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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20231017BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20231017BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
B05C11/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020021420
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021126600
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅充
(72)【発明者】
【氏名】畠山 辰男
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-155226(JP,A)
【文献】特開2015-022836(JP,A)
【文献】特開2012-206093(JP,A)
【文献】特開2017-176981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00 -5/04
B05C7/00 -21/00
B41J2/01
2/165-2/20
2/21 -2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する基材にインクジェット法により塗液を塗布する塗布装置であり、
基材の被塗布面と対向するノズルから塗液を吐出する塗布ヘッドと、
基材面と垂直な方向を回転軸方向とし、前記塗布ヘッドの角度を調節するヘッド角度調節部と、
基材の被塗布面を撮像する撮像部と、
前記撮像部が撮像した基材の被塗布面上の複数点の位置情報から基材の歪みを算出し、この基材の歪みに応じて前記塗布ヘッドおよび前記ヘッド角度調節部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記塗布ヘッドは、所定間隔で直線状に配列された複数の前記ノズルによって形成されるノズル列を複数有しており、基材面と平行である所定の方向に直線状に走査しながら基材へ塗液を吐出し、
前記ヘッド角度調節部は、前記塗布ヘッドの一度の走査の最中に基材の歪みに応じて都度前記塗布ヘッドの角度を調節し、
前記制御部は、一度の走査の間は前記塗布ヘッドの所定の1つの前記ノズル列を形成する前記ノズルからのみ塗液を吐出させることを特徴とする、塗布装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記塗布ヘッドが所定の回数分走査する度に塗液の塗布に使用する前記ノズル列を変更することを特徴とする、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記ノズルからの塗液の吐出動作が正常か否かを検査する検査部をさらに有し、前記制御部は、前記検査部による検査の結果吐出動作が正常でないとされた前記ノズルを含む前記ノズル列は基材への塗液の塗布に使用しないよう制御することを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールツーロールで搬送する長尺フィルムに連続的に塗液を塗布して、塗布パターンを形成する塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回路パターンを形成するために、スパッタリング、CVD、フォトリソグラフィー等の技術が知られていたが、近年、低コスト、省エネ、省資源に貢献するために、各種の印刷技術を用いた回路パターンの形成技術(プリンテッドエレクトロニクス)が注目されている。中でも、金属インクをインクジェットノズルから基材に滴下して回路パターンを形成した後、絶縁層をインクジェットノズルから基材に滴下し、さらにその上に金属インクをインクジェットノズルから基材に滴下して回路パターンを形成するようにして、多層の回路パターンを形成する技術が開発されている。
【0003】
