(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】駅ホームの安全支援システムおよび支障物体判定方法
(51)【国際特許分類】
B61L 23/00 20060101AFI20231017BHJP
B61B 1/02 20060101ALI20231017BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231017BHJP
【FI】
B61L23/00 A
B61B1/02
G06T7/00 650B
(21)【出願番号】P 2019194460
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】金子 亮
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋一
(72)【発明者】
【氏名】中山 雄一郎
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-123028(JP,A)
【文献】特開2016-144993(JP,A)
【文献】特開2018-197023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/00
B61B 1/02
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車が存在することによって当該列車とプラットホームとの隙間に生じる線状陰影のうちの
同一部分を撮影するために異なる位置に設置された第1の俯瞰カメラおよび第2の俯瞰カメラと、
前記第1の俯瞰カメラの第1の撮影画像および前記第2の俯瞰カメラの第2の撮影画像に基づいて支障物体の存否を判定する処理装置と、
を具備した駅ホームの安全支援システムであって、
前記処理装置は、
前記第1の撮影画像のうち、
前記線状陰影の前記同一部分が部分的に遮られて前記線状陰影に相当しない
部分となっている第1の画像不相当箇所を検出する第1の検出手段と、
前記第2の撮影画像のうち、
前記線状陰影の前記同一部分が部分的に遮られて前記線状陰影に相当しない
部分となっている第2の画像不相当箇所を検出する第2の検出手段と、
前記第1の撮影画像中の前記第1の画像不相当箇所と
、前記第2の撮影画像中の前記第2の画像不相当箇所との
、前記プラットホームの長手方向に沿った位置の差異に基づいて、前記支障物体の存否を判定する判定手段と、
を備えた、
安全支援システム。
【請求項2】
プラットホームの側縁部に線路に沿って描かれる或いは設けられた線状部のうちの
同一部分を撮影するために異なる位置に設置された第1の俯瞰カメラおよび第2の俯瞰カメラと、
前記第1の俯瞰カメラの第1の撮影画像および前記第2の俯瞰カメラの第2の撮影画像に基づいて支障物体の存否を判定する処理装置と、
を具備した駅ホームの安全支援システムであって、
前記処理装置は、
前記第1の撮影画像のうち、
前記線状部の前記同一部分が部分的に遮られて前記線状部に相当しない
部分となっている第1の画像不相当箇所を検出する第1の検出手段と、
前記第2の撮影画像のうち、
前記線状部の前記同一部分が部分的に遮られて前記線状部に相当しない
部分となっている第2の画像不相当箇所を検出する第2の検出手段と、
前記第1の撮影画像中の前記第1の画像不相当箇所と
、前記第2の撮影画像中の前記第2の画像不相当箇所との
、前記プラットホームの長手方向に沿った位置の差異に基づいて、前記支障物体の存否を判定する判定手段と、
を備えた、
安全支援システム。
【請求項3】
前記線状部は、所定色の線、或いは、点字ブロック、である、
請求項2に記載の安全支援システム。
【請求項4】
前記判定手段は、
前記差異が所定の位置ズレ条件を
満たさない場合に前記支障物体が存在しないと判定し、満たす場合に前記支障物体が存在すると判定する、
請求項1~3の何れか一項に記載の安全支援システム。
【請求項5】
列車が存在することによって当該列車とプラットホームとの隙間に生じる線状陰影のうちの
同一部分を異なる位置に設置された第1の俯瞰カメラおよび第2の俯瞰カメラで撮影し、前記第1の俯瞰カメラの第1の撮影画像および前記第2の俯瞰カメラの第2の撮影画像に基づいて支障物体の存否を判定することで支障物体判定方法であって、
前記第1の撮影画像のうち、
前記線状陰影の前記同一部分が部分的に遮られて前記線状陰影に相当しない
部分となっている第1の画像不相当箇所を検出する第1の検出ステップと、
前記第2の撮影画像のうち、
前記線状陰影の前記同一部分が部分的に遮られて前記線状陰影に相当しない
部分となっている第2の画像不相当箇所を検出する第2の検出ステップと、
前記第1の撮影画像中の前記第1の画像不相当箇所と
、前記第2の撮影画像中の前記第2の画像不相当箇所との
、前記プラットホームの長手方向に沿った位置の差異に基づいて、前記支障物体の存否を判定する判定ステップと、
を含む支障物体判定方法。
【請求項6】
プラットホームの側縁部に線路に沿って描かれる或いは設けられた線状部のうちの
同一部分を異なる位置に設置された第1の俯瞰カメラおよび第2の俯瞰カメラで撮影し、前記第1の俯瞰カメラの第1の撮影画像および前記第2の俯瞰カメラの第2の撮影画像に基づいて支障物体の存否を判定することで支障物体判定方法であって、
前記第1の撮影画像のうち、
前記線状部の前記同一部分が部分的に遮られて前記線状部に相当しない
部分となっている第1の画像不相当箇所を検出する第1の検出ステップと、
前記第2の撮影画像のうち、
前記線状部の前記同一部分が部分的に遮られて前記線状部に相当しない
部分となっている第2の画像不相当箇所を検出する第2の検出ステップと、
前記第1の撮影画像中の前記第1の画像不相当箇所と
