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特許7368229車両用アシストグリップ及び車両用アシストグリップの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】車両用アシストグリップ及び車両用アシストグリップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/02 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
B60N3/02 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019236376
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104719
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】西原 重臣
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-126623(JP,A)
【文献】特開2001-252148(JP,A)
【文献】特開平04-284921(JP,A)
【文献】特開平09-002127(JP,A)
【文献】米国特許第04357734(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/02
B21D 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のグリップ芯材を有する車両用アシストグリップであって、
前記グリップ芯材は、略U字状の芯材本体部を含み、
略U字状の前記芯材本体部における底部の内周部は、前記グリップ芯材の一般部分に対して金属組織が密になる密組織部を有し、
前記芯材本体部は、中央部に配されるグリップ部と、前記グリップ部の一端部及び他端部からそれぞれ湾曲して延在する第1湾曲部及び第2湾曲部と、前記第1湾曲部及び前記第2湾曲部からそれぞれ延在する第1脚部及び第2脚部とを有し、
前記密組織部は、前記グリップ部、前記第1湾曲部、及び前記第2湾曲部の各内周部に設けられている
ことを特徴とする車両用アシストグリップ。
【請求項2】
前記芯材本体部における前記底部の外周部は、前記グリップ芯材の前記一般部分に対して金属組織が粗になる粗組織部を有する請求項1記載の車両用アシストグリップ。
【請求項3】
前記グリップ芯材の前記一般部分に対して金属組織が粗になる粗組織部が、前記グリップ部、前記第1湾曲部、及び前記第2湾曲部の各外周部に設けられている請求項記載の車両用アシストグリップ。
【請求項4】
金属製のグリップ芯材を有する車両用アシストグリップを製造する製造方法であって、
前記グリップ芯材の略U字状の芯材本体部を形成する芯材形成工程を含み、
前記芯材形成工程は、
一方の方向から平面にして見たときに、第1方向へ向けて略凸状に湾曲する中央曲がり部と、前記中央曲がり部の一端部及び他端部から延在するとともに、前記第1方向の反対向きとなる第2方向へ向けて略凸状に湾曲する第1外側曲がり部及び第2外側曲がり部とを有する一次部材を金属製の板材から打ち抜く工程、及び
前記一次部材における前記中央曲がり部を前記第2方向へ向けて押圧するとともに、前記第1外側曲がり部の先端部分と前記第2外側曲がり部の先端部分とを、前記第1外側曲がり部の内周側及び前記第2外側曲がり部の内周側に向けて押圧する工程
を有することを特徴とする車両用アシストグリップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製のグリップ芯材を有する車両用アシストグリップ、及び車両用アシストグリップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室には、一般的に、乗員の乗降時や乗車状態での体勢を保持するために乗員が把持するアシストグリップが、助手席や後部座席におけるドア開口部の上方などに設置されている。また、アシストグリップの中には、乗員が衝突した際に、その衝撃を吸収する構造を備えたものが知られている。
【0003】
例えば特開2006-160075号公報(特許文献1)に記載されているアシストグリップでは、アシストグリップを形成するグリップ芯材の延出端部に、断面U字形状の係合部が設けられている。また、アシストグリップが取り付けられるインナパネルには、断面L字形状の取付座が固定されている。この取付座に、グリップ芯材の延出端部に設けた係合部が係合することにより、アシストグリップがインナパネルに固定される。
【0004】
この特許文献1のアシストグリップでは、グリップ部に車内側から車外側へ向けて押圧力が加えられると、グリップ芯材の係合部と取付座との係合状態が解除されて衝突エネルギーを吸収できるため、乗員への衝撃を緩和することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-160075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されているアシストグリップは、グリップ芯材の形状及び係合構造が複雑である。このため、アシストグリップの製造工程が煩雑となり、歩留まりの低下や、製造コストの増大を招いていた。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、安価に提供することが可能で、また、通常の使用に対する強度を確保することが可能なアシストグリップ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明により提供される車両用アシストグリップは、金属製のグリップ芯材を有する車両用アシストグリップであって、前記グリップ芯材は、略U字状の芯材本体部を含み、略U字状の前記芯材本体部における底部の内周部は、前記グリップ芯材の一般部分に対して金属組織が密になる密組織部を有し、前記芯材本体部は、中央部に配されるグリップ部と、前記グリップ部の一端部及び他端部からそれぞれ湾曲して延在する第1湾曲部及び第2湾曲部と、前記第1湾曲部及び前記第2湾曲部からそれぞれ延在する第1脚部及び第2脚部とを有し、前記密組織部は、前記グリップ部、前記第1湾曲部、及び前記第2湾曲部の各内周部に設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る車両用アシストグリップにおいて、前記芯材本体部における前記底部の外周部は、前記グリップ芯材の前記一般部分に対して金属組織が粗になる粗組織部を有することが好ましい。
【0011】
この場合、前記グリップ芯材の前記一般部分に対して金属組織が粗になる粗組織部が、前記グリップ部、前記第1湾曲部、及び前記第2湾曲部の各外周部に設けられていることが好ましい。
【0012】
次に、本発明により提供される車両用アシストグリップの製造方法は、金属製のグリップ芯材を有する車両用アシストグリップを製造する製造方法であって、前記グリップ芯材の略U字状の芯材本体部を形成する芯材形成工程を含み、前記芯材形成工程は、一方の方向から平面にして見たときに、第1方向へ向けて略凸状に湾曲する中央曲がり部と、前記中央曲がり部の一端部及び他端部から延在するとともに、前記第1方向の反対向きとなる第2方向へ向けて略凸状に湾曲する第1外側曲がり部及び第2外側曲がり部とを有する一次部材を金属製の板材から打ち抜く工程、及び、前記一次部材における前記中央曲がり部を前記第2方向へ向けて押圧するとともに、前記第1外側曲がり部の先端部分と前記第2外側曲がり部の先端部分とを、前記第1外側曲がり部の内周側及び前記第2外側曲がり部の内周側に向けて押圧する工程を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両用アシストグリップ及びその製造方法によれば、グリップ芯材の略U字状の芯材本体部が簡単な構造で形成されているとともに歩留まりの向上が図れるため、アシストグリップを安価に提供できる。また、略U字状の芯材本体部における底部の内周部に密組織部が設けられているため、通常の使用に対して適切な強度を安定して確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るアシストグリップを模式的に示す斜視図である。
図2図1に示したII-II線における断面を模式的に示す断面図である。
図3図1に示したアシストグリップのグリップ芯材を模式的に示す斜視図である。
図4】グリップ芯材の密組織部及び粗組織部を説明する模式図である。
図5】本発明の実施形態において板材から一次部材を打ち抜く打ち抜きを説明する模式図である。
図6】一次部材からグリップ芯材への変形を模式的に説明する説明図である。
図7】板材からグリップ芯材を打ち抜く打ち抜きを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。例えば、以下の実施形態に係るアシストグリップは、自動車におけるドア開口部の上方に設置されるものであるが、アシストグリップの設置位置は特に限定されるものではない。また、アシストグリップを自動車に取り付ける方法も特に限定されない。
【0016】
