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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】樹脂組成物、封止シート及び封止体
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20231017BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20231017BHJP
   C09J 123/26 20060101ALI20231017BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231017BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231017BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20231017BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C09K3/10 Z
C09J7/30
C09J123/26
C09J11/06
B32B27/00 D
H01L23/30 F
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020511007
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2019013693
(87)【国際公開番号】W WO2019189617
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2018061660
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018128365
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】前谷 枝保
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 健太
(72)【発明者】
【氏名】樫尾 幹広
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-529617(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102161793(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102153802(CN,A)
【文献】特開2003-238885(JP,A)
【文献】特開平11-140414(JP,A)
【文献】特開2008-056848(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047868(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/10
C09J 1/00-201/10
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材又は剥離フィルムと、前記基材又は剥離フィルム上に形成された接着剤層とからなる封止シートであって、
前記接着剤層が、下記の樹脂組成物1を用いて形成されたものである封止シート。
(樹脂組成物1)
下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する樹脂組成物。
(A)成分:酸変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:オキシラン基又はオキセタン基を有する化合物
(C)成分:光カチオン重合開始剤
【請求項2】
2枚の剥離フィルムと、前記2枚の剥離フィルムに挟持された接着剤層とからなる封止シートであって、
前記接着剤層が、下記の樹脂組成物1を用いて形成されたものである封止シート。
(樹脂組成物1)
下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する樹脂組成物。
(A)成分:酸変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:オキシラン基又はオキセタン基を有する化合物
(C)成分:光カチオン重合開始剤
【請求項3】
剥離フィルム、ガスバリア性フィルム、及び、前記剥離フィルムとガスバリア性フィルムに挟持された接着剤層からなる封止シートであって、
前記接着剤層が、下記の樹脂組成物1を用いて形成されたものである封止シート。
(樹脂組成物1)
下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する樹脂組成物。
(A)成分:酸変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:オキシラン基又はオキセタン基を有する化合物
(C)成分:光カチオン重合開始剤
【請求項4】
前記ガスバリア性フィルムが、金属箔、樹脂製フィルム、又は薄膜ガラスである請求項3に記載の封止シート。
【請求項5】
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、5~50質量部である、請求項1~4のいずれかに記載の封止シート。
【請求項6】
前記(C)成分が、芳香族スルホニウム塩系化合物である、請求項1~5のいずれかに記載の封止シート。
【請求項7】
前記(C)成分の含有量が、前記(B)成分100質量部に対して、0.04~2質量部である、請求項1~6のいずれかに記載の封止シート。
【請求項8】
前記樹脂組成物1が、さらに、粘着付与剤を含有するものである、請求項1~7のいずれかに記載の封止シート。
【請求項9】
前記粘着付与剤の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、1~200質量部である、請求項8に記載の封止シート。
【請求項10】
前記樹脂組成物1が、さらに、シランカップリング剤を含有するものである、請求項1~9のいずれかに記載の封止シート。
【請求項11】
前記シランカップリング剤の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、0.01~10質量部である、請求項10に記載の封止シート。
【請求項12】
被封止物が、請求項1~11のいずれかに記載の封止シートを用いて封止されてなる封止体であって、
前記封止シートを構成する接着剤層又は前記封止シート由来の接着剤層が、前記被封止物と密着し、前記被封止物を覆うものである封止体
【請求項13】
前記被封止物が、電子デバイスである、請求項12に記載の封止体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート加工性(造膜性)に優れる樹脂組成物、この樹脂組成物を用いて形成された、接着強度、無色透明性及び水蒸気遮断性に優れる接着剤層を有する封止シート、並びに、被封止物が前記封止シートを用いて封止されてなる封止体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子は、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。
しかし、有機EL素子には、時間の経過とともに、発光輝度、発光効率、発光均一性等の発光特性が低下し易いという問題があった。
この発光特性の低下の問題の原因として、酸素や水分等が有機EL素子の内部に浸入し、電極や有機層を劣化させることが考えられたため、封止材を用いて有機EL素子を封止し、酸素や水分の浸入を防止することが行われてきた。
また、封止材を用いて有機EL素子等の被封止物を封止する場合、封止材からアウトガスが発生すると有機EL素子等を劣化させることから、低アウトガス性の封止材の開発も行われてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定のカチオン硬化性化合物、光カチオン重合開始剤、及び特定のグリコールウリル化合物を含有する有機EL素子封止用組成物が記載されている。
また、特許文献1には、その封止用組成物の硬化物は、防湿性及び低アウトガス性を有するため、水分やアウトガスによる有機EL素子の劣化を防止することができることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2017/094809号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、有機EL素子等の被封止物は、屋外や車内等の過酷な条件で使用される場合も多い。このため、優れた防湿性及び低アウトガス性に加え、接着強度にも優れる封止シートや、このような封止シートの原料として好適に用いられる樹脂組成物が要望されている。また、特許文献1に記載されているような有機EL素子封止用組成物の硬化物は、その特定の光学用途から、無色透明性に優れるものであることも要望されている。
しかしながら、特許文献1には、有機EL素子封止用組成物の硬化物の接着強度や無色透明性の物性評価結果については記載されていない。
【0006】
本発明は、シート加工性(造膜性)に優れる樹脂組成物、この樹脂組成物を用いて形成された、接着強度、無色透明性及び水蒸気遮断性に優れる接着剤層を有する封止シート、並びに、被封止物が前記封止シートを用いて封止されてなる封止体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、
(i)変性ポリオレフィン系樹脂、環状エーテル基を有する化合物、及び光カチオン重合開始剤を含有する樹脂組成物は、シート加工性(造膜性)に優れること、及び
(ii)この樹脂組成物を用いて形成される接着剤層を有する封止シートは、接着強度、無色透明性及び水蒸気遮断性に優れること、
を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明によれば、下記〔1〕~〔10〕の樹脂組成物、〔11〕~〔14〕の封止シート、並びに、〔15〕及び〔16〕の封止体が提供される。
【0009】
〔1〕下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する樹脂組成物。
(A)成分:変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:環状エーテル基を有する化合物
(C)成分:光カチオン重合開始剤
【0010】
〔2〕前記(A)成分が、酸変性ポリオレフィン樹脂である、〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕前記(B)成分の環状エーテル基が、オキシラン基又はオキセタン基である、〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、5~50質量部である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0011】
