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  • 特許-押出装置、及びその温度制御方法 図1
  • 特許-押出装置、及びその温度制御方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】押出装置、及びその温度制御方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/25 20190101AFI20231017BHJP
   F16C 37/00 20060101ALI20231017BHJP
   B29C 48/37 20190101ALI20231017BHJP
   B29C 48/69 20190101ALI20231017BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20231017BHJP
【FI】
B29C48/25
F16C37/00 A
B29C48/37
B29C48/69
B29C48/92
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020030553
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021133577
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】薦田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】栗原 正夫
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-240494(JP,A)
【文献】特開2002-138970(JP,A)
【文献】特開2018-145264(JP,A)
【文献】特開平08-224769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
F16C 37/00
B29B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒流体の温度を調整する温度調整部と、
所定材料を溶融混練する押出機の下流に配置されると共に、前記温度調整部に接続され、該温度調整部から送出される熱媒流体により加熱される所定機器と、
前記所定機器に接続され、前記所定機器から送出される熱媒流体により温調されるギヤポンプのギヤ軸及び該ギヤ軸を受ける軸受けを有すると共に、前記押出機により溶融混練された所定材料を昇圧するギヤポンプと、
を備える、ことを特徴とする押出装置。
【請求項2】
請求項1記載の押出装置であって、
前記所定機器は、前記所定材料を濾過する濾過装置、および、前記押出機と前記ギヤポンプとの間に設けられるダイバータバルブで構成されることを特徴とする押出装置。
【請求項3】
熱媒流体の温度を調整する温度調整部と、
所定材料を溶融混練する押出機の下流に配置されると共に、前記温度調整部に接続された所定機器と、
前記所定機器に接続され、ギヤ軸及び該ギヤ軸を受ける軸受けを有すると共に、前記押出機により溶融混練された所定材料を昇圧するギヤポンプと、
を備える押出装置の温度制御方法であって、
前記温度調整部から送出される熱媒流体により前記所定機器を加熱するステップと、
前記所定機器から送出される熱媒流体により前記ギヤ軸及び軸受けを温調するステップと、
を含む、ことを特徴とする押出装置の温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出装置、及びその温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱媒流体の温度を調整する温度調整部と、温度調整部からの熱媒流体により温調されるギヤ軸及び該ギヤ軸を受ける軸受けを有すると共に、押出機により溶融混練された所定材料を昇圧するギヤポンプと、を備える押出装置が知られている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-139061号公報
【文献】特開2002-139062号公報
【文献】特開平10-141247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、押出装置において、押出機の下流機器の温度制御とギヤポンプのギヤ軸及び軸受の温度制御は、要求される温度が異なるため、それぞれ独立した温度調整部により行われていた。このため、温度調整部の設置スペースを広く要し、温度制御も煩雑となり、製造コストが増加するという問題が生じていた。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、温度制御を簡略化し、省スペース化及び低製造コスト化を実現した押出装置、及びその温度制御方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
