(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】洗濯機および振動検知装置
(51)【国際特許分類】
D06F 33/47 20200101AFI20231017BHJP
【FI】
D06F33/47
(21)【出願番号】P 2020004392
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】北 祐人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 孝
(72)【発明者】
【氏名】大江 宏和
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-179978(JP,A)
【文献】特開2018-153613(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0096358(KR,A)
【文献】特開2001-276471(JP,A)
【文献】特開2014-131592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 1/00~95/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯槽
の振動を検知する検知部と、
前記検知部の検知結果に基づいて、前記洗濯槽への生物侵入を判定する判定部と、
前記判定部が生物侵入ありと判定した場合に、ユーザに異常通知を行うことが可能な通知部とを備え
、
前記判定部は、前記検知部によって続けて検知された2つの振動の時間間隔が第1所定時間内である場合に、この2つの振動を連続した振動と見なし、
前記判定部は、前記検知部が前記連続した振動が周期的に発生していないと判定した場合に生物侵入ありと判定することを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
洗濯槽における基準を超える異常振動の有無を検知する検知部と、
前記検知部の検知結果に基づいて、前記洗濯槽への生物侵入を判定する判定部と、
前記判定部が生物侵入ありと判定した場合に、ユーザに異常通知を行うことが可能な通知部とを備え、
前記判定部は、前記検知部によって続けて検知された2つの異常振動の時間間隔が第2所定時間内である場合に、この2つの異常振動を連続した異常振動と見なし、
前記判定部は、前記洗濯槽の駆動モータの停止中に、前記検知部が所定回数以上の前記連続した異常振動を検知した場合に生物侵入ありと判定することを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項
1に記載の洗濯機であって、
前記判定部が生物侵入ありと判定したときに、前記洗濯槽が撹拌または回転中であれば撹拌または回転を停止させ、前記洗濯槽に水が入っていれば排水することが可能であることを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
請求項
2に記載の洗濯機であって、
前記判定部が生物侵入ありと判定したときに、前記洗濯槽に水が入っていれば排水することが可能であることを特徴とする洗濯機。
【請求項5】
請求項1から
4の何れか1項に記載の洗濯機であって、
前記通知部は、前記判定部が生物侵入ありと判定した場合に、所定の通信端末に通知を行うことが可能な通信部を含むことを特徴とする洗濯機。
【請求項6】
洗濯機に後付け可能な振動検知装置であって、
前記洗濯機
の振動を検知する検知部と、
前記検知部の検知結果に基づいて、前記洗濯機の洗濯槽への生物侵入を判定する判定部と、
前記判定部が生物侵入ありと判定した場合に、所定の通信端末に通知を行うことが可能な通信部とを備え
、
前記判定部は、前記検知部によって続けて検知された2つの振動の時間間隔が第1所定時間内である場合に、この2つの振動を連続した振動と見なし、
前記判定部は、前記検知部が前記連続した振動が周期的に発生していないと判定した場合に生物侵入ありと判定することを特徴とする振動検知装置。
【請求項7】
洗濯機に後付け可能な振動検知装置であって、
前記洗濯機における基準を超える異常振動の有無を検知する検知部と、
前記検知部の検知結果に基づいて、前記洗濯機の洗濯槽への生物侵入を判定する判定部と、
前記判定部が生物侵入ありと判定した場合に、所定の通信端末に通知を行うことが可能な通信部とを備え、
前記判定部は、前記検知部によって続けて検知された2つの異常振動の時間間隔が第2所定時間内である場合に、この2つの異常振動を連続した異常振動と見なし、
