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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】吸収性物品、及び吸収性物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/533 20060101AFI20231017BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20231017BHJP
   A61F 13/472 20060101ALI20231017BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
A61F13/533 100
A61F13/15 320
A61F13/15 140
A61F13/472
A61F13/532 200
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020031873
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021132890
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】國森 彩乃
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-029928(JP,A)
【文献】特開2017-217466(JP,A)
【文献】特開2016-067749(JP,A)
【文献】特開2018-099203(JP,A)
【文献】特開2019-198683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/533
A61F 13/15
A61F 13/472
A61F 13/532
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透液性の裏面シートと、透液性の表面シートと、前記裏面シートと前記表面シートとの間に配置された吸収体とを備え、装着者の身体の前後方向に対応する前後方向と、前記前後方向に直交する幅方向とを有する吸収性物品であって、
前記吸収体が、前記幅方向の中央に位置し体液排出口対応領域を含む中央領域と、前記中央領域に隣接し前記幅方向の端までの側部領域とを有し、
剤が塗布された薬剤塗布部が、前記側部領域に設けられ、前記体液排出口対応領域には設けられておらず、
前記吸収体の前記表面シート側に、前記前後方向に沿って形成された溝が形成され、
前記薬剤塗布部が、前記溝の少なくとも底部及び縁部に設けられており、前記底部に設けられている前記薬剤塗布部上には空隙が形成されている、吸収性物品。
【請求項2】
前記溝が、圧搾により形成されている、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記溝の縁部が膨出している、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記薬剤が塗布されていない状態での前記溝の幅が前記底部に近付くほど小さい、請求項1からのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記前後方向の中央において、前記幅方向の外方に延びるウィングを有する、請求項1からのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
不透液性の裏面シートと、透液性の表面シートと、前記裏面シートと前記表面シートとの間に配置された吸収体とを備え、装着者の身体の前後方向に対応する前後方向を有する吸収性物品の製造方法であって、
体液排出対応領域を含むように前記前後方向に延在する中央領域と、前記中央領域に隣接する側部領域とを有する未加工吸収体を準備し、
前記未加工吸収体に、前記表面シートが設けられる側に、前記側部領域において前記前後方向に沿って延在する溝を形成し、
前記溝の少なくとも底部及び縁部に薬剤を塗布して薬剤塗布部を形成することを含み、
前記薬剤塗布部が、前記体液排出口対応領域には設けられない、吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品、及び吸収性物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に、香料成分、消臭成分、又はその他の機能成分を含有させた薬剤を付与したものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、吸収体の、排泄部対向部に位置する内部に香料が配置され、排泄部対向部に複数形成されたスリットが、香料が配置された面まで達している吸収性物品が開示されている。特許文献1には、上記構成により、香料を持続的に十分に香り立たせることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸収性物品において、排泄部対向部(身体の体液排出部に対向する部分)は、体液を直接受け止める部分であり、この部分の吸収体には高い吸収性が求められる。しかしながら、特許文献1に記載された吸収性物品のように、香料等の薬剤が吸収体の排泄部対向部に配置されていると、用いられる薬剤の種類、量等によっては、吸収体の吸収性能が損なわれる可能性がある。
