(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231017BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20231017BHJP
G03F 7/16 20060101ALI20231017BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
H01L21/68 P
H01L21/31 A
G03F7/16 501
H01L21/30 564Z
(21)【出願番号】P 2020023084
(22)【出願日】2020-02-14
【審査請求日】2021-11-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】上野 幸一
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-101676(JP,A)
【文献】特開2010-197415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0053822(US,A1)
【文献】特開2013-219069(JP,A)
【文献】国際公開第2018/083918(WO,A1)
【文献】特開平01-182670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/31
G03F 7/16
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の基板を載置可能な基板載置領域を上面に有するステージと、
処理液を吐出するスリット状の吐出口を有するノズルと、
前記ノズルを前記ステージの上方において移動させるノズル移動部と、
前記基板載置領域の中央部において前記ステージに載置された前記基板の下面と前記ステージとで挟まれた空間から第1気体を排出して第1負圧を発生させる第1負圧発生部と、
上方からの平面視で前記空間を取り囲むように前記基板載置領域の周縁部に設けられた環状の凹部と、
前記凹部内に設けられた弾性体である環状のシール部材と、
前記シール部材の上端が前記基板の下面と密着した状態で前記凹部の内部から第2気体を排出して第2負圧を発生させる第2負圧発生部と、を備え、
前記基板の有効エリアに複数の素子が形成される一方で、前記有効エリアを取り囲む非有効エリアには前記素子が形成されておらず、
前記第1負圧発生部は前記有効エリアに対して前記第1負圧を与え、
前記凹部は前記非有効エリアに対向して設けられ、
前記シール部材の上端は、前記基板の載置前において前記ステージの上面から露出する一方、前記基板が前記基板載置領域に載置されるとともに前記第1負圧を受けた状態において前記基板の下面と密着しながら前記凹部に向けて後退して前記空間を気密
にし、前記ステージの前記基板載置領域の周縁部うち、前記凹部に対する中央部側部位と、前記凹部に対する周端側部位の両方に前記基板の前記非有効エリアが当接した状態で、前記基板の前記有効エリアおよび前記非有効エリアを前記ステージの前記基板載置領域に吸着保持することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
ステージの上面の基板載置領域に矩形状の基板を載置した後で前記基板載置領域の中央部において前記基板の下面と前記ステージとで挟まれた空間から第1気体を排出して第1負圧を発生させて前記ステージ上で保持する保持工程と、
前記基板を保持する前記ステージの上方においてスリット状の吐出口を有するノズルを移動させながら前記吐出口から処理液を前記基板の上面に供給して塗布する塗布工程とを備え、
前記基板の有効エリアに複数の素子が形成される一方で、前記有効エリアを取り囲む非有効エリアには前記素子が形成されておらず、
前記保持工程における前記第1負圧は前記有効エリアに対して与えられ、
前記保持工程は、
前記基板の載置前に、弾性体で構成された環状のシール部材の上端を前記ステージの上面から露出させたまま上方からの平面視で前記空間を取り囲むように前記基板載置領域の周縁部
であって、前記基板の前記非有効エリアに対向して設けられた環状の凹部内に位置させる工程と、
前記基板の載置後に、前記第1負圧を受けた前記基板の下面と前記シール部材の上端とを密着させながら前記シール部材の上端を前記凹部に向けて後退させて前記空間を気密するとともに、前記凹部の内部から第2気体を排出して第2負圧を発生させる工程とを有
し、
