(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】電源制御装置、駆動モジュール、並びにスイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
H02M3/155 C
H02M3/155 H
H02M3/155 W
(21)【出願番号】P 2020097548
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤穂 直史
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-080744(JP,A)
【文献】特開2018-196201(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0325447(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0089315(US,A1)
【文献】特開2020-96409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力トランジスタと同期整流トランジスタをオン/オフ駆動する駆動モジュールとともに用いられる電源制御装置であって、
制御信号を前記駆動モジュールとの間で入出力するための制御端子と、
イネーブル信号を前記駆動モジュールに出力するためのイネーブル出力端子と、
制御回路と、
前記出力トランジスタをオン状態として前記同期整流トランジスタをオフ状態とするときに前記制御信号を第1論理レベルとし、前記出力トランジスタをオフ状態として前記同期整流トランジスタをオン状態とするときに前記制御信号を第2論理レベルとし、前記制御回路からの指令に応じて入力待受状態となることが可能である入出力回路と、
を有し、
前記制御回路は、前記入出力回路が前記入力待受状態のときに、前記駆動モジュールを起動させるためのレベルのイネーブル信号を前記駆動モジュールに送り、前記制御信号が前記第1論理レベルでも前記第2論理レベルでもない第3論理レベルとなっているかを確認する、電源制御装置。
【請求項2】
前記イネーブル信号は、L(ロー)レベル、H(ハイ)レベル、前記Lレベルと前記Hレベルとの間のMレベルのいずれにもなることが可能であり、
前記駆動モジュールを起動させるためのレベルは、前記Mレベルである、請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記入出力回路が前記入力待受状態であり、かつ前記イネーブル信号がディセーブルを示すレベルのときに、前記制御回路が、前記制御信号が前記第1論理レベルまたは前記第2論理レベルとなっていることを確認すると、
前記制御回路は、前記駆動モジュールを起動させるためのレベルのイネーブル信号を前記駆動モジュールに送る、請求項1または請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記制御端子は、複数であり、
前記入出力回路が前記入力待受状態であり、かつ前記イネーブル信号がディセーブルを示すレベルのときに、前記制御回路は、前記制御信号のレベルの組み合わせが許可された組み合わせと一致するかを確認する、請求項3に記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記駆動モジュールとの接続に使用しない前記制御端子には、前記第3論理レベルの電圧の印加端を接続可能である、請求項4に記載の電源制御装置。
【請求項6】
前記イネーブル出力端子は、複数であり、
前記制御端子は、複数である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電源制御装置。
【請求項7】
出力トランジスタと同期整流トランジスタをオン/オフ駆動する駆動モジュールであって、
制御信号が第1論理レベルであるときに前記出力トランジスタをオン状態として前記同期整流トランジスタをオフ状態とし、前記制御信号が第2論理レベルであるときに前記出力トランジスタをオフ状態として前記同期整流トランジスタをオン状態とする駆動論理回路と、
内部電圧を生成し、イネーブル信号により起動される内部電圧生成部と、
前記内部電圧に基づき前記駆動論理回路のリセット解除を行うパワーオンリセット部と、
リセット解除されたときに前記駆動論理回路からの指令により、前記制御信号を前記第1論理レベルでも前記第2論理レベルでもない第3論理レベルに切り替える論理レベル切替回路と、
を単一のパッケージに集積化して有する、駆動モジュール。
【請求項8】
前記論理レベル切替回路は、
前記イネーブル信号に基づき駆動されるゲートと、電源電圧の印加端が接続されるソースと、を有する第1Pチャネル型MOSトランジスタと、
前記第1Pチャネル型MOSトランジスタのドレインと接続される第1端を有する抵抗と、
前記抵抗の第2端と接続されるソースと、接地電圧の印加端が接続されるドレインと、前記内部電圧により駆動されるゲートと、を有する第2Pチャネル型MOSトランジスタと、
前記抵抗の第2端と前記第2Pチャネル型MOSトランジスタのソースとが接続されるノードに接続されるゲートと、前記制御信号の印加端に接続されるソースと、を有するNチャネル型MOSトランジスタと、
前記電源電圧の印加端と接続されるソースと、前記Nチャネル型MOSトランジスタのドレインと接続されるドレインと、前記駆動論理回路から出力されるゲート信号が印加されるゲートと、を有する第3Pチャネル型MOSトランジスタと、
を有する、請求項7に記載の駆動モジュール。
【請求項9】
前記イネーブル信号がディセーブルを示すときに、前記制御信号を機種ごとの論理レベルに固定する論理レベル固定回路をさらに有する、請求項7または請求項8に記載の駆動モジュール。
【請求項10】
前記同期整流トランジスタがオン状態のときに流れるインダクタ電流のゼロクロスを検出するゼロクロス検出回路をさらに有し、
前記論理レベル切替回路は、前記ゼロクロスが検出されたときに前記駆動論理回路からの指令により前記制御信号を前記第3論理レベルに切り替える、請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の駆動モジュール。
【請求項11】
前記出力トランジスタと前記同期整流トランジスタも前記パッケージに集積化して有する請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の駆動モジュール。
【請求項12】
出力トランジスタと同期整流トランジスタをオン/オフ駆動する駆動モジュールと、電源制御装置と、を有するスイッチング電源装置であって、
前記電源制御装置は、
制御信号を前記駆動モジュールとの間で入出力するための制御端子と、
イネーブル信号を前記駆動モジュールに出力するためのイネーブル出力端子と、
制御回路と、
前記出力トランジスタおよび前記同期整流トランジスタのオンオフのために前記制御信号を第1論理レベルまたは第2論理レベルとし、前記制御回路からの指令に応じて入力待受状態となることが可能である入出力回路と、
を有し、
前記制御回路は、前記入出力回路が前記入力待受状態のときに、前記駆動モジュールを起動させるためのレベルのイネーブル信号を前記駆動モジュールに送り、前記制御信号が前記第1論理レベルでも前記第2論理レベルでもない第3論理レベルとなっているかを確認し、
前記駆動モジュールは、
前記制御信号が前記第1論理レベルであるときに前記出力トランジスタをオン状態として前記同期整流トランジスタをオフ状態とし、前記制御信号が第2論理レベルであるときに前記出力トランジスタをオフ状態として前記同期整流トランジスタをオン状態とする駆動論理回路と、
内部電圧を生成し、前記イネーブル信号により起動される内部電圧生成部と、
前記内部電圧に基づき前記駆動論理回路のリセット解除を行うパワーオンリセット部と、
リセット解除されたときに前記駆動論理回路からの指令により、前記制御信号を前記第3論理レベルに切り替える論理レベル切替回路と、
