(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】エアバッグ及びその折畳方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/232 20110101AFI20231017BHJP
B60R 21/237 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B60R21/232
B60R21/237
(21)【出願番号】P 2019223899
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】上山 拓哉
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-022918(JP,A)
【文献】特開2010-052513(JP,A)
【文献】特開2014-148198(JP,A)
【文献】特開2011-111075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/232
B60R 21/237
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状に形成されたエアバッグ本体部と、このエアバッグ本体部に連通しガスが供給されるガス導入部と、を備え、前記エアバッグ本体部が折り畳まれた状態から前記ガス導入部を介してガスが供給されることで車室内の側方に展開するエアバッグであって、
前記エアバッグ本体部は、折り畳まれた状態で、
展開方向の先端側が
前記車室外方にロール状へと折り畳まれて形成された第一ロール折部と、
この第一ロール折部よりも前記展開方向の基端側の少なくとも一部が
前記車室外方にロール状へと折り畳まれて形成され、前記第一ロール折部のロール中心とは異なる位置をロール中心とする第二ロール折部と、を有する
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
エアバッグ本体部は、
ガス導入部と連通する本体膨張部と、
この本体膨張部と連通し、この本体膨張部を基準として
前記ガス導入部とは反対側に延出される突出部と、を有し、
第一ロール折部は、前記突出部がロール状に折り畳まれて形成され、
第二ロール折部は、前記突出部と連なる前記本体膨張部の少なくとも一部がロール状に折り畳まれて形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。
【請求項3】
エアバッグ本体部は、折り畳まれた状態で、第二ロール折部の外側に重ねられる蛇腹折部を有し、
前記蛇腹折部は、本体膨張部の残りの他部が蛇腹状に折り畳まれて形成されている
ことを特徴とする請求項2記載のエアバッグ。
【請求項4】
袋状に形成されたエアバッグ本体部と、このエアバッグ本体部に連通しガスが供給されるガス導入部と、を備え、前記エアバッグ本体部が折り畳まれた状態から前記ガス導入部を介してガスが供給されることで車室内の側方に展開するエアバッグの前記エアバッグ本体部を折り畳むエアバッグの折畳方法であって、
前記エアバッグ本体部の展開方向と交差する方向に沿って設置した棒状の第一治具により前記エアバッグ本体部の前記展開方向の先端側の一部を
前記車室外方にロール状
へと折り畳んで第一ロール折部を形成する第一工程と、
前記第一ロール折部の巻き終わりの位置に前記展開方向と交差する方向に沿って設置した棒状の第二治具により前記エアバッグ本体部の残部の少なくとも一部を
前記車室外方にロール状
へと折り畳んで第二ロール折部を形成する第二工程と、を備えた
ことを特徴とするエアバッグの折畳方法。
【請求項5】
エアバッグ本体部は、
ガス導入部と連通する本体膨張部と、
この本体膨張部と連通し、この本体膨張部を基準として
前記ガス導入部とは反対側に延出される突出部と、を有し、
第一工程は、前記突出部をロール状に折り畳む工程であり、
第二工程は、前記突出部と連なる前記本体膨張部の少なくとも一部をロール状に折り畳む工程である