前記ステージの前記基板載置領域の周縁部うち、前記凹部に対する中央部側部位と、前記凹部に対する周端側部位の両方に前記基板の前記非有効エリアが当接した状態で、前記基板の前記有効エリアおよび前記非有効エリアを前記ステージの前記基板載置領域に吸着保持することを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、矩形状の基板、例えば液晶表示装置や有機EL表示装置等のFPD用ガラス基板、電子ペーパー用基板等の精密電子装置用基板、半導体パッケージ用基板(以下、単に「基板」と称する)を吸着保持する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、処理液の塗布等の処理を基板に行う基板処理装置では、基板がステージ上に載置された後で、ステージに吸着保持される。つまり、ステージの上面に複数の吸着孔が形成されており、当該吸着孔を介して基板とステージとで挟まれた空間から気体を排出して負圧を発生させる。この負圧により基板はステージに保持される(特許文献1参照)。こうして基板の保持工程が実行された後で、処理液を吐出するスリット状の吐出口を有するノズルがステージの上方において移動して処理液を基板の上面に供給して塗布する(塗布工程)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年では基板の反りが比較的大きく、ステージ上で基板をフラットに保持することが難しいケースが発生している。例えばウェーハレベルパッケージ(WLP:Wafer Level Packaging)やパネルレベルパッケージ(PLP:Panel Level Packaging)といった製造形態で製造される半導体パッケージでは、矩形状のガラス基板上に複数の半導体チップやチップ間の配線などが多層に組み合わされている。それらの熱収縮率や熱膨張率の相違量は単にレジスト層などを積層した半導体基板よりも大きく、反りが大きくなる傾向にある。そのため、矩形状の基板を安定して保持することが難しく、基板への処理液の供給が不安定になることがあった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ステージの上面で矩形状の基板を高い吸着力で保持して処理液の塗布を安定して行うことができる基板処理装置および基板処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、基板処理装置であって、矩形状の基板を載置可能な基板載置領域を上面に有するステージと、処理液を吐出するスリット状の吐出口を有するノズルと、ノズルをステージの上方において移動させるノズル移動部と、基板載置領域の中央部においてステージに載置された基板の下面とステージとで挟まれた空間から第1気体を排出して第1負圧を発生させる第1負圧発生部と、上方からの平面視で空間を取り囲むように基板載置領域の周縁部に設けられた環状の凹部と、凹部内に設けられた弾性体である環状のシール部材と、前記シール部材の上端が前記基板の下面と密着した状態で前記凹部の内部から第2気体を排出して第2負圧を発生させる第2負圧発生部と、を備え、基板の有効エリアに複数の素子が形成される一方で、有効エリアを取り囲む非有効エリアには素子が形成されておらず、第1負圧発生部は有効エリアに対して第1負圧を与え、凹部は非有効エリアに対向して設けられ、シール部材の上端は、基板の載置前においてステージの上面から露出する一方、基板が基板載置領域に載置されるとともに第1負圧を受けた状態において基板の下面と密着しながら凹部に向けて後退して空間を気密にし、ステージの基板載置領域の周縁部うち、凹部に対する中央部側部位と、凹部に対する周端側部位の両方に基板の非有効エリアが当接した状態で、基板の有効エリアおよび非有効エリアをステージの基板載置領域に吸着保持することを特徴としている。
【0007】
また、本発明の第2態様は、基板処理方法であって、ステージの上面の基板載置領域に矩形状の基板を載置した後で基板載置領域の中央部において基板の下面とステージとで挟まれた空間から第1気体を排出して第1負圧を発生させてステージ上で保持する保持工程と、基板を保持するステージの上方においてスリット状の吐出口を有するノズルを移動させながら吐出口から処理液を基板の上面に供給して塗布する塗布工程とを備え、基板の有効エリアに複数の素子が形成される一方で、有効エリアを取り囲む非有効エリアには素子が形成されておらず、保持工程における第1負圧は有効エリアに対して与えられ、保持工程は、基板の載置前に、弾性体で構成された環状のシール部材の上端をステージの上面から露出させたまま上方からの平面視で空間を取り囲むように基板載置領域の周縁部であって、基板の非有効エリアに対向して設けられた環状の凹部内に位置させる工程と、基板の載置後に、第1負圧を受けた基板の下面とシール部材の上端とを密着させながらシール部材を凹部に向けて後退させて空間を気密するとともに、前記凹部の内部から第2気体を排出して第2負圧を発生させる工程とを有し、ステージの基板載置領域の周縁部うち、凹部に対する中央部側部位と、凹部に対する周端側部位の両方に基板の非有効エリアが当接した状態で、基板の有効エリアおよび非有効エリアをステージの基板載置領域に吸着保持することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明によれば、ステージの上面で矩形状の基板を高い吸着力で保持して処理液の塗布を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【
図2A】第1実施形態におけるステージ、負圧発生部、リフトピンおよびリフトピン駆動部の構成を模式的に示す図である。
【
図2B】第1実施形態におけるステージ、負圧発生部、リフトピンおよびリフトピン駆動部の構成を模式的に示す図である。
【
図3A】本発明に係る基板処理装置の第2実施形態におけるステージ、負圧発生部、リフトピンおよびリフトピン駆動部の構成を模式的に示す図である。
【
図3B】本発明に係る基板処理装置の第2実施形態におけるステージ、負圧発生部、リフトピンおよびリフトピン駆動部の構成を模式的に示す図である。
【
図4】本発明に係る基板処理装置の第3実施形態を示す図である。
【
図5】本発明に係る基板処理装置の第4実施形態を示す図である。
【
図6】気体層形成部の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を示す斜視図である。各図における方向を統一的に示すために、
図1左上に示すようにXYZ直交座標軸を設定する。ここでXY平面が水平面、Z軸が鉛直軸を表す。
【0011】
基板処理装置100は、スリットノズル1を用いて基板Sの上面に処理液を塗布するスリットコータと呼ばれる装置である。処理液としては、レジスト液、カラーフィルター用液、ポリイミド、シリコン、ナノメタルインク、導電性材料を含むスラリー等、種々のものを用いることが可能である。この基板処理装置100では、基台2の上にステージ3が配置されている。このステージ3の上面31は基板Sを載置可能な基板載置領域(
図2B中の符号311)を有している。また、ステージ3の上面31に載置された基板Sを吸着保持するための負圧発生部(
図2A、
図2B中の符号5)がステージ3に接続されている。なお、ステージ3および負圧発生部の構成および動作については後で詳述する。
【0012】
ステージ3の上方には、スリットノズル1が配置されている。スリットノズル1はY方向に延びるスリット状の吐出口を有しており、ステージ3に保持された基板Sの上面に向けて吐出口から処理液を吐出可能となっている。基板処理装置100では、スリットノズル1をステージ3の上方においてX方向に往復移動させるノズル移動部4が設けられている。ノズル移動部4は、ステージ3の上方をY方向に横断してスリットノズル1を支持するブリッジ構造のノズル支持体41と、ノズル支持体41をX方向に水平移動させるノズル駆動機構42とを有する。
【0013】
ノズル支持体41は、スリットノズル1が固定された固定部材41aと、固定部材41aを支持しつつ昇降させる2つの昇降機構41bとを有している。固定部材41aは、Y方向を長手方向とする断面矩形の棒状部材であり、カーボンファイバ補強樹脂等で構成される。2つの昇降機構41bは固定部材41aの長手方向の両端部に連結されており、それぞれACサーボモータおよびボールネジ等を有する。これらの昇降機構41bにより、固定部材41aとスリットノズル1とが一体的に鉛直方向(Z方向)に昇降され、スリットノズル1の吐出口と基板Sのとの間隔、すなわち、基板Sの上面に対する吐出口の相対的な高さが調整される。
【0014】
ノズル駆動機構42は、スリットノズル1の移動をX方向に案内する2本のガイドレール43と、駆動源である2個のリニアモータ44と、スリットノズル1の吐出口の位置を検出するための2個のリニアエンコーダ45とを備えている。2本のガイドレール43は、基板載置領域311(
図2B)をY方向から挟むように基台2のY方向の両端に配置されるとともに、基板載置領域311を含むようにX方向に延設されている。そして、2つの昇降機構41bの下端部のそれぞれが2本のガイドレール43に沿って案内されることで、スリットノズル1はステージ3上に保持される基板Sの上方をX方向へ移動する。
