(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】炭素繊維電極基材の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/88 20060101AFI20231017BHJP
H01M 4/96 20060101ALI20231017BHJP
H01M 8/0213 20160101ALI20231017BHJP
C25B 11/031 20210101ALI20231017BHJP
C25B 11/056 20210101ALI20231017BHJP
C25B 11/065 20210101ALI20231017BHJP
D01F 9/22 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
H01M4/88 C
H01M4/96 M
H01M8/0213
C25B11/031
C25B11/056
C25B11/065
D01F9/22
(21)【出願番号】P 2020044687
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【氏名又は名称】原田 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【氏名又は名称】奥山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】河本 紘典
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-176245(JP,A)
【文献】特開2018-040099(JP,A)
【文献】特開2007-002394(JP,A)
【文献】特開2020-133006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/88
H01M 4/86
H01M 4/96
H01M 8/10
D01F 9/22
C25B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素化炉内を走行させ、耐炎化繊維基材を炭素化する炭素繊維電極基材の製造方法において、
前記耐炎化繊維基材の厚み方向の繊維配向が1~50%であり、厚み方向に複数枚の前記耐炎化繊維基材を配した状態で、
前記炭素化炉内の温度よりも低い前乾燥炉内を走行させた後に、前記炭素化炉内を走行させる炭素繊維電極基材の製造方法。
【請求項2】
前記耐炎化繊維基材を、走行方向の上流側から、第1炭素化炉と第2炭素化炉とをこの順で走行させる請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
炭素化炉内を走行させ、耐炎化繊維基材を炭素化する炭素繊維電極基材の製造装置において、
前記耐炎化繊維基材の厚み方向の繊維配向が1~50%であり、厚み方向に複数枚の前記耐炎化繊維基材を配した状態で、
前記炭素化炉内の上流側に配され且つ前記炭素化炉内の温度よりも低い前乾燥炉内と前記炭素化炉内
とを走行させる走行手段を備える製造装置。
【請求項4】
前記炭素化炉は、前記耐炎化繊維基材の走行方向の上流側から、第1炭素化炉と第2炭素化炉とをこの順で備える請求項3に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性を有する炭素繊維電極基材の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
耐炎化繊維をフェルトや織物などのシート状基材にした後に炭素化処理をして得られる炭素繊維電極基材は、例えば、燃料電池のセパレータ、電極等の用途に開発がすすめられている。炭素繊維電極基材は、例えば、低温処理炉にポリアクリロニトリル系酸化繊維シートを搬入し、前記酸化繊維シートを不活性ガス雰囲気中で500~1000℃に加熱した後、高温処理炉に供給し、不活性ガス雰囲気中、1000~2500℃にて加熱して製造される(例えば、特許文献1)。
特許文献1中の「酸化繊維シート」は本明細書中では「耐炎化繊維基材」に相当し、「低温処理炉」及び「高温処理炉」は本明細書中では「第1炭素化炉」及び「第2炭素化炉」にそれぞれ相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置は、1枚の酸化繊維シートを炭素化するため、生産性が悪い傾向にある。
本発明は、生産性の高い製造方法及び製造装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る製造方法は、炭素化炉内を走行させ、耐炎化繊維基材を炭素化する炭素繊維電極基材の製造方法において、厚み方向に複数枚の前記耐炎化繊維基材を配した状態で、前記炭素化炉内を走行させる。
本発明に係る製造装置は、炭素化炉内を走行させ、耐炎化繊維基材を炭素化する炭素繊維電極基材の製造装置において、厚み方向に複数枚の前記耐炎化繊維基材を配した状態で、前記炭素化炉内を走行させる走行手段を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法によれば、炭素繊維電極基材の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
<概要>
実施形態の一態様に係る製造方法は、炭素化炉内を走行させ、耐炎化繊維基材を炭素化する炭素繊維電極基材の製造方法において、厚み方向に複数枚の前記耐炎化繊維基材を配した状態で、前記炭素化炉内を走行させる。
別態様に係る製造方法は、前記耐炎化繊維基材を、走行方向の上流側から、第1炭素化炉と第2炭素化炉とをこの順で走行させる。これにより、高品質の炭素繊維電極基材を製造できる。
