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特許7368226押し出しゴム部材の保持方法および空気入りタイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】押し出しゴム部材の保持方法および空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/06 20060101AFI20231017BHJP
   B29C 48/06 20190101ALI20231017BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20231017BHJP
   B29C 48/28 20190101ALI20231017BHJP
   B65H 75/38 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B29D30/06
B29C48/06
B29C48/08
B29C48/28
B65H75/38 Q
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019234341
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102297
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】小池 優
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/006350(WO,A1)
【文献】特開2001-058761(JP,A)
【文献】特開昭49-115177(JP,A)
【文献】特開2001-301056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/72
B29C 48/00-48/96
B65H 75/34-75/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
練られたゴム材料を所定の断面形状に押し出して長尺の押し出しゴム部材を形成し、
前記押し出しゴム部材をロールの外周部に巻き取って保持する
押し出しゴム部材の保持方法であって、
前記押し出しゴム部材が保持された前記ロールを、前記押し出しゴム部材を巻き取る巻き取り装置を利用して、所定回転角度、回転させ
前記押し出しゴム部材の巻き取りを、前記ロールの回転に伴って繰り出されるフィルム部材を積層しながら実施し、最終的な前記ロールの回転角度位置の変化は360度以下である、押し出しゴム部材の保持方法。
【請求項2】
前記ロールの前記回転を、当該押し出しゴム部材が所定の温度以下に低下するまでの間に実施する、
請求項1に記載の押し出しゴム部材の保持方法。
【請求項3】
前記ロールの前記回転を、前記ロールの上部と下部とが入れ替わるように実施する、
請求項1又は2に記載の押し出しゴム部材の保持方法。
【請求項4】
前記ロールの前記回転を、回転角度の合計が360度以上となるように複数回実施する、
請求項1~3のいずれか1つに記載の押し出しゴム部材の保持方法。
【請求項5】
前記ロールの前記回転を、周方向の一方側及び他方側に実施する、
請求項1~のいずれか1つに記載の押し出しゴム部材の保持方法。
【請求項6】
前記ロールの前記回転を、定期的に実施する、
請求項1~のいずれか1つに記載の押し出しゴム部材の保持方法。
【請求項7】
前記ロールを回転させるときの回転速度が、当該回転するロールが、ここに巻き取られた押し出しゴム部材に対して空転しない速度に設定されている、
請求項1~のいずれか1つに記載の押し出しゴム部材の保持方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1つに記載の押し出しゴム部材の保持方法によって保持された前記押し出しゴム部材を用いて、空気入りタイヤを製造する、空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押し出しゴム部材の保持方法および空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、押出機からゴム材料を所定の断面形状に押し出して長尺のゴム部材を形成し、押し出されたゴム部材をロールの外周部に巻き取って保持する、帯状部材の製造装置が開示されている。
【0003】