〔5〕前記(C)成分が、芳香族スルホニウム塩系化合物である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔6〕前記(C)成分の含有量が、前記(B)成分100質量部に対して、0.04~2質量部である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0012】
〔7〕さらに、粘着付与剤を含有する、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔8〕前記粘着付与剤の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、1~200質量部である、〔7〕に記載の樹脂組成物。
〔9〕さらに、シランカップリング剤を含有する、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔10〕前記シランカップリング剤の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、0.01~10質量部である、〔9〕に記載の樹脂組成物。
【0013】
〔11〕基材又は剥離フィルムと、前記基材又は剥離フィルム上に形成された接着剤層とからなる封止シートであって、
前記接着剤層が、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて形成されたものである封止シート。
〔12〕2枚の剥離フィルムと、前記2枚の剥離フィルムに挟持された接着剤層とからなる封止シートであって、
前記接着剤層が、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて形成されたものである封止シート。
〔13〕剥離フィルム、ガスバリア性フィルム、及び、前記剥離フィルムとガスバリア性フィルムに挟持された接着剤層からなる封止シートであって、
前記接着剤層が、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて形成されたものである封止シート。
〔14〕前記ガスバリア性フィルムが、金属箔、樹脂製フィルム、又は薄膜ガラスである〔13〕に記載の封止シート。
【0014】
〔15〕被封止物が、〔11〕~〔14〕のいずれかに記載の封止シートを用いて封止されてなる封止体。
〔16〕前記被封止物が、電子デバイスである、〔15〕に記載の封止体。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シート加工性(シート状物に容易に成形できることをいう。「造膜性」ともいう。)に優れる樹脂組成物、この樹脂組成物を用いて形成された、接着強度、無色透明性(全光線透過率が高く、かつ着色が非常に少ないことをいう)及び水蒸気遮断性に優れる接着剤層を有する封止シート、並びに、被封止物が前記封止シートを用いて封止されてなる封止体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、1)樹脂組成物、2)封止シート、及び、3)封止体、に項分けして詳細に説明する。
【0017】
1)樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有するものである。
(A)成分:変性ポリオレフィン系樹脂
(B)成分:環状エーテル基を有する化合物
(C)成分:光カチオン重合開始剤
【0018】
〔(A)成分:変性ポリオレフィン系樹脂〕
本発明の樹脂組成物は、(A)成分として、変性ポリオレフィン系樹脂を含有する。
変性ポリオレフィン系樹脂を含有することで、シート加工性(造膜性)により優れた樹脂組成物、及び接着強度により優れた樹脂組成物の硬化物を得ることができる。また、変性ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂組成物を用いることで、後述する厚みの接着剤層を効率よく形成することができる。
【0019】
変性ポリオレフィン系樹脂は、前駆体としてのポリオレフィン樹脂に、変性剤を用いて変性処理を施して得られる、官能基が導入されたポリオレフィン樹脂である。
【0020】
ポリオレフィン樹脂とは、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位を含む重合体をいう。ポリオレフィン樹脂は、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位の1種又は2種以上のみからなる重合体であってもよいし、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位と、オレフィン系単量体と共重合可能な他の単量体由来の繰り返し単位とからなる重合体であってもよい。
【0021】
オレフィン系単量体としては、炭素数2~8のα-オレフィンが好ましく、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、又は1-ヘキセンがより好ましく、エチレン又はプロピレンがさらに好ましい。
オレフィン系単量体と共重合可能な他の単量体としては、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を表す(以下にて同じである)。
【0022】
ポリオレフィン樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、オレフィン系エラストマー(TPO)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0023】
ポリオレフィン樹脂の変性処理に用いる変性剤は、分子内に、官能基を有する化合物である。
官能基としては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、エポキシ基、アミド基、アンモニウム基、ニトリル基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基、アセチル基、チオール基、エーテル基、チオエーテル基、スルホン基、ホスホン基、ニトロ基、ウレタン基、アルコキシシリル基、シラノール基、ハロゲン原子等が挙げられる。これらの中でも、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、アンモニウム基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基、アルコキシシリル基が好ましく、カルボン酸無水物基、アルコキシシリル基がより好ましく、カルボン酸無水物基が特に好ましい。
官能基を有する化合物は、分子内に2種以上の官能基を有していてもよい。
【0024】
変性ポリオレフィン系樹脂としては、酸変性ポリオレフィン系樹脂、シラン変性ポリオレフィン系樹脂が挙げられ、本発明のより優れた効果が得られる観点から、酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0025】
酸変性ポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィン樹脂に対して酸でグラフト変性したものをいう。例えば、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸を反応させて、カルボキシル基を導入(グラフト変性)したものが挙げられる。なお、本明細書において、酸とは、酸無水物の概念を含み、不飽和カルボン酸とは、不飽和カルボン酸無水物の概念を含み、カルボキシル基とは、カルボン酸無水物基の概念を含むものである。
【0026】
ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、アコニット酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。
これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、シート加工性(造膜性)により優れた樹脂組成物、及び接着強度により優れた樹脂組成物の硬化物が得られ易いことから、無水マレイン酸が好ましい。
【0027】
ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和カルボン酸の量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~3質量部、さらに好ましくは0.2~1質量部である。このようにして得られた酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂組成物は、接着強度により優れた硬化物が得られ易くなる。
【0028】
酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、アドマー(登録商標)(三井化学社製)、ユニストール(登録商標)(三井化学社製)、BondyRam(Polyram社製)、orevac(登録商標)(ARKEMA社製)、モディック(登録商標)(三菱化学社製)等が挙げられる。
【0029】
シラン変性ポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィン樹脂に対して不飽和シラン化合物でグラフト変性したものをいう。シラン変性ポリオレフィン系樹脂は、主鎖であるポリオレフィン樹脂に側鎖である不飽和シラン化合物がグラフト共重合した構造を有する。例えば、シラン変性ポリエチレン樹脂およびシラン変性エチレン-酢酸ビニル共重合体が挙げられ、シラン変性低密度ポリエチレン、シラン変性超低密度ポリエチレン、シラン変性直鎖状低密度ポリエチレン等のシラン変性ポリエチレン樹脂が好ましい。
【0030】
上記ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和シラン化合物としては、ビニルシラン化合物が好ましい。ビニルシラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリカルボキシシラン等が挙げられる。
これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、不飽和シラン化合物を主鎖であるポリオレフィン樹脂にグラフト重合させる場合の条件は、公知のグラフト重合の常法を採用すればよい。
【0031】
ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和シラン化合物の量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.3~7質量部、さらに好ましくは0.5~5質量部である。このようにして得られたシラン変性ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂組成物は、接着強度により優れた硬化物が得られ易くなる。