実施形態の一態様に係る製造装置は、炭素化炉内を走行させ、耐炎化繊維基材を炭素化する炭素繊維電極基材の製造装置において、厚み方向に複数枚の前記耐炎化繊維基材を配した状態で、前記炭素化炉内を走行させる走行手段を備える。
別態様に係る製造装置は、前記炭素化炉は、前記耐炎化繊維基材の走行方向の上流側から、第1炭素化炉と第2炭素化炉とをこの順で備える。これにより、高品質の炭素繊維電極基材を製造できる。
【0009】
<実施形態>
1.全体
実施形態における炭素繊維電極基材は、複数枚の耐炎化繊維基材を厚み方向に配した状態で、炭素化炉内を走行させることで製造される。
なお、耐炎化繊維基材の走行方向と厚み方向とに直交する方向を幅方向とする。
【0010】
2.耐炎化繊維基材
炭素化炉内を走行させる耐炎化繊維基材として、例えば、前駆体繊維をフェルトや織物などのシート状に形成(形成したものを「前駆体繊維基材」とする)して耐炎化したもの、前駆体繊維を耐炎化して耐炎化繊維とした後、フェルトや織物などのシート状に形成したものを利用できる。
前駆体繊維として、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系繊維、レーヨン系繊維、セルロース系繊維及びピッチ系繊維の内、1種以上の繊維を利用できる。
なお、耐炎化とは、前駆体繊維又は前駆体繊維基材を空気中、200~400℃で処理(耐炎化処理ともいう)することであり、これにより、耐炎化繊維又は耐炎化繊維基材は、環化反応を生じ、酸素結合量を増加させて不融化、難燃化する。
【0011】
前駆体繊維がPAN系繊維である、耐炎化繊維を用いる場合、耐炎化繊維の密度は特に限定されるものではないが、アルキメデス法による密度が1.33~1.45g/cm3あることが好ましい。耐炎化繊維の密度が低すぎる場合は、炭素化工程での収縮が大きく、工程が不安定になり易い傾向がある。耐炎化繊維の密度が高すぎる場合は、繊維が脆く、フェルト加工や製織加工で繊維基材を得る際の加工性が低下する傾向にある。
本発明において炭素化炉内を走行させる耐炎化繊維基材は、炭素化炉に導入する前に耐炎化繊維がシート状の繊維基材となっておればよく、前駆体繊維をシート状繊維基材とした後耐炎化処理を行ってもよく、耐炎化繊維を用いてシート状繊維基材を形成させてもよい。生産性の観点から、耐炎化繊維を用いてシート状繊維基材を形成させた耐炎化繊維基材を用いることが好ましい。
【0012】
シート状繊維基材の形成方法及びシート状繊維基材の形態は、抄紙によるペーパー状シート、ウォータージェット法による不織布、ニードルパンチ法等のフェルト加工による不織布(フェルト)、製織によるフィラメント織物、並びに、紡績・製織による紡績糸織物等がある。本発明においてシート状繊維基材としては、ニードルパンチ法等のフェルト加工による不織布(フェルト)や、製織によるフィラメント織物(特に多層織物)を用いると、厚み方向にも繊維が配向した耐炎化繊維基材を得やすいため好ましい。取り扱い性や生産性の観点から、ニードルパンチ法等のフェルト加工による不織布(フェルト)であることがより好ましい。
【0013】
フェルト加工により不織布を得る場合、原料として用いる耐炎化繊維の繊度は、0.1~5.0dtexであることが好ましく、0.5~3.5dtexであることがより好ましく、1.0~3.3dtexが特に好ましい。耐炎化繊維の繊度が低すぎる場合は、開繊性が悪く、均質な混合が難しい。耐炎化繊維の繊度が高すぎる場合は、強度の高いフェルトを得にくい傾向がある。また、フェルト加工に用いる耐炎化繊維は、ステープルとして用いることが好ましく、耐炎化繊維ステープルの繊維長が30~75mm、繊度が0.5~3.5dtex、クリンプ数4~20ケ/2.54cm、クリンプ率4~20%に加工したものが好ましい。
【0014】
ニードルパンチ方法によりフェルトを作成する場合の交絡処理は、パンチング数(交絡処理回数)300~3000回/cm2の範囲で行うことが好ましい。パンチング数が少なすぎる場合、フェルトの強度が低下する場合がある。また、厚み方向の繊維配列度が低くなり、厚み方向の電気抵抗値が高くなる場合がある。パンチング数が多すぎる場合は、交絡処理による繊維への損傷が大きく、脱落毛羽などが発生するおそれがある。なお、ニードルパンチ方法におけるパンチング方向は、パンチング面の片側からでも両側からでも良い。
【0015】
耐炎化繊維基材は、その厚さが0.5~30mm、目付が30~4000g/m2、幅が100~2000mmであることが好ましい。
耐炎化繊維基材の厚さが0.5mm未満の場合は、炭素化中の繊維基材の強度が低下し、切断や裂けを生じ易い。耐炎化繊維基材の厚みが30mmを超える場合は、炭素繊維電極基材を加工した際の寸法が安定し難い。
耐炎化繊維基材の目付が30g/m2未満の場合は、炭素化中の繊維基材の強度が低下し、切断や裂けを生じ易い。耐炎化繊維基材の目付が4000g/m2を超える場合は、炭素繊維電極基材を加工した際の寸法が安定し難い。
耐炎化繊維基材の幅が10mm未満の場合は、炭素化中の繊維基材の強度が低下し、切断や裂けを生じ易い。また、10mm未満の場合は生産性向上の効果が得にくい。耐炎化繊維基材の幅が2000mmを超える場合は、繊維基材の厚みと目付が幅方向にばらつきが大きくなりやすい。
【0016】
耐炎化繊維基材の嵩密度は、0.001~8.0g/cm3であることが好ましい。なお、本発明において嵩密度は、以下の式によって求められる。
嵩密度(g/cm3)=目付(g/m2)÷厚み(mm)÷1000
本発明において、耐炎化繊維基材は、厚み方向の繊維配向度が1~50%であることが好ましく、5~40%であることがより好ましい。厚み方向の繊維配向度がこの範囲であると、厚み方向の導電性にも優れた炭素繊維電極基材を得ることができる。
なお、本発明において、厚み方向の繊維配向度は、X線回折測定より次の方法によって算出される。