押し出し機において、ゴム材料は配合剤と共にスクリュ等によって混練され、混練に伴って温度が増大する。高温となったゴム材料は、口金から所定の断面形状を有する押し出しゴム部材に押し出される。押し出しゴム部材は、ロールの外周部に巻き取られた後、所定温度に低下するまで保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-25445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロールに巻き取られた押し出しゴム部材は、ロールの上部に位置する部分に、自重が作用して下方に引っ張られやすく、厚みが減少しやすい。特に、温度が高く変形が生じやすい状態では、ロールに巻き取られた押し出しゴム部材のうち、ロールの上部に位置する部分に厚みの減少が顕著に生じやすい。この結果、ロールから繰り出された押し出しゴム部材は厚みが不均一になりやすい。
【0006】
本発明は、ロールに巻き取られた押し出しゴム部材の厚みを、周方向にわたって均一化することができる、押し出しゴム部材の保持方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
練られたゴム材料を所定の断面形状に押し出して長尺の押し出しゴム部材を形成し、
前記押し出しゴム部材をロールの外周部に巻き取って保持する
押し出しゴム部材の保持方法であって、
前記押し出しゴム部材が保持された前記ロールを、前記押し出しゴム部材を巻き取る巻き取り装置を利用して、所定回転角度、回転させ
前記押し出しゴム部材の巻き取りを、前記ロールの回転に伴って繰り出されるフィルム部材を積層しながら実施し、最終的な前記ロールの回転角度位置の変化は360度以下である、押し出しゴム部材の保持方法を提供する。
【0008】
本発明によれば、ロールに巻き取られた押し出しゴム部材のうち、ロールの上部に位置しており自重により下方に引っ張られて厚みが減少しやすい部分が、ロールの回転に伴って変化する。これによって、押し出しゴム部材のうちロールの上部に位置する部分が周方向に変化するので、厚みの減少が特定の部分に集中することを抑制できる。したがって、ロールに巻き取られた押し出しゴム部材の厚みを、周方向にわって均一化しやすい。
また、ロールの回転に伴って巻き取られるフィルム部材の使用量の増大を抑制しやすい。
【0009】
前記ロールの前記回転を、当該押し出しゴム部材が所定の温度以下に低下するまでの間に実施してもよい。
【0010】
本構成によれば、押し出しゴム部材に変形が生じやすい相対的に温度が高いときにロールを回転させるので、押し出しゴム部材の厚みを効率的に均一化しやすい。換言すれば、厚み減少が生じにくい相対的に温度が低いときにロールを回転させることを抑制できるので省エネルギである。
【0011】
前記ロールの前記回転を、前記ロールの上部と下部とが入れ替わるように実施してもよい。
【0012】
本構成によれば、ロールに巻き取られた押し出しゴム部材のうち、厚み減少が最も生じやすいロール上部に位置する部分と、厚み減少が最も生じにくいロール下部に位置する部分とを入れ替えることによって、押し出しゴム部材の厚みをより効率的に均一化しやすい。
【0013】
前記ロールの前記回転を、回転角度の合計が360度以上となるように複数回実施してもよい。
【0014】
本構成によれば、ロールに巻き取られた押し出しゴム部材のうち、厚み減少が生じやすい部分を、周方向の複数箇所に分散させることができる。よって、押し出しゴム部材の厚みをより一層効率的に均一化しやすい。
【0017】
前記ロールの前記回転を、周方向の一方側及び他方側に実施してもよい。
【0018】
本構成によれば、ロールの回転方向を切り換えることによって、回転角度位置の変化を抑制しながら、ロールの回転角度の変化量の合計を増大させやすい。これによって、押し出しゴム部材をフィルム部材と共に巻き取っている場合には、フィルム部材の使用量の増大を抑制しつつもロールの回転角度の変化量を増大させやすい。
【0019】
前記ロールの前記回転を、定期的に実施してもよい。
【0020】
本構成によれば、ロールを定期的に回転させることによって、ロールに巻き取られた押し出しゴム部材が特定の回転角度位置に長く保持されることが抑制される。これによって、ロールに巻き取られた押し出しゴム部材のうち、特定の部分がロール上部に長時間にわたって位置することが抑制されるので、特定の部分に厚み減少が集中することを抑制しやすい。よって、ロールに巻き取られた押し出しゴム部材の厚みを均一化しやすい。
