(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】超音波診断装置および画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/08 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
A61B8/08
(21)【出願番号】P 2020009215
(22)【出願日】2020-01-23
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 大晃
(72)【発明者】
【氏名】松永 智史
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0014578(US,A1)
【文献】特開2017-023834(JP,A)
【文献】特開2013-150825(JP,A)
【文献】特開2017-099769(JP,A)
【文献】特開2017-086896(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0128037(US,A1)
【文献】特開2015-231438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンモグラフィ画像に設定されている関心領域に基づいて、前記マンモグラフィ画像上での関心領域から体表までの第1の距離を算出
し、前記第1の距離に基づいて、超音波画像上での体表から関心領域までの第2の距離を算出する算出部と、
前記マンモグラフィ画像と、前記超音波画像とを表示するとともに、前記第2の距離を用いて、前記超音波画像内に前記関心領域の深さ方向における位置を示すマーカを表示する表示制御部と
、
前記マーカの表示位置に応じた超音波送受信に関するパラメータを用いて前記超音波送受信を制御する制御部と
を具備する、
超音波診断装置。
【請求項2】
前記表示制御部は
、前記マンモグラフィ画像上での前記関心領域の前記深さ方向に直交する平面における位置を示すボディマークを表示する、
請求項1に記載の
超音波診断装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記マンモグラフィ画像の検査と、前記超音波画像の検査との体位の違いによる乳房の変形推定を用いて第2の距離を算出する、
請求項
1または請求項2に記載の
超音波診断装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記第2の距離と、異なる二方向から撮影された二つのマンモグラフィ画像に設定されているそれぞれの関心領域の位置情報とに基づいて前記超音波画像上での三次元の位置情報を算出し、
前記表示制御部は、前記三次元の位置情報に基づいて前記超音波画像上に前記マーカを表示する、
請求項
1から請求項
3までのいずれか一項に記載の
超音波診断装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記マンモグラフィ画像と、前記マーカが重畳された前記超音波画像とを並べて表示する、
請求項1から請求項
4までのいずれか一項に記載の
超音波診断装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記関心領域のサイズに応じた前記マーカを表示する、
請求項1から請求項
5までのいずれか一項に記載の
超音波診断装置。
【請求項7】
前記マーカは、前記超音波画像上での前記関心領域の深さまたは位置を示す、
請求項1から請求項
6までのいずれか一項に記載の
超音波診断装置。
【請求項8】
前記マーカは、直線または円形である、
請求項1から請求項
7までのいずれか一項に記載の
超音波診断装置。
【請求項9】
前記算出部は、
マンモグラフィ装置におけるX線管およびX線検出器を指示するアーム
の角度を用いて、マンモグラフィ画像上での関心領域から体表までの方向を推定し、推定された方向に基づいて前記第1の距離を算出する、
請求項1から請求項
8までのいずれか一項に記載の
超音波診断装置。
【請求項10】
前記算出部は、異なる二方向から撮影された二つのマンモグラフィ画像を取得し、前記二つのマンモグラフィ画像に設定されている関心領域に基づいて、前記マンモグラフィ画像上での前記第1の距離を算出する、
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記パラメータは、フォーカス位置であり、
前記制御部は、前記マーカの表示位置に応じた前記フォーカス位置を用いて前記超音波送受信を制御する
請求項
1から請求項10までのいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記超音波画像を取得するために用いられる超音波プロー
ブ
を更に具備する、
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記表示制御部は、前記超音波プローブの位置に応じて、前記マーカのサイズおよび色の少なくとも一方が変化する、
請求項
12に記載の超音波診断装置。
【請求項14】
マンモグラフィ画像に設定されている関心領域に基づいて、前記マンモグラフィ画像上での関心領域から体表までの第1の距離を算出する算出部と、
前記第1の距離に基づいて、超音波画像内に前記関心領域の深さ方向における位置を示すマーカを表示する表示制御部と、
前記超音波画像を取得するために用いられる超音波プローブと
を具備し、
前記表示制御部は、前記超音波プローブの位置に応じて、前記マーカのサイズおよび色の少なくとも一方が変化する、超音波診断装置。
【請求項15】
コンピュータを、
マンモグラフィ画像に設定されている関心領域に基づいて、前記マンモグラフィ画像上での関心領域から体表までの第1の距離を算出
し、前記第1の距離に基づいて、超音波画像上での体表から関心領域までの第2の距離を算出する手段と、
前記マンモグラフィ画像と、前記超音波画像とを表示するとともに、前記第2の距離を用いて、前記超音波画像内に前記関心領域の深さ方向における位置を示すマーカを表示する手段
と、
前記マーカの表示位置に応じた超音波送受信に関するパラメータを用いて前記超音波送受信を制御する手段
