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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】ラッピング化粧板用基材
(51)【国際特許分類】
   B27M 3/00 20060101AFI20231017BHJP
   B29C 63/04 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B27M3/00 N
B27M3/00 E
B29C63/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020059549
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021154670
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 達哉
(72)【発明者】
【氏名】竹市 靖規
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 周平
(72)【発明者】
【氏名】水島 邦具
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-124554(JP,A)
【文献】特開2020-033780(JP,A)
【文献】特開2010-236263(JP,A)
【文献】特開2000-274054(JP,A)
【文献】特開平07-071106(JP,A)
【文献】実開昭63-030505(JP,U)
【文献】特開2001-341107(JP,A)
【文献】特開2009-131993(JP,A)
【文献】特開2009-274286(JP,A)
【文献】特開2000-027418(JP,A)
【文献】特開2001-269907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27M 3/00
B29C 63/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に化粧シートが貼着されていない矩形板状のラッピング化粧板用基材であって、
上記基材は、表側に位置する表側木質繊維板層と、裏側に位置する裏側木質繊維板層とが非水系の接着剤を含む防湿層を介して積層一体化されてなり、
上記防湿層は、上記両木質繊維板層の全体に拡がっていて該防湿層の周囲部に上記基材の四周端面に露出する露出部を有し、
上記表側木質繊維板層の表面及び周囲端面の間の角部に面取り部が形成されており、
上記表側木質繊維板層の表面と、上記面取り部と、表側木質繊維板層の周囲端面の少なくとも表側部とにより、上記化粧シートを貼り付ける化粧シート貼着部が設けられていることを特徴とするラッピング化粧板用基材。
【請求項2】
請求項1のラッピング化粧板用基材において、
化粧シート貼着部は、表側木質繊維板層の周囲端面全体と防湿層の露出部とを含んでいることを特徴とするラッピング化粧板用基材。
【請求項3】
請求項1又は2のラッピング化粧板用基材において、
裏側木質繊維板層の裏面に、防湿層まで至らない深さの複数の溝が形成されていることを特徴とするラッピング化粧板用基材。
【請求項4】
請求項3のラッピング化粧板用基材において、
裏側木質繊維板層の裏面に、機能ユニットを収容するための収容部が防湿層まで至らない深さに形成されていることを特徴とするラッピング化粧板用基材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つのラッピング化粧板用基材において、
基材の四周端面のうち化粧シート貼着部を除く部分に、隣接する他のラッピング化粧板と接合するための接合部が設けられていることを特徴とするラッピング化粧板用基材。
【請求項6】
請求項5のラッピング化粧板用基材において、
接合部は、基材の四周端面に設けられて雇い実を嵌合する凹条部を有し、該凹条部の表側に位置する表側凸条部の先端面は、裏側に位置する裏側凸条部の先端面と面一にあるか又は裏側凸条部の先端面よりも突出していることを特徴とするラッピング化粧板用基材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つのラッピング化粧板用基材において、
裏側木質繊維板層の裏面に緩衝層が一体的に接合されていることを特徴とするラッピング化粧板用基材。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つのラッピング化粧板用基材において、
表側及び裏側木質繊維板層は共にMDFからなることを特徴とするラッピング化粧板用基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートが貼着されラッピング化粧板となるラッピング化粧板用基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床材等に施工される化粧板として、例えば特許文献1~3に示されるように、板状の基材に表面からその四周の面取り部を経て端面(木口面)の一部までを覆う1枚の化粧シートを貼着してなり、優れた外観意匠を実現したラッピング化粧板が知られている。
【0003】
上記基材の四周の角部においては、角部を境に隣り合う2辺の端面を覆う化粧シートが裏面同士で当接しており、その当接状態のまま化粧シートの余剰部分が切断され、溶着され或いは折り曲げられる等の加工が行われる。
【0004】
また、特許文献4に示される化粧板では、表面の四周を面取りした板状の基材に貼り付けられる矩形状の化粧シートにその4つの角を切り欠いた切欠部が形成されており、基材に貼り付けられたときに化粧シートの切欠部の端部同士が、基材の角部を境に隣り合う2辺の端面の交差線上で当接して継ぎ目となるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-20306号公報
【文献】特開2017-172155号公報
【文献】特開2017-170703号公報
【文献】特開2016-78383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この基材を中密度繊維板(MDF)や高密度繊維板(HDF)等の木質繊維板で製造する場合、基材に吸湿による反りや寸法変化が生じ易くなる。基材に寸法変化が生じると、製造ラインにおいて、その四周の角部における化粧シートの余剰部等を精度よく加工することが困難になる。特に、特許文献4に示すように、予め切欠きを入れた化粧シートを面取りのある基材の表面に貼着し、切欠きの端部を位置合わせして当接させるような場合、基材の寸法変化に伴い、化粧シートの切欠きの縁部が基材角部の端面間の交差線上に精度よく一致し難くなる。これらにより化粧板の加工歩留まりが下がるという問題が生じる。
【0007】
また、基材に反りがあると、化粧シートの余剰部等を加工する際に基材を強い力で押さえ付けておく必要があり、基材の表面に貼着されている表面シートに押さえた跡や傷が付いて本来の化粧性が損なわれる虞れがある。そのため、化粧シートを貼る前の基材は、できる限り反りや寸法変化を少なくすることが望ましい。
【0008】
尚、反りや寸法変化の少ない合板を基材とすることも考えられるが、加工の際に面取り部や木口端部の角部に繊維質材料のバリが突出し易く、特に面取り部を切削するときの切削刃物の切れが悪くなるとバリの発生が顕著となる。そして、上記基材の四周の角部において隣り合う2辺の端面を覆う化粧シートを裏面同士で当接させ、その当接状態のまま余剰部分を加工する際に、化粧シートの裏面間にバリが挟み込まれてしまい、化粧シート同士の密着不良を招くことになり、或いは、予め切り欠いた化粧シートの端部を基材の面取り部や四周角部に位置決めする際に、化粧シート同士の間からバリがはみ出すことになる。この場合、挟み込んだバリの部分から吸水、吸湿し易くなり、化粧板に反りが生じるという問題がある。