また、長尺フィルムに塗液を塗布するためには、生産効率の観点から長尺フィルムをロールツーロール搬送して連続的に塗布することがよく行われている。
【0004】
特許文献1には、ロールツーロールで搬送されるフィルムへの塗布および乾燥を連続して実施する製造装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1:特開2005-030682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の構成の製造装置では、フィルム上に塗液を精度良く塗布できないおそれがあった。具体的にフィルム状に複数の画素部が設けられた例で説明すると、複数の画素部は1つのマトリクス内で等しい間隔で配列されるよう設計されているのに対し、画素部が樹脂フィルムのように熱や応力の影響を受けやすい基板上に形成されている場合、画素部を形成する際の熱や応力等によって基板が変形することがあった。この結果、画素部の配置が歪み、一部において配列間隔が変化して形成されてしまうことがあった。この場合、画素部の実際の位置と設計上の位置との間にずれが生じるため、設計上の画素部の位置に向かって塗液を吐出すると、塗液が各画素部の中央といった所定の場所には着弾せず、また、隣り合う画素部と画素部の間に着弾してしまうおそれがあり、これら画素部の間で混色が発生し、製品にはできない不良品となってしまっていた。また、フィルムをロールツーロールで搬送するにあたり、搬送時の張力によってフィルムが変形し、画素部の配置に歪みが生じることもあった。
【0007】
本発明は、上記問題点を鑑み、ロールツーロールで連続搬送しながら長尺フィルムに塗液を精度良く塗布することができる塗布装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の塗布装置は、可撓性を有する基材にインクジェット法により塗液を塗布する塗布装置であり、基材の被塗布面と対向するノズルから塗液を吐出する塗布ヘッドと、基材面と垂直な方向を回転軸方向とし、前記塗布ヘッドの角度を調節するヘッド角度調節部と、基材の被塗布面を撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像した基材の被塗布面上の複数点の位置情報から基材の歪みを算出し、この基材の歪みに応じて前記塗布ヘッドおよび前記ヘッド角度調節部の動作を制御する制御部と、を備え、前記塗布ヘッドは、所定間隔で直線状に配列された複数の前記ノズルによって形成されるノズル列を複数有しており、基材面と平行である所定の方向に直線状に走査しながら基材へ塗液を吐出し、前記ヘッド角度調節部は、前記塗布ヘッドの一度の走査の最中に基材の歪みに応じて都度前記塗布ヘッドの角度を調節し、前記制御部は、一度の走査の間は前記塗布ヘッドの所定の1つの前記ノズル列を形成する前記ノズルからのみ塗液を吐出させることを特徴とする。
【0009】
本発明の塗布装置によれば、ロールツーロールで連続搬送しながら長尺フィルムに塗液を精度良く塗布することができる。具体的には、ヘッド角度調節部は塗布ヘッドの一度の走査の最中に基材の歪みに応じて都度塗布ヘッドの角度を調節することにより、塗布領域内の被塗布部の形状の歪みに応じて塗布ヘッドから塗液を塗布することができる。また、塗布ヘッドは、一度の走査の間は所定の1つのノズル列を形成するノズルからのみ塗液を吐出することにより、塗布ヘッドの角度が変わっても隣接する吐出ノズル同士の間隔は均一であるため、正確な位置へ塗液を塗布するための塗布ヘッドの角度調節制御を容易とすることができる。
【0010】
また、前記制御部は、前記塗布ヘッドが所定の回数分走査する度に塗液の塗布に使用する前記ノズル列を変更すると良い。
【0011】
こうすることにより、ノズル内での塗液の詰まりを防ぐことができる。
【0012】
また、前記ノズルからの塗液の吐出動作が正常か否かを検査する検査部をさらに有し、前記制御部は、前記検査部による検査の結果吐出動作が正常でないとされた前記ノズルを含む前記ノズル列は基材への塗液の塗布に使用しないよう制御すると良い。
【0013】