X線回折ピーク角度(2θ=26.0°付近)についてZ-X面(A)及びZ-Y面(B)で360°試料を回転させX線回折測定を行い、X線回折挙動変化より結晶子の配向ピークを得る。結晶子は繊維軸方向に高配向しているため、結晶子の配向方向を繊維軸方向とし、この配向ピーク面積を測定し、下式により厚み方向の繊維配向度を求める。
厚み方向(Z)の繊維配向度
=Z方向の配向ピーク面積÷(X+Y+Z)方向の配向ピーク面積
=1÷[(X方向の配向ピーク面積÷Z方向の配向ピーク面積)+(Y方向の配向ピーク面積)÷(Z方向の配向ピーク面積)+1]
【0017】
3.炭素化炉
上記のような耐炎化繊維基材を、炭素化炉において、不活性雰囲気下で炭素化処理を行う。炭素化炉は、耐炎化繊維基材の走行方向に1台以上ある。好ましくは、走行方向に1台以上あることが好ましく、2台以上あることがより好ましい。炭素化炉が2台以上ある場合、全ての炭素化炉において耐炎化基材を、厚み方向に複数枚の耐炎化繊維基材を配した状態で、炭素化炉内を走行させる必要はなく、いずれかの炭素化炉で厚み方向に複数枚の耐炎化繊維基材を配しておればよい。生産性や得られる炭素繊維電極基材の品質の観点から、耐炎化繊維基材の重ね状態は複数の炭素化炉において同一であることが好ましい。
【0018】
(1)炭素化炉が1台の場合
炭素化炉が1台の場合について説明する。
耐炎化繊維基材の走行速度によって、適宜調整すればよいが、炭素化炉内の、最高温度は好ましくは1000~2300℃、より好ましくは1200~2000℃である。炭素化炉の最低温度は特に限定されないが、耐炎化炉の温度より高いことが好ましく、300~500℃がより好ましい。走行中の耐炎化繊維基材に作用させるテンション(張力)は、1耐炎化繊維基材あたり、0.5~100Nが好ましく、1~50Nがより好ましい。炭素化炉内の昇温勾配は、500~1000℃の温度域について、50~500℃/minの範囲であることが好ましい。昇温勾配は、つけてもつけなくてもいい。炭素化炉の滞留時間は、実質的に耐炎化繊維基材が加熱される領域において、0.5~120分であることが好ましく、1~30分であることがより好ましく、2~10分であることが特に好ましい。
耐炎化繊維基材の走行速度は、0.5~200m/hourの範囲内が好ましく、5~150m/hourがより好ましい。
このように、炭素化炉内の温度とテンションとを設定することで、耐炎化繊維基材を切断等なく炭素化でき、良好な炭素繊維電極基材を得ることができる。
【0019】
(2)炭素化炉が2台の場合
熱処理が2台の場合について説明する。
走行方向の上流側に位置する炭素化炉を第1炭素化炉とし、下流側に位置する炭素化炉を第2炭素化炉とする。なお、第1炭素化炉内の温度は、第2炭素化炉内の温度より低く、耐炎化処理の温度よりも高い。第1炭素化処理は、耐炎化繊維基材を、不活性雰囲気下、最高温度400~1000℃で焼成処理をし、第2炭素化処理は、第1炭素化処理された繊維基材(以下、「第1炭素化繊維基材」ともいう)を、不活性雰囲気下、最高温度1000~2300℃で焼成することが好ましい。この第2炭素化処理の最高温度は、1200~2300℃の範囲であることがより好ましい。第2炭素化炉の下流側にさらに処理温度の高い炭素化炉を配置してもよい。走行方向に配置する炭素化炉の数に制限はないが、生産性の観点からは、炭素化炉の数は、3台以下であることが好ましい。
第1炭素化炉の温度域において、耐炎化繊維基材は、異種元素の離脱を伴う化学構造変化を受け、多くの分解ガスを発生させる。そのため、これらの温度域で2段階に分けて炭素化する方が、分解ガスの処理や反応制御のしやすさから好ましい。
第1炭素化処理は、得られる第1炭素化繊維基材のアルキメデス法による比重が1.5~1.6g/cm3の範囲になるように行うことが好ましく、1.54~1.60g/cm3となるように行うことがより好ましい。
【0020】
第1炭素化炉内の最高温度は400~1000℃であることが好ましく、500~800℃であることがより好ましい。第1炭素化炉の最低温度(入口温度)は、400~500℃の範囲であることが好ましく、400~450℃の範囲であることがより好ましい。第1炭素化炉内の温度勾配は、つけなくてもよいが、500℃/min以下であることが好ましく、10~200℃/minであることがより好ましい。走行中の耐炎化繊維基材に作用させるテンション(張力)は、1耐炎化繊維基材あたり、0.5~100Nが好ましく、1~50Nがより好ましい。第1炭素化炉の滞留時間は特に制限されるものではないが、1分以上であることが好ましく、2~60分であることがより好ましく、5~30分であることが特に好ましい。
【0021】
第2炭素化炉内の最高温度は1000~2300℃であることが好ましく、1200~2000℃であることがより好ましい。走行中の第1炭素化繊維基材に作用させるテンション(張力)は、1繊維基材あたり、0.5~100Nが好ましく、1~50Nがより好ましい。
第2炭素化炉の最低温度は特に制限されないが、第1炭素化炉の最高温度以上であることが好ましい。第2炭素化炉の滞留時間は、1分以上であることが好ましく、2~60分であることがより好ましく、5~30分であることが特に好ましい。
耐炎化繊維基材及び第1炭素化繊維基材の走行速度は、0.5~200m/hourの範囲内が好ましく、5~150m/hourがより好ましい。
このように、第1炭素化炉及び第2炭素化炉の内部の温度とテンションとを設定することで、耐炎化繊維基材及び第1炭素化繊維基材を切断等なく炭素化でき、良好な炭素繊維電極基材を得ることができる。
【0022】
(3)前乾燥炉
炭素化する炭素化炉(炭素化炉の台数に関係なく)の上流側に前乾燥炉を設けてもよい。なお、温度が400℃以上の熱処理炉を炭素化炉とし、温度が400℃未満の熱処理炉を前乾燥炉や後乾燥炉とする。
前乾燥炉の温度は、上流側に位置する炭素化炉の最低温度(入口温度)に対して、50~300℃低く設定されている。耐炎化繊維基材に対してあらかじめ400℃未満の温度で熱処理を行うことにより、耐炎化繊維基材に付着している水分や油剤を除去することができる。水分や油剤を除去することにより、水分や油剤から発生するガスによる炭素化炉内の汚染を防ぐことができ、炭素化工程の工程トラブルを防ぎ、より高品質の炭素繊維電極基材を得ることができる。また、耐炎化繊維基材に対して温度勾配の緩やかな熱処理を実施でき、耐炎化繊維基材に作用する熱ひずみを小さくできる。
【0023】
4.耐炎化繊維基材の炭素化
(1)配置形態
複数枚の耐炎化繊維基材の厚み方向の配置は、各耐炎化繊維基材を、接触するように重ねてもよいし、接触しないように重ねてもよいし、走行方向に沿って1以上の部位で接触する(例えば、走行方向の両端と中央の3部位で接触するように)ように重ねてもよいし、厚み方向の所定位置の耐炎化繊維基材が接触するように(例えば、1枚目と2枚目とを接触させて、3枚目と4枚目とを接触させ、2枚目と3枚目とが接触しないように)重ねてもよい。
本明細書でいう「耐炎化繊維基材を重ねる」には、厚み方向に隣接する耐炎化繊維基材同士が、接触する状態、接触しない状態、一部接触する状態等を含んでいる。
なお、走行方向に接触する部位と接触しない部位とがあると、炭素化の度合い(炭素化度)のばらつきが生じやすくなるため、走行方向については接触の有無の変化がないのが好ましい。
【0024】
(2)枚数
耐炎化繊維基材の枚数は、1枚の耐炎化繊維基材の厚み、目付によって上限枚数は変わるが、目安としては、耐炎化繊維基材が走行する炭素化炉内の走行空間の断面積に対して50~90%以下となる枚数が上限である。
なお、上限を超えた枚数を走行させると、十分に炭素化できなかったり、熱反応により発生するガスの排出が不十分(膠着)となり切断しやすくなったりする。
【0025】
(3)走行方向
耐炎化繊維基材の走行方向は、水平方向でもよいし、水平方向に対して傾斜する方向でもよいし、垂直方向でもよいし、垂直方向に対して傾斜する方向でもよいし、水平方向(傾斜する方向も含む)と垂直方向(傾斜する方向も含む)とを組み合わせてもよい。
水平方向と垂直方向とを組み合わせた例としては、例えば、炭素化炉が2台の場合、第1炭素化炉内を水平方向に走行し、その後、第2炭素化炉内を垂直方向に走行するような場合がある。なお、炉内で発生するガスの排出を考慮すると、第1炭素化炉内を水平方向に耐炎化繊維基材を走行させるのが好ましい。
【0026】
(4)走行方法
耐炎化繊維基材の走行は、炉内を炉床や炉壁、炉天井に接触させないで空走させても、炉床や炉壁、炉天井に接触させて走行させてもよい。また、例えば、走行方向に間隔を置いて配された複数のローラ(ニップローラを含んでもよい)、ローラコンベア、ベルトコンベア等により走行(搬送)させてもよい。また、耐炎化繊維基材を炭素化した炭素繊維電極基材をボビンに巻き取る場合、炭素繊維電極基材の巻取力を利用して走行させてもよい。
【0027】
<実施例>
以下、実施例について説明する。
1.実施例1
実施例1について、
図1を用いて説明する。
実施例1の製造装置100は、前乾燥炉101、第1炭素化炉102及び第2炭素化炉103を耐炎化繊維基材(1a~1d)の走行方向(
図1の(a)中の矢印)にこの順で備える。ここでの走行方向は水平方向である。ここでの耐炎化繊維基材は4枚あり、各耐炎化繊維基材を厚み方向の一方側(上側)から1a,1b,1c,1dとし、複数枚の耐炎化繊維基材を示す符号を「1a~1d」とする。
第1炭素化炉102及び第2炭素化炉103は、炭素化炉を構成し、第1炭素化炉102の内部及び第2炭素化炉103の内部を複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dが走行することで、炭素化された炭素繊維電極基材が製造される。炭素繊維電極基材は、耐炎化繊維基材(1a~1d)の枚数に合わせて4枚あり、厚み方向の一方側(上側)から3a,3b,3c,3dとし、複数枚の炭素繊維電極基材を示す符号を「3a~3d」とする。
なお、炭素繊維電極基材はすべての炭素化炉(ここでは、第2炭素化炉である)を走行した基材をいい、第1炭素化炉を走行した基材も耐炎化繊維基材としている。
製造装置100は、複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dを厚み方向に重ねて、前乾燥炉101に供給する供給手段104を備える。
製造装置100は、前乾燥炉101に供給された複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dを第1炭素化炉102に搬送したり、第1炭素化炉102に搬送された複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dを第2炭素化炉103に搬送したりする搬送手段105,106を備える。
製造装置100は第1炭素化炉102及び第2炭素化炉103を走行して炭素化された炭素繊維電極基材3a~3dを採取する採取手段107を備える。
【0028】
ここでの耐炎化繊維基材1a~1dは、幅が600mm、厚みが2mmである。
供給手段104は、ボビン巻きされた各耐炎化繊維基材1a~1dを利用しており、各耐炎化繊維基材1a~1dが巻き付けられたボビンを着脱可能に保持する保持部と、保持されたボビンを供給側に回転される駆動部とを備える。これにより、ボビンに巻かれた耐炎化繊維基材1a~1dは、前乾燥炉101側に送り出される。
なお、後述の採取手段107や搬送手段105,106の方式によっては、供給手段104は、ボビンを保持すると共に回転可能に設けた保持部を備え、駆動部は備えなくてもよい。
複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dは、厚み方向に4枚重ねられており、厚み方向に隣接する耐炎化繊維基材1a~1dの対向面は接触している。