【0006】
上記に鑑みた本発明の一態様は、高い吸収性能を有しつつ、香料等の薬剤の機能を十分に発揮できる吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、不透液性の裏面シートと、透液性の表面シートと、前記裏面シートと前記表面シートとの間に配置された吸収体とを備え、装着者の身体の前後方向に対応する前後方向と、前記前後方向に直交する幅方向とを有する吸収性物品であって、前記吸収体が、前記幅方向の中央に位置し体液排出口対応領域を含む中央領域と、前記中央領域に隣接し前記幅方向の端までの側部領域とを有し、前記側部領域に、薬剤が塗布された薬剤塗布部が設けられ、前記吸収体の前記表面シート側に、前記前後方向に沿って形成された溝が形成され、前記薬剤塗布部が、前記溝の少なくとも底部及び縁部に設けられている。
【0008】
上記第一の態様によれば、薬剤塗布部が側部領域に設けられている。吸収性物品の使用時には、体液はまず体液排出口対応領域に排出される。よって、吸収体において、吸収体全体の吸収性能に対する影響が特に大きいのは、体液排出口対応領域を含む中央領域の吸収性であり、側部領域の吸収性は、中央領域ほどは吸収体全体の吸収性能に影響を与えない。よって、吸収体に薬剤が塗布されていても、高い吸収性能を確保できる。
【0009】
また、吸収体の側部領域に溝が形成されており、薬剤が塗布されているのは、この溝の底部及び縁部である。溝の底部に塗布された薬剤は揮発しにくい。そのため、使用中の薬剤の機能持続性を高めることができる。さらに、溝の縁部に塗布された薬剤は、溝の底部に塗布された薬剤に比べて揮発しやすいので、使用開始後早い段階で薬剤の機能を発揮させることができる。
【0010】
本発明の第二の態様では、前記薬剤塗布部が、前記体液排出口対応領域に設けられていない。
【0011】
上記第二の態様によれば、体液排出口対応領域の吸収体の吸収性は、吸収体全体の吸収性能に大きく影響し得るので、上記体液排出口対応領域における薬剤の塗布を避けることで、吸収体の吸収性能をさらに向上させることができる。
【0012】
本発明の第三の態様では、前記溝が、圧搾により形成されている。
【0013】
上記第三の態様によれば、溝が圧搾溝であるため、吸収体の、溝及びその周辺の部分の密度が高くなっている。そのため、薬剤が液体である場合、薬剤が特に溝内に集まりやすく、保持されやすいので、使用中の薬剤の機能持続性を高め、また使用開始時までの薬剤の機能低下を防止できるという効果を一層向上させることができる。
【0014】
本発明の第四の態様では、前記溝の縁部が膨出している。
【0015】
上記第四の態様によれば、溝の縁部が膨出していることで、溝の開口が狭まる。そのため、溝内に塗布された薬剤の揮発又は蒸発をさらに防止できる。よって、使用中の薬剤の機能持続性を高め、また使用開始時までの薬剤の機能低下を防止できるという効果を一層向上させることができる。また、上記縁部の膨出は、液体の薬剤の塗布という簡単な手法により得ることができる。
【0016】
本発明の第五の態様では、前記薬剤が塗布されていない状態での前記溝の幅が前記底部に近付くほど小さい。
【0017】
上記第五の態様によれば、薬剤を塗布する前の溝の形状が、底部から開口に向かって幅広となっている。よって、薬剤を溝の上から塗布した場合、溝の壁部にも薬剤を付着させることができる。これにより、溝の壁部も膨潤するため、溝の開口をさらに狭めることができ、溝内に塗布された薬剤の揮発又は蒸発をさらに防止できる。よって、使用中の薬剤の機能持続性を高め、また使用開始時までの薬剤の機能低下を防止できるという効果を一層向上させることができる。
【0018】
本発明の第六の態様では、前記前後方向の中央において、前記幅方向の外方に延びるウィングを有する。
【0019】
使用時には、ウィングは、下着の裏側(吸収性物品が配置される側とは反対側)に折り返されて、下着に固定される。その際、吸収体の側部領域は、表側が伸ばされるように幅方向外方に引っ張られるので、溝の開口が広げられる。よって、上記第六の態様によれば、使用開始までは薬剤の揮発を抑制しつつ、使用時には、薬剤の揮発を促進でき、薬剤の機能をより強く発揮させることができる。
【0020】
本発明の第七の態様では、前記底部に設けられている前記薬剤塗布部上に、空隙が形成されている。
【0021】