、前記第2の撮影画像中の前記第2の画像不相当箇所との
、前記プラットホームの長手方向に沿った位置の差異に基づいて、前記支障物体の存否を判定する判定ステップと、
を含む支障物体判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅ホームの安全支援システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
駅ホームでは、駅員や車掌が目視にて触車事故を防いでいる。具体的には、ホーム上において、列車進入時であればホーム端部から、列車出発時であれば停車中の列車から、人・車いす・ベビーカー等が、一定の離隔を確保した位置にいるかを確認することで触車事故を防ぐ。一定の離隔が得られていなければ注意喚起のアナウンスを行う。もしも列車とホーム端部との隙間に人・車いす・ベビーカー等が挟まれていた場合には手助けをする。これらの作業は、駅員や車掌が人力で行っている。
【0003】
触車事故を低減する目的のシステムとして、また駅員や車掌の安全支援作業を補完する目的のシステムとして、ホーム柵がある。しかし、ホーム柵はプラットホームの側端ギリギリに設置されることはなく、ホーム柵とホーム側端との間のホーム上には隙間がある。そのため、ホーム柵を設置するだけで触車事故を完全に防止できるわけではない。
【0004】
そのため、駅員や車掌の人的負担を増やすことなく触車事故を防止することを目的として、カメラによる撮影画像を用いた様々な駅ホームの安全支援システムが提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5748468号公報
【文献】特開平8-282494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2を含む従来の手法は、人・車いす・ベビーカー等の支障物体を撮影画像から検出できることを前提としていた。そのため、撮影画像中に異物が写った場合に、誤って人・車いす・ベビーカー等の支障物体であると誤検知してしまうおそれがあった。例えば、新聞紙や、木の葉の集合物等が写った場合がその好例である。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、カメラによる撮影画像を用いた駅ホームの安全支援システムとして、支障物体の誤検知を低減する技術を提案すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、
列車とプラットホームとの隙間に生じる線状陰影のうちの同一の観察部分を撮影するために異なる位置に設置された第1の俯瞰カメラ(例えば、
図4の第1の俯瞰カメラ20a)および第2の俯瞰カメラ(例えば、
図4の第2の俯瞰カメラ20b)と、
前記第1の俯瞰カメラの第1の撮影画像および前記第2の俯瞰カメラの第2の撮影画像に基づいて支障物体の存否を判定する処理装置(例えば、
図1の処理装置200)と、
を具備した駅ホームの安全支援システム(例えば、
図1の安全支援システム2)であって、
前記処理装置は、
前記第1の撮影画像のうち、前記観察部分の画像が前記線状陰影に相当しない第1の画像不相当箇所を検出する第1の検出手段(例えば、
図8の第1不相当箇所検出部241)と、
前記第2の撮影画像のうち、前記観察部分の画像が前記線状陰影に相当しない第2の画像不相当箇所を検出する第2の検出手段(例えば、
図8の第2不相当箇所検出部243)と、
前記第1の画像不相当箇所と前記第2の画像不相当箇所との差異に基づいて、前記支障物体の存否を判定する判定手段(例えば、
図8の存否判定部245)と、
を備えた、
安全支援システムである。
【0009】
第1の発明によれば、列車とプラットホームとの隙間に生じる線状陰影のうちの同一の観察部分を撮影するために、異なる位置に俯瞰カメラを設置する。そして、各俯瞰カメラの撮影画像から観察部分の画像が線状陰影に相当しない画像不相当箇所をそれぞれ検出し、それらの差異に基づいて支障物体の存否を判定することができる。これによれば、カメラによる撮影画像を用いて支障物体の誤検知を低減ですることが可能となり、駅における触車事故の防止を図ることができる。
【0010】
第2の発明は、
プラットホームの側縁部に線路に沿って描かれる或いは設けられた線状部(例えば、
図3の点字ブロック31や
図12の限界ライン35)のうちの同一の観察部分を撮影するために異なる位置に設置された第1の俯瞰カメラおよび第2の俯瞰カメラと、
前記第1の俯瞰カメラの第1の撮影画像および前記第2の俯瞰カメラの第2の撮影画像に基づいて支障物体の存否を判定する処理装置と、
を具備した駅ホームの安全支援システムであって、
前記処理装置は、
前記第1の撮影画像のうち、前記観察部分の画像が前記線状部に相当しない第1の画像不相当箇所を検出する第1の検出手段と、
前記第2の撮影画像のうち、前記観察部分の画像が前記線状部に相当しない第2の画像不相当箇所を検出する第2の検出手段と、
前記第1の画像不相当箇所と前記第2の画像不相当箇所との差異に基づいて、前記支障物体の存否を判定する判定手段と、
を備えた、
安全支援システムである。
【0011】
第2の発明によれば、プラットホームの側縁部に線路に沿って描かれる或いは設けられた線状部のうちの同一の観察部分を撮影するために、異なる位置に俯瞰カメラを設置する。そして、各俯瞰カメラの撮影画像から観察部分の画像が線状部に相当しない箇所をそれぞれ検出し、それらの差異に基づいて支障物体の存否を判定することができる。これによれば、カメラによる撮影画像を用いて支障物体の誤検知を低減ですることが可能となり、駅における触車事故の防止を図ることができる。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、
