(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】可搬型打撃装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/06 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
E04G21/06
(21)【出願番号】P 2020001460
(22)【出願日】2020-01-08
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝識
(72)【発明者】
【氏名】小島 秋
(72)【発明者】
【氏名】井手 一雄
(72)【発明者】
【氏名】石田 純平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 直希
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-264259(JP,A)
【文献】特開2011-214845(JP,A)
【文献】国際公開第2017/217033(WO,A1)
【文献】特開平07-260630(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0074830(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/00-21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート型枠を打撃する打撃部と、
前記打撃部を往復直線移動させる駆動部と、
前記打撃部及び前記駆動部を収容し、かつ、作業者が携帯可能な筐体とを有し、
前記打撃部が前記筐体の前面部の前面開口から出没する可搬型打撃装置であって、
前記前面部から突設され、前記コンクリート型枠に当接することで前記コンクリート型枠に対して前記打撃部の移動方向を直交させ、かつ、前記打撃部の移動方向において前記コンクリート型枠に対する前記前面部の位置決めを行なう当接部と、
前記前面部に前記打撃部の移動方向と平行する方向に移動可能に設けられると共に前記前面部から突出する方向に付勢され前記コンクリート型枠に当接可能な可動体と、
前記可動体に一体的に設けられた加速度センサと、
前記加速度センサで検出される加速度信号に基づいて前記コンクリート型枠の振動状態を検出する振動状態検出部と、
前記振動状態検出部の検出結果に基づいて、前記コンクリート型枠内に打設されたコンクリートの深さ方向で、前記コンクリートの上端と、前記打撃部で打撃される前記コンクリート型枠の打撃箇所との位置関係を検出する位置関係検出部とを備え
、
前記振動状態検出部は、前記打撃部による1回の打撃毎に、予め定められた時間間隔で前記加速度信号と予め定められたしきい値とを比較し前記加速度信号が前記しきい値以上となる判定出力が得られた回数を有効検出回数として計数し、前記有効検出回数が予め定められた1次しきい値回数以上であると、前記コンクリートの上端が、前記打撃部で打撃されるコンクリート型枠の打撃箇所に到達している可能性が高い第1状態と判定し、1回の打撃毎に前記第1状態であるか否かを、前記コンクリート型枠の振動状態の検出結果として前記位置関係検出部に供給する、
ことを特徴とする可搬型打撃装置。
【請求項2】
前記位置関係検出部は、前記打撃部による予め定められた複数回の打撃分に対応して前記第1状態を示す振動状態の検出結果を何回受け付けたかを前記第1状態に対応する計数値として計数し、前記複数回の打撃分で前記第1状態の計数値が予め定められた2次しきい値回数以上である場合は、前記打撃部で打撃される前記コンクリート型枠の打撃箇所に前記コンクリートの上端が到達したと検出し、そうでない場合は、前記コンクリート型枠の打撃箇所に前記コンクリートの上端が到達していないと検出する、
ことを特徴とする請求項
1記載の可搬型打撃装置。
【請求項3】
コンクリート型枠を打撃する打撃部と、
前記打撃部を往復直線移動させる駆動部と、
前記打撃部及び前記駆動部を収容し、かつ、作業者が携帯可能な筐体とを有し、
前記打撃部が前記筐体の前面部の前面開口から出没する可搬型打撃装置であって、
前記前面部から突設され、前記コンクリート型枠に当接することで前記コンクリート型枠に対して前記打撃部の移動方向を直交させ、かつ、前記打撃部の移動方向において前記コンクリート型枠に対する前記前面部の位置決めを行なう当接部と、
前記前面部に前記打撃部の移動方向と平行する方向に移動可能に設けられると共に前記前面部から突出する方向に付勢され前記コンクリート型枠に当接可能な可動体と、
前記可動体に一体的に設けられた加速度センサと、
前記加速度センサで検出される加速度信号に基づいて前記コンクリート型枠の振動状態を検出する振動状態検出部と、
前記振動状態検出部の検出結果に基づいて、前記コンクリート型枠内に打設されたコンクリートの深さ方向で、前記コンクリートの上端と、前記打撃部で打撃される前記コンクリート型枠の打撃箇所との位置関係を検出する位置関係検出部とを備え
、
情報を表示する表示部と、
前記位置関係検出部で検出された、前記コンクリートの上端と、前記打撃部で打撃されるコンクリート型枠の打撃箇所との位置関係の検出結果を前記表示部に表示させる表示制御部と、
操作部とを更に備え、
前記振動状態検出部は、前記操作部の操作によって前記しきい値が調整可能に設定され、
前記表示制御部は、前記振動状態検出部に設定された前記しきい値を示す表示情報を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする可搬型打撃装置。
【請求項4】
前記駆動部により前記打撃部は、後退限界位置と前進限界位置との間で往復直線移動され、
前記打撃部の移動方向において前記コンクリート型枠に対する前記前面部の位置決めは、前記後退限界位置に位置する前記打撃部の先部と前記コンクリート型枠との距離を決定することで行なわれる、
ことを特徴とする請求項1
から3の何れか1項記載の可搬型打撃装置。
【請求項5】
前記可動体は、その先部が前記当接部の先部よりも突出する、
ことを特徴とする請求項1
から4の何れか1項記載の可搬型打撃装置。
【請求項6】
前記可動体は可動ピンで構成され、前記可動ピンは、前記前面部に移動可能に貫通された複数のピン体と、それら複数のピン体を支持し前記筐体に収容された支持板とを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1~
5の何れか1項記載の可搬型打撃装置。
【請求項7】
