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  • 特許-無線放送システム 図1
  • 特許-無線放送システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】無線放送システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 11/00 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
H04B11/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020055719
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021158484
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】内田 実
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-170602(JP,A)
【文献】国際公開第2014/141413(WO,A1)
【文献】特開2012-227909(JP,A)
【文献】特開2015-053592(JP,A)
【文献】特開2013-065095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親局装置と、前記親局装置から送信された無線信号を受信する子局装置と、前記子局装置の近傍に配置された処理装置とを備え、
前記親局装置は、前記処理装置に処理を実行させる指示信号を非可聴音帯域に含む音声データを発生させて、前記子局装置へ無線送信し、
前記子局装置は、前記親局装置から受信した前記音声データに基づいて、前記指示信号を非可聴音帯域に含む音声を出力し、
前記処理装置は、前記子局装置からの出力音声の非可聴音帯域に含まれる指示信号に基づいて、前記指示信号に対応する処理を実行することを特徴とする無線放送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線放送システムにおいて、
前記指示信号は、情報収集を指示する信号であることを特徴とする無線放送システム。
【請求項3】
請求項1に記載の無線放送システムにおいて、
前記指示信号は、テキスト表示を指示する信号であることを特徴とする無線放送システム。
【請求項4】
請求項1に記載の無線放送システムにおいて、
前記指示信号は、音声出力を指示する信号であることを特徴とする無線放送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親局装置から送信された無線信号を受信して拡声出力する子局装置を備えた無線放送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報の発信元から地理的に離れた場所への情報の伝達は、無線・有線を問わず、音声或いは非音声(文字データ等)により行われている。音声を使用した情報伝達の一例として、親局装置から送信された無線信号を受信して拡声出力する子局装置を備えた無線放送システムがある。例えば、特許文献1には、親局が子局の受信品質を収集できるようにした同報通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6202612号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線放送システムのように音声を使用して情報伝達を行う場合、音声が伝わる範囲に相手がいて内容を聞かないと、情報伝達は成立しない。また、音声が騒音となって周辺に迷惑をかける可能性もある。更に、周辺にいる人物も音声を聞き取れるので、重要な情報伝達時に秘匿性を確保できない場合もある。
【0005】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、情報伝達に音声を使用する場合に、騒音とならず且つ秘匿性を確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、無線放送システムを以下のように構成した。
すなわち、本発明に係る無線放送システムは、親局装置と、親局装置から送信された無線信号を受信する子局装置と、子局装置の近傍に配置された処理装置とを備え、親局装置は、処理装置に処理を実行させる指示信号を無線送信し、子局装置は、指示信号を受信した場合に、指示信号を非可聴音帯域に含む音声を出力し、処理装置は、子局装置からの出力音声の非可聴音帯域に含まれる指示信号に基づいて、指示信号に対応する処理を実行することを特徴とする。
【0007】
出力音声の非可聴音帯域に含まれる指示信号としては、種々のタイプの信号を用いることができる。例えば、指示信号として、情報収集を指示する信号、テキスト表示を指示する信号、音声出力を指示する信号などを用いることができる。
【0008】
ここで、一構成例として、親局装置が、指示信号を非可聴音帯域に含む音声データを発生させて、子局装置へ無線送信するようにしてもよい。また、別の構成例として、親局装置が、指示信号を非音声データとして子局装置へ無線送信し、子局装置が、非音声データを非可聴音帯域の音声に変換して出力するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、音声による情報伝達において非可聴音を利用することで、騒音とならず且つ秘匿性を確保できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る無線放送システムの構成例を示す図である。
