IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-半導体装置、メモリ異常判定システム 図1
  • 特許-半導体装置、メモリ異常判定システム 図2
  • 特許-半導体装置、メモリ異常判定システム 図3
  • 特許-半導体装置、メモリ異常判定システム 図4
  • 特許-半導体装置、メモリ異常判定システム 図5
  • 特許-半導体装置、メモリ異常判定システム 図6
  • 特許-半導体装置、メモリ異常判定システム 図7
  • 特許-半導体装置、メモリ異常判定システム 図8
  • 特許-半導体装置、メモリ異常判定システム 図9
  • 特許-半導体装置、メモリ異常判定システム 図10
  • 特許-半導体装置、メモリ異常判定システム 図11
  • 特許-半導体装置、メモリ異常判定システム 図12
  • 特許-半導体装置、メモリ異常判定システム 図13
  • 特許-半導体装置、メモリ異常判定システム 図14
  • 特許-半導体装置、メモリ異常判定システム 図15
  • 特許-半導体装置、メモリ異常判定システム 図16
  • 特許-半導体装置、メモリ異常判定システム 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】半導体装置、メモリ異常判定システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/82 20060101AFI20231017BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20231017BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20231017BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20231017BHJP
   G11C 17/14 20060101ALI20231017BHJP
   G11C 17/16 20060101ALI20231017BHJP
   G11C 29/52 20060101ALI20231017BHJP
   G11C 29/04 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
H01L21/82 F
H01L21/82 T
H01L27/04 V
H01L27/04 T
G01R31/28 V
G11C17/14
G11C17/16
G11C29/52
G11C29/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019211341
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021082778
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 瞬
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-352034(JP,A)
【文献】特開2018-022789(JP,A)
【文献】特開2010-263181(JP,A)
【文献】特開2013-239596(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0077146(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/82、21/822
H01L 27/04
G01R 31/28
G11C 17/14、17/16
G11C 29/04、29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路内に設けられた対象電流経路及び前記対象電流経路に直列に挿入されたヒューズ素子を有し、前記対象電流経路に対して対象電流の供給を図ったときの前記ヒューズ素子の両端間電圧に応じ、出力データを変化させる不揮発性メモリ部を備えた半導体装置であって、
前記対象電流を複数段階で切り替える電流供給部を前記不揮発性メモリ部に設け
前記電流供給部は、
所定の基準電流経路に直列に挿入された電界効果トランジスタである基準トランジスタと、
前記対象電流経路に直列に挿入された電界効果トランジスタであるヒューズ側トランジスタと、
前記基準トランジスタ及び前記ヒューズ側トランジスタの各ゲートに共通のバイアス電圧を供給するバイアス電圧供給部と、
前記基準電流経路及び前記対象電流経路に接続され、前記基準電流経路に流れるバイアス電流に比例する電流が前記対象電流として前記対象電流経路に流れるよう動作するカレントミラー回路と、
前記基準トランジスタのソースと所定の基準電位を有する導電部との間に設けられた可変抵抗部と、を有し、
前記可変抵抗部の抵抗値を複数段階で切り替えることで前記基準電流経路に流れる前記バイアス電流を複数段階で切り替え、これによって前記対象電流経路に供給されるべき前記対象電流を複数段階で切り替え、
前記ヒューズ素子は前記ヒューズ側トランジスタのソースと前記導電部との間に設けられる
半導体装置。
【請求項2】
当該半導体装置はテストモード又は通常モードで動作可能であり、
前記通常モードにおいて前記出力データに応じた動作を行う機能回路部が当該半導体装置に設けられ、
前記電流供給部は、前記通常モードにおいて前記対象電流の値を基準電流値に設定し、前記テストモードにおいて前記対象電流の値を複数のテスト電流値間で切り替え設定し、
前記複数のテスト電流値は、前記基準電流値よりも小さな第1テスト電流値と、前記基準電流値よりも大きな第2テスト電流値と、を含む
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記対象電流の値が前記第1テスト電流値に設定されているときの前記出力データである第1テスト結果データと、前記対象電流の値が前記第2テスト電流値に設定されているときの前記出力データである第2テスト結果データとが、前記ヒューズ素子の異常有無の判定に供される
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記基準トランジスタでのチャネル長に対するチャネル幅の比と、前記ヒューズ側トランジスタでのチャネル長に対するチャネル幅の比とは、互いに同じに設定される
、請求項1~3の何れかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記不揮発性メモリ部は、前記対象電流経路及び前記ヒューズ素子を複数組有して複数ビット分の出力データを出力する
、請求項1~4の何れかに記載の半導体装置。
【請求項6】
請求項3に記載の半導体装置と、
前記第1テスト結果データ及び前記第2テスト結果データに基づいて前記ヒューズ素子の異常有無を判定する判定装置と、備えた
メモリ異常判定システム。
【請求項7】
前記判定装置は、前記第1テスト結果データと前記第2テスト結果データとの比較に基づき、或いは、前記第1テスト結果データに応じた第1情報と前記第2テスト結果データに応じた第2情報との比較に基づき、前記ヒューズ素子の異常有無を判定する
、請求項6に記載のメモリ異常判定システム。
【請求項8】
前記第1テスト結果データ及び前記第2テスト結果データに基づいて前記ヒューズ素子の異常有無を判定する判定回路を、当該半導体装置に更に設けた
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記判定回路は、前記第1テスト結果データと前記第2テスト結果データとの比較に基づき、或いは、前記第1テスト結果データに応じた第1情報と前記第2テスト結果データに応じた第2情報との比較に基づき、前記ヒューズ素子の異常有無を判定する
、請求項8に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、メモリ異常判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図17に参考技術に係る不揮発性メモリ部900の構成を示す。不揮発性メモリ部900は、物理的に切断可能な複数のヒューズ素子を備え、各ヒューズ素子が切断されているか否かに応じて記憶データが設定されるROM(Read only memory)である。
【0003】
不揮発性メモリ部900では、カレントミラー回路910の出力側に4つの電流経路を接続し、4つの電流経路にヒューズ素子F901~F904を1つずつ直列に挿入する。各ヒューズ素子は、不揮発性メモリ部900の製造工程において大きな電流の通電により又はレーザ照射により切断可能である。不揮発性メモリ部900の記憶データを読み出す際には、カレントミラー回路910の入力側に定電流源920で発生させたバイアス電流Ibiasを流し、このときの各ヒューズ素子の両端間電圧をデータ出力部940にて読み出す。データ出力部940はヒューズ素子F901~F904に対応する4つのAND回路から成る。ヒューズ素子F901~F904の切断/非切断情報が必要な場合にだけデータを取り出すためにAND回路が利用される。
【0004】
例えば、ヒューズ素子F901が切断されておれば、カレントミラー回路910とヒューズ素子F901の一端との接続ノードの電圧がハイレベルとなって、データ出力部940により“1”の値(論理値)が読み出され、ヒューズ素子F901が切断されていなければ、カレントミラー回路910とヒューズ素子F901の一端との接続ノードの電圧がローレベルとなって、データ出力部940により“0”の値(論理値)が読み出される。ヒューズ素子F902~F904についても同様であり、図17の不揮発性メモリ部900では4ビット分のデータを記憶させておくことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-272825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
不揮発性メモリ部900を含む半導体装置において、ヒューズ素子F901を切断するためのレーザ照射等を行った場合にはヒューズ素子F901の両端間の抵抗が十分に高くなり、そうでない場合にはヒューズ素子F901の両端間の抵抗が十分に低くなることが理想的である。
【0007】
但し、不揮発性メモリ部900を含む半導体装置の製造工程においてヒューズ素子F901を切断するためのレーザ照射等を行った場合でも、ヒューズ素子F901の理想的な切断が実現されておらず、ヒューズ素子F901が理想的に切断されたときと比べて、ヒューズ素子F901が比較的低い残留抵抗(例えば100kΩ程度の抵抗)を持つ場合もある。ヒューズ素子F902~F904についても同様である。
【0008】
このような残留抵抗により、データ出力部940にて読み出されるデータの値(論理値)が本来の値から反転(出力論理反転)するおそれがある。不揮発性メモリ部900を含む半導体装置の出荷検査の段階で出力論理反転が検出された場合には当該半導体装置を不良品として出荷の対象から外せば足る。しかしながら、出荷検査の段階では、出力論理反転が見られずに良品として半導体装置が出荷された後、温度や経年変化の影響により出力論理反転が生じることもある。
【0009】
温度や経年変化の影響により出力論理反転が生じるおそれのある半導体装置は、不揮発性メモリ部の信頼性向上の観点から排除されるべきであり、出力論理反転が生じるおそれの有無の検知しうる構成の開発が望まれる。
【0010】
