(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】エアバッグ
(51)【国際特許分類】
B60R 21/206 20110101AFI20231017BHJP
B60R 21/2338 20110101ALI20231017BHJP
【FI】
B60R21/206
B60R21/2338
(21)【出願番号】P 2019227642
(22)【出願日】2019-12-17
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】佐野 圭
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-274840(JP,A)
【文献】特開2010-006374(JP,A)
【文献】特開2003-226218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/206
B60R 21/2338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の両膝部と対向する対向パネルと、この対向パネルに対し前記乗員とは反対側に位置する非対向パネルと、
これら対向パネルと非対向パネルとに挟まれて基端部に形成されガス供給手段からのガスが導入されるガス導入部と、を有し、
前記ガス導入部からのガスの導入によりこれら対向パネルと非対向パネルとが互いに離れるように膨張可能な袋状のエアバッグ本体部と、
前記対向パネルと前記非対向パネルとを前記エアバッグ本体部の内部で連結する複数の仕切り部材と、
これら仕切り部材間にて前記エアバッグ本体部の内部に形成される部材間ガス流路と、
前記仕切り部材の両側部と前記エアバッグ本体部の内壁との間に形成された外側ガス流路と、を備え、
前記対向パネルは、前記外側ガス流路と対向する位置よりも内側の領域に前記乗員の両膝部を拘束する拘束部を備え、
前記エアバッグ本体部の最も基端部側に配置される前記仕切り部材の両側に形成された前記外側ガス流路の最大流路面積は、前記部材間ガス流路の最大流路面積よりも大きい
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
仕切り部材は、外側ガス流路間の位置でガスを非通過とするように形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員の両膝部を保護するエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の座席に着席した乗員の膝などの下肢部に対向してエアバッグを展開する膝保護用エアバッグ装置であるいわゆるニーエアバッグ装置が知られている。このニーエアバッグ装置は、例えば、インストルメントパネルの、助手席前方のグローブボックスの下方、あるいは、運転席前方のステアリングコラムの下方などに配置され、ケース体の内側に、袋状のエアバッグが収納されている。そして、制御装置が車両の前方衝突などの衝撃を検出した際に、エアバッグにインフレータからガスを供給し、エアバッグをケース体から突出させ、さらにこのエアバッグをインストルメントパネルと乗員の膝部との間に膨張展開させて、乗員の下肢部を拘束して保護するようになっている。
【0003】
このようなエアバッグ装置として、エアバッグの内部に帯状のテザーが設定され、エアバッグの膨張展開形状を規制するとともにエアバッグの内部を複数の気室に仕切るものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-144840号公報 (第5-10頁、
図2-10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、テザーには、ガスを通過させる穴部が形成され、エアバッグの内部に導入されたガスを各気室に行き渡らせるようになっている。