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特許7368243骨用プレートの曲げ加工方法並びに曲げ加工用具および曲げ加工用具セット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】骨用プレートの曲げ加工方法並びに曲げ加工用具および曲げ加工用具セット
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/80 20060101AFI20231017BHJP
   A61B 17/58 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
A61B17/80
A61B17/58
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020006310
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021112367
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】592118103
【氏名又は名称】メイラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100089060
【弁理士】
【氏名又は名称】向山 正一
(72)【発明者】
【氏名】今井 隆浩
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特開昭47-021987(JP,A)
【文献】特表2017-511739(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0264100(US,A1)
【文献】国際公開第2015/131106(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/80
A61B 17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨用プレートの曲げ加工用具であって、
前記骨用プレートの曲げ加工用具は、
第1挟持面と、前記第1挟持面に対向し、近接および離間可能な第2挟持面と、前記第1挟持面または前記第2挟持面の一方に設けられ、前記骨用プレートが備える貫通孔内に進入可能かつ前記第1挟持面と前記第2挟持面間による前記骨用プレートの狭圧保持を妨げない突起を備え、
さらに、前記第1挟持面および前記第2挟持面は、曲げ加工対象の前記骨用プレートが有する貫通孔の周縁部位を、前記突起が前記貫通孔内に進入した状態にて、狭圧した状態を保持する狭圧保持機構を備えていることを特徴とする骨用プレートの曲げ加工用具。
【請求項2】
貫通孔を備える骨用プレートの曲げ加工用具であって、
前記骨用プレートの曲げ加工用具は、
先端面に第1挟持面を備える略棒状の第1部材と、
前記第1部材の側部を摺動する略棒状の第2部材と、
前記第2部材と連接し、かつ、前記第1部材の後端部外周面を被包する接続用筒状部材とを備え、
前記第2部材は、前記第1挟持面の前方において前記第1挟持面と対向する第2挟持面を備え、
前記骨用プレートの曲げ加工用具は、前記第1挟持面または前記第2挟持面の一方に設けられた突起を備え、
前記骨用プレートの曲げ加工用具は、前記第1挟持面と前記第2挟持面間に前記骨用プレートを挟持可能であり、
前記突起は、前記骨用プレートの前記貫通孔内に進入可能であり、かつ前記第1挟持面と前記第2挟持面間での前記骨用プレートの挟持を妨げないものであり、
前記接続用筒状部材は、前記第1部材の側部に前記第2部材が配置された状態にて、前記第1部材の前記後端部外周面上を軸方向に移動可能であり、
前記接続用筒状部材の前記移動により、前記接続用筒状部材は、前記第1挟持面と前記第2挟持面間の拡開を規制し、前記第1挟持面と前記第2挟持面において、前記突起が進入した前記骨用プレートの前記貫通孔の周縁部が移動不能に狭圧された状態を保持可能であることを特徴とする骨用プレートの曲げ加工用具。
【請求項3】
前記骨用プレートの曲げ加工用具は、前記第1挟持面と前記第2挟持面とが近づく方向に、前記第1部材または/および前記第2部材を付勢する付勢手段を備えている請求項に記載の骨用プレートの曲げ加工用具。
【請求項4】
前記接続用筒状部材は、軸方向への移動により、前記第1部材と当接する当接部を有し、前記当接部と前記第1部材との当接により、前記第1挟持面と前記第2挟持面間の拡開が規制される請求項2または3に記載の骨用プレートの曲げ加工用具。
【請求項5】
前記第2部材は、後端部の外側面に設けられた第2部材側螺合部を備え、前記接続用筒状部材は、内面に設けられ、前記第2部材側螺合部と螺合する筒状部材側螺合部を備え、前記接続用筒状部材の所定方向への回転により、前記接続用筒状部材は、前記第1部材の先端方向に移動する請求項2ないし4のいずれかに記載の骨用プレートの曲げ加工用具。
【請求項6】
前記第1挟持面または前記第2挟持面の他方は、前記突起を収納可能な孔部を備えている請求項1ないし5のいずれかに記載の骨用プレートの曲げ加工用具。
【請求項7】
前記突起は、前記骨用プレートに設けられた内面にねじ溝が形成された孔に挿通可能である請求項1ないし6のいずれかに記載の骨用プレートの曲げ加工用具。
【請求項8】
貫通孔を備える骨用プレートの曲げ加工用具であって、
前記骨用プレートの曲げ加工用具は、
先端面に第1挟持面を備える略棒状の第1部材と、