【0015】
2個のリニアモータ44のそれぞれは、固定子44aと移動子44bとを有するACコアレスリニアモータである。固定子44aは、基台2のY方向の両側面にX方向に沿って設けられている。一方、移動子44bは、昇降機構41bの外側に対して固設されている。リニアモータ44は、これら固定子44aと移動子44bとの間に生じる磁力によって、ノズル駆動機構42の駆動源として機能する。
【0016】
また、2個のリニアエンコーダ45のそれぞれは、スケール部45aと検出部45bとを有している。スケール部45aは基台2に固設されたリニアモータ44の固定子44aの下部にX方向に沿って設けられている。一方、検出部45bは、昇降機構41bに固設されたリニアモータ44の移動子44bのさらに外側に固設され、スケール部45aに対向配置される。リニアエンコーダ45は、スケール部45aと検出部45bとの相対的な位置関係に基づいて、X方向におけるスリットノズル1の吐出口の位置を検出する。つまり、本実施形態では、昇降機構41bによりスリットノズル1と基板Sとの間隔をZ方向に調整しつつ、ノズル駆動機構42によりスリットノズル1が基板Sに対してX方向に相対移動する。そして、こうした相対移動中に、スリットノズル1から処理液が吐出されることで基板Sの上面に処理液が供給される(処理液の塗布処理)。
【0017】
この塗布処理の前後でステージ3に対して基板Sを昇降させるために、リフトピンおよびリフトピン駆動部が設けられている。また、塗布処理中に基板Sを強固にステージ3の上面31に吸着保持するために、本実施形態では、ステージ3および負圧発生部を次のように構成している。以下、
図1、
図2Aおよび
図2Bを参照しつつステージ3、負圧発生部、リフトピンおよびリフトピン駆動部の構成および動作について詳述する。
【0018】
図2Aおよび
図2Bはステージ、負圧発生部、リフトピンおよびリフトピン駆動部の構成を模式的に示す図であり、
図2Aは基板Sを吸着保持していない状態を示し、
図2Bは基板Sを吸着保持している状態を示している。また、
図2Aおよび
図2B(さらに後で説明する
図3A、
図3B、
図4および
図5)において、「CLOSE」および「OPEN」は開閉弁53の開閉状況を示している。ここでは、リフトピンおよびリフトピン駆動部の構成を先に説明する。
【0019】
ステージ3には、Z方向に平行に延設されて上面31に開口する複数のピン収納孔315が設けられており、各ピン収納孔315にリフトピン61が収容されている。各リフトピン61はZ方向に平行に延設されたピン形状を有し、装置全体を制御する制御部10がリフトピン駆動部62に昇降指令を与えることでリフトピン61を昇降させる。これによって、リフトピン61がピン収納孔315に対して進退する。図示を省略するロボットがステージ3の上方に基板Sを搬送してくると、リフトピン駆動部62の駆動により上昇した複数のリフトピン61がピン収納孔315からステージ3の上面31の上方へ突出してそれぞれの上端で基板Sを受け取る。続いて、リフトピン駆動部62の駆動により複数のリフトピン61が降下してピン収納孔315内に収まることで、複数のリフトピン61の上端から基板載置領域311に基板Sが載置される。なお、基板載置領域311から基板Sを持ち上げる際には、リフトピン駆動部62の駆動により複数のリフトピン61が上昇してピン収納孔315からステージ3の上面31の上方へ突出する。
【0020】
ステージ3の上面31には、上記したように基板載置領域311が設けられているが、基板載置領域311をさらに詳しく見ると、基板載置領域311は、基板Sの有効エリアSaに対応して格子状の吸着溝312が設けられた中央部と、吸着溝312を取り囲むように環状の凹部7が設けられた周縁部とを有している。
【0021】
ここで、基板Sの有効エリアSa(
図2A、
図2B参照)とは、基板Sの上面中央部に複数の素子が設けられる領域を意味している。例えば半導体パッケージの場合、矩形状のガラス基板が基板Sに相当し、ガラス基板の上面中央部に積層して配置される複数の半導体チップやチップ間の配線などが複数の素子に相当する。基板Sが基板載置領域311に載置されると、
図2Bに示すように、有効エリアSaは基板載置領域311の中央部の上方に位置する。基板載置領域311の中央部では、基板Sの有効エリアSaをステージ3の上面31で強固に吸着保持するために、