図1は、本実施形態に係るアシストグリップを模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示したII-II線における断面を模式的に示す断面図である。図3は、アシストグリップのグリップ芯材を模式的に示す斜視図である。
【0017】
本実施形態のアシストグリップ1は、自動車における助手席又は後部座席のドア開口部の上方に設置されるものである。このアシストグリップ1は、略U字状の把持部2と、把持部2の一端部及び他端部に設けられた第1取付端部3及び第2取付端部4と、把持部2と第1取付端部3及び第2取付端部4との境界部に設けられる第1フランジ部5及び第2フランジ部6とを有する。このアシストグリップ1は、図示しない取付金具(ボルト等)を、第1取付端部3及び第2取付端部4にそれぞれ設けた貫通孔部7に挿通させるとともに、図示しない車体に設けた被取付部に固定することによって、自動車に取り付けられる。
【0018】
アシストグリップ1は、グリップ芯材10と、そのグリップ芯材10を覆う外皮部20とを有する。この場合、グリップ芯材10は、鉄などの金属で形成されており、外皮部20は、エラストマー又は軟質の合成樹脂で形成されている。なお、外皮部20の材質は特に限定されず、また、グリップ芯材10の材質は、金属であれば限定されない。
【0019】
外皮部20は、グリップ芯材10の第1取付端部3及び第2取付端部4を形成する部分を除いてグリップ芯材10を被覆している。また、外皮部20は、グリップ芯材10を被覆する部分において、図2に示すように、グリップ芯材10が露出しないようにグリップ芯材10を内側に包み込むように被覆している。また、外皮部20により、上述したアシストグリップ1の第1フランジ部5及び第2フランジ部6が形成されている。なお本発明において、外皮部20は、グリップ芯材10の少なくとも一部を被覆していればよい。
【0020】
グリップ芯材10は、略U字状の芯材本体部11を有する。本実施形態の場合、グリップ芯材10は、略U字状の芯材本体部11により形成されているが、本発明では、芯材本体部11の両端部に、例えば断面U字形状の係合部などのその他の形態が付加されていてもよい。
【0021】
本実施形態の芯材本体部11は、図3に示すように、中央部に配されるグリップ部12と、グリップ部12の一端部及び他端部からそれぞれ湾曲して延在する第1湾曲部13及び第2湾曲部14と、第1湾曲部13及び第2湾曲部14からそれぞれ延在する第1脚部15及び第2脚部16とを有する。この場合、芯材本体部11の第1脚部15及び第2脚部16に、アシストグリップ1の上述した第1取付端部3及び第2取付端部4が設けられている。
【0022】
グリップ部12は、U字状の芯材本体部11を一方の方向から平面にして見たときに(図4を参照)、人が握り易いように緩やかに湾曲する形態を有する。第1湾曲部13及び第2湾曲部14は、グリップ部12と、第1脚部15及び第2脚部16との間を連結する屈曲した部分である。本実施形態の場合、第1脚部15及び第2脚部16は、上述した平面視において、グリップ部12と第1脚部15又は第2脚部16との間の内周側の角度θ1が、45°以上の角度、好ましくは60°以上の角度となるように形成されている。第1脚部15及び第2脚部16は、第1湾曲部13及び第2湾曲部14からそれぞれ略真直ぐに延在して形成されている。
【0023】
略U字状の芯材本体部11において、U字状の底部17における内周部は、グリップ芯材10の一般部分に対し、グリップ芯材10の製造方法の後述する押圧工程において、圧縮される方向の変形を受けることにより金属組織が密になる密組織部を有する。
【0024】
ここで、U字状の底部17とは、例えば図4に示すように、芯材本体部11における第1脚部15と第1湾曲部13の境界部又はその近傍から、第2脚部16と第2湾曲部14の境界部又はその近傍までの部分を言う。芯材本体部11の内周部とは、例えば図4において、芯材本体部11のU字状に延在する方向に沿って配される一対の側縁部のうち、内周面を含む側の側縁部を言い、又は、一対の前記側縁部のうち、短い方の側縁部を言う。また、芯材本体部11の外周部とは、一対の前記側縁部のうち、外周面を含む側の側縁部、又は、長い方の側縁部を言う。
【0025】
グリップ芯材10の一般部分とは、製造方法の押圧工程において、変形を実質的に受けない部分を言い、本実施形態の場合、例えばグリップ芯材10における第1取付端部3及び第2取付端部4を形成する部分が、グリップ芯材10の押圧工程で変形を受けない一般部分となる。なお、グリップ芯材10の一般部分は、グリップ芯材10の第1取付端部3及び第2取付端部4に限定されるものではない。