を単一のパッケージに集積化して有する、スイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置用の駆動モジュールおよび電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スイッチング電源装置の構成部品として、スイッチ出力段を形成する一対のMOSFET[metal-oxide-semiconductor field effect transistor]と、これらを駆動するための駆動論理回路とを1パッケージに集積化した駆動モジュール(いわゆるDrMOS)が実用化されている。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、上記駆動モジュールは、電源制御装置によって制御される。電源制御装置は、制御端子を有する。駆動論理回路は、上記制御端子から出力される制御信号の論理レベルに応じて上記MOSFETをオンオフ駆動する。
【0006】
ここで、スイッチング電源装置の起動時には、電源制御装置は、制御端子に接続される駆動モジュールの機種や、制御端子における接続不良の有無を確認できることが望ましい。このとき、電源制御装置の端子数の増加は抑制することが要望される。
【0007】
上記状況に鑑み、本発明は、電源制御装置の制御端子の接続に関する確認機能を端子数の増加を抑制しつつ実現できる電源制御装置、駆動モジュール、並びにスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電源制御装置は、
出力トランジスタと同期整流トランジスタをオン/オフ駆動する駆動モジュールとともに用いられる電源制御装置であって、
制御信号を前記駆動モジュールとの間で入出力するための制御端子と、
イネーブル信号を前記駆動モジュールに出力するためのイネーブル出力端子と、
制御回路と、
前記出力トランジスタをオン状態として前記同期整流トランジスタをオフ状態とするときに前記制御信号を第1論理レベルとし、前記出力トランジスタをオフ状態として前記同期整流トランジスタをオン状態とするときに前記制御信号を第2論理レベルとし、前記制御回路からの指令に応じて入力待受状態となることが可能である入出力回路と、
を有し、
前記制御回路は、前記入出力回路が前記入力待受状態のときに、前記駆動モジュールを起動させるためのレベルのイネーブル信号を前記駆動モジュールに送り、前記制御信号が前記第1論理レベルでも前記第2論理レベルでもない第3論理レベルとなっているかを確認する構成としている(第1の構成)。
【0009】
また、上記第1の構成において、前記イネーブル信号は、L(ロー)レベル、H(ハイ)レベル、前記Lレベルと前記Hレベルとの間のMレベルのいずれにもなることが可能であり、
前記駆動モジュールを起動させるためのレベルは、前記Mレベルである構成としてもよい(第2の構成)。
【0010】
また、上記第1または第2の構成において、前記入出力回路が前記入力待受状態であり、かつ前記イネーブル信号がディセーブルを示すレベルのときに、前記制御回路が、前記制御信号が前記第1論理レベルまたは前記第2論理レベルとなっていることを確認すると、前記制御回路は、前記駆動モジュールを起動させるためのレベルのイネーブル信号を前記駆動モジュールに送る構成としてもよい(第3の構成)。
【0011】
また、上記第3の構成において、前記制御端子は、複数であり、前記入出力回路が前記入力待受状態であり、かつ前記イネーブル信号がディセーブルを示すレベルのときに、前記制御回路は、前記制御信号のレベルの組み合わせが許可された組み合わせと一致するかを確認する構成としてもよい(第4の構成)。
【0012】
また、上記第4の構成において、前記駆動モジュールとの接続に使用しない前記制御端子には、前記第3論理レベルの電圧の印加端を接続可能である構成としてもよい(第5の構成)。
【0013】
また、上記第1から第5のいずれかの構成において、前記イネーブル出力端子は、複数であり、前記制御端子は、複数である構成としてもよい(第6の構成)。
【0014】
また、本発明に係る駆動モジュールは、
出力トランジスタと同期整流トランジスタをオン/オフ駆動する駆動モジュールであって、
制御信号が第1論理レベルであるときに前記出力トランジスタをオン状態として前記同期整流トランジスタをオフ状態とし、前記制御信号が第2論理レベルであるときに前記出力トランジスタをオフ状態として前記同期整流トランジスタをオン状態とする駆動論理回路と、
内部電圧を生成し、イネーブル信号により起動される内部電圧生成部と、
前記内部電圧に基づき前記駆動論理回路のリセット解除を行うパワーオンリセット部と、
リセット解除されたときに前記駆動論理回路からの指令により、前記制御信号を前記第1論理レベルでも前記第2論理レベルでもない第3論理レベルに切り替える論理レベル切替回路と、
を単一のパッケージに集積化して有する構成としている(第7の構成)。
【0015】
また、上記第7の構成において、
前記論理レベル切替回路は、
前記イネーブル信号に基づき駆動されるゲートと、電源電圧の印加端が接続されるソースと、を有する第1Pチャネル型MOSトランジスタと、
前記第1Pチャネル型MOSトランジスタのドレインと接続される第1端を有する抵抗と、
前記抵抗の第2端と接続されるソースと、接地電圧の印加端が接続されるドレインと、前記内部電圧により駆動されるゲートと、を有する第2Pチャネル型MOSトランジスタと、
前記抵抗の第2端と前記第2Pチャネル型MOSトランジスタのソースとが接続されるノードに接続されるゲートと、前記制御信号の印加端に接続されるソースと、を有するNチャネル型MOSトランジスタと、
前記電源電圧の印加端と接続されるソースと、前記Nチャネル型MOSトランジスタのドレインと接続されるドレインと、前記駆動論理回路から出力されるゲート信号が印加されるゲートと、を有する第3Pチャネル型MOSトランジスタと、
を有する構成としてもよい(第8の構成)。
【0016】
また、上記第7または第8の構成において、前記イネーブル信号がディセーブルを示すときに、前記制御信号を機種ごとの論理レベルに固定する論理レベル固定回路をさらに有する構成としてもよい(第9の構成)。
【0017】
また、上記第7から第9のいずれかの構成において、前記同期整流トランジスタがオン状態のときに流れるインダクタ電流のゼロクロスを検出するゼロクロス検出回路をさらに有し、前記論理レベル切替回路は、前記ゼロクロスが検出されたときに前記駆動論理回路からの指令により前記制御信号を前記第3論理レベルに切り替える構成としてもよい(第10の構成)。
【0018】
また、上記第7から第10のいずれかの構成において、前記出力トランジスタと前記同期整流トランジスタも前記パッケージに集積化して有する構成としてもよい(第11の構成)。
【0019】
また、本発明に係るスイッチング電源装置は、
出力トランジスタと同期整流トランジスタをオン/オフ駆動する駆動モジュールと、電源制御装置と、を有するスイッチング電源装置であって、
前記電源制御装置は、
制御信号を前記駆動モジュールとの間で入出力するための制御端子と、
イネーブル信号を前記駆動モジュールに出力するためのイネーブル出力端子と、
制御回路と、
前記出力トランジスタおよび前記同期整流トランジスタのオンオフのために前記制御信号を第1論理レベルまたは第2論理レベルとし、前記制御回路からの指令に応じて入力待受状態となることが可能である入出力回路と、
を有し、
前記制御回路は、前記入出力回路が前記入力待受状態のときに、前記駆動モジュールを起動させるためのレベルのイネーブル信号を前記駆動モジュールに送り、前記制御信号が前記第1論理レベルでも前記第2論理レベルでもない第3論理レベルとなっているかを確認し、
前記駆動モジュールは、
前記制御信号が前記第1論理レベルであるときに前記出力トランジスタをオン状態として前記同期整流トランジスタをオフ状態とし、前記制御信号が第2論理レベルであるときに前記出力トランジスタをオフ状態として前記同期整流トランジスタをオン状態とする駆動論理回路と、
内部電圧を生成し、前記イネーブル信号により起動される内部電圧生成部と、
前記内部電圧に基づき前記駆動論理回路のリセット解除を行うパワーオンリセット部と、
リセット解除されたときに前記駆動論理回路からの指令により、前記制御信号を前記第3論理レベルに切り替える論理レベル切替回路と、
を単一のパッケージに集積化して有する構成としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電源制御装置の制御端子の接続に関する確認機能を端子数の増加を抑制しつつ実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】例示的な実施形態に係るスイッチング電源装置の全体構成を示す図である。
