(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】エレベータガイドレールへのエレベータシャフトの設置方法および装置
(51)【国際特許分類】
B66B 7/02 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
B66B7/02 C
B66B7/02 E
(21)【出願番号】P 2020120346
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2023-01-26
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591159044
【氏名又は名称】コネ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】KONE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル ハーグ
(72)【発明者】
【氏名】ハルリ マキネン
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-73153(JP,A)
【文献】特開2010-70296(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/60078(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1854054(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータシャフトへのガイドレールの設置方法において、該方法は、
ガイドレール要素の最下端部となる第1の区間部を手作業で前記シャフトのそれぞれの壁に設置し、
前記シャフト内で運搬装置を上昇および下降させる第1の巻上機を配設し、前記運搬装置は、第1の巻上機に連結されたフック装置と該フック装置に連結されたレバー装置とを含み、
前記シャフト内で運搬台を上昇および下降させる第2の巻上機を配設し、
ガイドレール要素を、該ガイドレール要素の上端部を前記フック装置に連結し該ガイドレール要素の下端部を前記レバー装置に連結することによって前記運搬装置に連結し、
前記運搬装置、さらには前記ガイドレール要素を第1の巻上機により上昇させて、前記レバー装置を設置済みのガイドレール要素列上で滑動させ、
前記ガイドレール要素を前記設置済みのガイドレール要素列の上端部に連結し、前記運搬台から前記ガイドレール要素を前記シャフトの壁に取り付け、
前記運搬装置を第1の巻上機によって下降させて別のガイドレール要素を取り込む際に、前記レバー装置は前記設置済みのガイドレール要素列上を滑動することを特徴とするガイドレールの設置方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、連結板を用いて前記ガイドレール要素を前記設置済みのガイドレール要素列の上端部に連結し、前記連結板を前記ガイドレール要素の下端部分および前記設置済みのガイドレール要素列の最上端部となるガイドレール要素の上端部分に取り付けることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記ガイドレールに取り付けられる第1の部品と前記シャフトの壁に取り付けられる第2の部品とを含むブラケットによって前記ガイドレール要素を前記シャフトの壁に取り付け、前記ブラケットの2つの部品は互いに調整可能に取り付けられることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法において、前記運搬台は、ローラによって前記シャフト内の対向し合う固体壁に支持されることを特徴とする方法。
【請求項5】
エレベータシャフトへのガイドレールの設置装置において、該装置は、
前記シャフトのそれぞれの壁に設置されるガイドレール要素の最下端部となる第1の区間部と、
前記シャフト内で運搬装置を上昇および下降させる第1の巻上機とを有し、前記運搬装置は、第1の巻上機に連結されたフック装置と該フック装置に連結されたレバー装置とを含み、
該装置はさらに、前記シャフト内で運搬台を上昇および下降させる第2の巻上機を有し、
ガイドレール要素は、該ガイドレール要素の上端部が前記フック装置に連結されさらに該ガイドレール要素の下端部が前記レバー装置に連結されることによって前記運搬装置に連結され、
前記運搬装置、さらには前記ガイドレール要素が第1の巻上機により上昇して、前記レバー装置は設置済みのガイドレール要素列上を滑動し、
前記ガイドレール要素は、前記設置済みのガイドレール要素列の上端部に連結され、さらに前記運搬台から前記シャフトの壁に取り付けられ、