【0021】
前記ロールを回転させるときの回転速度が、当該回転するロールが、ここに巻き取られた押し出しゴム部材に対して空転しない速度に設定されていてもよい。
【0022】
本構成によれば、ロールのここに巻き取られた押し出しゴム部材に対する空転が防止されるので、押し出しゴム部材とロール間の擦れがなく、押し出しゴム部材の表面性状の変化(例えばタックの低下等)を抑制できる。
【0023】
また、本発明の他の側面によれば、上述した押し出しゴム部材の保持方法によって保持された前記押し出しゴム部材を用いて、空気入りタイヤを製造する、空気入りタイヤの製造方法を提供する。
【0024】
本発明によれば、厚みが均一化された押し出しゴム部材を用いて空気入りタイヤを製造することによって、ユニフォミティに優れた空気入りタイヤが得られる。また、トレッド部に、上記押し出しゴム部材の保持方法によって保持された押し出しゴム部材を用いることによって、トレッド部の厚みをタイヤ周方向にわたって均一化させやすく、タイヤ周方向における接地長を、タイヤ周方向において均一化させやすい。これにより、操縦安定性、乗り心地性、制動性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ロールに巻き取られた押し出しゴム部材の厚みを、周方向にわたって均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】空気入りタイヤの製造方法を示す工程図。
図2】本発明の一実施形態に係る、押し出しゴム部材の形成ラインを示す概略図。
図3】押し出しゴム部材を巻き取る巻き取り装置を示す図。
図4図3のA矢視による巻き取りロールおよびフィルムロールの正面図。
図5】巻き取りロールに巻き取られた押し出しゴム部材を示す側面図。
図6図5の状態から巻き取りロールを180度正転させた状態を示す側面図。
図7図6の状態から巻き取りロールをさらに90度正転させた状態を示す側面図。
図8図7の状態から巻き取りロールを180度逆転させた状態を示す側面図。
図9図8の状態から巻き取りロールをさらに90度逆転させた状態を示す側面図。
図10】変形例に係る巻き取りロール台車を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0028】
図1は、空気入りタイヤの製造方法を模式的に示す工程図である。タイヤ構成部材形成工程1において形成された、トレッドゴム、サイドウォールゴム、カーカスプライ、インナーライナ、ベルト等のタイヤ構成部材が、グリーンタイヤ成形工程2において成型ドラム上で組み立てられてグリーンタイヤが成形される。次いで、グリーンタイヤがタイヤ加硫工程3においてタイヤ加硫金型で加硫されて空気入りタイヤが製造される。
【0029】
以下に、タイヤ構成部材形成工程1として、トレッドゴム、サイドウォールゴム、インナーライナ等の押し出しにより形成される押し出しゴム部材の形成工程を説明する。図2は、押し出しゴム部材を形成する形成ライン5を示す配置図である。図2に示されるように、押出機10から押し出された所定断面形状を有する押し出しゴム部材50は、冷却槽7を通過した後、巻き取り装置20において巻き取りロール32に巻き取られる。
【0030】
押出機10は、ゴム材料Rが投入されるホッパ11と、ホッパ11に投入されたゴム材料Rを混練しつつ搬送するスクリュ12と、スクリュ12を駆動する駆動源13(例えばモータ)とを備えている。押出機10は、駆動源13の駆動によりスクリュ12を回転させることにより、ゴム材料Rを混練して加熱し、押出機10より押し出す。押し出されたゴム材料Rは、所定断面形状(例えば台形状)を有する長尺帯状の押し出しゴム部材50を構成する。押し出しゴム部材50は、コンベア等の搬送手段8によって搬送されて、冷却槽7を経由して巻き取り装置20に至る。
【0031】
図3は、巻き取り装置20の概略構成を示す図である。図3に示されるように、巻き取り装置20は、巻き取りロール台車30と、第1ロール駆動部21と、第2ロール駆動部22とを有している。以下の説明では、押し出しゴム部材50の搬送方向における上流側および下流側(図3における右側および左側)を、巻き取り装置20の前側および後側と称し、図3の上下方向を巻き取り装置20の上下方向と称し、上記前後方向及び上記上下方向に直交する方向を巻き取り装置20の左右方向と称する。
【0032】