熱媒流体の温度を調整する温度調整部と、
所定材料を溶融混練する押出機の下流に配置されると共に、前記温度調整部に接続され、該温度調整部から送出される熱媒流体により加熱される所定機器と、
前記所定機器に接続され、前記所定機器から送出される温度の下がった熱媒流体により温調されるギヤ軸及び該ギヤ軸を受ける軸受けを有すると共に、前記押出機により溶融混練された所定材料を昇圧するギヤポンプと、を備えることを特徴とする押出装置である。
この一態様において、前記所定機器は、前記所定材料を濾過する濾過装置、および、前記押出機と前記ギヤポンプと押出機の間に設けられるダイバータバルブで構成されてもよい。
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
熱媒流体の温度を調整する温度調整部と、
所定材料を押出す押出機の下流に配置される前記温度調整部に接続された所定機器と、
前記所定機器に接続され、ギヤ軸及び該ギヤ軸を受ける軸受けを有すると共に、前記押出機により溶融混練された所定材料を昇圧するギヤポンプと、を備える押出装置の温度制御方法であって、
前記温度調整部から送出される熱媒流体により前記所定機器を加熱するステップと、
前記所定機器から送出される熱媒流体により前記ギヤ軸及び軸受けを温調するステップと、を含む、ことを特徴とする押出装置の温度制御方法
であってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、温度制御を簡略化し、省スペース化及び低製造コスト化を実現した押出装置、及びその温度制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る押出装置の概略的な構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る押出装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る押出装置の概略的な構成を示す概略図である。
図4】本発明の一実施形態に係る押出装置の温度制御方法のフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る押出装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【0010】
ところで、従来の押出装置において、押出機の下流機器の温度制御と、ギヤポンプのギヤ軸及び軸受の温度制御とは、それぞれ独立した温度調整部により行われていた。このため、温度調整部の設置スペースを広く要し、それぞれ要求する温度も異なるためその温度制御も煩雑となり、製造コストが増加するという問題が生じていた。
【0011】
これに対し、本発明の一実施形態に係る押出装置1は、熱媒流体の温度を調整する温度調整部2と、所定材料を溶融混練する押出機の下流に配置されると共に温度調整部2に接続され温度調整部2から送出される熱媒流体により加熱される所定機器3と、押出機4と、所定機器3が直列的に接続され、所定機器3から送出される熱媒流体により温調されるギヤ軸51及び軸受け52を有すると共に、押出機4により溶融混練された所定材料を昇圧するギヤポンプ5と、を備えている。
【0012】
温度調整部2からの熱媒流体は、所定機器3を循環する際に、所定機器3に対し放熱することで所定機器3を加熱する。熱媒流体自体は、所定機器3に対し放熱することで、その温度が適度に低下する。さらに、低温度の熱媒流体は、ギヤポンプ5のギヤ軸51及び軸受け52を低温で温調する。
【0013】
このように、押出機4下流の所定機器3の加熱と、ギヤポンプ5のギヤ軸51及び軸受け52の低温での温調とを、単一の温度調整部2を用いて熱媒流体の一連の流動により実現できる。すなわち、押出機4下流の所定機器3の温度制御と、ギヤポンプ5のギヤ軸51及び軸受け52の温度制御とを、単一の温度調整部2により効率的に行うことができる。したがって、単一の温度調整部2の設置で済むため、その温度制御を簡略化し、省スペース化及び低製造コスト化を実現できる。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態に係る押出装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。温度調整部2は、熱媒流体を貯蔵する膨張タンク21と、熱媒流体を送出する一対のポンプ22(ただし、1対のうち1つはスタンバイ予備)と、熱媒流体を加熱するヒータ23と、熱媒流体を冷却するクーラ24と、を有している。熱媒流体は、例えば、熱水や熱媒油等を用いてもよい。ユーザは、ヒータ23及びクーラ24の設定温度を調整することで、熱媒流体の温度を調整することができる。