本発明は、ヒューズ素子による不揮発性メモリ部の信頼性向上に寄与する半導体装置及びメモリ異常判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る半導体装置は、半導体集積回路内に設けられた対象電流経路及び前記対象電流経路に直列に挿入されたヒューズ素子を有し、前記対象電流経路に対して対象電流の供給を図ったときの前記ヒューズ素子の両端間電圧に応じ、出力データを変化させる不揮発性メモリ部を備えた半導体装置であって、前記対象電流を複数段階で切り替える電流供給部を前記不揮発性メモリ部に設けた構成(第1の構成)である。
【0012】
上記第1の構成に係る半導体装置において、当該半導体装置はテストモード又は通常モードで動作可能であり、前記通常モードにおいて前記出力データに応じた動作を行う機能回路部が当該半導体装置に設けられ、前記電流供給部は、前記通常モードにおいて前記対象電流の値を基準電流値に設定し、前記テストモードにおいて前記対象電流の値を複数のテスト電流値間で切り替え設定し、前記複数のテスト電流値は、前記基準電流値よりも小さな第1テスト電流値と、前記基準電流値よりも大きな第2テスト電流値と、を含む構成(第2の構成)であっても良い。
【0013】
上記第2の構成に係る半導体装置において、前記対象電流の値が前記第1テスト電流値に設定されているときの前記出力データである第1テスト結果データと、前記対象電流の値が前記第2テスト電流値に設定されているときの前記出力データである第2テスト結果データとが、前記ヒューズ素子の異常有無の判定に供される構成(第3の構成)であっても良い。
【0014】
上記第1~第3の構成の何れかに係る半導体装置において、前記電流供給部は、所定の基準電流経路に流れるバイアス電流を複数段階で切り替え可能な可変電流源と、前記基準電流経路及び前記対象電流経路に接続され、前記バイアス電流に比例する電流が前記対象電流として前記対象電流経路に流れるよう動作するカレントミラー回路と、を有し、前記バイアス電流を複数段階で切り替えることで前記対象電流を複数段階で切り替える構成(第4の構成)であっても良い。
【0015】
上記第1~第3の構成の何れかに係る半導体装置において、前記電流供給部は、所定の基準電流経路に直列に挿入された電界効果トランジスタである基準トランジスタと、前記対象電流経路に直列に挿入された電界効果トランジスタであるヒューズ側トランジスタと、前記基準トランジスタ及び前記ヒューズ側トランジスタの各ゲートに共通のバイアス電圧を供給するバイアス電圧供給部と、前記基準電流経路及び前記対象電流経路に接続され、前記基準電流経路に流れるバイアス電流に比例する電流が前記対象電流として前記対象電流経路に流れるよう動作するカレントミラー回路と、前記基準トランジスタのソースと所定の基準電位を有する導電部との間に設けられた可変抵抗部と、を有し、前記可変抵抗部の抵抗値を複数段階で切り替えることで前記基準電流経路に流れる前記バイアス電流を複数段階で切り替え、これによって前記対象電流経路に供給されるべき前記対象電流を複数段階で切り替え、前記ヒューズ素子は前記ヒューズ側トランジスタのソースと前記導電部との間に設けられる構成(第5の構成)であっても良い。
【0016】
上記第5の構成に係る半導体装置において、前記基準トランジスタでのチャネル長に対するチャネル幅の比と、前記ヒューズ側トランジスタでのチャネル長に対するチャネル幅の比とは、互いに同じに設定される構成(第6の構成)であっても良い。
【0017】
上記第1~第6の構成の何れかに係る半導体装置において、前記不揮発性メモリ部は、前記対象電流経路及び前記ヒューズ素子を複数組有して複数ビット分の出力データを出力する構成(第7の構成)であっても良い。
【0018】
本発明に係るメモリ異常判定システムは、上記第3の構成に係る半導体装置と、前記第1テスト結果データ及び前記第2テスト結果データに基づいて前記ヒューズ素子の異常有無を判定する判定装置と、備えた構成(第8の構成)である。
【0019】
上記第8の構成に係るメモリ異常判定システムにおいて、前記判定装置は、前記第1テスト結果データと前記第2テスト結果データとの比較に基づき、或いは、前記第1テスト結果データに応じた第1情報と前記第2テスト結果データに応じた第2情報との比較に基づき、前記ヒューズ素子の異常有無を判定する構成(第9の構成)であっても良い。
【0020】
上記第3の構成に係る半導体装置において、前記第1テスト結果データ及び前記第2テスト結果データに基づいて前記ヒューズ素子の異常有無を判定する判定回路を、当該半導体装置に更に設けた構成(第10の構成)であっても良い。
【0021】
上記第10の構成に係る半導体装置において、前記判定回路は、前記第1テスト結果データと前記第2テスト結果データとの比較に基づき、或いは、前記第1テスト結果データに応じた第1情報と前記第2テスト結果データに応じた第2情報との比較に基づき、前記ヒューズ素子の異常有無を判定する構成(第11の構成)であっても良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ヒューズ素子による不揮発性メモリ部の信頼性向上に寄与する半導体装置及びメモリ異常判定システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の概略構成ブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の外観斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の概略的な動作フローチャートである。
図4】本発明の第1実施形態に係る不揮発性メモリ部の構成図である。
図5】本発明の第1実施形態に係り、通常モードにおける不揮発性メモリ部の動作フローチャートである。
図6】本発明の第1実施形態に係り、テストモードにおける不揮発性メモリ部の動作フローチャートである。
図7】本発明の第1実施形態に係り、不揮発性メモリ部に関わる幾つかの電圧と電源電圧との関係を示す図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る不揮発性メモリ部の構成図である。
図9】本発明の第2実施形態に係り、通常モードにおける不揮発性メモリ部の動作フローチャートである。
図10】本発明の第2実施形態に係り、テストモードにおける不揮発性メモリ部の動作フローチャートである。
図11】本発明の第2実施形態に係り、不揮発性メモリ部に関わる幾つかの電圧と電源電圧との関係を示す図である。
図12】本発明の第3実施形態に係るメモリ異常判定システムの構成図である。
図13】本発明の第3実施形態に係る半導体装置の構成図である。
図14】本発明の第3実施形態に係り、メモリの異常判定に利用される回路の一例を示す図である。
図15】本発明の第3実施形態に係り、メモリの異常判定に利用される回路の他の例を示す図である。
図16】本発明の第4実施形態に係る電源装置の構成図である。
図17】参考技術に係る不揮発性メモリ部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、素子又は部位等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、素子又は部位等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“100”によって参照される不揮発性メモリ部100は(図4参照)、不揮発性メモリ部100と表記されることもあるし、メモリ部100と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0025】
まず、本発明の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。ICとは集積回路(Integrated Circuit)の略称である。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。0Vの電位をグランド電位と称することもある。本発明の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧は、グランドから見た電位を表す。
【0026】
レベルとは電位のレベルを指し、任意の信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の信号又は電圧について、信号又は電圧がハイレベルにあるとは信号又は電圧のレベルがハイレベルにあることを意味し、信号又は電圧がローレベルにあるとは信号又は電圧のレベルがローレベルにあることを意味する。信号についてのレベルは信号レベルと表現されることがあり、電圧についてのレベルは電圧レベルと表現されることがある。
【0027】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通状態となっていることを指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通状態(遮断状態)となっていることを指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解して良い。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。
【0028】
任意のスイッチを1以上のFET(電界効果トランジスタ)にて構成することができ、或るスイッチがオン状態のときには当該スイッチの両端間が導通する一方で或るスイッチがオフ状態のときには当該スイッチの両端間が非導通となる。以下、任意のトランジスタ又はスイッチについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。
【0029】
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態を説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る半導体装置1の概略構成ブロック図である。半導体装置1は、不揮発性メモリ部10と、モード設定部20と、機能回路部30と、を備える。不揮発性メモリ部10、モード設定部20及び機能回路部30は半導体集積回路として構成される。図2は半導体装置1の外観斜視図である。半導体装置1は、半導体集積回路を樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品である。半導体装置1の筐体に複数の外部端子が露出して設けられる。尚、図2に示される半導体装置1の外部端子の数及び半導体装置1の外観は例示に過ぎない。
【0030】
半導体装置1に対し、図示されない外部の電圧源から正の直流の入力電圧Vinが供給される。半導体装置1は、入力電圧Vinを用いて駆動する。
【0031】
不揮発性メモリ部10は、nビット分のデータを不揮発的に記憶し、記憶しているデータを出力可能な記憶回路である。nは1以上の任意の整数である。不揮発性メモリ部10は、物理的に切断可能なn個のヒューズ素子を備え、各ヒューズ素子が切断されているか否かに応じて記憶データが設定されるROM(Read only memory)である。
【0032】
モード設定部20は、半導体装置1の動作モードを複数のモードの何れかに設定する。上記複数のモードは通常モードとテストモードを含む。テストモードは半導体装置1の出荷前の検査において利用されるモードである。図3に示す如く、半導体装置1は原則として通常モードで動作し、半導体装置1の起動時には半導体装置1の動作モードは通常モードに設定される(ステップS1、S2)。半導体装置1に対し、図示されない外部装置から所定のテストコマンドが入力された場合に限り(ステップS3のY)、モード設定部20により半導体装置1の動作モードがテストモードに設定され、半導体装置1内の各回路がテストモードにて動作する(ステップS4)。テストモードへの設定後、半導体装置1に対する入力電圧Vinの供給が遮断され、その後、半導体装置1に対する入力電圧Vinの供給が再開されると、半導体装置1の動作モードは通常モードとなる。上記複数のモードに通常モード及びテストモード以外のモードが含まれていても良いが、以下では、通常モードとテストモードにのみ注目する。通常モード及びテストモードの動作の詳細は後に説明される。