【0032】
シラン変性ポリオレフィン系樹脂としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、リンクロン(登録商標)(三菱化学社製)等が挙げられる。これらの中でも、低密度ポリエチレン系のリンクロン、直鎖状低密度ポリエチレン系のリンクロン、超低密度ポリエチレン系のリンクロン、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体系のリンクロンを好ましく使用することができる。
【0033】
変性ポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
変性ポリオレフィン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは10,000~2,000,000、より好ましくは、20,000~1,500,000である。
変性ポリオレフィン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を行い、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0035】
〔(B)成分:環状エーテル基を有する化合物〕
本発明の樹脂組成物は、(B)成分として、環状エーテル基を有する化合物を含有する。
環状エーテル基を有する化合物は、(A)成分との相溶性に優れるため、このものを使用することで、シート加工性(造膜性)に優れる樹脂組成物、並びに、無色透明性及び水蒸気遮断性に優れる樹脂組成物の硬化物を得ることができる。
【0036】
環状エーテル基としては、オキシラン基(エポキシ基)、オキセタン基(オキセタニル基)、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
環状エーテル基を有する化合物とは、分子内に少なくとも1個以上の環状エーテル基を有する化合物をいう。なかでも、シート加工性(造膜性)により優れた樹脂組成物、及び接着強度により優れた樹脂組成物の硬化物を得ることができるという観点から、オキシラン基又はオキセタン基を有する化合物であることが好ましく、分子内に2個以上のオキシラン基又はオキセタン基を有する化合物が特に好ましい。
【0037】
分子内にオキシラン基を有する化合物としては、例えば、脂肪族エポキシ化合物(脂環式エポキシ化合物を除く)、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。
脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族アルコールのグリシジルエーテル化物、アルキルカルボン酸のグリシジルエステル等の単官能エポキシ化合物;
脂肪族多価アルコール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル化物、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、トリアジン骨格を有するポキシ化合物等の多官能エポキシ化合物が挙げられる。
【0038】
これらの脂肪族エポキシ化合物の代表的な化合物としては、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、C12~13混合アルキルグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル、またプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種、又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル化物、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル;
脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルや高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化ポリブタジエン;
2,4,6-トリ(グリシジルオキシ)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0039】
また、脂肪族エポキシ化合物として、市販品を用いることもできる。市販品としては、デナコールEX-121、デナコールEX-171、デナコールEX-192、デナコールEX-211、デナコールEX-212、デナコールEX-313、デナコールEX-314、デナコールEX-321、デナコールEX-411、デナコールEX-421、デナコールEX-512、デナコールEX-521、デナコールEX-611、デナコールEX-612、デナコールEX-614、デナコールEX-622、デナコールEX-810、デナコールEX-811、デナコールEX-850、デナコールEX-851、デナコールEX-821、デナコールEX-830、デナコールEX-832、デナコールEX-841、デナコールEX-861、デナコールEX-911、デナコールEX-941、デナコールEX-920、デナコールEX-931(以上、ナガセケムテックス社製);
エポライトM-1230、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト1600、エポライト80MF、エポライト100MF(以上、共栄社化学社製);
アデカグリシロールED-503、アデカグリシロールED-503G、アデカグリシロールED-506、アデカグリシロールED-523T、アデカレジンEP-4088S、アデカレジンEP-4088L、アデカレジンEP-4080E(以上、ADEKA社製);
TEPIC-FL、TEPIC-PAS、TEPIC-UC(以上、日産化学社製)等が挙げられる。
【0040】
芳香族エポキシ化合物としては、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール等の、芳香族環を少なくとも1個以上有する多価フェノール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のモノ/ポリグリシジルエーテル化物等が挙げられる。
これらの芳香族エポキシ化合物の代表的な化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はこれらにさらにアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテル化物やエポキシノボラック樹脂;
レゾルシノールやハイドロキノン、カテコール等の2個以上のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物のモノ/ポリグリシジルエーテル化物;
フェニルジメタノールやフェニルジエタノール、フェニルジブタノール等のアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のグリシジルエーテル化物;
フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の2個以上のカルボン酸を有する多塩基酸芳香族化合物のグリシジルエステル、安息香酸のグリシジルエステル、スチレンオキサイド又はジビニルベンゼンのエポキシ化物等が挙げられる。
【0041】
また、芳香族エポキシ化合物として、市販品を用いることもできる。市販品としては、デナコールEX-146、デナコールEX-147、デナコールEX-201、デナコールEX-203、デナコールEX-711、デナコールEX-721、オンコートEX-1020、オンコートEX-1030、オンコートEX-1040、オンコートEX-1050、オンコートEX-1051、オンコートEX-1010、オンコートEX-1011、オンコート1012(以上、ナガセケムテックス社製);
オグソールPG-100、オグソールEG-200、オグソールEG-210、オグソールEG-250(以上、大阪ガスケミカル社製);
HP4032、HP4032D、HP4700(以上、DIC社製);
ESN-475V(以上、新日鉄住金化学社製);
JER(旧エピコート)YX8800(三菱化学社製);
マープルーフG-0105SA、マープルーフG-0130SP(以上、日油(株)社製);
エピクロンN-665、エピクロンHP-7200(以上、DIC社製);
EOCN-1020、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、XD-1000、NC-3000、EPPN-501H、EPPN-501HY、EPPN-502H、NC-7000L(以上、日本化薬社製);
アデカレジンEP-4000、アデカレジンEP-4005、アデカレジンEP-4100、アデカレジンEP-4901(以上、ADEKA社製);
TECHMORE VG-3101L(以上、プリンテック社製)等が挙げられる。
【0042】
脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個以上の脂環式構造を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル化物、又はシクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。
これらの脂環式エポキシ化合物の代表的な化合物としては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、プロパン-2,2-ジイル-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-2-エポキシエチルシクロヘキサン、α-ピネンオキシド、リモネンジオキシド等が挙げられる。
【0043】
また、脂環式エポキシ化合物として、市販品を用いることもできる。市販品としては、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2000、セロキサイド3000(ダイセル社製)等が挙げられる。
【0044】
分子内にオキセタン基を有する化合物としては、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン等の二官能脂肪族オキセタン化合物、3-エチル-3-[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(クロロメチル)オキセタン等の一官能オキセタン化合物等が挙げられる。
【0045】
分子内にオキセタン基を有する化合物としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル(以上、丸善石油化学社製);