として機能させるための画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超音波診断装置および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乳がん検診等に用いられる乳腺画像診断では、マンモグラフィ画像の検査の後に、超音波画像の検査が実施されるようになってきている。これに伴い、マンモグラフィ画像上の所望の位置に関心領域を設定(ポインティング)し、関心領域の位置に対応する線等を乳房のボディマーク上に描画する機能が開発されている。この機能は、関心領域の位置に対応する線等を描画することにより、後段の超音波画像の検査を支援することから、以下では、超音波診断支援機能と称する。
【0003】
しかし、以上のような関心領域が描画されたボディマークでは、関心領域の深さ方向の位置は表現されていなかった。よって、操作者は、マンモグラフィ画像上の関心領域から深さ方向の位置を読み取り、超音波画像上の位置を推測する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、超音波画像を利用した乳腺画像診断の利便性を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る画像処理装置は、算出部と、表示制御部とを備える。算出部は、マンモグラフィ画像に設定されている関心領域に基づいて、マンモグラフィ画像上での関心領域から体表までの第1の距離を算出する。表示制御部は、第1の距離に基づいて、前記超音波画像内に関心領域の深さ方向における位置を示すマーカを表示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態におけるマーカ表示処理の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図3は、第1の実施形態におけるマンモグラフィ画像の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態における超音波画像の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態におけるマーカ表示処理を実行した第1の表示例である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態におけるマーカ表示処理を実行した第2の表示例である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態におけるマーカ表示処理の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2の実施形態におけるボディマーク上の関心領域の位置と三次元マーカとの関係の一例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態における超音波画像の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態におけるマーカ表示処理を実行した第1の表示例である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態におけるマーカ表示処理を実行した第2の表示例である。
【
図12】
図12は、第3の実施形態に係る画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、マンモグラフィ画像上の関心領域の位置とボディマークとの関係の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、超音波診断装置および画像処理装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示す図である。
図1の超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101とを有している。装置本体100は、入力装置102および表示装置103と接続されている。また、装置本体100は、ネットワークNWを介して外部装置104と接続されている。外部装置104は、例えば、PACS(Picture Archiving and Communication Systems)を搭載したサーバなどである。
【0010】
超音波プローブ101は、例えば、装置本体100からの制御に従い、被検体である生体P内のスキャン領域について超音波スキャンを実行する。超音波プローブ101は、例えば、複数の圧電振動子、圧電振動子に設けられる整合層、および圧電振動子から後方への超音波の伝搬を防止するバッキング材等を有する。超音波プローブ101は、例えば、複数の超音波振動子が所定の方向に沿って配列された一次元アレイリニアプローブである。超音波プローブ101は、装置本体100と着脱自在に接続される。超音波プローブ101には、オフセット処理、および超音波画像をフリーズさせるフリーズ操作等の際に押下されるボタンが配置されてもよい。
【0011】
複数の圧電振動子は、装置本体100が有する後述の超音波送信回路110から供給される駆動信号に基づいて超音波を発生する。これにより、超音波プローブ101から生体Pへ超音波が送信される。超音波プローブ101から生体Pへ超音波が送信されると、送信された超音波は、生体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として複数の圧電素子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流または心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向の速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。超音波プローブ101は、生体Pからの反射波信号を受信して電気信号に変換する。
【0012】
図1には、一つの超音波プローブ101と装置本体100との接続関係を例示している。しかしながら、装置本体100には、複数の超音波プローブを接続することが可能である。接続された複数の超音波プローブのうちいずれを超音波スキャンに使用するかは、切り替え操作によって任意に選択することができる。
【0013】
装置本体100は、超音波プローブ101により受信された反射波信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体100は、超音波送信回路110と、超音波受信回路120と、内部記憶回路130と、画像メモリ140と、入力インタフェース150と、出力インタフェース160と、通信インタフェース170と、処理回路180とを有している。
【0014】