図1に示すように吸着溝312が格子状に刻設されている。すなわち、ステージ3の上面31から一定深さで溝がX方向およびY方向に延設されるとともに、溝が交差している地点のいくつかで当該交差点からステージ3の下面32に繋がる貫通孔313がZ方向に穿設されている。
【0022】
各貫通孔313は、
図2Aおよび
図2Bに示すように、負圧発生部5と接続されている。負圧発生部5は吸引配管51、吸引源52および開閉弁53を有している。より詳しくは、吸引配管51により吸引源52が貫通孔313と接続されている。吸引源52としては、例えば真空ポンプを用いてもよいし、基板処理装置100が設置される工場の用力を用いてもよい。吸引配管51には、開閉弁53が介挿されている。制御部10からの閉成指令に応じて開閉弁53が閉成することで貫通孔313への負圧供給は停止される。一方、制御部10からの開成指令に応じて開閉弁53が開成することで貫通孔313に負圧が供給される。つまり、
図2Bに示すように、基板Sが基板載置領域311に載置された後で制御部10からの開成指令に応じて開閉弁53が開くと、貫通孔313に負圧が供給される。それによって、基板Sの有効エリアSaの下面とステージ3の上面31とで挟まれた空間(以下「排気対象空間」という)から空気が吸着溝312および貫通孔313を介して排出され、基板Sがステージ3の上面31に吸着保持される。
【0023】
こうして基板Sの有効エリアSaは負圧発生部5により吸着保持されるが、有効エリアSaの外側領域、つまり非有効エリアSbは基板載置領域311の周縁部の上方に位置している。したがって、非有効エリアSbで反りが発生していると、反り部分から空気が排気対象空間(有効エリアSaとステージ3との間)に流入して吸着力が低下してしまう。そこで、本実施形態では、基板載置領域311の周縁部において、格子状の吸着溝312を取り囲むように環状の凹部7が設けられるとともに、ゴムや樹脂などの弾性体で構成された環状の中空パッキン8Aが本発明の「シール部材」として挿入されている。
【0024】
中空パッキン8Aの断面は円環形状または楕円環形状を有している。そして、基板Sが基板載置領域311上に載置されていない時には、
図2Aに示すように、中空パッキン8Aの上端はステージ3の上面31から上方に突出量ΔZだけ突出して露出している。一方、基板Sが基板載置領域311上に載置されると、中空パッキン8Aの上端は非有効エリアSbで基板Sの下面と密着した後で当該上端が弾性変形しながら凹部7に向かって後退する。このような密着しながらの弾性変形は基板Sの反りに対応しながら中空パッキン8Aの全周にわたって発生する。このため、基板Sに対する中空パッキン8Aの全周密着により排気対象空間の気密が保たれる。その結果、基板Sに反りが発生していたとしても、ステージ3に対して基板Sを強固に保持することができ、基板Sへの処理液の塗布を安定して行うことができる。
【0025】
また、本実施形態では、
図1に示すように、凹部7の角部を丸く仕上げる、いわゆるラウンドエッジに成形しているため、環状の中空パッキン8Aを凹部7に挿入する際に中空パッキン8Aが角部で傷つくのを効果的に防止することができる。
【0026】
上記したように第1実施形態では、負圧発生部5が本発明の「第1負圧発生部」の一例に相当し、排気対象空間に存在する空気が本発明の「第1気体」の一例に相当するとともに当該空気の排出により発生する負圧が本発明の「第1負圧」の一例に相当している。
【0027】
図3Aおよび
図3Bは本発明に係る基板処理装置の第2実施形態におけるステージ、負圧発生部、リフトピンおよびリフトピン駆動部の構成を模式的に示す図であり、
図3Aは基板Sを吸着保持していない状態を示し、
図3Bは基板Sを吸着保持している状態を示している。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、本発明のシール部材として断面が略V字状のシール、いわゆるVシール8Bを用いている点と、凹部7の内部の空気を排出する凹部排気構造を採用している点とである。なお、その他の構成は第1実施形態と基本的に同一である。そこで、以下においては相違点を中心に説明し、同一構成に対して同一符号を付して構成説明を省略する。
【0028】
第2実施形態では、
図3Aおよび
図3Bに示すように、凹部7の底面からステージ3の下面に向けて貫通孔314が穿設されている。貫通孔314は吸引配管51により吸引源52と接続されている。したがって、制御部10からの閉成指令に応じて開閉弁53が閉成する間、貫通孔313、314への負圧供給は停止される。一方、制御部10からの開成指令に応じて開閉弁53が開成することで貫通孔313だけでなく、貫通孔314にも負圧が供給される。このため、
