(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】暖房システム
(51)【国際特許分類】
F24D 3/18 20060101AFI20231017BHJP
F24D 3/00 20220101ALI20231017BHJP
F24H 15/136 20220101ALI20231017BHJP
F24H 15/375 20220101ALI20231017BHJP
F24H 15/486 20220101ALI20231017BHJP
【FI】
F24D3/18
F24D3/00 J
F24H15/136
F24H15/375
F24H15/486
(21)【出願番号】P 2020102272
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】下司 大弥
(72)【発明者】
【氏名】眞柄 隆志
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-159253(JP,A)
【文献】特開2012-167838(JP,A)
【文献】特開2019-148382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 1/00-19/10
F24H 1/00-15/493
F25B 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、高温冷媒の熱で循環液を加熱するための冷媒水熱交換器と、高圧冷媒を減圧する減圧器と、低温低圧冷媒を蒸発させる蒸発器としての空気熱交換器とが環状に接続されたヒートポンプサイクルと、前記空気熱交換器に熱源となる空気を供給するための送風手段とを有する熱源機を複数台設置すると共に、循環液を循環させる循環ポンプを備え、前記各熱源機により加熱された循環液を放熱器に循環させることで暖房運転を行う温水暖房装置で、前記複数の熱源機のうち特定の1台の熱源機のみで暖房運転する単独運転時に、当該特定の熱源機が除霜運転を行う間に、当該特定の熱源機の他の熱源機を暖房運転させるサポート運転を行うものに於いて、前記複数の熱源機は暖房運転開始から所定の除霜運転禁止時間が経過するまでは除霜運転の開始が禁止され、前記特定の熱源機における除霜運転禁止時間t1よりも、
前記サポート運転を行う前記他の熱源機
の除霜運転禁止時間t2を短い時間とし、かつ当該除霜運転禁止時間t2は0以上となるように設定したことを特徴とする温水暖房装置。
【請求項2】
除霜運転中の前記特定の熱源機が除霜運転を終了する前に、サポート運転を行っている前記特定の熱源機の他の熱源機の所定の除霜運転開始条件が成立し、かつ前記除霜運転禁止時間t2が経過している場合、前記特定の熱源機が除霜運転を終了した後、サポート運転を行っている前記特定の熱源機の他の熱源機の除霜運転を開始することを特徴とする請求項1記載の温水暖房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱源機により加熱された循環液を暖房機が接続された暖房回路に循環させて暖房を行う温水暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種のものに於いては、室外の空気と冷媒との熱交換を行う空気熱交換器を備えたヒートポンプユニットからなる熱源機により冷媒を加熱し、加熱された冷媒と室内の暖房回路を循環する循環液とを冷媒水熱交換器により熱交換することにより循環液を加熱し、加熱した循環液を暖房回路の放熱器等の暖房機に循環させて暖房を行っていた。
【0003】
ところでこの従来のものでは、冬期の暖房時に、暖房温度が高く設定された場合や室外の気温が低い場合には、空気熱交換器の温度が氷点を下回る場合があり、このような場合、空気熱交換器の表面が着霜し、空気熱交換器の熱交換効率が低下するという問題があった。
【0004】
そこで、空気熱交換器の表面における着霜を防止するために、暖房時であっても、着霜が生じたときに、冷媒の循環方向を逆転させて一時的に室内冷房の冷凍サイクルを機能させて空気熱交換器を加温して除霜を行う除霜運転を行い、そのとき複数台ある熱源機の除霜運転を複数台同時に行うことを禁止したものがあった。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところでこの従来のものでは、熱源機を複数台設置し各熱源機にて加熱された循環液を合流させて温水暖房運転を行う場合、そのうちの一台が除霜運転を行うと室内機に流れる循環液の温度が低下して、暖房能力が低下してしまう。また、複数台の熱源機が除霜運転を行うと循環液を加熱する熱源機が減少することで循環液の温度が大きく低下して、暖房能力が大きく低下してしまうため複数台運転中には複数台同時に除霜運転を行う事を禁止していた。
【0007】
また、暖房負荷が小さいときには、複数の熱源機のうち特定の1台の熱源機のみで循環液を加熱して温水暖房運転を行う場合があり、当該特定の熱源機の所定の除霜運転開始条件が成立した場合、当該特定の熱源機で除霜運転を開始すると同時に、当該特定の熱源機の他の熱源機を暖房運転させるサポート運転を開始する。
【0008】