超音波送信回路110は、超音波プローブ101に駆動信号を供給するプロセッサである。超音波送信回路110は、例えば、トリガ発生回路、遅延回路、およびパルサ回路等により実現される。トリガ発生回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返して発生する。遅延回路は、超音波プローブから発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子毎の遅延時間を、トリガ発生回路が発生する各レートパルスに対し与える。パルサ回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に設けられる複数の超音波振動子へ駆動信号(駆動パルス)を印加する。遅延回路により各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子の表面からの送信方向が任意に調整可能となる。
【0015】
また、超音波送信回路110は、駆動信号によって、超音波の出力強度を任意に変更することができる。超音波診断装置では、出力強度を大きくすることにより、生体P内での超音波の減衰の影響を小さくすることができる。超音波診断装置は、超音波の減衰の影響を小さくすることによって、受信時において、S/N比の大きい反射波信号を取得することができる。
【0016】
一般的に、超音波が生体P内を伝播すると、出力強度に相当する超音波の振動の強さ(これは、音響パワーとも称する)が減衰する。音響パワーの減衰は、吸収、散乱および反射などによって起こる。また、音響パワーの減少の度合いは、超音波の周波数および超音波の放射方向の距離に依存する。例えば、超音波の周波数を大きくすることにより、減衰の度合いは大きくなる。また、超音波の放射方向の距離が長くなるほど、減衰の度合いは大きくなる。
【0017】
超音波受信回路120は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を施し、受信信号を生成するプロセッサである。超音波受信回路120は、超音波プローブ101によって取得された超音波の反射波信号に対する受信信号を生成する。具体的には、超音波受信回路120は、例えば、プリアンプ、A/D変換器、復調器、およびビームフォーマ等により実現される。プリアンプは、超音波プローブ101が受信した反射波信号をチャネル毎に増幅してゲイン補正処理を行う。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をディジタル信号に変換する。復調器は、ディジタル信号を復調する。ビームフォーマは、例えば、復調されたディジタル信号に受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与えて、遅延時間が与えられた複数のディジタル信号を加算する。ビームフォーマの加算処理により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調された受信信号が発生する。
【0018】
内部記憶回路130は、例えば、磁気的記憶媒体、光学的記憶媒体、または半導体メモリ等、プロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を有する。内部記憶回路130は、超音波送受信を実現するためのプログラム、後述するマーカ表示処理に関するプログラム、および各種データ等を記憶している。プログラム、および各種データは、例えば、内部記憶回路130に予め記憶されていてもよい。また、プログラムおよび各種データは、例えば、非一過性の記憶媒体に記憶されて配布され、非一過性の記憶媒体から読み出されて内部記憶回路130にインストールされてもよい。また、内部記憶回路130は、入力インタフェース150を介して入力される操作に従い、処理回路180で生成されるBモード画像データおよび造影画像データ等を記憶する。内部記憶回路130は、記憶している画像データを、通信インタフェース170を介して外部装置104等に転送することも可能である。
【0019】
なお、内部記憶回路130は、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、およびフラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。内部記憶回路130は、記憶しているデータを可搬性記憶媒体へ書き込み、可搬性記憶媒体を介してデータを外部装置104に記憶させることも可能である。
【0020】
画像メモリ140は、例えば、磁気的記憶媒体、光学的記憶媒体、または半導体メモリ等、プロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を有する。画像メモリ140は、入力インタフェース150を介して入力されるフリーズ操作直前の複数フレームに対応する画像データを保存する。画像メモリ140に記憶されている画像データは、例えば、連続表示(シネ表示)される。
【0021】
内部記憶回路130、および画像メモリ140は、必ずしもそれぞれが独立した記憶装置により実現されなくてもよい。内部記憶回路130、および画像メモリ140が単一の記憶装置により実現されてもよい。また、内部記憶回路130、および画像メモリ140のそれぞれが複数の記憶装置により実現されてもよい。
【0022】
入力インタフェース150は、入力装置102を介し、操作者からの各種指示を受け付ける。入力装置102は、例えば、マウス、キーボード、パネルスイッチ、スライダースイッチ、トラックボール、ロータリーエンコーダ、操作パネル、およびタッチコマンドスクリーン(TCS:Touch Command Screen)である。入力インタフェース150は、例えばバスを介して処理回路180に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を処理回路180へ出力する。なお、入力インタフェース150は、マウスおよびキーボード等の物理的な操作部品と接続するものだけに限られない。例えば、超音波診断装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路180へ出力する回路も入力インタフェースの例に含まれる。
【0023】