【
図2】スイッチング電源装置における駆動モジュールの内部構成例を示す図である。
【
図3】プルダウン型の論理レベル固定回路の構成例を示す図である。
【
図4】プルアップ型の論理レベル固定回路の構成例を示す図である。
【
図5】論理レベル切替回路の構成例を示す図である。
【
図7】スイッチング電源装置の起動シーケンスに関するフローチャートである。
【
図8】スイッチング電源装置の起動シーケンスの第1例を示すタイミングチャートである(正常に起動した例)。
【
図9】スイッチング電源装置の起動シーケンスの第2例を示すタイミングチャートである(エラーとなった例)。
【
図10】スイッチング電源装置の起動シーケンスの第3例を示すタイミングチャートである(エラーとなった例)。
【
図11】変形例に係るスイッチング電源装置の全体構成を示す図である。
【
図12】
図11に示す構成における起動シーケンスの一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<スイッチング電源装置の全体構成>
図1は、スイッチング電源装置の全体構成を示す図である。本構成例のスイッチング電源装置1は、入力電圧Pvinから出力電圧Voutを生成して不図示の負荷Z(CPU[central processing unit]など)に供給する多相(本図では4相)型の降圧DC/DCコンバータであり、4相並列に接続された駆動モジュール10(1)~10(4)と、電源制御装置20と、インダクタL1(1)~L1(4)と、キャパシタCoと、を有する。
【0023】
なお、電源制御装置20は、後述するように制御端子Tp1~Tp8を有しており、駆動モジュール10の接続形態によっては、1個から8個までの駆動モジュール10を電源制御装置20に接続可能である。すなわち、1相から8相までの降圧DC/DCコンバータを構成可能である。
図1では、一例として、制御端子Tp1~Tp4を駆動モジュール10の接続に使用しており、他の制御端子Tp5~Tp8は使用していない。
【0024】
駆動モジュール10(1)~10(4)は、それぞれ、スイッチ出力段を形成する一対のMOSFETと、これらを駆動するための駆動論理回路(いずれも不図示)とを1パッケージに集積化した半導体装置(いわゆるDrMOS)である。
【0025】
上記一対のMOSFETは、入力電圧PVinの印加端と接地電圧PGNDの印加端との間に接続されており、基本的に、制御信号PWM1~PWM4に応じてオン/オフ制御される。その結果、駆動モジュール10(1)~10(4)から、入力電圧PVinと接地電圧PGNDとの間でパルス駆動されるスイッチ電圧SW(1)~SW(4)が出力され、これらをインダクタL1(1)~L1(4)およびキャパシタCoで合算、整流および平滑することにより、負荷Zへの出力電圧Voutが生成される。
【0026】
なお、駆動モジュール10(1)~10(4)を用いることにより、上記一対のMOSFETや駆動論理回路を個別に設けた場合と比べて、スイッチング電源装置1の回路規模を大幅に縮小することが可能となる。
【0027】
電源制御装置20は、スイッチング電源装置1の制御主体となる半導体装置(いわゆるPMIC[power management IC])である。電源制御装置20は、制御回路21と、入出力回路22と、内部電圧生成部23と、MOSスイッチ24と、を1パッケージに集積化して有する。
【0028】
また、電源制御装置20は、外部との電気的接続を確立するための外部端子として、制御端子Tp1~Tp8と、イネーブル出力端子Tdenと、イネーブル入力端子Tenと、スタンバイ端子Tstと、内部電圧出力端子Tregと、内部電圧入力端子Treginと、割込み端子Tintと、帰還入力端子Ts+,Ts-と、電源端子Tccと、接地端子Tgdと、を有する。
【0029】
制御回路21は、入力電圧Pvinから所望の出力電圧Voutが得られるように、制御信号PWMの出力帰還制御(オンデューティ制御)を行う主体である。制御回路21は、リモートセンス方式で検出された負荷Zの両端間電圧(=リモートセンス信号S+, S-の差分値)に応じて入出力回路22に対して指令を行い、入出力回路22に駆動モジュール10(1)~10(4)それぞれの制御信号PWM(1)~PWM(4)を生成させ、上記出力帰還制御を行う。リモートセンス信号S+, S-は、帰還入力端子Ts+,Ts-に入力される。生成された制御信号PWM(1)~PWM(4)は、制御端子Tp1~Tp4から駆動モジュール10(1)~10(4)へ出力される。
【0030】
また、制御回路21は、入出力回路22を入力待受状態として制御信号PWMの論理レベルを監視し、その監視結果に応じてスイッチング電源装置1の動作モード切替や駆動モジュール10の機種判別ないしは接続判定を行う機能も備えている(詳細は後述)。
【0031】
入出力回路22は、制御信号PWMの入出力を行う回路ブロックであり、制御回路21からの指令に応じて、その動作状態(出力状態または入力待受状態)が切り替えられる。入出力回路22が出力状態とされている場合、入出力回路22は、H(High)レベルまたはL(Low)レベルの制御信号PWMを出力することで、駆動モジュール10に含まれる一対のMOSFET(後述)のオンオフ制御を行う。一方、入出力回路22が入力待受状態とされている場合、入出力回路22は、制御信号PWMの論理レベル(H/L/M(Middle))を検出し、その検出結果を制御回路21に出力する(詳細は後述)。
【0032】
また、制御回路21は、駆動モジュール10(1)~10(4)それぞれに共通する3値(H/M/L)のイネーブル信号DRENを出力する機能も備えている。イネーブル信号DRENは、イネーブル出力端子Tdenから駆動モジュール10(1)~10(4)に対して出力される。
【0033】
DREN=L(例えばGND)であるときには、駆動モジュール10(1)~10(4)がディセーブルとされる。
【0034】
DREN=H(例えばVcc)であるときには、駆動モジュール10(1)~10(4)が第1動作モード(=常に制御信号PWM1~PWM4に応じてスイッチ電圧SW(1)~SW(4)のパルス駆動を行う動作モード)でイネーブルとされる。
【0035】
また、DREN=M(例えばVcc/2)であるときには、駆動モジュール10(1)~10(4)が第2動作モード(=インダクタ電流IL(1)~IL(4)のゼロクロス検出時において、制御信号PWM1~PWM4を自らMレベルに切り替えると共に、スイッチ電圧SW(1)~SW(4)を自ら出力ハイインピーダンス状態(HiZ)とする動作モード)でイネーブルとされる。
【0036】
さらに、制御回路21は、DREN=LまたはDREN=Mであるときに、適宜、入出力回路22を制御信号PWM1~PMW4の入力待受状態とさせ、それぞれの論理レベルを検出することによって、重負荷モード(PWM[pulse width modulation]モード)から軽負荷モード(PFM[pulse frequency modulation]モード)への移行処理を行ったり、或いは、駆動モジュール10(1)~10(4)の機種判別ないしは接続判定を行ったりする機能も備えている(詳細は後述)。
【0037】
また、内部電圧生成部23は、電源端子Tccに印加される電源電圧Vccに基づき内部電圧Vreg15を生成して出力する回路であり、例えばLDO(Low Dropout)により構成される。一例としてVcc=3Vに対してVreg15=1.5Vとしている。内部電圧Vreg15は、内部電圧出力端子Tregから外部へ出力される。また、外部へ出力された内部電圧Vreg15は、内部電圧入力端子Treginに入力されて制御回路21へ供給される。
【0038】
MOSスイッチ24は、NMOSトランジスタにより構成される。MOSスイッチ24のソースは、接地電圧GNDの印加端に接続され、ドレインは、割込み端子Tintに接続される。割込み端子Tintは、プルアップされる。制御回路21によりMOSスイッチ24のオンオフが制御される。MOSスイッチ24がオフ状態では、割込み端子Tintに生じる割込み信号INTBはHレベルとされ、オン状態では、割込み信号INTBはLレベルとされる。制御回路21は、割込み信号INTBによって、外部へ異常状態を通知することができる。異常状態の場合、例えば割込み信号INTBはLレベルとされる。
【0039】