アロンオキセタンOXT-121、OXT-221、EXOH、POX、OXA、OXT-101、OXT-211、OXT-212(以上、東亞合成社製);
エタナコールOXBP、OXTP(以上、宇部興産社製)等が挙げられる。
【0046】
これらの環状エーテル基を有する化合物の中でも、シート加工性(造膜性)により優れた樹脂組成物、及び接着強度により優れた樹脂組成物の硬化物を得ることができるという観点から、25℃で液状であるものが好ましい。また、環状エーテル基がオキシラン基であるものが好ましい。
【0047】
環状エーテル基を有する化合物の分子量は、通常、700~5000、好ましくは1200~4000ある。
環状エーテル基を有する化合物の環状エーテル当量は、好ましくは100g/eq以上500g/eq以下、より好ましくは150g/eq以上300g/eq以下である。
環状エーテル基を有する化合物の環状エーテル当量が上記範囲にある樹脂組成物を用いることで、接着強度が強く硬化性に優れる封止材を効率よく作製することができる。
これらの環状エーテル基を有する化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明における環状エーテル当量とは、分子量を環状エーテル基数で除した値を意味する。
【0048】
環状エーテル基を有する化合物の含有量は、前記(A)成分100質量部に対して、好ましくは5~50質量部、より好ましくは5~40質量部であり、さらに好ましくは5~25質量部である。
環状エーテル基を有する化合物の含有量を上記範囲とすることで、接着強度により優れる樹脂組成物の硬化物が得られやすくなる。
【0049】
〔(C)成分:光カチオン重合開始剤〕
本発明の樹脂組成物は、(C)成分として、光カチオン重合開始剤を含有する。
光カチオン重合開始剤は、光の照射によってカチオン種を発生してカチオン硬化性化合物の硬化反応を開始させる化合物であり、光を吸収するカチオン部と酸の発生源となるアニオン部からなる。
【0050】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、スルホニウム塩系化合物、ヨードニウム塩系化合物、ホスホニウム塩系化合物、アンモニウム塩系化合物、アンチモン酸塩系化合物、ジアゾニウム塩系化合物、セレニウム塩系化合物、オキソニウム塩系化合物、臭素塩系化合物等が挙げられる。これらの中でも、(B)成分との相溶性に優れ、得られる樹脂組成物の保存安定性に優れるという観点から、スルホニウム塩系化合物が好ましく、芳香族基を有する芳香族スルホニウム塩系化合物がより好ましい。
【0051】
スルホニウム塩系化合物としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4’-ビス[ジフェニルスルホニオ]ジフェニルスルフィド-ビスヘキサフルオロホスフェート、4,4’-ビス[ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]ジフェニルスルフィド-ビスヘキサフルオロアンチモネート、7-[ジ(p-トルイル)スルホニオ]-2-イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロホスフェート、7-[ジ(p-トルイル)スルホニオ]-2-イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート、7-[ジ(p-トルイル)スルホニオ]-2-イソプロピルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド-ヘキサフルオロホスフェート、フェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド-ヘキサフルオロアンチモネート、4-tert-ブチルフェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド-ヘキサフルオロホスフェート、4-tert-ブチルフェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド-ヘキサフルオロアンチモネート、4-tert-ブチルフェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、チオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、チオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4-{4-(2-クロロベンゾイル)フェニルチオ}フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、チオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートのハロゲン化物、4,4’,4’’-トリ(β-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4,4’-ビス[ジフェニルスルホニオ]ジフェニルスルフィド-ビスヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート、トリス[4-(4-アセチルフェニルスルファニル)フェニル]スルホニウムトリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタニド等が挙げられる。
【0052】
ヨードニウム塩系化合物としては、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、(トリクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0053】
ホスホニウム塩系化合物としては、トリ-n-ブチル(2,5-ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等が挙げられる。
【0054】
アンモニウム塩系化合物としては、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
【0055】
アンチモン酸塩系化合物としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート及びジアリルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0056】
これらの光カチオン重合開始剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
また、光カチオン重合開始剤として、市販品を用いることもできる。市販品としては、サイラキュアUVI-6970、サイラキュアUVI-6974、サイラキュアUVI-6990、サイラキュアUVI-950(以上、ユニオンカーバイド社製)、イルガキュア250、イルガキュア261、イルガキュア264(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、SP-150、SP-151、SP-170、オプトマーSP-171(以上、ADEKA社製)、CG-24-61(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、DAICAT II(ダイセル社製)、UVAC1590、UVAC1591(以上、ダイセル・サイテック社製)、CI-2064、CI-2639、CI-2624、CI-2481、CI-2734、CI-2855、CI-2823、CI-2758、CIT-1682(以上、日本曹達社製)、PI-2074(ローディア社製)、FFC509(3M社製)、BBI-102、BBI-101、BBI-103、MPI-103、TPS-103、MDS-103、DTS-103、NAT-103、NDS-103(以上、ミドリ化学社製)、CD-1010、CD-1011、CD-1012(Sartomer社製)、CPI-100P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-310B(以上、サンアプロ社製)等が挙げられる。
【0058】
光カチオン重合開始剤の含有量は、前記(B)成分100質量部に対して、通常、0.02~2質量部、好ましくは0.03~1質量部、より好ましくは0.04~0.5質量部である。
光カチオン重合開始剤の含有量を上記範囲とすることで、接着強度により優れた樹脂組成物の硬化物が得られやすくなる。
光カチオン重合開始剤の含有量が多すぎると、硬化後の弾性率が高くなり過ぎてしまい、樹脂組成物の硬化物の接着強度が低下するおそれがある。
【0059】
本発明の樹脂組成物は、前記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分以外の成分を含有してもよい。
前記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分以外の成分としては、粘着付与剤、シランカップリング剤及び溶媒等が挙げられる。
【0060】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等のロジン系樹脂;これらロジン系樹脂を水素化した水素化ロジン系樹脂;
テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール系樹脂等のテルペン系樹脂;これらテルペン系樹脂を水素化した水素化テルペン系樹脂;
α-メチルスチレン単一重合系樹脂、α-メチルスチレン/スチレン共重合系樹脂、スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合系樹脂、スチレン系モノマー/α-メチルスチレン/脂肪族系モノマー共重合系樹脂、スチレン系モノマー単一重合系樹脂、スチレン系モノマー/芳香族系モノマー共重合系樹脂等のスチレン系樹脂;これらスチレン系樹脂を水素化した水素化スチレン系樹脂;
石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1.3-ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂及びこのC5系石油樹脂の水素化石油樹脂;
石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂及びこのC9系石油樹脂を水素化石油樹脂;等が挙げられる。これらの中でも、スチレン系樹脂が好ましく、スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合系樹脂がより好ましい。
これらの粘着付与剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
粘着付与剤は、市販品を用いることもできる。市販品としては、YSレジンP、Aシリーズ、クリアロン(登録商標)Pシリーズ(ヤスハラケミカル製)、ピコライトA、Cシリーズ(PINOVA社製)等のテルペン系樹脂;