前記第1部材の側部を摺動する略棒状の第2部材と、
前記第2部材と連接し、かつ、前記第1部材の後端部外周面を被包する接続用筒状部材とを備え、
前記第2部材は、前記第1挟持面の前方において前記第1挟持面と対向する第2挟持面を備え、
前記骨用プレートの曲げ加工用具は、前記第1挟持面または前記第2挟持面の一方に設けられた突起を備え、前記突起は、前記骨用プレートの前記貫通孔内に進入可能であり、
前記第2部材は外面に第2部材側螺合部を備え、前記接続用筒状部材は内面に前記第2部材側螺合部と螺合する筒状部材側螺合部を備え、
前記接続用筒状部材は、内面に設けられ、前記第2部材側螺合部と螺合する筒状部材側螺合部を備え、前記接続用筒状部材の所定方向への回転により、前記接続用筒状部材は、前記第1部材の先端方向に移動するものであり、
前記接続用筒状部材は、前記第1部材の先端方向への移動により、前記第1部材と当接する当接部を有し、前記当接部と前記第1部材との当接により、前記第1挟持面と前記第2挟持面間の拡開が規制されることを特徴とする骨用プレートの曲げ加工用具。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の骨用プレートの曲げ加工用具と、
前記骨用プレートの曲げ加工用具により狭圧保持された部位以外の部位にて、前記骨用プレートを把持可能な把持部と略棒状の本体部とを備える把持用具とを備えることを特徴とする骨用プレートの曲げ加工用具セット。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかに記載の骨用プレートの曲げ加工用具を用いる骨用プレートの曲げ加工方法であって、
骨用プレートの曲げ加工用具を準備する工程と、
前記骨用プレートの前記貫通孔内に前記突起が進入し、かつ、前記第1挟持面と前記第2挟持面間に、前記骨用プレートが、狭圧された状態に保持する骨用プレート狭圧保持工程と、
前記第1挟持面と前記第2挟持面間に狭圧保持された前記骨用プレートを、手もしくは治具を用いて把持し、前記第1挟持面と前記第2挟持面間に狭圧保持された部位以外の部位にて、湾曲変形させる変形工程とを行うことを特徴とする骨用プレートの曲げ加工方法。
【請求項11】
前記骨用プレートの曲げ加工用具は、前記突起が、前記骨用プレートの前記貫通孔を貫通可能であり、前記第1挟持面または前記第2挟持面の他方は、前記貫通孔より突出する前記突起を収納可能な孔部を備えている請求項10に記載の骨用プレートの曲げ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨折部等の治療に用いられる骨用プレートの曲げ加工方法並びに曲げ加工用具および曲げ加工用具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
大腿骨、腓骨、脛骨、上腕骨、橈骨および尺骨等の骨の端部(遠位端部および近位端部)もしくはその近傍における骨折は、再接合を必要とする多くの骨折片を生じることがある。そのような骨折部の治療においては、骨折片の位置や姿勢を修復した後、骨折片と骨本体とを固定するため、骨折片と骨本体とに架橋的に取り付けられる骨用プレートが用いられる。
骨は、患者によって形状が異なる。臨床現場等においては、予め所定の形状で製造された骨用プレートを、その取り付け部(骨折部)の形状に合わせて、曲げ加工する必要がある。骨用プレートとしては、強靱かつ軽量であり生体安全性の高い金属製のものがよく使用される。医師が骨用プレートを曲げ加工する際には、曲げ加工用具が利用される。
【0003】
例えば、特開2014-113365(特許文献1)や特許4071563(特許文献2)においては、骨接合用プレートを掛け渡すように間隔を空けて配置された2つの受け部と、受け部の間に向かって移動する押圧部とを備え、受け部間に支持した骨接合用プレートを、受け部と押圧部との間で挟んで、押圧部で押圧することにより曲げる加工用具が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-113365
【文献】特許4071563
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2に記載の曲げ加工用具では、グリップ部(手動操作部)を握って骨用プレートを保持する必要がある。そのため、作業中にグリップ部を握る力が緩むと、骨用プレートがずれてしまったり、脱落したりして、所望の曲げ加工ができないことがある。
さらに、骨用プレートには、ドリルやピンを挿通するための孔が形成されているが、曲げ加工の際に孔が歪んでしまうことがある。
そこで、本発明は、骨用プレートの曲げ加工性を向上できる骨用プレートの曲げ加工方法並びに曲げ加工用具および曲げ加工用具セットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 骨用プレートの曲げ加工用具であって、
前記骨用プレートの曲げ加工用具は、
第1挟持面と、前記第1挟持面に対向し、近接および離間可能な第2挟持面と、前記第1挟持面または前記第2挟持面の一方に設けられ、前記骨用プレートが備える貫通孔内に進入可能かつ前記第1挟持面と前記第2挟持面間による前記骨用プレートの狭圧保持を妨げない突起を備え、
さらに、前記第1挟持面および前記第2挟持面は、曲げ加工対象の前記骨用プレートが有する貫通孔の周縁部位を、前記突起が前記貫通孔内に進入した状態にて、狭圧した状態を保持する狭圧保持機構を備えていることを特徴とする骨用プレートの曲げ加工用具。
