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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】車両用ホイール
(51)【国際特許分類】
   B60B 3/10 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
B60B3/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020006814
(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公開番号】P2021112991
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】391006430
【氏名又は名称】中央精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】天野 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】山住 敦史
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-064601(JP,U)
【文献】実開平06-012101(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0023509(US,A1)
【文献】特開2005-119355(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102008012041(DE,A1)
【文献】特開2018-020640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 1/00 - 11/10
B60B 17/00 - 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられるハブ部(11)と、略円筒形のリム部(12)と、前記リム部と前記ハブ部とに接続された複数のスポーク部(13)とを備え、隣接するスポーク部の間に窓部(14)がホイール軸線方向へ貫通するように形成された車両用ホイール(10)であって、
前記スポーク部のホイール裏側には、ホイール周方向の一端部または両端部を含む部分に、ホイール周方向の中央から前記窓部側に向かうに従ってホイール表側に傾く傾斜面(181)が形成されており、
前記傾斜面のすべては、前記スポーク部をホイール軸線方向に2等分したとき、ホイール表側の区分(A)に含まれており、
前記スポーク部は、ホイール軸線方向に厚い厚肉部(131)と、前記厚肉部よりも薄い薄肉部(132)とを有し、
前記傾斜面は、前記薄肉部に形成されており、
前記薄肉部のうち前記傾斜面を含む部分の厚さが一定であることを特徴とする車両用ホイール。
【請求項2】
前記スポーク部は、ホイール周方向の幅がホイール軸線方向の厚さよりも大きく形成され、
前記傾斜面の少なくとも一部は、前記スポーク部をホイール周方向に4等分したとき、前記窓部に最も近い区分(1,4)に含まれている請求項1に記載の車両用ホイール。
【請求項3】
前記スポーク部のホイール周方向の一端部または両端部は、前記スポーク部をホイール軸線方向に2等分したとき、ホイール表側の区分(A)に含まれている請求項1または2に記載の車両用ホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーク部の間に窓部が形成された車両用ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ホイールにおいて、スポーク部に設けた突起部により空気の流れを変えて空力特性を改善する技術が知られている。例えば、特許文献1には、スポーク部のホイール周方向の端部に突起部をホイール表側に向かって突設し、突起部により車体外面に沿う走行風の流れを変えて空力特性を改善する技術が記載されている。特許文献2には、ホイールデザインの自由度を考慮して突起部をスポーク部の裏側に突設し、突起部により走行風をホイール側に引き寄せ、空力特性を改善する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-20640号公報
【文献】特開2012-224136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の発明者は、スポーク部の形状によって、車両に及ぼす空力特性を変化させる点に着目した。その一方で、スポーク部の形状によっては、ホイールデザインの自由度を低下させる点を懸念した。特に、特許文献1は、ホイールの表側に突起部を設けるためデザインの自由度が低下する。本発明は、ホイールデザインの自由度の低下を抑制しつつ、車両に及ぼす空力特性を改善することができる車両用ホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用ホイール(10)は、車両に取り付けられるハブ部(11)と、略円筒形のリム部(12)と、リム部とハブ部とに接続された複数のスポーク部(13)とを備え、隣接するスポーク部の間に窓部(14)がホイール軸線方向へ貫通するように形成されている。スポーク部のホイール裏側には、ホイール周方向の一端部または両端部を含む部分に、ホイール周方向の中央から窓部側に向かうに従ってホイール表側に傾く傾斜面(181)が形成されている。
傾斜面のすべては、スポーク部をホイール軸線方向に2等分したとき、ホイール表側の区分(A)に含まれる。
スポーク部が、ホイール軸線方向に厚い厚肉部(131)と、厚肉部よりも薄い薄肉部(132)とを含み、傾斜面が薄肉部に形成される。そして、薄肉部のうち傾斜面を含む部分の厚さが一定である。