出力インタフェース160は、例えば処理回路180からの電気信号を表示装置103へ出力するためのインタフェースである。表示装置103は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイ等の任意のディスプレイである。表示装置103は、入力装置102を兼ねたタッチパネル式のディスプレイでもよい。出力インタフェース160は、例えばバスを介して処理回路180に接続され、処理回路180からの電気信号を表示装置103に出力する。
【0024】
通信インタフェース170は、例えばネットワークNWを介して外部装置104と接続され、外部装置104との間でデータ通信を行う。
【0025】
処理回路180は、例えば、超音波診断装置1の中枢として機能するプロセッサである。処理回路180は、内部記憶回路130に記憶されているプログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。処理回路180は、例えば、Bモード処理機能181と、ドプラ処理機能182と、画像生成機能183(画像生成部)と、取得機能184(取得部)と、算出機能185(算出部)と、表示制御機能186(表示制御部)と、システム制御機能187とを有している。
【0026】
Bモード処理機能181は、超音波受信回路120から受け取った受信信号に基づき、Bモードデータを生成する機能である。Bモード処理機能181において処理回路180は、例えば、超音波受信回路120から受け取った受信信号に対して包絡線検波処理、および対数圧縮処理等を施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。生成されたBモードデータは、2次元的な超音波走査線(ラスタ)上のBモードRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
【0027】
また、処理回路180は、Bモード処理機能181により、造影エコー法、例えば、コントラストハーモニックイメージング(Contrast Harmonic Imaging:CHI)を実行することができる。即ち、処理回路180は、造影剤が注入された生体Pの反射波データ(高調波成分または分周波成分)と、生体P内の組織を反射源とする反射波データ(基本波成分)とを分離することができる。これにより、処理回路180は、生体Pの反射波データから高調波成分または分周波成分を抽出して、造影画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
【0028】
造影画像データを生成するためのBモードデータは、造影剤を反射源とする反射波の信号強度を輝度で表したデータとなる。また、処理回路180は、生体Pの反射波データから基本波成分を抽出して、組織画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
【0029】
なお、CHIを行う際、処理回路180は、上述したフィルタ処理を用いた方法とは異なる方法により、ハーモニック成分(高調波成分)を抽出することができる。ハーモニックイメージングでは、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)法や位相変調(PM:Phase Modulation)法、AM法及びPM法を組み合わせたAMPM法と呼ばれる映像法が行なわれる。
【0030】
AM法、PM法及びAMPM法では、同一の走査線に対して振幅や位相が異なる超音波送信を複数回(複数レート)行う。これにより、超音波受信回路120は、各走査線で複数の反射波データを生成し出力する。そして、処理回路180は、各走査線の複数の反射波データを、変調法に応じた加減算処理することで、高調波成分を抽出する。そして、処理回路180は、高調波成分の反射波データに対して包絡線検波処理等を行なって、Bモードデータを生成する。
【0031】
例えば、PM法が行われる場合、超音波送信回路110は、処理回路180が設定したスキャンシーケンスにより、例えば(-1,1)のように、位相極性を反転させた同一振幅の超音波を、各走査線で2回送信させる。そして、超音波受信回路120は、「-1」の送信に対応する反射波データと、「1」の送信に対応する反射波データとを生成し、処理回路180は、これら2つの反射波データを加算する。これにより、基本波成分が除去され、2次高調波成分が主に残存した信号が生成される。そして、処理回路180は、この信号に対して包絡線検波処理等を行って、CHIのBモードデータ(造影画像データを生成するためのBモードデータ)を生成する。
【0032】
CHIのBモードデータは、造影剤を反射源とする反射波の信号強度を輝度で表わしたデータとなる。また、CHIでPM法が行われる場合、処理回路180は、例えば、「1」の送信に対応する反射波データをフィルタ処理することで、組織画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
【0033】
ドプラ処理機能182は、超音波受信回路120から受け取った受信信号を周波数解析することで、スキャン領域に設定されるROI(Region Of Interest:関心領域)内にある移動体のドプラ効果に基づく運動情報を抽出したデータ(ドプラ情報)を生成する機能である。生成されたドプラ情報は、2次元的な超音波走査線上のドプラRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
【0034】
画像生成機能183は、Bモード処理機能181により生成されたデータに基づいて、Bモード画像データを生成する機能である。例えば、画像生成機能183において処理回路180は、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の画像データ(表示画像データ)を生成する。具体的には、処理回路180は、RAWデータメモリに記憶されたBモードRAWデータに対してRAW-ピクセル変換、例えば、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じた座標変換を実行することで、ピクセルから構成される2次元Bモード画像データ(超音波画像データとも称する)を生成する。換言すると、処理回路180は、画像生成機能183により、超音波の送受信によって、連続する複数のフレームにそれぞれ対応する複数の超音波画像(医用画像)を生成する。
【0035】
また、処理回路180は、2次元Bモード画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、およびγカーブ補正、並びにRGB変換等の各種処理を実行することで、画像データをビデオ信号に変換する。処理回路180は、ビデオ信号を表示装置103に表示させる。なお、処理回路180は、操作者が入力装置により各種指示を入力するためのユーザインタフェース(GUI:Graphical User Interface)を生成し、生成したGUIを表示装置103に表示させてもよい。