こうすることにより、塗布パターンを形成するために使用される全てのノズルによって正常に塗液を塗布することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の塗布装置により、ロールツーロールで連続搬送しながら長尺フィルムに塗液を精度良く塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態における塗布装置を説明する図である。
図2】本実施形態における塗布ヘッドを表す図である。
図3】本実施形態における塗布装置の塗布動作を表す図である。
図4】本実施形態における塗布ヘッドを表す図である。
図5】本実施形態における塗布装置の塗布動作を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の塗布装置について、図1を用いて説明する。
【0017】
塗布装置1は、ロールツーロール方式により帯状の基材Wを一方向に搬送し、基材Wにたとえばカラーフィルタの形成を行うものであり、送り出しロール2、塗布部10、乾燥部20、巻き取りロール3を有しており、これらがこの順に基材Wの搬送経路に並べて配置されている。この塗布装置1では、送り出しロール2から送り出された基材Wが巻き取りロール3で巻き取られることにより搬送される。そして、送り出しロール2から送り出された基材Wは、巻き取りロール3で巻き取られるまでに塗布部10における被塗布面への塗液の塗布および乾燥部20による塗液の乾燥が実施される。これにより、所定のカラーフィルタが形成された基材Wを得ることができるようになっている。
【0018】
なお、本説明では、鉛直方向をZ軸方向、水平方向のうち基材Wの幅方向をY軸方向と呼び、水平方向においてY軸方向と直交する方向、すなわち基材Wの搬送方向をX軸方向と呼ぶ。
【0019】
送り出しロール2は、基材Wを下流側に供給するためのものである。送り出しロール2は、図示しない制御装置により回転を駆動制御されることにより、基材Wを所定の速度で送り出すことができるようになっている。
【0020】
ここで、基材Wは、帯状に形成されたワークであり、例えば、透明のPETフィルムなどが用いられる。
【0021】
巻き取りロール3は、供給された基材Wを巻き取るものである。巻き取りロール3は、送り出しロール2と同様に、図示しない制御装置により回転を駆動制御されることにより基材Wを巻き取ることができるようになっている。
【0022】
塗布部10は、送り出しロール2と巻き取りロール3による基材Wの搬送経路上に位置し、基材Wに塗液を塗布するものであり、本実施形態では、インクジェット法によって所定のパターンの形状(たとえばカラーフィルタの画素部の配列)にしたがって塗液の液滴が吐出されることにより、基材Wの上面(塗布面)に所定の塗布パターンが形成される。
【0023】
塗布部10は、吸着ステージ11、塗布ヘッド12、撮像部13、およびグリップフィーダ14とを有している。
【0024】
吸着ステージ11は基材Wを吸着固定するものであり、基材Wと対向する面は、略平坦であり複数の吸引孔の開口部を有している。この吸引孔は、真空ポンプなどの図示しない減圧手段と接続されている。この減圧手段が動作することにより、吸引孔から気体が吸引され、基材Wが吸着固定される。
【0025】
また、吸着ステージ11のすぐ上流側およびすぐ下流側にあるロール(リフトアップロールと呼ぶ)は図示しない鉛直方向(Z軸方向)の移動手段に取り付けられており、塗布部10において基材Wが搬送される間は、この移動手段によってリフトアップロールが上昇して基材Wが吸着ステージ11から離間し、搬送される基材Wとの干渉が防止されている。
【0026】
塗布ヘッド12は、インクジェット法により塗液を吐出するものであり、吸着ステージ11に吸着固定された基材Wの表面(被塗布面)に向かって塗液の液滴15を吐出し、基材Wの被塗布面に塗液による塗布パターンを形成する。
【0027】
図2は、下方から塗布ヘッド12を見た図である。
【0028】
塗布ヘッド12の基材Wと対向する面は略平坦であり、複数のノズル121の開口部を有している。このノズル121は、塗液が貯蔵された図示しないタンクと配管を経由して接続されており、各ノズル121に塗液が充填される。
【0029】
また、各ノズル121にはピエゾアクチュエータから構成される駆動隔壁が備えられており、図示しない制御部からの命令によって駆動隔壁が動作することによって、ノズル121の開口部から液滴が吐出される。