前記線状部は、所定色の線、或いは、点字ブロック、である、
安全支援システムである。
【0013】
第3の発明によれば、線路に沿ってプラットホームに描かれる或いは設けられた所定色の線、或いは点字ブロックを、線状部とすることができる。
【0014】
第4の発明は、第1~第3の何れかの発明において、
前記判定手段は、前記観察部分のうちの前記第1の画像不相当箇所の位置と、前記観察部分のうちの前記第2の画像不相当箇所の位置と、の位置のズレが所定の位置ズレ条件を満たす場合に前記支障物体が存在すると判定する、
安全支援システムである。
【0015】
第4の発明によれば、各俯瞰カメラから見た画像不相当箇所のそれぞれに対応する観察部分の部位の位置ズレをもとに、支障物体の存否を判定することができる。
【0016】
第5の発明は、
列車とプラットホームとの隙間に生じる線状陰影のうちの同一の観察部分を異なる位置に設置された第1の俯瞰カメラおよび第2の俯瞰カメラで撮影し、前記第1の俯瞰カメラの第1の撮影画像および前記第2の俯瞰カメラの第2の撮影画像に基づいて支障物体の存否を判定することで支障物体判定方法であって、
前記第1の撮影画像のうち、前記観察部分の画像が前記線状陰影に相当しない第1の画像不相当箇所を検出する第1の検出ステップと、
前記第2の撮影画像のうち、前記観察部分の画像が前記線状陰影に相当しない第2の画像不相当箇所を検出する第2の検出ステップと、
前記第1の画像不相当箇所と前記第2の画像不相当箇所との差異に基づいて、前記支障物体の存否を判定する判定ステップと、
を含む支障物体判定方法である。
【0017】
第5の発明によれば、第1の発明と同様の作用効果を奏する支障物体判定方法を実現することができる。
【0018】
第6の発明は、
プラットホームの側縁部に線路に沿って描かれる或いは設けられた線状部のうちの同一の観察部分を異なる位置に設置された第1の俯瞰カメラおよび第2の俯瞰カメラで撮影し、前記第1の俯瞰カメラの第1の撮影画像および前記第2の俯瞰カメラの第2の撮影画像に基づいて支障物体の存否を判定することで支障物体判定方法であって、
前記第1の撮影画像のうち、前記観察部分の画像が前記線状部に相当しない第1の画像不相当箇所を検出する第1の検出ステップと、
前記第2の撮影画像のうち、前記観察部分の画像が前記線状部に相当しない第2の画像不相当箇所を検出する第2の検出ステップと、
前記第1の画像不相当箇所と前記第2の画像不相当箇所との差異に基づいて、前記支障物体の存否を判定する判定ステップと、
を含む支障物体判定方法である。
【0019】
第6の発明によれば、第2の発明と同様の作用効果を奏する支障物体判定方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】駅ホームの安全支援システムの全体構成例を示す図。
【
図2】安全支援システムが設置された駅に停止した列車の先頭車両を進行方向前方側から見た概略図。
【
図4】各俯瞰カメラの設置位置と観察部分との関係を説明するための図。
【
図9】支援物体検知データのデータ構成例を示す図。
【
図10】処理装置の処理の流れを示すフローチャート。
【
図11】支障物体判定処理の流れを示すフローチャート。
【
図12】変形例におけるプラットホームを上から見た概略図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付す。
【0022】
[全体構成]
図1は、本実施形態における駅ホームの安全支援システム2の全体構成例を示す図である。
図1では、駅に停止した状態の列車1の概形を併せて示している。また、
図2は、当該駅に停止した列車1の先頭車両を進行方向前方側から見た概略図であり、
図3は、当該駅を上から見た概略図である。
【0023】
ここで、
図3に示すように、プラットホーム3の長手方向をx方向、プラットホーム3の短手方向をy方向と定義する。プラットホーム3には、x方向である線路に沿った方向において、軌道側端縁(プラットホーム3の側縁部)に線状部の一例である点字ブロック31が敷設されている。点字ブロック31には、その視認性を確保するため、周囲の路面との輝度比の高い色のものが用いられる。
【0024】
そして、本実施形態の安全支援システム2は、設置駅において対象のプラットホーム3(より詳細には番線)毎に設けられ、
図1に示すように、複数の俯瞰カメラ20と、処理装置200と、を具備する。
【0025】
複数の俯瞰カメラ20は、プラットホーム3の上方において、停止した列車1を見下ろす俯瞰位置に設置される。各俯瞰カメラ20の設置態様は特に限定されないが、例えば、
図2において1つの俯瞰カメラ20について示すように、プラットホーム3の天井部分に撮影方向を下に向けて設置される。勿論、プラットホーム3の支柱に設ける等の他の設置態様とした構成でもよい。
【0026】
ここで、レールR上を走行する列車1がプラットホーム3に進入すると、列車1の車体側面とプラットホーム3の端縁との間の隙間部分に特徴的な影が生じる。この影を線状陰影という。各俯瞰カメラ20は、当該隙間に生じる線状陰影33の全域と、プラットホーム3上の点字ブロック31の全域と、が少なくとも2つの俯瞰カメラ20によって部分的に重複して撮影されるように設置される。
図4は、各俯瞰カメラ20の設置位置と観察部分との関係を説明するための図であり、列車1の側面をプラットホーム3側から見た概略図を上段(1)に示し、列車1およびプラットホーム3を上から見た概略図を下段(2)に示している。
【0027】
本実施形態では、
図4(2)に示すように、線状陰影33の全域と点字ブロック31の全域とを含む観察エリア40が複数の観察単位領域41に区画され、各観察単位領域41のそれぞれが、異なる位置に設置された2つの俯瞰カメラ20の観察部分とされる。そして、各俯瞰カメラ20は、その撮影範囲に自分の観察部分が含まれるように設置される。