【0036】
システム制御機能187は、超音波診断装置1全体の動作を統括して制御する機能である。例えば、システム制御機能187において処理回路180は、超音波の送受信に関するパラメータに基づいて超音波送信回路110および超音波受信回路120を制御する。尚、取得機能184、算出機能185、および表示制御機能186については、後述される。
【0037】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の基本的な構成について説明した。次に、このような構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、以下に説明する処理回路の各機能により、マンモグラフィ画像から算出された病変位置を超音波画像上に反映させることができる。
【0038】
処理回路180において、取得機能184は、マンモグラフィ画像を取得する機能である。具体的には、処理回路180は、例えば、PACSに保存された対象患者のマンモグラフィ画像を取得する。この時、処理回路180は、対象患者について、CC方向にて撮影されたマンモグラフィ画像およびMLO方向にて撮影されたマンモグラフィ画像の少なくとも一方を取得する。本実施形態では、CC方向にて撮影されたマンモグラフィ画像を取得するものとする。
【0039】
本実施形態におけるマンモグラフィ画像は、例えば、乳房を模式的に表した模式図(以降では、ボディマークと称する)と、関心領域とがそれぞれ対応付けられているものとする。ボディマークおよび関心領域は、マンモグラフィ画像上に重畳して表示される。尚、「マンモグラフィ画像に関心領域が対応付けられている」は、「マンモグラフィ画像に関心領域が設定されている」と言い換えられてもよい。
【0040】
図13は、マンモグラフィ画像上の関心領域の位置とボディマークとの関係の一例を説明するための図である。
図13のボディマークBMは、右の乳房を示し、乳房の領域を表す円形の領域(以下、乳房領域)と、腋窩部の領域を表す略三角形の領域(以下、腋窩領域)とを有する。尚、以降では、ボディマークにおいて、ボディマークの左下を基準として、左から右へ向かう方向をX方向、下から上へ向かう方向をY方向、X方向およびY方向に垂直な手前から奥へ向かう方向をZ方向と定義する。
【0041】
ボディマークBM上には、超音波診断支援機能により、直線L1および直線L2が重畳されている。直線L1は、CC方向にて撮影されたマンモグラフィ画像MG1上の病変位置LP1を基準とした撮影方向を表す。直線L2は、MLO方向にて撮影されたマンモグラフィ画像MG2上の病変位置LP2を基準とした撮影方向を表す。よって、直線L1および直線L2の交点は、マンモグラフィ画像MG1およびマンモグラフィ画像MG2によって推定されるボディマークBM上の病変位置である。
【0042】
また、マンモグラフィ装置におけるX線管およびX線検出器を支持するアームの角度(アーム角度)は、撮像方向、即ち直線L1,L2に対応している。よって、CC方向のアーム角度を0度とすると、MLO方向のアーム角度は、直線L1から直線L2まで傾けた角度ANである。尚、アーム角度は、マンモグラフィ画像に対応付けられていてもよい。
【0043】
処理回路180において、算出機能185は、マンモグラフィ画像上での関心領域から体表までの第1の距離を算出し、超音波画像上での体表から関心領域までの第2の距離を算出する機能である。処理回路180は、マンモグラフィ画像に設定されている関心領域に基づいて、マンモグラフィ画像上での関心領域から体表までの第1の距離を算出する。第1の距離は、例えば、ユーザまたは画像処理により画像上で設定された直線に対して、マンモグラフィ画像のスケールを用いることにより実距離として算出される。
【0044】
例えば、CC方向とMLO方向とでは、関心領域から体表までの距離が一致しない場合がある。これは、関心領域から体表へ延ばした直線の方向が一致しないことなどに起因する。この不一致を解消させるために、処理回路180は、アーム角度を用いて、マンモグラフィ画像上での関心領域から体表までの方向を推定してもよい。また、処理回路180は、推定された方向に基づいて、第1の距離を算出してもよい。
【0045】
さらに、処理回路180は、算出した第1の距離に基づいて超音波画像上での体表から関心領域までの第2の距離を算出する。第2の距離は、例えば、マンモグラフィ画像の検査における検査部位の形状変化と、超音波画像の検査における検査部位の形状変化とを考慮した、マンモグラフィ画像上の距離と超音波画像上の距離とを相互に変換可能な演算式を用いて算出される。換言すると、処理回路180は、マンモグラフィ画像の検査と、超音波画像の検査との体位の違いによる乳房の変形推定を用いて第2の距離を算出してもよい。
【0046】
処理回路180において、表示制御機能186は、算出した距離に基づいて超音波画像上に病変深さを示すマーカを表示する機能である。処理回路180は、算出した第1の距離に基づいて、超音波画像内に病変深さを示すマーカを表示する。より具体的には、処理回路180は、算出した第2の距離を用いて、超音波画像上に病変深さを示すマーカを重畳して表示する。
【0047】
超音波画像上にマーカを表示する方法として、例えば、マーカを含んだオーバレイ(overlay)画像を超音波画像に重ねて表示(オーバレイ表示)する方法がある。しかし、この方法に限らず、超音波画像内に直接マーカを描画させる方法が用いられてもよい。尚、「超音波画像上にマーカを表示する」は、「超音波画像内にマーカを表示する」と言い換えられてもよく、どちらも上記二つの方法の意味を内包するものとする。
【0048】
また、処理回路180は、画像生成機能183により生成された表示画像データを表示装置103に表示させる。具体的には、処理回路180は、表示画像データを表示装置103にそのまま表示させてもよいし、表示画像データを所定の医用画像データと並べて、或いは医用画像データ上に重畳させて表示装置103に表示させてもよい。より具体的には、処理回路180は、表示領域を二分割して、マンモグラフィ画像と超音波画像とを並べて表示させてもよい。尚、「表示画面を二分割して二つの画像を表示」は、「二画面表示」と言い換えられてもよい。
【0049】