前記判定部は、前記洗濯槽の駆動モータの停止中に、前記検知部が所定回数以上の前記連続した異常振動を検知した場合に生物侵入ありと判定することを特徴とする振動検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機および振動検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗濯機には、子供やペットが入り込むことを防止するためにチャイルドロック機能を備えたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のチャイルドロック機能を備えた洗濯機では、その機能を利用するにあたって、チャイルドロックモードへの事前設定などを必要とする。また、チャイルドロックモードへの事前設定をしておらず、子供やペットが中に入り込んだ場合、それを検知する機能はなかった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、子供やペットが中に入り込んだことを検知可能な洗濯機および振動検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様である洗濯機は、洗濯槽の重量もしくは振動を検知する検知部と、前記検知部の検知結果に基づいて、前記洗濯槽への生物侵入を判定する判定部と、前記判定部が生物侵入ありと判定した場合に、ユーザに異常通知を行うことが可能な通知部とを備えたことを特徴としている。
【0007】
上記の構成によれば、洗濯機の洗濯槽内への生物侵入(子供やペットの入り込み)を検知部および判定部によって検知し、生物侵入が検知された場合にはユーザに異常を通知することができる。
【0008】
また、上記洗濯機では、前記検知部は、洗濯槽の重量を検知する重量センサであり、前記判定部は、前記重量センサによって検知される重量が急減に増加した場合に生物侵入ありと判定する構成とすることができる。
【0009】
上記の構成によれば、重量センサを用いた場合の生物侵入検知において、洗濯槽への生物侵入を洗濯物投入と区別して検知することができる。
【0010】
また、上記洗濯機では、前記検知部は、洗濯槽の振動を検知する振動センサであり、前記判定部は、前記振動センサによって収束せずに周期的でもない振動が検知された場合に生物侵入ありと判定する構成とすることができる。
【0011】
上記の構成によれば、振動センサを用いた場合の生物侵入検知において、洗濯槽への生物侵入を洗濯物投入と区別して検知することができる。
【0012】
また、上記洗濯機では、前記検知部は、洗濯槽における基準を超える異常振動の有無を検知するものであり、前記判定部は、前記洗濯槽の駆動モータの停止中に、前記検知部が所定回数以上の前記異常振動を連続して検知した場合に生物侵入ありと判定する構成とすることができる。
【0013】
上記の構成によれば、異常振動の有無を検知する検知部(振動検知スイッチなど)を用いた場合の生物侵入検知において、洗濯槽への生物侵入を洗濯物投入と区別して検知することができる。
【0014】
また、上記洗濯機は、前記判定部が生物侵入ありと判定したときに、前記洗濯槽が撹拌または回転中であれば撹拌または回転を停止させ、前記洗濯槽に水が入っていれば排水することが可能である構成とすることができる。あるいは、上記洗濯機は、前記判定部が生物侵入ありと判定したときに、前記洗濯槽に水が入っていれば排水することが可能である構成とすることができる。
【0015】
上記の構成によれば、洗濯槽への生物侵入が検知された場合の安全性を確保することができる。
【0016】
また、上記洗濯機では、前記通知部は、前記判定部が生物侵入ありと判定した場合に、所定の通信端末に通知を行うことが可能な通信部を含む構成とすることができる。
【0017】
上記の構成によれば、洗濯機の洗濯槽内への生物侵入が検知された場合には、所定の通信端末(ユーザが持つスマートフォンなど)に異常を通知することができる。
【0018】