第1の巻上機によって前記運搬装置が下降して別のガイドレール要素を取り込む際に、前記レバー装置は前記設置済みのガイドレール要素列上を滑動することを特徴とするガイドレールの設置装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、前記ガイドレール要素は、連結板を用いて前記設置済みのガイドレール要素列の上端部に連結され、前記連結板は、前記ガイドレール要素の下端部分および前記設置済みのガイドレール要素列の最上端部となるガイドレール要素の上端部分に取り付けられることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の装置において、前記ガイドレール要素は、前記ガイドレールに取り付けられる第1の部品と前記シャフトの壁に取り付けられる第2の部品とを含むブラケットによって前記シャフトの壁に取り付けられ、前記ブラケットの2つの部品は互いに対し調整可能に取り付けられることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか1項に記載の装置において、前記運搬台は、ローラによって前記シャフト内の対向し合う固体壁に支持されることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータシャフトへのエレベータガイドレールの設置方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、乗りかご、シャフト、巻上機、ロープおよびカウンタウェイトを有し得る。乗りかごは、独立型または一体型の乗りかごフレームで囲繞されている場合もある。
【0003】
巻上機は、シャフト内に配設されてもよい。巻上機は、駆動装置、電気モータ、トラクションシーブおよび機械ブレーキを備えていてもよい。巻上機は、乗りかごをシャフト内で上昇および下降させることができる。機械ブレーキは、トラクションシーブの回転を停止させることにより、エレベータ乗りかごの移動を停止させることができる。
【0004】
乗りかごフレームは、ロープによってトラクションシーブを介してカウンタウェイトに連結されてもよい。乗りかごフレームはさらに、シャフト内を垂直方向に延びているガイドレールに滑動手段を用いて支持されてもよい。ガイドレールは、締結ブラケットを用いてシャフト内の側壁構造体に取り付けられてもよい。滑動手段は、乗りかごがシャフト内を上昇および下降する際に、乗りかごの水平面を所定に維持する。乗りかごフレームと同様の方式で、カウンタウェイトはシャフトの壁構造体に取り付けられたガイドレールに支持されてもよい。
【0005】
乗りかごは、人間および/または貨物を建物の乗り場間において運搬することができる。シャフトの壁構造体は、固体壁、露出している梁構造体またはこれらの任意の組合せの形態を採るものでもよい。
【0006】
ガイドレールは、所定の長さのガイドレール要素で形成してもよい。ガイドレール要素は、設置段階において、エレベータシャフト内に端部同士を次々に連結してもよい。ガイドレール要素は、2つの連続するガイドレール要素の終端部間に延びる連結板によって互いに取り付けてもよい。連結板は、連続するガイドレール要素に取り付けてもよい。ガイドレールの端部は何らかの形状固定手段を備えていてもよく、これによってガイドレールを正確な相互関係にて配置することができる。ガイドレールは、支持手段によって、ガイドレールの高さ沿いにある支持点でエレベータシャフトの壁に取り付けてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガイドレールの設置は、エレベータの設置作業の中でも大きな労力を要し、時間のかかる作業である。これらは、現代の高層建物ではより重大な問題となる。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑み、改良したエレベータシャフトへのエレベータガイドレールの設置方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエレベータシャフトへのエレベータガイドレールの設置方法は、請求項1で定義される。
【0010】
本発明に係るエレベータシャフトへのエレベータガイドレールの設置装置は、請求項5で定義される。
【0011】
本発明は、エレベータの設置におけるガイドレールの設置に関し、簡易で費用効果の高い解決法を提案するものである。
【0012】
最初にガイドレールの最下端部となる第1の区間部を手作業で設置することができ、その後に、ガイドレールの後続の区間部におけるガイドレール要素を本発明に従って設置することができる。
【0013】
ガイドレール要素は、フック装置およびレバー装置を備えた運搬装置に連結された第1の巻上機によって、シャフトの上方に吊り上げられる。フック装置は、ガイドレール要素の上端部に取り付けてもよく、さらにガイドレール要素の下端部は、設置済みのガイドレール列上でレバー装置によって滑動可能に支持され得る。
【0014】