上記第七の態様によれば、底部に設けられた薬剤塗布部の上が空隙になっており、吸収性物品の他の部材が接触していない。よって、溝底部の薬剤が他の部材に浸透し、溝外の別の場所へと移動して、吸収性物品の使用前に散逸することを防止できる。
【0022】
本発明の第八の態様では、不透液性の裏面シートと、透液性の表面シートと、前記裏面シートと前記表面シートとの間に配置された吸収体とを備え、装着者の身体の前後方向に対応する前後方向を有する吸収性物品の製造方法であって、体液排出部対応領域を含むように前記前後方向に延在する中央領域と、前記中央領域に隣接する側部領域とを有する未加工吸収体を準備し、前記未加工吸収体に、前記表面シートが設けられる側に、前記側部領域において前記前後方向に沿って延在する溝を形成し、前記溝の少なくとも底部及び縁部に薬剤を塗布して薬剤塗布部を形成する。
【0023】
上記第八の態様によれば、上記第一から第七のいずれかの態様の吸収性物品を製造することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、高い吸収性能を有しつつ、香料等の薬剤の機能を十分に発揮できる吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一形態による吸収性物品の部分破断図である。
図2図1のI-I線断面図である。
図3】本発明の一形態における吸収体の平面図である。
図4】溝及び薬液塗布部の部分的な平面拡大図、及び断面拡大図である。
図5】吸収体の変形例を示す図である。
図6】溝及び薬液塗布部の具体的な構成及び機能について説明する図である。
図7】溝及び薬液塗布部の具体的な構成及び機能について説明する図である。
図8】溝及び薬液塗布部の具体的な構成及び機能について説明する図である。
図9】吸収体の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳説する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、図面は、発明の理解を助けるための模式的なものである。
【0027】
(吸収性物品の基本構造)
まず、吸収性物品の基本構造について、生理用ナプキンを例として説明する。図1に、本発明の一形態による吸収性物品1の部分破断平面図を示す。また、図2に、吸収性物品1のI-I線断面図を示す。図1及び図2に示すように、吸収性物品1は、不透液性の裏面シート2と、透液性の表面シート3と、これらの両シート2、3間に設けられた吸収体4とを備え、全体として扁平状の形状を有する。吸収性物品1の装着時には、表面シート3側が肌に触れる側(肌側若しくは表側)となり、裏面シート2側が下着に固定される側(下着側若しくは裏側)となる。
【0028】
本明細書においては、図1に示すように、吸収性物品1を装着した時に装着者の身体の前後方向に対応する吸収性物品1の前後方向を第1方向D1とし、吸収性物品1の幅方向を第2方向D2としている。図1に示す吸収性物品1は、平面視で細長形状であり、第1方向D1に所定の長さを有し、第1方向D2に直交する第2方向D2に所定の幅を有するものである。図1に示す形態では、吸収性物品1は、第1方向D1に延びる中心線(前後方向中心線)CLに対して略線対称の平面視形状を有しているが、形状は線対称でなくともよい。また、吸収性物品1の形状以外の構成(吸収体4の厚みや密度、圧搾溝等の大きさや位置等を含む)は、中心線CLを対称軸として略対称であってもよいし、非対称であってもよい。
【0029】
吸収性物品1は、装着時に装着者の股間に主として対応させる中間領域1Mと、中間領域1Mの前方にある前方領域1Fと、中間領域1Mの後方にある後方領域1Bとを有する。中間領域1Mは、体液排出口対応領域Qを含む。体液排出口対応領域Qは、装着時に装着者の膣口、尿道口等の体液排出口に対応する領域であり、その中心が、長方向中心線CL上に位置する。体液排出口対応領域Qは、図1では、膣口に対応する領域として楕円状に描かれており、長さ(第1方向D1の長さ)が10~50mm程度、幅(第2方向D2の長さ)が5~40mm程度となっている。しかし、体液排出口対応領域Qの上述の大きさ及び形状は、本形態による吸収性物品を説明するための例示にすぎない。
【0030】
中間領域1Mは、第1方向D2の外方に突出した一対のウィングWG、WGを有していてよい。ウィングWG、WGは、装着時に裏側に折り返して下着に貼着することができ、これにより、吸収性物品1を下着に確実に固定することができる。前方領域1Fは、おおよそ、ウィングWGの前方の起点となる位置から前端縁までの領域であり、後方領域1Bは、ウィングWGの後方の起点となる位置から後端縁までの領域とすることができる。ウィングWG、WGが設けられている場合、ウィングWG、WGの第1方向D1の長さの中点の位置が、体液排出口対応領域Qの第1方向D1の中心の位置に対応し得る。なお、吸収性物品1はウィングWG、WGのない形態であってもよい。その場合、ウィングWG、WGを形成した場合に、ウィングWG、WG前方の起点となる位置から前方の領域を前方領域1Fとし、ウィングWG、WGの後方の起点となる位置から後方の領域を後方領域1Bとすることができる。
