(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20231017BHJP
B29C 45/07 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/07
(21)【出願番号】P 2019199261
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-07-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】仙賀 正俊
(72)【発明者】
【氏名】矢野 聡
(72)【発明者】
【氏名】菅原 圭介
(72)【発明者】
【氏名】牧 育広
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-340867(JP,A)
【文献】特開平08-257726(JP,A)
【文献】特開2005-111717(JP,A)
【文献】特開2003-320550(JP,A)
【文献】国際公開第2014/007329(WO,A1)
【文献】特開2001-38762(JP,A)
【文献】特開平9-39032(JP,A)
【文献】特開平9-11276(JP,A)
【文献】特開2021-24079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B22D 17/00-17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、前記ベースに設けられたピボットピンと、前記ピボットピンにより前記ベースに対して旋回方向に旋回可能に支持された射出ユニットと、を有する射出成形機であって、
前記射出ユニットを押圧することで、前記射出ユニットを前記旋回方向に旋回させるための棒状部材と、
前記ベースに設けられ、前記棒状部材に螺合する第1支持部材と、
を備え、
前記第1支持部材は、前記ベースに対して前記旋回方向に回動可能に設けられた回動軸と、前記回動軸に支持され、前記棒状部材が貫通する貫通孔が形成された棒支持部と、を有し、
前記棒支持部のうち、前記貫通孔の内側表面には前記棒状部材と螺合するネジ溝が形成され、
前記射出ユニットには、第1面と、前記第1面とは異なる第2面と、が設けられ、
前記射出ユニットは、前記第1面を押圧されることで前記旋回方向に旋回し、前記第2面を押圧されることで前記旋回方向とは逆方向に旋回する、射出成形機。
【請求項2】
請求項
1に記載の射出成形機であって、
前記射出ユニットに対して前記旋回方向に回動可能に前記射出ユニットに設けられた第2支持部材をさらに備え、
前記第2支持部材は、前記棒状部材と嵌合し、軸方向での前記棒状部材の移動を規制する軸受部材を有する、射出成形機。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の射出成形機であって、
前記棒状部材には、オペレータが握るための把持部が設けられている、射出成形機。
【請求項4】
請求項1
または2に記載の射出成形機であって、
前記棒状部材に接続された回転軸を有するモータをさらに備え、
前記棒状部材は、前記回転軸が回転することで前記射出ユニットを押圧する、射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機の射出ユニットに係り、ピボットピンを中心に旋回する射出ユニットが提案されている。その射出ユニットは、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出ユニットはオペレータが手押しすることで旋回する。しかしながら、射出ユニットは重量が大きいため、オペレータによっては手押しで旋回させることが容易ではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、射出ユニットの旋回が容易な射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の一つの態様は、ベースと、前記ベースに設けられたピボットピンと、前記ピボットピンにより前記ベースに対して旋回方向に旋回可能に支持された射出ユニットと、を有する射出成形機であって、前記射出ユニットを押圧することで、前記射出ユニットを前記旋回方向に旋回させるための棒状部材と、前記ベースに設けられ、前記棒状部材に螺合する第1支持部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、射出ユニットの旋回が容易な射出成形機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施の形態の射出ユニット周辺の上面図である。