【0007】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(2) 貫通孔を備える骨用プレートの曲げ加工用具であって、
前記骨用プレートの曲げ加工用具は、
先端面に第1挟持面を備える略棒状の第1部材と、
前記第1部材の側部を摺動する略棒状の第2部材と、
前記第2部材と連接し、かつ、前記第1部材の後端部外周面を被包する接続用筒状部材とを備え、
前記第2部材は、前記第1挟持面の前方において前記第1挟持面と対向する第2挟持面を備え、
前記骨用プレートの曲げ加工用具は、前記第1挟持面または前記第2挟持面の一方に設けられた突起を備え、
前記骨用プレートの曲げ加工用具は、前記第1挟持面と前記第2挟持面間に前記骨用プレートを挟持可能であり、
前記突起は、前記骨用プレートの前記貫通孔内に進入可能であり、かつ前記第1挟持面と前記第2挟持面間での前記骨用プレートの挟持を妨げないものであり、
前記接続用筒状部材は、前記第1部材の側部に前記第2部材が配置された状態にて、前記第1部材の前記後端部外周面上を軸方向に移動可能であり、
前記接続用筒状部材の前記移動により、前記接続用筒状部材は、前記第1挟持面と前記第2挟持面間の拡開を規制し、前記第1挟持面と前記第2挟持面において、前記突起が進入した前記骨用プレートの前記貫通孔の周縁部が移動不能に狭圧された状態を保持可能であることを特徴とする骨用プレートの曲げ加工用具。
【0008】
(3) 前記骨用プレートの曲げ加工用具は、前記第1挟持面と前記第2挟持面とが近づく方向に、前記第1部材または/および前記第2部材を付勢する付勢手段を備えている上記(2)に記載の骨用プレートの曲げ加工用具。
(4) 前記接続用筒状部材は、軸方向への移動により、前記第1部材と当接する当接部を有し、前記当接部と前記第1部材との当接により、前記第1挟持面と前記第2挟持面間の拡開が規制される上記(2)または(3)に記載の骨用プレートの曲げ加工用具。
(5) 前記第2部材は、後端部の外側面に設けられた第2部材側螺合部を備え、前記接続用筒状部材は、内面に設けられ、前記第2部材側螺合部と螺合する筒状部材側螺合部を備え、前記接続用筒状部材の所定方向への回転により、前記接続用筒状部材は、前記第1部材の先端方向に移動する上記(2)ないし(4)のいずれかに記載の骨用プレートの曲げ加工用具。
(6) 前記第1挟持面または前記第2挟持面の他方は、前記突起を収納可能な孔部を備えている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の骨用プレートの曲げ加工用具。
(7) 前記突起は、前記骨用プレートに設けられた内面にねじ溝が形成された孔に挿通可能である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の骨用プレートの曲げ加工用具。
【0009】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(8) 貫通孔を備える骨用プレートの曲げ加工用具であって、
前記骨用プレートの曲げ加工用具は、
先端面に第1挟持面を備える略棒状の第1部材と、
前記第1部材の側部を摺動する略棒状の第2部材と、
前記第2部材と連接し、かつ、前記第1部材の後端部外周面を被包する接続用筒状部材とを備え、
前記第2部材は、前記第1挟持面の前方において前記第1挟持面と対向する第2挟持面を備え、
前記骨用プレートの曲げ加工用具は、前記第1挟持面または前記第2挟持面の一方に設けられた突起を備え、前記突起は、前記骨用プレートの前記貫通孔内に進入可能であり、
前記第2部材は外面に第2部材側螺合部を備え、前記接続用筒状部材は内面に前記第2部材側螺合部と螺合する筒状部材側螺合部を備え、
前記接続用筒状部材は、内面に設けられ、前記第2部材側螺合部と螺合する筒状部材側螺合部を備え、前記接続用筒状部材の所定方向への回転により、前記接続用筒状部材は、前記第1部材の先端方向に移動するものであり、
前記接続用筒状部材は、前記第1部材の先端方向への移動により、前記第1部材と当接する当接部を有し、前記当接部と前記第1部材との当接により、前記第1挟持面と前記第2挟持面間の拡開が規制されることを特徴とする骨用プレートの曲げ加工用具。
【0010】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(9) 上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の骨用プレートの曲げ加工用具と、
前記骨用プレートの曲げ加工用具により狭圧保持された部位以外の部位にて、前記骨用プレートを把持可能な把持部と略棒状の本体部とを備える把持用具とを備えることを特徴とする骨用プレートの曲げ加工用具セット。
【0011】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(10) 上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の骨用プレートの曲げ加工用具を用いる骨用プレートの曲げ加工方法であって、
骨用プレートの曲げ加工用具を準備する工程と、
前記骨用プレートの前記貫通孔内に前記突起が進入し、かつ、前記第1挟持面と前記第2挟持面間に、前記骨用プレートが、狭圧された状態に保持する骨用プレート狭圧保持工程と、
前記第1挟持面と前記第2挟持面間に狭圧保持された前記骨用プレートを、手もしくは治具を用いて把持し、前記第1挟持面と前記第2挟持面間に狭圧保持された部位以外の部位にて、湾曲変形させる変形工程とを行うことを特徴とする骨用プレートの曲げ加工方法。