【0031】
裏面シート2は、少なくとも遮水性を有するシートであってよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂製のシート等であってよい。また、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられることがさらに望ましい。このような遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シート等を用いることができる。
【0032】
表面シート3は、経血、おりもの、尿等の体液を速やかに透過させる透液性のシートとすることができる。表面シート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、不織布の加工法としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等が挙げられる。これらの加工法のうち、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む不織布を製造できる点で好ましく、サーマルボンド法は嵩高でソフトな不織布を製造できる点で好ましい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を用いることもできる。
【0033】
吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))、及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。化学パルプの原料材としては、広葉樹材、針葉樹材等が用いられるが、繊維長が長いこと等から針葉樹材が好適に使用される。
【0034】
また、吸収体4には合成繊維を混合してもよい。合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、及びこれらの共重合体を使用でき、これらのうちの2種を混合して使用することもできる。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。なお、疎水性繊維を親水化剤で表面処理し、体液に対する親和性を付与したものを用いることもできる。吸収体4は、積繊又はエアレイド法によって製造されたものが好ましい。
【0035】
吸収体4の前後方向(第1方向D1)の両端縁においては、裏面シート2の縁部と表面シート3の縁部とが、接着剤、ヒートシール等によって接合されている。また、吸収性物品1の両側部、すなわち幅方向(第2方向D2)の両側には、表側(表面シート3側)に、第1方向D1に沿って、サイド不織布7、7が配置されている。サイド不織布7、7は、中間領域1Mにおいて第2方向D2外方へ突出しており、同様に中間領域1Mにおいて第2方向D2に突出した裏面シート2と接合され、上述のウィングWG、WGが形成されている。
【0036】
サイド不織布7は、体液の浸透を防止する、或いは肌触り感を高める等の目的に応じて、適切な撥水処理又は親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたものであってよい。サイド不織布7の素材は、天然繊維、合成繊維、再生繊維等であってよい。また、サイド不織布7が撥水処理されている場合、その処理には、シリコン系、パラフィン系等の撥水剤を用いることができる。
【0037】
(吸収体)
次に、本形態における吸収体4についてより具体的に説明する。図3に、図1に示す吸収性物品1の吸収体4の平面図を示す。吸収体4は、吸収性物品1の平面視形状と同様に、第1方向(前後方向)D1に細長い形状を有していてよい。吸収体4は、第1方向D1に沿って、前方領域4F、中間領域4M、及び後方領域4Bを有するが、これらの領域は、吸収性物品1の前方領域1F、中間領域1M、及び後方領域1Bにそれぞれ対応している。なお、図3の形態では、吸収体4の幅(第2方向長さ)は一定であるが、幅は第1方向D1の場所によって変動していて、例えば、中間領域4Mにおいて幅狭になっていてもよい。
【0038】
また、吸収体4は、第2方向D2の中央に位置する、第1方向D1の前端から後端まで延びる中央領域Cを有し、さらに中央領域Cの各側には、中央領域Cに隣接し且つ第2方向D2の端まで延びる側部領域S、Sを有し得る(図1図3)。中央領域Cは、体液排出口対応領域Qを含む。また、1つの側部領域Sの幅は、吸収体4の幅の25~35%であってよい。
【0039】