クイントン(登録商標)A、B、R、CXシリーズ(日本ゼオン社製)等の脂肪族系石油樹脂;
FTR(登録商標)シリーズ(三井化学社製)等のスチレン系樹脂;
アルコンP、Mシリーズ(荒川化学社製)、ESCOREZ(登録商標)シリーズ(エクソンモービル・ケミカル社製)、EASTOTAC(登録商標)シリーズ(イーストマン・ケミカル社製)、IMARV(登録商標)シリーズ(出光興産社製)等の脂環族系石油樹脂;
フォーラルシリーズ(PINOVA社製)、ペンセル(登録商標)Aシリーズ、エステルガム、スーパー・エステル、パインクリスタル(登録商標)(荒川化学工業社製)等のエステル系樹脂;等が挙げられる。
【0062】
粘着付与剤の重量平均分子量は、優れた粘着性を付与する観点から、好ましくは、100~10,000、より好ましくは500~5,000である。
粘着付与剤の軟化点は、優れた粘着性を付与する観点から、好ましくは、50~160℃、より好ましくは60~140℃、さらに好ましくは70~130℃である。
【0063】
本発明の樹脂組成物が粘着付与剤を含有する場合、その含有量は、前記(A)成分100質量部に対して、好ましくは1~200質量部、より好ましくは10~150質量部である。
粘着付与剤の含有量を上記範囲とすることで、接着強度により優れる樹脂組成物の硬化物が得られやすくなる。
【0064】
シランカップリング剤としては、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン等のビニル基を有するシランカップリング剤;
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤;
p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン等のスチリル基を有するシランカップリング剤;
N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル・ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等のアミノ基を有するシランカップリング剤;
3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を有するシランカップリング剤;
3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のハロゲン原子を有するシランカップリング剤;
3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤;
ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するシランカップリング剤;
3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するシランカップリング剤;
アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン等のアリル基を有するシランカップリング剤;
3-ヒドキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドキシプロピルトリエトキシシラン等の水酸基を有するシランカップリング剤;等が挙げられる。
これらのシランカップリング剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
本発明の樹脂組成物がシランカップリング剤を含有する場合、その含有量は、前記(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.02~5質量部である。
シランカップリング剤の含有量を上記範囲とすることで、接着強度により優れる樹脂組成物の硬化物が得られやすくなる。
【0066】
溶媒としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;
ジクロロメタン、塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;
メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;
アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;
酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;
エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;
1,3-ジオキソラン等のエーテル系溶媒;等が挙げられる。
これらの溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。溶媒の含有量は、塗工性や膜厚等を考慮して適宜決定することができる。
【0067】
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、前記粘着付与剤、シランカップリング剤及び溶媒以外の成分を含有してもよい。
前記粘着付与剤、シランカップリング剤及び溶媒以外の成分としては、帯電防止剤、安定剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、着色顔料等が挙げられる。これらの含有量は、目的に合わせて適宜決定すればよい。
【0068】
本発明の樹脂組成物は、所定の成分を、常法に従って適宜混合・攪拌することにより調製することができる。
【0069】
2)封止シート
本発明の封止シートは、下記の封止シート(α)、封止シート(β)又は封止シート(γ)である。
封止シート(α):基材又は剥離フィルムと、前記基材又は剥離フィルム上に形成された接着剤層とからなる封止シートであって、前記接着剤層が、本発明の樹脂組成物を用いて形成されたものである封止シート。
封止シート(β):2枚の剥離フィルムと、前記2枚の剥離フィルムに挟持された接着剤層とからなる封止シートであって、前記接着剤層が、本発明の樹脂組成物を用いて形成されたものである封止シート。
封止シート(γ):剥離フィルム、ガスバリア性フィルム、及び、前記剥離フィルムとガスバリア性フィルムに挟持された接着剤層からなる封止シートであって、前記接着剤層が、本発明の樹脂組成物を用いて形成されたものである封止シート。
なお、これらの封止シートは使用前の状態を表したものであり、本発明の封止シートを使用する際は、通常、剥離フィルムは剥離除去される。
【0070】
封止シート(α)を構成する基材としては、通常、樹脂フィルムを利用することができる。
樹脂フィルムの樹脂成分としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体、ポリウレタン系ポリマー等が挙げられる。
基材の厚みは、特に制限はないが、接着剤層の乾燥工程での熱収縮や、汎用性の観点から、好ましくは10~500μm、より好ましくは10~300μm、さらに好ましくは15~200μmである。
【0071】
封止シート(α)を構成する剥離フィルムは、封止シート(α)の製造工程においては支持体として機能するとともに、封止シート(α)を使用するまでの間は、接着剤層の保護シートとして機能する。
【0072】
剥離フィルムとしては、従来公知のものを利用することができる。例えば、剥離フィルム用の基材上に、剥離剤により剥離処理された剥離層を有するものが挙げられる。
剥離フィルム用の基材としては、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材;これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のプラスチックフィルム;等が挙げられる。
剥離剤としては、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
剥離フィルムの厚みは、特に制限はないが、通常20~250μm程度である。
【0073】
封止シート(α)の製造方法は特に限定されない。例えば、キャスト法を用いて、封止シート(α)を製造することができる。
封止シート(α)をキャスト法により製造する場合、公知の方法を用いて、本発明の樹脂組成物を、基材又は剥離フィルムの剥離処理された剥離層面に塗工し、得られた塗膜を乾燥することで、封止シート(α)を得ることができる。
【0074】
樹脂組成物を塗工する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0075】
塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が挙げられる。
塗膜を乾燥するときの条件としては、例えば、80~150℃で30秒から5分間である。
【0076】
封止シート(α)の接着剤層は、本発明の樹脂組成物を用いて形成された塗膜を光硬化させることにより形成することができる。
【0077】
光硬化させる際の条件は特に限定されない。紫外線、可視光線、X線、電子線のような活性エネルギー線を照射することによって接着剤層を光硬化させることができる。
本発明においては、透明性に優れる封止シートを得ることができる観点から、紫外線照射による光硬化が好ましい。
【0078】
紫外線を照射する紫外線源の具体例としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源が挙げられる。また、照射する紫外線の波長としては、190~380nmの波長域を使用することができる。
紫外線の照射量は、照度50~1000mW/cm、光量50~1000mJ/cm程度が好ましい。
紫外線の照射時間は、通常、0.1~1000秒、好ましくは1~500秒程度である。
【0079】
封止シート(α)の接着剤層の厚みは、通常、1~50μmであり、好ましくは5~30μmである。厚みが上記範囲内にある接着剤層は、封止材として好適に用いられる。
接着剤層の厚みは、公知の厚み計を用いて、JIS K 7130(1999)に準じて測定することができる。
【0080】
本発明の封止シートの接着剤層は接着強度に優れる。
接着剤層の接着強度は、温度23℃・相対湿度50%の条件下で180°剥離試験を行った場合、通常、1~20N/25mm、好ましくは2.5~15N/25mmである。この180°剥離試験は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0081】
本発明の封止シートの接着剤層は無色透明性に優れる。
光硬化処理後の厚みが20μmの接着剤層の全光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。全光線透過率の上限は特にないが、通常は、95%以下である。
上記のように、本発明の樹脂組成物においては、変性ポリオレフィン系樹脂を(A)成分として使用し、さらに、この(A)成分と相溶性の高い環状エーテル基を有する化合物を(B)成分として使用する。その結果、本発明の封止シートの接着剤層は、全光線透過率が高いものとなる。この全光線透過率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0082】