図2は、第1の実施形態におけるマーカ表示処理の動作の一例を説明するためのフローチャートである。ここでのマーカ表示処理とは、超音波画像上に病変深さマーカを表示する処理である。
図2に示す処理は、例えば、操作者からマーカ表示処理を実行する指示を受け付けることにより開始される。
【0050】
(ステップST110)
マーカ表示処理が開始すると、処理回路180は、取得機能184を実行する。取得機能184を実行すると、処理回路180は、マンモグラフィ画像を取得する。具体的には、処理回路180は、PACSからCC方向のマンモグラフィ画像を取得する。
【0051】
(ステップST120)
マンモグラフィ画像を取得した後、処理回路180は、算出機能185を実行する。算出機能185を実行すると、処理回路180は、取得したマンモグラフィ画像に設定されている関心領域に基づいて、マンモグラフィ画像上での関心領域から体表までの第1の距離を算出する。
【0052】
図3は、第1の実施形態におけるマンモグラフィ画像の一例を示す図である。
図3のマンモグラフィ画像MG10は、CC方向を撮影方向とした、右の乳房が示されている。マンモグラフィ画像MG10には、ボディマークBM1と、病変位置を示す関心領域LPとが重畳されている。ボディマークBM1に示される二つの直線の交点は、上記病変位置に対応する。換言すると、ボディマークBM1は、マンモグラフィ画像MG10上での関心領域LPの深さ方向に直交する平面における位置を示す。尚、以降では、マンモグラフィ画像において、マンモグラフィ画像の右上を基準として、右から左へ向かう方向をX
MG方向、上から下へ向かう方向Y
MG方向と定義する。
【0053】
マンモグラフィ画像MG10上において、処理回路180は、関心領域LPからXMG方向に直線を伸ばし、体表までの第1の距離D1を算出する。マンモグラフィ画像MG10上の体表の位置は、例えば、輝度値の変化を検出することによって決定される。
【0054】
このように、処理回路180は、マンモグラフィ画像から第1の距離を算出する。尚、算出機能185による処理は、処理回路180の内部処理として実行可能であり、表示装置103に表示されなくてもよい。
【0055】
(ステップST130)
第1の距離を算出した後、処理回路180は、算出した第1の距離に基づいて、超音波画像上での体表から関心領域までの第2の距離を算出する。具体的には、処理回路180は、マンモグラフィ画像上の距離と超音波画像上の距離とを相互に変換可能な演算式を用いて、第1の距離から第2の距離を算出する。なお、本ステップは必須の処理ではなく省略することとしてもよい。
【0056】
(ステップST140)
第2の距離を算出した後、処理回路180は、表示制御機能186を実行する。表示制御機能186を実行すると、処理回路180は、算出した第2の距離を用いて超音波画像上に病変深さを示すマーカ(病変深さマーカ)を表示する。ステップST140の後、マーカ表示処理は終了する。尚、「病変深さ」は、「関心領域の深さ」に言い換えられてもよい。
【0057】
なお、ステップST130が省略されている場合には、処理回路180は第1の距離に基づいて超音波画像上に病変深さを示すマーカを表示することとしてもよい。すなわち、ステップST130が省略されているか否かに関わらず、処理回路180は第1の距離に基づいて超音波画像上に病変深さを示すマーカを表示してもよい。
【0058】
図4は、第1の実施形態における超音波画像の一例を示す図である。
図4の超音波画像US10には、右の乳房を示すボディマークBMrが重畳されている。ボディマークBMr上には、体表上の超音波プローブの位置をボディマークBMr上の位置に対応付けたプローブ位置PPが重畳されている。尚、以降では、超音波画像において、超音波画像の左上を基準として、左から右へ向かう方向をX方向、上から下へ向かう方向をZ方向、X方向およびZ方向に垂直な手前から奥へ向かう方向をY方向と定義する。
【0059】
超音波画像US10上において、処理回路180は、体表位置を表す直線L10を設定する。直線L10を設定した後、処理回路180は、直線L10から+Z方向に第2の距離D2の間隔を空けて、直線L10に平行な直線L11を設定する。直線L11を設定した後、処理回路180は、直線L11から-Z方向に距離d1の間隔を空けて、直線L11に平行な直線L12を設定する。同様に、処理回路180は、直線L11から+Z方向に距離d1の間隔を空けて、直線L11に平行な直線L13を設定する。距離d1は、例えば、マンモグラフィ画像に設定された関心領域のサイズに応じた距離でもよいし、任意に設定された距離でもよい。
【0060】
図5は、第1の実施形態におけるマーカ表示処理を実行した第1の表示例である。
図5の表示領域10は、超音波画像US10を含む。超音波画像US10上には、
図4における直線L10および直線L13に対応する直線マーカM1および直線マーカM2が重畳されている。前述の病変深さマーカは、直線マーカM1および直線マーカM2に相当する。直線マーカM1および直線マーカM2に挟まれた領域は、病変が位置する深さを示している。これにより、ユーザは、病変位置を探しやすくなる。尚、表示領域10において、ボディマークBMrの代わりに、或いは並べて、
図3のボディマークBM1を表示させてもよい。
【0061】
図6は、第1の実施形態におけるマーカ表示処理を実行した第2の表示例である。
図6の表示領域20は、マンモグラフィ画像MG10と超音波画像US10とを含む。具体的には、表示領域20は、二画面表示の左側にマンモグラフィ画像MG10を配置し、右側に超音波画像US10を配置する。これにより、ユーザは、マンモグラフィ画像MG10上のボディマークBM1も参考にして病変位置を探すことができる。
【0062】
以上説明したように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、マンモグラフィ画像に設定されている関心領域に基づいて、マンモグラフィ画像上での関心領域から体表までの第1の距離を算出し、第1の距離に基づいて超音波画像内に関心領域の深さ方向における位置を示すマーカを表示する。これにより、ユーザは、マンモグラフィ画像から深さ位置を読み取る手間がなく、超音波画像において病変を確認しやすくなる。
【0063】
なお、第1の実施形態では、超音波画像上に直線マーカが表示される例を示したがこれに限らない。例えば、マーカとして、矩形および円などの図形が用いられてもよい。例えば、円形マーカは、
図4の直線L11上の任意の点において、この任意の点を中心とした半径が距離d1の円である。