【0033】
機能回路部30は、通常モードにおいて不揮発性メモリ部10の出力データに応じた所定の動作を行う。例えば、機能回路部30が基準電圧を生成する基準電圧生成回路(不図示)を備えている場合、不揮発性メモリ部10の出力データに応じて当該基準電圧(基準電圧の値)を調整及び設定する。或いは例えば、機能回路部30が或る周波数の信号を生成する信号生成回路(不図示)を備えている場合、不揮発性メモリ部10の出力データに応じて当該周波数(周波数の値)を調整及び設定する。これらの調整は一般にトリミングと称されるものであって良い。トリミングは、基準電圧の値などを、所望の値に一致又は近似させることを目的として実施される。機能回路部30の構成により半導体装置1は様々な装置として動作する。半導体装置1は、電源回路用の制御装置であっても良いし、モータドライバやLEDドライバであっても良い。
【0034】
図4に不揮発性メモリ部10として用いることのできる不揮発性メモリ部100の内部構成を示す。第1実施形態では、以下、図4の不揮発性メモリ部100が不揮発性メモリ部10として用いられるものとする。図4の不揮発性メモリ部100では4ビット分のデータが不揮発的に記憶される(即ち“n=4”である)。
【0035】
不揮発性メモリ部100は、半導体集積回路内に形成されるメモリ部であって、5つの電流経路CP0~CP4と、4つのヒューズ素子F1~F4と、カレントミラー回路110と、可変電流源120と、スイッチ制御部130と、データ出力部140と、を備える。
【0036】
カレントミラー回路110は、夫々がPチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタM110~M114から成る。カレントミラー回路110において、トランジスタM110が電流の入力側に配置され、トランジスタM111~114が電流の出力側に配置される。即ち、トランジスタM110~M114の各ソースは電源電圧VDDの印加端(即ち電源電圧VDDが印加される端子)に接続され、トランジスタM110~M114の各ゲートは互いに共通接続され、更にトランジスタM110においてゲート及びドレインは互いに接続される。トランジスタM110~114のドレインは、夫々、5つの分離した配線である電流経路CP0~CP4に接続される。
【0037】
電源電圧VDDは、半導体装置1内に設けられた内部電源回路(不図示)により入力電圧Vinに基づいて生成される正の直流電圧である。但し、電源電圧VDDは入力電圧Vinそのものであっても良い。
【0038】
可変電流源120は、定電流源121~123と、スイッチ124及び125と、を備える。トランジスタM110のドレインから延びる電流経路CP0はノード180にて3つの電流経路CP01~CP03に分岐し、グランドに至る。電流経路CP01~CP03はノード180及びグランド間の3つの配線である。電流経路CP01上に定電流源121が直列に挿入される。電流経路CP02上に定電流源122及びスイッチ124が直列に挿入される。電流経路CP03上に定電流源123及びスイッチ125が直列に挿入される。
【0039】
定電流源121~123は電源電圧VDDに基づき動作する。定電流源121は、ノード180から電流経路CP01を通じグランドに向けて定電流I1を流す。定電流源122は、スイッチ124がオン状態であるとき、ノード180から電流経路CP02を通じグランドに向けて定電流I2を流す。スイッチ124がオフ状態であるとき、電流経路CP02に定電流I2は流れない。定電流源123は、スイッチ125がオン状態であるとき、ノード180から電流経路CP03を通じグランドに向けて定電流I3を流す。スイッチ125がオフ状態であるとき、電流経路CP03に定電流I3は流れない。
【0040】
スイッチ制御部130は、スイッチ124及び125のオン/オフ状態を個別に制御する。尚、スイッチ制御部130は可変電流源120の構成要素に含まれると解しても良い。電流経路CP0において、トランジスタM110のドレインからグランドへと流れる電流をバイアス電流と称し、記号 “IBIAS”にて参照する。
【0041】
メモリ部100において、バイアス電流IBIASはスイッチ124及び125のオン/オフ状態に応じて変化するため、可変電流源120は、カレントミラー回路110の入力側に可変のバイアス電流IBIASを供給する電流源であると言える。具体的には、バイアス電流IBIASは、スイッチ124及び125が共にオフ状態であるときにおいて定電流I1と一致し、スイッチ124及び125が共にオン状態であるときにおいて定電流I1、I2及びI3の和と一致する。バイアス電流IBIASは、スイッチ124、125が夫々オン状態、オフ状態であるときにおいて定電流I1及びI2の和と一致し、スイッチ124、125が夫々オフ状態、オン状態であるときにおいて定電流I1及びI3の和と一致する。
【0042】
ここで、“I1<I2<I3”となるように定電流源121~123が構成されている。つまり、定電流I1よりも定電流I2の方が大きく、定電流I2よりも更に定電流I3の方が大きい。例えば、定電流I2は定電流I1の10倍程度の大きさを持ち、定電流I3は定電流I2の10倍程度の大きさを持つ。ここでは、例として、定電流I1、I2、I3は、夫々、1μA(マイクロアンペア)、9μA、90μAに設定されているものとする。
【0043】
トランジスタM111のドレインは電流経路CP1を介しヒューズ素子F1の第1端に接続され、ヒューズ素子F1の第2端はグランドに接続される。つまり、トランジスタM111のドレイン電流の電流経路CP1上にヒューズ素子F1が直列に挿入される。電流経路CP1上のノードである、トランジスタM111のドレインとヒューズ素子F1の第1端との接続ノードをノード181と称する。またノード181における電圧を電圧V1と称する。
トランジスタM112のドレインは電流経路CP2を介しヒューズ素子F2の第1端に接続され、ヒューズ素子F2の第2端はグランドに接続される。つまり、トランジスタM112のドレイン電流の電流経路CP2上にヒューズ素子F2が直列に挿入される。電流経路CP2上のノードである、トランジスタM112のドレインとヒューズ素子F2の第1端との接続ノードをノード182と称する。またノード182における電圧を電圧V2と称する。
トランジスタM113のドレインは電流経路CP3を介しヒューズ素子F3の第1端に接続され、ヒューズ素子F3の第2端はグランドに接続される。つまり、トランジスタM113のドレイン電流の電流経路CP3上にヒューズ素子F3が直列に挿入される。電流経路CP3上のノードである、トランジスタM113のドレインとヒューズ素子F3の第1端との接続ノードをノード183と称する。またノード183における電圧を電圧V3と称する。
トランジスタM114のドレインは電流経路CP4を介しヒューズ素子F4の第1端に接続され、ヒューズ素子F4の第2端はグランドに接続される。つまり、トランジスタM114のドレイン電流の電流経路CP4上にヒューズ素子F4が直列に挿入される。電流経路CP4上のノードである、トランジスタM114のドレインとヒューズ素子F4の第1端との接続ノードをノード184と称する。またノード184における電圧を電圧V4と称する。
【0044】
トランジスタM111のドレイン電流(即ち電流経路CP1に流れる電流)を記号“ICP1”にて表し、トランジスタM112のドレイン電流(即ち電流経路CP2に流れる電流)を記号“ICP2”にて表し、トランジスタM113のドレイン電流(即ち電流経路CP3に流れる電流)を記号“ICP3”にて表し、トランジスタM114のドレイン電流(即ち電流経路CP4に流れる電流)を記号“ICP4”にて表す。
【0045】
ヒューズ素子F1~F4は、ポリシリコン又は金属等にて構成され、大きな電流の通電により又はレーザ照射により物理的に切断可能な素子である。ヒューズ素子F1~F4は半導体装置1の製造工程において個別に切断される又は非切断とされる。
【0046】
ヒューズ素子F1が切断されておらずヒューズ素子F1の両端間抵抗が十分に低いのであれば、電流ICP1はバイアス電流IBIASに比例する電流値を持つ。同様に、ヒューズ素子F2が切断されておらずヒューズ素子F2の両端間抵抗が十分に低いのであれば、電流ICP2はバイアス電流IBIASに比例する電流値を持つ。電流ICP3及びICP4についても同様である。このように、カレントミラー回路110は、電流経路CP0に流れるバイアス電流IBIASに比例する電流が、電流ICP1~ICP4として電流経路CP1~CP4に流れるよう動作する。但し、ヒューズ素子F1が切断されていてヒューズ素子F1の両端間抵抗が十分に高くなるとバイアス電流IBIASに比例する電流は電流経路CP1に流れない。電流経路CP2~CP4についても同様である。
【0047】
データ出力部140は、AND回路141~144と、データ出力制御部145と、ラッチ回路146と、を備える。AND回路141~144の夫々は、第1及び第2入力端子並びに出力端子を備えた2入力の論理積回路である。2入力の論理積回路は、第1及び第2入力端子への入力信号の論理積信号を出力端子から出力する。AND回路141~144の各出力信号はローレベル又はハイレベルの信号レベルをとる二値信号であって、“0”又は“1”の値(論理値)を持つ。ここでは、AND回路からのローレベルの出力信号に“0”の値(論理値)が割り当てられ、AND回路からのハイレベルの出力信号に“1”の値(論理値)が割り当てられると考える。以下、AND回路141~144の出力信号が表すデータを、夫々、データD1’、D2’、D3’、D4’と称する。データD1’はAND回路141の出力信号の値を有する。つまり、AND回路141の出力信号がローレベルであればデータD1’は“0”の値を持ち、AND回路141の出力信号がハイレベルであればデータD1’は“1”の値を持つ。出力データD2’~ D4’についても同様である。
【0048】
AND回路141~144の第1入力端子は、夫々、ノード181~184に接続されて電圧V1~V4の入力を受ける。AND回路141~144の第2入力端子には共通して、データ出力制御部145からの信号Sig145が入力される。
【0049】
データ出力制御部145は、AND回路141~144の各第2入力端子に対しローレベル又はハイレベルの信号Sig145を供給する。AND回路141~144は、信号Sig145がハイレベルであるときに限り、夫々、電圧V1~V4に応じた有意なデータD1’~ D4’を出力する。信号Sig145がローレベルであるときのデータD1’~ D4’は無効である。
【0050】
ラッチ回路146は、データ出力制御部145の制御の下、信号Sig145がハイレベルであるときのデータD1’~ D4’をラッチし(即ち取り込んで保持し)、ラッチしたデータをデータD1~ D4として出力する。故に、電圧V1がAND回路141においてローレベルに分類される電圧値を有しておればデータD1は“0”の値を有し、電圧V1がAND回路141においてハイレベルに分類される電圧値を有しておればデータD1は“1”の値を有する。同様に、電圧V2がAND回路142においてローレベルに分類される電圧値を有しておればデータD2は“0”の値を有し、電圧V2がAND回路142においてハイレベルに分類される電圧値を有しておればデータD2は“1”の値を有する。電圧V3に対応するデータD3及び電圧V4に対応するデータD4についても同様である。
【0051】