このように、制御された方法でガイドレール要素を吊り上げることができる。すなわち、ガイドレールは吊上げ中に揺れない。
【0015】
運搬装置を下降させて別のガイドレール要素を取り込む作業も、制御された方法で行われる。また、レバー装置は、下降するときに設置済みのガイドレール要素の列上を滑動可能に支持されてもよい。フック装置もまた、下降するときに設置済みのガイドレール要素の列上を滑動可能に支持されてよいが、必ずしも支持される必要はない。レバー装置をフック装置に連結することにより、下降時におけるフック装置の過剰な揺れを抑制する。
【0016】
フック装置は、ガイドレール要素の吊上げに際してガイドレール要素の上端部に固定して取り付けられる。
【0017】
そのため、運搬台を使用して、ガイドレール要素を設置済みガイドレール要素列の上端部に連結して、ガイドレール要素をシャフトの壁に取り付けることができる。この作業は運搬台から、技術者により手作業で、またはロボットにより自動的に行ってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガイドレールの設置に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下、本発明について、好適な実施形態を用いて図面を参照しながらより詳細に述べる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1はエレベータの側面を示し、
図2はエレベータの水平断面を示す。
【0021】
エレベータは、乗りかご10、エレベータシャフト20、巻上機30、ロープ42およびカウンタウェイト41を備える。独立型または一体型の乗りかごフレーム11が乗りかご10を囲繞していてもよい。
【0022】
巻上機30は、シャフト20内に配設されてもよい。巻上機は、駆動装置31、電気モータ32、トラクションシーブ33および機械ブレーキ34を備えていてもよい。巻上機30は、乗りかご10を、垂直に延びているエレベータシャフト20内で垂直方向Zに上下動させることができる。機械ブレーキ34は、トラクションシーブ33の回転を停止させることで、エレベータ乗りかご10の移動を停止させることができる。
【0023】
乗りかごフレーム11は、ロープ42によって、トラクションシーブ33を介してカウンタウェイト41に連結してもよい。乗りかごフレーム11はさらに、滑動手段27によって、シャフト20内で垂直方向に延びているガイドレール25に支持されてもよい。滑動手段27は、乗りかご10がエレベータシャフト20内を上下動している際にガイドレール25上で回転するローラまたはガイドレール25上で滑動する滑動シューを備えていてもよい。ガイドレール25は、締結ブラケット26を用いて、エレベータシャフト20内の側壁構造体21に取り付けられてもよい。滑動手段27は、乗りかご10がエレベータシャフト20内を上下動する際に、乗りかご10の水平面を適切に維持する。乗りかご10と同様の方式により、カウンタウェイト41は、シャフト20の壁構造体21に取り付けられたガイドレールに支持されてもよい。
【0024】
シャフト20の壁構造体21は、固体壁21もしくは露出している梁構造体、またはこれらの任意の組合せで形成してもよい。よって、壁の1枚以上を固体壁にしてもよく、壁の1枚以上を露出している梁構造体で形成してもよい。シャフト20は、前壁21A、後壁21Bおよび2枚の対向する側壁21C、21Dを含んでいてよい。シャフトには乗りかご10用に2本のガイドレール25を設けてもよい。2本の乗りかご用ガイドレール25は、対向する壁21C、21Dに配設してもよい。シャフトにはさらに、カウンタウェイト41用に2本のガイドレール25を設けてもよい。2本のカウンタウェイト用ガイドレール25は、後壁21Bに配設してもよい。
【0025】
ガイドレール25は、エレベータシャフト20の高さ方向に沿って垂直に延びていてもよい。したがって、ガイドレール25は、所定の長さ、例えば5mのガイドレール要素で形成してもよい。ガイドレール要素25は、各端部上に次々と設置することができる。ガイドレール要素25は、2つの連続するガイドレール要素25の終端部間に延びる連結板を用いて相互に取り付けてもよい。連結板は、連続するガイドレール要素25に取り付けることができる。ガイドレール25の端部は何らかの形状固定手段を備えていてもよく、これにより、ガイドレール25を互いに対し正確に位置決めできる。ガイドレール25は、支持手段によって、ガイドレール25の高さ方向に沿った支持点でエレベータシャフト20の壁21に取り付けられてもよい。
【0026】
乗りかご10は、建物の乗り場間において人間および/または貨物を運搬することができる。
【0027】