重ねられた複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dは、前乾燥炉101と第1炭素化炉102との間、第1炭素化炉102と第2炭素化炉103との間に設けられた搬送手段105,106により厚み方向の他方(下方)から支持されている。
ここでの供給手段104は、重ねられた複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に1列で供給する。
【0029】
前乾燥炉101は、熱処理炉であり、内部の温度が300~400℃(ただし、第1炭素化炉内の温度より低い温度)になるように設定されている。第1炭素化炉102は、熱処理炉であり、内部の温度が400~900℃になるように設定されている。第2炭素化炉103は、熱処理炉であり、内部の温度が第1炭素化炉102内の温度よりも高く、900~1800℃になるように設定されている。
搬送手段105,106は、ここでは、ローラが利用され、1本のローラにより、重ねられた耐炎化繊維基材1a~1dを支持し搬送する。搬送手段105,106の内、少なくとも一方に駆動ローラが利用されている。
なお、供給手段104及び採取手段107の方式によっては、搬送手段105,106として、走行する耐炎化繊維基材1aにより回転するフリーローラを利用できる。
採取手段107は、炭素繊維電極基材3a~3dをボビンに巻き取っており、ボビンを着脱可能に保持する保持部と、保持されたボビンを巻き取り方向に回転させる駆動部とを備える。
供給手段104及び採取手段107のボビンの回転速度、搬送手段105,106のローラの回転速度は、供給手段104と採取手段107との間を走行する耐炎化繊維基材1a~1d又は炭素繊維電極基材3a~3dに作用するテンションが0.5~30Nとなるように設定されている。なお、耐炎化繊維基材1a~1d及び炭素繊維電極基材3a~3dの走行速度は、30~60m/hourに設定されている。
【0030】
2.実施例2
実施例2について、
図2を用いて説明する。
実施例1では、複数枚重ねた耐炎化繊維基材1a~1dを1列で供給し、炭素繊維電極基材3a~3dを製造している。つまり、製造装置100は、複数枚重ねた耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に1列で走行させて、複数枚の炭素繊維電極基材3a~3dを1列で製造する装置である。
実施例2の製造装置110は、複数枚重ねた耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に複数列(ここでは2列である)で供給し、炭素繊維電極基材3a~3dを複数列(ここでは2列である)で製造している。つまり、製造装置110は、複数枚重ねた耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に複数列(ここでは2列である)で走行させて、複数枚の炭素繊維電極基材3a~3dを複数列(ここでは2列である)で製造する装置である。
製造装置110は、実施例1と同様に、前乾燥炉111、第1炭素化炉112及び第2炭素化炉113を耐炎化繊維基材1a~1dの走行方向にこの順で備え、耐炎化繊維基材1a~1dの走行方向は水平方向である(
図2の(a)中の矢印)。
製造装置110は、複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dを厚み方向に配して、幅方向に複数列(2列)で前乾燥炉111に供給する供給手段114と、耐炎化繊維基材1a~1dを前乾燥炉111から第2炭素化炉113に搬送する搬送手段115,116と、第1炭素化炉112及び第2炭素化炉113を走行して炭素化された炭素繊維電極基材3a~3dを採取する採取手段117とを備える。
前乾燥炉111、第1炭素化炉112、第2炭素化炉113及び搬送手段115,116は、実施例1の前乾燥炉101、第1炭素化炉102、第2炭素化炉103及び搬送手段105,106に対して幅方向を長くしたものであり、基本的な構成は同じである。
供給手段114と採取手段117は、複数列に配されたボビンを保持する保持部と、複数列に配されたボビンを回転駆動させる回転部とを少なくとも備える。
なお、実施例1においてなお書きで説明した内容は、実施例2に適用できる場合は同様である。
【0031】
3.実施例3
実施例3について、
図3を用いて説明する。
実施例1では、複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dを厚み方向に接触する状態で、前乾燥炉101等に供給している。
実施例3の製造装置200は、厚み方向に間隔をおいて複数枚配された耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に1列又は複数列(ここでは1列である)で供給し、炭素繊維電極基材3a~3dを1列又は複数列(ここでは1列である)で製造している。
製造装置200は、実施例1と同様に、前乾燥炉201、第1炭素化炉202及び第2炭素化炉203を耐炎化繊維基材1a~1dの走行方向にこの順で備え、耐炎化繊維基材1a~1dの走行方向は水平方向である(
図3の(a)中の矢印)。
製造装置200は、複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dを厚み方向に間隔をおいた状態で幅方向に1列又は複数列(ここでは1列である)で前乾燥炉201に供給する供給手段204と、耐炎化繊維基材1a~1dを前乾燥炉111から第2炭素化炉113に厚み方向に間隔をおいて搬送する搬送手段205,206と、第1炭素化炉112及び第2炭素化炉113を走行して炭素化された炭素繊維電極基材3a~3dを採取する採取手段207とを備える。