インダクタL1(1)~L1(4)それぞれの第1端は、それぞれ、駆動モジュール10(1)~10(4)それぞれの出力端に接続されている。インダクタL1(1)~L1(4)それぞれの第2端は、いずれも、出力電圧Voutの印加端(=負荷Zの高電位端)に接続されている。なお、インダクタL1(1)~L1(4)には、それぞれ、インダクタ電流IL(1)~IL(4)が流れるので、これらを足し合わせた出力電流Io(=IL(1)+IL(2)+IL(3)+IL(4))を負荷Zに供給することができる。
【0040】
キャパシタCoは、出力電圧Voutの印加端と接地電圧PGNDの印加端との間(=負荷Zの両端間)に接続されており、出力電圧Voutを平滑化する。
【0041】
また、制御端子Tp1~Tp8のうち使用しない端子は、内部電圧Vreg15の印加端に外部接続させる。
図1の例では、制御端子Tp5~Tp8を使用しないため、当該制御端子を内部電圧Vreg15の印加端に接続させている。
【0042】
また、接地端子Tgdには、接地電圧GNDの印加端が接続される。
【0043】
なお、電源制御装置20には、上記回路ブロック以外にも、例えば、各種保護回路(UVLO[under voltage lock out]、OCP[over current protection]、並びに、TSD[thermal shut down]など)を集積化してもよい。
【0044】
<駆動モジュールの内部構成>
図2は、スイッチング電源装置1における駆動モジュール10の内部構成例を示す図である。なお、駆動モジュール10は、4相の駆動モジュール10(1)~10(4)のうち、いずれと理解してもよい。制御信号PWM、スイッチ電圧SW、インダクタL1、インダクタ電流ILについても同様であり、それぞれ、制御信号PWM1~PWM4、スイッチ電圧SW(1)~SW(4)、インダクタL1(1)~L1(4)、インダクタ電流IL(1)~IL(4)のいずれかに相当する。
【0045】
本構成例の駆動モジュール10は、スイッチ出力段11と、駆動論理回路12と、ゼロクロス検出回路13と、論理レベル切替回路14と、論理レベル固定回路15と、LDO16と、パワーオンリセット部17と、を単一のパッケージに集積化して有する。また、駆動モジュール10は、外部との電気的接続を確立するための外部端子として、制御端子TPWMと、イネーブル入力端子TENと、スイッチ端子TSWと、電源端子TCCと、入力電圧端子TVINと、接地端子TGDと、を有する。
【0046】
スイッチ出力段11は、一例としてPチャネル型MOSトランジスタにより構成される出力トランジスタM1と、一例としてNチャネル型MOSトランジスタにより構成される同期整流トランジスタM2と、を含む。トランジスタM1のソースは、入力電圧端子TVINを介して入力電圧PVinの印加端に接続されている。トランジスタM1およびM2それぞれのドレインは、スイッチ電圧SWの印加端(=駆動モジュール10の出力端)としてのスイッチ端子TSWに接続されている。トランジスタM2のソースは、接地端子TGDを介して接地電圧PGNDの印加端に接続されている。
【0047】
トランジスタM1およびM2それぞれのゲートには、それぞれ、ゲート信号G1およびG2が入力されている。なお、トランジスタM1は、G1=Lであるときにオン状態、G1=Hであるときにオフ状態とされる。また、トランジスタM2は、G2=Lであるときにオフ状態、G2=Hであるときにオン状態とされる。
【0048】
例えば、トランジスタM1をオン状態としてトランジスタM2をオフ状態としたときには、SW=H(≒PVin)となる。逆に、トランジスタM1をオフ状態としてトランジスタM2をオン状態としたときには、SW=L(≒PGND)となる。また、トランジスタM1およびM2双方をオフ状態としたときには、SW=HiZ(出力ハイインピーダンス状態)となる。
【0049】
なお、トランジスタM1としては、Pチャネル型MOSトランジスタに代えてNチャネル型MOSトランジスタを用いても構わない。ただし、その場合には、ゲート信号G1のHレベルを入力電圧PVinよりも高めるための昇圧手段(チャージポンプ回路やブートストラップ回路)が必要となる。
【0050】
また、トランジスタM1およびM2は、駆動モジュール10の後段に外付けしてもよい。
【0051】
駆動論理回路12は、制御信号PWMとゼロクロス検出信号ZXに応じて、ゲート信号G1およびG2を生成する。なお、制御信号PWMは、制御端子TPWMを介して電源制御装置20側から入力される。より具体的に述べると、駆動論理回路12は、基本的に、PWM=H(例えばVcc)であるときにG1=G2=Lとし、トランジスタM1をオン状態としてトランジスタM2をオフ状態とする一方、PWM=L(例えばGND)であるときにG1=G2=Hとし、トランジスタM1をオフ状態としてトランジスタM2をオン状態とする。
【0052】
ただし、トランジスタM2のオン期間(PWM=L、G1=G2=H)において、ゼロクロス検出信号ZXがゼロクロス検出時の論理レベルとして例えばHレベルとなった場合、駆動論理回路12は、G1=H、G2=Lとし、トランジスタM1およびM2双方をオフ状態とする。
【0053】
ゼロクロス検出回路13は、トランジスタM2がオン状態のときに流れるインダクタ電流ILのゼロクロス(=インダクタ電流ILがゼロ値またはその近傍値となった状態)を検出し、その検出結果としてゼロクロス検出信号ZXを生成する。例えば、ゼロクロス検出信号ZXは、ゼロクロス未検出時にLレベルとなり、ゼロクロス検出時にHレベルとなる。
【0054】
駆動論理回路12には、イネーブル入力端子TENを介して電源制御装置20側からイネーブル信号DRENが入力される。DREN=Hであるときには、駆動論理回路12は、常に制御信号PWMに応じてスイッチ電圧SWのパルス駆動を行う動作モードで動作する。
【0055】
また、DREN=Mであるときには、駆動論理回路12は、インダクタ電流ILのゼロクロス検出時において、スイッチ電圧SWを出力ハイインピーダンス状態(HiZ)とするとともに、論理レベル切替回路14に論理レベルの切替えを指令する。指令された論理レベル切替回路14は、制御信号PWMをHレベル(例えばVcc)でもLレベル(例えばGND)でもないMレベル(例えばVcc/2)に切り替える(詳細は後述)。
【0056】
なお、論理レベル切替回路14は、駆動モジュール10の起動時において、制御信号PWMをMレベルに切り替える動作も行う(詳細は後述)。
【0057】
論理レベル固定回路15は、機種毎の識別情報(例えば、駆動モジュール10が大電流出力型であるのか、小電流出力型であるのかを識別するための情報)を電源制御装置20に通知する手段である(詳細は後述)。
【0058】
LDO16は、電源電圧Vccに基づき内部電圧REG15を生成する内部電圧生成部の一例である。内部電圧REG15は、駆動論理回路12などに供給される。なお、内部電圧REG15は、一例として1.5Vとしており、REG15=Vcc/2である。
【0059】
パワーオンリセット部17は、LDO16の起動時に立ち上がる内部電圧REG15が規定電圧に達した場合にリセット信号により駆動論理回路12をリセット解除する回路である。
【0060】
なお、駆動モジュール10には、上記回路ブロック以外にも、例えば、各種保護回路(UVLO、OCP、並びに、TSDなど)を集積化してもよい。
【0061】
<論理レベル固定回路>
先述したように、駆動モジュール10には、機種毎の識別情報を電源制御装置20に通知する手段として、プルダウン型(
図3)またはプルアップ型(
図4)の論理レベル固定回路15が設けられている。以下、各図を参照しながら、それぞれの回路構成および動作について説明する。
【0062】
図3は、論理レベル固定回路15の第1構成例(プルダウン型)を示す図である。本構成例の論理レベル固定回路15は、例えば、大電流出力型(例えばIo=15A)の駆動モジュール10に集積化される回路ブロックであり、抵抗151と、インバータ152と、Nチャネル型MOSトランジスタ153と、インバータ154と、を含む。
【0063】
抵抗151の第1端は、制御信号PWMの印加端に接続されている。抵抗151の第2端とインバータ152の入力端は、トランジスタ153のドレインに接続されている。インバータ152の出力端は、駆動論理回路12の入力端に接続されている。トランジスタ153のソースおよびバックゲートは、接地電圧PGNDの印加端に接続されている。トランジスタ153のゲートは、インバータ154の出力端に接続されている。インバータ154の入力端は、イネーブル信号DRENの印加端に接続されている。