(11) 前記骨用プレートの曲げ加工用具は、前記突起が、前記骨用プレートの前記貫通孔を貫通可能であり、前記第1挟持面または前記第2挟持面の他方は、前記貫通孔より突出する前記突起を収納可能な孔部を備えている上記(10)に記載の骨用プレートの曲げ加工方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の骨用プレートの曲げ加工方法は、第1挟持面および第1挟持面と対向する第2挟持面と、第1挟持面または第2挟持面の一方に、骨用プレートが備える貫通孔内に進入可能かつ第1挟持面と第2挟持面間による骨用プレートの狭圧保持を妨げない突起を備える骨用プレートの曲げ加工用具を準備する工程と、骨用プレートの貫通孔内に突起が進入し、かつ、第1挟持面と第2挟持面間に、骨用プレートが、狭圧された状態に保持する骨用プレート狭圧保持工程と、狭圧保持された骨用プレートを、手もしくは治具を用いて把持し、狭圧保持された部位以外の部位にて、湾曲変形させる変形工程とを行う。そのため、骨用プレートの曲げ加工中における、骨用プレートのずれや脱落が阻止され、骨用プレートの曲げ加工性を向上できる。また、第1挟持面と第2挟持面による骨用プレートの貫通孔付近の挟持および貫通孔内に進入した突起、によって、貫通孔の歪みが抑制されることからも、骨用プレートの曲げ加工性を向上できる。
【0013】
本発明の骨用プレートの曲げ加工用具は、第1挟持面と、第1挟持面に対向し、近接および離間可能な第2挟持面と、第1挟持面または第2挟持面の一方に設けられ、骨用プレートが備える貫通孔内に進入可能かつ第1挟持面と第2挟持面間による骨用プレートの狭圧保持を妨げない突起を備え、さらに、第1挟持面および第2挟持面は、曲げ加工対象の骨用プレートが有する貫通孔およびその周縁部位を、突起が貫通孔内に進入した状態にて、狭圧した状態を保持する狭圧保持機構を備えている。そのため、骨用プレートの曲げ加工中における、骨用プレートのずれや脱落が阻止され、骨用プレートの曲げ加工性を向上できる。また、第1挟持面と第2挟持面による骨用プレートの貫通孔付近の挟持および骨用プレートの貫通孔内に進入した突起によって、貫通孔の歪みが抑制されることからも、骨用プレートの曲げ加工性を向上できる。
【0014】
本発明の骨用プレートの曲げ加工用具は、先端面に第1挟持面を備える略棒状の第1部材と、第1挟持面の前方に位置し、第1挟持面と対向する第2挟持面と、第1部材の側部を摺動する略棒状の第2部材と、第1部材の側部に第2部材が配置された状態にて、第2部材と連接し、かつ、第1部材の後端部外周面を被包し、かつ外周面上を軸方向に移動可能な接続用筒状部材とを備え、さらに、接続用筒状部材は、第1部材の軸方向に移動可能であり、かつ、第1部材の軸方向に移動した接続用筒状部材は、第1部材の後方への移動を規制し、かつ、第1挟持面と第2挟持面との間で骨用プレートが挟持された状態を保持可能であり、さらに、第1挟持面または第2挟持面の一方には、骨用プレートが備える貫通孔内に進入可能かつ第1挟持面と第2挟持面間による骨用プレートの挟持を妨げない突起を備えている。そのため、骨用プレートの曲げ加工中における、骨用プレートのずれや脱落が阻止され、骨用プレートの曲げ加工性を向上できる。また、第1挟持面と第2挟持面による骨用プレートの貫通孔付近の挟持および骨用プレートの貫通孔内に進入した突起によって、貫通孔の歪みが抑制されることからも、骨用プレートの曲げ加工性を向上できる。
【0015】
本発明の骨用プレートの曲げ加工用具セットは、所定の骨用プレートの曲げ加工用具と、骨用プレートの曲げ加工用具により狭圧保持された部位以外の部位にて、骨用プレートを把持可能な把持部と略棒状の本体部とを備える把持用具とを備える。そのため、骨用プレートの曲げ加工中における、骨用プレートのずれや脱落が阻止され、骨用プレートの曲げ加工性を向上できる。また、第1挟持面と第2挟持面による骨用プレートの貫通孔付近の挟持および骨用プレートの貫通孔内に進入した突起によって、貫通孔の歪みが抑制されることからも、骨用プレートの曲げ加工性を向上できる。さらに、曲げ加工用具と把持用具とを用いて、てこの原理を利用してより大きな曲げ力(曲げモーメント)を骨用プレートに作用させることで、より小さな力で骨用プレートの曲げ加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の骨用プレートの曲げ加工用具の実施例を示す正面図である。
図2図2は、図1に示した本発明の骨用プレートの曲げ加工用具の実施例を示す右側面図である。
図3図3は、図1に示した本発明の骨用プレートの曲げ加工用具の実施例を示す平面拡大説明図である。
図4図4は、図2のA-A断面説明図である。
図5図5は、図2のB-B断面拡大説明図である。
図6図6は、図2のC-C断面拡大説明図である。
図7図7は、本発明において曲げ加工対象となる骨用プレートの参考例を示す平面図である。
図8図8は、図7のD-D断面拡大説明図である。
図9図9は、本発明の骨用プレートの曲げ加工方法の実施例の一工程を示す説明図である。
図10図10は、図9に示す工程の次の一工程を示す説明図である。
図11図11は、図10に示す工程の次の一工程を示す説明図である。
図12図12は、図11に示す工程の次の一工程を示す説明図である。
図13図13は、図12のE方向矢視説明図である。
図14図14は、本発明の実施例の骨用プレートの曲げ加工用具セットの使用状態を説明するための説明図である。