また、光硬化処理により得られる、厚みが20μmの接着剤層は、これを測色したときに、JIS Z 8781-4(2013)に規定されるCIE1976L*a*b*表色系におけるL*値が、90~98になるものである。また、a*値が、-2~2になるものである。また、b*値が、-2~2になるものである。
【0083】
L*a*b*表色系において、L*は明度を、a*及びb*は色相と彩度をそれぞれ示す。a*が正の値の場合は赤方向、a*が負の値の場合は緑方向、b*が正の値の場合は黄方向、b*が負の値の場合は青方向の色彩と彩度を示す。a*、b*の絶対値が小さくなるにしたがって無色となる。
【0084】
光硬化処理により得られる接着剤層のL*値は、好ましくは92~98、より好ましくは94~98である。
また、a*値は、通常、-2~2、好ましくは-1~1、より好ましくは-0.5~0.5である。
また、b*値は、通常、-2~2、好ましくは-1~1、より好ましくは-0.5~0.5である。
光硬化処理により得られる接着剤層は、赤方向(+a*)、緑方向(-a*)、黄方向(+b*)、及び青方向(-b*)にも偏りが少ないものである。
L*が上記範囲にあり、かつ、a*及びb*の色域が上記範囲にある接着剤層を形成することができる樹脂組成物は、全光線透過率が高く、かつ着色が非常に少ないため、有機EL素子等の発光デバイスの封止材として好適に用いられる。
このため、本発明の封止シートは、有機EL素子等の発光デバイスの封止材等の光学用途において好適に用いられる。
CIE1976L*a*b*表色系におけるL*a*b*値は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0085】
封止シートの黄色度(YI値)は、通常、0.01~2、好ましくは0.01~1である。この黄色度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0086】
さらに、本発明の封止シートの接着剤層は水蒸気遮断性に優れる。
光硬化処理により得られる、厚みが20μmの接着剤層の水蒸気透過率は、通常、0.1~200g/m/day、好ましくは0.1~150g/m/dayである。この水蒸気透過率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0087】
封止シート(β)を構成する剥離フィルムと接着剤層は、それぞれ、封止シート(α)を構成する剥離フィルムと接着剤層として示したものと同様のものが挙げられる。
【0088】
封止シート(β)における2枚の剥離フィルムは同一であっても、異なっていてもよいが、2枚の剥離フィルムは異なる剥離力を有するものが好ましい。2枚の剥離フィルムの剥離力が異なることで、封止シートの使用時に問題が発生し難くなる。すなわち、2枚の剥離フィルムの剥離力を異なるようにすることで、最初に剥離フィルムを剥離する工程をより効率よく行うことができる。
【0089】
封止シート(β)の製造方法は特に限定されない。
例えば、封止シート(β)をキャスト法により製造する場合、封止シート(α)の製造方法で示した方法と同様の方法を利用し、本発明の樹脂組成物を剥離フィルムの剥離処理された剥離層面に塗工し、得られた塗膜を乾燥し、該塗膜を光硬化させることで、剥離フィルム付接着剤層を製造し、次いで、もう1枚の剥離フィルムを接着剤層上に重ねることで、封止シート(β)を得ることができる。
【0090】
封止シート(γ)を構成する剥離フィルムと接着剤層は、それぞれ、封止シート(α)又は封止シート(β)を構成する剥離フィルムと接着剤層として示したものと同様のものが挙げられる。
封止シート(γ)を構成するガスバリア性フィルムは、水蒸気遮断性を有するフィルムであれば特に限定されない。
【0091】
ガスバリア性フィルムは、温度40℃・相対湿度90%(以下、「90%RH」と略記する。)の環境下における水蒸気透過率が0.1g/m/day以下であることが好ましく、0.05g/m/day以下であることがより好ましく、0.005g/m/day以下であることがさらに好ましい。
ガスバリア性フィルムの温度40℃・90%RHの環境下における水蒸気透過率が0.1g/m/day以下であることで、基板上に形成された有機EL素子等の素子内部に酸素や水分等が浸入し、電極や有機層が劣化することを効果的に抑制することができる。
ガスバリア性フィルムの水蒸気等の透過率は、公知のガス透過率測定装置を使用して測定することができる。
【0092】
ガスバリア性フィルムとしては、金属箔、薄膜ガラス、樹脂製フィルム等が挙げられる。これらの中でも、樹脂製フィルムが好ましく、基材とガスバリア層とを有するガスバリア性フィルムがより好ましい。
【0093】
基材を構成する樹脂成分としては、上記封止シート(α)を構成する基材として利用することができる樹脂フィルムの樹脂成分と同様のものが挙げられる。
基材の厚みは、特に制限はないが、取り扱い易さの観点から、好ましくは0.5~500μm、より好ましくは1~200μm、さらに好ましくは5~100μmである。
【0094】
ガスバリア層は、所望のガスバリア性を付与することができるものであれば、材質等は特に限定されない。ガスバリア層としては、無機蒸着膜からなるガスバリア層、ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層、高分子化合物を含む層(以下、「高分子層」ということがある。)に改質処理を施して得られるガスバリア層〔この場合、ガスバリア層とは、イオン注入処理等により改質された領域のみを意味するのではなく、「改質された領域を含む高分子層」を意味する。〕等が挙げられる。
これらの中でも、薄く、ガスバリア性に優れる層を効率よく形成できることから、無機蒸着膜からなるガスバリア層、又は高分子層に改質処理を施して得られるガスバリア層が好ましい。ガスバリアフィルムは、これらのガスバリア層の2種以上を有していてもよい。
【0095】
無機蒸着膜としては、無機化合物や金属の蒸着膜が挙げられる。
無機化合物の蒸着膜の原料としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛スズ等の無機酸化物;
窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン等の無機窒化物;
無機炭化物;無機硫化物;酸化窒化ケイ素等の無機酸化窒化物;
無機酸化炭化物;無機窒化炭化物;無機酸化窒化炭化物等が挙げられる。
金属の蒸着膜の原料としては、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、及びスズ等が挙げられる。
これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0096】
これらの中では、ガスバリア性の観点から、無機酸化物、無機窒化物又は金属を原料とする無機蒸着膜が好ましく、さらに、無色透明性の観点から、無機酸化物又は無機窒化物を原料とする無機蒸着膜が好ましい。また、無機蒸着膜は、単層でもよく、多層でもよい。
【0097】
無機蒸着膜の厚みは、ガスバリア性と取り扱い性の観点から、通常、1nm以上2000nm以下、好ましくは3nm以上1000nm以下、より好ましくは5nm以上500nm以下、さらに好ましくは40nm以上200nm以下である。
【0098】
無機蒸着膜を形成する方法は特に制限されず、公知の方法を使用することができる。無機蒸着膜を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(物理的蒸着)法や、熱CVD(化学的蒸着)法、プラズマCVD法、光CVD法等のCVD法、原子層堆積法(ALD法)が挙げられる。
【0099】
ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層において、用いるガスバリア性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、又はその部分ケン化物、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の、酸素や水蒸気等を透過しにくい樹脂が挙げられる。
【0100】
ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層の厚みは、ガスバリア性の観点から、通常、1nm以上2000nm以下、好ましくは3nm以上1000nm以下、より好ましくは5nm以上500nm以下、さらに好ましくは40nm以上200nm以下である。
【0101】
ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層を形成する方法としては、ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層形成用溶液を、基材又はその他の層上に塗布し、得られた塗膜を適宜乾燥する方法が挙げられる。
【0102】
ガスバリア層形成用溶液の塗布方法は特に限定されず、上記樹脂組成物を塗工する方法として挙げられた方法を利用することができる。
塗膜の乾燥方法も特に限定されず、上記樹脂組成物の塗膜を乾燥する方法として挙げられた方法を利用することができる。
【0103】
高分子層の表面が改質されてなるガスバリア層において、用いる高分子化合物としては、ケイ素含有高分子化合物、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、脂環式炭化水素系樹脂、芳香族系重合体等が挙げられる。
これらの高分子化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
【0104】
これらの高分子化合物の中でも、より優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成し得ることができる観点から、ケイ素含有高分子化合物が好ましい。ケイ素含有高分子化合物としては、ポリシラザン系化合物、ポリカルボシラン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリオルガノシロキサン系化合物、ポリ(ジシラニレンフェニレン)系化合物、及びポリ(ジシラニレンエチニレン)系化合物等が挙げられる。中でも、薄くても優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成し得ることができる観点から、ポリシラザン系化合物が好ましい。ポリシラザン系化合物を含む層に改質処理を施すことで、酸素、窒素、ケイ素を主構成原子として有する層(酸窒化珪素層)を形成することができる。
【0105】
ポリシラザン系化合物は、分子内に-Si-N-結合(シラザン結合)を含む繰り返し単位を有する高分子化合物である。具体的には、式(1)