図2】非可聴音を用いて情報収集を行う作業のシーケンス例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る無線放送システムの構成例を示してある。
本例の無線放送システムは、中継装置11、操作卓12、戸別受信機21、屋外子局22を備えた固定系無線システムをベースとしている。
【0012】
操作卓12は、例えば、防災センター、市役所、町村役場などの防災業務を行う本部の建物内に設置される。中継装置11は、操作卓12に対する操作に応じて放送音声を無線送信する際に使用される無線設備である。戸別受信機21及び屋外子局22は、無線送信された放送音声を受信してスピーカから拡声出力する子局装置である。戸別受信機21は、屋内に設置される形態の子局装置であり、屋外子局は、屋外に設置される形態の子局装置である。本例では、避難所Aの建物内に戸別受信機21が設置され、避難所Bの近くの屋外に屋外子局31が設置されている。
【0013】
従来の運用では音声で情報を伝えるため、伝達したい内容が、戸別受信機21や屋外子局31のスピーカからそのまま流れる。この場合、音声が届く範囲に相手がいて内容を聞かないと、情報伝達が成立しない。また、情報の伝達先の人物のみに秘匿性の高い情報を伝えることは難しい。また、騒音とまで言わないとしても、周辺にいる人物にとっては一切関係のない情報も聞かされることになる。
【0014】
そこで、本システムでは、非可聴音を使用した情報伝達を実現することで、秘匿性や騒音などの問題を回避するようにしている。非可聴音とは、人に聞こえない(又は聞こえ難い)周波数の音である。本例では20k~40kHzの周波数の非可聴音を情報伝達に利用するが、これは一例に過ぎず、他の周波数の非可聴音を使用しても構わない。以下、非可聴音を使用して情報伝達する仕組みについて説明する。
【0015】
情報を発信する側である操作卓12には、非可聴音発信装置13、情報管理装置14、情報表示装置15などが接続されている。
情報を受信する側である戸別受信機21の近傍には、非可聴音受信機22が配備されている。非可聴音受信機22は情報収集装置23に接続されており、情報収集装置23には更に、情報表示装置24、音声発話装置25、情報送信装置26などが接続されている。
同様に、屋外子局31の近傍には、非可聴音受信機32が配備されている。非可聴音受信機32は情報収集装置33に接続されており、情報収集装置33には更に、情報表示装置34、音声発話装置35、情報送信装置36などが接続されている。
【0016】
ここで、戸別受信機21の近傍とは、戸別受信機21から出力される音声を支障なく受信できる範囲のことをいう。戸別受信機21の出力音量に応じて音声を受信可能な範囲は変化するが、実運用で想定される最小の音量を受信可能な位置に非可聴音受信機22が配置されていればよい。非可聴音受信機32についても同様に、屋外子局31から出力される音声を受信可能な位置に配置されていればよい。
【0017】
これら機器の動作について、図2のシーケンス例を参照して説明する。ここでは、本部の作業者が避難所Aの最新情報を取得(収集)する場合を例にして説明する。なお、避難所Aは日常的に人の出入りがある施設であり、普段から常備品などの情報が最新になっている。また、避難所Bは無人の施設であり、常備品などの情報は定期点検時などに更新されている。
【0018】
作業者は、本部にある非可聴音発信装置13を操作して、避難所Aを指定して最新情報の取得指示を入力する。非可聴音発信装置13は、最新情報の取得指示を受け付けると、最新情報の取得指示を内容とした非可聴音帯域の音声データを発生させて、通報(拡声放送)の起動を指示する通報起動信号と共に操作卓12へ送信する(ステップS1)。
【0019】
操作卓12は、通報起動信号及び非可聴音帯域の音声データを、中継装置11を介して無線送信する(ステップS2、S3)。避難所Aにある戸別受信機21は、通報起動信号及び非可聴音帯域の音声データを受信すると、非可聴音帯域の音声データに応じた放送音声をスピーカから拡声出力する(ステップS4)。また、避難所Bにある屋外子局31も、通報起動信号及び非可聴音帯域の音声データを受信すると、非可聴音帯域の音声データに応じた放送音声をスピーカから拡声出力する。なお、避難所Bにある屋外子局31は、通報起動信号及び非可聴音帯域の音声データに含まれた宛先情報(避難所Aにある戸別受信機21を指定)に基づいて、拡声出力しないようにしてもよい。
【0020】
避難所Aにある非可聴音受信機22は、戸別受信機21から出力される放送音声(非可聴音)をマイクで受信し、受信内容を情報収集装置23へ展開する(ステップS5)。情報収集装置23は、非可聴音受信機22により受信された放送音声の非可聴音帯域を解析する。そして、情報収集装置23は、非可聴音帯域に含まれている指示(避難所Aの最新情報の取得指示)を認識すると、避難所Aの最新情報を収集・整理して情報送信装置26へ送信する(ステップS6)。なお、避難所Bにある非可聴音受信機23も、屋外子局31から出力される放送音声(非可聴音)をマイクで受信して情報収集装置33へ展開するが、非可聴音帯域に含まれている指示は情報収集装置33に対するものではないので、特に処理は行わない。
【0021】