図2では、シャフト20内の測鉛線PL1、PL2を示している。測鉛線は、エレベータ設置の初期段階でシャフト20の測量によって生み出すものでよい。測鉛線PL1、PL2は、従来型のワイヤまたは光源、例えば測鉛線PL1、PL2に沿って上方に向かう光線を含むレーザにより生み出してもよい。通常は、1本の測鉛線とジャイロスコープ、または2本の測鉛線がシャフト20全体の測定基準のために必要となる。
【0028】
図1は、エレベータシャフト20内の垂直方向である第1の方向Zを示す。
図2は、ガイドレール間の方向(DBG)である第2の方向Xおよびシャフト20内の後壁から前壁の方向(BTF)である第3の方向Yを示す。第2の方向Xは、第3の方向Yに対して垂直である。第2の方向Xおよび第3の方向Yは、第1の方向Zに対して垂直である。
【0029】
【0030】
本図ではシャフト20における5つの乗り場L1~L5を示しているが、当然ながらシャフト20の乗り場の数は任意に選択可能である。
【0031】
第1の巻上機H1はシャフト20に配設して、運搬装置600をシャフト20内で上下動させてもよい。第1の巻上機H1は、シャフト20の天井から吊架してもよい。
【0032】
第2の巻上機H2はシャフト20に配設して、運搬台500をシャフト20内で上下動させてもよい。第2の巻上機H2は、シャフト20の天井から吊架してもよい。
【0033】
運搬台500は、ローラによって、シャフト20内で対向し合う固体壁21に支持されてもよい。また、運搬台500は、ガイドレール25に連結させなくてもよい。運搬台500を使用して、1人以上の技術者ならびに/または1台以上のロボットおよび/もしくは工具をシャフト20内で運搬することができる。運搬台500の水平断面は、ガイドレール25用の通路を含んでいてもよい。運搬台500は、エレベータの設置前にシャフトを精査する際、および/またはガイドレールをシャフト20の壁21に設置する際、および/またはエレベータの設置後にガイドレール25の位置調整をする際に使用することができる。
【0034】
保管場所SAを、第1の乗り場L1に配設してもよい。当然ながら、保管場所SAは、ガイドレールの設置を行う作業層の下方にある任意の位置に配することができる。保管場所SAは、最初は第1の乗り場L1に配置し、その後は設置の進行に合わせて上階の乗り場に再度配置することも可能である。ガイドレール要素25は、保管場所SAに保管し、運搬装置600で吊り上げてもよい。ガイドレール要素25は、運搬装置600に手作業で積載してもよい。
【0035】
最初に、ガイドレール25の最下端部となる第1の区間部を手作業でシャフト20に設置してもよい。運搬台500は、ガイドレール25の第1の区間部を手作業でシャフト20に設置する際に使用してもよい。
【0036】
本図は、ガイドレール25の第2の区間部となる第1のガイドレール25が、第1の巻上機H1に連結された運搬装置600によってシャフト20内を吊り上げられる状態を示している。運搬装置600は、第1の巻上機H1に連結されたフック装置300およびフック装置300に連結されたレバー装置400を備えていてもよい。フック装置300は、第1のワイヤ350を用いて第1の巻上機H1に連結してもよい。レバー装置400は、第2のワイヤ360を用いてフック装置300に連結してもよい。あるいは、レバー装置400は、高硬度の棒材を用いてフック装置300に連結することも可能であろう。しかしながら、高硬度の棒材を用いると、ガイドレール要素25を運搬装置600に荷積みしづらくなるであろう。レバー装置400は、上側レバー部410および下側レバー部420を含んでいてもよい。上側レバー部410および下側レバー部420は、レバーアーム430を用いて相互に連結してもよい。
【0037】
吊り上げるガイドレール要素25の上端部をフック装置300に取り付けることで、第1の巻上機H1に取り付けてもよい。
【0038】
吊り上げるガイドレール要素25の下端部は、上側レバー部410に取り付けてもよい。下側レバー部420は、設置済みのガイドレール要素25の列に滑動可能に支持されるものでもよい。
【0039】
このように、ガイドレール要素25は、第1の巻上機H1および運搬装置600によって、設置済みガイドレール要素25の列に沿って吊り上げられる。ガイドレール要素25の上端部は、フック装置300に堅固に取り付けてもよい。これにより、吊上げ力は、第1の巻上機H1からフック装置300に、さらにガイドレール要素25に伝達される。ガイドレール要素25の下端部は、上側レバー部410に取り付けてもよい。下側レバー部420は、設置済みガイドレール要素25の列上を滑動する。下側レバー部420は、上昇する際に設置済みガイドレール要素25の列に滑動できるように連結してもよい。
【0040】
ガイドレール要素25は、設置済みガイドレール要素25の列に沿って、下側レバー部420が設置済みガイドレール要素25の列の上端部に到達する高さまで吊り上げてもよい。
【0041】