前記加速度センサは、前記支持板に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項
6記載の可搬型打撃装置。
【請求項8】
前記当接部は、前記前面開口の周囲で互いに離れた前記前面部の箇所から突設された少なくとも3つ以上の当接ピンで構成されている、
ことを特徴とする請求項1~
7の何れか1項記載の可搬型打撃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート型枠を打撃してコンクリートを間接的に振動させることにより、コンクリートとコンクリート型枠との間に存在する気泡、または、コンクリート内部に存在する気泡を除去する作業に用いる可搬型打撃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート型枠内にコンクリート打設すると、コンクリート内部、または、コンクリート型枠とコンクリートとの間に気泡が残留する。このため、コンクリートの打設後に、作業者がコンクリート型枠の表面を打撃装置で打撃してコンクリートを間接的に振動させることにより、気泡を取り除く作業を行っている。この作業を行うと、コンクリート型枠除去後において、コンクリート表面に“あばた”と呼ばれる気泡痕が残る割り合いが低下し、コンクリート表面の仕上がり、美観が向上する。
特許文献1には、圧搾空気を利用して打撃部(チゼル)に振動を与え、この打撃部によってコンクリート型枠の表面を打撃する可搬型打撃装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コンクリート型枠を打撃して気泡を除去する場合、打設したコンクリートの深さ方向において、コンクリートの上端に対応する位置でコンクリート型枠を打撃すると、気泡を有効に除去できることが、経験的に知られている。
しかしながら、上記従来技術の可搬型打撃装置を用いた場合、コンクリート型枠内に打設されたコンクリートの上端位置と、打撃部でコンクリート型枠を打撃している位置との位置関係が分かりにくいため、コンクリートの上端位置に対応するコンクリート型枠の箇所を的確に打撃することが難しく、気泡を効率的に除去する上で改善の余地がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、コンクリート型枠内に打設されたコンクリートの気泡を効率的に除去する上で有利な可搬型打撃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、コンクリート型枠を打撃する打撃部と、前記打撃部を往復直線移動させる駆動部と、前記打撃部及び前記駆動部を収容し、かつ、作業者が携帯可能な筐体とを有し、前記打撃部が前記筐体の前面部の前面開口から出没する可搬型打撃装置であって、前記前面部から突設され、前記コンクリート型枠に当接することで前記コンクリート型枠に対して前記打撃部の移動方向を直交させ、かつ、前記打撃部の移動方向において前記コンクリート型枠に対する前記前面部の位置決めを行なう当接部と、前記前面部に前記打撃部の移動方向と平行する方向に移動可能に設けられると共に前記前面部から突出する方向に付勢され前記コンクリート型枠に当接可能な可動体と、前記可動体に一体的に設けられた加速度センサと、前記加速度センサで検出される加速度信号に基づいて前記コンクリート型枠の振動状態を検出する振動状態検出部と、前記振動状態検出部の検出結果に基づいて、前記コンクリート型枠内に打設されたコンクリートの深さ方向で、前記コンクリートの上端と、前記打撃部で打撃される前記コンクリート型枠の打撃箇所との位置関係を検出する位置関係検出部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、当接部をコンクリート型枠に当接させることでコンクリート型枠に対して筐体の位置を安定して保持することができ、打撃部によるコンクリート型枠に対する打撃を安定して行なう上で有利となり、コンクリート内部、コンクリート型枠とコンクリートとの間に存在する気泡を効率的に除去する上で有利となる。
また、コンクリート型枠に当接可能な可動体に一体的に設けた加速度センサで検出されたコンクリート型枠の加速度信号に基づいてコンクリート型枠の振動状態を検出するようにしたので、加速度センサを筐体に設けた場合に比較して打撃部によるコンクリート型枠の打撃時に発生する反力の影響を受けることなく、コンクリート型枠の振動状態を正確に検出することができる。
したがって、コンクリート型枠の振動状態の正確な検出結果に基づいてコンクリートの上端と、打撃部で打撃されるコンクリート型枠の打撃箇所との位置関係を正確に把握することができるため、可搬型打撃装置の打撃部により打撃するコンクリート型枠の打撃箇所をコンクリートの上端に対応する位置に簡単にかつ確実に位置決めでき、コンクリート内部、コンクリート型枠とコンクリートとの間に存在する気泡を効率的に除去する上で極めて有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態の可搬型打撃装置を用いてコンクリート型枠を打撃する模式的な断面図である。
【
図2】実施の形態の可搬型打撃装置の使用形態を示す模式図である。
【
図9】実施の形態の可搬型打撃装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図10】表示部の点灯状態を示す模式図であり、(A)は消灯状態、(B)は点灯色が青での点灯状態、(C)は点灯色が緑での点灯状態、(D)は点灯色が赤での点灯状態を示す。
【
図11】加速度センサで検出される加速度信号とその判定出力Xを示す説明図であり、(A)はコンクリートの上端から上方に離れたコンクリート型枠の箇所を打撃した場合の説明図、(B)はコンクリートの上端に対応するコンクリート型枠の箇所を打撃した場合の説明図である。
【
図12】実施の形態の可搬型打撃装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
建築物の工事現場では、
図1のようなコンクリート型枠10を地面に固定した後、コンクリート型枠10で取り囲まれた空間にコンクリート12を打設する。
図1、
図2に示す可搬型打撃装置14は、コンクリート型枠10を外した際にコンクリート12の表面に気泡による気泡痕(凹凸部)などが生じていないように、コンクリート型枠10を外面1002から打撃して、コンクリート型枠10とコンクリート12との間に存在する気泡、コンクリート12内部に存在する気泡を除去するものである。
【0009】
図2に示すように、可搬型打撃装置14は、打撃装置本体16と、電源ユニット18と、接続ケーブル20とを含んで構成されている。