しかしながら、穴部を通過したガスにより、エアバッグが乗員の両膝部の間で膨張して乗員の両膝部を外側に開く動作をしないようにすることが望まれる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、エアバッグ本体部を乗員の両膝部の保護範囲に確実に膨張させることができるエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のエアバッグは、乗員の両膝部と対向する対向パネルと、この対向パネルに対し前記乗員とは反対側に位置する非対向パネルと、これら対向パネルと非対向パネルとに挟まれて基端部に形成されガス供給手段からのガスが導入されるガス導入部と、を有し、前記ガス導入部からのガスの導入によりこれら対向パネルと非対向パネルとが互いに離れるように膨張可能な袋状のエアバッグ本体部と、前記対向パネルと前記非対向パネルとを前記エアバッグ本体部の内部で連結する複数の仕切り部材と、これら仕切り部材間にて前記エアバッグ本体部の内部に形成される部材間ガス流路と、前記仕切り部材の両側部と前記エアバッグ本体部の内壁との間に形成された外側ガス流路と、を備え、前記対向パネルは、前記外側ガス流路と対向する位置よりも内側の領域に前記乗員の両膝部を拘束する拘束部を備え、前記エアバッグ本体部の最も基端部側に配置される前記仕切り部材の両側に形成された前記外側ガス流路の最大流路面積は、前記部材間ガス流路の最大流路面積よりも大きいものである。
【0008】
請求項2記載のエアバッグは、請求項1記載のエアバッグにおいて、仕切り部材は、外側ガス流路間の位置でガスを非通過とするように形成されているものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載のエアバッグによれば、基端部のガス導入部からエアバッグ本体部に導入されたガスによって先ず、拘束部の外側の外側ガス流路と対向する位置が膨張するので、乗員の両膝部の両側の位置を拘束部の外側の外側ガス流路と対向する位置によって規制するとともにエアバッグ本体部が両側方向に迅速に膨張し、その後に拘束部が膨張するので、エアバッグ本体部を乗員の両膝部の保護範囲に確実に膨張させることができる。
【0010】
請求項2記載のエアバッグによれば、請求項1記載のエアバッグの効果に加えて、エアバッグ本体部に導入されたガスが外側ガス流路以外の位置から先行して流れることを防止できるので、対向パネルにおいて、外側ガス流路と対向する位置よりも先に拘束部が膨張することを防止でき、乗員の両膝部間にエアバッグ本体部が膨張することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は本発明の第1の実施の形態のエアバッグを示す非膨張状態での平面図、(b)は同上エアバッグの膨張後期の状態を示す斜視図である。
【
図2】同上エアバッグの膨張初期の状態を模式的に示す断面図である。
【
図3】同上エアバッグの膨張後期の状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態のエアバッグを示す非膨張状態での平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図3において、10はエアバッグ装置である。このエアバッグ装置10は、本実施の形態において、ニーエアバッグ装置すなわち膝保護用エアバッグ装置として用いられるもので、自動車などの車両の車室12に配置され、車両が前面衝突などの衝撃を受けた際に、乗員の足元すなわち被保護部である下肢部Aに対向して展開し、乗員の下肢部Aを拘束して乗員を保護するようになっている。なお、以下、前後方向などの方向は、車体の直進方向を基準とする。すなわち、車両の前方(矢印F方向)が乗員から見てエアバッグ装置10の背後側となり、車両の後方(矢印R方向)が乗員側、すなわち乗員から見てエアバッグ装置10の手前側となる。また、上下方向は、車両を基準として上方(矢印U方向)及び下方(矢印D方向)を説明する。さらに、車幅方向が、エアバッグ装置10の両側方向すなわち左右方向である幅方向(
図1(a)などに示す矢印W方向)となる。
【0014】
エアバッグ装置10が設置される車体は、車室12内に乗員が着座可能な運転席や助手席などの座席を備えているとともに、座席の前方には、フロントガラス13と被設置部であるインストルメントパネル14とが配置されている。そして、このインストルメントパネル14の下方の下部あるいは中段部にエアバッグ装置10が配置されている。このエアバッグ装置10は、例えば助手席前方のグローブボックスの下方、あるいは、運転席前方のステアリングコラムの下方などに配置される。
【0015】
エアバッグ装置10は、収納体であるケース21を備えている。また、エアバッグ装置10は、ガス供給手段であるインフレータ22を備えている。さらに、エアバッグ装置10は、インフレータ22により供給されるガスによって膨張するエアバッグ23を備えている。そして、エアバッグ装置10は、ケース21内にエアバッグ23及びインフレータ22などが収納されて構成されている。