【0028】
例えば、
図4の例では、各俯瞰カメラ20は、直下の観察単位領域41とその両隣の観察単位領域41の3つが撮影範囲内となるように、x方向に沿って等間隔で設置される。そして、撮影範囲内とされた3つのうちの両端の2つの観察単位領域41が、その俯瞰カメラ20の観察部分とされる。これにより、線状陰影33および点字ブロック31の全域を、観察単位領域41毎に2つの俯瞰カメラ20で重複して撮影することができる。またその際に、各俯瞰カメラ20は、その観察部分である2つの観察単位領域41をそれぞれ斜め上方から撮影することができる。したがって、観察単位領域41毎に、当該観察単位領域41を
図4に向かって左斜め上方から撮影した画像と、右斜め上方から撮影した画像とが得られる。
【0029】
観察単位領域41cでいえば、俯瞰カメラ20aおよび俯瞰カメラ20bの観察部分とされ、その一方の俯瞰カメラ(第1の俯瞰カメラ)20aによって左斜め上方から撮影されるとともに、他方の俯瞰カメラ(第2の俯瞰カメラ)20bによって右斜め上方から撮影される。
【0030】
また、本実施形態では、後述する位置ズレ判定処理において各俯瞰カメラ20で撮影された撮影画像内の位置(画像座標系(X,Y)のX値;
図5(1)、
図7(1)等を参照)を、そこに写るプラットホーム3上の位置(プラットホーム3の軌道側端縁に沿ったx位置)に変換できるように、俯瞰カメラ20毎にそれらの対応関係を定めたホーム位置換算テーブル253(
図8を参照)が予め用意される。
【0031】
そして、処理装置200は、各俯瞰カメラ20の撮影画像に基づいて、支障物体の存否を判定する支障物体判定処理を行う。
【0032】
[支障物体判定処理について]
列車1とプラットホーム3との隙間部分に何らかの物体が存在する場合として、人・車いす・ベビーカー等が当該隙間部分に挟まった場合が考えられる。その場合は、そのまま列車が発車してしまうことのないように駅員等が適宜必要な救助や手助けを行い、触車事故を防止する。
【0033】
また、人・車いす・ベビーカー等が隙間部分に挟まっていなくても、それらと列車1との間で一定の離隔が得られていないときには、触車事故防止のための注意喚起のアナウンスを行う。本実施形態では、点字ブロック31上に物体が存在する場合に、注意喚起アナウンスをする。
【0034】
しかし、列車1とプラットホーム3との隙間部分や点字ブロック31上に物体が存在するからといって、それが人・車いす・ベビーカー等とは限らず、例えば、新聞紙や木の葉の集合物等の場合もある。そのため、隙間部分等に存在する物体が人等の物体(触車事故防止のために何らかの措置が必要な物体;支障物体)であるのか、それ以外の新聞紙等の物体なのかの判別が重要となる。
【0035】
そこで、支障物体判定処理では、各観察単位領域41を順次対象領域とし、対象領域を観察部分とする第1の俯瞰カメラ20aの第1の撮影画像と、第2の俯瞰カメラ20bの第2の撮影画像とに基づいて、対象領域における支障物体の存否を判定する処理をフレーム毎(所定の単位時間毎)に繰り返す。例えば、
図4の観察単位領域41cに着目すると、第1の俯瞰カメラ20aの第1の撮影画像と、第2の俯瞰カメラ20bの第2の撮影画像とから、観察単位領域41に支障物体が存在するか否かの判定を行う。
【0036】
ここで、
図4では、観察単位領域41c内の列車1とプラットホーム3との隙間部分に人51が存在する場合を示している。
図5は、その場合の支障物体判定処理を説明する図であり、第1の俯瞰カメラ20aの第1の撮影画像例を上段(1)に、第2の俯瞰カメラ20bの第2の撮影画像例を下段(3)にそれぞれ示すとともに、中段(2)において、プラットホーム3上の観察単位領域41cの概略図を示している。
【0037】
また、
図6は、同じ観察単位領域41cにおいて新聞紙53が存在する場合を示す図である。そして、
図7は、その場合の支障物体判定処理を説明する図であり、第1の俯瞰カメラ20aの第1の撮影画像例(1)と、観察単位領域41cの概略図(2)と、第2の俯瞰カメラ20bの第2の撮影画像例(3)とを示している。
【0038】
以下、線状陰影33に着目して支障物体判定処理を説明するが、点字ブロック31上の支障物体の存否についても同様の要領で判定することができる。
【0039】
列車1とプラットホーム3との隙間部分に何らかの物体が存在すると、撮影画像において線状陰影33上にその物体が重なって写るため、線状陰影33が部分的に欠けたり、或いは部分的に太くなって輪郭形状が崩れる。例えば、
図5(1)に示す第1の撮影画像や
図5(3)に示す第2の撮影画像には、その観察単位領域41cの画像61,63内において列車1とプラットホーム3との隙間部分に存在する人51が線状陰影33に重なるため、その部分は線状陰影33に相当しない不相当箇所611,631として写る。
図7(1)に示す第1の撮影画像や
図7(3)に示す第2の撮影画像も同様に、列車1とプラットホーム3の隙間部分に存在する新聞紙53が線状陰影33に重なるため、その部分は線状陰影33に相当しない不相当箇所651,671として写る。
【0040】
しかし、支障物体となり得る人・車いす・ベビーカー等の物体は、何れもある程度の高さがある。そして、本実施形態では、第1の俯瞰カメラ20aと第2の俯瞰カメラ20bとは、同じ観察部分である観察単位領域41(例えば観察単位領域41c)を図に向かって左右両側の斜め上方から撮影する。そのため、左斜め上方から観察単位領域41cを撮影した第1の撮影画像(
図5(1))では、人51の存在によってそれより右側の線状陰影33の部分が遮られて不相当箇所611となる。逆に、右斜め上方から観察単位領域41cを撮影した第2の撮影画像(