複数の熱源機は暖房運転開始から所定の除霜運転禁止時間が経過するまでは除霜運転の開始が禁止され、除霜運転禁止時間がサポート運転の時間よりも長いとき、サポート運転中の当該特定の熱源機の他の熱源機で除霜運転開始条件が成立した場合であっても、除霜運転禁止時間内であるため、除霜運転が行われる事は無く、外気温が低い場合には着霜が溶ける事がない。そのことにより、サポート運転中の熱源機の空気熱交換器の熱交換効率が低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明はこの点に着目し上記課題を解決する為、特にその構成を請求項1では、冷媒を圧縮する圧縮機と、高温冷媒の熱で循環液を加熱するための冷媒水熱交換器と、高圧冷媒を減圧する減圧器と、低温低圧冷媒を蒸発させる蒸発器としての空気熱交換器とが環状に接続されたヒートポンプサイクルと、空気熱交換器に熱源となる空気を供給するための送風手段とを有する熱源機を複数台設置すると共に、循環液を循環させる循環ポンプを備え、各熱源機により加熱された循環液を放熱器に循環させることで暖房運転を行う温水暖房装置で、複数の熱源機のうち特定の1台の熱源機のみで暖房運転する単独運転時に、当該特定の熱源機が除霜運転を行う間に、当該特定の熱源機の他の熱源機を暖房運転させるサポート運転を行うものに於いて、複数の熱源機は暖房運転開始から所定の除霜運転禁止時間が経過するまでは除霜運転の開始が禁止され、特定の熱源機における除霜運転禁止時間t1よりも、サポート運転を行う他の熱源機の除霜運転禁止時間t2を短い時間とし、かつ当該除霜運転禁止時間t2は0以上となるように設定したことを特徴とした。
【0010】
又請求項2に係る温水暖房装置では、特にその構成を請求項1に於いて、除霜運転中の特定の熱源機が除霜運転を終了する前に、当該特定の熱源機の他の熱源機の除霜運転開始条件が成立した場合、当該特定の熱源機が除霜運転を終了した後、当該特定の熱源機の他の熱源機の除霜運転を開始するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明の請求項1によれば、暖房運転中に当該特定の熱源機の他の熱源機の空気熱交換器の表面が着霜した場合に、除霜運転を行う事ができるため、着霜による暖房運転能力の低下を抑えることができるものである。
【0012】
又、本発明の請求項2に記載の温水暖房装置によれば、当該特定の熱源機が除霜運転を終了した後、当該特定の熱源機の他の熱源機の除霜運転を開始するため、複数の熱源機の除霜運転を複数台同時に行うことがなく、放熱器に流れる高温の循環液の流量が急激に減少するのを防止しする。さらに、当該特定の熱源機の他の熱源機が除霜運転を行う事ができるため、着霜による暖房運転能力の低下を抑えることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の一実施形態を示す給湯装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る発明の1実施形態を図面に基づいて説明する。
1は熱源機で、冷媒を圧縮する圧縮機2と高温冷媒の熱で循環液を加熱するための冷媒水熱交換器3と高圧冷媒を減圧する減圧器4と低温低圧冷媒を蒸発させる蒸発器としての空気熱交換器5とが環状に接続されたヒートポンプサイクル6と、空気熱交換器5に熱源となる空気を供給するための送風手段7と、該熱源機1を制御する熱源機制御部8を有しているものである。
【0015】
9は循環ポンプユニットで、循環ポンプ10を備えたものであり、更にこの温水暖房装置全体を制御する制御部11を備えたものである。
【0016】
熱源機1は、循環ポンプユニット9に例えば2台、例えば、並列接続となるように冷媒水熱交換器3を介して接続されるものである。なお、複数台ある熱源機1と循環ポンプユニット9の接続は直列接続でもよく、3台以上でもよいものである。
【0017】
12はヘッダーボックスで、負荷側往きヘッダー13及び負荷側戻りヘッダー14を備え、前記負荷側往きヘッダー13は、循環ポンプユニット9の循環ポンプ10からの高温の循環液が流入する合流口15と、その流入した高温の循環液を各放熱器17に送る接続口16を複数備えたものである。
【0018】
放熱器17は例えば、床暖房パネルで構成され、放熱器17は温水ルームヒータや、冷温水輻射パネルや、温水輻射パネルや、壁掛け式ファンコイルでもよく、各放熱器17は、複数ある接続口16を介して負荷側往きヘッダー13及び負荷側戻りヘッダー14に並列に接続されるものである。また、放熱器17は、例えば複数接続され、単体で接続されてもよいものである。
【0019】
又負荷側戻りヘッダー14は、各放熱器17から放熱して温度の低下した循環液が流入する接続口16を複数備えると共に、各接続口16に流入した循環液を合流させて循環ポンプユニット9に戻す合流口15を備えたものである。
【0020】
次に
図1によりこの温水暖房装置の暖房運転について説明する。
リモコン等の運転スイッチ(図示せず)をオンすると、各熱源機1のヒートポンプサイクル6が動作し、ヒートポンプサイクル6内の冷媒を加熱する。
それと同時に、循環ポンプユニット9の循環ポンプ10を動作させるものである。
【0021】