図15図15は、本発明の骨用プレートの曲げ加工用具の他の実施例を説明するための断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の骨用プレートの曲げ加工用具を図面に示した実施例を用いて説明する。なお、本実施例においては、図1における上下方向を前後方向として、また上側を先端側、下側を後端側として、説明することがある。
【0018】
図1ないし図6に示されるように、本実施例の骨用プレートの曲げ加工用具1は、第1挟持面11と、第1挟持面11に対向し、近接および離間可能な第2挟持面21と、第1挟持面11または第2挟持面21の一方(この実施例では、第1挟持面11)に設けられ、骨用プレート5が備える貫通孔51内に進入可能かつ第1挟持面11と第2挟持面21間による骨用プレート5の狭圧保持を妨げない突起12を備える。さらに、第1挟持面11および第2挟持面21は、曲げ加工対象の骨用プレート5が有する貫通孔51およびその周縁部位を、突起12が貫通孔51内に進入した状態にて、狭圧した状態を保持する狭圧保持機構3を備えている。
【0019】
また、図1ないし図6に示されるように、本実施例における骨用プレートの曲げ加工用具1は、先端面(図1における上側の端面)に第1挟持面11を備える略棒状の第1部材10と、第1挟持面11の前方(図1における上方)に位置し、第1挟持面11と対向する第2挟持面21と、第1部材10の側部を摺動する略棒状の第2部材20と、第1部材10の側部に第2部材20が配置された状態にて、第2部材20と連接し、かつ、第1部材10の後端部外周面13を被包し、かつ外周面13上を軸方向(図1における上下方向)に移動可能な接続用筒状部材30とを備える。さらに、接続用筒状部材30は、第1部材10の軸方向に移動可能であり、かつ、第1部材10の軸方向に移動した接続用筒状部材30は、第1部材10の後方(図1における下方)への移動を規制し、かつ、第1挟持面11と第2挟持面21との間で骨用プレート5が挟持された状態を保持可能である。さらに、第1挟持面11または第2挟持面21の一方(この実施例では、第1挟持面11)には、骨用プレート5が備える貫通孔51内に進入可能かつ第1挟持面11と第2挟持面21間による骨用プレート5の挟持を妨げない突起12を備えている。
【0020】
さらに、曲げ加工用具1は、第1挟持面11または第2挟持面21の他方(この実施例では、第2挟持面21)は、突起12を収納可能な孔部22を備えている。
【0021】
図1ないし図6に示す実施例の骨用プレートの曲げ加工用具1は、略棒状の第1部材10と、略棒状の第2部材20と、接続用筒状部材30とを備える。
具体的には、第1部材10は、前後方向に延びる略棒状の部材であり、金属製の丸棒部材を切削加工する等して作製される。第1部材10の先端側部分は、先端方向に向かって幅(図2における左右方向の寸法)が徐々に狭くなっており、先端面により第1挟持面11が形成されている。第1挟持面11には、丸棒状(断面円形)の突起12が、前方に向かって突出するように設けられている。第1部材11の中央部分の外周面(曲げ加工用具1の使用時に作業者が触れる面)には、滑り止め等、操作性向上のためにローレット加工(断面図においては図示省略)が施されている。
【0022】
第1部材10の側部[第2部材20が配置される側(図1および図4における右側)の部分]には、第1部材10の軸方向に延びる平滑な摺動面14が形成されている。第1部材10の中央部分には、摺動面14を挟むように突出する部分15,15が形成されている。これらの部分15,15は、第1挟持面11と第2挟持面21とを近接および離間させるために、第1部材10と第2部材20とを軸方向に相対変位(軸方向へ摺動)させる際のガイドとして機能する。また、この実施例では、摺動面14は、第1部材10の側部の基端から先端まで延びている。摺動面14は、平坦面となっている。
【0023】
第1部材10の後端側部分には、後述する付勢手段(コイルばね40)を収容可能な収容凹部16が設けられている。収容凹部16は、第1部材10の側部において第2部材20の側に向かって開口するとともに、第1部材10の後端部において後方に向かって開口している。第1部材10の後端側部分は、ほぼ円筒形に形成されており、かつ、その側部が開口している。このため、第1部材10の後端側部分は、部分的に側部が開口した樋形状となっている。第1部材10の後端側部分は、中央部分(上述したローレット加工が施されている部分)に比べて小径とされており、この部分が、後述する接続用筒状部材30に被包可能とされている。境界部分に段部17が形成されている。なお、第1部材10の後端部(中央部分に比べて小径とされた後端側部分のうち、後方側に位置する部分)は、その外周面13が後述する筒状部材側螺合部31と干渉しないように、更に小径とされている。
【0024】
第2部材20は、前後方向に延びる略棒状の部材であり、金属製の棒状部材を切削加工する等して作製される。第2部材20の先端側部分は、図2に示すように、先端方向に向かって幅(図2における左右方向の寸法)が徐々に狭くなっており、先端部が、上述した第1部材10の先端部とほぼ同等の幅とされている。第2部材20の先端部には、第1部材10側に向かって突出する上部突出部23が設けられており、上部突出部23の後方に向かって露出する略平滑な面が第2挟持面21を形成している。第2挟持面21は、第1挟持面11の前方に位置し、第1挟持面11と対向している。第2挟持面21は、第1挟持面11に設けられた突起12を収納可能な(突起12の外径と同等ないしは僅かに大きな内径を備える)孔部22が形成されている。ここでは、孔部22は、上部突出部23を前後方向に貫通している。なお、孔部22は、貫通孔でなくてもよい。