巻き取りロール台車30は、本体フレーム31と、押し出しゴム部材50を巻き取る巻き取りロール32と、フィルム部材Fが巻回されたフィルムロール33と、アイドラローラ34とを有している。本体フレーム31は、巻き取りロール台車30の前端部において上方に延びる前柱部31aと、前柱部31aの上端部に接続されて後方に向かって上方に傾斜した方向に延びる第1傾斜部31bと、第1傾斜部31bの後端部に接続されて後方に向かって下方に傾斜した方向に延びる第2傾斜部31cとを有している。
【0033】
前柱部31aの下側後端面に、第1軸受35を介してフィルムロール33が左右方向に延びる軸心周りに回転自在に支持されている。第1傾斜部31bの上面に、第2軸受36を介してアイドラローラ34が左右方向に延びる軸心周りに回転自在に支持されている。第2傾斜部31cの上面に、第3軸受37を介して巻き取りロール32が左右方向に延びる軸心周りに回転自在に支持されている。
【0034】
図4は、図3のA矢視による、巻き取りロール32およびフィルムロール33の単体後面図である。図4に示されるように、巻き取りロール32は、円筒状のロール本体32aと、この左右両側部に固着された一対の円盤状のフランジ32bとを有している。フランジ32bの外径は、ロール本体32aの外径よりも大きい。押し出しゴム部材50は、一対のフランジ32bにより左右方向の位置が規制されながら、ロール本体32aの外周部に巻き取られる。
【0035】
同様に、フィルムロール33は、円筒状のロール本体33aと、この左右両側に固着された一対の円盤状のフランジ33bとを有している。フランジ33bの外径は、ロール本体33aの外径よりも大きい。フィルム部材Fは、一対のフランジ33bの間であって、ロール本体33aの外周部に巻回されている。
【0036】
図3に戻って、第1ロール駆動部21は、巻き取りロール32を所定回転角度、回転させるように構成されている。第1ロール駆動部21は、第1駆動モータ21aと、第1駆動モータ21aにより第1ベルト21bを介して駆動される第1駆動ローラ21cとを有している。第1駆動モータ21aは、所定回転角度、回転させることができるように構成されており、例えばステッピングモータを採用できる。第1駆動ローラ21cは、巻き取りロール32の一対のフランジ32bのうち一方の外周部に当接している。
【0037】
第1ロール駆動部21は、第1駆動モータ21aを回転させることにより第1駆動ローラ21cを回転させて、第1駆動ローラ21cに当接したフランジ32bを回転させることにより、巻き取りロール32を回転させる。
【0038】
同様に、第2ロール駆動部22は、フィルムロール33を所定回転角度、回転させるように構成されている。第2ロール駆動部22は、第2駆動モータ22aと、第2駆動モータ22aにより第2ベルト22bを介して駆動される第2駆動ローラ22cとを有している。第2駆動モータ22aは、所定回転角度、回転させることができるように構成されており、例えばステッピングモータを採用できる。第2駆動ローラ22cは、フィルムロール33の一対のフランジ33bのうち一方の外周部に当接している。
【0039】
第2ロール駆動部22は、第2駆動モータ22aを回転させることにより第2駆動ローラ22cを回転させて、第2駆動ローラ22cに当接したフランジ33bを回転させることにより、フィルムロール33を回転させる。
【0040】
巻き取り装置20において、冷却槽7から搬送される押し出しゴム部材50は、アイドラローラ34の外周部を介して、巻き取りロール32のロール本体32aの外周部に巻き取られる。このとき、フィルムロール33からフィルム部材Fが繰り出されて、押し出しゴム部材50の外表面側に積層されて、巻き取りロール32に巻き取られる。フィルム部材Fによって、巻き取りロール32に巻き取られた押し出しゴム部材50のうち内周側に巻回された部分とこの外周側に巻回された部分とが、互いに接触することが防止されている。
【0041】
具体的には、図3において、第1駆動モータ21aを反時計廻りに回転させることによって巻き取りロール32を時計廻りに回転させつつ、第2駆動モータ22aを時計廻りに回転させることによりフィルムロール33を反時計廻りに回転させる。このとき、冷却槽7から搬送される押し出しゴム部材50の搬送量に、巻き取りロール32による回転量とフィルムロール33による回転量とが等しくなるように、第1駆動モータ21a及び第2駆動モータ22aの回転量がそれぞれ設定されている。
【0042】