【0064】
イネーブル信号DRENがHレベルまたはMレベル(=駆動モジュール10のイネーブル時における論理レベルであり、例えばVccまたはVcc/2)であるときには、トランジスタ153がオフする。従って、制御信号PWMは、プルダウンされることなく、駆動論理回路12に入力される。
【0065】
一方、イネーブル信号DRENがLレベル(=駆動モジュール10のディセーブル時における論理レベルであり、例えばGND)であるときには、トランジスタ153がオンする。従って、制御信号PWMは、Lレベル(≒GND)にプルダウンされる。
【0066】
図4は、論理レベル固定回路の第2構成例(プルアップ型)を示す図である。本構成例の論理レベル固定回路15は、例えば、小電流出力型(例えばIo=5A)の駆動モジュール10に集積化される回路ブロックであり、抵抗151と、インバータ152と、Pチャネル型MOSトランジスタ155と、を含む。
【0067】
抵抗151の第1端は、制御信号PWMの印加端に接続されている。抵抗151の第2端とインバータ152の入力端は、トランジスタ155のドレインに接続されている。インバータ152の出力端は、駆動論理回路12の入力端に接続されている。トランジスタ155のソース及びバックゲートは、電源電圧Vccの印加端に接続されている。トランジスタ155のゲートは、イネーブル信号DRENの印加端に接続されている。
【0068】
イネーブル信号DRENがHレベルまたはMレベル(=駆動モジュール10のイネーブル時における論理レベルであり、例えばVccまたはVcc/2)であるときには、トランジスタ155がオフする。従って、制御信号PWMは、プルアップされることなく、駆動論理回路12に入力される。
【0069】
一方、イネーブル信号DRENがLレベル(=駆動モジュール10のディセーブル時における論理レベルであり、例えばGND)であるときには、トランジスタ155がオンする。従って、制御信号PWMは、Hレベル(≒Vcc)にプルアップされる。
【0070】
このように、論理レベル固定回路15は、駆動モジュール10がディセーブル(DREN=L)とされている間、言い換えれば、駆動モジュール10がイネーブル(DREN=HないしはDREN=M)とされるまでの間、制御信号PWMを機種毎の論理レベル(HレベルまたはLレベル)に固定する。
【0071】
<論理レベル切替回路(Mレベル出力回路)>
図5は、論理レベル切替回路14の一構成例を示す図である。論理レベル切替回路14は、Pチャネル型MOSトランジスタ141と、抵抗142と、Pチャネル型MOSトランジスタ143と、Nチャネル型MOSトランジスタ144と、Pチャネル型MOSトランジスタ145と、インバータ146と、を含む。
【0072】
トランジスタ141のソースおよびバックゲートは、電源電圧Vccの印加端に接続される。トランジスタ141のゲートは、インバータ146の出力端に接続される。インバータ146の入力端は、イネーブル信号DRENの印加端に接続される。トランジスタ141のドレインは、抵抗142の第1端に接続される。抵抗142の第2端と、トランジスタ143のソースおよびバックゲートとが接続されるノードN14は、トランジスタ144のゲートに接続される。トランジスタ143のゲートは、LDO16の出力端に接続される。すなわち、LDO16から出力される内部電圧REG15がトランジスタ143のゲートに印加される。トランジスタ143のドレインは、接地電圧PGNDの印加端に接続される。トランジスタ145のソースおよびバックゲートは、電源電圧Vccの印加端に接続される。トランジスタ145のドレインは、トランジスタ144のドレインに接続される。トランジスタ144のソースおよびバックゲートは、制御信号PWMの印加端に接続される。トランジスタ145のゲートは、駆動論理回路12から出力されるゲート信号G12により駆動される。
【0073】
また、
図5に示すように、ゼロクロス検出回路13は、コンパレータ131から構成される。コンパレータ131の非反転入力端(+)は、スイッチ電圧SWの印加端に接続されている。コンパレータ131の反転入力端(-)は、接地電圧PGNDの印加端に接続されている。
【0074】
トランジスタM2のオン期間(PWM=L、G1=G2=H)において、正方向(=トランジスタM2からインダクタL1に向かう方向)のインダクタ電流ILが流れているときには、SW<PGNDとなるので、ZX=Lとなる。この場合、駆動論理回路12は、ゲート信号G12をHとするので、トランジスタ145がオフ状態であり、トランジスタ144にドレイン電流が流れず、PWM=L(例えばGND)のままとなる。
【0075】
一方、インダクタ電流ILが負方向(=インダクタL1からトランジスタM2に向かう方向)に流れ始めると、SW>PGNDとなるので、ZX=Hとなる。この場合、駆動論理回路12は、ゲート信号G12をLとするので、トランジスタ145がオン状態となり、トランジスタ144にドレイン電流が流れて、そのソースが中間電圧VM(=REG15+Vth-Vth)にバイアスされる。このような動作により、制御信号PWMがLレベル(GND)からMレベル(VM)に切り替えられる。Mレベル=REG15=Vcc/2である。
【0076】
なお、駆動モジュール10の起動時にも、駆動論理回路12により制御信号PWMはMレベルへ切り替えられる。これについては、後に詳述する。
【0077】
<入出力回路>
図6は、入出力回路22の一構成例を示す図である。本構成例の入出力回路22は、Pチャネル型MOSトランジスタ221と、Nチャネル型MOSトランジスタ222および223と、抵抗224と、論理レベル検出部225と、を含む。
【0078】
トランジスタ221のソースおよびバックゲートは、電源電圧Vccの印加端に接続されている。トランジスタ221および222それぞれのドレインと抵抗224の第1端は、制御信号PWMの入出力端に接続されている。抵抗224の第2端は、トランジスタ223のドレインに接続されている。トランジスタ222および223それぞれのソースおよびバックゲートは、接地電圧GNDの印加端に接続されている。
【0079】
なお、トランジスタ221~223それぞれのゲートには、制御回路21からゲート信号S1~S3が入力される。
【0080】
例えば、制御信号PWMのHレベル出力時には、S1=S2=S3=Lとされる。その結果、トランジスタ221がオン状態、トランジスタ222および223がオフ状態となるので、PWM=H(≒Vcc)となる。一方、制御信号PWMのLレベル出力時には、S1=S2=HかつS3=Lとされる。その結果、トランジスタ222がオン状態、トランジスタ221および223がオフ状態となるので、PWM=L(≒GND)となる。
【0081】
また、制御信号PWMの入力待受時には、S1=S3=HかつS2=Lとされる。その結果、トランジスタ221および222がオフ状態、トランジスタ223がオン状態となるので、制御信号PWMが抵抗224を介してプルダウンされる。従って、制御信号PWMは、論理レベル切替回路14(
図5)または論理レベル固定回路15(
図3、
図4)の動作状態に応じた論理レベルとなる(詳細は後述)。
【0082】
論理レベル検出部225は、入出力回路22が入力待受状態とされているときに、制御信号PWMの論理レベル(H/L/M)を検出し、その検出結果を論理レベル検出信号S4として制御回路21に出力する。
【0083】
<起動シーケンス>
ここで、スイッチング電源装置1の起動シーケンスについて、
図7に示すフローチャートおよび
図8~
図10に示すタイミングチャートを参照して説明する。
【0084】
なお、
図8~
図10においては、上から順に、電源電圧Vcc、スタンバイ信号STBY、内部電圧Vreg15(電源制御装置20)、イネーブル信号EN、制御回路21の状態、割込み信号INTB、内部電圧REG15(駆動モジュール10)、イネーブル信号DREN、制御信号PWM1~PWM8の各波形例を示す。
【0085】
まず、
図8に示すタイミングチャートを
図7に示すフローチャートに沿って説明する。
図8は、後述する駆動モジュールスキャンにおいて正常と判定された場合の例を示す。なお、
図8は、駆動モジュール10の電源制御装置20に対する接続形態が