吸収体4の厚みは、好ましくは0.3~30mm、より好ましくは1.0~15mmとすることができる。なお、吸収体4は全体として、全面にわたり均一な厚みを有していなくともよく、体液排出口対応領域Q及びその近傍の領域等を膨出させた構造としてもよい。また、吸収体4の第1方向(前後方向若しくは長手方向)D1の長さは、好ましくは110~450mmであり、より好ましくは130~290mmであってよい。また、吸収体4の第2方向(幅方向若しくは短手方向)D2の長さは、40~200mmとすることができ、好ましくは60~120mmであってよい。
【0040】
吸収体4は、吸収体4の本体部分をクレープ紙又は不織布等からなる被包シートで包んだものであってよい。吸収体4が被包シートを備えていることで、吸収体4のよれや割れを防止でき、形状を保持することができる。被包シートとしては、無着色(すなわち、白色)のクレープ紙や不織布を用いることもできるし、着色されたものを用いることもできる。着色された被包シートを用いた場合、被包シートの色は、表面シート3側からも薄い色として反映され得る。そのため、排出された体液の色を、その反映された被包シートの色に紛れさせて目立たなくすることができる。被包シートは、例えば、体液の色の補色に着色することができる。例えば、経血の吸収を目的として構成された吸収性物品(生理用ナプキン等)においては、被包シートを、赤色の補色である緑色に着色することができる。
【0041】
(薬剤)
吸収体4には、薬剤が塗布されており、吸収体4において薬剤が塗布された部分を薬剤塗布部Aと呼ぶ。薬剤塗布部Aは、吸収体4の表面上に薬剤が残存している部分、及び吸収体4内に浸透した薬剤が存在する部分を指す。薬剤の形態は限定されないが、吸収性物品1に何等かの機能を付与できる機能成分を溶媒に分散又は溶解させた液剤であると好ましい。機能成分は、例えば、芳香成分、消臭成分、清涼感向上成分、温感向上成分等を1以上含むものであってよく、揮発性であると好ましい。
【0042】
芳香成分は、天然香料又は合成香料であってよい。天然香料の具体例としては、リュウゼン香、安息香、海狸香、霊猫香、丁字油、ガルバナム、ジャスミンアブソリュート、ラブタナム、マテ茶、メリロット、ミモザ、ムスクトンキン、ミルラ、オークモスまたはモスドシェーヌ、乳香、ビャクシ香、オリス、バチュリ、ローズマリー油、白檀油、ベチバー油、バイオレットリーフアブソリュート等が挙げられる。また、合成香料の具体例としては、高級アルコール、アルデヒド、ベンズアルデヒド、安息香酸、ケイ皮酸、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮アルコール、クマリン、エステル、インドール、ケトン、サリチル酸と関連化合物、テルペノイド、バニリン等が挙げられる。
【0043】
薬剤に含有させる機能成分としては、2種以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。また、芳香作用とともに消臭作用を有する成分を用いることもできる。さらに、薬剤に含まれる機能成分は、溶媒及び機能成分の種類に応じて、ホスト化合物によって包接された包接化合物の形態、又は膜材を用いてマイクロカプセル化された形態としてもよい。
【0044】
薬剤は、取扱いが容易で、適切な揮発速度に調整できることから、溶媒として水性物質、特に水を用いて機能成分を溶解させてなる溶液であると好ましい。
【0045】
薬剤は、吸収体4の少なくとも表面に付着されていればよく、薬剤を塗布する手段は特に限定されない。薬剤の塗布は、例えば、噴霧器、刷毛、ブラシ、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター等を用いて行うことができる。このうち、吸収体4に溝(後述)を形成した後に、溝の底部にも容易に塗布できることから、薬剤の滴を飛翔させて薬剤を吸収体4に付着させる手段、特に噴霧器による噴霧によって薬剤を塗布することが好ましい。
【0046】
薬剤塗布部Aは、吸収性物品1の露出している面ではなく、内部の吸収体4に設けられている。よって、薬剤が揮発又は蒸発しにくく、薬剤の機能が失われにくい。また、図1~3に示すように、薬剤塗布部Aは、吸収体4の側部領域S、Sに設けられている。薬剤塗布部Aは、側部領域S、Sの少なくとも一方に設けることができるが、図示のように側部領域S、Sの両方に設けられていることが好ましい。
【0047】
薬剤は吸収体4の一部に浸透するものであるので、薬剤の種類によっては、吸収体4の吸収性能を多少は低下させ得る。しかしながら、体液は通常、体液排出口対応領域Qに排出され、体液は吸収体4に浸透し、吸収体4の内部を移動して吸収体4内に広がる。よって、側部領域Sの吸収性は、体液排出口対応領域Gを含む中央領域Cの吸収性ほど、吸収体の吸収性能へ影響を及ぼしがたい。そのため、薬剤塗布部Aを側部領域Sに設けることにより、吸収体4の高い吸収性能を確保することができる。さらに、同様の理由で、薬剤塗布部Aは、体液排出口対応領域Qには設けられていないことが好ましく、中央領域Cに設けられていないことがさらに好ましい。