【0009】
さらに、シートを貼着した化粧材の裏面が露出している場合、又は特許文献4に示すように、一部しかシートで覆われていないような場合は、使用後の吸湿等により、化粧板に反りが生じるという問題がある。
【0010】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ラッピング化粧板に用いられる基材の構造を工夫することにより、基材に対しバリの発生し易い加工を施した場合も化粧シートのラッピングをスムースに施すことができるとともに、強い力による基材の押さえ付け等を要することなく、その四周角部における化粧シートの余剰部や当接部を精度よく加工できるようにして、加工精度、加工スピード及び加工歩留まりを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、この発明では、ラッピング化粧板用の基材としてMDF等の木質繊維板を用いるに当たり、その木質繊維板の層は表裏2層として、両繊維板層同士を防湿層を介在させて一体化し、防湿層により両木質繊維板層の寸法変化や反りを抑制するようにした。
【0012】
具体的には、第1の発明は、表面に化粧シートが貼着されていない矩形板状のラッピング化粧板用基材が対象である。
【0013】
このラッピング化粧板用基材は、表側に位置する表側木質繊維板層と、裏側に位置する裏側木質繊維板層とが非水系の接着剤を含む防湿層を介して積層一体化されてなり、上記防湿層は、上記両木質繊維板層の全体に拡がっていて該防湿層の周囲部に上記基材の四周端面に露出する露出部を有し、上記表側木質繊維板層の表面及び周囲端面の間の角部に面取り部が形成されており、上記表側木質繊維板層の表面と、上記面取り部と、表側木質繊維板層の周囲端面の少なくとも表側部とにより、上記化粧シートを貼り付ける化粧シート貼着部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
この第1の発明では、ラッピング化粧板用基材は、表側及び裏側木質繊維板層が防湿層を介して積層一体化され、その防湿層は両木質繊維板層の全体に拡がっていて該防湿層の周囲部の露出部で基材の四周端面に露出している。そして、表側木質繊維板層の表面及び周囲端面の間の角部に面取り部が形成され、この表側木質繊維板層の表面、面取り部、及び周囲端面の少なくとも表側部により形成された化粧シート貼着部に化粧シートが貼り付けられる。また、基材の四周の角部において角部を境に隣り合う2辺の端面を覆う化粧シートは裏面同士で当接し、その当接状態のまま余剰部が切断され、溶着され或いは折り曲げられて、余剰部の加工が行われるか、予め化粧シートに切欠形成されている切欠きの端部同士を当接させるように、この表側木質繊維板層の表面、面取り部及び周囲端面の少なくとも表側部により形成された化粧シート貼着部に化粧シートが貼り付けられるかして、ラッピング化粧板となる。
【0015】
そのとき、基材は表側及び裏側木質繊維板層の2層を有し、それら木質繊維板層が、両木質繊維板層の全体に拡がって基材の四周端面に露出する防湿層を介して積層一体化されているので、防湿層両側の表側及び裏側木質繊維板層の吸湿による伸縮歪みは抑制され、基材の寸法変化や反りが少なくなり、寸法安定性が良くなる。そのため、製造ラインにおいて、上記のように基材の四周の角部における化粧シートの余剰部又は切欠き端部の当接部を加工する際に精度よく加工することができ、製造ラインのスピードを上げるとともに、ラッピング化粧板の加工精度、加工スピード及び加工歩留まりが向上して、その製造コストを下げることができる。
【0016】
また、基材に反りが生じ難いので、化粧シートの余剰部を加工する際に基材を厚さ方向に強い力で押さえ付けておく必要はなく、基材の表面に貼着されている表面シートに押さえた跡や傷が付く虞れがなく、ラッピング化粧板の本来の化粧性を高めることができる。しかも、基材の化粧シート貼着部に貼着される化粧シートが防湿性を有するので、表側木質繊維板層と裏側木質繊維板層との間に設けられた防湿層との相乗効果により、ラッピング化粧板の防湿効果を高めることができる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明のラッピング化粧板用基材において、化粧シート貼着部は、表側木質繊維板層の周囲端面全体と防湿層の露出部とを含んでいることを特徴とする。
【0018】
この第2の発明では、化粧シート貼着部は、基材の四周端面に露出する防湿層の露出部を含み、この化粧シート貼着部に化粧シートが貼着されてラッピング化粧板が形成される。このラッピング化粧板では、防湿性を有する化粧シートが基材の四周端面に露出する防湿層の膨出部に当接して、その化粧シートと防湿層とで表側木質繊維板層の全体が確実に防湿状態に包まれることとなり、上記のように基材の吸湿による伸縮歪みが防湿層により有効に抑制されて、基材の寸法安定性が良くなるとともに、さらには化粧シートが吸湿により基材から剥がれ難くなり、ラッピング化粧板の高い防湿性及び化粧性を確実に実現することができる。
【0019】
第3の発明は、第1又は第2の発明のラッピング化粧板用基材において、裏側木質繊維板層の裏面に、防湿層まで至らない深さの複数の溝が形成されていることを特徴とする。
【0020】
この第3の発明では、裏側木質繊維板層の裏面に複数の溝が形成されているので、基材の剛性を下げることができる。そのため、基材の化粧シート貼着部に化粧シートを貼着して、基材の四周の角部における化粧シートの余剰部を加工する際に、仮に基材に反りが生じていたとしても、剛性の低い基材を強い力で押さえ付けることなく加工でき、表面シートに押さえた跡や傷が付いてラッピング化粧板の化粧性が損なわれることはない。
【0021】
また、ラッピング化粧板の剛性を下げるために複数の裏溝加工を予め施した場合も、表側木質繊維板層は表面側の化粧シート貼着部が防湿性を有する化粧シートに覆われるとともに、裏面側が防湿層で被覆される。これにより、裏側木質繊維板層の裏面に設けられた複数の溝間から湿気が入った場合も、表側木質繊維板層と裏側木質繊維板層の間の防湿層により表側木質繊維板層への湿気の影響を防止できるとともに、裏側木質繊維板層は、複数の溝で分断されているので、ラッピング化粧板を反らせる変形の原因にならず、防湿性に優れたラッピング化粧板を得ることができる。
【0022】
さらに、表側木質繊維板層及び裏側木質繊維板層の2層構成からなる基材がどちらも木質繊維板からなるため、裏溝加工した場合もバリが発生し難く、化粧シート同士の当接部又は余剰部にバリが噛みこむことなく、防水、耐湿性にすぐれたラッピング化粧板を提供することができる。
【0023】
第4の発明は、第3の発明のラッピング化粧板用基材において、裏側木質繊維板層の裏面に、機能ユニットを収容するための収容部が防湿層まで至らない深さに形成されていることを特徴とする。
【0024】
この第4の発明では、ラッピング化粧板用の基材の裏面に予め機能ユニットの収容部が形成されているので、化粧シートが貼着された状態の基材の裏面に機能ユニットの収容部を形成する必要がなくなり、その場合の表面の化粧シートの傷付きを回避することができる。また、基材においては、裏面に収容部が形成されている部分と形成されていない部分とで厚さの違いがあり、それに起因して吸湿による寸法変化が生じようとしても、表側木質繊維板層と裏側木質繊維板層との間の防湿層により表側木質繊維板層への湿気の影響を防止できるとともに、収容部が設けられた裏側木質繊維板層は、複数の溝で分断されているので、ラッピング化粧板を反らせる変形の原因にならず、防湿性に優れたラッピング化粧板を得ることができる。