前乾燥炉201、第1炭素化炉202及び第2炭素化炉203は、実施例1の前乾燥炉101、第1炭素化炉102及び第2炭素化炉103に対して厚み方向に長くしたものであり、基本的な構成は同じである。
供給手段204と採取手段207は、複数個の各ボビンを保持し且つ厚み方向に間隔をおいて設けられた保持部と、保持された複数個のボビンを回転駆動させる回転部とを少なくとも備える。
搬送手段205,206は、ここでは、ローラが利用され、厚み方向に間隔をおいて走行する各耐炎化繊維基材1a~1d間に配されたローラ205a~205d、206a~206dを備える。各ローラ205a~205d、206a~206dは各耐炎化繊維基材1a~1dを下側から支持して搬送する。搬送手段205,206の内、少なくとも一方に駆動ローラが利用されている。
なお、実施例3は、複数の耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に1列で走行させているが、実施例1に対する実施例2のように、複数の耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に複数列で走行させてもよい。また、実施例1においてなお書きで説明した内容は、実施例3に適用できる場合は同様である。
【0032】
4.実施例4
実施例4について、
図4を用いて説明する。
実施例1では、複数枚重ねた耐炎化繊維基材1a~1dを搬送手段105,106で支持しながら搬送している。
実施例4の製造装置120は、前乾燥炉101、第1炭素化炉102及び第2炭素化炉103の内部を走行する複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dを炉内で支持する支持手段128を備える。支持手段128は、耐炎化繊維基材1a~1dの走行方向に沿って炉内に1個以上又は複数個設けられている。ここでは、前乾燥炉101内には1個、第1炭素化炉102及び第2炭素化炉103内には3個それぞれ設けられている。
製造装置120は、供給手段104、搬送手段105,106及び採取手段107を備える。実施例1と同じ構成又は同じ構成とみなされる構成には、実施例1と同じ符号を付し、その説明を省略する。
支持手段128は、幅方向に延伸するバーにより構成される。支持手段128は複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dを下側から支持する。バーは、横断面において、少なくとも耐炎化繊維基材1dと接触する部分の形状が円弧状をしている。ここでのバーは、横断面形状が円形状をしている。支持手段128は、固定式のバーでもよいし、回転式のバーでもよい。回転式のバーの方が摩擦による耐炎化繊維基材1dの損傷を少なくできる。
なお、実施例4は、複数の耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に1列で走行させているが、実施例1に対する実施例2のように、複数の耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に複数列で走行させてもよい。また、実施例1においてなお書きで説明した内容は、実施例4に適用できる場合は同様である。
【0033】
5.実施例5
実施例5について、
図5用いて説明する。
実施例3は、厚み方向において配された複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dを搬送手段205,206で支持しながら搬送している。
実施例5の製造装置210は、前乾燥炉201、第1炭素化炉202、第2炭素化炉203、供給手段204、搬送手段205,206及び採取手段207を備える。実施例3と同じ構成又は同じ構成とみなされる構成には、実施例3と同じ符号を付し、その説明を省略する。
製造装置210は、前乾燥炉201、第1炭素化炉202及び第2炭素化炉203の内部を走行する複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dを炉内で支持する支持手段208を備える。支持手段208は、各耐炎化繊維基材1a~1dを下側から支持する。支持手段208は、耐炎化繊維基材1a~1dの走行方向に沿って炉内に1組以上又は複数組設けられている。ここでは、前乾燥炉201内には1組、第1炭素化炉202及び第2炭素化炉203内には3組それぞれ設けられている。
1組の支持手段208は、幅方向に延伸し且つ厚み方向に間隔をおいて配されたバー208a~208dにより構成される。バーは、横断面において、少なくとも各耐炎化繊維基材1a~1dと接触する部分の形状が円弧状をしている。ここでのバーは、横断面形状が円形状をしている。支持手段208は、固定式のバーでもよいし、回転式のバーでもよい。回転式のバーの方が摩擦による各耐炎化繊維基材1a~1dの損傷を少なくできる。
なお、実施例5は、複数の耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に1列で走行させているが、実施例1に対する実施例2のように、複数の耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に複数列で走行させてもよい。また、実施例1においてなお書きで説明した内容は、実施例5に適用できる場合は同様である。
【0034】
6.実施例6
実施例6について、
図6を用いて説明する。
実施例1では、複数枚重ねた耐炎化繊維基材1a~1dを、ローラを利用した搬送手段105,106で支持しながら搬送している。
実施例6の製造装置130の搬送手段135は、複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dの全体の厚み方向の両側に配されたローラ131,132,133により構成されている。