また、上記の課題を解決するために、本発明の第2の態様である振動検知装置は、洗濯機に後付け可能な振動検知装置であって、前記洗濯機の重量もしくは振動を検知する検知部と、前記検知部の検知結果に基づいて、前記洗濯機の洗濯槽への生物侵入を判定する判定部と、前記判定部が生物侵入ありと判定した場合に、所定の通信端末に通知を行うことが可能な通信部とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の洗濯機および振動検知装置は、洗濯機の洗濯槽内への生物侵入(子供やペットの入り込み)を検知部および判定部によって検知し、生物侵入が検知された場合にはユーザに異常を通知することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施の形態1に係る洗濯機の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る洗濯機の入り込み検知動作を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態2に係る洗濯機の概略構成を示すブロック図である。
【
図4A】洗濯槽に洗濯物が投入された場合に生じる振動の一例である。
【
図4B】撹拌運転時や脱水運転時に洗濯槽がモータ駆動されている場合に生じる振動の一例である。
【
図4C】洗濯槽に子供やペットが入り込んで生じる振動の一例である。
【
図5】実施の形態3に係る洗濯機の概略構成を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態3に係る洗濯機の入り込み検知動作のメインルーチンを示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態3に係る洗濯機の入り込み検知動作の生物侵入判定のサブルーチンを示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態3に係る洗濯機の入り込み検知動作の脱水運転中のサブルーチンを示すフローチャートである。
【
図9】実施の形態3に係る洗濯機の入り込み検知動作の撹拌運転中のサブルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態1に係る洗濯機10の概略構成を示すブロック図である。
【0022】
洗濯機10は、
図1に示すように、少なくとも重量センサ(検知部)101、制御部(判定部)102、駆動モータ103、排水機構104、通信部105および通知部106を含んでいる。さらに、洗濯機10は、人感センサ107を含んでいてもよい。
【0023】
重量センサ101は、基本的には、洗濯機10の洗濯槽(図示省略)に投入された洗濯物などの重量を検知するものである。重量センサ101の出力は制御部102に送られ、制御部102は、洗濯槽に洗濯物が投入されたときにその重量を認識することができる。
【0024】
駆動モータ103は、洗濯槽や洗濯槽内の撹拌翼を回転駆動するためのモータである。排水機構104は洗濯槽内の水を排水するための機構(例えば電子制御弁)である。通信部105は、クラウドサーバやユーザの持つ通信端末(例えばスマートフォン)とネットワーク通信を行うものである。通知部106は、警報音や警報表示を発生させるものである。駆動モータ103、排水機構104、通信部105および通知部106は、制御部102によって動作制御される。
【0025】
本実施の形態1に係る洗濯機10は、洗濯槽に子供やペットが入り込んだときに、重量センサ101の出力に基づいてこれを検知(入り込み検知)することができる。以下、洗濯機10の入り込み検知動作について、
図2のフローチャートを参照して説明する。
【0026】
図2のフローチャートにおいて、洗濯機10は待機モードからスタートする。待機モードの洗濯機10は、電源ボタン以外の操作ボタンはユーザによる操作を受け付けない状態となっている。すなわち、待機モードの洗濯機10は、洗濯機10の電源がONされたか否か(ユーザによって電源ボタンが押されたか否か)を監視している(S1)。
【0027】
洗濯機10が電源ONされず待機モードが維持されている間も(S1でNO)、重量センサ101および制御部102は作動しており、洗濯槽への生物侵入(子供やペットの入り込みなど)を監視している(S2)。具体的には、制御部102(制御マイコン)がスリープ状態となって待機しており、重量センサ101の出力が所定量変化したことに基づいて制御部102を動作状態に移行する。そして、制御部102が重量センサ101の出力に基づいて生物侵入の有無を判定する。洗濯機10が待機モードであっても、ユーザが洗濯槽に洗濯物を投入することはあり得ることであり、洗濯物の投入によっても重量センサ101は重量の増加を検知する。このため、洗濯物の投入を生物侵入と誤検知することのないように、制御部102による判定が必要となる。
【0028】