【
図3】第1支持部材の構成を説明するための図である。
【
図4】棒状部材による射出ユニットの旋回の一例を示す図である。
【
図5】棒状部材による射出ユニットの旋回の
図4とは別の一例を示す図である。
【
図6】変形例1の射出ユニット周辺の上面図である。
【
図7】変形例1の第2支持部材の構成を説明するための図である。
【
図8】変形例2の射出ユニット周辺の上面図である。
【
図9】変形例3の射出ユニット周辺の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る射出成形機について、好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
[実施の形態]
図1は、実施の形態の射出成形機10の側面図である。
【0011】
以下、射出成形機10について説明するが、既知の事項についてはその説明を適宜割愛する。射出成形機10は、型締ユニット12と、射出ユニット14と、機台16と、ベース18と、ガイドレール20と、を備える。
【0012】
図1において、型締ユニット12と射出ユニット14とが向き合う方向を前後方向とする。射出ユニット14から見て型締ユニット12側が前方向である。また、重力方向を下方向とし、その反対方向を上方向とする。
【0013】
型締ユニット12は、機台16により支持される。開閉可能な金型22と、金型22を開閉させる開閉機構24と、を有する。開閉機構24は、
図1ではトグル式開閉機構であるが、トグル式開閉機構に限定されない。
【0014】
ガイドレール20は、前後方向に延在する部材であって、機台16に支持される。ベース18は、射出ユニット14を下方から支持する板状の部材であって、ガイドレール20に支持される。型締ユニット12と射出ユニット14とは、機台16の上において前後方向で対向する。
【0015】
ベース18は、ガイドレール20の延在方向に沿ってスライド移動できるように、ガイドレール20に支持される。これにより、ベース18がスライド移動することに伴って、射出ユニット14が型締ユニット12に対して離接するようになる。
【0016】
射出ユニット14は、本体26と、加熱筒28と、を備える。これらのうち、加熱筒28は、本体26に取り付けられる筒状の部材である。加熱筒28は、内側に図示しないスクリュを備える。また、加熱筒28の先端部にはノズル30が取り付けられる。ノズル30は加熱筒28の内外を通じる開口部を有する。
図1のL1は、加熱筒28およびノズル30の軸線である。
【0017】
本体26は、加熱筒28内のスクリュを進退および回転させる不図示の駆動機構を内部に備える筐体である。本体26の形状は、
図1では略直方体であるが、略直方体に限定されない。
【0018】
射出ユニット14は、ピボットピン32をさらに備える。ピボットピン32は、射出ユニット14をベース18に対して旋回方向D1(および逆の旋回方向D2)に回動可能に支持する。これにより、射出ユニット14は、ピボットピン32を中心にしてベース18の上で旋回し得る。
【0019】
図2は、実施の形態の射出ユニット14周辺の上面図である。
【0020】
図2において、前後方向は、
図1で示した方向と同一である。前方向を向いたときの右手側を右方向とし、左手側を左方向とする。なお、後で説明する
図4~
図6および
図8も同様である。
【0021】
図2のように、本実施の形態では、ピボットピン32は軸線L1上に配置される。これにより、金型22とノズル30とを互いに圧接(ノズルタッチ)させた際に、その圧接により生じる反力によって射出ユニット14が意図せず旋回することが防止される。
【0022】
以上の構成を有する射出成形機10は、加熱筒28内で溶融樹脂を計量する。また、計量した溶融樹脂をノズル30から金型22に射出する。この一連の動作が繰り返されると、劣化樹脂が加熱筒28内に徐々に蓄積される。劣化樹脂は、射出ユニット14のメンテナンスの際に除去される。オペレータは、必要に応じて射出ユニット14を旋回させることにより、劣化樹脂の除去作業を容易に行い得る。
【0023】
ここで、射出ユニット14を旋回させるためには、その射出ユニット14が重ければ重いほど、それに応じた大きさの力で押圧しなければならない。したがって、射出ユニット14の重量によっては、その射出ユニット14をオペレータが手押しで旋回させることは難しい。