製造装置130は、前乾燥炉101、第1炭素化炉102、第2炭素化炉103、供給手段104、採取手段107、支持手段128及び搬送手段135を備える。実施例1又は実施例4と同じ構成又は同じ構成とみなされる構成には、実施例1又は実施例4と同じ符号を付し、その説明を省略する。
搬送手段135は、前乾燥炉101の上流側、前乾燥炉101と第1炭素化炉102との間、第1炭素化炉102と第2炭素化炉103との間、第2炭素化炉103の下流側の少なくとも1箇所以上に配されている。ここでの搬送手段135は、第2炭素化炉103の下流側に設けられている。耐炎化繊維基材1a~1dは下流側の方が炭素化が進み、その強度が高く、搬送手段135を下流側に配する方が耐炎化繊維基材1a~1dの切断を防止できる。
搬送手段135は、厚み方向に配された複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dの厚み方向の両端に位置する各耐炎化繊維基材1a,1dに対して厚み方向の外方側から当接する1個以上のローラを備える。ここでは、ローラ131が耐炎化繊維基材1aに厚み方向の他方側(下側)に当接し、ローラ132,133が耐炎化繊維基材1dに厚み方向の一方側(上側)に当接する。ローラ132,133は、走行方向に間隔をおいて配されている。
製造装置130は、前乾燥炉101の上流側、前乾燥炉101と第1炭素化炉102との間、第1炭素化炉102と第2炭素化炉103との間の少なくとも一か所に支持手段128を備える。ここでの支持手段128は、実施例4の支持手段128と同じ構成又は同じ構成とみなされる構成であるため、実施例4と同じ符号を付し、その説明を省略する。
支持手段128は、複数枚が配された耐炎化繊維基材1a~1dの重量が作用する側(下側)から耐炎化繊維基材1a~1dを支持する。
また、製造装置は、第2炭素化炉103の下流側の搬送手段135の他、前乾燥炉101と第1炭素化炉102との間及び第1炭素化炉102と第2炭素化炉103との間の少なくとも一方に配された搬送手段105,106(実施例1参照)を備えてもよい。
なお、実施例6は、複数の耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に1列で走行させているが、実施例1に対する実施例2のように、複数の耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に複数列で走行させてもよい。また、実施例1においてなお書きで説明した内容は、実施例6に適用できる場合は同様である。
【0035】
7.実施例7
実施例7について、
図7を用いて説明する。
実施例6の搬送手段135は、第2炭素化炉103の外側に配されている。
実施例7の製造装置140の搬送手段145は、前乾燥炉101、第1炭素化炉102及び第2炭素化炉103の少なくとも1つの炉内に配されている。ここでの搬送手段145は、第1炭素化炉102と第2炭素化炉103の内部に配されている。
製造装置140は、前乾燥炉101、第1炭素化炉102、第2炭素化炉103、供給手段104、採取手段107、支持手段128及び搬送手段145を備える。実施例1又は実施例4と同じ構成又は同じ構成とみなされる構成には、実施例1又は実施例4と同じ符号を付し、その説明を省略する。
なお、製造装置は、前乾燥炉101、第1炭素化炉102及び第2炭素化炉103の内側に配される搬送手段145と、前乾燥炉101、第1炭素化炉102及び第2炭素化炉103の外側に配される搬送手段135との両方を備えてもよい。
製造装置は、炉内に搬送手段145を、炉外に実施例1で説明した搬送手段105,106の少なくとも一方をそれぞれ備えてもよい。製造装置は、炉内に配される搬送手段145と、前乾燥炉101、第1炭素化炉102及び第2炭素化炉103の外側に配される搬送手段135と、炉外に実施例1で説明した搬送手段105,106をそれぞれ備えてもよい。製造装置は、搬送手段145と、実施例4で説明した支持手段128とを炉内に備えてもよい。
なお、実施例7は、複数の耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に1列で走行させているが、実施例1に対する実施例2のように、複数の耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に複数列で走行させてもよい。また、実施例1においてなお書きで説明した内容は、実施例7に適用できる場合は同様とする。
【0036】
8.実施例8
実施例8について、
図8を用いて説明する。
実施例1~7では、搬送手段としてローラを利用していたが、他の搬送手段であってもよい。
実施例8の製造装置150の搬送手段151は、ベルトコンベアを利用している。
製造装置150は、前乾燥炉101、第1炭素化炉102、第2炭素化炉103、供給手段104、採取手段107及び搬送手段151を備える。実施例1と同じ構成又は同じ構成とみなされる構成には、実施例1と同じ符号を付し、その説明を省略する。
搬送手段151は、搬送ベルト152と、搬送ベルト152を周回させる駆動ローラ153と、搬送ベルト152をガイドするガイドローラ154,155とを備える。
搬送ベルト152は、前乾燥炉101、第1炭素化炉102及び第2炭素化炉103の内部を走行し、前乾燥炉101の上流側から第2炭素化炉103の下流側で複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dを載置して搬送する。
なお、製造装置は、厚み方向に重ねられた複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dに対して厚み方向の両側にベルトコンベアタイプの搬送手段151を備えてもよいし、耐炎化繊維基材1a~1dの上側に位置する耐炎化繊維基材(1dである)上に搬送手段151を配してもよい。上側に搬送手段151を配する場合、複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dを下側から支持する支持手段(例えば、実施例6の支持手段128である)を備えるのが好ましい。