判定の一例としては、検知される重量が急減に増加した場合に生物侵入ありと判定することができる。洗濯物の投入によって重量が増加する場合、大量の洗濯物は一度に洗濯槽に投入しがたく、段階的に投入されると想定されるため、重量の増加も急激なものとはならない。これに対し、洗濯槽へ子供やペットが入り込んだ場合、検知される重量の増加は急激なものとなる。制御部102は、動作状態に移行後、短い単位時間間隔で重量を検知しながら、単位時間当たりの重量の差分値を閾値と比較する。この差分値が閾値よりも大きくなれば、急減な重量の増加があり、生物侵入ありと判定することができる。例えば、1秒以内に1kg以上の急減な重量の増加があった場合には、生物侵入ありと判定することができる。また、制御部102が前回スリープ状態に移行した際の重量センサ101の値を記憶しておき、今回検知した重量との差分値を閾値と比較してもよい。洗濯機10が待機モードのときに、制御部102が前回スリープ状態に移行した際から所定値以上重量が増加したことが検知された場合は、生物侵入ありと判定することができる。例えば、制御部102が前回スリープ状態に移行した際から1kg以上の重量の増加があった場合には、生物侵入ありと判定することができる。
【0029】
洗濯槽への生物侵入が検知されなければ(S2でNO)、制御部102はスリープ状態に戻る。一方で、待機モードの洗濯機10において、急減な重量の増加があり、洗濯槽への生物侵入ありと検知された場合(S2でYES)、制御部102は通知部106から警報音や警報画面を発してユーザへ異常を通知するとともに、通信部105を介してユーザの持つ通信端末へ異常発生の通知を行う(S3)。また、S3のステップの後、洗濯機10は待機モードに戻る。
【0030】
ユーザによって電源ボタンが押されて洗濯機10が電源ONになると(S1でYES)、洗濯機10は運転モードに移行する(S4)。動作中の洗濯機10においても、洗濯中に蓋が開かれて動作が停止し、停止した洗濯機10に子供が入って蓋を閉めると動作を再開する場合がある。このため、運転モード中の洗濯機10においても、制御部102は洗濯槽への生物侵入の監視を行っている(S5)。尚、運転モード中は、洗濯槽や撹拌翼が回転している場合もあり、この回転によって重量に変動が生じることもあるが、洗濯槽や撹拌翼の回転によって生じる重量変動は急激なものとはならない。このため、運転モード中であっても、待機モード中の監視と同様に、検知される重量が急減に増加した場合に生物侵入ありと判定することができる。
【0031】
運転モードの洗濯機10において、急減な重量の増加があり、洗濯槽への生物侵入ありと検知された場合(S5でYES)、制御部102は通知部106から警報音や警報画面を発してユーザへ異常を通知するとともに、通信部105を介してユーザの持つ通信端末へ異常発生の通知を行い(S6)、洗濯機10における運転を即座に終了(強制終了)する(S8)。また、洗濯槽への生物侵入が検知され、洗濯機10の運転を終了した場合、制御部102は排水機構104を制御して、洗濯槽内の水を排水するようにしてもよい。
【0032】
S5でNOの場合、設定していた洗濯コースの終了判定を行い(S7)、終了していなければS5に戻り、終了していれば運転を正常終了する(S8)。運転が正常終了した後の洗濯機10は、再び待機モードに移行する。
【0033】
また、洗濯機10が人感センサ107を含んでいる場合は、洗濯槽への生物侵入が検知された場合の制御に、人感センサ107の検知結果を組み合わせてもよい。ここで、人感センサ107は、洗濯機10の近傍(洗濯機10の正面など)に人がいるか否かを検知するセンサである。
【0034】
例えば、重量センサ101によって洗濯槽への生物侵入ありと検知された場合であっても、同時に人感センサ107が人を検知している状況であれば、ユーザが洗濯機10の近くにいるため直ちに対応することが可能であり、
図2のS3やS6において、ユーザの持つ通信端末への通知は省略してもよいと考えられる。このため、
図2のS2やS5のステップで生物侵入ありと検知された場合、これに続けて人感センサ107による人の検知の有無を判定し、人の検知がなければS3およびS6のステップにおいて通知部107から警報音や警報画面を発するとともにユーザの持つ通信端末へ異常発生の通知を行い、人の検知があればS3およびS6においてユーザの持つ通信端末へ異常発生の通知を省略してもよい。通知部106からの警報音や警報画面は、ユーザによる停止操作が入力されるか、所定時間が経過することで停止するものとし、所定時間が経過するまでにユーザによる停止操作がなかった場合には、人の検知があった場合でも、ユーザの持つ通信端末へ異常発生の通知を行うようにすることが好ましい。これにより、人感センサ106による人の検知があっても、それが子供などであって適切な対応ができない場合には、通信によるユーザへの通知を行うことができる。