【0025】
第5の発明は、第1~第4の発明のいずれか1つのラッピング化粧板用基材において、基材の四周端面のうち化粧シート貼着部を除く部分に、隣接する他のラッピング化粧板と接合するための接合部が設けられていることを特徴とする。
【0026】
この第5の発明では、基材の寸法安定性が防湿層により良くなっているので、その基材の四周端面に化粧板同士を接合するための接合部が設けられていても、製造ラインにおいて、基材の四周の角部における化粧シートの余剰部を加工する際に精度よく加工することができるとともに、ラッピング化粧板の化粧性及び防湿効果を高めることができる。
【0027】
第6の発明は、第5の発明のラッピング化粧板用基材において、接合部は、基材の四周端面に設けられて雇い実を嵌合する凹条部を有し、該凹条部の表側に位置する表側凸条部の先端面は、裏側に位置する裏側凸条部の先端面と面一にあるか又は裏側凸条部の先端面よりも突出していることを特徴とする。
【0028】
この第6の発明では、隣接するラッピング化粧板同士は、各々の基材の四周端面の凹条部に雇い実を嵌合することで接合される。凹条部の表側凸条部の先端面は裏側凸条部の先端面と面一にあるか又は裏側凸条部の先端面よりも突出しているので、製造ラインで基材の四周角部における化粧シートの両側部を基材の表側凸条部先端面に対し装置の治具で押し付けた状態で、化粧シートの余剰部に対する加工、又は予め化粧シートに切欠形成されている切欠きの端部同士を当接させて当接部を形成する加工を行う際に、その治具が基材の厚さ方向全体を押さえる治具であっても、化粧シートの両側部を裏側凸条部と干渉することなく押さえることができる。そのため、凹条部の裏側凸条部と干渉しないように表側凸条部のみを狙って化粧シートの両側部を押さえるための治具を備えた特殊な設備が不要となり、設備やその設計の簡略化を図ることができるだけでなく、化粧シートの余剰部や当接部の精度の良い加工を確実にかつスピーディに行うことができる。
【0029】
第7の発明は、第1~第6の発明のいずれか1つのラッピング化粧板用基材において、裏側木質繊維板層の裏面に緩衝層が一体的に接合されていることを特徴とする。
【0030】
この第7の発明では、ラッピング化粧板用基材の裏面に緩衝層が一体的に接合されているので、ラッピング化粧板を下地材の不陸に追従できる直張り床材や壁材、緩衝層を遮音性能に配慮したものとした防音床材、緩衝層を転倒時の耐衝撃性能に配慮したものとした転倒衝撃床材等に用いることができ、それら用途のラッピング化粧板の化粧性、防湿効果、寸法安定性を高めることができる。
【0031】
第8の発明は、第1~第7の発明のいずれか1つのラッピング化粧板用基材において、表側及び裏側木質繊維板層は共にMDFからなることを特徴とする。こうすれば、好適な表側及び裏側木質繊維板層が得られる
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明によると、表面に化粧シートが貼着されていない矩形板状のラッピング化粧板用基材に対し、その基材は表側及び裏側木質繊維板層が非水系の接着剤を含む防湿層を介して積層一体化されたものとし、防湿層は、両木質繊維板層の全体に拡がっていて該防湿層の周囲部に基材の四周端面に露出する露出部を設け、表側木質繊維板層の表面、面取り部及び周囲端面の少なくとも表側部に化粧シート貼着部を設けた。このことにより、化粧シートが貼着される前段階の基材の吸湿による伸縮歪みを防湿層により抑制して寸法安定性を良好に確保し、製造ラインにおいて基材の四周角部における化粧シートの余剰部又は切欠き端部の当接部を精度よく加工することができ、製造ラインのスピードの高速化や、ラッピング化粧板の加工精度、加工スピード及び加工歩留まりの向上により製造コストの低減を図ることができる。また、化粧シートの余剰部を加工する際に基材を強い力で押さえ付けて表面シートに押さえた跡や傷が付くことを防いで、ラッピング化粧板の化粧性を高めることができる。さらに、基材の防湿層と化粧シートの防湿性とによりラッピング化粧板の防湿効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明の実施形態1に係るラッピング化粧板を示す断面図である。
図2図2は、実施形態1に係るラッピング化粧板用基材を示す断面図である。
図3図3は、防湿層の拡大断面図である。
図4図4は、実施形態2に係るラッピング化粧板を示す断面図である。
図5図5は、実施形態3に係るラッピング化粧板を示す断面図である。
図6図6は、実施形態4に係るラッピング化粧板を示す断面図である。
図7図7は、実施形態5に係るラッピング化粧板を示す断面図である。
図8図8は、実施形態6に係るラッピング化粧板を示す断面図である。
図9図9は、実施形態7に係るラッピング化粧板を示す断面図である。
図10図10は、実施形態8に係るラッピング化粧板を示す断面図である。
図11図11は、実施形態9に係るラッピング化粧板を示す断面図である。
図12図12は、実施形態10に係るラッピング化粧板を示す断面図である。
図13図13は、実施形態11に係るラッピング化粧板を示す断面図である。
図14図14は、実施形態12に係るラッピング化粧板を示す断面図である。
図15図15は、実施形態13に係るラッピング化粧板を示す断面図である。
図16図16は、実施形態14に係るラッピング化粧板を示す断面図である。
図17図17は、ラッピング化粧板の基材の四周の角部において隣り合う2辺の端面を覆う化粧シートを裏面同士で当接させるためのクランプ装置を概略的に示す斜視図である。
図18図18は、化粧シートの余剰部を切断するための角部カット装置を概略的に示す斜視図である。
図19図19は、化粧シートの余剰部を切断した切除部を加熱により軟化させて基材外面に沿うように馴染ませる角部成形装置を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0035】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係るラッピング化粧板Aを示し、このラッピング化粧板Aは、例えば1×6サイズ(303×1818mm)の細長い板状のもので、基材1と、その基材1に貼着された化粧シート30とを備えている。
【0036】
図2に示すように、上記基材1は、例えば1×6サイズの矩形板状のものであり、表側に位置する表側木質繊維板層2と、裏側に位置する裏側木質繊維板層3とが防湿層4を介して積層一体化されている。図1及び図2は、それぞれラッピング化粧板A及び基材1を長さ方向に沿って切断した断面状態で示している。
【0037】
表側及び裏側木質繊維板層2,3は、いずれも木質繊維板により形成されている。この木質繊維板は、例えばJIS A 5905に定めるMDFやハードボード等が用いられる。このJIS規格に厳密に合致しない繊維板でもよく、合致する繊維板で使用される木質繊維を接着剤を添加して板状に圧縮したものであれば用いることができる。例えばMDFを用いる場合には、床材、壁材、天井材等の用途に応じて求められる防水性能が異なるので、それら用途に応じた接着剤を選択すればよい。
【0038】
表側及び裏側木質繊維板層2,3の寸法変化率は同程度であるのが好ましい。また、表側及び裏側木質繊維板層2,3は共にMDFを用いるのが好ましく、一般的な化粧板用途の厚さや実加工(後述する接合部)を考慮した場合、表側木質繊維板層2は例えば厚さ1.0mm~4.0mm程度のMDFを、また裏側木質繊維板層3は表側木質繊維板層2よりも厚く、例えば厚さ2.0mm~15mm程度のMDFをそれぞれ使用するのがよい。こうすれば、好適な表側及び裏側木質繊維板層2,3が得られる。