【0024】
以上を鑑み、本実施の形態の射出成形機10は、第1面14aと、第2面14bと、棒状部材34と、支持部材(第1支持部材)36と、をさらに備える。以下、これらについて順を追って説明する。
【0025】
第1面14aと第2面14bとは、射出ユニット14の旋回時において、詳しくは後述する棒状部材34により押圧される面である。本実施の形態では、限定されないが、射出ユニット14のうちの前方向側であって加熱筒28の左方向側に第1面14aと第2面14bとを設ける。ここで、第1面14aと第2面14bとは、第1面14aの法線方向と第2面14bの法線方向とが互いに交差するように、より好ましくは互いに直交するように設けられる。本実施の形態では、例として、第1面14aが前方向を臨み、第2面14bが左方向を臨むように設ける(
図2)。
【0026】
棒状部材34は、その名称の通り棒状の部材である。
図2のL2は棒状部材34の軸線である。棒状部材34には、軸線L2に沿った方向に亘って、第1ネジ溝38(雄ネジ)が形成される。第1ネジ溝38は、第1支持部材36の第2ネジ溝48と螺合する。なお、第2ネジ溝48については改めて後述する。
【0027】
これにより、棒状部材34は、軸線L2を中心に回転するとき、第1支持部材36に対して相対移動し得る。この相対移動の可動範囲は、軸線L2に沿った第1ネジ溝38の形成範囲である。
【0028】
棒状部材34には、把持部40が設けられてもよい。把持部40の材料は、特に限定されないが、把持部40を握ったオペレータの手が滑りにくい素材を含むことが好ましい。一般的な滑止テープを棒状部材34に巻回することで把持部40としてもよい。これにより、オペレータは、把持部40を握って棒状部材34を容易に回転させ得る。
【0029】
把持部40は、平行な2面を形成して一般的なスパナを掛けられるような形状であってもよい。または、把持部40は、軸線L2を法線とした断面を三角形、四角形または6角形状にすることで、クランクハンドル、または六角穴ソケットを備えたレンチなどの一般的な工具を取り付けられるような形状を有してもよい。これにより、オペレータは、工具を使って棒状部材34を容易に回転させ得る。
【0030】
第1支持部材36は、棒状部材34を螺合により支持する部材である。棒状部材34は、例えば材料に金属を含む。第1支持部材36は、ベース18に設けられる。より具体的には、第1支持部材36は、射出ユニット14が
図2の状態を仮定して、第1面14aの前方向側、且つ第2面14bの左方向側に設けられる。
【0031】
図3は、第1支持部材36の構成を説明するための図である。
【0032】
第1支持部材36は、第1棒支持部(棒支持部)42と、第1回動軸(回動軸)44と、を有する。第1支持部材36の材料は、例えば棒状部材34と同じ金属を含み得る。ただし、これに限定されず、第1支持部材36の材料と棒状部材34の材料とは互いに異なる素材を含んでもよい。また、第1棒支持部42と第1回動軸44とが互いに異なる素材を含んでもよい。
【0033】
図3には、外観で概円注状の第1棒支持部42と、概円柱状の第1回動軸44とが示されている。ただし、第1棒支持部42および第1回動軸44の各々の形状は、
図3に限定されない。
【0034】
第1支持部材36のうち、第1棒支持部42には、棒状部材34が貫通する貫通孔46が形成されている。この貫通孔46の内側表面には、第2ネジ溝(ネジ溝)48が形成されている。第2ネジ溝48は、棒状部材34の第1ネジ溝38に螺合する雌ネジである。第1棒支持部42は、第1回動軸44に支持される。
【0035】
第1回動軸44は、ベース18に設けられた溝50に挿入される。また、第1回動軸44は、溝50の内側に設けられた第1軸受部材52により、回動可能に支持される。これにより、第1棒支持部42がベース18に対して旋回方向D1および旋回方向D1とは逆の旋回方向D2に回動可能になる。
【0036】
第1支持部材36は、このように棒状部材34を相対移動可能に支持することと、支持された棒状部材34を回動することと、を達成できればよく、構造がシンプルで小型化に有利である。
【0037】
構造がシンプルという観点では、棒状部材34も同様である。棒状部材34および第1支持部材36は、構造がシンプルであるため、導入コストの観点で有利である。
【0038】
続いて、上記の射出成形機10において、射出ユニット14の旋回を行う際の手順について説明する。