ことを特徴とする請求項4記載のエアバッグの折畳方法。
【請求項6】
第二ロール折部と連なる本体膨張部の残りの他部を蛇腹状に折り畳んで蛇腹折部を形成する第三工程を備えた
ことを特徴とする請求項5記載のエアバッグの折畳方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の側方に展開するエアバッグ及びその折畳方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスが導入されて膨張展開するエアバッグを備えたエアバッグ装置について、自動車の車室の側部のピラー部及びドアの窓部などを含む所定面に沿って前後に長手状のエアバッグを展開するいわゆるカーテンエアバッグ装置が知られている。このようなエアバッグ装置のエアバッグは、通常時は細長く折り畳まれ、窓部の上縁部のルーフサイド部に沿って配置されている。そして、側面衝突や横転(ロールオーバー)などの衝撃を受けた際に、インフレータからガスが供給され、エアバッグが側部の窓ガラスなどに沿って下方に膨張展開して、乗員を拘束して頭部などを保護する。
【0003】
このようなエアバッグとしては、折り畳みの際に、下端部を折り返し、その折り返し部分を中心として下方から上方へとロール状に折り畳むものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-22918号公報 (第7-10頁、
図2-6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
側面衝突時の衝突速度及び重量が大きい場合、ドアトリムが車室内側へと大きく進入することとなる。このようなドアトリムの進入に対し、エアバッグが車室内へと確実に展開することが求められる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、エアバッグ本体部を車室内に効果的に展開させることが可能なエアバッグ及びその折畳方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のエアバッグは、袋状に形成されたエアバッグ本体部と、このエアバッグ本体部に連通しガスが供給されるガス導入部と、を備え、前記エアバッグ本体部が折り畳まれた状態から前記ガス導入部を介してガスが供給されることで車室内の側方に展開するエアバッグであって、前記エアバッグ本体部は、折り畳まれた状態で、展開方向の先端側が前記車室外方にロール状へと折り畳まれて形成された第一ロール折部と、この第一ロール折部よりも前記展開方向の基端側の少なくとも一部が前記車室外方にロール状へと折り畳まれて形成され、前記第一ロール折部のロール中心とは異なる位置をロール中心とする第二ロール折部と、を有するものである。
【0008】
請求項2記載のエアバッグは、請求項1記載のエアバッグにおいて、エアバッグ本体部は、ガス導入部と連通する本体膨張部と、この本体膨張部と連通し、この本体膨張部を基準としてガス導入部とは反対側に延出される突出部と、を有し、第一ロール折部は、前記突出部がロール状に折り畳まれて形成され、第二ロール折部は、前記突出部と連なる前記本体膨張部の少なくとも一部がロール状に折り畳まれて形成されているものである。
【0009】
請求項3記載のエアバッグは、請求項2記載のエアバッグにおいて、エアバッグ本体部は、折り畳まれた状態で、第二ロール折部の外側に重ねられる蛇腹折部を有し、前記蛇腹折部は、本体膨張部の残りの他部が蛇腹状に折り畳まれて形成されているものである。
【0010】
請求項4記載のエアバッグの折畳方法は、袋状に形成されたエアバッグ本体部と、このエアバッグ本体部に連通しガスが供給されるガス導入部と、を備え、前記エアバッグ本体部が折り畳まれた状態から前記ガス導入部を介してガスが供給されることで車室内の側方に展開するエアバッグの前記エアバッグ本体部を折り畳むエアバッグの折畳方法であって、前記エアバッグ本体部の展開方向と交差する方向に沿って設置した棒状の第一治具により前記エアバッグ本体部の前記展開方向の先端側の一部を前記車室外方にロール状へと折り畳んで第一ロール折部を形成する第一工程と、前記第一ロール折部の巻き終わりの位置に前記展開方向と交差する方向に沿って設置した棒状の第二治具により前記エアバッグ本体部の残部の少なくとも一部を前記車室外方にロール状へと折り畳んで第二ロール折部を形成する第二工程と、を備えたものである。