AND回路141~144を含め、データ出力部140内の各回路は電源電圧VDDを駆動電圧として動作する。信号Sig145におけるハイレベルは実質的に電源電圧VDDのレベルに等しく、信号Sig145におけるローレベルは実質的にグランドのレベルに等しい。
【0052】
AND回路141における閾電圧に対して電圧V1が高い場合には、AND回路141において電圧V1はハイレベルに分類され、AND回路141における閾電圧に対して電圧V1が低い場合には、AND回路141において電圧V1はローレベルに分類される。同様に、AND回路142における閾電圧に対して電圧V2が高い場合には、AND回路142において電圧V2はハイレベルに分類され、AND回路142における閾電圧に対して電圧V2が低い場合には、AND回路142において電圧V2はローレベルに分類される。AND回路143及び144についても同様である。AND回路141~144における各閾電圧は、電源電圧VDDに依存し、例えば電源電圧VDDの半分に相当する。
【0053】
図5は通常モードにおけるメモリ部100の動作フローチャートである。通常モードでは、まずステップS11にて可変電流源120が起動され、続くステップS12において、スイッチ制御部130によりスイッチ124がオン状態とされ且つスイッチ125がオフ状態とされる。つまり、“IBIAS=I1+I2”とされる(上述の数値例ではバイアス電流IBIASは10μAとなる)。続くステップS13において、信号Sig145がハイレベルとされ、信号Sig145がハイレベルとされているときのデータD1’~ D4’がラッチ回路146にてラッチ及び取得される。
【0054】
このように、通常モードでは、“IBIAS=I1+I2”であるときの電圧V1~V4に応じたデータD1’~ D4’が出力データD1~ D4(以下、読み出しデータと称されうる)となる。つまり、電流経路CP1~CP4に対し電流(I1+I2)に比例する基準電流(ICP1~ICP4)の供給を図ったときの、電圧V1~V4に応じたデータD1’~ D4’が読み出しデータD1~ D4として取得される。“IBIAS=I1+I2”であるときの電圧V1~V4に応じた読み出しデータD1~ D4として取得した後には、ステップS14にて信号Sig145がローレベルとされ、更にステップS15にて可変電流源120の動作が停止される。可変電流源120の動作停止により定電流源121~123の動作が停止してバイアス電流IBIASはゼロとなり、不要な回路電流が削減される。
【0055】
メモリ部100において、通常モードで取得される読み出しデータD1~D4は、メモリ部100に記憶されている4ビット分のデータとして、機能回路部30(図1参照)に供給される。
【0056】
ヒューズ素子F1~F4の切断/非切断状態に応じ、出力データD1~ D4は“0”又は“1”となる。半導体装置1の製造工程においてヒューズ素子F1が理想的に切断された場合、ヒューズ素子F1の両端間抵抗が十分に高くなるので、ステップS13において電圧V1は十分に高くなって読み出しデータD1は“1”となる。半導体装置1の製造工程においてヒューズ素子F1の切断処理が行われていない場合には、ヒューズ素子F1の両端間抵抗が十分に低くなるので、ステップS13において電圧V1は十分に低くなって読み出しデータD1は“0”となる。ヒューズ素子F2~F4、及び、ヒューズ素子F2~F4に対応するデータについても同様である。
【0057】
但し、半導体装置1の製造工程においてヒューズ素子F1を切断するためのレーザ照射等を行った場合でも、ヒューズ素子F1の理想的な切断が実現されておらず、理想的な切断が行われたときと比べて、比較的低い残留抵抗(例えば100kΩ程度の抵抗)をヒューズ素子F1が持つ場合もある。或いは、ヒューズ素子F1にレーザ照射等を行っていないはずであるのに、何らかの不具合により、ヒューズ素子F1の残留抵抗が期待値(実質的に0Ω)に対して相当に高くなる場合もある。このような残留抵抗があるとき、通常モードにおける読み出しデータD1の値が本来の値から反転するおそれがある(この反転を、以下、出力論理反転と称する)。或る条件下では読み出しデータD1の値が正しかったとしても、温度や経年変化の影響により他の条件下において出力論理反転が生じることもある。ヒューズ素子F2~F4についても同様である。
【0058】
このような出力論理反転が生じそうな半導体装置1を出荷検査の段階で不良品として排除するための構成が半導体装置1には盛り込まれており、その構成はテストモードにて有意に機能する。図6はテストモードにおけるメモリ部100の動作フローチャートである。但し、図6のステップS24の良否判定処理はメモリ部100の外部で実行される。
【0059】
テストモードでは、まずステップS21にて可変電流源120が起動される。続くステップS22において、スイッチ制御部130によりスイッチ124及び125を共にオフ状態とした上で、データ出力制御部145により信号Sig145をハイレベルとし、そのときのデータD1’~ D4’をラッチ回路146にてラッチすることでデータD1~D4を取得する。ステップS22で取得されるデータD1~D4、即ち、“IBIAS=I1”であるときの電圧V1~V4に応じた出力データD1~D4は、第1テスト結果データとして機能する。このように、電流経路CP1~CP4に対し電流I1に比例する第1テスト電流(ICP1~ICP4)の供給を図ったときの、電圧V1~V4に応じたデータD1~ D4が第1テスト結果データとして取得される。第1テスト電流は上記の基準電流よりも小さい。
【0060】
続くステップS23において、スイッチ制御部130によりスイッチ124及び125を共にオン状態とした上で、データ出力制御部145により信号Sig145をハイレベルとし、そのときのデータD1’~ D4’をラッチ回路146にてラッチすることでデータD1~D4を取得する。ステップS23で取得されるデータD1~D4、即ち、“IBIAS=I1+I2+I3”であるときの電圧V1~V4に応じた出力データD1~D4は、第2テスト結果データとして機能する。このように、電流経路CP1~CP4に対し電流(I1+I2+I3)に比例する第2テスト電流(ICP1~ICP4)の供給を図ったときの、電圧V1~V4に応じたデータD1~ D4が第2テスト結果データとして取得される。第2テスト電流は上記の基準電流よりも大きい。
【0061】
その後、ステップS24において、第1テスト結果データと第2テスト結果データとに基づく良否判定処理が実行される。良否判定処理では、メモリ部100によるデータの記憶状態の良否が判定される。良否判定処理において、メモリ部100によるデータの記憶状態が良好であると判定されることを良品判定と称し、メモリ部100によるデータの記憶状態が良好でないと判定されることを不良判定と称する。良否判定処理において良品判定がなされた半導体装置1は良品として出荷の対象となるが、良否判定処理において不良判定がなされた半導体装置1は不良品として出荷の対象とならない。
【0062】
良否判定処理では、第1テスト結果データと第2テスト結果データとの一致性が評価され、第1及び第2テスト結果データが互いに一致している場合に限り良品判定がなされ、第1及び第2テスト結果データが互いに一致していない場合には不良判定がなされる。 第1及び第2テスト結果データが互いに一致しているとは、第1テスト結果データを形成する4ビット分のデータD1~D4が、第2テスト結果データを形成する4ビットのデータD1~D4と完全に一致していることを意味し、1ビットでも相違があれば第1及び第2テスト結果データが互いに一致していないと判断される。
【0063】
上述したように、通常モードでは“IBIAS=I1+I2”の状態でメモリ部100の記憶データが読み出される。一方、“IBIAS=I1”の状態でのデータD1~D4(第1テスト結果データ)と、“IBIAS=I1+I2+I3”の状態でのデータD1~D4(第2テスト結果データ)とに差がないということは、“I1≦IBIAS≦I1+I2+I3”を満たす範囲(上述の数値例ではバイアス電流IBIASが1μ以上且つ100μA以下となる範囲)においてデータD1~D4に変化がないことを意味している。
【0064】
このため、良品判定がなされた半導体装置1においては、多少の温度変化や経年変化があったとしても、通常モードにて安定的に正しいデータD1~D4がメモリ部100から読み出されることが期待される。
【0065】
不良判定がなされることは、“I1≦IBIAS≦I1+I2+I3”を満たす範囲内のどこかで出力論理反転が生じることを意味し、ヒューズ素子が異常であることを意味している。ヒューズ素子の異常とは、ヒューズ素子が異常な残留抵抗値を有していることを指す。ヒューズ素子の残留抵抗値の期待値は、当該ヒューズ素子を切断する処理が実行されていたならば極めて大きな値(理論上は無限大と解しても良い)を持ち、当該ヒューズ素子を切断する処理が実行されていないのであれば極めて小さな値(理論上は0Ωと解しても良い)を持つ。このような期待値からかけ離れた中途半端な残留抵抗値(例えば100kΩ)をヒューズ素子が持つ場合、ヒューズ素子は異常である。以下のように考えることもできる。ヒューズ素子の残留抵抗値(ヒューズ素子の両端子間の抵抗値)が、所定の異常範囲内に属するとき、ヒューズ素子は異常であり、所定の異常範囲外にあるとき、ヒューズ素子は正常である。異常範囲は、例えば、1kΩ以上且つ1MΩ以下の抵抗値範囲である。
【0066】
不良判定がなされる半導体装置1を通常モードで動作させたとき、温度変化や経年変化の影響を受けて、出力論理反転が生じたり生じなかったりするおそれがある。良否判定処理により、出力論理反転が生じるおそれのある半導体装置1を不良品として出荷の対象から外すことが可能となるので、市場において出力論理反転が生じることを抑制することができ、結果、半導体装置1の信頼性(市場に投入される半導体装置1の信頼性)を高めることが可能となる。
【0067】
尚、図4のメモリ部100では電源電圧依存性が比較的大きくなる。これについて説明する。以下に述べる電源電圧依存性は図17の構成にも同様に当てはまる。
【0068】
図7にメモリ部100における幾つかの電圧と電源電圧VDDとの関係を示す。図7において、実線線分610は電圧V1と電源電圧VDDとの関係を示しており、破線線分615はAND回路141における閾電圧Vth_ANDと電源電圧VDDとの関係を示している。ヒューズ素子F1にゼロではない電流ICP1が流れる場合、電圧V1は、電流ICP1とヒューズ素子F1の残留抵抗R_F1との積で表され、電源電圧VDDに依存しない。一方、閾電圧Vth_ANDは電源電圧VDDに比例するため、電源電圧VDDの増減に伴って増減する。このため、残留抵抗R_F1が中途半端な値を有しているとき、電源電圧VDDに依存して出力論理反転が生じたり生じなかったりする可能性がある。AND回路142~144についても同様のことが当てはまる。また、バイアス電流IBIASも温度依存性や電源電圧依存性を持つ。このため、少ないテスト項目で高い信頼性を担保することが容易でなくなることもあり得る。
【0069】
とはいえ、図4のメモリ部100でも図17の構成と比べて出力論理反転の抑制効果が高いことに変わりはない。電源電圧VDDの十分なる安定が見込めるケース(実質的に電源電圧VDDの値が不変であるとみなせるケース)においては、図4のメモリ部100でも十分に高い信頼性が得られる。また、想定される電源電圧VDDの変動幅等を考慮して、定電流I1及びI2間の比及び定電流I2及びI3間の比を十分に高く設定しておくことでも高い信頼性が得られるが、後述の第2実施形態において電源電圧依存性等の軽減に役立つ構成を説明する。
【0070】