図5は、巻き取りロール32に、1ロット分(例えば空気入りタイヤ20本分のトレッドゴムに相当する長さ)の押し出しゴム部材50が巻き取られた状態が示されている。図5において、第1駆動ローラ21c及び第2駆動ローラ22cが仮想線で併せて示されている。また、1ロット分の押し出しゴム部材50が巻き取られた後、この外周部にフィルム部材Fがさらに数周巻き取られている。
【0043】
ここで、以下の説明では、巻き取りロール32に巻き取られた押し出しゴム部材50のうち、巻き終わり部分を第1部分51とし、ここから時計廻りに90度変化した部分を第2部分52、さらに時計廻りに90度変化した部分を第3部分53、さらに時計廻りに90度変化した部分を第4部分54とする。図5に示す状態では、第1部分51が上端部に位置するように、巻き取りロール32の回転角度位置が調整されている。以下、本実施形態に係る押し出しゴム部材の保持方法について説明する。
【0044】
巻き取りロール32に巻き取られた押し出しゴム部材50は、温度が所定温度(例えば35度)以下に低下するまで、巻き取りロール32に巻き取られた状態で保持され、この工程をエージング工程と称する。図5は、押し出しゴム部材50が巻き取りロール32に巻き取られた初期状態が示されている。押し出しゴム部材50は、エージング工程の後、グリーンタイヤ成形工程2(図1参照)に供給される。
【0045】
図5に示す初期状態では、押し出しゴム部材50のうち巻き取りロール32の上部に位置する第1部分51には、残余の部分の重量が作用するため周方向両側に引っ張られて厚みが減少しやすい。さらに、第1部分51のなかでも径方向内側に位置する巻き初め部分51aには、この外径側に複数周巻回された押し出しゴム部材50の重量が作用して、該重量とロール本体32aとの間で挟まれるため、厚みが特に減少しやすい。
【0046】
一方、押し出しゴム部材50のうち巻き取りロール32の下端部に位置する第3部分53には残余の部分の重力が作用することがなく周方向両側に引っ張られることがないので、厚みが減少しにくい。また、巻き取りロール32に巻き取られた押し出しゴム部材50のうち、巻き取りロール32の前後両側に位置する第2部分52及び第4部分54は、この下方に位置する部分の重量が作用するものの、該重量は第1部分51に作用する重量よりも小さく且つ第2部分及び第4部分は周方向の両側に引っ張られることがないので、第1部分51ほど厚みが減少しにくい。
【0047】
本実施形態では、押し出しゴム部材50の温度が高く、該温度に起因して変形が生じやすいエージング工程中において、巻き取りロール32は、所定回転角度、回転されるようになっている。これにより、厚みが減少しやすい部分が、特定の部分すなわち第1部分51に集中するのが防止される。巻き取りロール32の回転角度の変更は、定期的に実施され、例えば10分に1回の頻度で実施される。
【0048】
例えば、図6に示されるように、第1駆動ローラ21cを反時計廻りに回転させるとともに、第2駆動ローラ22cを時計廻りに回転させることによって、図中”回転1”の矢印で示すように、巻き取りロール32を180度、時計回りに回転(正転)させている。このとき、フィルム部材Fはさらに繰り出されて、巻き取りロール32に180度分、巻回される。
【0049】
これによって、第1部分51が巻き取りロール32のうち下端部に位置するとともに、第3部分53が巻き取りロール32のうち上端部に位置するようになる。すなわち、巻き取りロール32に巻き取られた押し出しゴム部材50の上部と下部とが入れ替わる。よって、厚みが薄くなりやすい部分が、第1部分51から第3部分53に入れ替わる。
【0050】
さらに、図7に示されるように、第1駆動ローラ21cを反時計回りに回転させるとともに、第2駆動ローラ22cを時計廻りに回転させることによって、図中”回転2”の矢印で示すように、巻き取りロール32をさらに90度、時計廻りに回転(正転)させている。このとき、フィルム部材Fはさらに繰り出されて、巻き取りロール32に90度分、巻回される。
【0051】
この結果、第2部分52が巻き取りロール32のうち上端部に位置するともに、第4部分54が巻き取りロール32のうち下端部に位置するようになる。よって、厚みが薄くなりやすい部分が、第3部分53から第2部分52に入れ替わる。
【0052】
さらに、図8に示されるように、第1駆動ローラ21cを時計廻りに回転させるとともに、第2駆動ローラ22cを反時計回りに回転させることによって、図中”回転3”の矢印で示すように、巻き取りロール32を180度、反時計廻りに回転(逆転)させている。このとき、フィルム部材Fは巻き取りロール32から180度分、繰り出されて、フィルムロール33に巻き取られる。