打撃装置本体16は、作業者が手に持って操作することによりコンクリート12が打設されたコンクリート型枠10の外面1002を打撃するものである。
電源ユニット18は、作業者が肩掛けベルト21を介して携帯するものであり、打撃装置本体16と接続ケーブル20を介して接続され、接続ケーブル20を介して打撃装置本体16に動作用電力を供給すると共に、打撃装置本体16から供給されるソレノイド制御信号に基づいて打撃装置本体16にソレノイド駆動信号を供給するものである。
【0010】
次に、
図3から
図8を参照して打撃装置本体16について説明する。
打撃装置本体16は、筐体22と、打撃部24と、駆動部26と、当接部28と、可動体30と、加速度センサ32と、マイクロコンピュータ34(
図9参照)などを含んで構成されている。
筐体22は、打撃部24及び駆動部26を収容し、かつ、作業者が携帯可能な形状と大きさで構成されている。
また、本実施の形態では、マイクロコンピュータ34が筐体22に収容されているが、マイクロコンピュータ34は電源ユニット18に収容されていても構わない。
【0011】
図3、
図4、
図5に示すように、筐体22は、矩形板状の前面部2202と、前面部2202の四辺から起立する長方形板状の4つの側面部2204と、4つの側面部2204の後端を接続する後面部2206とを備え、細長形状を呈している。
なお、説明の便宜上、前面部2202と後面部2206とが対向する方向を前後方向と呼ぶ。
前面部2202の中央には円形の前面開口2210が形成されている。
図4において符号23は、側面部2204から突設されたグリップであり、作業者が把持する箇所である。
本実施の形態では、グリップ23は側面部2204に対して雄ねじを介して着脱可能に1つ設けられている。
なお、グリップ23を、隣り合う2つの側面部2204の前後に間隔をおいてそれぞれ2つずつ不図示の雄ねじを介して着脱可能に設けるなど、グリップ23の個数や配置箇所は任意である。
【0012】
打撃部24は、コンクリート型枠10を打撃するものであり、打撃部24は、筐体22の前面部2202の前面開口2210から出没する。
打撃部24は、金属製であり、本実施の形態では、打撃部24は、前方に向かって凸状を呈する半球状を呈している。なお、打撃部24の先端形状は球面に限定されるものではなく、平坦面など従来公知の様々な構造が採用可能である。
【0013】
駆動部26は、打撃部24を往復直線移動させるものである。
駆動部26は、電磁ソレノイド36で構成されており、電磁ソレノイド36は、ケース3602とプランジャ3604とを備えている。
ケース3602はブラケット38を介して筐体22の内部で支持されている。
プランジャ3604は軸状を呈してケース3602から前方に突出し、プランジャ3604の前端で打撃部24を支持しており、打撃部24は、その軸心がプランジャ3604により前面開口2210の軸心と合致するように設けられている。
ケース3602には、何れも不図示の、プランジャ3604を往復直線移動可能に支持する筒状のヨーク、ヨークの外周部に巻回されたコイル、プランジャ3604を没入方向に常時付勢する付勢部材、プランジャ3604の突出位置およびプランジャ3604の没入位置を定めるストッパが収容されている。
電磁ソレノイド36は、通電時にプランジャ3604が突出し、非通電時にプランジャ3604が没入するプッシュ型の電磁ソレノイドで構成されている。
すなわち、電源ユニット18から接続ケーブル20を介して供給されるソレノイド駆動信号の電圧レベルが「H」のときに(通電時に)ヨークとコイルで構成される電磁石の吸引力によってプランジャ3604が吸引されることでプランジャ3604は付勢部材の付勢力に抗して突出位置に突出する。
このとき、打撃部24は筐体22の前面部2202の前面開口2210から突出した前進限界位置となる。
また、ソレノイド駆動信号の電圧レベルが「L」のときに(非通電時に)電磁石の吸引力が無くなることよってプランジャ3604が付勢部材の付勢力によって引き込まれることでプランジャ3604は没入位置に没入する。
このとき、打撃部24は筐体22の前面部2202の前面開口2210から内部に没入した後退限界位置となる。
したがって、駆動部26により打撃部24は、後退限界位置と前進限界位置との間で往復直線移動されることになる。
【0014】
なお、本実施の形態では、駆動部26として電磁ソレノイド36を用いる場合について説明するが、駆動部26として、モータとカム機構を組み合わせた駆動機構や、圧縮空気を用いたアクチュエータなど従来公知の様々な機構、アクチュエータを使用することが可能である。
【0015】
図3、
図4に示すように、当接部28は、コンクリート型枠10に当接することでコンクリート型枠10に対して打撃部24の移動方向を直交させ、かつ、打撃部24の移動方向においてコンクリート型枠10に対する前面部2202の位置決めを行なうものである。
当接部28は筐体22の前面部2202から突設され、本実施の形態では、当接部28は前面開口2210の周囲で互いに離れた前面部2202の箇所から突設された少なくとも3つ以上の当接ピン2802で構成されている。
それら当接ピン2802は、前面開口2210の軸心を中心として等間隔をおいた前面部2202の3箇所から前方に突出している。
当接部28は、例えば、1つあるいは2つの当接ピン2802で構成してもよいが、当接部28を3つ以上の当接ピン2802で構成すると、それら当接ピン2802の先部をコンクリート型枠10の外面1002に当接させることでコンクリート型枠10に対して筐体22の前面部2202を平行させ、コンクリート型枠10に対して筐体22の位置を安定して保持することができ、打撃部24によるコンクリート型枠10の外面1002に対する打撃を安定して行なう上で有利となる。
打撃部24の移動方向においてコンクリート型枠10に対する前面部2202の位置決めは、後退限界位置に位置する打撃部24の先部とコンクリート型枠10との距離を決定することで行なわれる。
【0016】
図3、
図5に示すように、可動体30は、前面部2202に打撃部24の移動方向と平行する方向に移動可能に設けられると共に前面部2202から突出する方向に付勢されコンクリート型枠10に当接可能に構成されている。
可動体30は、その先部が、当接部28の先部よりも突出している。
図5、
図6、
図7、
図8に示すように、本実施の形態では、可動体30は可動ピン30Aで構成され、可動ピン30Aは、前面部2202に移動可能に貫通された複数の(2つの)ピン体3002と、それら複数のピン体3002を支持し筐体22に収容された支持板3004とを含んで構成されている。