【0064】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、マーカ表示処理によって超音波画像上に病変深さマーカを表示することについて説明した。他方、第2の実施形態では、マーカ表示処理によって超音波画像上に病変位置を示すマーカ(病変位置マーカ)を表示することについて説明する。尚、「病変位置」は、「関心領域の位置」に言い換えられてもよい。
【0065】
なお、第2の実施形態に係る超音波診断装置は、マンモグラフィ画像と超音波画像とが位置合わせされているものとする。マンモグラフィ画像と超音波画像との位置合わせとは、マンモグラフィ画像上の関心領域の座標と、超音波プローブの空間座標とが対応付けられている状態である。
【0066】
具体的には、第2の実施形態に係る超音波診断装置は、装置本体に磁気トランスミッタを有し、超音波プローブに磁気センサを有するものとする。磁気トランスミッタは、パルス磁場を発生させる。磁気センサは、パルス磁場が生じている空間の所定の空間座標を基準として、超音波プローブの位置および角度を検出する。これにより、第2の実施形態に係る超音波診断装置は、マンモグラフィ画像と超音波画像とが位置合わせされる。
【0067】
図7は、第2の実施形態におけるマーカ表示処理の動作の一例を説明するためのフローチャートである。ここでのマーカ表示処理とは、超音波画像上に病変位置マーカを表示する処理である。
図7に示す処理は、例えば、操作者からマーカ表示処理を実行する指示を受け付けることにより開始される。
【0068】
(ステップST210)
マーカ表示処理が開始すると、処理回路180は、取得機能184を実行する。取得機能184を実行すると、処理回路180は、CC方向のマンモグラフィ画像を取得する。
【0069】
(ステップST220)
CC方向のマンモグラフィ画像を取得した後、処理回路180は、MLO方向のマンモグラフィ画像を取得する。尚、ステップST210およびステップST220は、同時に行われてもよく、また、異なる二方向から撮影された二つのマンモグラフィ画像であってもよい。
【0070】
(ステップST230)
MLO方向のマンモグラフィ画像を取得した後、処理回路180は、算出機能185を実行する。算出機能185を実行すると、処理回路180は、取得したマンモグラフィ画像に設定されている関心領域に基づいて、マンモグラフィ画像上での関心領域から体表までの第1の距離を算出する。処理回路180は、CC方向のマンモグラフィ画像およびMLO方向のマンモグラフィ画像の少なくとも一方を用いて第1の距離を算出する。尚、ステップST230の処理は、前述したステップST120の処理と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0071】
(ステップST240)
第1の距離を算出した後、処理回路180は、算出した第1の距離に基づいて、超音波画像上での体表から関心領域までの第2の距離を算出する。具体的には、処理回路180は、マンモグラフィ画像上の距離と超音波画像上の距離とを相互に変換可能な演算式を用いて、第1の距離から第2の距離を算出する。
【0072】
(ステップST250)
第2の距離を算出した後、処理回路180は、算出した第2の距離と、CC方向のマンモグラフィ画像に設定されている関心領域の位置情報と、MLO方向のマンモグラフィ画像に設定されている関心領域の位置情報とに基づいて超音波画像上での三次元の位置情報を算出する。
【0073】
具体的には、処理回路180は、CC方向のマンモグラフィ画像に設定されている関心領域の位置情報と、MLO方向のマンモグラフィ画像に設定されている関心領域の位置情報とに基づいて、ボディマークBM1上の関心領域に相当する二次元平面上の位置を算出する。二次元平面上の位置が算出された後、処理回路180は、二次元平面上の位置と、算出した第2の距離とに基づいて、三次元空間上の位置を算出する。
【0074】
図8は、第2の実施形態におけるボディマーク上の関心領域の位置と三次元マーカとの関係の一例を説明するための図である。
図8のボディマークBM1を体表に見立てた場合、+Z方向は、体内の深さ方向に相当する。上記の二次元平面上の位置は、例えば、ボディマークBM1上の関心領域の位置(x,y)である。上記の三次元空間上の位置は、例えば、三次元マーカMCの中心位置(x,y,z)である。
【0075】
(ステップST260)
三次元の位置情報を算出した後、処理回路180は、表示制御機能186を実行する。表示制御機能186を実行すると、処理回路180は、算出した三次元の位置情報に基づいて、超音波画像上にプローブの位置情報に応じた病変位置マーカを表示する。ステップS260の後、マーカ表示処理は終了する。
【0076】
図9は、第2の実施形態における超音波画像の一例を示す図である。
図9の超音波画像US20には、ボディマークBMrが重畳されている。ボディマークBMr上には、プローブ位置PPが重畳されている。
【0077】
超音波画像US20上において、処理回路180は、体表位置を表す直線L10を設定する。直線L10を設定した後、処理回路180は、直線L10から+Z方向に第2の距離D2の間隔を空けて、深さ位置Pを設定する。深さ位置Pは、三次元マーカMCの位置zに相当する。深さ位置Pを設定した後、処理回路180は、深さ位置Pを中心とした半径d3の円周CLを設定する。円周CLは、三次元マーカMCの任意の断面の円周に相当する。
【0078】
図10は、第2の実施形態におけるマーカ表示処理を実行した第1の表示例である。
図10の表示領域30は、超音波画像US20を含む。超音波画像US20上には、
図9における円周CLに対応する円形マーカMcが重畳されている。前述の病変位置マーカは、円形マーカMcに相当する。円形マーカMcに囲まれた領域は、病変位置を示している。尚、表示領域30において、ボディマークBMrの代わりに、或いは並べて、
図3のボディマークBM1を表示させてもよい。
【0079】
円形マーカMcは、例えば、超音波プローブの位置によってサイズが変わってもよい。具体的には、円形マーカMcは、ボディマークBMr上の病変位置(即ち、
図3のボディマークBM1に示される二つの直線の交点の位置)にプローブ位置PPが重なった場合に、最も大きいサイズとなり、病変位置とプローブ位置PPとの重なりが離れるにつれて、サイズが小さくなる。尚、最も大きいサイズの円形マーカをガイドとして常に表示させてもよい。
【0080】