【0025】
第2部材20の第1部材10側の部分には、第2部材20の軸方向に延び、第1部材1の摺動面14と対向する平滑な摺動面24が形成されている。摺動面24の一部(第2部材20の後端側部分)は、第1部材10の収容凹部16の第2部材20側の開口の側部を覆うものとなっている。
【0026】
第2部材20の後端部には、第1部材10側に向かって突出する下部突出部25が設けられている。下部突出部25は、その外形が、第1部材10の収容凹部16の内形と略同等ないしは僅かに小さくされており、収容凹部16内に進入可能であり、収納凹部16内を軸方向に移動可能となっている。また、第1部材10の収容凹部16と第2部材20の摺動面24および下部突出部25との間により、後述する付勢手段(コイルばね40)の収容空間が形成されている。
【0027】
第2部材20の後端部は、第1部材10と反対側の外周面に形成されたねじ溝からなる、第2部材側螺合部26を備えている。第2部材側螺合部26は、後述する接続用筒状部材30の内面に形成された筒状部材側螺合部31と螺合可能とされている。また、第1部材10の後端部の外面は、接続用筒状部材30の螺合部(雌形螺合部)と螺合可能な螺合部を持たず、接続用筒状部材30の回転の障害とならない平滑面となっている。
【0028】
接続用筒状部材30は、前後方向に延びる略円筒状の部材であり、金属製の棒状部材を切削加工する等して作製される。接続用筒状部材30は、第1部材10の側部に第2部材20が配置された状態にて、第1部材10および第2部材20の後端側部分の外周面を被包している。
【0029】
図4に示されるように、接続用筒状部材30は、その後端側部分の内面に形成された、第2部材側螺合部26と螺合可能な筒状部材側螺合部31を備えている。この実施例では、筒状部材側螺合部31は、ねじ山(雌ねじ)となっている。接続用筒状部材30は筒状部材側螺合部31において、第2部材20の第2部材側螺合部26と螺合することで、第2部材20と連接されている。この実施例の曲げ加工用具1においては、第2部材20は、後端部に第2部材側螺合部20を備え、接続用筒状部材30は、内面に筒状部材側螺合部31を備え、接続用筒状部材30を回転させることにより、第2部材側螺合部26と筒状部材側螺合部31が進行するとともに、接続用筒状部材30は、第1部材10の先端方向に移動可能とされている。
【0030】
接続用筒状部材30は、その先端面が、第1部材10の段部17と当接可能な当接部32となっている。第1部材10の段部17と接続用筒状部材30の当接部32とが当接することにより、第1部材10の後方への移動が規制される。すなわち、接続用筒状部材30は、第1部材10方向への移動により、第1挟持面11と第2挟持面21間により骨用プレート5を挟持した時に、第1部材10と当接する当接部32を有し、当接部32と第1部材10との当接により、第1挟持面11と第2挟持面21間の拡開が規制される。言い換えれば、曲げ加工用具1においては、第1部材10の段部17と、接続用筒状部材30の当接部32と、接続用筒状部材30の螺合部と、第2部材20の螺合部とにより、曲げ加工対象である骨用プレート5を狭圧した状態を保持する狭圧保持機構3が構成されている。
【0031】
接続用筒状部材30の外周面(曲げ加工用具1の使用時に作業者が触れる面)には、滑り止め等、操作性向上のためにローレット加工(断面図においては図示省略)が施されている。
【0032】
曲げ加工用具1は、上述した第1部材10、第2部材20および接続用筒状部材30とが組み合わされることで、外形が、全体として略丸棒状(図3参照)のコンパクトなものとなっている。なお、曲げ加工用具1には、作業時(骨用プレート5の曲げ加工時)に邪魔にならない部位および範囲において、転がり防止構造(例えば、突起や平面等)が設けられていてもよい。
【0033】
骨用プレートの曲げ加工用具1は、第1挟持面11と第2挟持面21とが近づく方向に、第1部材10または/および第2部材20を付勢する付勢手段(コイルばね40)を備えている。
【0034】
具体的には、図4に示されるように、曲げ加工用具1においては、付勢手段としてのコイルばね40が、第1部材10に設けられた収容凹部16と、第2部材20の摺動面24および下部突出部25とで区画された空間内に配置されている。コイルばね40は、当該空間内に、予め圧縮された状態で収容されている。これにより、第1挟持面11と第2挟持面21とが近づく方向へ(より具体的には、第1挟持面11を前方へ、第2挟持面21を後方へ)、第1部材10および第2部材20が相対的に付勢されている。言い換えれば、図4に示されるように、第2部材20と接続用筒状部材30は、両者の螺合部により連結しているため、、付勢部材10により、第1部材10が、前方に押された状態となっている。
【0035】
曲げ加工用具1においては、第1部材10に骨用プレート5の貫通孔51に進入可能な突起12が形成されている。そのため、骨用プレート5の曲げ加工時に、突起12を貫通孔51に進入させることで、骨用プレート5のずれや脱落が阻止され、骨用プレートの曲げ加工性を向上できる。また、貫通孔51の内面が突起12により支持され、第1部材10の第1挟持面11と第2部材20の第2挟持面21により、骨用プレート5の貫通孔付近が、上下面より挟持されるため、骨用プレート5の曲げ加工に伴って貫通孔51が歪んでしまうことが防止される。特に、貫通孔51が、その内面にねじ溝が形成された孔である場合、骨用プレート5の曲げ加工時に貫通孔51(ねじ溝)が変形すると、その後骨ねじ(雄ねじ)が螺入できないという問題を生じる。曲げ加工用具1は、そのような問題を回避するために有効である。