【0030】
また、複数のノズル121は、所定間隔で直線状に配列され、ノズル列を形成している。特に、本発明では塗布ヘッド12には複数のノズル列が形成されており,本実施形態ではノズル列122aおよびノズル列122bが形成されている。なお、これらノズル列122aおよびノズル列122bにおいて、ノズル列122aのノズル121の配列方向とノズル列122bのノズル121の配列方向は平行であることが、塗布動作の制御を簡易にする上で好ましい。
【0031】
また、塗布ヘッド12は、吸着ステージ11上に固定された基材Wの面(基材面)と垂直な方向であるZ軸方向を回転軸方向とするヘッド角度調節部123に取り付けられており、図示しない制御部によってこのヘッド角度調節部123が動作する。このヘッド角度調節部123によって塗布ヘッド12が回転し、基材Wの幅方向(Y軸方向)に対する複数のノズル121の配列方向の傾きが調節されることにより、各ノズル121のY軸方向の間隔が調節される。
【0032】
ここで、塗布ヘッド12は、塗布ヘッド12を基材面と平行な方向である基材Wの長尺方向(塗布部10においてはX軸方向)に移動させる図示しない走査方向移動手段に取り付けられている。本説明では、塗布動作時に走査方向移動手段によって塗布ヘッド12が図1および図2の矢印方向であるX軸方向に移動することを「走査する」と呼ぶ。
【0033】
吸着ステージ11によって固定された基材Wの上方を塗布ヘッド12が走査しながら液滴の吐出を行うことにより、X軸方向の寸法がこの走査による塗布ヘッド12の移動距離(走査距離と呼ぶ)と同等であり、Y軸方向の寸法が複数のノズル121が配置されている領域のY軸方向の寸法と同等である、塗布パターンが基材W上に形成される。
【0034】
また、本実施形態では、塗布ヘッド12は、塗布ヘッド12を基材Wの幅方向(Y軸方向)に移動させる図示しないシフト方向移動手段に取り付けられている。塗布ヘッド12が走査しながら一連の塗布動作を実施した後、シフト方向移動手段によって塗布ヘッド12がY軸方向に移動し、その後、また塗布ヘッド12が走査しながら一連の塗布動作を実施する。なお、本説明では、一連の塗布動作を実施した後に塗布ヘッド12がY軸方向に移動することを「シフトする」と呼ぶ。なお、シフト動作時には塗布ヘッド12から塗液は吐出されない。
【0035】
このように走査とシフトとが繰り返されることにより、複数のノズル121が配置されている領域のY軸方向の寸法を超えるY軸方向の寸法の塗布パターンが基材Wの塗布面に形成される。なお、この一連の走査とシフトによって塗布パターンが形成されるべき基材W上の領域を、本説明では「塗布領域」と呼ぶ。
【0036】
なお、上記の通り塗布ヘッド12はヘッド角度調節部123によって角度が調節されるため、各ノズル列におけるノズル121の配列方向と塗布ヘッド12の走査方向との相対角度は変化する。本説明では、ノズル121の配列方向と塗布ヘッド12の走査方向とが垂直である状態を、塗布ヘッド12の傾斜角がゼロであるとする。
【0037】
撮像部13は、本実施形態では1つもしくは複数のCCDカメラであり、X軸方向およびY軸方向に撮像部13を移動させる図示しない移動手段に取り付けられている。
【0038】
この撮像部13によって、吸着ステージ11によって固定された基材Wの被塗布面に形成されている特徴的なマーク(アライメントマーク)を撮像し、図示しない制御部がこのアライメントマークの座標を解析する。たとえば、吸着ステージ11によって固定された基材W上の少なくとも4箇所のアライメントマークの座標が解析されることによって、制御部は基材Wの位置を把握することができる。
【0039】
ロールツーロールで搬送される基材Wは必ずしも所定の方向に精度良く搬送されるとは限らず、少なからず蛇行をともなって搬送される。そのため、基材Wは吸着ステージ11によって固定された際に所定の位置からずれて固定される可能性もあるが、撮像部13による撮像結果をもとにアライメントマークの座標が解析されることによって、基材Wの固定位置のずれを把握することができる。
【0040】