【0039】
上記裏側木質繊維板層3の裏面には、例えば基材1の幅方向に延びて裏側木質繊維板層3の表面(防湿層4)まで至らない深さの複数の溝10,10,…が基材1の長さ方向に並んだ状態で設けられている。溝10の幅は例えば1.2mm程度であり、そのピッチは例えば10mm程度である。また、裏側木質繊維板層3において溝10が形成された部分の残りの厚さは、例えば0.5mm程度以下になっている。尚、複数の溝10,10,…は、基材1の幅方向だけでなく基材1の長さ方向に延びるように形成されて例えば平面視で格子状に配置されていていてもよく、その場合は隣り合う溝10,10間の部分が矩形断面の柱状部になる。
【0040】
上記防湿層4は非水系の接着剤を含んでいる。この非水系の接着剤としては、エポキシ樹脂系やウレタン樹脂系の接着剤、ホットメルト樹脂接着剤等が用いられ、好適にはポリウレタン系の反応性ホットメルト接着剤が用いられる。
【0041】
具体的には、防湿層4は、防湿性を有する防湿シートと非水系の接着剤とを組み合わせた複合タイプ、又は非水系の接着剤のみからなる接着剤タイプで構成されている。前者の複合タイプの防湿層4は、図3(a)に示すように、防湿シート5とその表裏両側に位置する非水系の接着剤6,6とを組み合わせたものであり、表側及び裏側木質繊維板層2,3となる木質繊維板間に上記防湿シート5を配置して、両木質繊維板同士を防湿シート5を介して非水系の接着剤6,6により積層一体化することで、防湿シート5及びその表裏両側の非水系の接着剤6,6により形成される。防湿シート5は厚さが例えば30μm~800μmの樹脂シートで、該樹脂シートの両面を接着剤6が接着できるようにシーラー処理したもの、樹脂シートの両面に紙を熱融着したもの、アルミニウム箔や防湿性のある樹脂含浸紙の両面に紙を接着したもの等が用いられる。例えば、上記樹脂シートが30μmよりも薄い場合は、強度が不足し、シートが破損して防湿効果が失われる可能性が高くなる。800μmよりも厚い場合は、防湿効果は高くなるが、熱による膨張が大きくなるので、好ましくない。
【0042】
後者の接着剤タイプの防湿層4は、表側木質繊維板層2となる木質繊維板の裏面と、裏側木質繊維板層3となる木質繊維板の表面との少なくとも一方に例えばポリウレタン系の反応性ホットメルト接着剤を塗布して、両木質繊維板を防湿性を有するポリウレタン系の反応性ホットメルト接着剤により積層一体化することで、図3(b)に示すように、その一定厚さ(例えば80μm~150μm)を持った反応性ホットメルト接着剤6そのものにより形成される。防湿性を有するポリウレタン系の反応性ホットメルト接着剤6として、例えばDIC株式会社製の商品名「FH450」又は「FH470」を用いることができる。ポリウレタン系の反応性ホットメルト接着剤6の場合、80g/mの塗布量でも十分な防湿性能が担保され、塗布量は80g/m~150g/mとするのが好ましく、より好ましくは90g/m~120g/mとすればよい。接着剤6の塗布量が80g/mよりも少ないと、防湿性能が劣るだけでなく、接着剤6を均一に塗布することが困難になる。接着剤6の塗布量が150g/mを超えると、やはり接着剤6を均一に塗布することが難しくなるだけでなく、その接着剤6を防湿層4とするために所定の厚さを確保したまま冷却するのに時間を要し、生産効率が悪くなるからである。
【0043】
上記防湿層4は表側及び裏側木質繊維板層2,3の全体に亘って略均一な厚さに保たれるように配置され、その周囲部は上記基材1の四周端面に露出している。このことで防湿層4はその周囲部に、基材1の四周端面に露出する露出部4aを有する。
【0044】
基材1の四周端面には、隣接する他のラッピング化粧板Aと接合するための接合部としての雌実凹条部14及び雄実凸条部18が設けられており、隣接するラッピング化粧板A,A同士が本実構造により接合されるようになっている。これら雌実凹条部14及び雄実凸条部18は、表側及び裏側木質繊維板層2,3が防湿層4を介して積層一体化されかつ四周端面が表面と直交する平面とされた矩形板状の基材用板材1′(図1及び図2で仮想線にて示す)において、その四周端面を加工することにより形成されている。具体的には、基材1の四周端面において、互いに対向する2辺の一方に雌実凹条部14が、また他方に雄実凸条部18がそれぞれ形成され(図19参照)、隣接するラッピング化粧板A,Aを、一方の化粧板Aの雌実凹条部14に他方の化粧板Aの雄実凸条部18を嵌合することによって接合するようにしている。
【0045】
雌実凹条部14は、基材用板材1′の端面において、その厚さ方向中間部を表側木質繊維板層2の裏側部と裏側木質繊維板層3の表側部とに亘るように断面矩形の溝状に切り欠いたものであり、その雌実凹条部14を除いた基材1の端面の表側に表側凸条部15が、また裏側に裏側凸条部16がそれぞれ形成され、防湿層4周囲の露出部4aは雌実凹条部14の溝底面に位置している。表側凸条部15の先端部は、その突出寸法が裏側凸条部16よりも短くなるように切除されている。この切除により形成された表側凸条部15の先端面15aは表側木質繊維板層2の周囲端面の一部を構成していて、裏側凸条部16の先端面16aよりも基材1の対向辺側(雌実凹条部14の底側)にずれている。上記裏側凸条部16の先端面16aが元の基材用板材1′の端面である。
【0046】
一方、雄実凸条部18は、基材用板材1′の端面において、その厚さ方向両側部である表側木質繊維板層2の表側部と裏側木質繊維板層3の裏側部とを厚さ方向中間部が残るように断面矩形に切り欠くことで、その残った部分で構成されるもので、雄実凸条部18の表側に表側切欠部19が、また裏側に裏側切欠部20がそれぞれ形成され、防湿層4周囲の露出部4aは雄実凸条部18の先端面に位置している。表側切欠部19は裏側切欠部20に比べ、基材1の対向辺に向かって多く切り欠かれており、表側切欠部19において雄実凸条部18の基端部に位置する切欠端面19aは表側木質繊維板層2の周囲端面の残部を構成していて、裏側切欠部20の同切欠端面20aに対し対向辺側にずれている。雄実凸条部18の先端面が元の基材用板材1′の端面である。
【0047】
さらに、上記基材1の表側木質繊維板層2には、その表面2a及び周囲端面(表側凸条部15の先端面15a及び表側切欠部19の切欠端面19a)の間の角部が斜めに面取りされて面取り部2bが設けられている。具体的には、この面取り部2bは、表側木質繊維板層2の表面2aと、雌実凹条部14の表側における表側凸条部15の先端面15a及び雄実凸条部18における表側切欠部19の切欠端面19aとの間の角部を斜めに切除することで形成されている。
【0048】
上記化粧シート30は、例えば厚さ150μm程度のオレフィン樹脂等の樹脂シートにより形成され、防湿性を有している。化粧シート30の表面には例えば木目や石目等が印刷されている。化粧シート30は、例えば湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤や酢酸ビニル系樹脂等の接着剤により表側木質繊維板層2に接着されて、表面化粧層を構成している。
【0049】
そして、図1及び図2に示すように、上記基材1には、上記化粧シート30を貼り付けるための化粧シート貼着部27が形成されている。具体的に、化粧シート貼着部27は、上記表側木質繊維板層2の表面2aと、表側木質繊維板層2四周の面取り部2bと、表側木質繊維板層2の周囲端面であって、雌実凹条部14表側の表側凸条部15における先端面15aの表側部分及び雄実凸条部18の表側切欠部19の切欠端面19aの表側部分とにより形成されている。すなわち、隣接するラッピング化粧板A,A同士を接合するための接合部としての雌実凹条部14及び雄実凸条部18は、基材1の四周端面のうち化粧シート貼着部27を除く部分に形成されている。そして、この化粧シート貼着部27に上記化粧シート30が貼り付けられることで、化粧シート30を表面化粧層としたラッピング化粧板Aが形成されている。尚、上記化粧シート貼着部27は基材1の外表面であるが、説明の都合上、図では外表面近傍の内側に点線にて記載している。