【0016】
ケース21は、ハウジングなどとも呼ばれるもので、エアバッグ23に対して乗員と反対側、すなわち前側に位置する収納本体部25と、エアバッグ23に対して乗員側に位置する図示しないカバー体とを備えている。そして、このケース21は、収納本体部25とカバー体との間に、収納空間部27が形成されており、この収納空間部27内にエアバッグ23が収納される。なお、このケース21としては、例えばグローブボックスを利用することも可能である。
【0017】
収納本体部25は、乗員側に開口部29を区画する箱状に形成されている。収納本体部25は、インストルメントパネル(被設置部)14の意匠面に対して、乗員とは反対側に窪んで位置している。なお、収納本体部25は、例えばグローブボックスのインナボックス部の背面でもよいし、インストルメントパネル14と一体に形成されていてもよい。すなわち、収納本体部25により、被設置部の一部が構成されていてもよい。
【0018】
開口部29は、インフレータ22からのガスの供給により膨張したエアバッグ23が突出可能な部分である。開口部29は、本実施の形態において、両側方向を長手方向とする四角形状で、乗員の下肢部Aに対向する位置に開口されている。
【0019】
カバー体は、リッド、アウタパネルなどとも呼ばれ、収納本体部25とは別体で、車室12内に露出する意匠パネルである。カバー体は、例えばインストルメントパネル14の意匠面と連結されて形成されていてもよいし、インストルメントパネル14と別体でもよい。
【0020】
インフレータ22は、例えばケース21内の最前部、かつ、底部に配置され、幅方向に沿って位置している。インフレータ22は、図示しないハーネスを介して制御装置に接続され、このハーネスを介して制御装置から供給される起動信号に基づきガスをエアバッグ23に噴射する。
【0021】
エアバッグ23は、1枚の基布を縫い合わせあるいは複数枚の基布を縫い合わせて袋状に形成されている。エアバッグ23は、インフレータ22とともにケース21に取り付けられるガス導入部31と、乗員の下肢部Aを拘束するための袋状の外殻を構成するエアバッグ本体部32とを一体的に備えている。なお、エアバッグ23には、図示しないが、膨張圧力などに対する補強用の補強布などが適宜設けられていてもよい。また、エアバッグ23は、本実施の形態では、例えば小さく折り畳まれてケース21内に収納されていてもよいし、折り畳まれずに全体にフラットな状態でケース21内に収納されていてもよい。
【0022】
ガス導入部31は、エアバッグ23の基端側を構成する基端部である。このガス導入部31には、インフレータ22が挿入される開口が設けられている。
【0023】
図1(a)及び
図1(b)に示すエアバッグ本体部32は、所定の形状に切断した1枚、あるいは複数枚の基布が縫製などにより接合された外縁の接合部34により袋状に形成されている。エアバッグ本体部32は、膨張状態で乗員の下肢部Aと対向する対向パネル35と、この対向パネル35に対し乗員とは反対側つまり乗員から見て対向パネル35の背後であるインストルメントパネル14(
図2)側に位置する非対向パネル36とを有する。そして、エアバッグ本体部32は、ガスの導入により対向パネル35と非対向パネル36とが互いに離れるように膨張可能となっている。また、エアバッグ本体部32は、上下方向よりも幅方向に広い、すなわち横長に形成されている。さらに、エアバッグ本体部32は、ガスの導入により膨張してカバー体を押しのけ、
図3に示すように、開口部29からインストルメントパネル14と乗員の下肢部Aとの間に突出するようになっている。つまり、エアバッグ本体部32は、開口部29から、インストルメントパネル14に沿って乗員側に向かい斜め上方向に傾斜するように突出する。
【0024】
対向パネル35は、乗員対向面などとも呼ばれ、
図2に示すように、少なくとも乗員の両側の下肢部Aの幅、つまり膝部A1,A1の外側間の幅よりも広い幅に形成されている。本実施の形態において、対向パネル35は、横長の四角形状に形成されている。
【0025】
非対向パネル36は、エアバッグ23による乗員拘束時にインストルメントパネル14などとの接触により、乗員の下肢部Aを拘束するためのエアバッグ23からの反力を、対向パネル35を介して乗員の下肢部Aに対して作用させるものである。