【0106】
【化1】
【0107】
で表される繰り返し単位を有する化合物が好ましい。また、用いるポリシラザン系化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、100~50,000であるのが好ましい。
【0108】
前記式(1)中、nは任意の自然数を表す。
Rx、Ry、Rzは、それぞれ独立して、水素原子、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基又はアルキルシリル基等の非加水分解性基を表す。
【0109】
これらの中でも、Rx、Ry、Rzとしては、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はフェニル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0110】
前記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリシラザン系化合物としては、Rx、Ry、Rzが全て水素原子である無機ポリシラザン、Rx、Ry、Rzの少なくとも1つが水素原子ではない有機ポリシラザンのいずれであってもよい。
【0111】
また、本発明においては、ポリシラザン系化合物として、ポリシラザン変性物を用いることもできる。ポリシラザン変性物としては、例えば、特開昭62-195024号公報、特開平2-84437号公報、特開昭63-81122号公報、特開平1-138108号公報、特開平2-175726号公報、特開平5-238827号公報、特開平6-122852号公報、特開平6-306329号公報、特開平6-299118号公報、特開平9-31333号公報、特開平5-345826号公報、特開平4-63833号公報等に記載されているものが挙げられる。
これらの中でも、ポリシラザン系化合物としては、入手容易性、及び優れたガスバリア性を有するイオン注入層を形成できる観点から、Rx、Ry、Rzが全て水素原子であるペルヒドロポリシラザンが好ましい。
また、ポリシラザン系化合物としては、ガラスコーティング材等として市販されている市販品をそのまま使用することもできる。
ポリシラザン系化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0112】
高分子層は、上述した高分子化合物の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で他の成分を含有してもよい。他の成分としては、上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分以外の成分として挙げられた添加剤を含有することができる。
高分子層中の高分子化合物の含有量は、よりガスバリア性に優れるガスバリア層を形成し得ることから、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
【0113】
高分子層の厚みは、特に制限されないが、通常、20nm以上50μm以下、好ましくは30nm以上1μm以下、より好ましくは40nm以上500nm以下である。
【0114】
高分子層は、例えば、高分子化合物を有機溶媒に溶解又は分散した液を、公知の塗布方法によって、基材又はその他の層上に塗布し、得られた塗膜を乾燥することにより形成することができる。
【0115】
有機溶媒としては、上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分以外の成分として挙げられたものを用いることができる。
これらの有機溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0116】
塗布方法は特に限定されず、上記樹脂組成物を塗工する方法として挙げられた方法を利用することができる。
塗膜の乾燥方法も特に限定されず、上記樹脂組成物の塗膜を乾燥する方法として挙げられた方法を利用することができる。
加熱温度は、通常、80~150℃であり、加熱時間は、通常、数十秒から数十分である。
【0117】
高分子層の表面を改質する方法としては、イオン注入処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、熱処理等が挙げられる。
イオン注入処理は、後述するように、加速させたイオンを高分子層に注入して、高分子層を改質する方法である。
プラズマ処理は、高分子層をプラズマ中に晒して、高分子層を改質する方法である。例えば、特開2012-106421号公報に記載の方法に従って、プラズマ処理を行うことができる。
紫外線照射処理は、高分子層に紫外線を照射して高分子層を改質する方法である。例えば、特開2013-226757号公報に記載の方法に従って、紫外線改質処理を行うことができる。
【0118】
これらのガスバリア層の中でも、高分子層の表面を荒らすことなく、その内部まで効率よく改質し、よりガスバリア性に優れるガスバリア層を形成できる観点から、ケイ素含有高分子化合物を含む層にイオン注入処理を施して得られるものが好ましい。
【0119】
高分子層に注入するイオンとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスのイオン;
フルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、塩素、フッ素、硫黄等のイオン;
メタン、エタン等のアルカン系ガス類のイオン;
エチレン、プロピレン等のアルケン系ガス類のイオン;
ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類のイオン;
アセチレン等のアルキン系ガス類のイオン;
ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系ガス類のイオン;
シクロプロパン等のシクロアルカン系ガス類のイオン;
シクロペンテン等のシクロアルケン系ガス類のイオン;
金属のイオン;有機ケイ素化合物のイオン;等が挙げられる。
これらのイオンは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、より簡便にイオンを注入することができ、より優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成し得ることから、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスのイオンが好ましい。
【0120】
イオンの注入量は、ガスバリアフィルムの使用目的(必要なガスバリア性、無色透明性等)等に合わせて適宜決定することができる。
【0121】
イオンを注入する方法としては、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオン(プラズマイオン)を注入する方法等が挙げられる。中でも、簡便に目的のガスバリア層を形成することができる観点から、後者のプラズマイオンを注入する方法(プラズマイオン注入法)が好ましい。
【0122】
プラズマイオン注入法は、例えば、希ガス等のプラズマ生成ガスを含む雰囲気下でプラズマを発生させ、高分子層に負の高電圧パルスを印加することにより、該プラズマ中のイオン(陽イオン)を、高分子層の表面部に注入して行うことができる。プラズマイオン注入法は、より具体的には、WO2010/107018号パンフレット等に記載された方法により実施することができる。
【0123】
イオン注入により、イオンが注入される領域の厚さは、イオンの種類や印加電圧、処理時間等の注入条件により制御することができ、高分子層の厚さやガスバリアフィルムの使用目的等に応じて決定すればよいが、通常、10nm以上400nm以下である。
【0124】
イオンが注入されたことは、X線光電子分光分析(XPS)を用いて高分子層の表面から10nm付近の元素分析測定を行うことによって確認することができる。
【0125】
封止シート(γ)の製造方法は特に限定されない。例えば、先に説明した封止シート(β)の製造方法において、剥離フィルムの1枚をガスバリア性フィルムに置き換えることで封止シート(γ)を製造することができる。
また、封止シート(β)を製造した後、その1枚の剥離フィルムを剥離し、露出した接着剤層とガスバリア性フィルムとを貼着することにより、封止シート(γ)を製造することもできる。この場合、封止シート(β)が、異なる剥離力を有する2枚の剥離フィルムを有する場合には、取扱い性の観点から、剥離力の小さい方の剥離フィルムを剥離するのが好ましい。
【0126】
上記のように、本発明の封止シートの接着剤層は、接着強度、無色透明性及び水蒸気遮断性に優れる。このため、本発明の封止シートは、有機EL素子等の発光デバイスの封止材等の光学用途において好適に用いられる。
【0127】
3)封止体
本発明の封止体は、被封止物が、本発明の封止シートを用いて封止されてなるものである。
「本発明の封止シートを用いて封止されてなる」とは、本発明の封止シートを構成する剥離フィルムを除去して接着剤層を露出させ、その接着剤層を被封止物に密着させて、被封止物を覆うことをいう。
本発明の封止体としては、例えば、基板と、該基板上に形成された素子(被封止物)と、該素子を封止するための封止材とを備えるものであって、前記封止材が本発明の封止シートの接着剤層であるものが挙げられる。
【0128】
基板は特に限定されるものではなく、種々の基板材料を用いることができる。特に可視光の透過率が高い基板材料を用いることが好ましい。また、素子外部から浸入しようとする水分やガスを阻止する遮断性能が高く、耐溶剤性や耐候性に優れている材料が好ましい。具体的には、石英やガラスなどの透明無機材料;ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、アセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリオレフィン類などの透明プラスチック、前述したガスバリア性フィルム;が挙げられる。
基板の厚さは特に制限されず、光の透過率や、素子内外を遮断する性能を勘案して、適宜選択することができる。
【0129】
被封止物としては、有機EL素子、有機ELディスプレイ素子、液晶ディスプレイ素子、太陽電池素子等が挙げられる。
【0130】
本発明の封止体の製造方法は特に限定されない。
例えば、本発明の封止シート(α)の構成の場合は、接着剤層を被封止物上に貼り付けることで、封止シートの接着剤層により被封止物を封止させる。封止シート(α)に剥離フィルムが使用されている場合は、封止後、剥離フィルムを除去する。
本発明の封止シート(β)の構成の場合は、封止シート(β)の一方の剥離フィルムを除去し、露出した接着剤層にガスバリアフィルムを貼合し、次いで、他方の剥離フィルムを除去し、接着剤層を被封止物上に貼り付けることで、封止シートの接着剤層により被封止物を封止させる。
本発明の封止シート(γ)の構成の場合は、剥離フィルムを除去し、接着剤層を被封止物上に貼り付けることで、封止シートの接着剤層により被封止物を封止させる。