【0050】
ラッピング化粧板Aは、その製造ラインにおいて、表側木質繊維板層2と裏側木質繊維板層3とが防湿層4を介して積層一体化された基材用板材1′に対し、接合部としての雌実凹条部14及び雄実凸条部18が加工により形成されて基材1となり、その後に基材1の化粧シート貼着部27に化粧シート30が貼り付けられることで製造される。
【0051】
ラッピング化粧板Aの製造ラインで、基材1の化粧シート貼着部27に化粧シート30を貼り付ける手順について説明する。この手順は、特許文献1に記載されている手順と同様であり、裏面に接着剤が塗布された化粧シート30を基材1の化粧シート貼着部27に貼り付け得る大きさにカットする。接着剤は、基材1の化粧シート貼着部27に塗布することもできる。そのカットされた化粧シート30を化粧シート貼着部27に位置合わせして重ね、まず、表側木質繊維板層2の表面2aに接着する。
【0052】
次いで、化粧シート30において基材1の一方向に互いに対向する両縁部を基材1の表側木質繊維板層2の面取り部2bに沿って折り曲げて、その折り曲げられた化粧シート10の縁部を基材1の面取り部2b、雌実凹条部14表側にある表側凸条部15の先端面15aの表側部分及び雄実凸条部18の表側切欠部19の切欠端面19aの表側部分に押し付け、かつ接着剤を固化させて接着することで、化粧シート30周縁の一方の対向辺部に折曲げ部を形成する。
【0053】
その後、同様にして今度は、化粧シート30において基材1の他方向に互いに対向する両縁部を基材1の表側木質繊維板層2の面取り部2bに沿って折り曲げて、その折り曲げられた化粧シート10の縁部を基材1の面取り部2b、雌実凹条部14表側にある表側凸条部15の先端面15aの表側部分及び雄実凸条部18の表側切欠部19の切欠端面19aの表側部分に押し付け、かつ接着剤を固化させて接着することで、化粧シート30周縁の他方の対向辺部に折曲げ部を形成する。
【0054】
こうして化粧シート30の周縁に折曲げ部が形成されると、図17及び図18に示すように、基材1の四周の角部においてその角部を境に隣り合う2辺の端面を覆う化粧シート30の上記折曲げ部が裏面同士で当接して、その各角部に基材1から食み出した余剰部31が形成される。
【0055】
この余剰部31は、クランプされて挟圧されることで、裏面同士が重ね合わされた状態となるように成形加工される。このとき、図17に示すクランプ装置35が使用される。このクランプ装置35は、図外のアクチュエータにより、基材1の隣接する2辺の角部に向かって前進後退する板状のベース部材36(治具)を備えている。このベース部材36の先端部は略L字状に直角に切り欠かれ、その切欠部分の内面両側にはそれぞれ例えば水平面内で互いに直交するように配置された1対の押し付け定規38,38が取付固定されている。ベース部材36を前進させることで、これらの押し付け定規38,38により余剰部31両側の化粧シート30の折曲げ部を押し、その折曲げ部を、基材1の隣接する2辺の角部に位置する雌実凹条部14表側の表側凸条部15の先端面15a及び雄実凸条部18における表側切欠部19の切欠端面19aに押し付けて、ベース部材36及び後述するクランプ部材39の位置決めを行うようになっている。
【0056】
ベース部材36の上面には、上記両押し付け定規38,38の上方に位置する開閉可能なクランプ部材39が昇降可能に支持されている。このクランプ部材39はペンチと同様の構造を有するもので、図外の昇降アクチュエータ及び開閉アクチュエータによりそれぞれ昇降して開閉するようになっている。ベース部材36が押し付け定規38,38で位置決めされたときに、クランプ部材39を開いた状態で下降させ、化粧シート30の余剰部31を挟んで加圧することで、その余剰部31を化粧シート30の折曲げ部の裏面同士が確実に接着するように成形加工する。
【0057】
このことで、各余剰部31は基材1周縁の4つの角部において、例えば隣接する2辺に対し例えば等間隔の135°の角度をあけた方向に向くように成形される。
【0058】
この後、上記化粧シート30の各余剰部31は、基材1の間際部分で両折曲げ部が重なった状態で切除加工される。このとき、図18に示す角部カット装置40が使用される。この角部カット装置40は、基本的構造が上記クランプ装置35と同じであり、クランプ部材39がニッパー41に置き換わったものである(角部カット装置40において、クランプ装置35と同じ部分については同じ符号を付して説明する)。
【0059】
すなわち、角部カット装置40は、クランプ装置35と同じ構造の板状のベース部材36を備え、このベース部材36は図外のアクチュエータにより、基材1の隣接する2辺の角部に向かって前進後退する。ベース部材36を前進させることで、押し付け定規38,38を化粧シート30の余剰部31両側の折曲げ部に上から押し付けることで、ベース部材36及び後述するニッパー41の位置決めを行う。
【0060】
ベース部材36の上面には、上記両押し付け定規38,38の上方に位置する開閉可能な刃部41aを有するニッパー41が昇降可能に支持され、このニッパー41は図外の昇降アクチュエータ及び開閉アクチュエータによりそれぞれ昇降し刃部41aが開閉するようになっており、ベース部材36が押し付け定規38,38で位置決めされたときに、刃部41aを開いた状態で下降させて余剰部31を挟み、刃部41aを閉じて余剰部31の基材1側寄り部位をカットし、余剰部31を除去加工するようにしている。
【0061】
最後に、上記各余剰部31の除去部分を加熱により軟化させて基材1外面に沿うように馴染ませる。このとき、図19に示す角部成形装置45が用いられる。この角部成形装置45は、図外のアクチュエータにより、基材1の隣接する2辺の角部に向かって前進後退するベース部材46(治具)を備えている。ベース部材46の先端部には加熱プレート47が取り付けられ、この加熱プレート47の前面には内面が互いに直交するように略L字状に直角に切り欠かれた凹部47aが形成されており、ベース部材46の前進により加熱プレート47の凹部47aを余剰部31の除去部分に押し当てて加熱することで、除去部分を溶融状態として基材1外面に沿うように成形加工する。或いは、除去部分(化粧シート30)が部分的に溶融してその切断面同士が熱融着する程度まで加熱する。
【0062】
以上のようにして、ラッピング化粧板Aの製造ラインで基材1の化粧シート貼着部27に対する化粧シート30の貼り付けが行われる。
【0063】
本実施形態では、ラッピング化粧板Aの基材1は表側及び裏側木質繊維板層2,3の2層を有し、それら木質繊維板層2,3が、両木質繊維板層2,3の全体に拡がる防湿層4を介して積層一体化され、その防湿層4は周囲部の露出部4aで基材1の四周端面に露出している。このため、防湿層4両側の表側及び裏側木質繊維板層2,3の吸湿による伸縮歪みが防湿層4によって抑制され、基材1の四周端面に化粧板A,A同士を接合するための接合部として雌実凹条部14や雄実凸条部18が設けられていても、基材1の吸湿による寸法変化や反りが少なくなり、その寸法安定性が良好に保たれる。従って、ラッピング化粧板Aの製造ラインにおいて、上記のように、基材1の化粧シート貼着部27(表側木質繊維板層2の表面2a、面取り部2b、表側木質繊維板層2の雌実凹条部14表側の表側凸条部15の先端面15aの表側部分及び雄実凸条部18の表側切欠部19の切欠端面19aの表側部分)に化粧シート30を貼り付け、基材1の四周の角部において隣り合う2辺の端面を覆う化粧シート30が裏面同士で当接した余剰部31をクランプ装置35、角部カット装置40、角部成形装置44によりそれぞれ加工する際、各装置35,40,44に対する余剰部31の相対的な位置が基材1の吸湿による寸法変化や反りに伴って大きく変動することがなく、両者の相対位置は常に安定して保たれるようになり、各装置35,40,44による余剰部31の加工を精度よく行うことができる。このことで、ラッピング化粧板Aの製造ラインのスピードを上げるとともに、その加工精度、加工スピード及び加工歩留まりが向上して、その製造コストを下げることができる。