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態及び後述の第3~第5実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2~第5実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2~第5実施形態にも適用される。第2実施形態の記載を解釈するにあたり、第1及び第2実施形態間で矛盾する事項については第2実施形態の記載が優先されて良い(後述の第3~第5実施形態についても同様)。矛盾の無い限り、第1~第5実施形態の内、任意の複数の実施形態を組み合わせても良い。
【0071】
図8図1の不揮発性メモリ部10として用いることのできる不揮発性メモリ部200の内部構成を示す。第2実施形態では、図8の不揮発性メモリ部200が不揮発性メモリ部10として用いられるものとする。図8の不揮発性メモリ部200では4ビット分のデータが不揮発的に記憶される(即ち“n=4”である)。
【0072】
不揮発性メモリ部200は、半導体集積回路内に形成されるメモリ部であって、5つの電流経路CP0~CP4と、4つのヒューズ素子F1~F4と、カレントミラー回路210と、可変抵抗部220と、スイッチ制御部230と、データ出力部240と、バイアス電圧供給部250と、トランジスタM260~M264と、を備える。トランジスタM260~M264は、Nチャネル型のMOSFETとして構成される。
【0073】
カレントミラー回路210は、図4のカレントミラー回路110と同じ構成を有し、従って、夫々がPチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタM110~M114から成る。カレントミラー回路210において、トランジスタM110が電流の入力側に配置され、トランジスタM111~114が電流の出力側に配置される。即ち、トランジスタM110~M114の各ソースは電源電圧VDDの印加端(即ち電源電圧VDDが印加される端子)に接続され、トランジスタM110~M114の各ゲートは互いに共通接続され、更にトランジスタM110においてゲート及びドレインは互いに接続される。トランジスタM110~114のドレインは、夫々、5つの分離した配線である電流経路CP0~CP4に接続される。
【0074】
メモリ部200では、トランジスタM110のドレイン電流の電流経路CP0上にトランジスタM260及び可変抵抗部220が直列に挿入される。具体的には、トランジスタM110のドレインは、電流経路CP0を介しトランジスタM260のドレインに接続され、トランジスタM260のソースは可変抵抗部220を介してグランドに接続される。
【0075】
可変抵抗部220は、抵抗221と、抵抗222及びスイッチ224の直列回路と、抵抗223及びスイッチ225の直列回路と、を並列接続した構成を有する。このため、スイッチ224及び225が共にオフ状態であるとき、可変抵抗部220の抵抗値は抵抗221の抵抗値と一致し、スイッチ224及び225が共にオン状態であるとき、可変抵抗部220の抵抗値は抵抗221~223の並列回路の合成抵抗値と一致する。スイッチ224、225が夫々オン状態、オフ状態であるとき、可変抵抗部220の抵抗値は抵抗221及び222の並列回路の合成抵抗値と一致する。スイッチ224、225が夫々オフ状態、オン状態であるとき、可変抵抗部220の抵抗値は抵抗221及び223の並列回路の合成抵抗値と一致する。
【0076】
スイッチ制御部230は、スイッチ224及び225のオン/オフ状態を個別に制御する。電流経路CP0において、トランジスタM110のドレインからグランドへと流れるバイアス電流IBIASは、トランジスタM260の特性と、トランジスタM260のゲートに加わるバイアス電圧VBIASと、可変抵抗部220の抵抗値と、で定まる。尚、スイッチ制御部230の内、スイッチ224及び225のオン/オフ状態を制御する部位は、可変抵抗部220の構成要素に含まれると解しても良い。
【0077】
メモリ部200において、バイアス電流IBIASはスイッチ224及び225のオン/オフ状態に応じて変化するため、可変抵抗部220は、カレントミラー回路210の入力側に可変のバイアス電流IBIASを供給する回路であると言える。可変抵抗部220の抵抗値の減少につれてバイアス電流IBIASが増大し、可変抵抗部220の抵抗値の増大につれてバイアス電流IBIASが減少する。
【0078】
メモリ部200では、
トランジスタM111のドレイン電流の電流経路CP1上にトランジスタM261及びヒューズ素子F1が直列に挿入され、
トランジスタM112のドレイン電流の電流経路CP2上にトランジスタM262及びヒューズ素子F2が直列に挿入され、
トランジスタM113のドレイン電流の電流経路CP3上にトランジスタM263及びヒューズ素子F3が直列に挿入され、且つ、
トランジスタM114のドレイン電流の電流経路CP4上にトランジスタM264及びヒューズ素子F4が直列に挿入される。
【0079】
より具体的には、メモリ部200において、
トランジスタM111のドレインはノード281にてトランジスタM261のドレインに接続され、トランジスタM261のソースはヒューズ素子F1の第1端に接続され、ヒューズ素子F1の第2端はグランドに接続され、
トランジスタM112のドレインはノード282にてトランジスタM262のドレインに接続され、トランジスタM262のソースはヒューズ素子F2の第1端に接続され、ヒューズ素子F2の第2端はグランドに接続され、
トランジスタM113のドレインはノード283にてトランジスタM263のドレインに接続され、トランジスタM263のソースはヒューズ素子F3の第1端に接続され、ヒューズ素子F3の第2端はグランドに接続され、且つ、
トランジスタM114のドレインはノード284にてトランジスタM264のドレインに接続され、トランジスタM264のソースはヒューズ素子F4の第1端に接続され、ヒューズ素子F4の第2端はグランドに接続される。
【0080】
メモリ部200における電圧V1~V4は、夫々、ノード281~284における電圧を指す。また、第1実施形態で述べたのと同様に、第2実施形態でも、トランジスタM111のドレイン電流(即ち電流経路CP1に流れる電流)を記号“ICP1”にて表し、トランジスタM112のドレイン電流(即ち電流経路CP2に流れる電流)を記号“ICP2”にて表し、トランジスタM113のドレイン電流(即ち電流経路CP3に流れる電流)を記号“ICP3”にて表し、トランジスタM114のドレイン電流(即ち電流経路CP4に流れる電流)を記号“ICP4”にて表す。
【0081】
ヒューズ素子F1~F4については第1実施形態に示した通りである。カレントミラー回路210は、電流経路CP0に流れるバイアス電流IBIASに比例する電流が、電流ICP1~ICP4として電流経路CP1~CP4に流れるよう動作する。但し、ヒューズ素子F1が切断されていてヒューズ素子F1の両端間抵抗が十分に高くなるとバイアス電流IBIASに比例する電流は電流経路CP1に流れない。電流経路CP2~CP4についても同様である。
【0082】
データ出力部240は、図4のデータ出力部140と同じ構成を有し、従って、AND回路141~144、データ出力制御部145及びラッチ回路146を備える。データ出力部240におけるAND回路141~144、データ出力制御部145及びラッチ回路146の動作はデータ出力部140におけるそれらと同じであり、第1実施形態にて示したそれらの動作の説明が第2実施形態にも適用される。但し、データ出力部240におけるAND回路141~144の第1入力端子は、夫々、ノード281~284に接続されてノード281~284の電圧(即ち電圧V1~V4)の入力を受ける。AND回路141~144の第2入力端子には共通して、データ出力制御部145からの信号Sig145が入力される。
【0083】
バイアス電圧供給部250は、スイッチ251と、抵抗252と、トランジスタ253~255と、を備える。トランジスタ253~255はNチャネル型のMOSFETとして構成される。スイッチ251の一端は電源電圧VDDの印加端に接続され、スイッチ251の他端は抵抗252を介してノード256に接続される。トランジスタ253のドレインとトランジスタ253~255の各ゲートはノード256にて互いに共通接続される。トランジスタ253のソースはトランジスタ254のドレインに接続され、トランジスタ254のソースはトランジスタ255のドレインに接続され、トランジスタ255のソースはグランドに接続される。ノード256はトランジスタM260~M264の各ゲートに共通接続され、ノード256における電圧がバイアス電圧VBIASとしてトランジスタM260~M264の各ゲートへと共通に供給される。
【0084】
スイッチ251はスイッチ制御部230によりオン/オフ状態が制御される。スイッチ251がオン状態であるときに、トランジスタM260のゲートに対し、トランジスタM260のゲート閾値電圧よりも大きなバイアス電圧VBIASが加わってトランジスタM260にドレイン電流(IBIAS)が流れる。スイッチ251がオフ状態であるときには、図示されない放電抵抗を介してノード256の電荷がグランドに引き抜かれてバイアス電圧VBIASがゼロとなり、トランジスタM260~M264は全てオフとなる。
【0085】
トランジスタM260は基準トランジスタと機能し、トランジスタM261~M264は夫々にヒューズ側トランジスタと機能する。基準トランジスタと各ヒューズ側トランジスタは、互いに同じW/L比を有する。W/L比は、MOSFETにおけるチャネル長に対するチャネル幅の比を表す。即ち、トランジスタM260のW/L比と、トランジスタM261のW/L比と、トランジスタM262のW/L比と、トランジスタM263のW/L比と、トランジスタM264のW/L比とは、全て互いに同じに設定される。W/L比によりトランジスタの電流供給能力が決まる。或るトランジスタ(MOSFET)において、チャネル長を短くすることで電流供給能力が大きくなり、チャネル幅を長くすることでも電流供給能力が大きくなる。
【0086】
尚、バイアス電圧供給部250を構成するトランジスタ253~255の夫々のW/L比は、トランジスタM260~M264の夫々のW/L比よりも小さくても良い。図8のバイアス電圧供給部250では、複数のトランジスタ(253~255)を縦積みすることで、トランジスタM260~M264の各ゲート閾値電圧よりも高いバイアス電圧VBIASを発生させているが、トランジスタM260~M264の各ゲート閾値電圧よりも高いバイアス電圧VBIASを発生させることができる限り、バイアス電圧供給部250の構成は任意である。
【0087】
今、ヒューズ素子F1に注目してメモリ部200の動作を説明する。ヒューズ素子F1の残留抵抗値(即ちヒューズ素子F1の両端間の抵抗値)と可変抵抗部220の抵抗値が等しい場合、トランジスタM260に流れる電流(IBIAS)とトランジスタM261に流れる電流(ICP1)とが等しくなり、それらの電流に関して回路は釣り合いがとれた状態となる。この釣り合いがとれた状態を基準にヒューズ素子F1の残留抵抗値が僅かでも小さくなるとノード281における電圧V1は0V付近まで低下し、逆に、釣り合いがとれた状態を基準にヒューズ素子F1の残留抵抗値が僅かでも大きくなるとノード281における電圧V1は電源電圧VDD付近まで上昇する。つまり、トランジスタM260、M261、トランジスタM110及びM111により、可変抵抗部220の抵抗値とヒューズ素子F1の残留抵抗値とを比較する回路が構成されている。ヒューズ素子F2~F4についても同様である。
【0088】
そして、通常モードにおいてスイッチ224をオン且つスイッチ225をオフにして出力データD1~D4を読み出すことを前提とした上で、テストモードにおいてスイッチ224及び225がオフのときの出力データD1~D4とスイッチ224及び225がオンのときの出力データD1~D4との一致性を評価すれば、ヒューズ素子F1~F4の異常の有無(異常な残留抵抗値が存在するか否か)を容易に確認することができる。