図5に示すように、各ピン体3002は、前面部2202において軸受40により移動可能に支持されている。
各ピン体3002と反対に位置する支持板3004の箇所と、電磁ソレノイド36のブラケット38との間にコイルスプリングからなる複数の付勢部材42が設けられ、支持板3004を介して各ピン体3002を突出方向に付勢している。
各ピン体3002は、支持板3004の前面が筐体22の前面部2202の内面、あるいは、軸受40の箇所に当接することでその突出限界位置が定められている。
図4に示すように、本実施の形態では、2つのピン体3002は1つの当接ピン2802を挟んで、前面部2202の輪郭をなす矩形の一辺に沿って配置されている。
【0017】
図8に示すように、加速度センサ32は、可動ピン30Aに一体的に設けられている。
本実施の形態では、加速度センサ32は支持板3004に設けられ、筐体22の内部に収容されている。
本実施の形態では、加速度センサ32は支持板3004の前方を向いた前面で2つの可動ピン30Aの中間の位置に取り付けられている。
加速度センサ32は、可動ピン30Aを介してコンクリート型枠10の振動を検出し、打撃部24の移動方向と平行する方向の加速度信号を生成してマイクロコンピュータ34に供給するものである。
なお、可動ピン30Aを1つのピン体3002で構成し、このピン体3002に加速度センサ32を一体的に設けても良いが、本実施の形態のように、加速度センサ32を2つの可動ピン30Aの間の支持板3004の箇所に設けると、コンクリート型枠10の振動を2つのピン体3002から加速度センサ32に伝えることができるので、加速度センサ32による振動の検出をより正確に行なう上で有利となる。
【0018】
次に
図9を参照して可搬型打撃装置14の制御系の構成について説明する。
打撃装置本体16は、前述した加速度センサ32、電磁ソレノイド36に加えて、操作部44と、表示部46と、マイクロコンピュータ34とを含んで構成され、電源ユニット18は、電源部48と、ソレノイド駆動部50とを含んで構成されている。
【0019】
打撃装置本体16の操作部44は、操作スイッチ4402と、しきい値設定ダイヤル4404とを備えている。
図5に示すように、操作スイッチ4402は筐体22の後面部2206に設けられ、押圧操作されることで、マイクロコンピュータ34に対して駆動部26による動作の開始、停止を指示する操作信号を供給するものである。
しきい値設定ダイヤル4404は筐体22の後面部2206に設けられ、回転操作されることで、マイクロコンピュータ34に対して後述する加速度信号の判定基準となるしきい値Atの調整を行なう操作信号を供給するものである。
【0020】
打撃装置本体16の表示部46は、マイクロコンピュータ34により制御され、可搬型打撃装置14の動作や設定に関する情報を表示するものである。
本実施の形態では、表示部46は、図示しないが筐体22の側面部2204のうちの1つの側面部2204に設けられている。
図10(A)に示すように、表示部46は、複数の表示体で構成されており、本実施の形態では、複数の表示体は、直線状に配列された複数(8個)のLEDランプ4602で構成されており、マイクロコンピュータ34によってLEDランプ4602の点灯数、点灯色が制御される。
なお、
図10(A)~(D)において、〇はLEDランプ4602を示し、消灯状態を無印で示し、点灯色が青で点灯した状態を符号「B」で示し、点灯色が緑で点灯した状態を符号「G」で示し、点灯色が赤で点灯した状態を符号「R」で示す。
また、表示部46を構成する表示体は、液晶表示器やEL表示器などの従来公知の様々な表示デバイスを用いて構成してもよいことは無論である。
【0021】
マイクロコンピュータ34は、CPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
マイクロコンピュータ34は、CPUが制御プログラムを実行することにより、後述するソレノイド制御部34A、振動状態検出部34B、位置関係検出部34C、表示制御部34Dを実現する。
【0022】
電源ユニット18の電源部48は、二次電池4802と、スイッチング電源4804と、電源スイッチ4806とを含んで構成されている。
二次電池4802は、不図示の外部電源によって充電され、所定の直流電圧を出力するものである。
スイッチング電源4804は、二次電池4802の電圧を、電磁ソレノイド36を駆動するに足る電圧、および、マイクロコンピュータ34を駆動するに足る電圧に変換するものである。
スイッチング電源4804の出力電圧は、接続ケーブル20を介してマイクロコンピュータ34に供給され、マイクロコンピュータ34が動作される。
電源スイッチ4806は、二次電池4802の出力電力のスイッチング電源4804への供給をオン、オフするスイッチであり、電源スイッチ4806がオン操作されると、スイッチング電源4804からマイクロコンピュータ34およびソレノイド駆動部50への電源供給がなされる。
【0023】
電源ユニット18のソレノイド駆動部50は、後述するソレノイド制御部34Aから接続ケーブル20を介して供給されるソレノイド制御信号に基づいて、スイッチング電源4804から供給される昇圧された電圧からソレノイド駆動信号を生成して接続ケーブル20を介して電磁ソレノイド36に供給するものである。
ソレノイド制御信号は、所定周期(例えば0.5秒周期)のパルス信号であり、ソレノイド駆動部50は、パルス信号の周期に対応した周期のソレノイド駆動信号を電磁ソレノイド36に供給する。
したがって、ソレノイド駆動信号が供給された電磁ソレノイド36は、例えば0.5秒周期で打撃部24の突出、没入を行わせ、したがって、0.5秒毎に打撃部24によりコンクリート型枠10が打撃されることになる。
【0024】
ソレノイド制御部34Aは、操作スイッチ4402がオン操作されると、前述したように所定周期(例えば0.5秒周期)のパルス信号からなるソレノイド制御信号を生成して接続ケーブル20を介してソレノイド駆動部50に供給するものであり、操作スイッチ4402がオフ操作されると、ソレノイド制御信号のソレノイド駆動部50への供給を停止するものである。
【0025】
振動状態検出部34Bは、加速度センサ32で検出される加速度信号に基づいてコンクリート型枠10の振動状態を検出するものである。
図11(A)、(B)を参照して振動状態検出部34Bの動作について説明する。
図11(A)、(B)の上部は加速度センサ32で検出される加速度信号を示し、縦軸は加速度A(G)を示し、横軸は経過時間T(s)を示している。
また、