【0011】
請求項5記載のエアバッグの折畳方法は、請求項4記載のエアバッグの折畳方法において、エアバッグ本体部は、ガス導入部と連通する本体膨張部と、この本体膨張部と連通し、この本体膨張部を基準としてガス導入部とは反対側に延出される突出部と、を有し、第一工程は、前記突出部をロール状に折り畳む工程であり、第二工程は、前記突出部と連なる前記本体膨張部の少なくとも一部をロール状に折り畳む工程であるものである。
【0012】
請求項6記載のエアバッグの折畳方法は、請求項5記載のエアバッグの折畳方法において、第二ロール折部と連なる本体膨張部の残りの他部を蛇腹状に折り畳んで蛇腹折部を形成する第三工程を備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載のエアバッグによれば、ガス導入部からガスがエアバッグ本体部に導入されると、それぞれ車室外方にロール状へと折り畳まれた第二ロール折部から第一ロール折部へと徐々にロールが解ける展開モードになるので、安定した展開挙動となり、仮に側面衝突時の衝突速度及び重量が大きく、ドアトリムが車室内側へと大きく進入したとしても、エアバッグ本体部の先端側がドアトリムに接触し、エアバッグ本体部を車室内に効果的に展開させることができる。
【0014】
請求項2記載のエアバッグによれば、請求項1記載のエアバッグの効果に加えて、本体膨張部からガス導入部とは反対側に突出する突出部を有するエアバッグ本体部においても、展開挙動を安定させることができる。
【0015】
請求項3記載のエアバッグによれば、請求項2記載のエアバッグの効果に加えて、ガス導入部からエアバッグ本体部にガスが供給されると、蛇腹折部が第二ロール折部及び第一ロール折部より先に迅速に展開し、第二ロール折部及び第一ロール折部を先端側に押し出すことができる。そのため、エアバッグ本体部の先端側をドアトリムに対し、より確実に接触させることができ、エアバッグ本体部を車室内により効果的に展開させることができる。
【0016】
請求項4記載のエアバッグの折畳方法によれば、ガス導入部からガスがエアバッグ本体部に導入されると、それぞれ車室外方にロール状へと折り畳まれた第二ロール折部から第一ロール折部へと徐々にロールが解ける展開モードになるので、安定した展開挙動となり、仮に側面衝突時の衝突速度及び重量が大きく、ドアトリムが車室内側へと大きく進入したとしても、エアバッグ本体部の先端側がドアトリムに接触し、エアバッグ本体部を車室内に効果的に展開させることができる。
【0017】
請求項5記載のエアバッグの折畳方法によれば、請求項4記載のエアバッグの折畳方法の効果に加えて、本体膨張部からガス導入部とは反対側に突出する突出部を有するエアバッグ本体部においても、展開挙動を安定させることができる。
【0018】
請求項6記載のエアバッグの折畳方法によれば、請求項5記載のエアバッグの折畳方法の効果に加えて、ガス導入部からエアバッグ本体部にガスが供給されると、蛇腹折部が第二ロール折部及び第一ロール折部より先に迅速に展開し、第二ロール折部及び第一ロール折部を先端側に押し出すことができる。そのため、エアバッグ本体部の先端側をドアトリムに対し、より確実に接触させることができ、エアバッグ本体部を車室内により効果的に展開させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)は本発明の一実施の形態のエアバッグの側面図、(b)はエアバッグの折り畳まれた状態での断面図である。
【
図2】(a1)ないし(d1)は同上エアバッグの折畳方法を模式的に示す側面図、(a2)ないし(d2)は、(a1)ないし(d1)のI-I相当位置を模式的に示す断面図である。
【
図3】(a)ないし(c)は同上エアバッグの展開挙動を模式的に示す断面図である。