このときに、ガイドレール要素25の下端部をレバー装置400から取り外してもよい。ガイドレール要素25の下端部は、その後、連結板を用いて設置済みガイドレール要素25の列の最上端部に取り付けられてもよい。設置作業において当該段階は、第2の巻上機H2によって移動可能な運搬台500から実行してもよい。
【0042】
次いで、ガイドレール要素25は、ブラケットを用いてシャフト20の壁21に取り付けてもよい。その後で、フック装置300をガイドレール要素25から取り外してもよい。設置作業において本段階もまた、第2の巻上機H2により移動可能な運搬台500から実行することができる。
【0043】
運搬装置600、すなわちレバー装置400およびフック装置300は、その後、設置済みガイドレール要素25の列に連結してもよい。これにより、運搬装置600は、第1の巻上機によって、設置済みガイドレール要素25の列に沿って下降することができる。フック装置300およびレバー装置400は、下降時に、設置済みガイドレール要素25の列上を滑動することができる。フック装置300およびレバー装置400は、設置済みガイドレール要素25の列上を滑動可能に支持されてもよい。
【0044】
運搬台500からの設置作業は、1人以上の技術者と手工具による手作業で、および/または1台以上のロボットを使用して自動的に行ってもよい。
【0045】
【0046】
フック装置300は、第1の本体部310および第2の本体部320を含んでいてもよい。第1の本体部310は、U字型フック311によって連結される2つのL字型ブラケットで形成してもよい。2つのL字型ブラケットはガイドレール要素25の支持部25Bの両側に配設してもよく、L字型ブラケットはガイドレール25の底部25Aの表面に当接している。第2の本体部320は、ガイドレール要素25の底部25Aの裏面に接して配設された実質的に矩形のブラケットで形成してもよい。第1の本体部310および第2の本体部320は、ボルトと蝶ナット354を用いて互いに取り付けてもよい。ボルトは第1の本体部310および第2の本体部320に設けられた孔を貫通して、これによってボルトはガイドレール25の両側に配置されるようにしてもよい。したがって、ガイドレール要素25は、フック装置300の2つの本体部310、320の間で固定される。
【0047】
連結板50は、ガイドレール25の上端部に取り付けてもよい。連結板50は、ボルト55を用いて、ガイドレール要素25の底部25Aの裏面に取り付けられる。フック装置300の第2の本体部320の上縁部は、連結板50の下端面を支えることになる。連結板50は、第1の巻上機H1の第1のワイヤ350によってガイドレール要素25が吊り上げられる際に、フック装置300がガイドレール要素25に沿って上方に滑動することを防止する。フック355は、第1のワイヤ350の下端部に取り付けられる。
【0048】
ボルトから蝶ナット354を巻き解くことで、フック装置300をガイドレール要素25から取り外してもよい。ガイドレール要素25が適切な位置に吊り上げられたとき、およびガイドレール要素25がシャフト20の壁21に取り付けられたときに、運搬台500からフック装置を取り外すことができる。
【0049】
【0050】
レバー装置400は、レバーアーム430に連結された上側レバー部410および下側レバー部420を含んでいてもよい。下側レバー部420は、設置済みガイドレール要素25上を滑動することができる。ガイドレール要素25の下端部は、上側レバー部410に連結してもよい。
【0051】
下側レバー部420は、シャフト20内に設置済みのガイドレール要素25の列上を滑動することができる。ガイドレール要素25の下端部は、上側レバー部410で支持されてもよい。レバーアーム430を傾斜させて、ガイドレール要素25を設置済みガイドレール要素25の列から離れた位置に保持することができる。上側レバー部410は、設置済みガイドレール要素25の列から距離A1を隔てた位置に保持してもよい。距離A1によって、ガイドレール要素25が設置済みガイドレール要素25の列に沿って吊り上げられる際にガイドレール要素25が設置済みガイドレール要素25の列の外側を通過することのできる空間が確保される。
【0052】
連結板50は、各ガイドレール要素25の上端部に取り付けてもよい。次のガイドレール要素25を連結板50に取り付けることにより、次のガイドレール要素25は設置済みガイドレール要素25の列の最上部にあるガイドレール要素25に取り付けられる。
【0053】
【0054】
ガイドレール要素25の断面は、平坦な底部25Aおよび底部25Aの中央部から外方に突き出る平坦な支持部25Bを有するT字型であってもよい。ガイドレール要素25は、ブラケットを用いて、ガイドレール要素25の底部25Aからシャフト20の壁21に取り付けてもよい。ガイドレール要素25の支持部25Bは、乗りかご10の支持シューまたはカウンタウェイト41に対し、2つの対向する側部支持面25B1、25B2および1つの端部支持面25B3を形成していてもよい。支持シューには、ガイドレール要素25の支持部25Bの支持面25B1、25B2、25B3に作用する滑動面またはローラが設けられていてもよい。