図11(A)、(B)の下部は、振動状態検出部34Bによって生成される加速度信号としきい値Atとを比較した判定出力Xとなる判定出力Xを示し、縦軸は判定出力Xの0、1を示し、横軸は経過時間T(s)を示している。ここで、加速度Aがしきい値At未満ならば判定出力Xは0、加速度Aがしきい値At以上ならば判定出力Xは1となる。
なお、打撃部24によるコンクリート型枠10に対する打撃によって生じる振動の加速度、振動の周波数特性、振動の振幅、振動の周期などは、コンクリート型枠10の寸法や種類、コンクリート12の種類などの条件によって大きく変化することから、加速度信号のしきい値Atもそれら条件に応じて調整する必要がある。本実施の形態では、後述するようにしきい値設定ダイヤル4404を操作することでしきい値Atの調整を可能としている。
【0026】
図11(A)は、可搬型打撃装置14で打撃するコンクリート型枠10の部分がまだコンクリート12の上端1202が到達していない空の部分に対応した箇所に位置した状態を示している(
図1の位置P2に対応)。
図11(B)は可搬型打撃装置14で打撃するコンクリート型枠10の部分が、すでにコンクリート12の上端1202が到達してコンクリート12が充填されている部分に対応した箇所に位置した状態を示している(
図1の位置P1、P3に対応)。
振動状態検出部34Bは、打撃部24でコンクリート型枠10が打撃される度にすなわち0.5s毎に、例えば、10ms周期で判定出力Xを生成する。言い換えると、打撃部24でコンクリート型枠10が1回打撃される毎に、すなわち、0.5s毎に、0.5s/10ms=50回の判定出力Xを生成する。
したがって、50回分の判定出力Xのうち、判定出力Xが1となる回数が高いほどコンクリート型枠10の振動が大きく、判定出力Xが1となる回数が低いほどほどコンクリート型枠10の振動が小さいことになる。
さらに、振動状態検出部34Bは、判定出力Xが1となる回数を有効検出回数とすると、加速度センサ32で検出される加速度信号に基づいて有効検出回数を計数する。
そして、振動状態検出部34Bは、1回の打撃毎に計数された有効検出回数C1を予め定められた1次しきい値回数N1と比較し、1回の打撃毎の有効検出回数C1が1次しきい値回数N1以上であると、コンクリート12の上端1202が、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所に到達している可能性が高い第1状態S1と判定し、これとは逆に1回の打撃毎の有効検出回数が1次しきい値回数N1未満となると、コンクリート12の上端1202が打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所に到達していない可能性が高い第2状態S2と判定し、1回の打撃毎に第1状態S1であるか第2状態S2であるかの振動状態検出結果を位置関係検出部34Cに供給する。
例えば、1次しきい値回数N1を5回とすると、1回の打撃毎の有効検出回数C1が5回以上であれば第1状態S1と判定され、1回の打撃毎の有効検出回数C1が5回未満(4回以下)であれば第2状態S2と判定されることになる。
振動状態検出部34Bは、第1状態、第2状態の判定を打撃部24による1回の打撃毎に繰り返して行ない、その判定結果をコンクリート型枠10の振動状態の検出結果として位置関係検出部34Cに供給する。
【0027】
位置関係検出部34Cは、振動状態検出部34Bの検出結果に基づいて、コンクリート型枠10内に打設されたコンクリート12の深さ方向で、コンクリート12の上端1202と、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所との位置関係を検出するものである。
本実施の形態では、位置関係検出部34Cは、1回の打撃毎に振動状態検出部34Bから供給されるコンクリート型枠10の振動状態の検出結果を受け付けると共に、複数回、例えば10回の打撃分で第1状態S1に対応する振動状態の検出結果を何回受け付けたかを第1状態S1に対応する計数値C2として計数する。
そして、10回分の打撃分で第1状態S1の計数値C2が予め定められた2次しきい値回数N2以上である場合は、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所にコンクリート12の上端1202が到達したと判定し、10回分の打撃分で第1状態の計数値C2が2次しきい値回数N2未満である場合は、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所にコンクリート12の上端1202が到達していないと判定し、その判定結果を、コンクリート12の上端1202と、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所との位置関係の検出結果として出力する。
例えば、2次しきい値回数N2を8回とすると、第1状態の計数値C2が8回以上であれば、コンクリート型枠10の打撃箇所にコンクリート12の上端1202が到達したと判定し、第1状態S1の計数値C2が8回未満(7回以下)であれば、コンクリート型枠10の打撃箇所にコンクリート12の上端1202が到達していないと判定することになる。
位置関係検出部34Cは、10回の打撃毎にこのような判定を繰り返して行ない、この判定結果を、コンクリート12の上端1202と、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所との位置関係の検出結果として出力する。
【0028】
表示制御部34Dは、しきい値設定ダイヤル4404によって調整される振動状態検出部34Bのしきい値Atを示す表示情報を表示部46に表示させる。
具体的には、
図10(B)に示すように、しきい値Atを示す表示情報として、しきい値Atの大小をLEDランプ4602の点灯数によって表示する。
すなわち、しきい値Atが大きくなるほど複数のLEDランプ4602の点灯数を増やす。
したがって、LEDランプ4602の数が8個の場合、下限値が1個、上限値が8個の合計8段階でしきい値Atの大きさを表示する。
なお、しきい値設定ダイヤル4404によるしきい値Atの調整操作は、例えば、電源スイッチ4806がオン操作され、かつ、操作スイッチ4402がオフの状態とした場合に可能となり、しきい値設定ダイヤル4404を操作することにより生じる操作信号が振動状態検出部34Bに受け付けられることでなされる。
また、しきい値設定ダイヤル4404によるしきい値Atの調整操作時におけるLEDランプ4602の点灯色は限定されるものではないが、例えば、以下に説明する、位置関係検出部34Cで検出されたコンクリート12の上端1202と、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所との位置関係を表示する場合のLEDランプ4602の点灯色(