【
図4】同上エアバッグを車体に取り付けた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
図4において、10はエアバッグである。エアバッグ10を備えたエアバッグ装置11は、カーテンエアバッグ装置とも呼ばれ、車両である自動車の車体の車室14の収納位置としてのルーフサイド部15に配置されている。そして、エアバッグ10は、カーテンエアバッグ、側突用エアバッグ、インフレータブルカーテン、あるいは頭部保護用エアバッグなどとも呼ばれるもので、側面衝突の衝撃を受けた際や横転(ロールオーバー)の際などに、被保護物としての乗員の側方にほぼ面状に所定方向である下方へと展開し、乗員の頭部などを保護するようになっている。
【0022】
なお、以下、前後方向、車幅方向である両側方向、上下方向などの方向は、車両の直進方向を基準とし、前側方向(矢印F方向)、後側方向(矢印R方向)、上方(矢印U方向)、下方(矢印D方向)、車室14の外方(矢印W(
図1(b))方向)、車室14の内方(矢印C(
図1(b))方向)などを説明する。
【0023】
そして、この自動車の車体は、車室14内に乗員が着座可能な座席である前席及び後席を備え、これら前席及び後席に対応して、それぞれ上部に開口可能なガラスにより覆われた(第一及び第二の)窓部(サイドウィンドウ)18,19を備えたドアが設けられている。また、車室14の両側には、前側から順に、Aピラーとも呼ばれる(第一の)柱状体としてのフロントピラー21、Bピラーとも呼ばれる(第二の)柱状体としてのセンターピラー22、Cピラーとも呼ばれる(第三の)柱状体としてのリアピラー23が設けられており、フロントピラー21の後方でかつセンターピラー22の前方に窓部18が位置し、センターピラー22の後方でかつリアピラー23の前方に窓部19が位置している。そして、これら窓部18,19、ドア及び各ピラー21,22,23により、車室14の両側部にエアバッグ10が展開する所定面24が構成されている。また、これらピラー21,22,23の上側、すなわち窓部18,19の一縁部である上縁部に、ルーフサイドレールなどとも呼ばれる被取付部材を構成する車体パネル25が設けられ、この車体パネル25を介して天井部としての天井パネルが支持されている。また、両側のフロントピラー21の前側にはフロントガラス(フロントウインドシールド)が設けられ、両側のリアピラー23の後側にはリアガラスが設けられている。そして、収納位置としてのルーフサイド部15は、天井パネルの両側の縁部の部分から、この縁部の部分といわば交差する方向に延びるフロントピラー21及びリアピラー23のほぼ全長に掛かる部分にまで設定され、これら天井パネルの縁部の部分とフロントピラー21及びリアピラー23とで仮想的に構成される弧の内側に所定面24が設定される。
【0024】
なお、センターピラー22とは、前後の端部のピラー部ではなく、展開したエアバッグ10に覆われるピラー部を示す。また、車両の種類によっては、片側に例えば4本以上のピラー部を備える場合があるが、前から3本目以後のピラー部は、リアピラー23として説明する。
【0025】
そして、エアバッグ装置11は、前席及び後席の乗員を保護可能な、いわゆる前後席用エアバッグ装置であり、車体パネル25と各ピラー21,22,23の上端から天井へと連続する内装材としての天井被覆部材であるヘッドライニングとなどに囲まれたルーフサイド部15すなわち車体のドア開口部の上縁に沿って細長く折り畳んで収納されたエアバッグ10と、後席の後方あるいは上方に収納されこのエアバッグ10にガスを供給するガス発生器であるインフレータ27となどを備えている。また、このエアバッグ装置11は、エアバッグ10を車体パネルに取り付ける金属板をプレス加工などして形成された図示しないブラケット、及び折り畳んだエアバッグ10の形状を保持する破断可能な筒状あるいは紐状の形状保持部材としてのスリーブ、エアバッグ10の前端部に連結されたテザー部としてのテザーベルト29などが備えられている。また、各ピラー21,22,23のそれぞれの車室14の室内側は、構造物としてのカバー体すなわち被覆内装材であるピラーガーニッシュにより覆われている。