【0064】
また、こうして基材1に吸湿による反りが生じ難いので、基材1の四周の角部における化粧シート30の余剰部31を各装置35,40,44により加工する際に基材1を厚さ方向に強い力で押さえ付けておく必要がない。しかも、基材1の裏側木質繊維板層3の裏面に複数の溝10,10,…が形成されているので、基材1の剛性を下げることができ、仮に基材1に反りが生じていたとしても、剛性の低い基材1を強い力で押さえ付けることなく加工することができる。このことにより、基材1の表面に貼着されている表面シート30に押さえた跡や傷が付く虞れはなく、ラッピング化粧板Aの本来の化粧性を高めることができる。
【0065】
また、ラッピング化粧板Aの剛性を下げるために、予め基材1の裏面に複数の溝10,10,…が加工されていても、表側木質繊維板層2は表面側の化粧シート貼着部27が防湿性を有する化粧シート30に覆われるとともに、裏面側が防湿層4で被覆される。これにより、裏側木質繊維板層3の裏面に設けられた複数の溝10,10,…間から湿気が入った場合も、表側木質繊維板層2と裏側木質繊維板層3との間の防湿層4により表側木質繊維板層2への湿気の影響を防止できるとともに、裏側木質繊維板層3は、複数の溝10,10,…で分断されているので、ラッピング化粧板Aを反らせる変形の原因にならず、防湿性に優れたラッピング化粧板Aを得ることができる。
【0066】
さらに、表側木質繊維板層2及び裏側木質繊維板層3の2層構成からなる基材1がどちらも木質繊維板からなるため、裏溝加工した場合もバリが発生し難く、化粧シート30同士の余剰部31にバリが噛みこむことなく、防水、耐湿性にすぐれたラッピング化粧板Aを提供することができる。
【0067】
また、基材1の化粧シート貼着部27に貼着される化粧シート30が防湿性を有するので、防湿層4による基材1の防湿性と相俟って、ラッピング化粧板Aの防湿効果も高めることができる。
【0068】
(実施形態2)
図4は本発明の実施形態2を示し、ラッピング化粧板Aの基材1において、隣接するラッピング化粧板A,A同士を接合するための接合部を変更したものである。尚、この実施形態2以下の各実施形態の説明では、実施形態1の図1に示すラッピング化粧板A、及び図2に示す基材1と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0069】
この実施形態2では、隣接するラッピング化粧板A,A同士が雇い実構造により接合されるようになっている。すなわち、基材1の四周端面には、互いに対向する2辺の両方に雌実凹条部14,14,…が形成されている。この各雌実凹条部14は、実施形態1と同様に、基材用板材1′の端面において、その厚さ方向中間部を表側木質繊維板層2の裏側部と裏側木質繊維板層3の表側部とに亘るように断面矩形の溝状に切り欠いたものであるが、表側凸条部15の先端部は切除されておらず、表側凸条部15の先端面15aは裏側凸条部16の先端面16aと同じ平面上に位置するように面一であり、これらの先端面15a,16aがいずれも元の基材用板材1′の端面となっている。そして、雌実凹条部14には図4で仮想線にて示す細長い板状の雇い実17の幅方向半部が嵌合されるようになっており、隣接するラッピング化粧板A,A同士はそれぞれの雌実凹条部14,14に嵌合された雇い実17により接合される。その他の構成は実施形態1と同様である。
【0070】
したがって、この実施形態でも実施形態1と同様の作用効果が得られる。また、この実施形態では、基材1の四周端面の各雌実凹条部14の表側凸条部15の先端面15aが裏側凸条部16の先端面16aと面一に位置しているので、以下の効果が得られる。
【0071】
すなわち、実施形態1のように、基材1の雌実凹条部14表側の表側凸条部15の先端面15aが裏側凸条部16の先端面16aよりも基材1の対向辺側(雌実凹条部14の底部側)に後退し、さらには雄実凸条部18の表側にその先端面よりも対向辺側に後退した表側切欠部19があると、表側凸条部15の先端面15aや表側切欠部19における切欠端面19aに対し、基材1の四周角部における化粧シート30の余剰部31両側の折曲げ部をクランプ装置35や角部カット装置40における押し付け定規38,38により押し付けた状態で、該余剰部31を加工したり、或いは角部成形装置45における加熱プレート47を押し付け定規38,38と同様に押し付けた状態で、化粧シート30の余剰部31を成形したりする必要がある。つまり、押し付け定規38,38や加熱プレート47は、雌実凹条部14裏側の裏側凸条部16や雄実凸条部18と干渉しないように表側凸条部15のみ及び表側切欠部19のみを狙って化粧シート30の余剰部31両側の折曲げ部を押さえる必要があり、その分、構造が特殊になる。
【0072】
これに対し、本実施形態のように、基材1の四周端面の各雌実凹条部14の表側凸条部15の先端面15aが裏側凸条部16の先端面16aと面一に位置していれば、押し付け定規38,38や加熱プレート47は基材1の厚さ方向全体を押さえる構造のものを使用してもよく、余剰部31両側の折曲げ部を裏側凸条部16と干渉することなく押さえることができる。そのため、化粧シート30の余剰部31両側の折曲げ部を押さえるための押し付け定規38,38や加熱プレート47としては、実施形態1のように表側凸条部15や表側切欠部19のみを狙う特殊な構造が不要となり、クランプ装置35、角部カット装置40及び角部成形装置45は簡単な構造の設備で済み、設備の簡略化を図ることができる。それだけでなく、化粧シート30の余剰部31に対する精度の良い加工を確実にかつスピーディに行うことができる。
【0073】
尚、この実施形態では、基材1の四周端面の雌実凹条部14の表側凸条部15の先端面15aを裏側凸条部16の先端面16aと面一にしているが、これに代えて、表側凸条部15の先端面15aを裏側凸条部16の先端面16aよりも突出させてもよい。その場合も、化粧シート30の余剰部31両側の折曲げ部を裏側凸条部16と干渉することなく押さえることができ、同様の効果が得られる。
【0074】
(実施形態3)
図5は本発明の実施形態3を示す。この実施形態では、ラッピング化粧板Aにおける基材1の雌実凹条部14及び雄実凸条部18は、実施形態1のように表側及び裏側木質繊維板層2,3に跨がるように形成されておらず、裏側木質繊維板層3のみの四周端面に形成されている。表側及び裏側木質繊維板層2,3間にある防湿層4周囲の露出部4aは、雌実凹条部14表側の表側凸条部15の先端面15a及び雄実凸条部18表側の表側切欠部19の切欠端面19aに位置している。
【0075】
その他の構成は実施形態1と同様である。従って、この実施形態においても、実施形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0076】
(実施形態4)
図6は実施形態4を示し、上記実施形態2(図4参照)に係るラッピング化粧板Aにおいて、実施形態3と同様に、隣接するラッピング化粧板A,A同士の接合部の位置を変更したものである。
【0077】