図10(C)、(D))とは異なる色、例えば、青色で表示される(
図10(B))。
このように点灯色を変えることでしきい値Atの調整操作中であることを作業者が視覚的に確認でき、操作性の向上を図る上で有利となる。
【0029】
また、表示制御部34Dは、位置関係検出部34Cで検出されたコンクリート12の上端1202と、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所との位置関係の検出結果を表示部46に表示させる。
本実施の形態では、LEDランプ4602の点灯色を以下のように表示する。
1)打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所に到達したと位置関係検出部34Cが検出すると緑色表示。
2)打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所に到達していないと位置関係検出部34Cが検出すると赤色表示。
本実施の形態では、この場合に点灯されるLEDランプ4602の数はしきい値Atに対応する数となる。
したがって、しきい値Atに対応するLEDランプ4602の数が4個であれば(
図10(B))、緑色あるいは赤色表示されるLEDランプ4602の数も4個となる(
図10(C)、(D))。
【0030】
次に
図12のフローチャートを参照して可搬型打撃装置14の動作について説明する。
まず、作業者は、コンクリート型枠10へのコンクリート12の打設作業がなされる前に、振動状態検出部34Bに対するしきい値Atの設定を行なう(ステップS10)
例えば、打設作業の前に実験によってしきい値Atを設定すれば良い。
すなわち、実際に使用されるコンクリート型枠10とコンクリート12を用いてコンクリート型枠10内にコンクリート12を打設し、コンクリート12の上端1202位置が視認可能な状態で、コンクリート12の上端1202近傍の箇所で可搬型打撃装置14の位置を上下に移動させつつ打撃部24によるコンクリート型枠10の外面1002に対する打撃を行ない、表示部46によるコンクリート12上端と打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所との位置関係の検出結果が正しく表示部46によって表示されるように、しきい値設定ダイヤル4404を操作してしきい値Atを設定すれば良い。
あるいは、このような実験を複数のコンクリート型枠10とコンクリート12の組み合わせ毎に実施して適切なしきい値Atのリストを作成しておき、使用するコンクリート型枠10とコンクリート12の組み合わせに対応したしきい値Atをリストから選択して設定するようにしてもよい。
【0031】
次に、作業者は、可搬型打撃装置14を携帯してコンクリート12が打設されるコンクリート型枠10の外面1002に待機し、可搬型打撃装置14の電源ユニット18の電源スイッチ4806を投入する(ステップS12)。
コンクリート12のコンクリート型枠10への打設が開始されたならば、作業者は、打撃装置本体16の操作スイッチ4402をオンとして、打撃装置本体16のグリップ23を把持して打撃装置本体16の各当接ピン2802の先部がコンクリート型枠10の外面1002に当接するように打撃装置本体16の位置を調整する(ステップS14)。これにより筐体22の前面部2202がコンクリート型枠10と平行した状態となる。また、可動ピン30Aの先部はコンクリート型枠10の外面1002に当接することで突出限界位置から後退し付勢部材42の付勢力により可動ピン30Aの先部はコンクリート型枠10の外面1002に安定して当接された状態が維持される。
【0032】
操作スイッチ4402のオンによりソレノイド制御部34Aからソレノイド制御信号がソレノイド駆動部50に供給され、これによりソレノイド駆動部50から電磁ソレノイド36に所定周期(例えば0.5s周期)のパルス信号からなるソレノイド駆動信号が供給され、電磁ソレノイド36が駆動されることにより、駆動部26により打撃部24が往復直線移動し、打撃部24によりコンクリート型枠10の外面1002が所定周期で打撃される(ステップS16)。
【0033】
打撃部24の打撃によって発生したコンクリート型枠10の振動は可動ピン30Aを介して加速度センサ32で検出され、加速度センサ32で検出された加速度信号が振動状態検出部34Bに供給される(ステップS18)。
【0034】
振動状態検出部34Bは、加速度センサ32で検出される加速度信号に基づいてコンクリート型枠10の振動状態を検出し、その検出結果を位置関係検出部34Cに供給する(ステップS20)。
すなわち、振動状態検出部34Bは、打撃部24でコンクリート型枠10が打撃される度に(例えば0.5s)毎に、所定周期で(例えば10ms周期)で加速度信号に基づいて判定出力Xを生成し、振動状態検出部34Bは、1回の打撃毎に判定出力Xが1となる有効検出回数C1を計数し、この有効検出回数C1が1次しきい値回数N1以上であると、コンクリート12の上端1202が、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所に到達している可能性が高い第1状態S1と判定し、そうでなければコンクリート型枠10の打撃箇所に到達している可能性が低い第2状態S2と判定し、1回の打撃毎に第1状態S1であるか否かの振動状態検出結果を位置関係検出部34Cに供給する。
【0035】
位置関係検出部34Cは、振動状態検出部34Bの検出結果に基づいて、コンクリート型枠10内に打設されたコンクリート12の深さ方向で、コンクリート12の上端1202と、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所との位置関係を検出する(ステップS22)。
すなわち、位置関係検出部34Cは、1回の打撃毎に振動状態検出部34Bから供給されるコンクリート型枠10の振動状態の検出結果を受け付けると共に、複数回、例えば10回の打撃分で第1状態S1に対応する振動状態の検出結果を何回受け付けたかを第1状態S1に対応する計数値C2として計数し、この計数値C2が予め定められた2次しきい値回数N2以上である場合は、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所にコンクリート12の上端1202が到達したと検出し、そうでない場合は、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所にコンクリート12の上端1202が到達していないと検出する。