【0035】
また、S6のステップにおいて、人の検知がなければ洗濯槽内の排水を行い、人の検知があれば洗濯槽内の排水を行わないようにしてもよい。
【0036】
〔実施の形態2〕
図3は、本実施の形態2に係る洗濯機11の概略構成を示すブロック図である。洗濯機11は、
図3に示すように、
図1の洗濯機10における重量センサ101の代わりに振動センサ(検知部)111を備えた構成である。但し、洗濯機11は、重量センサ101を備えない構成に限定されるものではない。
【0037】
振動センサ111は、洗濯槽の振動を検知するセンサであり、基本的には、洗濯槽内での洗濯物の偏り(重量アンバランス)によって運転時の振動が大きくなりすぎた場合にこれを検知するものである。振動センサ111におけるセンサの種類は特に限定されるものではないが、加速度センサ、圧力センサ、重量センサ、振り子やボール移動などによる機械式センサおよび感圧センサなどを使用することができる。振動センサ111の出力は制御部102に送られ、制御部102は、洗濯槽における振動レベル(振動の強弱)を認識することができる。
【0038】
本実施の形態2に係る洗濯機11は、洗濯槽に子供やペットが入り込んだときに、振動センサ111の出力に基づいてこれを検知(入り込み検知)することができる。洗濯機11の入り込み検知動作は、基本的には
図2に示すフローチャートと同じである。但し、S2およびS5における生物侵入の判定方法が、実施の形態1の洗濯機10とは異なる。
【0039】
洗濯機11では、制御部102が振動センサ111の出力に基づいて生物侵入の有無を判定するが、洗濯物の投入によっても振動センサ111は洗濯槽の振動を検知する。このため、S2およびS5では、洗濯物の投入を生物侵入と誤検知することのないように、制御部102による判定が必要となる。
【0040】
図4Aは、洗濯槽に洗濯物が投入された場合に生じる振動(振動センサ111の出力)の一例である。
図4Bは、撹拌運転時や脱水運転時に洗濯槽がモータ駆動されている場合に生じる振動の一例である。
図4Cは、洗濯槽に子供やペットが入り込んで生じる振動の一例である。
【0041】
洗濯物が投入された場合の振動は、
図4Aに示すように、最初に大きな振幅が生じ、その振幅は時間と共に減衰して収束する。このため、制御部102は、時間経過によって収束し、その後所定時間内に新たな振動が発生しなければ、洗濯物が投入されたことで生じた振動であると判定できる。
【0042】
洗濯槽がモータ駆動されている場合の振動は、
図4Bに示すように、時間経過によって収束せずに周期的な振動となる。このため、制御部102は、収束しない周期的な振動については、洗濯槽がモータ駆動されていることで生じた振動であると判定できる。
【0043】
そして、洗濯槽に子供やペットが入り込んだ場合の振動は、
図4Cに示すように、時間経過によって収束することはなく、かつ、周期的な振動にもならない。すなわち、洗濯槽に子供やペットが入り込んだ場合、不規則または断続的な振動が生じる。このため、制御部102は、収束せず周期的でもない振動については、洗濯槽に子供やペットが入り込んだことで生じた振動であると判定できる。
【0044】
尚、検知した振動が周期的であるか否かの判定は、例えば、所定の閾値Aを超える振動を検知してから同じ閾値Aを超える振動を少なくとも2回カウントし、これらの振動間の時間差がΔT以内であれば周期的振動(そうでなければ周期的振動ではない)と見なすことができる。あるいは、閾値Aを超える振動を検知してから、同じ閾値Aを超える振動を少なくとも2回カウントし、これらの振動間の各時間差について、平均値からの偏差が一定値以内であれば周期的振動(そうでなければ周期的振動ではない)と見なすことができる。駆動モータ103を同期駆動している、洗濯槽の回転数が検知可能であるなどで、洗濯槽の回転数が予め判明している場合は、振動間の時間差が洗濯槽の回転周期から所定値以上離れていれば、モータ駆動による振動ではないと判定できる。また、閾値Aについては、駆動モータ103の回転数によって振動の振れ幅が変化するため、回転数に応じて閾値Aを変更してもよい。
【0045】
S2のステップは、洗濯機11が待機モード中の生物侵入判定となるため、生じる可能性の振動は
図4Aもしくは
図4Cの振動である。そして、制御部102は、検知振動が