それにより、熱源機1のヒートポンプサイクル6で加熱された冷媒と、低温の循環液が熱源機1の冷媒水熱交換器3にて熱交換を行い、それにより加熱された循環液は熱源機1の冷媒水熱交換器3から循環ポンプユニット9に流入し、循環液はヘッダーボックス12の負荷側往きヘッダー13に流入する。
【0022】
ヘッダーボックス12の負荷側往きヘッダー13の合流口15に流入した高温の循環液は、負荷側往きヘッダー13の各接続口16から各放熱器17に流入して暖房を行い、放熱して温度の低下した循環液は、負荷側戻りヘッダー14の各接続口16に流入して合流し、負荷側戻りヘッダー14の合流口15から循環ポンプユニット9に戻り、更に各熱源機1の冷媒水熱交換器3に戻って再度加熱されるものである。
【0023】
次に、
図2の複数の熱源機のうち特定の1台の熱源機のみで暖房運転する単独運転時の本発明について説明する。暖房負荷が小さく、複数の熱源機のうち特定の1台の熱源機のみで暖房出力が足りる場合、複数の熱源機のうち特定の1台の熱源機のみで暖房運転する単独運転を行う。
【0024】
前記複数の熱源機1の空気熱交換器5の表面が着霜したとき除霜運転が頻繁に行われ暖房運転の時間が短くなり、暖房感が損なわれないように、暖房運転開始から所定の除霜運転禁止時間が経過するまでは除霜運転の開始が禁止され、複数の熱源機は所定の除霜運転開始条件が成立しても除霜運転は開始されない。
【0025】
当該特定の熱源機の所定の除霜運転開始条件が成立し、かつ当該特定の熱源機における除霜運転禁止時間t1が経過していた場合、当該特定の熱源機の除霜運転を行う。その間に、当該特定の熱源機の他の熱源機を暖房運転させ、循環液の温度低下を防ぐサポート運転を行う。
【0026】
さらにサポート運転を行っている当該特定の熱源機の他の熱源機の所定の除霜運転開始条件が成立し、かつ前記除霜運転禁止時間t2が経過している場合、サポート運転を行っている当該特定の熱源機の他の熱源機の除霜運転を開始することができる。
【0027】
ここで本発明として
図2に一点鎖線で示すように当該特定の熱源機における除霜運転禁止時間t1よりも、サポート運転を行う当該特定の熱源機の他の熱源機の前記除霜運転禁止時間t2を短い時間とし、かつ当該除霜運転禁止時間t2は0以上となるように設定したことで、サポート運転開始からサポート運転終了までの間に当該特定の熱源機の他の熱源機の除霜運転禁止時間t2が経過し、当該特定の熱源機の除霜運転終了後、サポート運転を行っている当該特定の熱源機の他の熱源機が着霜した場合に除霜運転が行われるため、着霜した霜が蓄積せず、暖房運転能力の低下を抑えることができるものである。
【0028】
また、除霜運転禁止時間t2は、除霜運転を行う当該特定の熱源機の除霜運転開始から一定時間経過しても着霜した霜が溶け切らなかった場合に除霜運転をやめ、暖房運転を開始する除霜運転最大時間よりも短い時間となるように設定したことで、サポート運転開始からサポート運転終了までの間に当該特定の熱源機の他の熱源機の除霜運転禁止時間t2が経過し、当該特定の熱源機の除霜運転終了後、サポート運転を行っている当該特定の熱源機の他の熱源機が着霜した場合に除霜運転が行われるため、着霜した霜が蓄積せず、暖房運転能力の低下を抑えることができるものである。
【0029】
これに対し、比較例として
図3に示すように、メインで暖房運転を行う当該特定の熱源機の除霜運転禁止時間t1とサポート運転しか行わない当該特定の熱源機の他の熱源機の除霜運転禁止時間t2とを同じ時間とした場合、サポート運転開始からサポート運転終了までの間に当該特定の熱源機の他の熱源機の除霜運転禁止時間t2が経過せず、当該特定の熱源機の除霜運転終了後、サポート運転を行っている当該特定の熱源機の他の熱源機の除霜運転が行われず、着霜した霜が蓄積し暖房能力を低下させる恐れがあった。
【0030】
さらに、除霜運転禁止時間t2は、除霜運転を行う当該特定の熱源機の除霜運転開始から一定時間経過しても着霜した霜が溶け切らなかった場合に除霜運転をやめ、暖房運転を開始する除霜運転最大時間よりも長い時間となるように設定したことで、サポート運転開始からサポート運転終了までの間に当該特定の熱源機の他の熱源機の除霜運転禁止時間t2が経過せず、当該特定の熱源機の除霜運転終了後、サポート運転を行っている当該特定の熱源機の他の熱源機が着霜した場合に除霜運転が行われないため、着霜した霜が蓄積し暖房能力を低下させる恐れがあった。
【0031】
本発明では、除霜運転禁止時間t1よりも、除霜運転禁止時間t2を短い時間とし、かつ当該除霜運転禁止時間t2は0以上となるように設定したことで、当該特定の熱源機の除霜運転終了後、当該特定の熱源機の他の熱源機が着霜した場合に除霜運転が行われるため、着霜した霜が蓄積せず、暖房運転能力の低下を抑えることができると共に、除霜運転禁止時間t2は、除霜運転最大時間よりも短い時間となるように設定したことで、当該特定の熱源機の除霜運転終了後、当該特定の熱源機の他の熱源機が着霜した場合に除霜運転が行われるため、着霜した霜が蓄積せず、暖房運転能力の低下を抑えることができるものである。
【符号の説明】
【0032】
1 熱源機
2 圧縮機
3 冷媒水熱交換器
4 減圧器
5 空気熱交換器
10 循環ポンプ
17 放熱器