図1に示す状態の場合(すなわち4個の駆動モジュール10を接続)である。
【0086】
図8におけるタイミングt1で、電源電圧Vccが立上りを開始する。そして、タイミングt2において、電源電圧VccがUVLO解除電圧に達すると、電源制御装置20においてUVLOが解除される。その後、タイミングt3でスタンバイ信号STBYがHレベルに立ち上がると、内部電圧Vreg15が立上りを開始する。これに応じて、内部電圧Vreg15の印加端に接続される制御端子Tp5~Tp8に生じる制御信号PWM5~PWM8も立上りを開始する。内部電圧Vreg15が1.5Vまで立ち上がると、それに伴って制御信号PWM5~PWM8も1.5Vまで立ち上がる。
【0087】
そして、タイミングt4において、制御回路21は、駆動モジュールスキャン状態(DrMOS_SCAN)に移行する(
図7のステップS1)。
【0088】
その後、タイミングt5において、制御回路21は、駆動モジュール構成チェック処理を開始する(
図7のステップS2)。タイミングt5の時点で、イネーブル信号DRENはLレベルである。ここで、
図8の例では、駆動モジュール10における論理レベル固定回路15がプルダウン型(
図3)の場合であるため、制御信号PWM1~PWM4は、プルダウンによりLレベルである。また、制御信号PWM5~PWM8は、いずれも1.5V(Mレベル)となっている。
【0089】
制御回路21は、駆動モジュール構成チェック処理においては、制御端子Tp1~Tp8のうちいずれの端子が駆動モジュール10との接続に使用されているかをチェックする。より具体的には、制御回路21は、制御信号PWM1~PWM8の各レベルの組み合わせが、あらかじめ定められた許容される組み合わせと一致しているかを確認する。このとき、電源制御装置20の入出力回路22は、先述の入力待受状態であるので、制御信号PWMの論理レベル(H/L/M)が検出される。
【0090】
例えば、駆動モジュール10を1個接続する形態の場合は、制御端子Tp1~Tp8のうち制御端子Tp1に接続することのみが許可されるため、制御信号のレベルの許可される組み合わせとしては、「制御信号PWM1=LまたはH、PWM1以外の制御信号=M」となる。また、駆動モジュール10を2個接続する形態の場合は、制御端子Tp1~Tp8のうち制御端子Tp1、Tp2に接続することのみが許可されるため、制御信号のレベルの許可される組み合わせとしては、「制御信号PWM1,2=すべてLまたはすべてH、PWM1,2以外の制御信号=M」となる。以降同様に、駆動モジュール10を最大で8個接続する形態までの許可される組み合わせがあらかじめ規定される。
【0091】
図8の例であれば、実際の制御信号PWMのレベルの組み合わせが、「PWM1~4=L、PWM5~8=M」であり、「PWM1~4=すべてLまたはすべてH、PWM1~4以外の制御信号=M」という許可された組み合わせと一致しているので、制御端子Tp1~Tp4が接続に使用され、それ以外の端子は未使用であることが判定される。
【0092】
ここで、PWM=Lであるときには、論理レベル固定回路15がプルダウン型(
図3)であることから、例えば、駆動モジュール10を大電流出力型と判別することができる。一方、PWM=Hであるときには、論理レベル固定回路15がプルアップ型(
図4)であることから、例えば、駆動モジュール10を小電流出力型と判別することができる。
図8の例であれば、PWM1~4=Lであるため、制御端子Tp1~Tp4に接続される各駆動モジュール10が大電流出力型であると判定できる。なお、上記のように許可されるレベルの組み合わせを「すべて」Lまたは「すべて」Hとしているのは、一部異なる機種の駆動モジュール10が接続されて使用されることを禁止するためである。
【0093】
このような駆動モジュール10の機種判別を行うことにより、電源制御装置20における制御パラメータ(出力電流帰還ループのフィードバック係数や位相補償量など)を最適値に切り替えることが可能となる。
【0094】
また、実際の駆動相数(
図8の例では4相)を判定できるので、これに応じた位相シフト制御(詳細は後述)を行うことが可能となる。
【0095】
図8では、上記のような駆動モジュール構成チェック処理はタイミングt6で完了し、この場合、駆動モジュール構成は正常であると判定され(
図7のステップS3のY)、制御回路21は、駆動モジュール接続チェック処理に移行する(
図7のステップS4)。
【0096】
ここで、駆動モジュール構成チェック処理では正常と判定された場合でも、制御端子(Tp1~Tp8)の接続不良が生じている可能性がある。例えば、制御端子と駆動モジュール10との間の接続が切れていたり、制御端子がオープン故障となっている場合である。この場合、駆動モジュール構成チェック処理のときには、たまたま制御信号のレベルが正常判定となるレベルとなっていた可能性がある。
図8であれば、例えば、実際には制御端子Tp1~Tp4のうち少なくともいずれかに接続不良が生じていたが、制御信号PWM1~PWM4のレベルがたまたまLとなっていた可能性がある。
【0097】
そこで、本実施形態では、駆動モジュール構成チェック処理の後に、制御端子の接続不良が生じていないかを確認するために上記駆動モジュール接続チェック処理を実施する。
図8では、駆動モジュール接続チェック処理が開始すると、タイミングt7において、制御回路21は、イネーブル信号DRENをMレベルに立ち上げる。すると、駆動モジュール10においてLDO16が起動され、内部電圧REG15が立上りを開始する。
【0098】
Mレベルとなったイネーブル信号DRENにより、論理レベル切替回路14(
図5)において、トランジスタ141がオンとされる。これにより、トランジスタ141と抵抗142とから構成される定電流回路がオンとされる。また、内部電圧REG15は1.5Vまで立上るので、論理レベル切替回路14におけるトランジスタ143のゲートに印加される電圧(=内部電圧REG15)も1.5Vまで立ち上がる。
【0099】
内部電圧REG15が1.5Vよりも低い規定電圧に達すると、パワーオンリセット部17は、駆動論理回路12をリセット信号によりリセット解除する。このとき、内部電圧REG15が規定電圧に達してからパワーオンリセット部17での内部処理の時間だけ遅延して駆動論理回路12はリセット解除される。
【0100】
タイミングt8にて駆動論理回路12がリセット解除されると、駆動論理回路12は、Lレベルとしたゲート信号G12を論理レベル切替回路14に出力する。これにより、トランジスタ145がオン状態とされ、制御信号PWMはMレベルに切り替えられる。
【0101】
このとき、電源制御装置20の入出力回路22は、先述の入力待受状態であるので、制御信号PWMの論理レベル(H/L/M)が検出される。制御回路21は、先の駆動モジュール構成チェック処理において使用されていると判定した制御端子の制御信号PWMがすべてMレベルとなっているかを確認する。もし、すべてMレベルとなっていれば、使用されていると判定された制御端子の接続不良は生じていないとして、正常状態であると判定する。
図8の例では、使用されていると判定した制御端子Tp1~Tp4の制御信号PWM1~PWM4は、すべてMレベルとなっているので、正常状態であると判定される。
【0102】
なお、駆動論理回路12は、ゲート信号G12をLレベルとした後、Hレベルに切り替える。すると、制御信号PWMは、論理レベル切替回路14のソース能力のみでMレベルに維持された状態となる。従って、これ以降における制御信号PWMの挙動に支障を来すことはない。
【0103】
図8では、タイミングt9で制御回路21がイネーブル信号DRENをLレベルに立ち下げるので、LDO16が停止され、内部電圧REG15は立ち下がる。これにより、パワーオンリセット部17により駆動論理回路12はリセットされる。また、イネーブル信号DRENをLレベルに立ち下げるので、論理レベル固定回路15により制御信号PWM1~PWM4は、Lレベルとなる。
【0104】
図8のように駆動モジュール接続チェック処理において正常であると判定されると(
図7のステップS5のY)、制御回路21は、スタンバイ状態(STANDBY)へ移行する(
図7のステップS6、タイミングt10)。
【0105】
その後、イネーブル信号ENがHレベルに立ち上がると、制御回路21は、パワーオン状態(POWER_ON)に移行する(
図7のステップS7、タイミングt11)。そして、