そして、塗布ヘッド12が塗液を塗布する前に基材Wの固定位置のずれが把握され、たとえば塗布座標が補正されるといったように塗布動作に反映されることにより、仮に基材Wが蛇行していても基材Wの塗布面に位置精度良く塗布パターンが形成される。
【0041】
ここで、アライメントマークを数多く設けることにより、吸着ステージ11上の基材Wの塗布領域の形状の歪みを正確に把握することができる。
【0042】
グリップフィーダ14は、基材Wの被塗布面側と当接する上側部材と下面側と当接する下側部材とを有し、上側部材と下側部材の両部材が同時に基材Wに接触することによって基材Wを挟持するものである。
【0043】
なお、グリップフィーダ14によって挟持される基材Wの領域は、基材Wの幅方向(短手方向)の端部であり、塗布パターンが存在しない範囲であり、グリップフィーダ14が塗布パターンを破壊することは無い。
【0044】
また、グリップフィーダ14は、上記両部材をX軸方向に移動させる図示しない移動手段を有しており、基材Wの短手方向(幅方向)の端部を挟持した状態で両部材がX軸方向に移動することによって基材Wを引っ張って移動させることができる。このときの両部材の移動距離を上記塗布ヘッド12の走査距離と同等とすることにより、塗布領域の丁度1つ分基材Wを進めることができ、前後の塗布動作によって形成される塗布パターンを隙間および重複が無いように形成することができる。また、このようなグリップフィーダ14が設けられていることにより、塗布部10において基材Wを精度良く一気に搬送させることができる。
【0045】
乾燥部20は、基材Wの搬送経路において塗布部10よりも下流側に位置し、熱風により基材W上の塗布パターンを加熱乾燥するものである。
【0046】
乾燥部20は、基材Wが通過する空間を内部に備え、また、基材Wの入口および出口となる開口を有し、乾燥部20の内部空間を形成する面であり基材Wの上面と対向する面には、熱風を吹き出す複数の通風孔が設けられており、基材Wの塗布パターンが形成されている塗布面に対し、図1に矢印で示すように熱風を吹きつける。これにより塗布パターン内の溶剤の揮発が促進され、塗布パターンが乾燥、硬化する。
【0047】
なお、本実施形態では乾燥部20では基材Wに熱風を当てているが、熱風により基材Wのばたつきが生じる場合には、熱風に代え、赤外線を基材Wに照射する乾燥手段であっても良い。
【0048】
ここで、基材Wの長尺方向にわたって乾燥部20による乾燥ムラおよび熱によるフィルムの変形が生じることを防止するために、乾燥部20内は基材Wは一定速度で搬送されている。これにより、基材Wの全体にわたって熱風が当たる時間は均一となる。
【0049】
一方、塗布部10においては、塗布動作中、基材Wは吸着固定されている必要がある。そこで、塗布部10での基材Wの固定および乾燥部20での基材Wの等速搬送を同時に満たすことができるよう、塗布部10と乾燥部20との間には基材Wが略U字状に垂らされた領域であるバッファ部30が設けられている。塗布部10にて基材Wの搬送がストップしていても、その間、バッファ部30を形成する基材Wがたぐり寄せられることで乾燥部20での基材Wの等速搬送が成される。そして、一つの塗布領域への塗液の塗布動作が完了した後、塗布部10の近傍にある基材Wがグリップフィーダ14によって一気にバッファ部30の方へ送られ、バッファ部30の垂れの長さが所定の長さまで回復する。
【0050】
また、グリップフィーダ14によって基材Wが一気に送られる際に基材Wに過度な張力が発生しないよう、送り出しロール2と塗布部10との間にもバッファ部40が形成されていることが好ましい。
【0051】
以上の構成の塗布装置1における特に塗布部10の動作について、図3乃至5を用いてさらに説明する。
【0052】
図3は1回の走査における塗布ヘッド12の動きを表すものであり、便宜的にノズル列122aのみ図示している。また、基材Wは一例としてカラーフィルタを形成する基板であるとし、基材WにはX軸方向およびY軸方向にマトリクス状に画素部Gが配列されているものとする。この画素部Gに赤、緑、青色のインクが塗布ヘッド12によって一色ずつ規則的に充填される。
【0053】