【0036】
表示制御部34Dは、位置関係検出部34Cで検出されたコンクリート12の上端1202と、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所との位置関係の検出結果に基づいて表示部46の表示を制御する(ステップS24)。
すなわち、表示制御部34Dは、コンクリート12の上端1202が、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所に到達したと位置関係検出部34Cが検出すると、
図10(C)に示すように表示部46のLEDランプ4602を緑色表示する。この状態は、
図1において示す可搬型打撃装置14で打撃するコンクリート型枠10の位置が位置P1、P2である状態に対応している。
コンクリート12の上端1202が、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所に到達していないと位置関係検出部34Cが検出すると、
図10(D)に示すように表示部46のLEDランプ4602を赤色表示する。この状態は、
図1において示す可搬型打撃装置14で打撃するコンクリート型枠10の位置が位置P3である状態に対応している。
作業者は表示部46のLEDランプ4602の表示色が緑色か赤色かを視認してコンクリート12の上端1202が、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所に到達したか否かを判断する(ステップS26、S28)。
ステップS28が肯定(表示色が緑色)ならば、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所に到達しているため、打撃装置本体16で打撃するコンクリート型枠10の箇所をより高位の箇所に移動させ(ステップS30)、ステップS16に戻り同様の動作を繰り返す。
また、ステップS28が否定(表示色が赤色)ならば、既に打撃部24によるコンクリート型枠10の打撃は10回実行されているにもかかわらず、コンクリート12の上端1202が、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所に到達していないため、打撃装置本体16で打撃するコンクリート型枠10の箇所をより低位の箇所に移動させ(ステップS32)、ステップS16に戻り同様の動作を繰り返す。
このような動作をコンクリート12の打設作業が終了するまで繰り返し、打設作業が終了したならば、操作スイッチ4402をオフし、電源スイッチ4806をオフして一連の作業を終了する。
【0037】
本実施の形態によれば、可搬型打撃装置14の筐体22の前面部2202に、コンクリート型枠10に当接することでコンクリート型枠10に対して打撃部24の移動方向を直交させ、かつ、打撃部24の移動方向においてコンクリート型枠10に対する前面部2202の位置決めを行なう当接部28を設けると共に、前面部2202から突出する方向に付勢されコンクリート型枠10に当接可能な可動ピン30Aを設け、可動ピン30Aに一体的に加速度センサ32を設け、振動状態検出部34Bにより、加速度センサ32で検出される加速度信号に基づいてコンクリート型枠10の振動状態を検出し、位置関係検出部34Cにより、振動状態検出部34Bの検出結果に基づいて、コンクリート型枠10内に打設されたコンクリート12の深さ方向で、コンクリート12の上端1202と、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所との位置関係を検出するようにした。
したがって、当接部28をコンクリート型枠10の外面1002に当接させることでコンクリート型枠10に対して筐体22の位置を安定して保持することができ、打撃部24によるコンクリート型枠10の外面1002に対する打撃を安定して行なう上で有利となり、コンクリート12内部、コンクリート型枠10とコンクリート12との間に存在する気泡を効率的に除去する上で有利となる。
また、コンクリート型枠10に当接可能な可動体30に一体的に設けた加速度センサ32で検出されたコンクリート型枠10の加速度信号に基づいてコンクリート型枠10の振動状態を検出するようにしたので、加速度センサ32を筐体22に設けた場合に比較して打撃部24によるコンクリート型枠10の打撃時に発生する反力の影響を受けることなく、コンクリート型枠10の振動状態を正確に検出することができる。
したがって、コンクリート型枠10の振動状態の正確な検出結果に基づいてコンクリート12の上端1202と、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所との位置関係を正確に把握することができるため、可搬型打撃装置14の打撃部24により打撃するコンクリート型枠10の打撃箇所をコンクリート12の上端1202に対応する位置に簡単にかつ確実に位置決めでき、コンクリート12内部、コンクリート型枠10とコンクリート12との間に存在する気泡を効率的に除去する上で極めて有利となる。
【0038】
また、本実施の形態では、駆動部26により打撃部24は、後退限界位置と前進限界位置との間で往復直線移動され、打撃部24の移動方向においてコンクリート型枠10に対する前面部2202の位置決めは、後退限界位置に位置する打撃部24の先部とコンクリート型枠10との距離を決定することで行なわれるため、打撃部24の先部によってコンクリート型枠10を確実に打撃する上で有利となり、コンクリート12内部、コンクリート型枠10とコンクリート12との間に存在する気泡を効率的に除去する上でより有利となる。
【0039】
また、本実施の形態では、可動体30(可動ピン30A)は、その先部が当接部28の先部よりも突出するようにしたので、可動体30(可動ピン30A)を介して加速度センサ32によりコンクリート型枠10の振動による加速度信号を正確に検出することができる。
したがって、コンクリート型枠10の振動状態の正確な検出結果に基づいてコンクリート12の上端1202と、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所との位置関係を正確に把握する上でより有利となり、打撃部24により打撃するコンクリート型枠10の打撃箇所をコンクリート12の上端1202に対応する位置に正確に位置決めでき、コンクリート12内部、コンクリート型枠10とコンクリート12との間に存在する気泡を効率的に除去する上でより有利となる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、可動体30(可動ピン30A)は、前面部2202に移動可能に貫通された複数のピン体3002と、それら複数のピン体3002を支持し筐体22に収容された支持板3004とを含んで構成されているので、打撃部24によるコンクリート型枠10の打撃時に、支持板3004は前面部2202に対して平行状態を保って振動する。