図8では、パワーオン状態に移行後、タイミングt12において、制御回路21は、イネーブル信号DRENをMレベルに立ち上げる。すると、先述したタイミングt7での動作と同様に、内部電圧REG15が立上りを開始し、タイミングt12から遅延したタイミングt13でパワーオンリセット部17により駆動論理回路12がリセット解除される。これにより、先述と同様に、駆動論理回路12により出力されるLレベルのゲート信号G12により、論理レベル切替回路14は制御信号PWMをMレベルに切り替える。なお、駆動論理回路12は、ゲート信号G12をLレベルとした後、Hレベルに切り替える。すると、制御信号PWMは、論理レベル切替回路14のソース能力のみでMレベルに維持された状態となる。従って、これ以降における制御信号PWMの挙動に支障を来すことはない。
【0106】
タイミングt13よりも後のタイミングt14において、制御回路21は、イネーブル信号DRENをHレベルに立ち上げる。すると、電源制御装置20の入出力回路22は、先述した出力状態(=
図6のトランジスタ223がオフされるとともに、論理レベル検出部225が無効とされた状態)に固定される。また、駆動論理回路12は、第1動作モード(=常に制御信号PWMに応じてスイッチ電圧SWのパルス駆動を行う動作モード)で動作を行う。一定のスイッチング周波数で制御信号PWMのスイッチングパルスが生成し続けられ、駆動論理回路12は、制御信号PWMのレベルに応じてスイッチ出力段11を駆動する。これにより、負荷Zが軽くなっても、スイッチング電源装置1が重負荷モード(PWMモード)から軽負荷モード(PFMモード)に切り替えられることがない。
【0107】
なおここでは、
図8に示すように、制御信号PWMが位相をずらしながら生成される位相シフト制御が行われる。
【0108】
また、
図8では図示していないが、イネーブル信号DRENがHレベルからMレベルに切り替えられた場合、駆動モジュール10は、第2動作モード(=インダクタ電流ILのゼロクロス検出時において、制御信号PWMを自らMレベルに切り替えるとともに、スイッチ電圧SWを自ら出力ハイインピーダンス状態(HiZ)とする動作モード)でイネーブルとされる。
【0109】
この場合、電源制御装置20の入出力回路22は、制御信号PWMがHレベルからLレベルに切り替わった後、適切なタイミングで入力待受状態に切り替えられ、制御信号PWMの論理レベル(H/L/M)を検出する状態となる。
【0110】
制御信号PWMがLレベルであるためにトランジスタM2がオン状態となる期間において、ゼロクロス検出信号ZXがHレベルに立ち上がり、スイッチ電圧SWのゼロクロスが検出された場合、駆動論理回路12はゲート信号G12をLレベルとするので、論理レベル切替回路14は、制御信号PWMをMレベルに切り替える。
【0111】
制御信号PWMがLレベルからMレベルに切り替えられた場合、制御回路21では、駆動モジュール10でインダクタ電流ILのゼロクロスが検出されたことを認識し、スイッチング電源装置1を重負荷モード(PWMモード)から軽負荷モード(PFMモード)に遅滞なく移行させることができる。従って、制御信号PWMのスイッチングパルスを間引くなどして軽負荷時の効率を高めることが可能となる。
【0112】
また、当然のことながら、駆動モジュール10が第2動作モード(DREN=M)でイネーブルとされた場合でも、ゼロクロス検出信号ZXがHレベルに立ち上がらなければ、制御信号PWMがMレベルに切り替えられることはなく、スイッチング電源装置1が重負荷モード(PWMモード)から軽負荷モード(PFMモード)に切り替えられることもない。
【0113】
次に、
図9に示すタイミングチャートについて説明する。
図9では、駆動モジュール構成チェック処理がタイミングt51で開始されるが、このとき、制御信号PWM3は、制御端子Tp3の接続不良により、Lレベルとなっていない。従って、制御回路21は、制御信号PWM1~PWM8の各レベルの組み合わせが、あらかじめ定められた許容される組み合わせのいずれとも一致していないと判定し、異常状態であると判定する(
図7のステップS3のN)。
【0114】
これにより、
図9ではタイミングt52において、制御回路21は、エラー状態(ERROR)に移行するとともに、MOSスイッチ24をオン状態とすることで割込み信号INTBをLレベルに立ち下げる。この割込み信号INTBにより、外部に異常が通知される。
【0115】
その後、
図9に示すようにイネーブル信号ENがHレベルに立ち上げられても(タイミングt110)、制御回路21はエラー状態であるため、イネーブル信号DRENをLレベルで維持し、駆動モジュール10は起動せず、スイッチング電源装置1のスイッチング動作は行われない。
【0116】
なお、仮に例えば制御信号PWM3に対応する制御端子Tp3にプルアップ型の論理レベル固定回路15を有する駆動モジュール10が接続されていた場合も、制御信号PWM3がHレベルとなるので、駆動モジュール構成チェック処理において、異常状態であると判定される。
【0117】
このように、駆動モジュール構成チェック処理において、許可されない制御端子の使用状態であると判定されると、スイッチング電源装置1のスイッチング動作を回避できる。
【0118】
次に、
図10に示すタイミングチャートについて説明する。
図10では、駆動モジュール構成チェック処理がタイミングt51で開始されるが、このとき、制御信号PWM1~PWM4はすべてLレベルである。従って、制御回路21は、制御信号PWM1~PWM8の各レベルの組み合わせが、あらかじめ定められた許容される組み合わせに一致すると判定し、正常状態であると判定する(
図7のステップS3のY)。
【0119】
しかしながら、
図10では、制御信号PWM4に対応する制御端子Tp4に実際には接続不良が生じている例であり、上記駆動モジュール構成チェック処理においては、たまたま制御信号PWM4がLレベルとなっていた。
【0120】
タイミングt53で駆動モジュール構成チェック処理が完了し、駆動モジュール接続チェック処理が開始される(
図7のステップS4)。タイミングt71で、イネーブル信号DRENがMレベルに立ち上がり、リセット解除された駆動論理回路12により論理レベル切替回路14は制御信号PWMをMレベルに切り替える(タイミングt81)。しかしながら、
図10では、先述のように制御端子Tp4に接続不良が生じているため、制御信号PWM4には、Mレベルからレベルが低下する異常が生じている。従って、制御回路21は、異常状態であると判定する(
図7のステップS5のN)。
【0121】
制御回路21は、イネーブル信号DRENをLレベルに立ち下げた後、タイミングt82で、エラー状態へ移行する(
図7のステップS8)。
【0122】
エラー状態へ移行しているため、イネーブル信号ENがHレベルに立ち上がっても(タイミングt110)、制御回路21は、イネーブル信号DRENをLレベルで維持し、駆動モジュール10は起動せず、スイッチング電源装置1のスイッチング動作は行われない。
【0123】
このように、制御端子に接続不良が生じている場合に、仮に駆動モジュール構成チェック処理ではたまたま正常であると判定された場合でも、駆動モジュール接続チェック処理において、上記接続不良を検出することができ、スイッチング電源装置1のスイッチング動作を回避できる。
【0124】
以上説明したように、本実施形態では、制御信号PWMを流用して、駆動モジュール構成チェック処理および駆動モジュール接続チェック処理を行うことで、制御端子の使用状態、接続されている駆動モジュールの機種、並びに制御端子の接続不良が生じていないかを確認することができる。さらに、制御信号PWMを流用して、駆動モジュール10から電源制御装置20へのゼロクロス検出通知を行うことができる。従って、電源制御装置20および駆動モジュール10における端子数の増加を抑制できる。
【0125】
<複数チャンネルの電源制御装置>
また、実施形態の一変形例として、電源制御装置20は、複数のチャンネルでの駆動モジュール10の制御に対応してもよい。以下、これについて説明する。
【0126】
図11は、複数のチャンネルでの駆動モジュール10の制御に対応する電源制御装置20の一例を含めたスイッチング電源装置1の構成を示す図である。
図11に示す電源制御装置20は、一例として2チャンネルに対応している。なお、チャンネルとは、イネーブル信号DRENの出力可能な本数に相当する。