図5(3))では、人51の存在によってそれより左側の線状陰影33の部分が遮られ、不相当箇所631となる。
【0041】
したがって、画像61中の不相当箇所(第1の画像不相当箇所)611と、画像63中の不相当箇所(第2の画像不相当箇所)631とをそれぞれプラットホーム3上の位置に変換すると、両者に位置ズレが生じる。具体的には、
図5(2)に示すように、第1の画像不相当箇所611に対応する観察単位領域41c内の部位711と、第2の画像不相当箇所631に対応する観察単位領域41c内の部位713とは位置がずれる。
【0042】
一方、支障物体とはならない新聞紙や木の葉の集合物等の物体は、支障物体と比べて高さがほとんどない。そのため、
図7(1)に示す第1の撮影画像における観察単位領域41cの画像65内の不相当箇所(第1の画像不相当箇所)651と、
図7(3)に示す第2の撮影画像における観察単位領域41cの画像67内の不相当箇所(第2の画像不相当箇所)671とをそれぞれプラットホーム3上の位置に変換しても、位置ズレは無い或いは小さい。具体的には、
図7(2)に示すように、第1の画像不相当箇所651に対応する観察単位領域41c内の部位731と、第2の画像不相当箇所671に対応する観察単位領域41c内の部位733とは概ね一致する。
【0043】
したがって、両者の位置ズレ量(例えば
図5(2)のA1)を求めることで、第1の画像不相当箇所および第2の画像不相当箇所が支障物体によるものなのかどうかを判別することができる。なお、
図5では、各部位711,713の左端間の距離を位置ズレ量A1として示しているが、各部位711,713の中心間の距離を求めて位置ズレ量としてもよいし、右端間の距離を位置ズレ量としてもよい。例えば、「求めた位置ズレ量が予め定められる閾値を超えていること」を所定の位置ズレ条件として判定し、位置ズレ条件を満たす場合には、支障物体が存在すると判定する。閾値は、検出を希望する立体物の高さに基づいて設定することができる。これによれば、列車1とプラットホーム3との隙間部分や点字ブロック31上に存在する人・車いす・ベビーカー等の支障物体の誤検知を低減することが可能となる。
【0044】
[報知制御処理について]
以上説明した支障物体判定処理において支障物体が存在すると判定した場合には、その旨をプラットホーム3にいる乗客や駅員、車掌等に報知するための報知制御処理を行う。報知の態様は特に限定されないが、例えば、適所に設置されたスピーカーから所定のアナウンス音声を出力させることで実現できる。
【0045】
本実施形態では、線状陰影33上の支障物体を検知したのか(線状陰影33上に支障物体が存在すると判定したのか)、点字ブロック31上の支障物体を検知したのか(点字ブロック31上に支障物体が存在すると判定したのか)に応じたアナウンスを行う。より詳細には、例えば、駅に列車1が在線していないときには、点字ブロック31上の支障物体の検知を受けてプラットホーム3にいる乗客向けに注意喚起のアナウンス(以下「第1注意喚起アナウンス」という)をする。予め用意しておいたアナウンス音声をプラットホーム3等に設置されたスピーカーから音声出力させるための制御を行うことで実現できる。
【0046】
一方、列車1が在線しており列車1のドアが開く前に線状陰影33上の支障物体が検知された場合には、乗客向けの注意喚起アナウンス(以下「第2注意喚起アナウンス」という)を行う。この第2注意喚起アナウンスと、上記した第1注意喚起アナウンスとは異なる内容のアナウンスとするとよい。列車1が在線しているときの方が触車事故により注意すべきだからである。
【0047】
加えて、列車1が在線している出発前のタイミングで線状陰影33上の支障物体が検知された場合には、乗客向けの注意喚起アナウンス(以下「第3注意喚起アナウンス」という)を行うとともに、駅員や車掌向けのアナウンス(以下「通報アナウンス」という)も適宜行う。具体的には、乗客の乗り降りが終了した後に線状陰影33上で支障物体が検知されたことを受けて第3注意喚起アナウンスを行う。そして、その後所定時間が経過しても支障物体が検知されたままであれば、通報アナウンスを行う。その場合は、支障物体が存在すると判定された観察単位領域41の位置を併せて通知するとよい。駅員等が救助等に向かう場合の助けとなるからである。本実施形態では、線状陰影33上の支障物体の有無を検知するタイミングは、列車1のドア閉め直後とする。列車1のドアが閉まったか否かは、例えば、列車1においてドア閉めが行われた旨の信号を処理装置200が外部から受信することとしたり、ドア閉めの完了を検出する別途の装置からドア閉めが行われた旨の信号を処理装置200が受信することで判定できる。
【0048】
なお、アナウンス自体は、駅員等が行う構成でもよい。その場合は、駅員等に向けて、警告音の音出力やメッセージの表示出力等によって報知を行うこととしてもよい。
【0049】
[機能構成]
図8は、処理装置200の機能構成例を示すブロック図である。
図8に示すように、処理装置200は、操作部210と、表示部220と、通信部230と、制御部240と、記憶部250とを備え、一種のコンピュータとして構成することができる。
【0050】
操作部210は、プッシュスイッチやダイヤル等を有して構成され、表示部220は、LEDや小型の液晶表示装置等を有して構成される。操作部210および表示部220は、主に作業員によってメンテナンス時に利用されるものである。
【0051】
通信部230は、例えば無線通信モジュールやルータ、モデム、TA、有線用の通信ケーブルのジャックや制御回路等で実現される有線或いは無線の通信装置であり、外部装置(例えば俯瞰カメラ20)との間で通信を行う。この通信部230を介して各俯瞰カメラ20からフレーム毎に入力される撮影画像が、撮影画像データ255として記憶部250に格納される。