【0039】
図4は、棒状部材34による射出ユニット14の旋回の一例を示す図である。
【0040】
図4には、
図2の状態から、棒状部材34により第1面14aを押圧した場合が示されている。この場合においては、まず、棒状部材34の軸方向での一端を第1面14aの方に向ける。このとき、軸線L2上にピボットピン32が位置しないことが好ましい。その状態で棒状部材34を所定の回転方向に回転させると、棒状部材34は、軸線L2に沿って移動し、軸線L2に沿った方向で第1面14aを押圧する。これにより、ピボットピン32を中心にして、射出ユニット14が旋回方向D1に沿って旋回する。
【0041】
このように、オペレータは、重量の大きな射出ユニット14を手押しすることなく、棒状部材34を回転させるという簡易な作業によって、射出ユニット14を容易に旋回させ得る。すなわち、上記の射出成形機10によれば、オペレータは、射出ユニット14の旋回が容易に達成される。
【0042】
図5は、棒状部材34による射出ユニット14の旋回の
図4とは別の一例を示す図である。
【0043】
図5には、
図2の状態から射出ユニット14を旋回方向D1に旋回させた後、さらに棒状部材34により第2面14bを押圧した場合が示されている。棒状部材34は、軸線L2を第2面14bの方に向けた状態で軸線L2に沿って相対移動することにより、第2面14bを押圧する。これにより、射出ユニット14は、旋回方向D1とは逆の旋回方向D2に沿って旋回する。
【0044】
このように、オペレータは、互いに異なる法線方向を有する第1面14aと第2面14bとを適宜使い分けることで、自身が所望する方向に射出ユニット14を旋回させ得る。例えば、
図4のように第1面14aを押圧して旋回させた後、今度は第2面14bを押圧して
図2の状態に戻すことも可能である。
【0045】
以上が、本実施の形態の概要である。なお、本実施の形態の構成は、上記に限定されない。
【0046】
例えば、本実施の形態の射出成形機10は、射出ユニット14とベース18とを互いに締結する締結部材をさらに備えてもよい。締結部材は、例えばジャッキボルトである。また、射出ユニット14とベース18とには、締結時に締結部材を挿入するための締結穴が適宜設けられてもよい。
【0047】
射出ユニット14とベース18とを互いに締結することで、射出ユニット14の旋回が規制される。これにより、例えばノズルタッチの際に、ノズル30の向き(軸線L1の向き)が金型22に向かう方向から意図せずずれてしまうことが好適に防止される。なお、射出ユニット14を旋回する場合は、締結部材による締結を緩めればよい。
【0048】
また、例えば、本実施の形態の射出成形機10は、射出ユニット14とベース18との間に設けられる偏心ローラをさらに備えてもよい。偏心ローラは、射出ユニット14が旋回する際に、自己が回転することでその旋回を補助する。これにより、オペレータは、射出ユニット14をより容易に旋回させ得る。このとき、偏心ローラを射出ユニット14のなるべく後方に設けることで、より容易に旋回させ得る。
【0049】
[変形例]
以上、本発明の一例として実施の形態が説明されたが、上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることはもちろんである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0050】
(変形例1)
図6は、変形例1の射出ユニット14周辺の上面図である。
図7は、変形例1の第2支持部材54の構成を説明するための図である。
【0051】
射出成形機10は、第2支持部材54をさらに備えてもよい。第2支持部材54は、射出ユニット14に設けられる。第2支持部材54は、第2棒支持部56と、第2回動軸58と、を有する。これらのうち、第2棒支持部56は、第2軸受部材60(軸受部材)と、第3軸受部材62と、を有する。また、第2回動軸58は、射出ユニット14に対して固定され、第2棒支持部56を支持する。
【0052】
第2棒支持部56が有する第2軸受部材60と第3軸受部材62との各々は、例えばベアリングである。第2軸受部材60は棒状部材34を支持するものであって、軸線L2を中心とする棒状部材34の回転は許容しつつ、軸線L2に沿った自己(第2軸受部材60)に対する相対移動は規制する。これに関連し、本変形例では、
図7のように、棒状部材34のうちの第2軸受部材60に支持される部分(先端部)に第1ネジ溝38を形成する必要はない。また、本変形例では、