【0089】
図9及び図10を参照し、通常モード及びテストモードの動作の流れを説明する。図9は、通常モードにおけるメモリ部200の動作フローチャートである。通常モードでは、まずステップS61にてスイッチ251がオン状態とされ、続くステップS62において、スイッチ制御部230によりスイッチ224がオン状態とされ且つスイッチ225がオフ状態とされる。結果、可変抵抗部220の抵抗値が基準抵抗値に設定され、基準抵抗値とバイアス電圧VBIASに応じたバイアス電流IBIASが電流経路CP0に流れる。基準抵抗値は抵抗221及び222の並列回路の合成抵抗値に等しい。可変抵抗部220の抵抗値が基準抵抗値に設定されているときのバイアス電流IBIASを電流Iと定義する。続くステップS63において、信号Sig145がハイレベルとされ、信号Sig145がハイレベルとされているときのデータD1’~ D4’がラッチ回路146にてラッチ及び取得される。
【0090】
このように、通常モードでは、“IBIAS=I”であるときの電圧V1~V4に応じたデータD1’~ D4’が出力データD1~ D4(以下、読み出しデータと称されうる)となる。つまり、電流経路CP1~CP4に対し電流Iに比例する基準電流(ICP1~ICP4)の供給を図ったときの、電圧V1~V4に応じたデータD1’~ D4’が読み出しデータD1~ D4として取得される。“IBIAS=I”であるときの電圧V1~V4に応じた読み出しデータD1~ D4として取得した後には、ステップS64にて信号Sig145がローレベルとされ、更にステップS65にてスイッチ251がオフ状態に切り替えられる。スイッチ251がオフ状態に切り替えられることでバイアス電流IBIASはゼロとなり、不要な回路電流が削減される。
【0091】
メモリ部200において、通常モードで取得される読み出しデータD1~D4は、メモリ部200に記憶されている4ビット分のデータとして、機能回路部30(図1参照)に供給される。
【0092】
図10はテストモードにおけるメモリ部200の動作フローチャートである。但し、図10のステップS74の良否判定処理はメモリ部200の外部で実行される。
【0093】
テストモードでは、まずステップS71にてスイッチ251がオン状態とされる。続くステップS72において、スイッチ制御部230によりスイッチ224及び225を共にオフ状態とした上で、データ出力制御部145により信号Sig145をハイレベルとし、そのときのデータD1’~ D4’をラッチ回路146にてラッチすることでデータD1~D4を取得する。スイッチ224及び225がオフ状態であるとき、可変抵抗部220の抵抗値は抵抗221の抵抗値そのものとなるので、上記基準抵抗値(抵抗221及び222の並列回路の合成抵抗値)よりも大きい。結果、スイッチ224及び225がオフ状態であるときのバイアス電流IBIASは、上記電流Iよりも小さい電流Iとなる。ステップS72で取得されるデータD1~D4、即ち、“IBIAS=I”であるときの電圧V1~V4に応じた出力データD1~D4は、第1テスト結果データとして機能する。このように、電流経路CP1~CP4に対し電流Iに比例する第1テスト電流(ICP1~ICP4)の供給を図ったときの、電圧V1~V4に応じたデータD1~ D4が第1テスト結果データとして取得される。第1テスト電流は上記の基準電流よりも小さい。
【0094】
続くステップS73において、スイッチ制御部230によりスイッチ224及び225を共にオン状態とした上で、データ出力制御部145により信号Sig145をハイレベルとし、そのときのデータD1’~ D4’をラッチ回路146にてラッチすることでデータD1~D4を取得する。スイッチ224及び225がオン状態であるとき、可変抵抗部220の抵抗値は抵抗221~223の並列回路の合成抵抗値となるので、上記基準抵抗値(抵抗221及び222の並列回路の合成抵抗値)よりも小さい。結果、スイッチ224及び225がオン状態であるときのバイアス電流IBIASは、上記電流Iよりも大きな電流Iとなる。ステップS73で取得されるデータD1~D4、即ち、“IBIAS=I”であるときの電圧V1~V4に応じた出力データD1~D4は、第2テスト結果データとして機能する。このように、電流経路CP1~CP4に対し電流Iに比例する第2テスト電流(ICP1~ICP4)の供給を図ったときの、電圧V1~V4に応じたデータD1~ D4が第2テスト結果データとして取得される。第2テスト電流は上記の基準電流よりも大きい。例えば、電流I、I、Iが夫々、1μA、10μA、100μAとなるように、抵抗221~223の抵抗値等を定めておくことができる。
【0095】
その後、ステップS74において、第1テスト結果データと第2テスト結果データとに基づく良否判定処理が実行される。良否判定処理では、メモリ部200によるデータの記憶状態の良否が判定される。良否判定処理において、メモリ部200によるデータの記憶状態が良好であると判定されることを良品判定と称し、メモリ部200によるデータの記憶状態が良好でないと判定されることを不良判定と称する。良否判定処理において良品判定がなされた半導体装置1は良品として出荷の対象となるが、良否判定処理において不良判定がなされた半導体装置1は不良品として出荷の対象とならない。
【0096】
良否判定処理では、第1テスト結果データと第2テスト結果データとの一致性が評価され、第1及び第2テスト結果データが互いに一致している場合に限り良品判定がなされ、第1及び第2テスト結果データが互いに一致していない場合には不良判定がなされる。上述したように、第1及び第2テスト結果データが互いに一致しているとは、第1テスト結果データを形成する4ビット分のデータD1~D4が、第2テスト結果データを形成する4ビットのデータD1~D4と完全に一致していることを意味し、1ビットでも相違があれば第1及び第2テスト結果データが互いに一致していないと判断される。
【0097】
上述したように、通常モードでは“IBIAS=I”の状態でメモリ部200の記憶データが読み出される。一方、“IBIAS=I”の状態でのデータD1~D4(第1テスト結果データ)と、“IBIAS=I”の状態でのデータD1~D4(第2テスト結果データ)とに差がないということは、“I≦IBIAS≦I”を満たす範囲においてデータD1~D4に変化がないことを意味している。
【0098】
このため、良品判定がなされた半導体装置1においては、多少の温度変化や経年変化があったとしても、通常モードにて安定的に正しいデータD1~D4がメモリ部200から読み出されることが期待される。良否判定処理により、出力論理反転が生じるおそれのある半導体装置1を不良品として出荷の対象から外すことが可能となるので、市場において出力論理反転が生じることを抑制することができ、結果、半導体装置1の信頼性(市場に投入される半導体装置1の信頼性)を高めることが可能となる。
【0099】
図8のメモリ部200の動作及び特性について説明を補足する。説明の便宜上、トランジスタM261~M264及びヒューズ素子F1~F4の内、トランジスタM261及びヒューズ素子F1の組に注目する。スイッチ251はオン状態であるとする。また、ヒューズ素子F1の残留抵抗値が十分に低いという仮定の下、バイアス電流IBIASと電流ICP1との比が“1:1”となるよう、トランジスタM110及び111間のソース面積比が設定されているものとする。また、ヒューズ素子F1の残留抵抗値を記号“R_F1”にて表し、可変抵抗部220の抵抗値を記号“R_REF”にて表す。
【0100】
トランジスタ253~255を用いて発生されたバイアス電圧VBIASからトランジスタM260のゲート-ソース間電圧だけ低い電圧が可変抵抗部220の両端に加わることでバイアス電流IBIASが電流経路CP0に流れる。そうすると、カレントミラー回路210は、バイアス電流IBIASと同じ大きさの電流ICP1がトランジスタM111を通じて流れるよう動作する。
【0101】
ここで、ヒューズ素子F1の残留抵抗値が十分に小さいならばバイアス電流IBIASと同じ大きさの電流ICP1が電流経路CP1を通じてヒューズ素子F1に流れ、ヒューズ素子F1の両端間には 電圧(IBIAS×R_F1)が発生する。つまり、“R_F1<R_REF”であれば、“(トランジスタM260のゲート-ソース間電圧)<(トランジスタM261のゲート-ソース間電圧)”となるので、トランジスタM261はトランジスタM260よりも電流供給能力が高い状態となり、バイアス電流IBIASと同じ大きさの電流ICP1をヒューズ素子F1を介しグランドに流しきることが可能となる。結果、電圧V1は0V付近まで下がることになる。実際には、電圧V1は、電圧(IBIAS×R_F1)にトランジスタM260のドレイン-ソース間電圧を加えたものとなるが、テストモードにおいて“IBIAS=I”及び“IBIAS=I”としたときでも電圧V1のローレベルが確認されておれば、通常モードにおける“IBIAS=I”の条件下でも電圧V1はローレベルに分類される程度に十分に低くなる。
【0102】
一方、“R_F1>R_REF”の場合、バイアス電流IBIASと同じ大きさの電流ICP1をヒューズ素子F1を介しグランドに流しきれたと仮定すると、ヒューズ素子F1の両端には電圧(IBIAS×R_F1)が発生することになるので、“(トランジスタM260のゲート-ソース間電圧)>(トランジスタM261のゲート-ソース間電圧)”となる。故に、上記仮定が成り立つとすればトランジスタM261はオフに向かうことになり、矛盾が生じる(上記仮定が成り立たないことを意味する)。つまり、“R_F1>R_REF”の場合には、バイアス電流IBIASと同じ大きさの電流ICP1をヒューズ素子F1を介しグランドに流しきることができず、結果、電圧V1は電源電圧VDD付近まで上昇する。
【0103】
このように、ヒューズ素子F1の残留抵抗値が可変抵抗部220の抵抗値より大きいか小さいかによって電圧V1を急峻に変化させる回路がメモリ部200に設けられている。そして、テストモードにおいて、可変抵抗部220の抵抗値を所定範囲内で変化させたときに出力データD1の反転が生じないかを確認することで、メモリ部200の信頼性を担保する。ヒューズ素子F2~F4、及び、それらに対応する出力データD2~D4についても同様である。
【0104】
図11にメモリ部200における幾つかの電圧と電源電圧VDDとの関係を示す。図11において、破線線分625はAND回路141における閾電圧Vth_ANDと電源電圧VDDとの関係を示している。実線線分621は、“R_F1<R_REF”であるときの電圧V1と電源電圧VDDとの関係を示している。実線線分622は、“R_F1>R_REF”であるときの電圧V1と、電源電圧VDDとの関係を示している。“R_F1<R_REF”であれば電源電圧VDDに依存せず電圧V1はローレベルとなり(閾電圧Vth_ANDより低くなり)、“R_F1>R_REF”であれば電源電圧VDDに依存せず電圧V1はハイレベルとなる(閾電圧Vth_ANDより高くなる)。つまり、図4のメモリ部100では存在していた電源電圧依存性(図7参照)が、メモリ部200では殆ど生じない。
【0105】
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態では、第1及び第2実施形態で述べた良否判定処理の具体的な内容について説明する。
【0106】
図12に示すような、半導体装置1と判定装置2とを備えたメモリ異常判定システムを構成することで良否判定処理を行うことができる。判定装置2は半導体装置1の外部に設けられた装置である。判定装置2は、テストモードにおいて半導体装置1の外部端子に接続され、外部端子を通じて良否判定処理に必要な信号を半導体装置1から受信することで良否判定処理を実行する。