【0015】
例えば、上記所定機器3の加熱、および、ギヤポンプ5のギヤ軸51及軸受け52の温調が、最適に行われるときのヒータ23及びクーラ24の設定温度および各ポンプ22の吐出量が実験的に求められる。そして、その求めた値が、ヒータ23及びクーラ24の設定温度および各ポンプ22の吐出量として夫々設定されている。
【0016】
クーラ24及びヒータ23は一体的に構成されていてもよい。一対のポンプ22は一体的に構成されていてもよい。また、一対のポンプ22のうちの少なくとも一方が設けられる構成であってよい。
【0017】
膨張タンク21は、一対の流路251を介して各ポンプ22に夫々接続されている。各ポンプ22は、一対の流路252を介してクーラ24に夫々接続されている。クーラ24は、ヒータ23に接続されている。ヒータ23は、流路253を介して所定機器3に接続されている。その流路253の所定機器3付近と、温度調整部2の出口側付近と、にそれぞれ弁261、262が設けられている。
【0018】
膨張タンク21は、熱媒流体を、流路251を介して各ポンプ22に送る。各ポンプ22は、熱媒流体を、流路252を介してクーラ24及びヒータ23に送る。クーラ24及びヒータ23は、熱媒流体の温度を調整し、調整した熱媒流体を、流路253を介して所定機器3に送る。また、熱媒流体の温度によってはクーラ24をバイパスできる場合もある。
【0019】
所定機器3は、温度調整部2から送出される熱媒流体により加熱される。図3は、本実施形態に係る押出装置の概略的な構成を示す概略図である。押出機4の下流には、下流機器が配置されている。
【0020】
下流機器は、例えば、ダイバータバルブ32、ギヤポンプ、濾過装置31、造粒装置33などである。所定機器3は、下流機器のうち、濾過装置31、および、ダイバータバルブ32で構成されている。濾過装置31は、濾過用スクリーンなどで構成されている。濾過用スクリーンは、所定材料を濾過し、所定材料からゴミ、不純物、などを除去する。
濾過装置31には、スクリーン交換機構であるスクリーンチェンジャが設けられていてもよい。スクリーンチェンジャは、例えば、溶融樹脂を通す樹脂流路が内部に設けられたハウジング、このハウジングの樹脂流路内に空隙を設けた形で配備される濾過用の複数のカートリッジ、スライドバー、などを有している。
【0021】
ダイバータバルブ32は、押出機4とギヤポンプ5との間に設けられている。ダイバータバルブ32は、押出機4により溶融混練された所定材料を濾過装置31へ流動させるか、外部へ排出させるかの切換えを行う機器である。例えば、押出機4において溶融混練された所定材料の物性が定常状態に安定しない運転開始時などに、所定材料は、ダイバータバルブ32から外部へ排出される。造粒装置33は、所定材料をペレット状に加工する装置である。
【0022】
押出機4は、例えば、スクリュを、減速機41を介して駆動モータ42により回転駆動することで、所定材料を例えば粉体状態から200~300℃程度に溶融混練する。所定材料は、例えば、ポリエチレンPEやポリプロピレンPPなどの合成樹脂の粉体である。なお、図3に示す押出機4は、スクリュ軸が片側のみ軸受で支持されている2軸押出機として構成されているが、これに限定されない。押出機4は、単軸押出機や2軸噛み合い同方向回転押出機、噛み合わずに異方向回転する2軸のスクリュの両軸端が軸受で支持されている2軸非噛み合い異方向回転式押出機や2軸以上のスクリュ軸を有する多軸押出機として構成されてもよい。
【0023】
ギヤポンプ5は、流路254を介して所定機器3に直列的に接続されている。ギヤポンプ5は、押出機4により溶融混練された所定材料を昇圧する。ギヤポンプ5は、相互に噛合する一対のギヤロータを回転させることで、所定材料を、例えば、20~30MPa程度の高圧になるように昇圧する。
【0024】
ギヤロータは、例えば、ギヤ部とギヤ軸51とが一体で成形されている。ギヤ軸51の両端は、軸受け52(スリーブベアリング)により回転自在に軸支されている。軸と軸受け間にはすき間があり溶融した樹脂が入ることで潤滑の役割をはたしている。このように、ギヤポンプ5の稼働時に、特に、ギヤ軸51及び軸受け52は高温となるため、上述の如く、温調が必要となる。
【0025】