【0026】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、対向パネル35と非対向パネル36とは、複数の仕切り部材であるテザー40,41により、エアバッグ本体部32の内部で互いに連結されている。本実施の形態において、テザー40は、一方の仕切り部材(一方のテザー)であり、テザー41は、他方の仕切り部材(他方のテザー)である。
【0027】
テザー40,41は、例えば基布などにより形成されている。本実施の形態において、テザー40,41は、例えば長方形状に形成され、長辺が対向パネル35と非対向パネル36とに接合されている。テザー40,41は、対向パネル35と非対向パネル36とを前後、すなわちエアバッグ本体部32の膨張方向に連結し、エアバッグ本体部32にガスが導入されたときのこれら対向パネル35と非対向パネル36との互いに離れる方向への移動を規制している。つまり、テザー40,41は、エアバッグ本体部32のガスによる前後方向への膨張寸法を規制している。また、テザー40,41は、車幅方向に沿って、すなわち横方向に沿って配置されている。さらに、テザー40,41は、これらテザー40,41の厚み方向、すなわちエアバッグ本体部32の膨張状態で上下方向に互いに離れて配置されている。本実施の形態において、テザー40,41は、互いに平行、または略平行に配置されている。そのため、テザー40,41間にてエアバッグ本体部32の内部には、複数、本実施の形態では三つの気室45,46,47が形成される。気室45,46,47は、それぞれ車幅方向である左右方向に延びて形成されている。気室45,46,47は、第一ないし第三の気室であり、膨張状態でのエアバッグ本体部32の下側から上側に順次隣接して位置する。
【0028】
また、テザー40,41の両側部となるテザー40,41の短辺は、エアバッグ本体部32の内壁からそれぞれ離れて位置している。そのため、テザー40,41の両側部とエアバッグ本体部32の内壁との間には、外側ガス流路50がそれぞれ形成される。外側ガス流路50は、ガス導入部31、及び、気室45,46,47とそれぞれ連通している。外側ガス流路50は、気室45の両側部から気室47の両側部に亘り連なって形成されている。すなわち、外側ガス流路50,50間に、気室45,46,47が位置する。気室45,46,47は、外側ガス流路50,50間を連結するガス流路となる。特に、気室46は、テザー40,41間で外側ガス流路50,50間を連結する部材間ガス流路となる。気室46は、左右方向すなわち車幅方向に略一定の断面積で形成される。そのため、本実施の形態において、気室46のガス流路面積は、略一定である。
【0029】
また、テザー40,41には、穴部や切欠部が少なくとも両側部を除く位置には形成されていない。そのため、テザー40,41は、両側の外側ガス流路間の位置でガスを非通過とするように形成されている。
【0030】
さらに、外側ガス流路50の最大流路面積S1(
図1(b)に網掛けで示す)は、気室46の最大流路面積S2(
図1(b)に網掛けで示す)よりも大きく設定されている。本実施の形態において、テザー40はテザー41よりも両側方向の幅が小さいので、外側ガス流路50は、テザー40の側部の位置で流路面積が大きく、テザー41の側部の位置で流路面積が小さい。そのため、本実施の形態において、外側ガス流路50の最大流路面積S1は、テザー40の側部に設定されている。
【0031】
対向パネル35において、両側の外側ガス流路50,50と対向する位置が、乗員の下肢部Aの左右方向すなわち車幅方向の位置を規制する規制部35aとなっている。すなわち、規制部35aは、対向パネル35の外縁に沿って、それぞれ上下方向に沿って延びている。また、対向パネル35において、規制部35a,35aよりも内側の領域、つまり規制部35a,35a間の領域が、乗員の下肢部Aを拘束する拘束部35bとなっている。すなわち、拘束部35bは、対向パネル35において、外側ガス流路50,50間の領域である。拘束部35bは、膝衝突予定部とも呼び得るものである。拘束部35bの車幅方向の寸法、すなわち幅寸法は、対向パネル35の幅寸法から、両側の外側ガス流路50,50(規制部35a,35a)の幅寸法を引いた分となる。また、拘束部35bは、車幅方向及び上下方向に広がっており、少なくとも乗員の下肢部Aの両膝部A1,A1の外側間よりも広い幅となっている。
【0032】
そして、