【0107】
或いは、図13に示す如く、良否判定処理を実行する判定回路3を半導体装置1内に設けておくようにしても良い。判定回路3は、半導体装置1内の配線を通じ、良否判定処理に必要な信号を受信することで良否判定処理を実行する。
【0108】
良否判定処理に必要な信号は、上述の第1テスト結果データ及び第2テスト結果データに基づく信号であり、第1テスト結果データ及び第2テスト結果データを示す信号そのものでありうる。つまり、判定装置2又は判定回路3は、第1テスト結果データ及び第2テスト結果データに基づいてヒューズ素子F1~F4の異常の有無(ヒューズ素子F1~F4が異常な残留抵抗値を有しているか否か)を判定する。
【0109】
図4のメモリ部100が用いられる場合、第1テスト結果データは図6のステップS22で取得される出力データD1~D4であり、第2テスト結果データは図6のステップS23で取得される出力データD1~D4である。図8のメモリ部1200が用いられる場合、第1テスト結果データは図10のステップS72で取得される出力データD1~D4であり、第2テスト結果データは図10のステップS73で取得される出力データD1~D4である。以下、第1テスト結果データを構成する出力データD1~D4を、夫々特に、データD1a~D4aと表記することがあり、第2テスト結果データを構成する出力データD1~D4を、夫々特に、データD1b~D4bと表記することがある。
【0110】
また、説明の便宜上、用語“判定ブロック”を導入する。判定ブロックは判定装置2及び判定回路3の何れかを指し、故に判定ブロック(2、3)と表記されることもある。判定ブロックが実行する良否判定処理を、図12の構成では判定装置2が実行し、図13の構成では判定回路3が実行することになる。良否判定処理にて良品判定がなされたとき、その旨を表す良品判定信号が判定ブロック(2、3)から出力され、良否判定処理にて不良判定がなされたとき、その旨を表す不良判定信号が判定ブロック(2、3)から出力される。判定ブロック(2、3)は以下の第1~第4判定方法の何れかにて良否判定処理を実現することができる。
【0111】
[第1判定方法]
第1判定方法に係る良否判定処理において、判定ブロック(2、3)は、第1テスト結果データと第2テスト結果データを1ビットずつ個別に比較する。即ち、第1判定方法に係る判定ブロック(2、3)は、データD1a~D4aをデータD1b~D4bと1ビットずつ比較し、データD1aがデータD1bと一致し、データD2aがデータD2bと一致し、データD3aがデータD3bと一致し、且つ、データD4aがデータD4bと一致している場合に限り、良品判定信号を出力し、それ以外の任意の場合において不良判定信号を出力する。
【0112】
[第2判定方法]
第2判定方法に係る良否判定処理において、判定ブロック(2、3)は、第1テスト結果データと第2テスト結果データを一括して比較する。即ち、第2判定方法に係る判定ブロック(2、3)は、データD1a~D4aをデータD1b~D4bと一括して比較し、データD1aがデータD1bと一致し、データD2aがデータD2bと一致し、データD3aがデータD3bと一致し、且つ、データD4aがデータD4bと一致している場合に限り、良品判定信号を出力し、それ以外の任意の場合において不良判定信号を出力する。
【0113】
第1判定方法と第2判定方法は実質的に等価な判定方法であると言え、何れの判定方法においても、第1テスト結果データと第2テスト結果データとの比較に基づき各ヒューズ素子の異常の有無を判定する。
【0114】
[第3判定方法]
第3判定方法は、半導体装置1内に演算増幅器であるアンプが設けられていることを前提とする。図14を参照し第3判定方法に係る良否判定処理を説明する。図14に示す、アンプ310、分圧抵抗311~316、並びに、スイッチ317及び321~324を備える回路CRT1を、半導体装置1(特に例えば機能回路部30)内に設けておくことができる。
【0115】
回路CRT1において、分圧抵抗311~316はグランドから基準電圧VREFの印加端(基準電圧VREFが印加される端子)に向けて分圧抵抗311~316の順番で直列接続され、分圧抵抗311~316の直列回路に基準電圧VREFが加わる。基準電圧VREFは、入力電圧Vinに基づき半導体装置1内で生成される正の所定の直流電圧である。分圧抵抗311~314には、夫々、スイッチ321~324が並列接続される。分圧抵抗315及び316間の接続ノードであるノード325に対しアンプ310の非反転入力端子が接続される。スイッチ317の一端はアンプ310の反転入力端子に接続され、スイッチ317の他端はアンプ310の出力端子に接続される。
【0116】
スイッチ321~324は夫々メモリ部100又は200の出力データD1~D4に基づきオン/オフ状態が制御される。具体的には、スイッチ321に供給される出力データD1が、“0”、“1”のとき、スイッチ321は、夫々、オフ状態、オン状態となる。同様に、スイッチ322に供給される出力データD2が、“0”、“1”のとき、スイッチ322は、夫々、オフ状態、オン状態となる。スイッチ323と出力データD3の組、及び、スイッチ324と出力データD4の組についても同様である。
【0117】
基準電圧VREFは分圧抵抗311~316から成る分圧回路にて分圧され、分圧された電圧(ノード325での電圧)がアンプ310の非反転入力端子に入力されることになるが、その分圧比は、スイッチ321~324のオン/オフ状態に依存する。
【0118】
テストモードでは、スイッチ317がオンとされ、結果、アンプ310の出力電圧VAMPはノード325における電圧と一致する。テストモードにおいて、第1テスト結果データを構成する出力データD1~D4がスイッチ321~324に供給され、そのときのアンプ310の出力電圧VAMPの値が第1評価値VAMP1として判定ブロック(2、3)に取得される。これとは別に、テストモードにおいて、第2テスト結果データを構成する出力データD1~D4がスイッチ321~324に供給され、そのときのアンプ310の出力電圧VAMPの値が第2評価値VAMP2として判定ブロック(2、3)に取得される。判定ブロックが判定装置2(図12)であるならば、テストモードにおけるアンプ310の出力電圧VAMPが半導体装置1の外部端子から出力されて判定装置2に供給されて良い。
【0119】
判定ブロック(2、3)は、良否判定処理において、評価値VAMP1及びVAMP2を比較し、評価値VAMP1及びVAMP2が互いに一致しているとき、第1及び第2テスト結果データは互いに一致していると判断して良品判定信号を出力し、評価値VAMP1及びVAMP2が互いに一致していないとき、第1及び第2テスト結果データは互いに不一致であると判断して不良判定信号を出力する。第1及び第2テスト結果データが互いに一致しているケースにおいては、第1テスト結果データをスイッチ321~324に供給したときと、第2テスト結果データをスイッチ321~324に供給したときとで、基準電圧VREFからノード325の電圧を得る際の分圧比に変化はなく、結果、評価値VAMP1及びVAMP2が互いに一致することが期待される。第1及び第2テスト結果データが互いに一致していないケースにおいては、上記分圧比に変化が生じて、評価値VAMP1及びVAMP2が互いに不一致となる。尚、評価値VAMP1及びVAMP2が互いに一致しているとは、幅を有する概念であり、評価値VAMP1及びVAMP2間の差の絶対値が微小な所定値以下であるとき、評価値VAMP1及びVAMP2が互いに一致していると判断されて良い。
【0120】
[第4判定方法]
第4判定方法は、半導体装置1内にコンパレータが設けられていることを前提とする。図15を参照し第4判定方法に係る良否判定処理を説明する。図15に示す、コンパレータ330、分圧抵抗331~336、スイッチ337及び341~344、並びに、可変電圧源338を備える回路CRT2を、半導体装置1(特に例えば機能回路部30)内に設けておくことができる。
【0121】
回路CRT2において、分圧抵抗331~336はグランドから基準電圧VREFの印加端に向けて分圧抵抗331~336の順番で直列接続され、分圧抵抗331~336の直列回路に基準電圧VREFが加わる。分圧抵抗331~334には、夫々、スイッチ341~344が並列接続される。分圧抵抗335及び336間の接続ノードであるノード345に対しコンパレータ330の反転入力端子が接続される。可変電圧源338は、テストモードにおいて、所定の下限電圧から所定の上限電圧まで所定の電圧変化率で単調増加するスイープ電圧VSWPを出力する。可変電圧源338の出力端とコンパレータ330の非反転入力端子との間にスイッチ337が設けられており、スイッチ337がオン状態であるときにのみスイープ電圧VSWPがコンパレータ330の非反転入力端子に供給される。
【0122】
スイッチ341~344は夫々メモリ部100又は200の出力データD1~D4に基づきオン/オフ状態が制御される。具体的には、スイッチ341に供給される出力データD1が、“0”、“1”のとき、スイッチ341は、夫々、オフ状態、オン状態となる。同様に、スイッチ342に供給される出力データD2が、“0”、“1”のとき、スイッチ342は、夫々、オフ状態、オン状態となる。スイッチ343と出力データD3の組、及び、スイッチ344と出力データD4の組についても同様である。
【0123】
基準電圧VREFは分圧抵抗331~336から成る分圧回路にて分圧され、分圧された電圧(ノード345での電圧)がコンパレータ330の反転入力端子に入力されることになるが、その分圧比は、スイッチ341~344のオン/オフ状態に依存する。
【0124】
テストモードではスイッチ337がオンとされる。テストモードにおいて、第1テスト結果データを構成する出力データD1~D4がスイッチ341~344に供給された第1状態でスイープ電圧VSWPの単調増加が行われる。第1状態でのスイープ電圧VSWPの単調増加の過程でコンパレータ330の出力電圧VCMPがローレベルからハイレベルに切り替わったときのスイープ電圧VSWPの値が判定ブロック(2、3)により第1評価値VSWP1として取得される。これとは別に、テストモードにおいて、第2テスト結果データを構成する出力データD1~D4がスイッチ341~344に供給された第2状態でスイープ電圧VSWPの単調増加が行われる。第2状態でのスイープ電圧VSWPの単調増加の過程でコンパレータ330の出力電圧VCMPがローレベルからハイレベルに切り替わったときのスイープ電圧VSWPの値が判定ブロック(2、3)により第2評価値VSWP2として取得される。
【0125】
判定ブロック(2、3)は、良否判定処理において、評価値VSWP1及びVSWP2を比較し、評価値VSWP1及びVSWP2が互いに一致しているとき、第1及び第2テスト結果データは互いに一致していると判断して良品判定信号を出力し、評価値VSWP1及びVSWP2が互いに一致していないとき、第1及び第2テスト結果データは互いに不一致であると判断して不良判定信号を出力する。第1及び第2テスト結果データが互いに一致しているケースにおいては、第1テスト結果データをスイッチ341~344に供給したときと、第2テスト結果データをスイッチ341~344に供給したときとで、基準電圧VREFからノード345の電圧を得る際の分圧比に変化はなく、結果、評価値VSWP1及びVSWP2が互いに一致することが期待される。第1及び第2テスト結果データが互いに一致していないケースにおいては、上記分圧比に変化が生じて、評価値VSWP1及びVSWP2が互いに不一致となる。尚、評価値VSWP1及びVSWP2が互いに一致しているとは、幅を有する概念であり、評価値VSWP1及びVSWP2間の差の絶対値が微小な所定値以下であるとき、評価値VSWP1及びVSWP2が互いに一致していると判断されて良い。