所定機器3は、流路254を介して、ギヤポンプ5に接続されている(図2)。ギヤポンプ5のギヤ軸51及び軸受け52は、この流路254からの熱媒流体が循環することで温調される。流路254は、ギヤポンプ5の手前で分岐し、分岐した分岐流路255は、ギヤポンプ5から出る流路256に合流する。その合流した流路256は、膨張タンク21から延びる一方の流路251に接続されている。また、その合流した流路256の、ギヤポンプ5付近と、温度調整部2の入口側付近と、にそれぞれ弁263、264が設けられている。
【0026】
流路256と流路253は、流路257を介して接続されている。流路257の中間付近には、弁265が設けられている。分岐流路255、および、ギヤポンプ5から出る流路256には、流量を調整するためのオリフィス271、272が夫々設けられている。
【0027】
オリフィス271、272の絞りを調整することで、それぞれの流路255、256の流量を適切に設定できる。弁261、262、263、264、265を開閉することで、流路253、256、257を自在に切り替えることができる。
【0028】
温度調整部2のヒータ23と所定機器3との間の流路253には、その流路253内の熱媒流体の流量を検出する第1流量伝送器28が設けられている。ユーザは、この第1流量伝送器28が検出する流量により、所定機器3に流入する熱媒流体の流量を監視することができる。
【0029】
同様に、所定機器3とギヤポンプ5の間の流路254には、その流路254内の熱媒流体の流量を検出する第2流量伝送器29が設けられている。ユーザは、この第2流量伝送器29が検出する流量により、ギヤポンプ5に流入する熱媒流体の流量を監視することができる。
【0030】
例えば、第1及び第2流量伝送器28、29は、検出した流量を、無線あるいは有線を介して、端末装置などに送信してもよい。ユーザは、第1及び第2流量伝送器28、29の流量を端末装置のディスプレイなどに表示させることで、所定機器3及びギヤポンプ5における熱媒流体の流量を監視できる。
【0031】
押出装置1において、所定材料は、例えば、以下のように加工処理される。押出機4のシリンダ43内に、所定材料がホッパ44を介して連続的に供給される(図3)。押出機4は、供給された所定材料を溶融混練し、ダイバータバルブ32を介してギヤポンプ5に排出する。ギヤポンプ5は押出機4から排出された所定材料を昇圧する。濾過装置31は、ギヤポンプ5により昇圧された所定材料を濾過し、不純物を除去する。造粒装置33は、濾過された所定材料を、ペレット状の材料に加工する。
【0032】
続いて、本実施形態に係る押出装置の温度制御方法のフローについて詳細に説明する。図4は、本実施形態に係る押出装置の温度制御方法のフローを示すフローチャートである。
【0033】
温度調整部2は、熱媒流体をヒータ23又はクーラ24を用いて加熱又は冷却を行うことでその温度を調整し、所定機器3に送出する(ステップS401)。
【0034】
熱媒流体は、所定機器3を循環する際に、所定機器3に対し放熱することで所定機器3を加熱する(ステップS402)。熱媒流体自体は、所定機器3に対し放熱することで、その温度が適度に低下する。
【0035】
所定機器3は、低温度の熱媒流体をギヤポンプ5に送出する(ステップS403)。また、熱媒流体の流量は流量制限オリフィス等で調整しても良い(ステップS404)。
【0036】
低温度の熱媒流体は、ギヤポンプ5のギヤ軸51及軸受け52を循環し、ギヤ軸51及軸受け52を温調する(ステップS405)。
【0037】
このように、押出機4下流の所定機器3の加熱と、ギヤポンプ5のギヤ軸51及び軸受け52の温調とを、単一の温度調整部2を用いて熱媒流体の一連の流動により実現できる。すなわち、押出機4下流の所定機器3の温度制御と、ギヤポンプ5のギヤ軸51及び軸受け52の温度制御とを、単一の温度調整部2により効率的に行うことができる。したがって、単一の温度調整部2の設置で済むため、その温度制御を簡略化し、省スペース化及び低製造コスト化を実現できる。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1 押出装置
2 温度調整部
3 所定機器
4 押出機
5 ギヤポンプ
21 タンク
22 ポンプ
23 ヒータ
24 クーラ
28 流量伝送器
29 流量伝送器
31 濾過装置
32 ダイバータバルブ
33 造粒装置
41 減速機
42 駆動モータ
43 シリンダ
44 ホッパ
51 ギヤ軸
52 軸受け
251 流路
252 流路
253 流路
254 流路
255 分岐流路
255 流路
256 流路
257 流路
261 弁
262 弁
263 弁
264 弁
265 弁
271 オリフィス
272 オリフィス
図1
図2
図3
図4