【0053】
この結果、第4部分54が巻き取りロール32のうち上端部に位置するとともに、第2部分52が巻き取りロール32のうち下端部に位置するようになる。すなわち、厚みが薄くなりやすい部分が、第2部分52から第4部分54に入れ替わる。
【0054】
さらにまた、図9に示されるように、第1駆動ローラ21cを時計廻りに回転させるとともに、第2駆動ローラ22cを反時計回りに回転させることによって、図中”回転4”の矢印で示すように、巻き取りロール32を90度、反時計廻りに回転(逆転)させている。このとき、フィルム部材Fは巻き取りロール32から90度分、繰り出されて、フィルムロール33に巻き取られる。
【0055】
この結果、第1部分51が巻き取りロール32のうち上端部に位置するとともに、第3部分53が巻き取りロール32のうち下端部に位置するようになる。すなわち、押し出しゴム部材50が、巻き取りロール32に巻き取られた最初の状態に戻る。
【0056】
したがって、図5に示す初期状態から、図6図9に示すように巻き取りロール32を所定回転角度、回転させることによって、厚みが薄くなりやすい部分が、第1部分51、第3部分53、第2部分52、および第4部分54へと変化する。これによって、厚みが薄くなりやすい部分が特定の部分に集中することを抑制しつつ、周方向の複数箇所に分散させることができる。以降、巻き取りロール32を、図6図9に示される各回転位置に、定期的に回転させてもよい。例えば、10分ごとに回転位置を変化させてもよい。
【0057】
また、エージング工程における巻き取りロール32の回転速度は、当該巻き取りロール32に巻き取られた押し出しゴム部材50に対して空転しない速度に設定されている。例えば、巻き取りロール32の回転速度は、ロール本体32aの外周部における周速が10m/min以下となるように設定されている。
【0058】
上記説明した押し出しゴム部材の保持方法によれば、次のような効果が得られる。
【0059】
(1)巻き取りロール32に巻き取られた押し出しゴム部材50のうち、巻き取りロール32の上部に位置しており自重により下方に引っ張られて厚みが減少しやすい部分が、巻き取りロール32の回転に伴って変化する。これによって、押し出しゴム部材50のうち巻き取りロール32の上部に位置する部分が周方向に変化するので、厚みの減少が特定の部分に集中することを抑制できる。したがって、巻き取りロール32に巻き取られた押し出しゴム部材50の厚みを、周方向にわって均一化しやすい。
【0060】
(2)巻き取りロール32は、エージング工程中に、所定角度、回転される。この結果、押し出しゴム部材50に変形が生じやすい相対的に温度が高いときに巻き取りロール32を回転させるので、押し出しゴム部材50の厚みを効率的に均一化しやすい。換言すれば、厚み減少が生じにくい相対的に温度が低いときに巻き取りロール32を回転させることを抑制できるので省エネルギである。
【0061】
(3)巻き取りロール32は、当該巻き取りロール32の上部と下部とが入れ替わるよう回転される。この結果、巻き取りロール32に巻き取られた押し出しゴム部材50のうち、厚み減少が最も生じやすい巻き取りロール32の上部に位置する部分(例えば第1部分51)と、厚み減少が最も生じにくい巻き取りロール32の下部に位置する部分(例えば第3部分)とを入れ替えることによって、押し出しゴム部材50の厚みをより効率的に均一化しやすい。
【0062】
(4)巻き取りロール32を、回転角度の合計が360度以上となるように複数回、回転される。この結果、巻き取りロール32に巻き取られた押し出しゴム部材50のうち、厚み減少が生じやすい部分を、周方向の複数箇所に分散させることができる。よって、押し出しゴム部材50の厚みをより一層効率的に均一化しやすい。
【0063】
(5)押し出しゴム部材50の巻き取りを、巻き取りロール32の回転に伴って繰り出されるフィルム部材Fを積層しながら実施し、最終的な巻き取りロール32の回転角度位置の変化は360度以下である。この結果、巻き取りロール32の回転に伴って巻き取られるフィルム部材Fの使用量の増大を抑制しやすい。
【0064】
(6)巻き取りロール32を、複数回、回転させる場合、正転および逆転を組み合わせて回転させる。この結果、巻き取りロール32の回転方向を切り換えることによって、回転角度位置の変化を抑制しながら、巻き取りロール32の回転角度の変化量の合計を増大させやすい。これによって、押し出しゴム部材50をフィルム部材Fと共に巻き取っている場合、フィルム部材Fの使用量の増大を抑制しつつも巻き取りロール32の回転角度の変化量を増大させやすい。