図4Cの振動であると判定した場合に、生物侵入ありとして処理をS3に移行させる。すなわち、最初に閾値Aを超える振動を検知してから所定時間内に、次の閾値Aを超える振動を検知しなければ、
図4Aの振動、つまり洗濯槽に洗濯物が投入された場合に生じる振動であると判定し、所定時間内に、次の閾値Aを超える振動を検知した場合には、
図4Cの振動、つまり生物が侵入した場合の振動であると判定する。所定時間は、ユーザが洗濯物を連続して投入可能な程度の時間間隔とすればよく、例えば、3秒以上とすればよい。
【0046】
S5のステップは、洗濯機11が運転モード中の生物侵入判定となるため、生じる可能性の振動は
図4A、
図4Bもしくは
図4Cの振動である。この場合は、S2のステップでの判定に加えて、上記した周期的振動であるかを判定する。制御部102は、検知振動が
図4Cの振動であると判定した場合に、生物侵入ありとして処理をS6に移行させる。
【0047】
また、洗濯機11が人感センサ107を含んでいる場合、洗濯槽への生物侵入が検知された場合の制御に、人感センサ107の検知結果を組み合わせてもよい。人感センサ107を用いる場合の制御は、上述した洗濯機10の制御と同様に行える。
【0048】
〔実施の形態3〕
図5は、本実施の形態3に係る洗濯機12の概略構成を示すブロック図である。洗濯機12は、
図5に示すように、
図3の洗濯機10における振動センサ111の代わりに振動検知スイッチ(検知部)121を備えた構成である。
【0049】
振動検知スイッチ121は、基本的には、洗濯槽内での洗濯物の偏り(重量アンバランス)によって運転時の振動が大きくなりすぎた場合にこれを検知するものである。振動検知スイッチ121は、洗濯槽に近接配置される振動検知レバーを介して洗濯機の異常振動(基準を超える振動)を検知することができる。具体的には、洗濯槽が基準以下の振動を行っている場合、洗濯槽は振動検知レバーに接触することはなく、この場合、振動検知スイッチ121の出力もOFFとなる。そして、洗濯槽に基準を超える振動が生じた場合、洗濯槽が振動検知レバーに接触して振動検知レバーを変位させ、変位した振動検知レバーが振動検知スイッチ121をONさせる。振動検知スイッチ121の出力は制御部102に送られ、制御部102は、洗濯槽における異常振動の有無を認識することができる。
【0050】
本実施の形態3に係る洗濯機12は、洗濯槽に子供やペットが入り込んだときに、振動検知スイッチ121の出力に基づいてこれを検知(入り込み検知)することができる。以下、洗濯機12の入り込み検知動作について、
図6~
図9のフローチャートを参照して説明する。
【0051】
洗濯機11が電源ONされず待機モードが維持されている間(S11でNO)、振動検知スイッチ121および制御部102は作動しており、洗濯槽への生物侵入(子供やペットの入り込みなど)を監視している(S12)。具体的には、制御部102(制御マイコン)がスリープ状態となって待機しており、振動検知スイッチ121の出力に基づいて制御部102を動作状態に移行する。そして、制御部102が、振動検知スイッチ121の出力に基づいて生物侵入の有無を判定する。洗濯機10が待機モードであっても、洗濯物の投入によって振動検知スイッチ121がONすることがある。このため、洗濯物の投入を生物侵入と誤検知することのないように、制御部102による判定が必要となる。
【0052】
図7は、S12における生物侵入判定のサブルーチンを示すフローチャートである。このサブルーチンでは、最初に振動検知スイッチ121が振動を検知した場合(S121でYES)、制御部102は動作状態に移行し、振動回数Xを1回にカウントし、かつ、時間tをTからダウンカウントを開始する(S122)。時間tのダウンカウント中に新たに振動が検知された場合(S123でYES)、時間tをTに戻して(タイムリフレッシュ)ダウンカウントを再開すると共に、振動回数Xを(X+1)にカウントアップする(S124)。
【0053】
その後、振動回数Xが閾値を超えていれば(S125でYES)、洗濯槽への生物侵入ありと判定され、制御部102は通知部106から警報音や警報画面を発してユーザへ異常を通知するとともに、通信部105を介してユーザの持つ通信端末へ異常発生の通知を行う(S126)。すなわち、洗濯槽へ子供やペットが入り込んだ場合、子供やペットが動くことで異常振動が連続して発生すると想定されるため、振動回数Xが閾値を超えることで生物侵入と判定することができる。
【0054】
また、S123で新たな振動が検知されず(S123でNO)、時間t=0となってタイムアップした場合(S127でYES)は、生物侵入なしと判定され、振動回数Xを0に初期化(S128)した後、サブルーチンを終了して、メインルーチン(