なお、実施例8は、複数の耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に1列で走行させているが、実施例1に対する実施例2のように、複数の耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に複数列で走行させてもよい。また、実施例1においてなお書きで説明した内容は、実施例8に適用できる場合は同様とする。
【0037】
9.実施例9
実施例9について、
図9を用いて説明する。
実施例1では、第1炭素化炉102と第2炭素化炉103との2台の炭素化炉を備え、複数枚重ねた耐炎化繊維基材1a~1dに対して、第1炭素化処理と第2炭素化処理の2回の炭素化処理をしている。
実施例9の製造装置300は、複数枚重ねた耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に1列で1台の炭素化炉302内を走行させて、複数枚の炭素繊維電極基材3a~3dを1列で製造する装置である。つまり、製造装置300は、1台の炭素化炉302を備え、複数枚重ねた耐炎化繊維基材1a~1dから複数枚の炭素繊維電極基材3a~3dを製造する装置である。
製造装置300は、前乾燥炉301及び炭素化炉302を耐炎化繊維基材1a~1dの走行方向にこの順で備え、耐炎化繊維基材1a~1dの走行方向は水平方向である(
図9の(a)中の矢印)。
製造装置300は、複数枚の耐炎化繊維基材1a~1dを厚み方向に配して、幅方向に1列で前乾燥炉301に供給する供給手段304と、耐炎化繊維基材1a~1dを前乾燥炉301から炭素化炉302に搬送する搬送手段305と、炭素化炉302を走行して炭素化された炭素繊維電極基材3a~3dを採取する採取手段307とを備える。
前乾燥炉301、搬送手段305、供給手段304及び採取手段307は、実施例1の前乾燥炉101、搬送手段105、供給手段114及び採取手段117と基本的には同じ構成あるが、異なる構成であってもよい。
実施例9は、炭素化炉302の温度が実施例1の第1炭素化炉102よりも高い点、耐炎化繊維基材1a~1dの走行速度が実施例1よりも遅い点で異なる。
なお、実施例9は、複数の耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に1列で走行させているが、実施例1に対する実施例2のように、複数の耐炎化繊維基材1a~1dを幅方向に複数列で走行させてもよい。また、実施例1においてなお書きで説明した内容は、実施例9に適用できる場合は同様とする。
また、実施例1に対する実施例2~実施例7のように、炉内又は炉外に支持手段128を、炉外に搬送手段135を、炉内に搬送手段145を備えてもよいし、実施例8のように搬送装置151を備えてもよい。
【0038】
<変形例>
以上、実施形態及び各実施例に基づいて説明したが、本発明は実施形態及び各実施例に限られない。例えば、各実施例を適宜組み合わせてもよいし、以下で説明する変形例の何れかと各実施例とを適宜組み合わせてもよいし、複数の変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0039】
1.走行方向
実施例1~9では、耐炎化繊維基材は水平方向に走行していたが、垂直方向に走行してもよい。また、実施例1~8において例えば、前乾燥炉、第1炭素化炉及び第2炭素化炉を上下方向に段状に配置し、前乾燥炉を走行した耐炎化繊維基材を、第1炭素化炉側に反転させて第1炭素化炉を走行させ、当該第1炭素化炉を走行した耐炎化繊維基材を、第2炭素化炉側に反転させて第2炭素化炉を走行させるようにしてもよい。
なお、耐炎化繊維基材を反転させる場合、厚み方向に重ねられた耐炎化繊維基材にしわが入りやすくなるため、重ねる耐炎化繊維基材の枚数に制限が生じる。
【0040】
2.耐炎化繊維基材
前乾燥炉に供給される耐炎化繊維基材は、ボビンに巻き付けられていたが、例えば、カートン内に折り畳まれていてもよいし、耐炎化繊維基材の製造工程から直接供給されてもよい。
3.炭素化炉
実施例1~8の製造装置は2台の炭素化炉を備えていたが、実施例2~8についても実施例9の製造装置のように1台の炭素化炉で炭素繊維電極基材を製造するようにしてもおい。
実施例1~8の製造装置は2台の炭素化炉を備え、耐炎化繊維基材の重ね状態や支持状態は第1炭素化炉と第2炭素化炉とで同じあったが、第1炭素化炉と第2炭素化炉で異なってもよい。例えば、製造装置は、実施例1の第1炭素化炉102と搬送手段105(
図1参照)、実施例5の第2炭素化炉203と搬送手段206と支持手段208(
図5参照)を備えてもよく、耐炎化繊維基材は、実施例1の第1炭素化炉102(
図1参照)の重ね状態及び支持状態で走行し、実施例5の第2炭素化炉203の重ね状態及び支持状態で走行してもよい。
【0041】
4.炭素繊維電極基材
炭素繊維電極基材は、ボビンに巻き取られて採取されていたが、例えば、カートン内に折り畳まれて採取されてもよい。
炭素繊維電極基材は、例えば、燃料電池のセパレータ、電極等の用途に使用されることが多いが、基材の導電性を利用した他の用途にも使用できる。この場合、当該基材は、炭素繊維導電シート又は炭素繊維導電シートと称してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1a 耐炎化繊維基材
3a 炭素繊維電極基材
100 製造装置
102 第1炭素化炉
103 第2炭素化炉
104 供給手段
105 搬送手段
106 搬送手段
107 採取手段