【0065】
(7)エージング工程において、巻き取りロール32を定期的に回転させることによって、巻き取りロール32に巻き取られた押し出しゴム部材50が特定の回転角度位置に長く保持されることが抑制される。これによって、巻き取りロール32に巻き取られた押し出しゴム部材50のうち、特定の部分が巻き取りロール32の上部に長時間にわたって位置することが抑制されるので、特定の部分に厚み減少が集中することを抑制しやすい。よって、巻き取りロール32に巻き取られた押し出しゴム部材50の厚みを均一化しやすい。
【0066】
(8)巻き取りロール32を回転させるときの回転速度が、当該回転する巻き取りロール32が、ここに巻き取られた押し出しゴム部材50に対して空転しない速度に設定されている。この結果、巻き取りロール32のここに巻き取られた押し出しゴム部材50に対する空転が防止されるので、押し出しゴム部材50と巻き取りロール32との間の擦れがなく、押し出しゴム部材50の表面性状の変化(例えばタックの低下等)を抑制できる。
【0067】
(9)上記方法によって保持された押し出しゴム部材50を用いて、空気入りタイヤを製造する。厚みが均一化された押し出しゴム部材50を用いて空気入りタイヤを製造することによって、ユニフォミティに優れた空気入りタイヤが得られる。また、トレッド部に、上記押し出しゴム部材の保持方法によって保持された押し出しゴム部材50としてのトレッドゴムを用いることによって、トレッド部の厚みをタイヤ周方向にわたって均一化させやすく、タイヤ周方向における接地長を、タイヤ周方向において均一化させやすい。これにより、操縦安定性、乗り心地性、制動性を向上させることができる。
【0068】
上記実施形態では、巻き取りロール32およびフィルムロール33を回転させるのに、巻き取り装置20に設けられた第1ロール駆動部21及び第2ロール駆動部22を利用したが、これに限らない。例えば、巻き取りロール台車30を、巻き取り装置20から取り出して、他の装置により巻き取りロール32およびフィルムロール33を回転駆動するようにしてもよい。また、図10に示されるように、巻き取りロール台車30自体に、第1ロール駆動部210及び第2ロール駆動部220を設けて、直接に巻き取りロール32およびフィルムロール33を回転駆動するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、エージング工程において、巻き取りロール32を定期的に回転させるようにしたが、ランダムに回転させてもよい。例えば、巻き取りロール32に巻き取られた押し出しゴム部材50の温度が相対的に高いときには、相対的に短いインターバルで回転角度を変更するようにしてもよく、押し出しゴム部材50の温度が低下するにつれて、回転角度を変更するインターバルを長くしてもよい。これによって、温度が高く相対的に変形しやすいときに、1つの回転角度位置で長く保持されるのを抑制しつつ、温度が低下し相対的に変形しにくいときには、無駄に回転されることが防止される。この他、巻き取りロール32を連続的に回転させるようにしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、押し出しゴム部材50のうち、巻き終わり位置を第1部分51として、当該第1部分51が初期状態で巻き取りロール32の上部に位置する場合を例にとって説明したが、これに限らず、押し出しゴム部材50の巻き終わり位置が任意の角度位置に位置するようにしてよい。また、上記実施形態では、90度ごとに画定された角度位置間で、角度位置を変化させるようにしたがこれに限らず、任意の角度位置間で角度位置を変化させるようにしてもよい。また、上記実施形態では、トレッドゴムを例にとって説明したがこれに限らず、サイドウォール、インナーライナ等、他の押し出しゴム部材にも好適に適用できる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 押出機
20 巻き取り装置
21 第1ロール駆動部
21c 第1駆動ローラ
22 第2ロール駆動部
22c 第2駆動ローラ
30 巻き取りロール台車
32 巻き取りロール
32a ロール本体
32b フランジ
33 フィルムロール
33a ロール本体
33b フランジ
50 押し出しゴム部材
51~54 第1~第4部分
F フィルム部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10