図6のフロー)の次の処理に移行する。すなわち、異常振動が何回か連続して発生しても、振動回数Xが閾値を超えることなくタイムアップとなれば、検知された異常振動は洗濯物の投入によって生じたものと想定される。尚、S125でNOとなりS127に移行した場合は、その時点でタイムアップとならず(S127でNO)、S123のステップに戻る。また、S121で振動の検知がなければ、洗濯機12はサブルーチンを終了して、メインルーチンの次の処理に移行する。
【0055】
ユーザによって電源ボタンが押されて洗濯機12が電源ONになると(S11でYES)、駆動モータ103が運転中であるか否かが判定される(S13)。駆動モータ103が運転中でなければ(S13でNO)、S14に移行して、生物侵入判定が実行される。駆動モータ103が運転中でなければ、振動検知スイッチ121によって検知される異常振動は、洗濯物の投入か子供やペットの入り込みによって発生するものである。このため、S14の生物侵入判定は、S12の生物侵入判定と同様、
図7のサブルーチンによって実行することができる。S14の生物侵入判定で洗濯槽への生物侵入ありと判定された場合は、制御部102は排水機構104を制御して、洗濯槽内の水を排水するようにしてもよい。また、制御部102は給水機構(不図示)を制御して、洗濯槽内へ給水しないようにしてもよい。
【0056】
駆動モータ103が運転中であれば(S13でYES)、洗濯機12は脱水運転中(S15)か撹拌運転中(S16)である。
図8は、S15における脱水運転中のサブルーチンを示すフローチャートである。
図9は、S16における撹拌運転中のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0057】
図8に示す脱水運転中のサブルーチンでは、振動検知スイッチ121が振動を検知した場合(S151でYES)、駆動モータ103の運転を停止(S152)した後、生物侵入の判定を行う(S153)。S153の生物侵入判定は、
図7のサブルーチンによって実行される。駆動モータ103の運転中における異常振動は、洗濯槽内での洗濯物の偏り(重量アンバランス)によって発生している可能性が高い。このため、脱水運転中に異常振動が検知された場合、重量アンバランスによる異常振動と生物侵入による異常振動とを判別するために、駆動モータ103の運転を停止してから生物侵入の判定を行う。駆動モータ103の運転を停止した状態であれば、S153における生物侵入判定を
図7のサブルーチンによって実行することができる。
【0058】
S153において、すなわち
図7のサブルーチンにおいて生物侵入ありと判定された場合、ユーザへの異常通知を行って(S126)、洗濯機12は待機モードへ移行する。一方、S153において生物侵入なしと判定された場合は、S151で検知された異常振動は重量アンバランスによるものと見なされる。この場合、洗濯機12は、洗濯槽内での洗濯物の偏りを均すため、バランス調整処理(S154)を行ってからS151のステップに戻る(脱水運転を再開する)。バランス調整処理によって異常振動がなくなれば、脱水運転の再開後にS151でNO判定となり、洗濯機12は正常に運転を終了し(S155)、サブルーチンを終了してメインルーチンの次の処理に移行する。
【0059】
図9に示す撹拌運転中のサブルーチンでは、振動検知スイッチ121が振動を検知した場合(S161でYES)、駆動モータ103の運転を停止(S162)した後、生物侵入の判定を行う(S163)。S163の生物侵入判定は、
図7のサブルーチンによって実行される。ここまでの動作は、撹拌運転中のサブルーチンにおけるS151~S153の処理と同様である。
【0060】
S163において、すなわち
図7のサブルーチンにおいて生物侵入ありと判定された場合、ユーザへの異常通知を行って(S126)、洗濯機12は待機モードへ移行する。尚、撹拌運転中に生物侵入ありの判定があった場合は、ユーザへの異常通知に加えて、洗濯槽内の水を排水するようにしてもよい。
【0061】
一方、S163において生物侵入なしと判定された場合は、そのままS161のステップに戻る(撹拌運転を再開する)。撹拌運転中は、洗濯槽に水が入っているため、重量アンバランスによる異常振動が発生しても、再開した撹拌運転によって洗濯物の偏りが自然に均され、異常振動がなくなることが多い。異常振動がなくなれば、撹拌運転の再開後にS161でNO判定となり、洗濯機12は正常に運転を終了し(S164)、サブルーチンを終了してメインルーチンの次の処理に移行する。
