える。機能OFF通知ランプ62は、自動ブレーキの抑制を報知する。自動ブレーキの制御は、機能OFF通知ランプ62による報知を含む。
【0101】
これにより、オペレータに自動ブレーキによる制動が抑制されることを知らせることができる。
【0102】
(4)
実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)は、警報装置61(第2報知部の一例)を更に備える。警報装置61は、後方検出部71によって車両本体1の後方に障害物Sを検出したことを報知する。
【0103】
これにより、オペレータに障害物Sを検出したことを知らせることができる。
【0104】
(5)
実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、コントローラ26(制御部の一例)は、後進時に後方検出部71によって障害物Sを検出し、状態検出部72で検出された車両本体1の状態が、予め設定されたブレーキ力による自動ブレーキを作動した場合に不安定になる状態と判断した場合、自動ブレーキの制動力を抑制する。
【0105】
これにより、ホイールローダ10が不安定な状態の場合には、自動ブレーキの制動力を抑制することができる。また、車両本体1が安定した状態の場合には、自動ブレーキ機能を抑制せず車両本体1を制動して停止させることができる。
【0106】
(6)
実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)は、サービスブレーキ42(サービスブレーキの一例)と、ブレーキ弁41と、を更に備える。ブレーキ弁41は、サービスブレーキ42への作動油の供給量を調整可能である。コントローラ26は、ブレーキ弁41を駆動しサービスブレーキ42を用いて自動ブレーキによる制動を行う。
【0107】
これによって、障害物Sを検出した場合に、車両本体1を停止させることができる。
【0108】
(7)
実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)は、パーキングブレーキ43を更に備える。コントローラ26(制御部の一例)は、パーキングブレーキ43を作動させることによって自動ブレーキによる制動を行う。
【0109】
これによって、障害物Sを検出した場合に、車両本体1を停止させることができる。
【0110】
(8)
実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、車両本体1は、作業機3を有する。車両本体1の状態は、作業機3の姿勢を含む。
【0111】
これによって、車両本体1が、作業機3の姿勢により設定ブレーキ力で制動させた場合に転倒予防の必要があるような不安定な状態であることを検出することができる。
【0112】
(9)
実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、車両本体1は、作業機3を有する。車両本体1の状態は、作業機3の積荷の状態を含む。
【0113】
これによって、車両本体1が、作業機3の姿勢及び積荷により設定ブレーキ力で制動させた場合に転倒予防の必要があるような不安定な状態であることを検出することができる。
【0114】
(10)
実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、車両本体1は、アーティキュレート式である。車両本体の状態は、アーティキュレート角度を含む。
【0115】
これによって、車両本体1が、アーティキュレート角度によって設定ブレーキ力で制動させた場合に転倒予防の必要があるような不安定な状態であることを検出することができる。
【0116】
(11)
実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)では、車両本体1の状態は、車両本体1の傾斜を含む。
【0117】
これによって、車両本体1が、地面の傾斜などによって設定ブレーキ力で制動させた場合に転倒予防の必要があるような不安定な状態であることを検出することができる。
【0118】
(12)
実施の形態のホイールローダ10(作業機械の一例)の制御方法は、ステップS10(後方検出ステップの一例)と、ステップS12、S14(状態検出ステップの一例)と、ステップS11、S13、S15、S16(制御ステップの一例)と、を備える。ステップS10は、車両本体1の後方を検出する。ステップS12、S14は、車両本体1の状態を検出する。ステップS11、S13、S15、S16は、ステップS10による検出結果とステップS12、S14による検出結果に基づいて、車両本体1を自動的に制動する自動ブレーキの制御を行う。
【0119】
これにより、車両本体1の状態と後方の検出結果によって自動ブレーキの制御を変えることができる。たとえば、オペレータが荷を積載する等して車両本体1が不安定な場合には、自動ブレーキの制御を抑制することができる。また、車両本体1が安定した状態で転倒予防の必要がない場合には、自動ブレーキによって車両本体1を制動して停止させることができる。
【0120】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0121】
(A)
上記実施の形態では、ステップS12において、弱いブレーキ力の作動で転倒予防の必要があるか否かを判定し、必要がない場合には、更にステップS14において設定ブレーキ力の作動で転倒予防の必要があるか否かを判定しているが、これに限らなくても良い。
【0122】
例えば、
図10に示すように、弱いブレーキ力の作動を行わなくてもよい。
【0123】
図10に示す制御フローでは、はじめに、ステップS20において、コントローラ26の障害物判定部84が、車両本体1の後進時に障害物が検出されたか否かを判定する。
【0124】
なお、ステップS20において、障害物が存在すると判定されない場合は、ステップS21においてコントローラ26はブレーキを作動させずに制御が終了する。
【0125】
ステップS20において、障害物が存在すると判定された場合、ステップS22において、状態判定部85が、車両本体1の状態が設定ブレーキ力を作動した場合に転倒予防が必要な状態であるか否かを判定する。
【0126】
ステップS22において転倒予防が必要な状態であると判定された場合には、ステップS23においてコントローラ26のブレーキ指示部82は、ブレーキを動作させず制御が終了する。
【0127】
また、ステップS22において車両本体1の状態が転倒予防の必要な状態ではないと判定された場合には、ステップS24において、コントローラ26のブレーキ指示部82は、ブレーキ弁41を操作することによってサービスブレーキ42を設定ブレーキ力で作動させて制御が終了する。
【0128】
なお、ステップS22において、ブレーキを作動させない代わりに弱いブレーキを作動させてもよい。
【0129】
(B)
上記実施の形態では、駆動系21にHST32を用いているが、HSTに限らなくても良く、トルクコンバータであってもよい。
図11は、駆動系21にトルクコンバータ132とトランスミッション133が設けられた構成を示すブロック図である。エンジン31からの駆動力はトルクコンバータ132を介してトランスミッション133に伝達される。トランスミッション133は、トルクコンバータ132を介して伝達されるエンジン31の回転駆動力を変速してアクスル34に伝達する。トランスミッション133には、パーキングブレーキ43が設けられている。
【0130】
トルクコンバータの場合、弱いブレーキ力を生じさせるためには、上記と同様にブレーキ弁41の開度を小さく設定してもよい。また、HSTに比較してブレーキ力が弱くなるが、アクセル51をオフ状態にするだけでもよい。なお、設定ブレーキ力を生じさせる場合は、上記実施の形態と同様に、ブレーキ弁41の開度を大きくするか、パーキングブレーキ43を用いればよい。
【0131】
さらに、HSTに限らず、HMT(Hydro Mechanical Transmission)が用いられても良い。
【0132】
(C)
なお、制動力の制御は、サービスブレーキ42、パーキングブレーキ43、他に制動力を変更する手段を適宜適用できる。
【0133】
(D)
上記実施の形態では、機能OFF通知ランプ62と警報装置61が設けられているが、機能OFFの報知と警報の報知を識別可能とする場合には機能OFF通知ランプ62は警報装置61と兼ねられていてもよい。
【0134】
(E)
上記実施の形態のホイールローダはオペレータが搭乗して操作してもよいし、無人で操作されてもよい。
【0135】
(F)
上記実施の形態では、作業機械の一例としてホイールローダを用いて説明したが、ホイールローダに限らなくてもよく、油圧ショベル等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の作業機械および作業機械の制御方法によれば、作業効率を向上することが可能な効果を発揮し、ホイールローダ等として有用である。
【符号の説明】
【0137】
1 :車両本体
10 :ホイールローダ
26 :コントローラ
71 :後方検出部
72 :状態検出部