また、円形マーカMcは、例えば、超音波プローブの位置によって色が変わってもよい。具体的には、円形マーカMcは、病変位置にプローブ位置PPが重なった場合に、緑色となり、病変位置とプローブ位置PPとの重なりが離れるにつれて、緑色から黄色、赤色へと色が変わる。
【0081】
換言すると、円形マーカMcは、超音波プローブの位置に応じてサイズおよび色の少なくとも一方が変化する。これにより、ユーザは、病変位置の深さ位置だけが示された場合よりも、病変位置を探しやすくなる。
【0082】
図11は、第2の実施形態におけるマーカ表示処理を実行した第2の表示例である。
図11の表示領域40は、マンモグラフィ画像MG10と超音波画像US20とを含む。具体的には、表示領域40は、二画面表示の左側にマンモグラフィ画像MG10を配置し、右側に超音波画像US20を配置する。これにより、ユーザは、マンモグラフィ画像MG10上のボディマークBM1も参考にして病変位置を探すことができる。
【0083】
以上説明したように、第2の実施形態に係る超音波診断装置は、異なる二方向から撮影された二つのマンモグラフィ画像を取得し、マンモグラフィ画像に設定されている関心領域に基づいて、マンモグラフィ画像上での関心領域から体表までの第1の距離を算出し、第1の距離に基づいて超音波画像上での体表から関心領域までの第2の距離を算出し、第2の距離と、二つのマンモグラフィ画像に設定されているそれぞれの関心領域の位置情報とに基づいて超音波画像上での三次元の位置情報を算出し、三次元位置情報に基づいて超音波画像上にマーカを表示する。これにより、ユーザは、マンモグラフィ画像から深さ位置を読み取る手間がなく、超音波画像において病変を確認しやすくなる。
【0084】
なお、第2の実施形態では、超音波画像上に円形マーカが表示される例を示したがこれに限らない。例えば、マーカは、矩形であってもよいし、カラードプラの描画領域に対応した形状でもよい。
【0085】
(応用例)
第1の実施形態および第2の実施形態では、超音波画像上へのマーカ表示処理について説明した。他方、応用例では、マーカの表示位置に応じて超音波送受信を制御する場合について説明する。
【0086】
処理回路180は、システム制御機能187により、マーカの表示位置に応じた超音波送受信に関するパラメータを用いて超音波送受信を制御する。超音波送受信の制御とは、例えば、超音波送信回路110および超音波受信回路120の制御である。具体的には、処理回路180は、マーカの表示位置に応じたフォーカス位置を用いて超音波送受信を制御する。
【0087】
本応用例によれば、マーカの表示位置に応じて超音波送受信を制御するため、ユーザは、超音波送受信に関するパラメータを設定することなく、また最適なパラメータを用いて検査を実施することができる。
【0088】
(第3の実施形態)
第1の実施形態および第2の実施形態では、超音波診断装置が有する処理回路において実行されるマーカ表示処理について説明した。他方、第3の実施形態では、画像処理装置が有する処理回路において実行されるマーカ表示処理について説明する。
【0089】
図12は、第3の実施形態に係る画像処理装置の構成例を示す図である。
図13の画像処理装置200は、入力装置201および表示装置202と接続されている。また、画像処理装置200は、ネットワークNWを介して外部装置104と接続されている。尚、入力装置201および表示装置202は、
図1の入力装置102および表示装置103とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0090】
画像処理装置200は、内部記憶回路210と、入力インタフェース220と、出力インタフェース230と、通信インタフェース240と、処理回路250とを有している。
【0091】
内部記憶回路210は、例えば、磁気的記憶媒体、光学的記憶媒体、または半導体メモリ等、プロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を有する。内部記憶回路210は、マーカ表示処理に関するプログラムなどを記憶している。
【0092】
入力インタフェース220は、入力装置201を介し、操作者からの各種指示を受け付ける。入力インタフェース220は、例えばバスを介して処理回路250に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を処理回路250へ出力する。
【0093】
出力インタフェース230は、例えば処理回路250からの電気信号を表示装置202へ出力するためのインタフェースである。出力インタフェース230は、例えばバスを介して処理回路250に接続され、処理回路250からの電気信号を表示装置202に出力する。
【0094】
通信インタフェース240は、例えばネットワークNWを介して外部装置104と接続され、外部装置104との間でデータ通信を行う。
【0095】
処理回路250は、例えば、画像処理装置200の中枢として機能するプロセッサである。処理回路250は、内部記憶回路210に記憶されているマーカ表示処理のプログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。処理回路250は、例えば、取得機能251と、算出機能252と、表示制御機能253と、システム制御機能254とを有している。
【0096】
システム制御機能254は、画像処理装置200全体の動作を統括して制御する機能である。尚、取得機能251、算出機能252、および表示制御機能253は、第1の実施形態および第2の実施形態で説明した取得機能184、算出機能185、および表示制御機能186とほぼ同様の機能であるため、説明を省略する。
【0097】
以上説明したように、第3の実施形態に係る画像処理装置は、第1の実施形態および第2の実施形態におけるそれぞれの効果と同様の効果が期待できる。
【0098】
なお、本実施形態に係る画像処理装置は、第1の実施形態および第2の実施形態に係る超音波診断装置の一部の構成を抜き出したものに相当する。言い換えると、超音波診断装置は、画像処理装置の構成に、超音波診断に係る構成を追加したものに相当する。
【0099】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、超音波画像を利用した乳腺画像診断の利便性を向上させることができる。
【0100】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0101】
1 超音波診断装置
180,250 処理回路
184,251 取得機能
185,252 算出機能
186,253 表示制御機能
200 画像処理装置