【0131】
封止シートの接着剤層と被封止物を接着させる際の接着条件は特に限定されない。接着温度は、例えば、23~100℃、好ましくは23~80℃、より好ましくは23℃~40℃である。この接着処理は、加圧しながら行ってもよい。
なお、本発明においては、封止シートとして、未硬化の接着剤層(本発明の樹脂組成物の乾燥塗膜)を有するものを用い、封止シートの未硬化の接着剤層と被封止物を接着させた後に、未硬化の接着層を光硬化させるようにしてもよい。
この際の硬化条件としては、先に説明した条件を利用することができる。
【0132】
本発明の封止体は、被封止物が、本発明の封止シートで封止されてなるものである。
したがって、本発明の封止体においては、長期にわたって被封止物の性能が維持される。
【実施例
【0133】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
各例中の部及び%は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0134】
以下の実施例及び比較例においては、変性ポリオレフィン系樹脂〔(A)成分〕、環状エーテル基を有する化合物〔(B)成分〕、及び、光カチオン重合開始剤〔(C)成分〕として、以下のものを用いた。
変性ポリオレフィン系樹脂〔(A)成分〕
酸変性α-オレフィン重合体〔三井化学社製、商品名:ユニストールH-200、数平均分子量:47,000〕
【0135】
環状エーテル基を有する化合物〔(B)成分〕
(1)環状エーテル基を有する化合物(B-1)
ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル〔ADEKA社製、商品名:アデカレジン EP-4088L、環状エーテル当量:165g/eq、25℃で液状〕
(2)環状エーテル基を有する化合物(B-2)
2-エチルヘキシルオキセタン〔東亞合成社製、商品名:OXT-212、環状エーテル当量:226g/eq、25℃で液状〕
(3)環状エーテル基を有する化合物(B-3)
トリグリシジルイソシアヌラート〔日産化学工業社製、商品名:TEPIC-FL、環状エーテル当量:165-185g/eq、25℃で液状〕
(4)環状エーテル基を有する化合物(B-4)
水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔三菱化学社製、商品名:YX8034、環状エーテル当量:270g/eq、25℃で液状〕
【0136】
光カチオン重合開始剤〔(C)成分〕
(1)光カチオン重合開始剤(C-1)
トリアリールスルホニウム塩〔サンアプロ社製、商品名:CPI-200K、アニオン:ヘキサフルオロホスフェート骨格を有するアニオン〕
(2)光カチオン重合開始剤(C-2)
トリアリールスルホニウム塩〔サンアプロ社製、商品名:CPI-310B、アニオン:テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート〕
【0137】
[実施例1]
酸変性α-オレフィン重合体(A)100部、環状エーテル基を有する化合物(B-1)25部、光カチオン重合開始剤(C-1)0.1部、粘着付与剤〔スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合樹脂(三井化学社製、商品名:FTR6100、軟化点95℃)〕50部、及び、シランカップリング剤〔8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名:KBM4803)〕0.1部をトルエンに溶解し、固形分濃度27%の樹脂組成物(1)を調製した。
この樹脂組成物(1)を剥離フィルム(リンテック社製、商品名:SP-PET382150)の剥離処理面上に塗工し、得られた塗膜を100℃で2分間乾燥し、厚みが20μmの接着剤層を形成し、その上に、もう1枚の剥離フィルム(リンテック社製、商品名:SP-PET381031)の剥離処理面を貼り合わせた。その後、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、商品名:US2-0801<2>)を用い、照度200mW/cm、光量200mJ/cmで紫外線を照射して塗膜を硬化させ、封止シート(1)を得た。
【0138】
[実施例2~4]
環状エーテル基を有する化合物(B-1)を、表1に示す量使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(2)~(4)を調製し、これらの樹脂組成物を用いて封止シート(2)~(4)を得た。
【0139】
[実施例5]
実施例1において、環状エーテル基を有する化合物(B-1)を使用する代わりに、環状エーテル基を有する化合物(B-2)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(5)を調製し、この樹脂組成物を用いて封止シート(5)を得た。
【0140】
[実施例6]
実施例1において、環状エーテル基を有する化合物(B-1)を使用する代わりに、環状エーテル基を有する化合物(B-3)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(6)を調製し、この樹脂組成物を用いて封止シート(6)を得た。
【0141】
[実施例7及び8]
光カチオン重合開始剤(C-1)を、表1に示す量使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(7)及び(8)を調製し、これらの樹脂組成物を用いて封止シート(7)及び(8)を得た。
【0142】
[実施例9]
実施例1において、光カチオン重合開始剤(C-1)を使用する代わりに、光カチオン重合開始剤(C-2)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(9)を調製し、この樹脂組成物を用いて封止シート(9)を得た。
【0143】
[実施例10]
粘着付与剤の含有量を25部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(10)を調製し、この樹脂組成物を用いて封止シート(10)を得た。
【0144】
[比較例1]
実施例1において、酸変性α-オレフィン重合体(A)を使用しないこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(11)を調製した。
なお、この樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして封止シートの作製を試みたが、シート加工性(造膜性)が低く、封止シートを得ることができなかった。
【0145】
[比較例2]
実施例1において、環状エーテル基を有する化合物(B-1)を使用しないこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(12)を調製し、この樹脂組成物を用いて封止シート(12)を得た。
【0146】
[比較例3]
実施例1において、環状エーテル基を有する化合物(B-1)を使用する代わりに、環状エーテル基を有する化合物(B-4)を使用し、かつ、光カチオン重合開始剤(C-1)を使用しないこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(13)を調製し、この樹脂組成物を用いて封止シート(13)を得た。
【0147】
実施例1~10並びに比較例2及び3で得られた封止シート(1)~(10)、(12)及び(13)について、以下の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
〔粘着力測定〕
幅が25mmの封止シートの剥離フィルムを1枚剥離除去し、接着剤層を露出させた。露出させた接着剤層を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製、厚み50μm、単層品)に貼合した。次いで、封止シートの他方の剥離フィルムを剥離除去し、露出させた接着剤層を無アルカリガラス(コーニング社製、商品名:イーグルXG)に圧着ロールで圧着させ、試験片を作製した。
作製した試験片を、温度23℃・相対湿度50%の条件下で180°剥離試験を行った。
この剥離試験において、上述した試験条件以外は、JIS Z0237:2009に記載の粘着力の測定方法に準じて行った。
【0148】
〔全光線透過率測定〕
封止シートの剥離フィルムを1枚剥離除去し、接着剤層を露出させた。露出させた接着剤層がソーダライムガラスに対向するように、この封止シートを、ソーダライムガラス(厚み1mm)上に置き、次いで、ラミネーターを用いて、これらを23℃で貼合し、試験片を作製した。
作製した試験片について、全光線透過率測定装置(日本電色工業社製、製品名:NDH-5000)を用いて、全光線透過率を測定した。
【0149】
〔測色〕
全光線透過率で用いたものと同様の試験片を作製した。
作製した試験片について、CIE1976L*a*b*表色系により規定される色彩値を、JIS Z 8781-4(2013)に準拠し、分光光度計(島津製作所社製、製品名:UV-3600)を用いて測定した。
【0150】
〔黄色度評価〕
封止シートの剥離フィルムを1枚剥離除去し、接着剤層を露出させた。露出させた接着剤層がソーダライムガラスに対向するように、この封止シートを、ソーダライムガラス(厚み1mm)上に置き、次いで、ラミネーターを用いて、これらを23℃で貼合し、試験片を作製した。
作製した試験片についてJIS K 7373:2006に準拠し、分光光度計(島津製作所社製、製品名:UV-3600)を用いて測定した。
【0151】
[水蒸気透過率測定]
水蒸気透過度計(SYSTECH INSTRUMENTS Ltd.、製品名:LYSSY L80-5000)を用いて、温度40℃、相対湿度90%の環境下における、封止シートの水蒸気透過率を測定した。
【0152】
【表1】
【0153】
第1表から、以下のことが分かる。
(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する樹脂組成物(1)~(10)を用いて形成された封止シート(1)~(10)は、温度23℃・相対湿度50%の条件下における接着強度に優れている(実施例1~10)。
また、封止シート(1)~(10)は、全光線透過率が高く、かつ、a*値及びb*値の絶対値、並びに黄色度YIが小さく、無色透明性に優れている。
さらに、封止シート(1)~(10)は、水蒸気遮断性にも優れている。
一方、(A)成分を含有しない樹脂組成物(11)は、シート加工性(造膜性)が低く、封止シートを得ることができなかった(比較例1)。
また、(B)成分を含有しない樹脂組成物(12)、及び(C)成分を含有しない樹脂組成物(13)を用いて形成された封止シート(12)及び(13)は、温度23℃・相対湿度50%の条件下における接着強度に劣っている(比較例2及び3)。