すなわち、この実施形態では、ラッピング化粧板Aにおける基材1の雌実凹条部14及び雄実凸条部18は、裏側木質繊維板層3のみの四周端面に形成されている。表側及び裏側木質繊維板層2,3間の防湿層4周囲の露出部4aは、雌実凹条部14表側の表側凸条部15の先端面15a及び雄実凸条部18表側の表側切欠部19の切欠端面19aに位置している。
【0078】
その他の構成は実施形態2と同様である。従って、この実施形態においても、実施形態2と同様の作用効果を奏することができる。
【0079】
(実施形態5)
図7は実施形態5を示し、隣接するラッピング化粧板A,A同士の接合部をさらに変更したものである。この実施形態では、基材1の四周端面には、隣接する他のラッピング化粧板Aと接合するための接合部としての合决り切欠部22及び合决り凸条部23が設けられており、隣接するラッピング化粧板A,A同士が合决り構造により接合されるようになっている。合决り切欠部22及び合决り凸条部23は、表側及び裏側木質繊維板層2,3が防湿層4を介して積層一体化されかつ四周端面が表面と直交する平面とされた矩形板状の上記基材用板材1′において、その四周端面を加工することにより形成されている。
【0080】
具体的には、基材1において、互いに対向する2辺の一方に合决り切欠部22が、また他方に合决り凸条部23がそれぞれ形成され、隣接するラッピング化粧板Aを、一方の化粧板Aの合决り切欠部22に他方の化粧板Aの合决り凸条部23を嵌合することによって接合するようにしている。
【0081】
合决り切欠部22は、基材用板材1′の端面において裏側木質繊維板層3の厚さ方向裏側を断面矩形状に切り欠いたものであり、その合决り切欠部22を除いた基材1の端面の表側に表側凸条部15が形成され、防湿層4周囲の露出部4aは表側凸条部15の先端面15aに位置している。この表側凸条部15の先端面が元の基材用板材1′の端面である。
【0082】
一方、合决り凸条部23は、基材用板材1′の端面において基材1の厚さ方向表側部を表側木質繊維板層2の全体及び裏側木質繊維板層3の表側側部に亘って断面矩形に切り欠くことで、その残った部分で構成されるもので、合决り凸条部23の基材1の端面の表側に表側切欠部19が形成され、防湿層4周囲の露出部4aは表側切欠部19において合决り凸条部23の基端側にある切欠き端面19aに位置している。合决り凸条部23の先端面が元の基材用板材1′の端面である。
【0083】
表側木質繊維板層2の表面2aと、合决り切欠部22表側の表側凸条部15の先端面15a及び合决り凸条部23表側の表側切欠部19における切欠端面19aとの間に面取り部2bが形成されている。また、表側木質繊維板層2の表面2aから面取り部2bを経て、合决り切欠部22表側の表側凸条部15の先端面15aにおいて防湿層4の露出部4aよりも表側位置、及び合决り凸条部23表側の表側切欠部19の切欠端面19aにおいて防湿層4の露出部4aよりも表側位置までの範囲に化粧シート貼着部27が設けられ、この化粧シート貼着部27に防湿性の化粧シート30が貼り付けられている。
【0084】
また、裏側木質繊維板層3の裏面に実施形態3(図5参照)のような溝10は形成されていない。その他の構成は上記実施形態3と同様である。よって、この実施形態でも、溝10による効果を除き、実施形態3と同様の作用効果を奏することができる。
【0085】
(実施形態6)
図8は実施形態6を示す。この実施形態では、上記実施形態3(図5参照)の構成において、基材1の裏側木質繊維板層3の裏面の一部に、図外の機能ユニットを収容するための少なくとも1つの凹陥状の収容部24が溝10,10,…の範囲と重なるように形成され、この収容部24の深さは防湿層4まで至らない深さ(例えば溝10と同じかそれよりも少し浅い深さ)とされている。この収容部24に収容される機能ユニットとしては、例えば蓄熱材や蓄熱装置、発熱体や発熱装置である。その他の構成は実施形態3と同様である。
【0086】
したがって、この実施形態でも実施形態3と同様の作用効果が得られる。特に、予め基材1の段階でその裏面に機能ユニットのための収容部24が形成されているので、化粧シート30が貼着された状態の基材1の裏面に機能ユニットの収容部24を形成せずに済み、その場合の表面の化粧シート30の傷付きを回避することができる。また、基材1においては、裏面に収容部24が形成されている部分と形成されていない部分とで厚さの違いがあり、それに起因して吸湿による基材1の寸法変化が生じようとしても、表側木質繊維板層2と裏側木質繊維板層3との間の防湿層4により表側木質繊維板層2への湿気の影響を防止できるとともに、収容部24が設けられた裏側木質繊維板層3は、複数の溝10,10,…で分断されているので、ラッピング化粧板Aを反らせる変形の原因にならず、防湿性に優れたラッピング化粧板Aを得ることができる。
【0087】
(実施形態7)
図9は実施形態7を示す。この実施形態では、上記実施形態1(図1参照)に係るラッピング化粧板Aにおいて、裏側木質繊維板層3裏面の溝10を省略したものである。その他の構成は実施形態1と同じである。従って、この実施形態では、溝10による効果を除き、実施形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0088】
(実施形態8)
図10は実施形態8を示す。この実施形態では、上記実施形態2(図4参照)に係るラッピング化粧板Aにおいて、裏側木質繊維板層3裏面の溝10を省略したものである。その他の構成は実施形態2と同じである。従って、この実施形態では、溝10による効果を除き、実施形態2と同様の作用効果を奏することができる。
【0089】
(実施形態9)
図11は実施形態9を示す。この実施形態では、実施形態3(図5参照)の構成において、ラッピング化粧板Aの基材1における裏側木質繊維板層3の裏面に緩衝層25が一体的に接合されている。この緩衝層25は、図示しないが、裏側木質繊維板層3の裏面側から順に積層された発泡体層、樹脂フィルム層及び不織布層を備えている。
【0090】
発泡体層は、例えば厚さ3mm程度のポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の合成樹脂発泡体等により形成されている。発泡体層は、例えば酢酸ビニル系樹脂等の接着剤により裏側木質繊維板層3の裏面に接着されている。
【0091】
樹脂フィルム層は、例えば厚さ15μm~50μmのポリエチレンフィルム等の樹脂フィルムにより形成されている。樹脂フィルム層は、例えば発泡体層の裏面に熱融着されている。
【0092】
不織布層は、例えば厚さ0.1mm程度のポリエステル製等の不織布により形成されている。この不織布層は、例えば樹脂フィルム層の裏面に熱融着されている。
【0093】
その他の構成は実施形態3と同様である。従って、この実施形態でも実施形態3と同様の作用効果が得られる。また、ラッピング化粧板Aの基材1の裏面に緩衝層25が一体的に接合されているので、ラッピング化粧板Aを下地材の不陸に追従できる直張り床材や壁材、緩衝層25を遮音性能に配慮したものとした防音床材、緩衝層25を転倒時の耐衝撃性能に配慮したものとした転倒衝撃床材等に用いることができ、それら用途のラッピング化粧板Aの化粧性、防湿効果、寸法安定性を高めることができる。
【0094】
(実施形態10)
図12は実施形態10を示す。この実施形態では、実施形態4(図6参照)の構成において、ラッピング化粧板Aの基材1における裏側木質繊維板層3の裏面に緩衝層25が一体的に接合されている。緩衝層25は、実施形態9と同様のもので、図示しないが、裏側木質繊維板層3の裏面側から順に積層された発泡体層、樹脂フィルム層及び不織布層を備えている。その他の構成は、実施形態4と同様である。従って、この実施形態でも、実施形態4及び実施形態9と同様の作用効果が得られる。
【0095】
(実施形態11)