したがって、加速度センサ32は可動体30(可動ピン30A)に取り付けられているため、加速度センサ32によりコンクリート型枠10の振動をより正確に検出する上で有利となる。
【0041】
また、加速度センサ32は筐体22の外部に位置する可動体30(可動ピン30A)の箇所に設けてもよいが、本実施の形態では、加速度センサ32が筐体22に収容された支持板3004に取り付けられており、したがって、加速度センサ32を筐体22の内部に配置したので、携帯時において加速度センサ32の損傷を防止する上で有利となり、可搬型打撃装置の耐久性を高める上で有利となる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、当接部28は、前面開口2210の周囲で互いに離れた前面部2202の箇所から突設された少なくとも3つ以上の当接ピン2802で構成されているので、それら当接ピン2802の先部をコンクリート型枠10の外面1002に当接させることでコンクリート型枠10に対して筐体22の前面部2202を平行させ、コンクリート型枠10に対して筐体22の位置を安定して保持することができ、打撃部24によるコンクリート型枠10の外面1002に対する打撃を安定して行なう上で有利となる。
【0043】
また、本実施の形態によれば、振動状態検出部34Bは、打撃部24による1回の打撃毎に、予め定められた時間間隔で加速度信号と予め定められたしきい値Atとを比較し加速度信号がしきい値At以上となる判定出力Xが得られた回数を有効検出回数C1として計数し、有効検出回数C1が予め定められた1次しきい値回数N1以上であると、コンクリート12の上端1202が、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所に到達している可能性が高い第1状態S1と判定し、1回の打撃毎に第1状態S1であるか否かを、コンクリート型枠10の振動状態の検出結果として位置関係検出部34Cに供給するようにした。
したがって、加速度信号から振動の振幅や振動の周波数特性を生成し、それら振動の振幅や振動の周波数特性からコンクリート型枠10の振動状態の検出結果を得る場合に比較して信号処理に要する処理時間を短縮できることから、コンクリート型枠10の振動状態の検出結果を高速に得る上で有利となる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、位置関係検出部34Cは、打撃部24による予め定められた複数回の打撃分に対応して第1状態S1を示す振動状態の検出結果を何回受け付けたかを第1状態S1に対応する計数値C2として計数し、複数回の打撃分で第1状態S1の計数値C2が予め定められた2次しきい値回数N2以上である場合は、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所にコンクリート12の上端1202が到達したと検出し、そうでない場合は、コンクリート型枠10の打撃箇所にコンクリート12の上端1202が到達していないと検出するようにした。
したがって、コンクリート12の上端1202と、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所との位置関係の検出結果を簡単な信号処理により高速に得る上で有利となる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、位置関係検出部34Cで検出された、コンクリート12の上端1202と、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所との位置関係の検出結果を表示部46に表示させる表示制御部34Dを設けた。
したがって、作業者は、表示部46を視認することで、コンクリート12の上端1202と、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所との位置関係を正確に把握することができるため、コンクリート型枠10の打設作業の効率化を図る上で有利となる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、振動状態検出部34Bは、操作部44の操作によってしきい値Atが調整可能に設定され、表示制御部34Dは、振動状態検出部34Bに設定されたしきい値Atを示す表示情報を表示部46に表示させるようにした。
したがって、作業者は、しきい値Atの調整を確実に簡単に行なう上で有利となる。
【0047】
また、本実施の形態では、表示部46を複数の表示体(LEDランプ4602)で構成し、それら複数の表示体の表示数(LEDランプ4602の点灯数)によってしきい値Atの大小を表示させると共に、複数の表示体(LEDランプ4602)の表示色によって、コンクリート12の上端1202と、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所との位置関係の検出結果を表示するようにした。
したがって、しきい値Atの表示と、コンクリート12の上端1202と、打撃部24で打撃されるコンクリート型枠10の打撃箇所との位置関係の検出結果の表示とを、同一の表示部46(複数の表示体(LEDランプ4602))を使用して行なうので、表示部46の部品点数の増加を抑制でき、可搬型打撃装置14の構成の簡素化、コストの低減化を図る上で有利となる。
【符号の説明】
【0048】
10 コンクリート型枠
12 コンクリート
1202 上端
14 可搬型打撃装置
16 打撃装置本体
18 電源ユニット
20 接続ケーブル
22 筐体
2202 前面部
24 打撃部
26 駆動部
28 当接部
2802 当接ピン
30 可動体
30A 可動ピン
3002 ピン体
3004 支持板
32 加速度センサ
34 マイクロコンピュータ
34A ソレノイド制御部
34B 振動状態検出部
34C 位置関係検出部
34D 表示制御部
36 電磁ソレノイド
44 操作部
4402 操作スイッチ
4404 しきい値設定ダイヤル
46 表示部
4602 LEDランプ
48 電源部
4802 二次電池
4804 スイッチング電源
4806 電源スイッチ
50 ソレノイド駆動部