【0055】
上側レバー部410および/または下側レバー部420は、ガイドレール25の支持部25Bの内側にある薄肉部25B4上を回動または滑動するローラ441、442または滑動シューを備えていてもよい。ローラ441、442または滑動シューは、ガイドレール25の支持部25Bの内側の薄肉部25B4と外側の厚肉部25B5との間にある肉厚変化部に配置してもよい。下側レバー部420のローラ441、442は、レバー装置400がガイドレール25上を上昇および下降するとき、レバー装置400をガイドレール25に確実に保持する。上側レバー部410のローラ441、442は、運搬装置600がガイドレール25上を上昇するとき、ガイドレール要素25の下端部を上側レバー部410に確実に保持する。
【0056】
ローラ441、442は、レバー装置400において可動支持されてもよい。ローラ441、442は、図に示すように、ローラ441、442がガイドレール25と接する第1の位置と、ローラ421、422がガイドレール25と接しない第2の位置との間を移動することができる。レバー装置400は、ローラ441、442が第2の位置にあるとき、ガイドレール25から取り外すことができる。
【0057】
また、同様のローラ441、442をフック装置300に対して使用してもよい。フック装置300の第1の本体部310は、ローラによってガイドレール25上を滑動可能に支持される。これにより、運搬装置600が下降して別のガイドレール要素を取り込む際に、フック装置300は設置済みガイドレール要素25の列上を下方に滑動できる。
【0058】
【0059】
運搬台500は、底部面510および底部面510の上方に垂直方向に間隔をあけて配設された天井面520を備えていてもよい。底部面510は、1人以上の技術者および/または1台以上のロボットおよび/または工具用の作業面を形成してもよい。垂直支持バー530は、底部面510と天井面520との間に延びていてもよい。運搬台500の各面510、520の両端部に、2つの支持ローラ540を設けてもよい。支持ローラ540は、シャフト20の対向する壁21において運搬台500を支持することができる。支持ローラ540は、運搬台500がシャフト20内で上昇および下降する際に、運搬台500を実質的に水平に保持することができる。運搬台500はさらに、運搬台500をシャフト20の壁21に固定する固定手段を備えていてもよい。固定手段は、シャフト20内にある2枚の対向する壁21に抗して働く油圧シリンダによって具現化されてもよい。
【0060】
さらに、ガイドレール25の設置時に吊り上げるガイドレール要素25のバイパス路550、551を、運搬台500に設けてもよい。バイパス路550、551は、運搬台500の周縁部から内側にせり出すくぼみの形状であってもよい。また、バイパス路550、551によって、運搬台500を避ける測鉛線PL1、PL2用空間を確保することができる。
【0061】
運搬台500は、シャフト20に対する運搬台500の位置を測定する測定装置MD10、MD11、MD12、MD13を備えていてもよい。測定装置MD10、MD11、MD12、MD13は、運搬台500がシャフト20に固定されると、シャフト20内の運搬台500の位置を測鉛線PL1、PL2に基づいて割り出すことができる。測定装置MD10、MD11、MD12、MD13は、ワイヤで形成される測鉛線PL1、PL2の位置に接することなく測定を行うセンサに基づくものでよい。他の実現可能な方式として、例えばエレベータシャフトの底部に設けられ、運搬台500の測定装置MD10、MD11、MD12、MD13によって測定可能な上方向への光線を発生させるレーザなどの光源を使用することができる。測定装置MD10、MD11、MD12、MD13は、光源から発生する光線の命中点を判断する光感応性センサまたはデジタル画像装置でもよい。光源はロボティックトータルステーションでもよく、その場合、測定装置MD10、MD11、MD12、MD13は、光線を反射してロボティックトータルステーションに戻す反射器となり得る。これにより、ロボティックトータルステーションは、測定装置MD10、MD11、MD12、MD13の位置を判断する。
【0062】
運搬台500はさらに、シャフト20内の運搬台500の垂直位置、すなわち高さ位置を割り出す距離測定装置MD15、MD16を備えていてもよい。距離測定は、レーザ測定に基づくものでよい。
【0063】
【0064】