図3Bに示すように、基板Sが基板載置領域311上に載置されると、Vシール8Bの上端は基板Sの下面のうち非有効エリアSbと密着した後で主として当該上端が弾性変形しながら凹部7の内部に向けて押し込まれる。その結果、第1実施形態と同様に、基板Sに対するVシール8Bの全周密着により排気対象空間の気密が保たれる。その結果、基板Sに反りが発生していたとしても、ステージ3に対して基板Sを強固に保持することができ、基板Sへの処理液の塗布を安定して行うことができる。しかも、凹部7の内部から空気(本発明の「第2気体」に相当)を排出して負圧(本発明の「第2負圧」に相当)を発生させている。このため、基板Sの有効エリアSaのみならず非有効エリアSbについてもステージ3の上面31に吸着保持され、基板Sの吸着力をさらに高めることができる。また、Vシール8Bが弾性変形する際に、仮に基板Sやステージ3と擦れて発塵したとしても、凹部7から確実に排出して基板Sへの付着を確実に防止することができる。
【0029】
このように第2実施形態では、負圧発生部5は本発明の「第2負圧発生部」としても機能しているが、負圧発生部5から独立して凹部7から第2空気を排出して第2負圧を発生させる負圧発生部を別途設けてもよく、これは本発明の「第2負圧発生部」として機能する。また、第2実施形態の凹部排気構造を第1実施形態や後で説明する第3実施形態や第4実施形態に適用してもよいことは言うまでもない。
【0030】
図4は本発明に係る基板処理装置の第3実施形態を示す図である。第3実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、例えば特開2017-112197号公報に記載された矯正機構と同一構成の矯正部9が追加されている点である。その他の構成は第1実施形態と基本的に同一である。そこで、以下においては相違点を中心に説明し、同一構成に対して同一符号を付して構成説明を省略する。
【0031】
矯正部9は、基板載置領域311に載置された基板Sの上面の周縁部、つまり非有効エリアSbに対して矯正ブロック91を直接当接させることで非有効エリアSbに下方向きの押圧力を与えて基板Sの反りを矯正するものであり、その詳細については上記公報に記載されている。よって、本明細書では、基板処理装置100で採用された矯正部9の基本構成および動作について
図4を参照しつつ説明する。
【0032】
矯正ブロック91は基板載置領域311の各辺に1個ずつ配置されている。同図中の白抜き矢印で示すように、矯正ブロック91は基板載置領域311の周縁部の上方で鉛直方向Zに昇降自在に設けられている。各矯正ブロック91はブロック移動部92と接続されている。このブロック移動部92によって矯正ブロック91が基板載置領域311に載置された基板Sの非有効エリアSbの上方に移動されると、矯正ブロック91の下面が非有効エリアSbを上方から覆うように対向配置される。そして、ブロック移動部92によって矯正ブロック91がさらに降下されると、矯正ブロック91の下面が基板Sの非有効エリアSbに接触し、さらに非有効エリアSbを基板載置領域311の周縁部に押し付ける。これにより基板Sの反りが矯正されて基板Sの非有効エリアSbはフラットな状態となる。しかも、この非有効エリアSbが凹部7に挿入された中空パッキン8Aの上端を押え付け、中空パッキン8Aをほぼ全周にわたって均一に弾性変形させて排気対象空間の気密性をさらに高める。その結果、ステージ3に対して基板Sをさらに強固に保持することができ、基板Sへの処理液の塗布をさらに安定して行うことができる。
【0033】
ところで、上記第3実施形態では、矯正ブロック91の下面を基板Sの非有効エリアSbに直接的に接触させて当該非有効エリアSbを基板載置領域311の周縁部に押し付けて矯正している。このため、基板Sのうち矯正ブロック91と物理的に接触する部位にダメージが導入されてしまうことがある。また、上記接触により塵やパーティクルなどが発生することがある。そこで、次に説明するように、基板Sの非有効エリアSbと矯正ブロック91の下面との間に気体層を形成し、気体層により非有効エリアSbを下方に押し付けて基板Sの反りを矯正するとともに排気対象空間の気密性を高めてもよい(第4実施形態)。
【0034】