【0026】
図1(a)、
図1(b)、及び、
図4に示すエアバッグ10は、インフレータ27が挿入接続されガスが導入されるインフレータ接続部としてのガス導入部32と、扁平な袋状に形成されたエアバッグ本体部33とを備えている。エアバッグ10は、複数の取付部34を介して上縁部の複数箇所が車体側に取り付けられるとともに、例えば前端部がテザーベルト29により車体側に取り付けられて、細長く折り畳んだ状態でセンターピラー22の上方であるルーフサイド部15に前後方向に沿って長手状に収納される。ガス導入部32は、エアバッグ本体部33の展開基端側である上側に位置する。本実施の形態では、エアバッグ10は、いわゆるリアマウントタイプのものであり、ガス導入部32がエアバッグ本体部33の上部の後部側に突設されている。これに限られず、エアバッグ10は、ガス導入部32がエアバッグ本体部33の上部の前後方向の中央部に突設されたセンターマウントタイプであってもよい。
【0027】
ガス導入部32及びエアバッグ本体部33は、単数または複数の基布により構成されている。基布の外縁部が縫製などにより接合されることでエアバッグ10にガス導入部32及びエアバッグ本体部33がそれぞれ設定されている。そして、ガス導入部32の後端部(上端部)が、インフレータ27が挿入される挿入開口35となっている。
【0028】
エアバッグ本体部33には、ガスの導入によって膨張する本体膨張部37及び突出部38が形成されている。
【0029】
本体膨張部37は、展開状態で乗員の側方に配置される。本体膨張部37は、所定面24において、窓部18,19に対応する領域を覆い、前席から後席の側方に亘る前後の領域に展開する部分である。本体膨張部37は、前後に長手状に形成されている。本体膨張部37は、ガス導入部32と連通し、ガス導入部32からガスが直接導入される部分である。
【0030】
突出部38は、車外放出防止部とも呼び得る部分である。突出部38は、エアバッグ10の展開状態で、窓部18の下縁にてドアの車室内側を覆うドアトリムDTに掛かることで前席に着座した乗員が窓部18から車外へと放出されることを防止する部分である。突出部38は、エアバッグ10の展開状態において、本体膨張部37を基準として、ガス導入部32と反対側である下側に延出されている。また、突出部38は、本体膨張部37の前側の下部に位置している。突出部38は、本体膨張部37と連通している。つまり、突出部38は、本体膨張部37を介してガス導入部32と連通し、本体膨張部37の導入されたガスの一部が、本体膨張部37を介して導入される部分である。
【0031】
また、エアバッグ本体部33には、ガスの流れを規制する複数の規制部である非膨張部41が形成され、本体膨張部37及び突出部38に複数の気室が形成される。非膨張部41は、エアバッグ本体部33を構成する基布が接合される接合部として形成されている。非膨張部41は、それぞれ線状に形成されており、先端部には、基布が円形状に接合された保護部が形成されている。このような保護部が設けられることにより、膨張展開時における基布の伸びの確保と皺の発生の防止、また、エアバッグ本体部33の膨張展開時に非膨張部41の端部へ生じる応力集中に対して充分な強度を得ることができる。非膨張部41の位置や形状は、図示される例に限られず、任意に設定してよい。
【0032】
そして、エアバッグ10は、折り畳まれた状態で、エアバッグ本体部33に、第一ロール折部45と、第二ロール折部46とが形成される。本実施の形態において、エアバッグ10は、折り畳まれた状態で、エアバッグ本体部33に、蛇腹折部47がさらに形成される。
【0033】
第一ロール折部45は、エアバッグ本体部33の展開方向の先端側、すなわち下端側が折り畳まれて形成される。つまり、第一ロール折部45は、エアバッグ本体部33のガス導入部32とは反対側の端部がロール状に折り畳まれて形成される。本実施の形態において、第一ロール折部45は、突出部38がロール状に折り畳まれて形成される。第一ロール折部45は、エアバッグ本体部33の膨張時に、蛇腹折部47及び第二ロール折部46に続いて展開する部分である。すなわち、第一ロール折部45は、エアバッグ本体部33の膨張時に、第二ロール折部46及び蛇腹折部47よりも遅れて展開するようになっている。