【0036】
また、曲げ加工用具1においては、第2挟持面21は、第1挟持面11に設けられた突起12を収納可能な孔部22を備えている。そのため、突起12を貫通孔51内に十分に進入ないしは貫通させた場合であっても、突起12と第2挟持面21とが干渉することがなく、突起12が骨用プレート5の狭圧保持の妨げとなることが回避される。また、孔部22は、骨用プレート5を把持しない状態において、突起12の全体を収納可能であることが好ましい。言い換えれば、第1挟持面11と第2挟持面21は、当接可能であることが好ましい。
【0037】
曲げ加工用具1は、曲げ加工対象である骨用プレート5を狭圧した状態を保持する狭圧保持機構3を備えている。具体的には、曲げ加工用具1においては、接続用筒状部材30が第2部材20と連接(螺合)されており、第1部材10の段部17と接続用筒状部材30の当接部32とが当接することにより、第1部材10の後方への移動が規制される。すなわち、接続用筒状部材30の当接部32と第1部材10の段部17との当接と、接続用筒状部材30と第2部材20との連接(螺合)により、第1挟持面11と第2挟持面21間の拡開が規制される。これにより、所望の状態で挟持した骨用プレート5のずれや脱落が阻止され、骨用プレート5の曲げ加工性を向上できる。
【0038】
また、曲げ加工用具1においては、接続用筒状部材30を回転させることにより、第2部材側螺合部26と筒状部材側螺合部31が進行するとともに、接続用筒状部材30は、第1部材10の先端方向に移動可能とされているため、骨用プレート5を挟持する力(狭圧力)を微調整することもできる。
【0039】
曲げ加工用具1は、付勢手段としてのコイルばね40を備え、第1挟持面11と第2挟持面21とが近づく方向に、第1部材10および第2部材20が付勢されている。これにより、骨用プレート5の曲げ加工中(特に、上述した骨用プレート5の狭圧保持前)に、第1挟持面11と第2挟持面21との間で、作業者が力を加えることなく、骨用プレート5が付勢手段の付勢力により挟持(仮挟持)される。そのため、骨用プレート5のずれや脱落が阻止され、骨用プレート5の曲げ加工性を向上できる。
【0040】
次に、本発明の骨用プレートの曲げ加工方法を、図7ないし図13に示した実施例を用いて説明する。ここでは、上述した曲げ加工用具1を用いた骨用プレート5の曲げ加工方法について説明する。
【0041】
なお、本実施例において曲げ加工対象となる骨用プレート5は、図7および図8に示されるように、略矩形平板状で、複数の孔を有している。それらの孔の一部は、内面にねじ溝53が形成された貫通孔51,52である(本実施例において、突起12を進入させる貫通孔を51、その他の貫通孔を52として区別している)。なお、貫通孔51,52の内面に形成されたねじ溝は、頭部にねじ山(雄ねじ部)を備える骨用ねじを固定するためのものである。
【0042】
骨用プレート5の形成材料としては、チタン合金(具体的には、JIST7401-2のTi-6Al-4V、ASTM F-136 Ti-6Al-4V ELI)、純チタン(具体的には、JIST7401-1)、ステンレス鋼(具体的には、JISG4303のSUS304、SUS316)などが好ましい。
【0043】
本実施例では、第1挟持面11および第1挟持面11と対向する第2挟持面21と、第1挟持面11または第2挟持面21の一方(ここでは、第1挟持面11)に、骨用プレート5が備える貫通孔51内に進入可能かつ第1挟持面11と第2挟持面21間による骨用プレート5の狭圧保持を妨げない突起12を備える骨用プレートの曲げ加工用具1を準備する工程と、骨用プレート5の貫通孔51内に突起12が進入し、かつ、第1挟持面11と第2挟持面21間に、骨用プレート5が、狭圧された状態に保持する骨用プレート狭圧保持工程と、狭圧保持された骨用プレート5を、手もしくは治具を用いて把持し、狭圧保持された部位以外の部位にて、湾曲変形させる変形工程とを行う。
【0044】
具体的には、先ず、上述したような曲げ加工用具1、すなわち、第1挟持面11および第1挟持面11と対向する第2挟持面21と、第1挟持面11に、骨用プレート5が備える貫通孔51内に進入可能かつ第1挟持面11と第2挟持面21間による骨用プレート5の狭圧保持を妨げない突起12を備える骨用プレートの曲げ加工用具1を準備する。ここで、突起12は、骨用プレート5に設けられた内面にねじ溝53が形成された孔(貫通孔51)に挿通可能とされている。
【0045】
また、ここで準備する曲げ加工用具1は、突起12が、骨用プレート5の貫通孔51を貫通可能であり、第1挟持面11または第2挟持面21の他方(ここでは、第2挟持面21)は、貫通孔51より突出する突起12を収納可能な孔部22を備えている。
【0046】
骨用プレート5を配置する前に、図9に示されるように、接続用筒状部材30の当接部32と、第1部材10(段部17)との当接を解除しておく。具体的には、接続用筒状部材30を逆回転させることにより、第2部材側螺合部26と筒状部材側螺合部31を後退させて、接続用筒状部材30を第1部材10の後端方向に、第1挟持面11と第2挟持面21との間が骨用プレート5を配置するために十分に拡開可能なように、接続用筒状部材30を後方に移動しておく。
【0047】