【0052】
制御部240は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の電子部品によって実現され、装置各部との間でデータの入出力制御を行う。そして、所定のプログラムやデータ、通信部230を介して入力されたデータ等に基づいて各種の演算処理を行い、処理装置200の動作を制御する。この制御部240は、第1不相当箇所検出部241と、第2不相当箇所検出部243と、存否判定部245と、報知制御部247とを含む。これらの機能部は、プログラムを実行することによりソフトウェアとして実現される処理ブロックであってもよいし、ASICやFPGA等のハードウェア回路によって実現される回路ブロックであってもよい。本実施形態では、制御部240が駅ホーム安全支援プログラム251を実行することによりソフトウェアとして実現される処理ブロックとして説明する。
【0053】
第1不相当箇所検出部241は、対象領域を観察部分とする第1の俯瞰カメラ20aの第1の撮影画像に基づいて、対象領域の画像が線状陰影に相当しない箇所を第1の画像不相当箇所として検出する。本実施形態では、第1不相当箇所検出処理を行い、後述する第1線状陰影不相当箇所および第1点字ブロック不相当箇所を第1の画像不相当箇所として検出する。
【0054】
第2不相当箇所検出部243は、対象領域を観察部分とする第2の俯瞰カメラ20bの第2の撮影画像に基づいて、対象領域の画像が線状陰影に相当しない箇所を第2の画像不相当箇所として検出する。本実施形態では、第2不相当箇所検出処理を行い、後述する第2線状陰影不相当箇所および第2点字ブロック不相当箇所を第2の画像不相当箇所として検出する。
【0055】
存否判定部245は、第1画像不相当箇所と、第2画像不相当箇所との差異に基づいて、対象領域における支障物体の存否を判定する。本実施形態では、フレーム毎に位置ズレ判定処理を行って第1の画像不相当箇所と第2の画像不相当箇所とをプラットホーム3上の位置(x位置)に変換し、それらの位置ズレ量が位置ズレ条件を満たす場合に、対象領域において支障物体が存在すると判定する。
【0056】
報知制御部247は、報知制御処理を行う機能部であり、存否判定部245によって線状陰影33上や点字ブロック31上に支障物体が存在すると判定された場合に、乗客や駅員、車掌等に対するアナウンスを外部の音出力装置(プラットホーム3等に設置されたスピーカー)から出力させるための制御を行う。
【0057】
記憶部250は、ICメモリやハードディスク、光学ディスク等の記憶媒体により実現される。この記憶部250には、処理装置200を動作させ、処理装置200が備える種々の機能を実現するためのプログラムや、当該プログラムの実行中に使用されるデータ等が予め記憶され、或いは処理の都度一時的に記憶される。例えば、記憶部250には、駅ホーム安全支援プログラム251と、ホーム位置換算テーブル253と、撮影画像データ255と、支障物体検知データ257とが格納される。また、その他にも、注意喚起アナウンスや通報アナウンスの音声データ等を格納する。
【0058】
駅ホーム安全支援プログラム251は、制御部240を第1不相当箇所検出部241、第2不相当箇所検出部243、存否判定部245、および報知制御部247として機能させて、駅ホーム安全支援処理を実行するためのプログラムである。
【0059】
ホーム位置換算テーブル253は、各俯瞰カメラ20を識別するための俯瞰カメラ番号と対応付ける等して、俯瞰カメラ20毎に用意される。そして、1つのホーム位置換算テーブル253は、該当する俯瞰カメラ20によって撮影される撮影画像のX値と、そこに写るプラットホーム3上のx位置との対応関係を格納する。
【0060】
支障物体検知データ257は、各観察単位領域41についてフレーム毎に判定される支障物体の存否に関するデータを格納する。この支障物体検知データ257は、存否判定部245によってフレーム毎に生成され、蓄積されていく。
【0061】
具体的には、
図9に示すように、1つの支障物体検知データ257には、各観察単位領域41を識別するための観察単位領域番号と対応付けて、線状陰影上存否フラグ(ON:存在する/OFF:存在しない)と、点字ブロック上存否フラグ(ON:存在する/OFF:存在しない)とが設定される。存否判定部245によって線状陰影33上に支障物体が存在すると判定された観察単位領域41があれば、その観察単位領域番号に対応する線状陰影上存否フラグが「ON」とされる。同様に、点字ブロック31上に支障物体が存在すると判定された観察単位領域41があるときには、その観察単位領域番号に対応する点字ブロック上存否フラグが「ON」とされる。
【0062】
[処理の流れ]
図10は、処理装置200が行う駅ホーム安全支援処理の流れを示すフローチャートである。ここで説明する処理は、処理装置200において、制御部240が記憶部250から駅ホーム安全支援プログラム251を読み出して実行することで実現できる。
【0063】
図10に示すように、駅ホーム安全支援処理では先ず、支障物体判定処理を開始する(ステップS1)。
図11は、支障物体判定処理の流れを示すフローチャートである。
【0064】
図11に示すように、支障物体判定処理では、各観察単位領域41を順次対象領域として、ループAの処理を実行する(ステップS101~ステップS115)。
【0065】
ループAでは、第1不相当箇所検出部241が、第1の撮影画像のうちの対象領域の画像(以下「第1対象領域画像」という)から、第1の画像不相当箇所を検出する(第1不相当箇所検出処理;ステップS103)。
【0066】