【0034】
第二ロール折部46は、エアバッグ本体部33の第一ロール折部45よりも展開方向の基端側、すなわち第一ロール折部45よりも上側の部分が折り畳まれて形成される。第二ロール折部46は、突出部38と連なる本体膨張部37の少なくとも一部、本実施の形態では本体膨張部37の一部がロール状に折り畳まれて形成されている。第二ロール折部46は、本体膨張部37の突出部38側である下側の部分がロール状に折り畳まれて形成されている。図示される例では、第二ロール折部46は、本体膨張部37の下側の半分がロール状に折り畳まれて形成されている。第二ロール折部46は、第一ロール折部45のロール中心とは異なる位置をロール中心とする。第二ロール折部46は、第一ロール折部45を巻き込んでロール状となっている。すなわち、第二ロール折部46の内部に第一ロール折部45が位置する。そのため、第二ロール折部46は、少なくとも一部が第一ロール折部45とガス導入部32との間に位置する。第二ロール折部46は、エアバッグ本体部33の膨張時に、蛇腹折部47に続いて展開する部分である。すなわち、第二ロール折部46は、エアバッグ本体部33の膨張時に、蛇腹折部47よりも遅れて展開するようになっている。
【0035】
蛇腹折部47は、エアバッグ本体部33の第二ロール折部46よりも展開方向の基端側、すなわち第二ロール折部46よりも上側の部分が折り畳まれて形成される。つまり、蛇腹折部47は、第二ロール折部46と連なる本体膨張部37の残りの他部が蛇腹状に折り畳まれて形成されている。蛇腹折部47は、本体膨張部37の上側の部分がロール状に折り畳まれて形成されている。図示される例では、蛇腹折部47は、本体膨張部37の上側の半分が蛇腹状に折り畳まれて形成されている。蛇腹折部47は、第一ロール折部45及び第二ロール折部46を覆うように第二ロール折部46の外側に重ねられている。そのため、蛇腹折部47は、少なくとも一部が第二ロール折部46とガス導入部32との間に位置する。蛇腹折部47は、エアバッグ本体部33の膨張時に、ガス導入部32から導入されたガスにより最初に展開する部分である。
【0036】
次に、エアバッグ10の折畳方法について、
図2(a1)ないし
図2(d1)及び
図2(a2)ないし
図2(d2)も参照しながら説明する。
【0037】
エアバッグ10は、基布の外縁部を接合部により接合するとともに、非膨張部41にて基布を接合することで、エアバッグ本体部33とガス導入部32とを有するエアバッグ10として形成される。
【0038】
このエアバッグ10は、エアバッグ本体部33を展開して平面状にした状態から、まず、棒状の第一治具である第一サーベルS1を用いて、第一ロール折部45を形成する(第一工程)。すなわち、第一サーベルS1をエアバッグ本体部33の展開方向と交差する方向である前後方向に沿ってエアバッグ本体部33に設置する(
図2(a1)及び
図2(a2))。本実施の形態において、第一サーベルS1は、エアバッグ本体部33の突出部38の下端近傍の位置に設置される。第一サーベルS1は、突出部38の前後方向の長さよりも長尺に形成されており、少なくとも突出部38の前後方向全体に亘り配置され、両端部が突出部38から前後に延出する。次いで、第一サーベルS1を用いてエアバッグ本体部33の一部、本実施の形態では突出部38を上方へとロール状に折り畳んで第一ロール折部45を形成する(
図2(b1)及び
図2(b2))。つまり、第一ロール折部45は、エアバッグ本体部33の突出部38の下端部を中心としてロール状に折り畳まれる。このとき、第一ロール折部45は、車室外方に向かって巻き込むものとする。
【0039】
さらに、棒状の第二治具である第二サーベルS2を用いて、第二ロール折部46を形成する(第二工程)。すなわち、エアバッグ本体部33の第一ロール折部45の巻き終わりの位置に第二サーベルS2を、エアバッグ本体部33の展開方向と交差する方向である前後方向に沿って設置する(