【0126】
図14に対応する第3判定方法及び図15に対応する第4判定方法は、何れも、第1テスト結果データに応じた第1情報(VAMP1、VSWP1)と第2テスト結果データに応じた第2情報(VAMP2、VSWP2)との比較に基づき、各ヒューズ素子の異常の有無を判定する方法に属する。第1情報の例として第1評価値VAMP1及びVSWP1を挙げ、第2情報の例として第2評価値VAMP2及びVSWP2を挙げたが、第1及び第2テスト結果データの一致/不一致を峻別するに足る情報であれば第1情報及び第2情報は任意である。
【0127】
<<第4実施形態>>
本発明の第4実施形態を説明する。図16に第4実施形態に係る電源装置400の構成を示す。電源装置400は、入力電圧Vinから所定の目標電圧にて安定化されるべき出力電圧Voutを生成する降圧型のスイッチング電源装置である。電源装置400は、上述の半導体装置1の例である半導体装置1Aと、半導体装置1Aの外部に設けられるコイル411、平滑コンデンサ412、帰還抵抗413及び414を備える。半導体装置1Aは、アンプAMP、コンパレータCMP、制御部CNT、トランジスタMH及びMLを備える。アンプAMP、コンパレータCMP、制御部CNT、トランジスタMH及びMLは、半導体装置1Aにおける機能回路部30(図1)の構成要素である。
【0128】
半導体装置1Aには外部端子として端子IN、SW、FB及びGNDが設けられる。端子INにて入力電圧Vinの供給を受け、端子FBにて帰還電圧Vfbの入力を受ける。端子GNDはグランドに接続される。トランジスタMHは端子IN及びSW間に直列に設けられ、トランジスタMLは端子SW及びGND間に直列に設けられる。トランジスタMH及びMLによりハーフブリッジ回路が構成される。トランジスタMH及びMLをNチャネル型のMOSFETとして構成しておくことができる。
【0129】
コイル411の一端は端子SWに接続され、コイル411の他端は平滑コンデンサ412を介してグランドに接続される。平滑コンデンサ412の両端間に出力電圧Voutが生じる。出力電圧Voutは帰還抵抗413及び414にて分圧され、分圧結果が帰還電圧Vfbとして端子FBに入力される。アンプAMPは、帰還電圧Vfbと所定の基準電圧Vref1との誤差に応じた誤差信号を出力する。コンパレータCMPは、帰還電圧Vfbと所定の基準電圧Vref2との高低関係を示す信号を出力する。制御部CNTは、トランジスタMH及びMLをスイッチングすることで(即ち交互にオン/オフすることで)端子SWに矩形波状の電圧を発生させ、端子SWでの電圧がコイル411及び平滑コンデンサ412にて平滑化されることで出力電圧Voutが生成される。この際、アンプAMPからの誤差信号に応じてスイッチングのデューティを調整することで出力電圧Voutが所望の目標電圧に安定化させることができる。
【0130】
また、制御部CNTは、軽負荷制御又は過電圧保護を目的として、コンパレータCMPの出力信号に基づきトランジスタMH及びMLのスイッチングを停止させる制御も行いうる。例えば、“Vfb>Vref2”であることを示す信号がコンパレータCMPから出力されているとき、トランジスタMH及びMLのスイッチングを停止させる。
【0131】
アンプAMPは、図14のアンプ310であっても良い。この場合、通常モードでは、スイッチ317がオフとされ且つ端子FBがアンプ310の反転入力端子に接続される(このような接続を実現する図示されないスイッチが半導体装置1Aに設けられている)。そして、通常モードでは、読み出しデータD1~D4(図5図9参照)がスイッチ321~324に供給された状態でノード325での電圧が基準電圧Vref1としてアンプAMP(310)の非反転入力端子に入力される。この際、読み出しデータD1~D4は、基準電圧Vref1を調整(トリミング)するためのデータとして機能する。
【0132】
コンパレータCMPは、図15のコンパレータ330であっても良い。この場合、通常モードでは、スイッチ337がオフとされ且つ端子FBがコンパレータ330の非反転入力端子に接続される(このような接続を実現する図示されないスイッチが半導体装置1Aに設けられている)。そして、通常モードでは、読み出しデータD1~D4(図5図9参照)がスイッチ341~344に供給された状態でノード345での電圧が基準電圧Vref2としてコンパレータCMP(330)の反転入力端子に入力される。この際、読み出しデータD1~D4は、基準電圧Vref2を調整(トリミング)するためのデータとして機能する。
【0133】
このように、第3実施形態で述べた第3及び第4判定方法では、機能回路部30の機能実現のために本来備えられている回路部品(ここではアンプ又はコンパレータ)を用いて、良否判定処理が行われて良い。
【0134】
図16の例では、基準電圧の調整に不揮発性メモリ部10(100、200)が利用されているが、不揮発性メモリ部10(100、200)の利用の仕方は任意である。例えば、機能回路部30にフィルタ部(不図示)が設けられている場合、通常モードにおけるフィルタ部のフィルタ特性の調整を不揮発性メモリ部10の記憶データ(読み出しデータD1~D4)に基づいて行うようにしても良い。また例えば、周期的に電圧値が鋸波状又は三角波状に変化するランプ電圧を生成するランプ電圧生成部が機能回路部30に設けられている場合においては、通常モードにおけるランプ電圧の周波数の調整を不揮発性メモリ部10の記憶データ(読み出しデータD1~D4)に基づいて行うようにしても良い。
【0135】
不揮発性メモリ部10の記憶データに基づき、機能回路部30の機能自体を変更するようにしても良い。
【0136】
例えば、上述のランプ電圧生成部は図16の制御部CNTに設けられていて良い。この際、制御部CNTは、ランプ電圧の周波数にてトランジスタMH及びMLのスイッチングを行うことになるが、通常モードにおいて不揮発性メモリ部10からの読み出しデータD1~D4に応じ、ランプ電圧の周波数を微調整の域を超えて大幅に変更するようにしても良い。例えば読み出しデータD1のみに注目すれば、読み出しデータD1が“0”であればランプ電圧の周波数を30kHzとし、読み出しデータD1が“1”であればランプ電圧の周波数を100kHzとする、といったことが可能である。このように、信頼性の高い不揮発性メモリ部10を利用して、単一の半導体装置1を、スイッチング周波数が相対的に遅い電源用ICとして動作させたり、スイッチング周波数が相対的に速い電源用ICとして動作させたりすることが可能となる。
【0137】
また例えば、帰還抵抗内蔵型の電源用IC(図16の半導体装置1Aに帰還抵抗413及び414を内蔵させたものに相当)では、一般的に出力電圧Voutと帰還電圧Vfbとの比が固定される結果、出力電圧Voutが追従すべき目標電圧も固定されるが、そのような帰還抵抗内蔵型の電源用ICに本発明構成を適用することもできる。例えば読み出しデータD1のみに注目すれば、読み出しデータD1が“0”であれば目標電圧を3.0Vとし、読み出しデータD1が“1”であれば目標電圧を5.0Vとする、といったことが可能である(図14の例であれば、そのような目標電圧が実現されるよう、分圧抵抗311~316の各抵抗値を定めておけば良い)。このように、信頼性の高い不揮発性メモリ部10を利用して、単一の半導体装置1を、目標電圧が相対的に低い電源用ICとして動作させたり、目標電圧が相対的に高い電源用ICとして動作させたりすることが可能となる。
【0138】
<<第5実施形態>>
本発明の第5実施形態を説明する。第5実施形態では、上述の第1~第4実施形態に適用可能な幾つかの応用技術や変形技術を説明する。
【0139】
バイアス電流IBIASを、通常モードにおける電流(図4図6の例では“I1+I2”)と、テストモードにおける2つの電流(図4図6の例では“I1”と“I1+I2+I3”)とで切り替えることのできる構成を挙げたが、バイアス電流IBIASの切り替えの段階数は3以上であれば任意であり、故に、電流ICP1~ICP4の夫々の切り替えの段階数も3以上であれば任意である。
【0140】
不揮発性メモリ部10(100、200)にて記憶されるデータのビット数(即ち上述のnの値)は、4以外でも良く、従って1、2、3又は5以上でも良い。必要なビット数に相当する個数のヒューズ素子を不揮発性メモリ部10に設けておけば良い。図8の構成において“n=1”とされる場合にあっては、電流経路CP2~CP4、ヒューズ素子F2~F4、トランジスタM112~M114及びM262~M264、並びに、AND回路142~144が不要となる。
【0141】
各実施形態に示されたFET(電界効果トランジスタ)のチャネルの種類は例示であり、Nチャネル型のFETがPチャネル型のFETに変更されるように、或いは、Pチャネル型のFETがNチャネル型のFETに変更されるように、FETを含む回路の構成は変形され得る。
【0142】
不都合が生じない限り、上述の任意のトランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述された任意のトランジスタを、不都合が生じない限り、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。
【0143】
<<本発明の考察>>
上述の各実施形態にて具体化された本発明に係る半導体装置Wについて考察する。
【0144】
本発明の一側面に係る半導体装置Wは、半導体集積回路内に設けられた対象電流経路(例えばCP1)及び前記対象電流経路に直列に挿入されたヒューズ素子(例えばF1)を有し、前記対象電流経路に対して対象電流(IBIASに比例する電流)の供給を図ったときの前記ヒューズ素子の両端間電圧に応じ、出力データを変化させる不揮発性メモリ部(10、100、200)を備えた半導体装置であって、前記対象電流を複数段階で切り替える電流供給部を前記不揮発性メモリ部に設けたことを特徴とする。
【0145】
半導体装置Wにおける電流供給部は、図4の構成では、カレントミラー回路110及び可変電流源120を含んで構成され、スイッチ制御部130を更に含みうる。
半導体装置Wにおける電流供給部は、図8の構成では、カレントミラー回路210、可変抵抗部220、バイアス電圧供給部250及びトランジスタM260~M264を含んで構成され、スイッチ制御部230を更に含みうる。
【0146】
例えば、半導体装置Wにおいて、当該半導体装置はテストモード又は通常モードで動作可能であり、前記通常モードにおいて前記出力データに応じた動作を行う機能回路部(30)が当該半導体装置に設けられ、前記電流供給部は、前記通常モードにおいて前記対象電流の値を基準電流値(“I1+I2”に比例する電流、又は、Iに比例する電流に対応)に設定し、前記テストモードにおいて前記対象電流の値を複数のテスト電流値間で切り替え設定し、前記複数のテスト電流値は、前記基準電流値よりも小さな第1テスト電流値(I1に比例する電流、又は、Iに比例する電流に対応)と、前記基準電流値よりも大きな第2テスト電流値(“I1+I2+I3”に比例する電流、又は、Iに比例する電流に対応)と、を含んでいると良い。
【0147】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0148】
1 半導体装置
10 不揮発性メモリ部
20 モード設定部
30 機能回路部
100 不揮発性メモリ部
110 カレントミラー回路
120 可変電流源
130 スイッチ制御部
140 データ出力部
200 不揮発性メモリ部
210 カレントミラー回路
220 可変抵抗部
230 スイッチ制御部
240 データ出力部
250 バイアス電圧供給部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17