次いで、図10に示されるように、骨用プレート5を、第1挟持面11と第2挟持面21との間に配置する。曲げ加工用具1においては、付勢手段(コイルばね40)の付勢力により、第1挟持面11と第2挟持面21とが近づく方向に、第1部材10および第2部材20が付勢されている。そのため、作業者が、コイルばね40の付勢力に抗して、第1挟持面11と第2挟持面21とを拡開させる(具体的には、第1部材10を後方に移動させる)必要がある。第1挟持面11と第2挟持面21との間を、骨用プレート5を配置するために十分に拡開した状態で、骨用プレート5の貫通孔51内に突起12を進入させる。
【0048】
ここで、作業者が、第1挟持面11と第2挟持面21とを拡開させる力(コイルばね40の付勢力に抗して第1部材10を後方に移動させる力)を解除すると、図11に示されるように、第1挟持面11と第2挟持面21とが近づく方向に付勢され、それにより、骨用プレート5が第1挟持面11と第2挟持面21との間で仮挟持される。
【0049】
次いで、図12に示されるように、接続用筒状部材30を回転させることにより、第2部材側螺合部26と筒状部材側螺合部31を進行させて、接続用筒状部材30を、第1部材10の先端方向に移動させる。接続用筒状部材30は、第1部材10の先端方向への移動により、当接部32と第1部材10(段部17)と当接する。これにより、骨用プレート5の貫通孔51内に突起12が進入した状態で、第1挟持面11と第2挟持面21間に、骨用プレート5が狭圧される。このとき、接続用筒状部材30の移動量(回転量)を微調整することで、挟持力を微調整することができる。接続用筒状部材30の当接部32と第1部材10(段部17)との当接により、第1挟持面11と第2挟持面21間の拡開が規制されることで、骨用プレート5が狭圧された状態に保持される。
【0050】
次いで、図13に示されるように、曲げ加工用具1において狭圧保持された骨用プレート5を、手もしくは治具[ここでは、手6(図13中に細破線にて示す)]を用いて把持し、狭圧保持された部位(貫通孔51およびその周縁部位)以外の部位にて、湾曲変形させる。ここでは、骨用プレート5に一対の切欠部54,54が形成されている(図7参照)。骨用プレート5の切欠部54,54が形成された部分は、他の部分に比べて強度が低くされている。そのため、変形し易く、骨用プレート5において意図的に切欠部54,54を変形させられるようになっている。
【0051】
図14に示されるように、曲げ加工用具1は、曲げ加工用具1により狭圧保持された部位以外の部位にて、骨用プレート5を把持可能な把持部71と略棒状の本体部72とを備える把持用具7とともに、骨用プレートの曲げ加工用具セット8として用いることもできる。本実施例では、把持用具7として、突起12が設けられていないこと以外は、上述した曲げ加工用具1と同等の構造を有する把持用具7が用いられている。すなわち、把持用具7においては、前後方向の拡開量が調整可能な第1挟持面73および第2挟持面74間において、骨用プレート5の一部を挟持可能とされている。
【0052】
このような曲げ加工用具セット8を用いた場合、骨用プレート5の曲げ加工時に、把持用具7の本体部72(曲げ加工用具1の第1部材10、第2部材20、および接続用筒状部材30に相当する部分であって、把持用具7において把持部71よりも下方に延びる部分)を操作することで、骨用プレート5に、より大きな曲げ力(曲げモーメント)を作用させることができ、より容易に骨用プレート5の曲げ加工を行うことができる。なお、把持用具7は、上述した狭圧保持機構(接続用筒状部材と第1部材との当接により骨用プレートの挟持状態を維持する構造)や付勢手段(コイルばね)等を備えていないものであってもよく、把持部が予め所定の拡開量にて固定されているものであってもよい。
【0053】
なお、曲げ加工用具1においては、突起12が第2挟持面21に設けられていてもよい。また、孔部21が第1挟持面11に設けられていてもよい。曲げ加工用具1においては、突起12を骨用プレート5の貫通孔51内に進入させることで骨用プレート5の仮保持をすることができるため、突起12は、第1挟持面11または第2挟持面21のうち、曲げ加工用具1の使用時に下方(後方)となる面に設けられることが好ましい。
【0054】
曲げ加工用具1においては、孔部22は設けられていなくてもよい。例えば、突起12が、曲げ加工対象の骨用プレート5の厚さよりも短い場合、突起12が貫通孔51の一端側から進入しても、他端側から突出しないため、突起12が骨用プレート5の狭圧保持を妨げることはない。
【0055】
付勢手段は、コイルばね40に限られるものではなく、他の形態のばね(例えば、板ばねや皿ばね等)や、公知の弾性体(例えば、ウレタン等)が適宜に用いられ得る。また、付勢手段は、曲げ加工用具1内に形成される空間に配置されるものに限られず、曲げ加工用具1の外部に露出するように配置されていてもよい。
【0056】
なお、図15に示されるように、曲げ加工用具9は付勢手段(コイルばね40)を備えないものでもよい。その場合、作業者の骨用プレート5の仮保持(狭圧保持機構3による骨用プレート5の狭圧保持前)を補助するために、第1部材10の外周面に、ローレット加工の他、第1挟持面11と第2挟持面21とを近づける方向に第1部材10を付勢操作し易くするための凹部91を設けてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,9 曲げ加工用具
10 第1部材
11 第1挟持面
12 突起
20 第2部材
21 第2挟持面
3 狭圧保持機構
30 接続用筒状部材
5 骨用プレート
51 貫通孔
7 把持用具
71 把持部
72 本体部
8 曲げ加工用具セット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15