図2(b1)及び
図2(b2))。すなわち、第二サーベルS2は、エアバッグ本体部33の本体膨張部37の下端に沿って、第一サーベルS1と平行または略平行に配置される。第二サーベルS2は、本体膨張部37の前後方向の長さよりも長尺に形成されており、第一サーベルS1よりも長尺である。第二サーベルS2は、少なくとも本体膨張部37の前後方向全体に亘り配置され、両端部が本体膨張部37から前後に延出する。
【0040】
次いで、第一サーベルS1を引き抜き、第二サーベルS2を用いてエアバッグ本体部33の残部の少なくとも一部、本実施の形態では本体膨張部37の少なくとも一部、図示される例では本体膨張部37の下部を上方へとロール状に折り畳んで第二ロール折部46を形成する(
図2(c1)及び
図2(c2))。つまり、第二ロール折部46は、エアバッグ本体部33の本体膨張部37の下端部を中心としてロール状に折り畳まれる。このとき、第二ロール折部46は、車室外方に向かって巻き込むものとする。したがって、第二ロール折部46が第一ロール折部45を巻き込み、第一ロール折部45のロール中心とは異なる位置がロール中心となって第二ロール折部46が形成される。
【0041】
そして、エアバッグ本体部33の残部の他部、本実施の形態では本体膨張部37の残りの他部、図示される例では本体膨張部37の上部を車室内側及び車室外側に交互に折り畳んで蛇腹状として第一ロール折部45及び第二ロール折部46をパラソル状に包み込むように蛇腹折部47を形成する(第三工程、
図2(d1)及び
図2(d2))。第二サーベルS2は、蛇腹折部47を形成する前に引き抜いておいてもよいし、蛇腹折部47が形成された後に引き抜いてもよい。
【0042】
このように、エアバッグ10は、エアバッグ本体部33が所定の細長い形状に折り畳まれる。
図4に示すインフレータ27は、ガス導入部32の挿入開口35に挿入される。折り畳まれたエアバッグ本体部33は、図示しないスリーブなどを用いて展開時の圧力で結合解除すなわち破断可能となるように折り畳み形状を保持する。このようにして、エアバッグ本体部33が細長く折り畳まれ、かつ、折畳形状が保持された状態となり、カーテンエアバッグモジュールとなるエアバッグ装置11が構成される。
【0043】
そして、上記のように折り畳まれたエアバッグ10を備えるエアバッグ装置11を車室14内に持ち込み、ヘッドライニング及びピラーガーニッシュなどの内装材が取り付けられる前に車体への取付作業を行う。この取付作業は、エアバッグ10の複数の取付部34及びテザーベルト29を図示しないボルトなどの固定具により車体に取り付け固定するとともに、インフレータ27をルーフサイド部15などに固定することにより行われる。この状態で、エアバッグ10は、好ましくは第一ロール折部45のロール中心と第二ロール折部46のロール中心とが、車幅方向に並ぶようにエアバッグ10の組み付け角度がチューニングされる。さらに、インフレータ27から導出されたハーネスを車体に備えた制御装置に接続する。次いで、車体の天井パネルにヘッドライニングを取り付けてエアバッグ装置11を覆うとともに、各ピラー21,22,23にピラーガーニッシュをそれぞれ取り付けて、エアバッグ装置11の車体への取付作業が完了する。この取付状態で、エアバッグ装置11がヘッドライニング及びピラーガーニッシュによって車室14内と隔離されるとともに、ガス導入部32に挿入されたインフレータ27と、折り畳まれたエアバッグ本体部33とが、ピラーガーニッシュの上方の位置に保持される。
【0044】
この状態で、インフレータ27をエアバッグ10から外側に露出させた状態として一体的に固定する。
【0045】
そして、車両の側面衝突あるいは横転などの際には、制御装置によりインフレータ27が作動し、このインフレータ27から噴射されるガスがガス導入部32を膨張させた後、エアバッグ本体部33内へと導入される。エアバッグ本体部33は、まず、ガス導入部32と直接連通する蛇腹折部47が下方に向かって展開して第一ロール折部45及び第二ロール折部46を下方へと押し出す(