ブラケット26は、相互に可動するよう取り付けられた2つの独立した部品26A、26Bで形成してもよい。ブラケット26の第1の部品26Aはガイドレール25に取り付けてもよく、ブラケット26の第2の部品26Bはシャフト20の壁21に取り付けてもよい。第1の部品26Aと第2の部品26Bは、垂直部分および水平部分を有するL字形状でよい。ブラケット26の第1の部品26Aは、垂直部分からクランプ26Cおよびボルト26Dを用いてガイドレール25に取り付けてもよい。ブラケット26の第2の部品26Bは、垂直部分からシャフト20の壁21に取り付けてもよい。ブラケット26の第1の部品26Aおよび第2の部品26Bの水平部分は、第1の部品26Aおよび第2の部品26Bの水平部分に設けられた開口部を貫通するボルトによって互いに取り付けてもよい。開口部は、ブラケット26の第1の部品26Aを第2の部品26Bに対して微調整してガイドレール25との位置調節を可能にする寸法でよい。
【0065】
ブラケット26の第2の部品26Bは、アンカボルト26Fを用いてシャフト20の壁21に取り付けてもよい。ブラケット26の第2の部品26Bの垂直部分は、第2の部品26Bの垂直部分の下端に開口する長円形の開口部26Eを含んでいてもよい。アンカボルト26F用の穴は、シャフト20の壁21の所定の位置に穿設してもよい。アンカボルト26Fは、穿設した穴に螺合してもよい。ボルト26Fの一部だけをねじ切り部に螺合して、ボルト26Fの頭部を締結面から離すようにしてもよい。さらに、ブラケット26の第2の部品26Bは、ガイドレール25の設置前またはガイドレール25の設置のときに、シャフト20の壁21に取り付けてもよい。
【0066】
ボルト26Fを締結することで、ブラケット26の第2の部品26Bがシャフト20の壁21に取り付けられる。ボルト26Fは、運搬台500から技術者による手作業で、あるいはロボットを使用して締結してもよい。
【0067】
【0068】
連結板50は、締結ボルト用の孔51を設けた矩形であってもよい。連結板50は、ガイドレール要素25の底部25Aの裏面に接して配置することができる。締結ボルトは、連結板50の孔51およびガイドレール要素25の底部25Aにある対応する孔を貫通することができる。これにより、2つの連続するガイドレール要素25を連結板50に連結することができる。
【0069】
ガイドレール25は、シャフト20内の各壁21に設置した後で位置調整してもよい。ガイドレール25の位置調整は、任意の周知の方法で行ってもよい。
【0070】
図面では、1台の第1の巻上機H1のみを運搬装置600とともに使用する実施形態を示している。第1の巻上機H1の懸垂点は、設置時に変更すべきであろう。設置しようとするガイドレール要素25の列ごとに、第1の巻上機H1に対する各自の懸垂点を必要とするであろう。当然のことながら、複数の第1の巻上機H1をシャフト20の天井から懸垂することも可能である。その場合、第1の巻上機H1のそれぞれは各自の運搬装置600を備えることになる。これは、ガイドレール要素25の列を複数列同時にシャフト20内に設置できることを意味する。
【0071】
図示のシャフト20は1台の乗りかご10だけを利用対象としているが、当然のことながら、複数の乗りかご10を利用対象とするシャフトに使用することも可能である。このようなエレベータシャフト20は、鋼棒を使用して、各乗りかご10に対するサブシャフトに分けることも可能である。水平鋼棒を、所定の間隔でシャフト20の高さ方向に沿って配してもよい。これにより、ガイドレール25の一部分がシャフト20の鋼棒に取り付けられることになる。ガイドレール25の別の一部分は、シャフト20の固体壁21に取り付けられる。
【0072】
本発明は、低層または高層の建物に使用できる。必然的に、本発明の利点は高層の建物においてより大きくなる。高層建物の揚程は、75メートル超、好ましくは100メートル超、さらに好ましくは150メートル超、最も好ましくは250メートル超でもよい。
【0073】
本発明の使用は図示したエレベータに限定されるものではない。本発明は、どのような型式のエレベータであっても使用可能であり、例えば、機械室有りまたは機械室なしのエレベータや、カウンタウェイト有りまたはカウンタウェイトなしのエレベータに使用できる。カウンタウェイトは、エレベータシャフトの一方の側壁もしくは両方の側壁、または後壁に配設してもよい。駆動機、モータ、トラクションシーブおよび機械ブレーキは、機械室またはエレベータシャフトの任意の場所に配設してもよいであろう。乗りかご用ガイドレールは、いわゆるリュックサック型エレベータの場合、シャフトの対向し合う側壁またはシャフトの後壁に配設できるであろう。
【0074】
当業者には明白なことであるが、発明の概念は、技術の進歩に合わせて様々な方法で実施可能である。本発明およびその実施形態は上記の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲内で変更してもよい。
【符号の説明】
【0075】
20 シャフト
21 壁
25 ガイドレール要素
26 ブラケット
50 連結板
300 フック装置
400 レバー装置
500 運搬台
540 ローラ
600 運搬装置
H1、H2 巻上機