【0026】
特に本実施形態において、金属組織が密になる密組織部は、U字状の芯材本体部11におけるグリップ部12の内周部と、第1湾曲部13の内周部と、第2湾曲部14の内周部とに設けられている。言い換えると、芯材本体部11の密組織部は、図4に示すように、グリップ部12の内周部に設けられる第1密組織部31と、第1湾曲部13の内周部に設けられる第2密組織部32と、第2湾曲部14の内周部に設けられる第3密組織部33とを有する。
【0027】
このように芯材本体部11の内周部に密組織部が意図的に設けられていることによって、芯材本体部11における内周部の剛性を高めることができる。それにより、芯材本体部11は、例えば把持部2のグリップ部12の部分を把持してグリップ部12の内周側から外周側に向けて加えられる力に対し、高い強度を有することが可能となる。
【0028】
また、この芯材本体部11において、U字状の底部17における外周部は、グリップ芯材10の一般部分に対し、グリップ芯材10の製造方法の押圧工程において、引っ張られる方向の変形を受けることにより金属組織が粗になる粗組織部を有する。特に本実施形態において、金属組織が粗になる粗組織部は、U字状の芯材本体部11におけるグリップ部12の外周部と、第1湾曲部13の外周部と、第2湾曲部14の外周部とに設けられている。言い換えると、芯材本体部11の粗組織部は、図4に示すように、グリップ部12の外周部に設けられる第1粗組織部41と、第1湾曲部13の外周部に設けられる第2粗組織部42と、第2湾曲部14の外周部に設けられる第3粗組織部43とを有する。
【0029】
この場合、芯材本体部11の内周部に設けられる上述した密組織部(第1密組織部31~第3密組織部33)は、芯材本体部11の外周部に設けられる上述した粗組織部(第1粗組織部41~第3粗組織部43)よりも金属組織が密に形成されている。
【0030】
このように芯材本体部11の外周部に粗組織部が意図的に設けられていることによって、例えば芯材本体部11のグリップ部12が、例えばグリップ部12の外周側から内周側に向く方向の外力などを受けた場合、グリップ部12をその外力に従った方向に撓ませ易くすることが可能となる。
【0031】
次に、上述した実施形態に係るアシストグリップ1を製造する方法について説明する。
先ず、図3及び図4に示したグリップ芯材10(芯材本体部11)を形成する芯材形成工程を行う。この芯材形成工程では、始めに、図5に示したように、所定の肉厚を有する金属製の平板状の板材50に対して打ち抜き加工を行うことによって、その板材50から一次部材51を打ち抜く第1工程(打ち抜き工程)を行う。
【0032】
この第1工程において、板材50から打ち抜かれる一次部材51は、一次部材51を一方の方向から平面にして見たときに(図5及び図6を参照)、上側(第1方向)へ向けて略凸状に湾曲する中央曲がり部52と、中央曲がり部52の一端部及び他端部から延在するとともに、下側(第1方向の反対向きとなる第2方向)へ向けて略凸状に湾曲する第1外側曲がり部53及び第2外側曲がり部54とを有する。このため、1つの一次部材51は、波打つように略W字状に湾曲した形状を有する。
【0033】
上述のような形状を有する複数の一次部材51を、図5に示すように1つの平板状の板材50から打ち抜くことによって、例えば図4に示した複数のグリップ芯材10をそのままの形状で平板状の板材50から打ち抜く場合(図7を参照)に比べて、より面積の小さい1つの板材50から所定個数の一次部材51を打ち抜くことができる。これにより、廃材量を減らして、グリップ芯材10の歩留まりを容易に向上させることができるため、グリップ芯材10の製造コストを低減できる。
【0034】
上述の第1工程で一次部材51を打ち抜いた後、図6に示すように、得られた一次部材51に対してプレス加工(押圧)を行って一次部材51を塑性変形させる第2工程(押圧工程)を行う。
この第2工程では、一次部材51の中央曲がり部52を、矢印61で示すように下側(第2方向)へ向けて押圧するとともに、第1外側曲がり部53の先端部分と第2外側曲がり部54の先端部分とを、それぞれ矢印62で示すように第1外側曲がり部53の内周側及び第2外側曲がり部54の内周側に向けてそれぞれ押圧する。
【0035】
このようなプレス加工を行うことによって、中央曲がり部52の凸状に湾曲する上側(内周側)の側縁部52aが圧縮する方向に変形するとともに、中央曲がり部52の凹状に湾曲する下側(外周側)の側縁部52bが引っ張られる方向に変形する。また、第1外側曲がり部53及び第2外側曲がり部54における凹状の上側(内周側)の側縁部53a,54aが圧縮する方向に変形するとともに、凸状の下側(外周側)の側縁部53b,54bが引っ張られる方向に変形する。