具体的な手順としては先ず、第1対象領域画像内の線状陰影33と点字ブロック31とを判定する。線状陰影33の判定は、例えば、第1対象領域画像から暗色部分(所定の暗色輝度条件を満たす輝度値の画素)を抽出し、抽出した暗色部分のなかから一定幅で且つ直線状の輪郭形状を成す暗色部分が存在するかを判定する方法を採用することができる。また、所定幅で且つ直線状の暗色部分画像を第1対象領域画像のなかから検出するパターンマッチングの手法を採用することとしてもよい。点字ブロック31の判定についても同様であり、例えば、第1対象領域画像から明色部分(所定の明色輝度条件を満たす輝度値の画素)を抽出し、抽出した明色部分のなかから一定幅で且つ直線状の輪郭形状を成す明色部分が存在するかを判定する方法を採用することができる。また、所定幅で且つ直線状の明色部分画像を第1対象領域画像のなかから検出するパターンマッチングの手法を採用することとしてもよい。
【0067】
次に、第1の画像不相当箇所として、線状陰影33に係る画像不相当箇所(以下「第1線状陰影不相当箇所」という)と、点字ブロック31に係る画像不相当箇所(以下「第1点字ブロック不相当箇所」という)とを検出する。具体的には、判定した線状陰影33について上記したように輪郭が崩れている箇所を第1線状陰影不相当箇所として検出するとともに、判定した点字ブロック31について輪郭が崩れている箇所を、第1点字ブロック不相当箇所として検出する。
【0068】
続いて、第2不相当箇所検出部243が、第2の撮影画像のうちの対象領域の画像(以下「第2対象領域画像」という)から、第2の画像不相当箇所を検出する(第2不相当箇所検出処理;ステップS105)。
【0069】
手順としては、第1不相当箇所検出処理と同様の要領で、第2対象領域画像の画像から線状陰影33に係る画像不相当箇所(以下「第2線状陰影不相当箇所」という)と、点字ブロック31に係る画像不相当箇所(以下「第2点字ブロック不相当箇所」という)と、を第2の画像不相当箇所として検出する。
【0070】
第2不相当箇所検出処理を終えたならば、続いて、対応する第1の画像不相当箇所と第2の画像不相当箇所との組が検出されたか否かを判定する(ステップS107)。すなわち、第1不相当箇所検出処理によって第1線状陰影不相当箇所が検出され、且つ、第2不相当箇所検出処理によって対応する第2線状陰影不相当箇所が検出された場合や、第1不相当箇所検出処理によって第1点字ブロック不相当箇所が検出され、且つ第2不相当箇所検出処理によって対応する第2点字ブロック不相当箇所が検出された場合にステップS107を肯定判定し(S107:YES)、ステップS109に移行して位置ズレ判定処理を行う。
【0071】
そして、位置ズレ判定処理では先ず、存否判定部245が、ステップS103およびステップS105で検出された第1の画像不相当箇所と第2の画像不相当箇所との組毎に、位置ズレ量を求める(ステップS109)。例えば、第1の俯瞰カメラ20aに係るホーム位置換算テーブル253を用いて第1の画像不相当箇所のX位置をプラットホーム3上のx位置に変換するとともに、第2の俯瞰カメラ20bに係るホーム位置換算テーブル253を用いて第2の画像不相当箇所のX位置をプラットホーム3上のx位置に変換して、その差を位置ズレ量として求める。
【0072】
そして、求めた位置ズレ量が位置ズレ条件を満たす第1の画像不相当箇所と第2の画像不相当箇所との組があれば(ステップS111:YES)、そこに支障物体が存在すると判定する(ステップS113)。すなわち、当該組が第1線状陰影不相当箇所と第2線状陰影不相当箇所の組であれば、対象領域において列車1とプラットホーム3との隙間部分に支障物体が存在すると判定する。また、当該組が第1点字ブロック不相当箇所と第2点字ブロック不相当箇所の組であれば、対象領域において点字ブロック31上に支障物体が存在すると判定する。
【0073】
そして、全ての対象領域についてループAの処理を行ったならば、存否判定部245は、線状陰影上存否フラグと点字ブロック上存否フラグとを観察単位領域41毎に設定した支障物体検知データ257を生成する(ステップS117)。
【0074】
その後は、終了判定を行い、本処理を終了するまでの間は(ステップS119;NO)、ステップS101に戻って上記した処理を繰り返す。
【0075】
図10に戻る。支障物体判定処理を開始したならば、続いて、報知制御部247が、駅(対象のプラットホーム3)に列車1が在線しているか否かに応じて処理を分岐する。当該プラットホーム3の当該番線に列車1が在線していることが検知された場合(列車1が駅に進入してから進出するまでの間)は(ステップS3:YES)、ステップS9に移行する。一方、列車1の非在線時は(ステップS3:NO)、ステップS5に移行する。
【0076】
そして、ステップS5では、そのときの最新の支障物体検知データ257を参照し、点字ブロック上存否フラグが「ON」の観察単位領域41があれば(ステップS5:YES)、第1注意喚起アナウンスをプラットホーム3等のスピーカーから出力させるための制御を行う(ステップS7)。なお、点字ブロック31上の支障物体の数が予め設定される所定数以上である場合に第1注意喚起アナウンスの出力制御を行うこととしてもよい。
【0077】
また、ステップS9では、プラットホーム3に在線している列車1のドアが開いたか否かを判定し、開いていなければ(ステップS9:NO)、ステップS11に移行する。ドアが開いたか否かの判定は、外部から受信した信号を用いて行う。例えば、列車1においてドア開けが行われた旨の信号を処理装置200が外部から受信することとしたり、ドア開けの完了を検出する別途の装置からドア開けが行われた旨の信号を処理装置200が受信することとしてもよい。そして、そのときの最新の支障物体検知データ257を参照して、線状陰影上存否フラグが「ON」の観察単位領域41があれば(ステップS11:YES)、第2注意喚起アナウンスをプラットホーム3等のスピーカーから出力させるための制御を行う(ステップS13)。