【0048】
吸収体4に塗布された薬剤の全量に対し、両側部領域S、Sに塗布された薬剤の合計量(一方の側部領域Sにのみ塗布されている場合には一方の側部領域Sに塗布された薬剤の量)は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であってよく、さらに好ましくは100質量%であってよい。
【0049】
薬剤塗布部Aは、平面視(上面視)で、1~10mmの幅となるように設けることができる。また、薬剤塗布部Aは、吸収体4の第2方向D2の端から2~20mm程度の所定の間隔を置いた位置に設けられていることが好ましい。吸収性物品1の両側部においては、サイド不織布7と裏面シート2との接合等にホットメルト接着剤等の接着剤を使用している。薬剤の種類によっては、接着剤の接着力に影響を及ぼすものもあるため、薬剤塗布部Aの接着剤への影響を低減するためである。装着時には、吸収性物品1が両脚によって第2方向D2内方に押されるため、特に中間領域1M(4M)においては吸収体4と接着剤が近付きやすく、接着剤が薬剤の影響を受けやすい状況が生じやすい。そのため、少なくとも中間領域1M(4M)において、薬剤塗布部Aが吸収体4の第2方向D2の端から離れていることが好ましい。
【0050】
なお、吸収性物品1には裏面シート2側に、吸収性物品1を下着により確実に固定するための粘着剤層からなるズレ止め部が設けられていてよい。その場合、薬剤の種類によってはズレ止め部の作用に影響を及ぼすものもあるため、平面視で薬剤塗布部Aとズレ止め部とが重なる面積の合計が、吸収性物品1が広げられた状態で又は折り畳まれ個装された状態で、ズレ止め部の面積の合計の10%以下であると好ましく、0%であるとより好ましい。
【0051】
(溝、及び薬剤塗布部)
図1図3に示すように、吸収体4の側部領域Sには、第1方向D1に沿って延びる溝8が形成されている。なお、溝8は、少なくとも一方の側部領域Sに設けられていればよいが、図示のように、溝8、8が、吸収体4の両方の側部領域S、Sにそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0052】
溝8は、表面シート3側に設けられている。すなわち、溝8は、吸収性物品1の肌側から非肌側へ向かって窪んでいる。溝8は、吸収体本体が被包シートで包まれている場合には、被包シートで包む前に形成されていてもよいし、包んだ後に形成されてもよい。被包シートで包んだ後に形成すると、吸収体4の形状安定性を高めることができる。
【0053】
溝8の深さは、吸収体4に薬剤塗布部Aが設けられていない状態で、0mm超~25mmとすることができる。また、溝8の幅は、吸収体4に薬剤塗布部Aが設けられていない状態で、1~5mmとすることができる。溝8の深さによって幅が異なる場合には、上記幅は、溝8の底部での幅と、開口での幅との平均であってよい。なお、溝8の深さ及び/又は幅は、第1方向D1に沿って同じであってもよいし、第1方向D1の位置によって異なっていてもよい。
【0054】
図1図3に示すように、上述の薬剤塗布部Aは、溝8及びその周辺に設けられている。図4(a)に、図3の部分IIの拡大図を示し、図4(b)に、図3のIII-III線断面の拡大図を示す。なお、図4(b)には、薬剤が吸収体4に塗布された直後の状態を示す。吸収体4表面に到達した薬剤塗布部Aは、時間経過に伴い、その全部が又は部分的に吸収体4の内部へと浸透する。
【0055】
図1図4に示すように、薬剤塗布部Aは、溝8の底部8b及び縁部8e、8eに設けられている。溝8の底部8bにおける薬剤は、揮発又は蒸発しにくくなっている。そのため、使用中、揮発が徐々に起こるため、薬剤の機能を持続させることができる。一方、溝の縁部8e、8eにおける薬剤は、吸収体4の表面のレベルに設けられているので、溝内の薬剤に比べて揮発しやすい。そのため、使用開始後比較的直ぐに薬剤を揮発させることができ、使用者が薬剤の機能を感じることができる。このように、薬剤塗布部Aが溝8の底部8b及び縁部8e、8eの両方に設けられていることで、薬剤の機能を早い段階から発揮させることができ、且つ薬剤の機能の経時的な持続性を高めることができる。
【0056】
なお、溝8内に塗布された薬剤の量が、溝8の縁部8e、8eに塗布された薬剤の量より多いことが好ましい。これにより、より多量の薬剤の揮発又は蒸発を抑えることができるので、使用開始時までに薬剤が散逸してしまうことを防止できる。
【0057】
溝8の縁部8e、8eは、膨出していてもよい。この膨出は、縁部8e、8eに液体の薬剤が塗布されることによって形成することができる。この縁部8e、8eの膨出について、図5を参照して説明する。
【0058】