【0036】
これにより、中央曲がり部52は、下側に緩やかに湾曲する形態に塑性変形するとともに、第1外側曲がり部53及び第2外側曲がり部54は、それぞれの先端部分が互いに略平行な方向に向くように塑性変形し、その結果、図4に示した形状を備えた芯材本体部11を円滑に作製することができる。
【0037】
またこのとき、作製された芯材本体部11の内周部には、上述した圧縮方向の変形により、例えば押圧工程で実質的に変形しない第1取付端部3及び第2取付端部4に比べて金属組織が密に形成される上述した密組織部(第1密組織部31~第3密組織部33)が設けられる。また、芯材本体部11の外周部には、上述した引っ張り方向の変形により、第1取付端部3及び第2取付端部4に比べて金属組織が粗に形成される上述した粗組織部(第1粗組織部41~第3粗組織部43)が設けられる。
【0038】
その後、得られたグリップ芯材10を用いて、エラストマー又は軟質の合成樹脂のインサート成形を行うことによって、図1に示した本実施形態のアシストグリップ1が製造される。
以上のような方法によってアシストグリップ1の製造を行うことにより、アシストグリップ1(特に、グリップ芯材10)を簡単な形状で形成できるため、製品の不良率を低減できるとともに、上述したように歩留まりの向上を実現できる。従って、アシストグリップ1の製造コストを削減して、安価なアシストグリップ1を提供することができる。
【0039】
そして、製造された本実施形態のアシストグリップ1では、グリップ芯材10の内周部に第1密組織部31~第3密組織部33が設けられているため、上述したように、グリップ芯材10における内周部の剛性を高めることができる。それにより、本実施形態のアシストグリップ1は、例えば車両に取り付けられている状態において、把持部2が握られて第1取付端部3及び第2取付端部4から離れる方向への力(例えば図4の紙面における下方向への力)を受ける場合、その力の荷重に対して高い強度を有することができる。従って、本実施形態のアシストグリップ1は、自動車におけるアシストグリップ1の通常の使用において安定した強度を確保できる。
【0040】
また本実施形態のアシストグリップ1では、上述した第1密組織部31~第3密組織部33が設けられているとともに、グリップ芯材10の外周部に第1粗組織部41~第3粗組織部43が設けられているため、グリップ芯材10(特に、グリップ部12)を、例えば上述した一次部材51の形状に戻る方向や、一次部材51の形状に近付く方向に撓ませ易くすることができる。すなわち、グリップ芯材10のグリップ部12が、例えばグリップ部12の外周側から内周側に向く方向の外力や、第1脚部15及び第2脚部16に対して交差する方向の外力を受けた場合に、グリップ部12をその外力に従った方向に撓ませ易くすることができる。
【0041】
従って、本実施形態のアシストグリップ1は、例えば車両に取り付けられている状態において、アシストグリップ1の把持部2が、例えば自動車の衝突時等に車室内側から車外に向かう方向の衝撃(衝撃荷重)を受けた場合や、車体に接近する方向の衝撃(衝撃荷重)を受けた場合に、アシストグリップ1の把持部2をその衝撃を受け止めるように撓ませ易くすることができる。それにより、本実施形態のアシストグリップ1は、衝撃を効果的に吸収して緩和できるため、優れた衝撃吸収効果を発揮することが可能となる。
【符号の説明】
【0042】
1 アシストグリップ
2 把持部
3 第1取付端部
4 第2取付端部
5 第1フランジ部
6 第2フランジ部
7 貫通孔部
10 グリップ芯材
11 芯材本体部
12 グリップ部
13 第1湾曲部
14 第2湾曲部
15 第1脚部
16 第2脚部
17 底部
20 外皮部
31 第1密組織部
32 第2密組織部
33 第3密組織部
41 第1粗組織部
42 第2粗組織部
43 第3粗組織部
50 板材
51 一次部材
52 中央曲がり部
52a 中央曲がり部の凸状に湾曲する上側(内周側)の側縁部
52b 中央曲がり部の凹状に湾曲する下側(外周側)の側縁部
53 第1外側曲がり部
53a 第1外側曲がり部における凹状の上側(内周側)の側縁部
53b 第1外側曲がり部における凸状の下側(外周側)の側縁部
54 第2外側曲がり部
54a 第2外側曲がり部における凹状の上側(内周側)の側縁部
54b 第2外側曲がり部における凸状の下側(外周側)の側縁部
61,62 矢印
θ1 グリップ部と第1脚部又は第2脚部との間の内周側の角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7