図3に示すように、上記のエアバッグ装置10は、ケース21を、適宜の取付具を用いて車体のインストルメントパネル14に固定し、カバー体がインストルメントパネル14の意匠面と略面一になるように取り付けるとともに、インフレータ22に接続したハーネスを制御装置に電気的に連結し、エアバッグ装置10を車体に設置する。
【0033】
制御装置が自動車の正面衝突などの衝撃を検出すると、制御装置がハーネスを通じて起動信号である電力を供給し、インフレータ22を作動させる。そして、インフレータ22からエアバッグ23内へと、ガス導入部31からガスが供給されると、このガスは、ガス導入部31及び気室45をまず膨張させるとともに、
図1(b)及び
図2に示すように、外側ガス流路50,50に沿って流れる。このため、エアバッグ本体部32は、展開初期において、外側ガス流路50,50に対応する部分である規制部35a,35aが膨張する。本実施の形態においては、外側ガス流路50,50は、テザー40の側部の位置で流路面積が広く、テザー41の側部の位置で流路面積が狭いため、規制部35a,35aにおいて、気室45,46の位置が先に膨張する。そのため、
図2に示すように、乗員の下肢部Aの両膝部A1,A1に対して外側に位置する規制部35a,35aによって、両膝部A1,A1の左右方向の位置が規制され、両膝部A1,A1が左右に開くことがない。
【0034】
続いて、エアバッグ本体部32は、展開中期から後期において、
図1(a)及び
図1(b)の矢印に示すように、外側ガス流路50,50から気室46,47へとガスが導入されることで、
図3に示すように、下肢部Aとインストルメントパネル14との隙間に展開する。この結果、乗員の下肢部Aが対向パネル35の拘束部35bに接触すると、非対向パネル36の位置がインストルメントパネル14に接触することで、エアバッグ23が適切な反力で乗員の下肢部Aを受け止めて保護する。
【0035】
このように、第1の実施の形態によれば、テザー40,41の両側部とエアバッグ本体部32の内壁との間に形成された外側ガス流路50の最大流路面積S1を、気室46の最大流路面積S2よりも大きくし、対向パネル35の外側ガス流路50,50と対向する位置(規制部35a)よりも内側の領域を乗員の両膝部A1,A1を拘束する拘束部35bとすることで、エアバッグ本体部32に導入されたガスによって先ず、拘束部35bの外側の外側ガス流路50,50と対向する位置(規制部35a)が膨張するので、乗員の両膝部A1,A1の両側の位置を拘束部35bの外側の外側ガス流路50,50と対向する位置(規制部35a)によって規制するとともにエアバッグ本体部32が両側方向に迅速に膨張し、その後に外側ガス流路50,50からガスが流入した気室46,47に対向する拘束部35bが膨張する。そのため、小型車など、インストルメントパネル14と乗員の下肢部Aとの隙間が小さい場合でも、エアバッグ本体部32を乗員の両膝部A1,A1の保護範囲に確実に膨張させて膝保護領域を迅速に形成でき、乗員の両膝部A1,A1を適切に保護することが可能になる。
【0036】
また、テザー40,41が、外側ガス流路50,50間の位置でガスを非通過とするように形成されているため、エアバッグ本体部32に導入されたガスが外側ガス流路50,50以外の位置から先行して気室46,47へと流入することを防止できる。そのため、対向パネル35において、外側ガス流路50,50と対向する位置(規制部35a)よりも先に拘束部35bが膨張することを防止でき、乗員の両膝部A1,A1間にエアバッグ本体部32が膨張することを防止できる。
【0037】
なお、上記の第1の実施の形態において、
図4に示す第2の実施の形態のように、左右非対称、すなわちガス導入部31の左右方向の中央部の位置がエアバッグ本体部32の左右方向の中央部の位置に対して左右いずれか一方にずれていても、同様の作用効果を奏することができる。
【0038】
また、上記各実施の形態において、エアバッグ装置10は、インストルメントパネル14に配置されたものとしたが、これに限られず、例えばステアリングコラムの下方などに配置されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、例えば自動車などの車両のニーエアバッグ装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
22 ガス供給手段であるインフレータ
23 エアバッグ
31 ガス導入部
32 エアバッグ本体部
35 対向パネル
35b 拘束部
36 非対向パネル
40,41 仕切り部材であるテザー
46 部材間ガス流路となる気室
50 外側ガス流路