図5に、溝8が形成されている位置での吸収体4の断面の拡大図を示す。図5は、図4(b)に対応する部分の図である。図5(a)に、吸収体4に形成された溝8の底部8b及び縁部8e、8eに薬剤が塗布され、薬剤塗布部Aが形成されている図を示す。図5(a)に示す状態は、図4(b)に示す状態から、薬剤が吸収体4内に多少浸透した後の図を示す。この後、ある程度の時間が経過すると、薬剤は吸収体4内にさらに浸透し、薬剤を吸収した吸収体4の部分は膨潤する。膨潤後の吸収体4の溝8の状態を、図5(b)に示す。図5(b)に示すように、縁部8e、8eは、吸収体4の厚み方向に盛り上がるとともに、溝8の開口の幅を狭めるように膨出している。これにより、溝8内の薬剤は、さらに揮発又は蒸発しにくくなるので、使用中の薬剤の機能持続性を高め、また使用開始時までの薬剤の機能低下を防止できるという効果を一層向上させることができる。
【0059】
なお、吸収体4を作製する際に、溝8の縁部8e、8eが膨出するような形状に吸収体4を成形してもよい。しかし、溝8の縁部8e、8eの膨出は、上述のように薬剤の縁部8e、8eの塗布によって形成すれば、溝の縁部8e、8eを変形させるための装置や工程によらず、簡単に得ることができるので、好ましい。
【0060】
また、薬剤塗布部Aは、溝8の縁部8e、8eの両方に形成されていてもよいし、一方に形成されていてもよい。また、薬剤塗布部Aは、第1方向D1に沿って間欠的に設けられていてもよい。さらに、薬剤塗布部Aは、溝8、8以外の部分に、吸収体4の表面又は内部に設けられていてもよい。
【0061】
図4及び図5に示す例では、吸収体4に薬剤が塗布される前の状態で、溝8の幅は、底部8bから開口位置まで厚み方向に等しい。しかしながら、溝8の開口における幅と、底部8bにおける幅とは異なっていてもよい。例えば、図6(a)に示すように、溝8の幅は、底部8bから開口に向かって徐々に広くなっていてよい。別の言い方をすると、溝8の第2方向D2に沿って切った断面形状が、逆台形(上底が下底より長い台形)となっている。この場合、溝8の上方から薬剤を、噴霧器等で塗布した場合、噴霧器のノズルNから噴霧される薬剤の滴は、溝8の壁部8w、8wにも薬剤が付着し得る。
【0062】
このように、壁部8w、8wにも薬剤が付着することで、壁部8w、8wも膨出するので、溝8の開口の幅が狭まるとともに、底部8bから開口に達するまでの部分の幅も狭まる。そのため、溝8内に付着した薬剤は、溝の縁部8e、8e、及び壁部8w、8wによって閉じ込められ、さらに揮発又は蒸発しにくくなる。これにより、使用中の薬剤の機能持続性を高め、また使用開始時までの薬剤の機能低下を防止できるという効果を一層向上させることができる。
【0063】
溝8の形成方法は、特に限定されないが、エンボス加工等の圧搾加工によって行われていることが好ましい。圧搾加工は、例えば、凸部を有するロールを吸収体の肌側(表面シート3が載置される側)に、凸部のないロールを吸収体の非肌側(裏面シート2が載置される側)に配置し、両ロール間に加工前の吸収体を通し加圧することで行うことができる。
【0064】
溝8を圧搾加工により形成する、すなわち、溝8が圧搾溝であることによって、溝の底部、壁部、及び縁部、並びにその周辺の部分の吸収体の密度が高くなる。よって、薬剤が液体である場合には、毛細管現象によって、薬剤は溝8に引き込まれやすく、特に溝8内に集まりやすく、保持されやすくなる。そのため、使用中の薬剤の機能持続性を高める効果をより一層高めることができる。また。使用開始時までの薬剤の機能低下もより良好に防止できる。
【0065】
また、溝8が圧搾溝である場合、第2方向D2に移動してきた体液も溝8に引き込まれやすく、保持されやすくなる。そのため、第2方向D2外方への体液の漏れも防止できる。
【0066】
溝8は、圧搾加工によらず、吸収体4を成形して積繊体を作製する段階で、溝8に対応する位置が突出した型を利用して形成することもできる。また、吸収体4を下層(非肌側層)と上層(肌側層)とからなる2層から構成し、下層を、吸収体4の平面視形状と同じ平面視形状を有する平坦層で構成し、上層を、溝8となる位置で離間した分割された平坦層で構成し、上層と下層を結合することによって形成してもよい。
【0067】
(溝及び薬剤塗布領域の変形例)
なお、図1図4に示す例では、薬剤塗布領域Aが設けられた溝8は、第1方向D1に沿って、吸収体4の前端から後端まで連続して延在しているが、薬剤塗布領域Aが設けられた溝8は、第1方向D1に沿って1箇所以上で間欠していてもよい。例えば、薬剤塗布領域Aが設けられた溝8は、吸収体4の中間領域4Mのみに設けられていてもよいし、吸収体4の前方領域4F及び後方領域4Bの少なくとも一方のみに設けられていてもよい。
【0068】