樹脂フィルムである基材Wに画素部Gが形成されている場合、画素部Gの形成時の熱や応力等によって基板が変形する可能性がある。このように画素部Gの配置が歪んだ場合、画素部Gの配列間隔が変化して形成され、1つの塗布領域内、また、塗布ヘッド12が一度走査する範囲内でも画素部Gの配列間隔が一定でなくなる可能性がある。このように一度の走査範囲内で画素部Gの配列間隔にばらつきが生じる場合、塗布ヘッド12は一度の走査において都度角度を変え、ノズル121のY軸方向の間隔が直下の画素部Gの配列間隔と整合するように動き、各画素部Gの所定位置に塗液を塗布する。具体的には以下の通りの動作が行われる。
【0054】
まず、塗布動作前に撮像部13が基材Wの被塗布面上の複数点のアライメントマークを撮像し、これらアライメントマークの位置情報をもとに、図示しない制御部が基材(塗布領域)の歪みを算出する。この歪みをもとに、制御部はさらに塗布領域の各所定位置における画素部GのY軸方向の配列間隔を算出する。この配列間隔は、隣接する画素部G同士の間隔を算出するものでも良く、また、図3に示す距離L1、L2、L3のようにノズル列122aを構成するノズル121の数に応じた数の画素部Gの間の距離(本実施形態では、ノズル列122aを構成するノズル121の数がn個である場合、(n-1)個分離間した画素部Gの中点同士のY軸方向寸法)を算出するものでも良い。
【0055】
塗布領域の各所定位置における画素部GのY軸方向の配列間隔が算出された後、次に塗布ヘッド12が走査し、各画素部Gへの塗液の塗布を行う。その際、ヘッド角度調節部123が制御部によって動作され、図3において塗布ヘッド12の傾斜角がゼロのとき距離Dであるノズル列122aの両端のノズル121同士のY軸方向の距離が、各所定位置において距離L1→L2→L3となるように、塗布ヘッド12の傾斜角がθ1→θ2→θ3と変化を続ける。また、その際、シフト方向(Y軸方向)への移動もともなっても良い。
【0056】
なお、塗布ヘッド12走査方向(X軸方向)に対する画素部Gへの位置ずれへの対応は、各ノズル121からの塗液の吐出タイミングを個別に調節することで実施可能である。
【0057】
ここで、本発明における塗布ヘッド12は、図2にも示した通り複数のノズル列を有している。この場合、仮に図4(a)に寸法d1で示すように塗布ヘッド12の傾斜角がゼロのときY軸方向に関してノズル列122bのノズル121がノズル列122aのノズル121の中間に位置するように形成されていても、図4(b)に寸法d2および寸法d3で示すように塗布ヘッド12が傾斜すると、Y軸方向に関してノズル列122bのノズル121がノズル列122aのノズル121の中間に位置するという位置関係は崩れてしまう。そのため、一度の塗布ヘッド12の走査における塗液の塗布において全てのノズル列のノズル121から塗液の吐出をさせようとすると、ノズル列同士のノズル121の位置関係の把握が困難となり、制御が煩雑となるおそれがある。
【0058】
そこで、本発明では、制御部は一度の走査の間は塗布ヘッド12の所定の1つのノズル列のノズル121からのみ塗液を吐出するよう塗布ヘッド12の動作を制御する。具体的には、一度の走査においてノズル列122aのノズル121が吐出ノズル(その走査において吐出に供するノズル121)として使用される場合、ノズル列122bなどノズル列122a以外のノズル列のノズル121からは一切塗液の塗布は行われない。
【0059】
これにより、塗布ヘッド12の傾斜角が変わっても隣接する吐出ノズル同士の間隔は均一であるため、基材Wの歪みに対応し、正確な位置へ塗液を塗布するための塗布ヘッド12の角度調節制御を容易とすることができる。
【0060】
ただし、この実施形態であると、ノズル列を形成する複数のノズル121の一部において吐出動作が正常でない場合にそのノズル121に代替するノズル121を設定することが困難になる。そのため、制御部は、吐出動作が正常でないノズル121を含むノズル列は一切塗布に使用せず、他のノズル列によって塗液の塗布を行うよう制御することが好ましい。こうすることにより、塗布パターンを形成するために使用される全てのノズル121によって正常に塗液を塗布することができる状態を維持することができる。
【0061】
また、各ノズル121の吐出動作が正常であるか否かを検査するために、本実施形態の塗布装置1は、図1に示すように検査部16を有している。
【0062】