図3(a))。次いで、蛇腹折部47からガスが導入される第二ロール折部46が徐々に下方に向かって解けながら展開し、続いて、第二ロール折部46からガスが導入される第一ロール折部45が徐々に下方に向かって解けながら展開する(
図3(b))。つまり、第二ロール折部46から第一ロール折部45へと、エアバッグ本体部33の下端部が徐々に解けていく。そのため、車室14の内方へと大きく突出したドアトリムDTの上部の車室内側の面に対し第二ロール折部46または第一ロール折部45が接触して、エアバッグ本体部33が車室14の内方に確実に位置する。そして、第一ロール折部45が解け、エアバッグ本体部33が車室14の側部に沿って車室内に面状に膨張展開し(
図3(c))、乗員を保護する。
【0046】
このように、本実施の形態によれば、エアバッグ本体部33の展開方向と交差する方向に沿って設置した第一サーベルS1によりエアバッグ本体部33の展開方向の先端側である下端側の一部をロール状に折り畳んで第一ロール折部45を形成し、第一ロール折部45の巻き終わりの位置にエアバッグ本体部33の展開方向と交差する方向に沿って設置した棒状の第二サーベルS2によりエアバッグ本体部33の残部の少なくとも一部をロール状に折り畳んで第二ロール折部46を形成することで、エアバッグ本体部33に、折り畳まれた状態で、第一ロール折部45と、この第一ロール折部45のロール中心とは異なる位置にロール中心を有する第二ロール折部46とが形成される。このため、ガス導入部32からガスがエアバッグ本体部33に導入されると、第二ロール折部46から第一ロール折部45へと徐々にロールが解ける展開モードになるので、安定した展開挙動となり、仮に側面衝突時の衝突速度及び重量が大きく、ドアトリムDTが車室内側へと大きく進入したとしても、エアバッグ本体部33の先端側つまり下端側がドアトリムDTに接触し、エアバッグ本体部33を車室内に効果的に展開させることができる。そのため、エアバッグ本体部33の下端側がドアトリムDTに確実に引っ掛かり、乗員の車外放出を効果的に防止できる。
【0047】
また、第一ロール折部45を、エアバッグ本体部33の突出部38をロール状に折り畳んで形成し、第二ロール折部46を、突出部38と連なるエアバッグ本体部33の本体膨張部37の少なくとも一部をロール状に折り畳んで形成することで、本体膨張部37から下方に突出する突出部38を有し下端側の長さが一定でなく段差状となっているエアバッグ本体部33においても、展開挙動を安定させることができる。
【0048】
第二ロール折部46と連なる本体膨張部37の残りの他部を蛇腹状に折り畳んで蛇腹折部47を形成することで、ガス導入部32からエアバッグ本体部33にガスが供給されると、蛇腹折部47が第二ロール折部46及び第一ロール折部45より先に迅速に展開し、第二ロール折部46及び第一ロール折部45を先端側つまり下方へと押し出すことができる。そのため、エアバッグ本体部33の先端側つまり下端側をドアトリムDTに対し、より確実に接触させることができ、エアバッグ本体部33を車室内により効果的に展開させることができる。
【0049】
なお、上記の一実施の形態において、第一ロール折部45の折り始めの位置(第一サーベルS1の位置)を、前後方向に対して斜めに傾斜させても、同様の作用効果を奏することができる。
【0050】
また、蛇腹折部47は、上記の他の任意の折り方によって蛇腹状に形成してよい。
【0051】
第一ロール折部45、第二ロール折部46、及び、蛇腹折部47の他に、別の折り方を加えてエアバッグ本体部33を折り畳んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、例えば自動車の側部の窓部に沿って取り付けられ展開することで乗員を保護するエアバッグ及びエアバッグ装置に適用できる。
【符号の説明】
【0053】
10 エアバッグ
32 ガス導入部
33 エアバッグ本体部
37 本体膨張部
38 突出部
45 第一ロール折部
46 第二ロール折部
47 蛇腹折部
S1 第一治具である第一サーベル
S2 第二治具である第二サーベル