図5は本発明に係る基板処理装置の第4実施形態を示す図である。第4実施形態が第3実施形態と大きく相違する点は、矯正ブロック91に連結されて矯正ブロック91と基板Sとの間に気体層93を強制的に形成する気体層形成部94が追加されている点と、気体層93を介して基板Sの非有効エリアSbを下方に押し付ける点とであり、その他の構成は基本的に第3実施形態と同一である。したがって、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
図6は気体層形成部の構成を模式的に示す図である。気体層形成部94は、
図6に示すように、コンプレッサなどの圧縮部941、温調部942、フィルタ943、ニードル弁944、流量計945、圧力計946およびエアオペレーションバルブ947を有している。気体層形成部94では、圧縮部941により圧縮された空気を温調部942で所定の温度に調整して気体層形成用の圧縮空気を生成する。
【0036】
この圧縮空気を流通させる配管には、フィルタ943、ニードル弁944、流量計945、圧力計946およびエアオペレーションバルブ947が設けられている。そして、制御部10からの指令にしたがってエアオペレーションバルブ947が開成すると、フィルタ943を通って清浄化された圧縮空気がニードル弁944により圧力調節された後で流量計945、圧力計946、エアオペレーションバルブ947を通過して矯正ブロック91に圧送される。圧縮空気は矯正ブロック91の下面に設けられた噴出孔(図示省略)から本発明の「第3気体」として基板Sの非有効エリアSbに向けて噴出される。これによって、基板Sの非有効エリアSbと矯正ブロック91との間に気体層93(
図5においてドットを付して模式的に示した領域)が形成される。
【0037】
そして、気体層93を形成したまま、第3実施形態と同様に、ブロック移動部92により矯正ブロック91がさらに降下されると、非有効エリアSbは矯正ブロック91と非接触状態のまま気体層93によって基板載置領域311の周縁部に押し付けられて矯正されて基板Sの非有効エリアSbはフラットな状態となる。しかも、この非有効エリアSbが凹部7に挿入された中空パッキン8Aの上端を押え付け、中空パッキン8Aをほぼ全周にわたって均一に弾性変形させて排気対象空間の気密性をさらに高める。その結果、ステージ3に対して基板Sをさらに強固に保持することができ、基板Sへの処理液の塗布をさらに安定して行うことができる。
【0038】
以上のように、第3実施形態と同様に、非有効エリアSbを矯正しているため、中空パッキン8Aをほぼ全周にわたって均一に弾性変形させて排気対象空間の気密性をさらに高めることができる。その結果、ステージ3に対して基板Sをさらに強固に保持することができ、基板Sへの処理液の塗布をさらに安定して行うことができる。
【0039】
また、反りの矯正時に基板Sに接触するのは気体層93となり、矯正ブロック91を直接接触させて矯正する第3実施形態に比べて基板Sにダメージが導入されるのを防止するとともに発塵の問題を解消しながら基板Sを強固に吸着保持することができる。
【0040】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、吸着溝312を格子状に設けて基板Sの有効エリアSaの下面を吸着保持しているが、吸着溝312の配置は格子状に限定されず、任意である。また、吸着溝312を設ける代わりに、あるいは吸着溝312とともに複数の吸着孔を基板載置領域311の中央部に分散して設け、各吸着孔を介して排気対象空間の空気を排出して負圧を発生させてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、基板Sの一例として反り量が比較的大きな半導体パッケージを例示しているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、矩形状の基板を吸着保持しながら基板の上面にスリットノズルから処理液を供給する基板処理装置全般に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明は、ステージの上面で矩形状の基板を吸着保持しながら処理液を基板に塗布する基板処理技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…スリットノズル
3…ステージ
4…ノズル移動部
5…(第1、第2)負圧発生部
7…凹部
8A…中空パッキン(シール部材)
8B…Vシール(シール部材)
31…(ステージの)上面
32…(ステージの)下面
91…矯正ブロック
92…ブロック移動部
93…気体層
94…気体層形成部
100…基板処理装置
311…基板載置領域
312…吸着溝
S…基板
Sa…有効エリア
Sb…非有効エリア