検査部16はたとえばノズル121から吐出された塗液の飛翔状態を側方から撮像する装置であり、塗液の飛翔方向および大きさなどからノズル121の吐出動作の正否を判別する。このとき、塗布ヘッド12がこの検査部16まで移動しても良く、また、検査部16が吸着ステージ11の上方の塗布ヘッド12の近傍まで移動しても良い。
【0063】
図5は、塗布ヘッド12が複数回走査して基材Wへ塗布を行う形態を表した図であり、この図では矢印で示すように塗布ヘッド12はX軸方向に3回走査を行っている。
【0064】
このとき、1回目の走査ではノズル列122aのノズル121によって、2回目の走査ではノズル列122bのノズル121によって、そして3回目の走査ではノズル列122aのノズル121によって塗液の塗布が行われている。すなわち、1回の走査ごとに使用されるノズル列が切り替えられており、このように塗布ヘッド12が所定の回数分走査するごとに塗液の塗布に使用するノズル列を変更するよう制御部が塗布ヘッド12による塗布を制御することが好ましい。なお、このとき、上記の通り吐出動作が正常でないノズル121を含むノズル列がある場合には、そのノズル列を選択肢から外して使用するノズル列を変更するよう制御部は制御を行う。
【0065】
こうすることにより、吐出不良のノズル121を含まない全てのノズル列を定期的に吐出ノズルとして使用することができ、ノズル121内で溶媒が揮発して塗液の粘度が高まることによるノズル121内での塗液の詰まりが生じることを防ぐことができる。
【0066】
以上の塗布装置により、ロールツーロールで連続搬送しながら長尺フィルムに塗液を精度良く塗布することが可能である。
【0067】
ここで、本発明の塗布装置は、以上で説明した形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。たとえば、上記の説明では、塗布部において基材を固定する手段として吸着ステージにおける気体の吸引が行われているが、これに限らず、他の固定手段が採用されていても良い。たとえば、静電気により基材を吸着固定する静電吸着であっても良い。
【0068】
また、上記の説明では検査部はノズルからの塗液の飛翔状態を確認するものであるが、それに限らず、たとえばフィルム上に塗液を着弾させ、着弾した塗液の大きさおよび位置を確認して正常か否かを判別するものであっても良い。
【0069】
また、上記の説明ではノズル列は2列であるが、2列より多く配列されていても良い。
【0070】
また、上記の説明では塗布時に使用されるノズル列は1回の走査毎に変更されているが、これに限らず、たとえば2回の走査毎であっても良い。
【0071】
また、上記の説明では、使用するノズル列を所定の回数分走査する度に切り替えるものであるが、これに限らず、たとえば主として塗布に使用されるノズル列が1つあり、他のノズル列はその主たるノズル列のノズルに吐出不良が生じた場合に切り替えられて使用される予備的なノズル列であるような使用形態であっても構わない。
【0072】
また、塗布部において基材を搬送する機構は、グリップフィーダ以外でも構わない。たとえば、基材を吸着させるサクションロールで基材を把持し、このサクションロールが回転駆動することにより基材を送り出す機構であっても良い。また、駆動ロールニップロールとで基材を挟持し、当該駆動ロールが回転駆動ことにより基材を送り出す機構であっても良い。
【0073】
また、塗布パターンがたとえば紫外線照射により硬化する塗液から構成されるものである場合、乾燥部は熱風を吹き出すものでなく、基材の塗布面に紫外線を照射する装置となる。
【0074】
また、上記の説明ではフィルム上に形成された画素部へR、G、Bのインクを塗布してカラーフィルタを形成する用途について説明したが、それに限らず、たとえばインクジェット法によりフィルム上に金属配線パターンを描画するなどの用途に本発明を用いても良い。
【符号の説明】
【0075】
1 塗布装置
2 送り出しロール
3 巻き取りロール
10 塗布部
11 吸着ステージ
12 塗布ヘッド
13 撮像部
14 グリップフィーダ
15 液滴
16 検査部
20 乾燥部
30 バッファ部
40 バッファ部
121 ノズル
122a ノズル列
122b ノズル列
123 ヘッド角度調節部
G 画素
W 基材
図1
図2
図3
図4
図5