図7のように、棒状部材34のうちの第2軸受部材60に支持される部分を、棒状部材34のうちの第1ネジ溝38が形成された部分よりも細くする。これにより、第2ネジ溝48が形成された貫通孔46(
図3)に棒状部材34を挿入することが、棒状部材34のうちの第2軸受部材60に支持される部分に阻害されない。
【0053】
第3軸受部材62は、第2回動軸58を回動可能に支持するものである。これにより、第2棒支持部56が射出ユニット14に対して回動可能になる。なお、第2棒支持部56と第2回動軸58とを固定したうえで、第2回動軸58を射出ユニット14に対して回動可能に設けてもよい。
【0054】
棒状部材34が第1支持部材36に対して相対移動し得ることは既に説明した通りである。本変形例では、その相対移動を第2棒支持部56に向かって行うことで、第2棒支持部56を棒状部材34により押圧することができる。棒状部材34が第2棒支持部56を押圧すると、その押圧の力は、第2棒支持部56を介して射出ユニット14にも伝わる。これにより、本変形例においても、射出ユニット14が旋回方向D1に沿って容易に旋回する。
【0055】
また、本変形例では、棒状部材34を第1支持部材36に対して押圧時とは逆方向に相対移動させると、第2支持部材54が棒状部材34に引っ張られる。その結果、射出ユニット14には、第2支持部材54を介して押圧時とは逆方向の力(引張力)が印加される。これにより、射出ユニット14は、旋回方向D1とは逆の旋回方向D2に沿って容易に旋回する。
【0056】
このように、本変形例によれば、射出ユニット14を押圧して旋回させることのみならず、射出ユニット14を引っ張って押圧時とは逆方向に旋回させることも容易となる。
【0057】
(変形例2)
図8は、変形例2の射出ユニット14周辺の上面図である。
【0058】
射出成形機10は、駆動することで棒状部材34に射出ユニット14を押圧させるモータ64をさらに備えてもよい。モータ64は、例えばサーボモータである。モータ64の回転軸と棒状部材34とを一体的に回転可能に接続することで、当該回転軸の回転に伴って棒状部材34が回転するようになる。
【0059】
これにより、射出ユニット14は、モータ64の駆動に応じて旋回方向D1または旋回方向D2に沿って旋回し得る。本変形例によれば、オペレータは、自身の手で棒状部材34を回転させるよりも容易に射出ユニット14を旋回させ得る。
【0060】
(変形例3)
図9は、変形例3の射出ユニット14周辺の上面図である。
【0061】
本変形例の射出成形機10は、棒状部材34および第1支持部材36に代えて、伸縮機構66を備える。伸縮機構66は、シリンダ68と、ピストン70と、を有する。これらのうち、シリンダ68は、ベース18に固定される。ピストン70は、伸縮機構66の駆動時、シリンダ68から伸び縮みするように直動する。伸縮機構66の駆動様式は油圧式でもよいし、電動式でもよい。
【0062】
また、本変形例の射出成形機10は、射出ユニット14に設けられる第3支持部材54’をさらに備える。第3支持部材54’は、他の変形例で説明した第2支持部材54と殆ど同様の構成を有するものであるため、以下ではその説明を適宜省略する。
【0063】
第3支持部材54’は、射出ユニット14に対して回動可能である。また、第3支持部材54’は、ピストン70に連結される。このとき、第2軸受部材60は必要ない。第3支持部材54’の構成と第2支持部材54の構成とは、少なくともこの点において相違し得る。
【0064】
本変形例の構成では、伸縮機構66の直動するピストン70が第3支持部材54’を押圧し、または引っ張る。ピストン70が第3支持部材54’を押圧し、または引っ張る力は、射出ユニット14にも伝わる。したがって、本変形例によれば、射出ユニット14は、伸縮機構66の駆動に伴って容易に旋回し得る。
【0065】
また、第3支持部材54’とピストン70との連結部分が射出ユニット14に対し回動可能であるため、伸縮機構66からの押圧および引張による伸縮機構66および第3支持部材54’の破損のおそれは低減されている。
【0066】
(変形例4)
射出成形機10は、棒状部材34および第1支持部材36のそれぞれを複数備えてもよい。これにより、複数のオペレータの各々は、それぞれ異なる棒状部材34によって、射出ユニット14を同時に押圧し得る。その結果、射出ユニット14は、より容易に旋回し得る。
【0067】