情報送信装置26は、情報収集装置23から得た避難所Aの最新情報を、LTE(Long Term Evolution)やWi-Fi等の通信手段を使用して本部の操作卓12へ送信する(ステップS7)。操作卓12は、情報送信装置26から受信した避難所Aの最新情報を情報管理装置14へ展開する(ステップS8)。
【0022】
情報管理装置14は、情報送信装置26から受信した避難所Aの最新情報の表示指示を情報表示装置15へ送信する(ステップS9)。その結果、情報表示装置15に、避難所Aの最新情報(避難所Aの運用状態、避難者数、備蓄品状態など)が表示される。また、情報管理装置14は、避難所Aで追加の処理が必要な場合、その旨を非可聴音で指示する依頼を非可聴音発信装置13に送信する(ステップS10)。その結果、非可聴音発信装置13により追加処理を指示する非可聴音帯域の音声データが発生され、中継装置11を介して無線送信される。
【0023】
以上のように、本例の無線放送システムでは、非可聴音発生装置13が、情報収集装置23に対して避難所Aの最新情報の取得指示を内容とした非可聴音の音声データを発生させて、操作卓12を通じて中継装置11から戸別受信機21へと無線送信し、戸別受信機21が、受信した音声データに応じた放送音声(非可聴音)をスピーカから出力し、情報収集装置23が、非可聴音受信機22により受信された放送音声の非可聴音帯域に含まれる指示に基づいて、避難所Aの最新情報の取得処理を行うように構成されている。
【0024】
このような構成によれば、音声放送を行うために構築されている無線放送システムを利用して、避難所Aにある情報収集装置23に対する情報収集の指示(最新情報の取得指示)を伝達することができる。しかも、情報収集装置23に対する情報伝達に非可聴音を使用するので、避難所Aに不特定多数の人物がいる場合でも騒音とならず、また、秘匿性を確保することができる。
【0025】
ここで、本例では、避難所Aに対する情報伝達に非可聴音を使用する場合を例にして説明したが、避難所Bについても同様である。
また、本例では、避難所Aの最新情報の取得指示を内容とした非可聴音の放送音声のみを戸別受信機21からスピーカ出力しているが、通常の放送音声の非可聴音帯域に指示内容を重畳した態様でスピーカ出力してもよい。このような構成によれば、避難所Aにいる人達に対する放送と同時に、情報収集装置23に対する指示を行うことが可能である。
【0026】
また、本例では、情報収集の指示を伝達する場合を例に説明したが、他の指示の伝達に非可聴音を使用することもできる。一例として、テキスト表示の指示を非可聴音で伝達し、情報表示装置24にテキスト表示させる運用が挙げられる。このような構成によれば、例えば、避難所Aにいる人達に対する放送と同時に、その放送内容をテキスト表示することができるので、聴覚障碍者に対しても遅滞なく情報伝達できるようになる。
【0027】
別の例として、音声出力の指示を非可聴音で伝達し、音声発話装置25に音声出力させる運用が挙げられる。このような構成によれば、例えば、戸別受信機21からスピーカ出力された放送音声と同じものを音声発話装置25から再度出力することで、放送内容の聞き漏らしの抑制などが可能となる。また、例えば、戸別受信機21からスピーカ出力された放送音声とは別の音声を音声発話装置25から出力することで、放送内容の補足や、音声発話装置25の付近の作業員に対する音声指示などが可能となる。
【0028】
また、本例では、本部にある非可聴音発生装置13が、避難所Aに対する指示を内容とした非可聴音の音声データを発生させているが、避難所Aにある戸別受信機21が非可聴音の音声データを発生させるようにしてもよい。この場合、本部にある機器(例えば、操作卓12)が、避難所Aに対する指示を非音声データとして中継装置11から無線送信し、戸別受信機21が、受信した非音声データを非可聴音の音声に変換してスピーカ出力すればよい。
【0029】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記のような構成に限定されるものではなく、上記以外の構成により実現してもよいことは言うまでもない。例えば、上記の実施例のように、本発明に係る親局装置に相当する操作卓12及び非可聴音発信装置13を別々に構成するのではなく、これらを一体の装置としても構わない。また、上記の実施例のように、本発明に係る処理装置に相当する非可聴音受信機22及び情報収集装置23を別々に構成するのではなく、これらを一体の装置としても構わない。
【0030】
また、本発明は、例えば、上記の処理に関する技術的手順を含む方法や、上記の処理をプロセッサにより実行させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【0031】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。更に、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、親局装置から送信された無線信号を受信して拡声出力する子局装置を備えた無線放送システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
11:中継装置、 12:操作卓、 13:非可聴音発信装置、 14:情報管理装置、 15:情報表示装置、 21:戸別受信機、 22:非可聴音受信機、 23:情報収集装置、 24:情報表示装置、 25:音声発話装置、 26:情報送信装置、 31:屋外子局、 32:非可聴音受信機、 33:情報収集装置、 34:情報表示装置、 35:音声発話装置、 36:情報送信装置
図1
図2