【0127】
図11に示す電源制御装置20は、イネーブル出力端子Tden1,Tden2を有しており、制御回路21は、イネーブル信号DREN1をイネーブル出力端子Tden1から、イネーブル信号DREN2をイネーブル出力端子Tden2から、それぞれ出力することが可能である。また、
図11での電源制御装置20は、一例として、制御端子Tp1~Tp4を有し、制御信号PWM1~PWM4を制御端子Tp1~Tp4を介して出力可能としている。すなわち、電源制御装置20は、2チャンネルで4相分の駆動モジュール10の制御が可能となっている。
【0128】
また、
図11では、一例として、イネーブル出力端子Tden1(1ch)と接続される駆動モジュール10(1)~10(3)には、それぞれ制御端子Tp1~Tp3の個々を接続している。また、イネーブル出力端子Tden2(2ch)と接続される駆動モジュール10(4)には、制御端子Tp4を接続している。すなわち、3相(1ch)+1相(2ch)での使用となっている。
【0129】
同じチャンネル(1ch)である駆動モジュール10(1)~10(3)は、それぞれインダクタL1(1)~L1(3)の第1端に接続され、インダクタL1(1)~L1(3)の第2端はキャパシタCo1の第1端に共通接続される。キャパシタCo1の第1端は、出力電圧Vout1の印加端となる。また、別の同じチャンネル(2ch)である駆動モジュール10(4)は、インダクタL1(4)の第1端に接続され、インダクタL1(4)の第2端はキャパシタCo2の第1端に共通接続される。キャパシタCo2の第1端は、出力電圧Vout2の印加端となる。すなわち、チャンネルごとにDC/DCコンバータが構成される。
【0130】
なお、
図11に示す形態以外にも、例えば、4相(1ch)+0相(2chは不使用)、2相(1ch)+2相(2ch)などの駆動モジュール10の接続形態を使用してもよい。また、制御端子Tp1~Tp4のうち使用しない端子については、先述した実施形態と同様に、内部電圧Vreg15の印加端を接続して、制御信号PWMをMレベルとしてもよい。
【0131】
ここで、
図12は、
図11に示す構成における起動シーケンスの一例を示すタイミングチャートである。
図12においては、上から順に、駆動モジュール10側の内部電圧REG15、イネーブル信号DREN1,DREN2、および制御信号PWM1~PWM4の各波形例を示す。
【0132】
図12のタイミングt15では、駆動モジュール構成チェック処理が開始される。このとき、イネーブル信号DREN1およびDREN2はともにLレベルであるので、駆動モジュール10側の論理レベル固定回路15から制御信号PWM1~PWM4のレベルが入力待受状態である入出力回路22を介して制御回路21に通知される。
図12では、
図11に示す構成において、駆動モジュール10(1)~10(4)のいずれもプルダウン型の論理レベル固定回路15を有する例を示し、制御信号PWM1~PWM4は、いずれもLレベルとなっている。
【0133】
駆動モジュール構成チェック処理では、先述したように、制御回路21は、制御信号PWMのレベルの組み合わせが許可される組み合わせと一致するかを確認する。
図12では、制御信号PWM1~PWM4のいずれもLとなる組み合わせは、許可される組み合わせと一致するので、正常状態であると判定される。なお、ここで仮に制御信号PWM1~PWM4のレベルの組み合わせが許可される組み合わせと一致しないと判定されると、異常状態であると判定され、先述した実施形態と同様に、制御回路21は、エラー状態に移行する。
【0134】
図12では、タイミングt16で駆動モジュール構成チェック処理が完了し、引き続き駆動モジュール接続チェック処理が開始される。そして、タイミングt17において、制御回路21は、イネーブル信号DREN1とDREN2のうちDREN1のみをMレベルに立ち上げる。これにより、イネーブル信号DREN1に対応する駆動モジュール10(1)~10(3)における各内部電圧REG15が立ち上がり、各駆動論理回路12がリセット解除され、各論理レベル切替回路14により制御信号PWM1~PWM3がMレベルに切り替えられる。これにより、1chの駆動モジュール10は、制御端子Tp1~Tp3に接続されていることが認識できる。
【0135】
タイミングt19において制御回路21によりイネーブル信号DREN1がLレベルに立ち下げられ、制御信号PWM1~PWM3は、Lレベルに立ち下がる。その後、タイミングt20において、制御回路21は、イネーブル信号DREN1とDREN2のうちDREN2のみをMレベルに立ち上げる。これにより、イネーブル信号DREN2に対応する駆動モジュール10(4)における内部電圧REG15が立ち上がり、駆動論理回路12がリセット解除され、論理レベル切替回路14により制御信号PWM4がMレベルに切り替えられる(タイミングt21)。これにより、2chの駆動モジュール10は、制御端子Tp4に接続されていることが認識できる。
【0136】
このように、本実施形態では、制御信号PWMを流用することで、チャンネルごとの駆動モジュール10の個数や接続先を自動認識することが可能となり、電源制御装置20および駆動モジュール10の端子数の増加を抑制できる。例えば、電源制御装置20において、新たな設定用端子を設け、当該端子に外部抵抗分圧比を変更することによる分圧電圧を印加させ、電源制御装置20内部のADC(ADコンバータ)により上記分圧電圧をモニタすることにより、接続形態を検出する手法も考えられるが、上記新たな端子分、端子数が増加してしまう。
【0137】
また、本実施形態では、チャンネル数や相数の増加に対しても、端子数を増加させる必要がない。
【0138】
<その他>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0139】
例えば、駆動モジュール接続チェック処理においては、制御回路21は、イネーブル信号DREN(DREN1,DREN2)をMレベルに限らず、駆動モジュール10を起動可能なレベルであれば、例えばHレベルなどに立ち上げてもよい。
【0140】
また、本発明に係るスイッチング電源装置は、例えば、車両に搭載可能であることが好ましい。制御端子に関する故障の検出が、自動車の電気/電子に関する機能安全についての国際規格であるISO26262にて要求されており、その観点から本発明による効果は重要となる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、例えば、大電流を消費する負荷(CPUなど)に電力供給を行う多相型のスイッチング電源装置に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0142】
1 スイッチング電源装置
10、10(1)~10(4) 駆動モジュール(DrMOS)
11 スイッチ出力段
12 駆動論理回路
13 ゼロクロス検出回路
131 コンパレータ
14 論理レベル切替回路
141 Pチャネル型MOSトランジスタ
142 抵抗
143 Pチャネル型MOSトランジスタ
144 Nチャネル型MOSトランジスタ
145 Pチャネル型MOSトランジスタ
146 インバータ
15 論理レベル固定回路
151 抵抗
152 インバータ
153 Nチャネル型MOSトランジスタ
154 インバータ
155 Pチャネル型MOSトランジスタ
16 LDO
17 パワーオンリセット部
20 電源制御装置(PMIC)
21 制御回路
22 入出力回路
221 Pチャネル型MOSトランジスタ
222、223 Nチャネル型MOSトランジスタ
224 抵抗
225 論理レベル検出部
23 内部電圧生成部
24 MOSスイッチ(Nチャネル型MOSトランジスタ)
Co キャパシタ
L1、L1(1)~L1(4) インダクタ
M1 出力トランジスタ(Pチャネル型MOトランジスタ)
M2 同期整流トランジスタ(Nチャネル型MOSトランジスタ)
Tp1~Tp8 制御端子
Tden、Tden1、Tden2 イネーブル出力端子
Tcc 電源端子
Tst スタンバイ端子
Ten イネーブル入力端子
Treg 内部電圧出力端子
Tregin 内部電圧入力端子
Tint 割込み端子
Tgd 接地端子
Ts+、Ts- 帰還入力端子
TPWM 制御端子
TEN イネーブル入力端子
TCC 電源端子
TVIN 入力電圧端子
TSW スイッチ端子
TGD 接地端子