また、棒状部材34と第1支持部材36とは、容易に螺合および螺合の解除が可能である。したがって、オペレータは、複数設けられた第1支持部材36の中から棒状部材34を支持させる1つを適宜選択するといった運用を行ってもよい。
【0068】
(変形例5)
第1回動軸44は、第1支持部材36の構成から省略されてもよい。この場合、第1支持部材36は、第1面14aと第2面14bとの両方ではなく、いずれか一方を棒状部材34により押圧し得る位置に設けられればよい。
【0069】
これにより、押圧の方向の切り換えは制限されるものの、押圧中における押圧の方向の意図しない変化は、より確実に防止され得る。また、第1回動軸44を省略することで、射出成形機10の構成をよりシンプルにし得る。
【0070】
また、本変形例では、第1面14aと第2面14bとのうちの棒状部材34により押圧され得ない一方についても、射出成形機10の構成から省略し得る。これにより、射出成形機10の構成をさらにシンプルにし得る。
【0071】
(変形例6)
上記の実施の形態および変形例は、矛盾の生じない範囲内で適宜組み合わされてもよい。
【0072】
[実施の形態から得られる発明]
上記実施の形態および変形例から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0073】
ベース(18)と、前記ベース(18)に設けられたピボットピン(32)と、前記ピボットピン(32)により前記ベース(18)に対して旋回方向(D1、D2)に旋回可能に支持された射出ユニット(14)と、を有する射出成形機(10)であって、前記射出ユニット(14)を押圧することで、前記射出ユニット(14)を前記旋回方向(D1、D2)に旋回させるための棒状部材(34)と、前記ベース(18)に設けられ、前記棒状部材(34)に螺合する第1支持部材(36)と、を備える。
【0074】
これにより、射出ユニット(14)の旋回が容易な射出成形機(10)が提供される。
【0075】
前記第1支持部材(36)は、前記ベース(18)に対して前記旋回方向(D1、D2)に回動可能に設けられた回動軸(44)と、前記回動軸(44)に支持され、前記棒状部材(34)が貫通する貫通孔(46)が形成された棒支持部(42)と、を有し、前記棒支持部(42)のうち、前記貫通孔(46)の内側表面には前記棒状部材(34)と螺合するネジ溝(48)が形成されてもよい。これにより、回動軸(44)は、第1支持部材(36)に螺合した棒状部材(34)を、旋回方向(D1、D2)に回動させ得る。
【0076】
前記射出ユニット(14)には、第1面(14a)と、前記第1面(14a)とは異なる第2面(14b)と、が設けられ、前記射出ユニット(14)は、前記第1面(14a)を押圧されることで前記旋回方向(D1)に旋回し、前記第2面(14b)を押圧されることで前記旋回方向(D1)とは逆方向(D2)に旋回してもよい。これにより、第1面(14a)の押圧と第2面(14b)の押圧とを使い分けることで、射出ユニット(14)を異なる方向(D1、D2)に容易に旋回させ得る。
【0077】
射出成形機(10)は、前記射出ユニット(14)に対して前記旋回方向(D1、D2)に回動可能に前記射出ユニット(14)に設けられた第2支持部材(54)をさらに備え、前記第2支持部材(54)は、前記棒状部材(34)と嵌合し、軸方向での前記棒状部材(34)の移動を規制する軸受部材(60)を有してもよい。これにより、射出ユニット(14)を押圧時とは逆に旋回させることが可能となる。
【0078】
前記棒状部材(34)には、オペレータが握るための把持部(40)が設けられてもよい。これにより、オペレータは、把持部(40)を握ることで棒状部材(34)を容易に回転させ得る。また、把持部(40)の形状を一般的な工具が組み付けられるような形状とすることで、状部材(34)を容易に回転させ得る。
【0079】
射出成形機(10)は、前記棒状部材(34)に接続された回転軸を有するモータ(64)をさらに備え、前記棒状部材(34)は、前記回転軸が回転することで前記射出ユニット(14)を押圧してもよい。これにより、射出ユニット(14)は、モータ(64)の駆動に応じて、容易に旋回し得る。
【符号の説明】
【0080】
10…射出成形機 14…射出ユニット
14a…第1面 14b…第2面
18…ベース 32…ピボットピン
34…棒状部材 36…第1支持部材
40…把持部 42…第1棒支持部(棒支持部)
44…第1回動軸(回動軸) 46…貫通孔
48…第2ネジ溝(ネジ溝) 54…第2支持部材
60…第2軸受部材(軸受部材) 64…モータ