【0062】
また、洗濯機12が人感センサ107を含んでいる場合、洗濯槽への生物侵入が検知された場合の制御に、人感センサ107の検知結果を組み合わせてもよい。人感センサ107を用いる場合の制御は、上述した洗濯機10の制御と同様に行える。
【0063】
尚、
図6~
図9のフローチャートで説明した上記の入り込み検知動作は、実施の形態2の洗濯機11においても適用できる。すなわち、実施の形態2で説明した入り込み検知動作では、振動センサ111によって検知される振動波形から子供やペットの入り込みを判定していたが、本実施の形態3で説明した入り込み検知動作では、振動検知スイッチ121によって検知される異常振動の有無から子供やペットの入り込みを判定することができる。
【0064】
また、振動センサ111や振動検知スイッチ121の検知感度が変更可能である場合、待機モード時と運転モード時で振動センサ111や振動検知スイッチ121の検知感度を変更してもよい。この場合、待機モード時の検知感度を運転モード時の検知感度よりも高感度にすることが好ましい。さらには、脱水運転や撹拌運転中は、駆動モータ103の回転速度に合わせて振動センサ111のセンサ感度を変更してもよい。この場合、駆動モータ103の回転速度が大きいほどセンサ感度を大きくすることが好ましい。
【0065】
〔実施の形態4〕
上記実施の形態1~3では、洗濯機自身にセンサ類(重量センサ101、振動センサ111または振動検知スイッチ121)や通信部105および通知部106を備え、洗濯機自身が生物侵入を検知してユーザへの異常通知を行っていた。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、洗濯機に対して後付け可能な振動検知装置にセンサ類や通信部を設け、振動検知装置によって洗濯機への生物侵入検知やユーザへの異常通知を行うことも可能である。
【0066】
例えば、洗濯機のオプション装置として防水パンといったものがある。洗濯機用の防水パンは、洗濯機の脚部を載せる架台として用いられるものであり、洗濯機からの漏水が生じたときにこれを受け止めて床面への漏水を防止する機能を有している。このような防水パンに、実施の形態1で説明した重量センサ101、制御部102、通信部105および通知部106を備えれば、防水パンを洗濯機に対して後付け可能な振動検知装置として用いることができる。この場合の防水パンは、実施の形態1で説明した入り込み検知動作を適用して生物侵入検知やユーザへの異常通知を行うことができる。
【0067】
あるいは、防水パンに、実施の形態2で説明した振動センサ111、制御部102、通信部105および通知部106を備え、実施の形態2で説明した入り込み検知動作を適用することも可能である。また、防水パン以外にも、洗濯機の下に置かれて洗濯機の荷重が掛かるもの(例えばマットやゴム足)であれば、実施の形態1~3の何れかで説明した入り込み検知動作を適用することが可能である。
【0068】
また、振動検知装置の他の例として、振動検知装置を洗濯機の筐体側面にマグネットなどで貼り付けて使用する形態としてもよい。この場合の振動検知装置には洗濯機の荷重が掛からないため、実施の形態1で説明した入り込み検知動作の適用はできない。しかしながら、振動検知装置に実施の形態2で説明した振動センサ111、制御部102、通信部105および通知部106を備え、実施の形態2で説明した入り込み検知動作を適用することは可能である。
【0069】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【0070】
例えば、上記実施の形態1~3における洗濯機10~12は、通信部105および通知部106の両方を備える構成としているが、通信部105および通知部106の何れか一方のみを備える構成としてもよい。すなわち、特許請求の範囲に記載の通知部は、通信部105および通知部106の両方を含む概念である。また、上記実施の形態4における振動検知装置は、通信部105を備えることが基本であり、可能であればさらに通知部106を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10,11,12 洗濯機
101 重量センサ(検知部)
102 制御部(判定部)
103 駆動モータ
104 排水機構
105 通信部(通知部)
106 通知部(通知部)
107 人感センサ
111 振動センサ(検知部)
121 振動検知スイッチ(検知部)