図13は実施形態11を示す。この実施形態は、実施形態3(図5参照)の構成において、基材1における化粧シート貼着部27を拡張したものである。すなわち、この実施形態では、基材1の化粧シート貼着部27の周縁部は、雌実凹条部14の表側に位置する表側凸条部15の先端面15aの略全体、及び雄実凸条部18の表側に位置する表側切欠部19の切欠端面19aの略全体に位置しており、このことで、化粧シート貼着部27は防湿層4の露出部4aを含んでいる。その他の構成は実施形態3と同様である。
【0096】
したがって、この実施形態でも実施形態3と同様の作用効果が得られる。また、化粧シート貼着部27は基材1の四周端面に露出する、防湿層4の露出部4aを含んでいるので、この化粧シート貼着部27に化粧シート30が貼着されたラッピング化粧板Aにおいては、防湿性の化粧シート30が基材1の防湿層4の露出部4aと当接して、化粧シート30と防湿層4とにより表側木質繊維板層2全体が防湿構造に包まれることとなる。そのため、基材1の吸湿による伸縮歪みが防湿層4により抑制されて、基材1の寸法安定性が良くなることに加え、化粧シート30が吸湿により基材1から剥がれ難くなり、ラッピング化粧板Aの高い防湿性及び化粧性を確実に実現することができる。
【0097】
(実施形態12)
図14は実施形態12を示し、実施形態4(図6参照)の構成において、実施形態11と同様に、基材1における化粧シート貼着部27を拡張したものである。すなわち、この実施形態では、基材1の化粧シート貼着部27の周縁部は、雌実凹条部14の表側に位置する表側凸条部15の先端面15aの略全体に位置しており、このことで、化粧シート貼着部27は防湿層4の露出部4aを含んでいる。また、裏側木質繊維板層3の裏面に実施形態4のような溝10は形成されていない。その他の構成は実施形態4と同様である。
【0098】
したがって、この実施形態でも、溝10による効果を除き、実施形態4と同様の作用効果が得られる。加えて、化粧シート貼着部27は基材1の四周端面に露出する、防湿層4の露出部4aを含んでおり、この化粧シート貼着部27に貼着される防湿性の化粧シート30が基材1の防湿層4の露出部4aと当接して、化粧シート30と防湿層4とにより表側木質繊維板層2全体が防湿構造に包まれる。そのため、基材1の吸湿による伸縮歪みが防湿層4により抑制されて、基材1の寸法安定性が良くなるだけでなく、化粧シート30が吸湿により基材1から剥がれ難くなり、ラッピング化粧板Aの高い防湿性及び化粧性を実現することができる。
【0099】
(実施形態13)
図15は実施形態13を示し、実施形態5(図7参照)の構成において、基材1における化粧シート貼着部27を拡張したものである。この実施形態では、基材1の化粧シート貼着部27の周縁部は、合决り切欠部22の表側に位置する表側凸条部15の先端面15aの略全体、及び合决り凸条部23の表側に位置する表側切欠部19の切欠端面19aの略全体に位置しており、このことで、化粧シート貼着部27は防湿層4の露出部4aを含んでいる。その他の構成は実施形態5と同様である。
【0100】
したがって、この実施形態でも実施形態5と同様の作用効果が得られる。特に、化粧シート貼着部27は基材1の四周端面に露出する、防湿層4の露出部4aを含んでおり、この化粧シート貼着部27に貼着される防湿性の化粧シート30が基材1の防湿層4の露出部4aと当接して、化粧シート30と防湿層4とにより表側木質繊維板層2全体が防湿構造に包まれる。そのため、基材1の吸湿による伸縮歪みが抑制されて、基材1の寸法安定性がより一層良くなり、さらに、化粧シート30が吸湿により基材1から剥がれ難くなり、ラッピング化粧板Aの高い防湿性及び化粧性を実現することができる。
【0101】
(実施形態14)
図16は実施形態14を示し、実施形態6(図8参照)の構成において、基材1における化粧シート貼着部27を拡張したものである。この実施形態では、基材1の化粧シート貼着部27の周縁部は、実施形態11(図13参照)と同様に、雌実凹条部14の表側に位置する表側凸条部15の先端面15aの略全体、及び雄実凸条部18の表側に位置する表側切欠部19の切欠端面19aの略全体に位置しており、このことで、化粧シート貼着部27は防湿層4の露出部4aを含んでいる。その他の構成は実施形態6と同様である。
【0102】
したがって、この実施形態でも実施形態6と同様の作用効果が得られる。また、化粧シート貼着部27は基材1の四周端面に露出する、防湿層4の露出部4aを含んでいるので、この化粧シート貼着部27に貼着される防湿性の化粧シート30が基材1の防湿層4の露出部4aと当接して、化粧シート30と防湿層4とにより表側木質繊維板層2全体が防湿構造に包まれることとなる。そのため、基材1の吸湿による伸縮歪みが抑制されて、基材1の寸法安定性が良くなり、加えて、化粧シート30が吸湿により基材1から剥がれ難くなり、ラッピング化粧板Aの高い防湿性及び化粧性を実現することができる。
【0103】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態9及び10(図11及び図12参照)の構成の各基材1において、その各基材1における化粧シート貼着部27を、基材1の四周端面に露出する防湿層4の露出部4aが含まれるように拡張してもよい。
【0104】
さらに、実施形態4(図6参照)の構成の基材1において、実施形態6と同様に機能ユニットを収容するための収容部24が防湿層4まで至らない深さに形成することもできる。
【0105】
また、実施形態5(図7参照)の構成の基材1において、裏側木質繊維板層3の裏面に緩衝層25を一体的に接合してもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、基材1の化粧シート貼着部27に貼り付けられる化粧シート30のうち、基材1の四周の角部において隣り合う2辺の端面を覆う折曲げ部が裏面同士で当接した余剰部31についてクランプ装置35、角部カット装置40、角部成形装置44により加工するようにしているが、その余剰部31の加工態様は上記実施形態の態様に限定されず、どのように形態であってもよい。例えば特許文献2や特許文献3に示される態様であってもよい。
【0107】
また、特許文献4に示すように、4つの角部が予め切り欠かれた矩形状の樹脂性化粧シートを使用し、その化粧シートを基材1の化粧シート貼着部27に貼り着け、化粧シートの各切欠きの端部同士を当接させて継ぎ目とするようにしてもよく、本発明の適用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、ラッピング化粧板の基材の吸湿による伸縮歪みを防湿層により抑制して寸法安定性を良好に確保し、製造ラインにおいて基材の四周角部における化粧シートの余剰部等を精度よく加工することができるので、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0109】
A ラッピング化粧板
1 基材
1′ 基材用板材
2 表側木質繊維板層
2a 表面
2b 面取り部
3 裏側木質繊維板層
4 防湿層
4a 露出部
5 防湿シート
6 接着剤
10 溝
14 雌実凹条部(接合部)
15 表側凸条部
15a 先端面(表側木質繊維板層の周囲端面)
16 裏側凸条部
16a 先端面
17 雇い実
18 雄実凸条部(接合部)
19 表側切欠部
19a 切欠端面(表側木質繊維板層の周囲端面)
22 合决り切欠部(接合部)
23 合决り凸条部(接合部)
24 収容部
25 緩衝層
27 化粧シート貼着部
30 化粧シート
31 余剰部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
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