例えば、図7に示す吸収体4の別例では、薬剤塗布領域Aが設けられた溝8、8が、両側部領域S、Sのそれぞれに形成されているが、第1方向D1で見ると、前方領域4F及び後方領域4Bのみであり、中間領域4Mには形成されていない。ここで、中間領域4Mは、使用時には装着者の両脚の力を受けやすく、吸収体4が押されたり、捩じれたりしやすい。そのため、中間領域4Mでは、薬剤Aが溝8内に塗布されていても、前方領域4F及び後方領域4Bに比べて、使用時に薬剤が揮発又は蒸発しやすい。そのため、薬剤の種類及び量によって、或いは用途によって、薬剤の成分をできるだけ揮発させないようにして薬剤の機能の持続性を高めたい場合には、図7に示すように、中間領域4Mにおける薬剤塗布領域Aの形成を避け、前方領域4Fに、薬剤塗布部Aが設けられた溝8F、8Fを形成し、且つ/又は後方領域4Bに、薬剤塗布部Aが設けられた溝8R、8Rを形成してもよい。さらに、薬剤の機能の持続性を高めたい場合には、臀部に当たりやすい後方領域4Bに溝8R、8Rを形成せず、前方領域4Fにおける溝8F、8Fのみとしてもよい。
【0069】
一方、薬剤の種類及び量によって、或いは用途によって、薬剤の揮発を促進したい場合には、中間領域4Mに、薬剤塗布部Aを有する溝8を設けることが好ましい。使用時には、装着者の両脚の力により、溝8が変形するため、薬剤の揮発が促され得る。さらに、薬剤の揮発を促進したい場合には、吸収性物品1が、一対のウィングWG、WG(図1及び図2)を有すると好ましい。
【0070】
(ウィングによる作用)
ウィングWG、WGを有する場合であって、且つ薬剤塗布部Aを有する溝8が中間領域4Mに形成されている場合、ウィングWG、WGを下着に固定する際に、吸収体4の中間領域4Mが第2方向D2に引っ張られる。この作用について、図8を参照して説明する。図8(a)は、図5(b)を再掲したものである。すなわち、図8(a)には、薬剤塗布部Aが、溝8の底部8b、及び縁部8e、8eに形成され、縁部8e、8eが膨出している状態を示している。ここで、ウィングWG、WGを下着の裏側に折返した場合、図8(b)に示すように、溝8は第2方向D2に引っ張られ、溝8の開口の幅が広がる。そのため、溝内の薬剤が揮発しやすくなる。
【0071】
なお、前端から後端に連続して延在する溝8、8を、側部領域S、Sにそれぞれ形成しておき、薬剤塗布部Aを、溝8の一部にのみ形成してもよい。或いは、溝8、8は、間欠して形成されているが、薬剤塗布部Aが、溝のない場所にも形成され、前端から後端に連続して線状に形成されていてもよい。
【0072】
(その他の変形例)
図9に、吸収体4のさらなる変形例を示す。図9に示す例においては、溝8及び薬剤塗布部Aの形態は図1~4に示すものと同じであるが、吸収体4の、溝8の縁部8eを縁取るように、吸収性が高められた高吸収性部hが形成されている。高吸収性部hは、平面視で、溝8の両縁部8e、8eからそれぞれ第2方向D2に延在する帯状の領域である。高吸収性部hは、吸収体4の厚み方向全体にわたって形成されていてもよいし、吸収体4の上部のみ、例えば吸収体4の表側の表面から、吸収体4の厚みの10~50%の深さまでに形成されていてもよい。
【0073】
高吸収部hは、例えば、含まれる吸水性ポリマーを増量させること、又はより吸収性の高い吸水性ポリマーを使用することによって形成することができる。或いは、吸収体4の密度を高くすることによって係止してもよい。
【0074】
以上、生理用ナプキンを例として本発明の具体的な形態を説明したが、本形態は、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の他、使い捨ておむつにおいても適用できる。
【0075】
(吸収性物品の製造方法)
本発明の一形態は、以上説明した吸収性物品1を製造する方法である。本形態による製造方法は、吸収体4に溝8及び薬剤塗布部Aを形成することを含む。この場合、溝8の形成した後に薬剤塗布部Aを形成してもよいし、薬剤塗布部Aを形成した後に溝8を形成してもよい。しかし、溝8の縁部8e、8eを膨出させた形状をより簡単に得られることから、溝8の形成した後に薬剤塗布部Aを形成することが好ましい。
【0076】
よって、一形態では、加工されて吸収体4となる未加工吸収体を準備し、当該未加工吸収体に、表面シート3が設けられる側に、側部領域Sにおいて前後方向(第1方向)D1に沿って延在する溝8を形成し、溝8の少なくとも底部8b及び縁部8e、8eに薬剤を塗布して薬剤塗布部Aを形成することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 吸収性物品
1F 吸収性物品の前方領域
1M 吸収性物品の中間領域
1B 吸収性物品の後方領域
2 裏面シート
3 表面シート
4 吸収体
4F 吸収体の前方領域
4M 吸収体の中間領域
4B 吸収体の後方領域
7 サイド不織布
8、8F、8R 溝
8b 溝の底部
8e 溝の縁部
8w 溝の壁部
A 薬剤塗布部
C 中央領域
CL 前後方向中心線
S 端部領域
D1 第1方向
D2 第2方向
h 高吸収性部
Q 体液排出口対応領域
w 溝の幅
WG ウィング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9