【0006】
好適には、スポーク部は、ホイール周方向の幅がホイール軸線方向の厚さよりも大きく形成される。この場合、傾斜面の少なくとも一部は、スポーク部をホイール周方向に4等分したとき、窓部に最も近い区分(1,4)に含まれる
【0007】
また好適には、スポーク部のホイール周方向の一端部または両端部は、スポーク部をホイール軸線方向に2等分したとき、ホイール表側の区分(A)に含まれる。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、スポーク部のホイール裏側には、ホイール周方向の一端部または両端部を含む部分に、ホイール周方向の中央から窓部側に向かうに従ってホイール表側に傾く傾斜面が形成されているので、車両走行時の空力特性を改善することができる。しかも、傾斜面がスポーク部のホイール裏側に設けられているため、ホイールデザインの自由度の低下を抑制しつつ空力特性を改善させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態を示す車両用ホイールの正面図である。
図2図1の車両用ホイールの背面図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4】スポーク部の実施例1を示す図1のIV-IV線断面図である。
図5】スポーク部の実施例2を示す断面図である。
図6】スポーク部の実施例3を示す断面図である。
図7】スポーク部の実施例4を示す断面図である。
図8】スポーク部の実施例5を示す断面図である。
図9】スポーク部の実施例6を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(一実施形態)
以下、本発明を自動車に装備されるアルミニウム合金製の車両用ホイールに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。図1図2図3に示すように、本実施形態の車両用ホイール10は、自動車の車軸(図示略)に取り付けられるハブ部11と、タイヤが装着される円筒形のリム部12と、リム部12とハブ部11とに接続された例えば5つのスポーク部13とを備えている。
【0011】
各スポーク部13は、ホイール軸線方向(図3の鎖線矢印方向)に厚い厚肉部131と、厚肉部131よりも薄い薄肉部132と、を備えている。厚肉部131は、ハブ部11とリム部12との間を放射状に延びている。薄肉部132は、厚肉部131の表側からホイール周方向の両側に張り出すように形成されている(図1図2参照)。
【0012】
窓部14は、ホイール周方向に隣接する2つのスポーク部13(薄肉部132)の間にホイール軸線方向に貫通するように形成され、ホイール半径方向に長い矩形に画定されている。
【0013】
図4は、スポーク部13の実施例1を示す図1のIV-IV線断面図である。IV-IV線断面は、ホイール径方向に延びるスポーク部13の外径寄りをホイール周方向に切断した断面である。ここで、スポーク部13の断面を説明するため、スポーク部13の断面をホイール軸線方向に2等分した場合、ホイール表側を区分(A)、ホイール裏側を区分(B)と定義する。また、スポーク部13の断面をホイール周方向に4等分した場合、一端部側から順にそれぞれ区分(1)、区分(2)、区分(3)、区分(4)と定義する。なお、それぞれの区分が交わる部分を区分(A1)のように示す。
【0014】
このスポーク部13の断面は、ホイール周方向の幅寸法がホイール軸線方向の厚さ寸法よりも大きく形成されている。スポーク部13のホイール周方向の両端部となる薄肉部132は、区分(A)に含まれ、厚肉部131のみが区分(B)に含まれている。
【0015】
薄肉部132は、区分(A1,A4)において厚肉部131からホイール表側に且つ窓部14に向かって斜めに張り出すように形成されている。このため、スポーク部13の断面のホイール表側には、凹所19が形成されている。また、薄肉部132のホイール裏側には、ホイール周方向の中央から窓部14側に向かうに従ってホイール表側に傾く傾斜面181が形成されている。
【0016】
本実施形態の車両用ホイール10の空力特性を調査した結果、傾斜面181が空力特性の改善に寄与することが確認できた。この傾斜面181は、ホイールデザインに影響を及ぼすホイール表側ではなく、ホイール裏側に形成されている。したがって、本実施形態の車両用ホイール10によれば、ホイールデザインの自由度の低下を抑制しつつ空力特性を改善させることができる。
【0017】
(その他の実施形態)
次に、本発明のその他の実施形態について説明する。図5図9は、スポーク部13のその他の実施例を示す断面図である。
【0018】
図5に示す実施例2のスポーク部13は、厚肉部133のホイール周方向の両側から薄肉部134が窓部14へ向かって張り出しており、薄肉部134のホイール裏側にはホイール周方向の中央から窓部14側に向かうに従ってホイール表側に傾く傾斜面182が形成されている。このため、実施例2のスポーク部13の断面は、実施例1のスポーク部13の断面に対して、スポーク部13の表側が平坦に形成され凹所19が形成されていない点や薄肉部134の肉厚がホイール周方向の中央側から窓部14側に向かうに従って小さくなる点で異なる。
【0019】
実施例2のスポーク部13の断面を備えた車両用ホイール10の空力特性を調査した結果、実施例1と同様に傾斜面182が空力特性の改善に寄与することが確認できた。このように本実施形態の車両用ホイール10によれば、ホイールデザインに影響を及ぼすホイール表側の形状に関わらず、ホイール裏側に設けた傾斜面181,182によって空力特性を改善させることができる。
【0020】