【0078】
一方、列車1のドアが開いた後は(ステップS9:YES)、プラットホーム3に在線している列車1のドアが閉まるまで待機状態となる(ステップS14:NO)。ドアが閉まったか否かの判定は、ドアが開いたか否かの判定と同様に、外部から受信した信号を用いて行うことができる。例えば、列車1においてドア閉めが行われた旨の信号を処理装置200が外部から受信することとしたり、ドア閉めの完了を検出する別途の装置からドア閉めが行われた旨の信号を処理装置200が受信することとしてもよい。
【0079】
そして、列車1のドアが閉まった場合には(ステップ14:YES)、そのときの最新の支障物体検知データ257を参照し、線状陰影上存否フラグが「ON」の観察単位領域41があれば(ステップS15:YES)、第3注意喚起アナウンスをプラットホーム3等のスピーカーから出力させるための制御を行う(ステップS17)。この場合は、所定時間の経過後、再度そのときの最新の支障物体検知データ257を参照して支障物体の存否判定の結果を確認し、線状陰影上存否フラグが「ON」の観察単位領域41があれば(ステップS19:YES)、通報アナウンスをプラットホーム3等のスピーカーから出力させるための制御を行う(ステップS21)。
【0080】
その後は、線状陰影上存否フラグが「ON」の観察単位領域41がなくなるまで待機する。そして、なくなったならば(ステップS23:YES)、駅からの列車1の進出を監視する。そして、列車1が進出し終えるまでは(ステップS25:NO)、点字ブロック上存否フラグを監視し、「ON」の観察単位領域41があるときには(ステップS27:YES)、第2注意喚起アナウンスをプラットホーム3等のスピーカーから出力させるための制御を行う(ステップS29)。
【0081】
そして、列車1が進出し終えた場合には(ステップS25:YES)、終了判定を行う。そして、本処理を終了するまでの間は(ステップS31:NO)、ステップS3に戻って上記した処理を繰り返す。
【0082】
以上説明したように、本実施形態によれば、列車1とプラットホーム3との隙間部分や点字ブロック31上に存在する人・車いす・ベビーカー等の支障物体の誤検知を低減でき、支障物体の存否を適切に判定することが可能となる。そして、支障物体が存在すると判定した場合には、乗客に注意喚起をし、或いは駅員や車掌に通報して報知することができ、人・車いす・ベビーカー等が列車1と接触する触車事故の防止が図れる。
【0083】
なお、本発明を適用可能な形態は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0084】
例えば、上記実施形態では、点字ブロック上の支障物体の存否を判定する場合を例示したが、点字ブロックにかえてプラットホーム上の線状部の他の例である白線を利用し、白線上の支障物体の存否を判定する構成とすることもできる。その場合は、撮影画像中(観察単位領域の画像中)の白線を判定し、その不相当箇所を検出すればよい。
【0085】
或いは、検出用のライン(以下「限界ライン」という)を別途プラットホームに付しておくとしてもよい。
図12は、本変形例におけるプラットホーム3Bを上から見た概略図である。
図12に示すように、プラットホーム3Bには、その軌道側端縁において線路に沿って点字ブロック31が設置されるとともに、点字ブロック31よりもさらに外側に線路に沿って限界ライン35が描かれる。この限界ライン35の位置は、プラットホーム3Bへの列車の進入時や進出時において人・車いす・ベビーカー等の存在が許容される限界の位置に描かれる。
【0086】
そして、本変形例では、上記実施形態で説明した線状陰影にかえて線状部の他の例である限界ライン35を判定し、当該限界ライン35の輪郭が崩れた個所を不相当箇所として検出することで、限界ライン35上の支障物の存否を判定する。これによれば、点字ブロック31より外側の軌道側端縁の近傍に存在する支障物体を検知できる。
【0087】
また、本変形例の報知制御処理では、列車の非在線時は点字ブロック31上の支障物体の検知を受けて注意喚起アナウンス(第1注意喚起アナウンス)を行う。一方、列車の在線時は、限界ライン35上の支障物体の検知を受けて注意喚起アナウンス(第2注意喚起アナウンスや(第3注意喚起アナウンス))や通報アナウンスを行う。そして、列車の非在線時における注意喚起アナウンスと、列車の在線時における注意喚起アナウンスとを別個のものとし、列車の在線時より強く注意を促すようにする。
【0088】
また、上記実施形態および変形例は、ホーム柵が設置された駅のプラットホームに対しても同様に適用が可能である。ホーム柵は、プラットホームの軌道側端縁に配置されてプラットホーム上を軌道側と仕切るものであるが、上記した実施形態や変形例で例示した安全支援システム2を設置することにより、列車とホーム柵との間に入り込んだ人・車いす・ベビーカー等の検知が可能となる。したがって、上記実施形態と同様に、触車事故の防止を図ることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 列車、2 安全支援システム、20 俯瞰カメラ、20a 第1の俯瞰カメラ、20b 第2の俯瞰カメラ、200 処理装置、240 制御部、241 第1不相当箇所検出部、243 第2不相当箇所検出部、245 存否判定部、247 報知制御部、250 記憶部、251 駅ホーム安全支援プログラム、253 ホーム位置換算テーブル、255 撮影画像データ、257 支障物体検知データ、3 プラットホーム、31 点字ブロック、41 観察単位領域、35 限界ライン