図6に示す実施例3のスポーク部13は、ホイール表側を平坦に形成するとともに区分(4)側を比較的厚肉に形成した厚肉部135とし、区分(1)側を比較的薄肉に形成した薄肉部136としており、ホイール周方向に非対称の形状で形成されている。そして、薄肉部136は、区分(A1,A2)においてホイール周方向の中央から窓部14に向かうに従ってホイール表側に傾く傾斜面183が形成されている。このように、スポーク部13の断面がホイール周方向に非対称に形成されていても傾斜面183によって空力特性を改善させることができる。ただし、この場合車両の走行方向(車両用ホイール10の回転方向)によって空力特性が変化する点に留意する必要がある。
【0021】
図7に示す実施例4のスポーク部13は、厚肉部137のホイール周方向の両側から薄肉部138が窓部14へ向かって張り出しており、薄肉部138のホイール裏側にはホイール周方向の中央から窓部14側に向かうに従ってホイール表側に傾く傾斜面184が形成されている。このため、実施例4のスポーク部13の断面は、実施例2の断面に対して、薄肉部138の先端が比較的厚く形成されている点や傾斜面184の一部が区分(B1,B4)にも形成されている点で異なる。実施例1や実施例2のスポーク部13を備える車両用ホイール10と実施例4のスポーク部13を備える車両用ホイール10との空力特性を比較調査した結果、実施例1や実施例2の傾斜面181、182の方が実施例4の傾斜面184よりも空力特性の改善に寄与することが確認できた。このことから、傾斜面のすべてが区分(A)に含まれている方が空力特性の改善に寄与するものと推定する。
【0022】
図8に示す実施例5のスポーク部13は、厚肉部139のホイール周方向の両側からホイール軸線方向全体に亘って薄肉部140が窓部14へ向かって張り出しており、薄肉部140のホイール裏側にはホイール周方向の中央から窓部14側に向かうに従ってホイール表側に傾く傾斜面185がホイール軸方向全体に亘って形成されている。このように、傾斜面185をホイール軸方向全体に亘って形成しても空力特性を改善させることができる。
【0023】
図9に示す実施例6のスポーク部13は、区分(B)において、薄肉部142が厚肉部141から窓部14へ向かって張り出しており、薄肉部142のホイール裏側にはホイール周方向の中央から窓部14側に向かうに従ってホイール表側に傾く傾斜面186が形成されている。このため実施例6のスポーク部13の断面は、傾斜面186のすべてが区分(B)に形成されるとともに、ホイール周方向の両端部が区分(B)に形成されている。実施例6のスポーク部13を備える車両用ホイール10と他の実施例のスポーク部13を備える車両用ホイール10との空力特性を比較調査した結果、実施例6の傾斜面186は他の実施例の傾斜面181~185よりも空力特性の改善への寄与度が小さいことが確認できた。このことから、傾斜面のホイール周方向の端部は、区分(A)に含まれている方が空力特性の改善に寄与するものと推定する。
【0024】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するように、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の構成を適宜に変更して実施することも可能である。
【0025】
(1)上記実施形態では、スポーク部13のホイール表側の形状を平坦面に形成したり、凹所19を形成したり比較的単純な形状としているが、本発明の傾斜面を有するものであればホイール表側の形状はあらゆる形状を採用することができる。
【0026】
(2)上記実施形態では、傾斜面が平坦な面で形成されているが、ホイール周方向の中央から窓部側に向かうに従ってホイール表側に傾く傾斜面であれば、傾斜面を曲面で形成したり、傾斜面に段差を付けたりしてもよい。
【0027】
(3)上記実施形態では、厚肉部の全体が所定の厚みで形成されているが、軽量化の観点から厚肉部のホイール裏側を部分的に凹み形状にしても良い。
【0028】
(4)上記実施形態では、本発明がアルミニウム合金製の車両用ホイールに適用されているが、他の実施形態において、本発明を、例えば、マグネシウム・樹脂などの材料で成形された車両用ホイールに適用してもよい。
【0029】
(5)スポーク部に傾斜面を設ける際に、鋳造工程で鋳造されたホイール素材に対して機械加工により傾斜面を形成したり、スポーク部に対して溶接で傾斜面を設けたり、車両用ホイールのカバーによりスポーク部に傾斜面を設けたりするなど、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各種の加工方法を採用することができる。
【0030】
(6)上記実施形態を説明する図において、スポーク部の断面の厚肉部などはホイール軸線方向と平行に示しているが、実際の車両ホイールにおいては鋳造等の製造上の都合により必要な抜け勾配(例えば、5度程度)を設けても良い。この場合において製造上必要な抜け勾配として認識される部分は、本願発明における傾斜面には含まれないものとする。
【0031】
(7)上記実施形態を説明する図において、スポーク部の薄肉部の先端が鋭角に示されているが、先端が曲面であっても良い。ただし、先端が曲面である場合でも、単なる面取り形状など所定の半径(曲率)で形成された部分のみを有するものは、本願発明における傾斜面には含まれないものとする。
【0032】
(8)その他、スポーク部および窓部の数ならびに形状を任意に変更することも可能である。
【符号の説明】
【0033】
10・・・車両用ホイール、11・・・ハブ部、12・・・リム部、
13・・・スポーク部、14・・・窓部、
131,133,135,137,139,141・・・厚肉部、
132,134,136,138,140,142・・・薄肉部、
181~186・・・傾斜面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9