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特許7368361自由固体を介したイオン輸送による金属の平滑化および研磨のための方法における電解質としてのH2SO4の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】自由固体を介したイオン輸送による金属の平滑化および研磨のための方法における電解質としてのH2SO4の使用
(51)【国際特許分類】
   C25F 3/24 20060101AFI20231017BHJP
   C25F 3/18 20060101ALI20231017BHJP
   C25F 3/22 20060101ALI20231017BHJP
   A44C 27/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C25F3/24
C25F3/18
C25F3/22
A44C27/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020536508
(86)(22)【出願日】2019-01-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 ES2019070027
(87)【国際公開番号】W WO2019145588
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2022-01-07
(31)【優先権主張番号】P201830074
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】518360830
【氏名又は名称】ドライライテ エス.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】サルサネダス ミレット パウ
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/186992(WO,A1)
【文献】特表2003-522841(JP,A)
【文献】特表2015-521944(JP,A)
【文献】特表2019-515127(JP,A)
【文献】特開2005-206928(JP,A)
【文献】特開2001-003200(JP,A)
【文献】特表2015-528059(JP,A)
【文献】特開平08-337898(JP,A)
【文献】登録実用新案第3012802(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25F1/00-7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス環境中で電気伝導性である自由固体を用いて行われるイオン輸送に基づいて、自由固体を介したイオン輸送によって金属を平滑化および研磨するための、ならびに具体的には、金属部品を平滑化および研磨するための工程における、電解質としてのH SO の使用であって、前記固体が電解質の特定の量を保持するための十分な多孔性および親和性を有する粒子からなり、したがってかなりの導電性を有し、前記使用は、研磨される部品の金属または合金の種類に基づいて可変の濃度を有するHSOの溶液であることを特徴とする、使用。
【請求項2】
鋼、ステンレス鋼またはCr-Co合金製の部品におけるその適用のために、8~25%の濃度を有するHSOの水溶液使用されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記溶液中のHSOの濃度が15%であることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記HSOの水溶液40~50%の割合を有することを特徴とする、請求項2または3に記載の使用。
【請求項5】
Ni合金製の部品におけるその適用のために、15~30%の濃度を有するHSOの水溶液使用されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
20%の濃度を有するHSOの水溶液使用されることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
Ti合金製の部品におけるその適用のために、100未満の分子量を有するアルコール中のHSOの溶液使用されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
使用される前記電解質が5%未満の水分量を有することを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
メタノールに対して10および30%の硫酸濃度を有するメタノールおよび硫酸から構成される電解質使用されることを特徴とする、請求項7~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記工程は、30~80Vの印加された電圧を有するOのない無水ガス雰囲気中で、かつ研磨される前記部品が陽極である半周期の一時的な優勢を伴う周期的極性反転を伴って実施されることを特徴とする、請求項7~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
ハロゲン化物の添加が前記工程を加速するための添加剤であることを特徴とする、請求項7~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記ハロゲン化物は塩化物および/またはフッ化物であり前記ハロゲン化物の濃度は0.05~0.4%の割合を有することを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記工程で使用される前記自由固体が、スルホン化スチレン- ジビニルベンゼンコポリマーのイオンを交換するマクロ多孔性ポリマー球であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の表題によって表されるように、本発明は、自由固体を介するイオン輸送による金属の平滑化および研磨のためのプロセスにおける電解質としてのHSOの使用に関し、以下に詳細に記載される利点および特徴を提供し、この適用分野で現在知られているものと比べて著しく新規である。
【0002】
本発明の目的は、具体的には、自由固体を介したイオン輸送に基づいて、金属部品、例えば宝飾品類の片を平滑化および研磨するためのプロセスにおける電解質液としてのHSOに基づく溶液の使用であり、前記物体は、導電性であり、ガス環境に一緒に組み込まれ、金属部品を、直流発電機などの電源の正極に接続し、好ましくは固体(粒子)の集合体に対して移動するように配置され、それらが電源の負極と電気的に接触するように配置され、前述の固体は、特定の量の前記電解質液を保持できる多孔性ポリマー粒子であり、その結果、それらは、導電性にするかなりの導電率を有し、問題の電解質は、平滑化または研磨される金属または合金のタイプに基づいて異なる比率で使用されるHSO液からなる。
【0003】
具体的には、本発明の目的は、鋼、ステンレス鋼、Cr-Co、チタンおよびアルミニウム合金を研磨するための特定の電解質の使用を保護することである。
【0004】
本発明の適用分野は、金宝飾品類および合金のような金属部品の平滑化および研磨、特に粒子による電解研磨プロセスを包含する産業分野に属する。
【背景技術】
【0005】
自由固体(粒子)を有する媒体中の金属を平滑化および研磨するための様々な系が知られている。
【0006】
長い間、様々な幾何学的形状およびサイズを有し、処理される材料よりも高い硬度を有する、いずれの支持体にも付着していない粒子の使用を介して機械的摩耗が生成される、広範囲の様々な装置が使用されてきた。
【0007】
前記装置は、それらがその間の相対的な動きを生み出すという事実のために、処理される部品上に粒子の摩擦を生み出す。
【0008】
これらの装置は、例えば、回転容器(ドラム)、振動容器またはサンドブラスターからなる。
【0009】
しかしながら、前述の系のような直接的な機械的摩耗に基づく全ての系は、均一性を欠く方法で部品に影響を及ぼすという深刻な欠点を有しており、これは、部品に及ぼす研磨手段(粒子)によって加えられる圧力と浸食される材料の量との間に一定の均整があることを意味し、部品の突起片は、しばしば摩耗し、過剰な程度に平滑化される。
【0010】
さらに、前記系で使用される全機械エネルギーは、多くの場合、過度な力からの打撃および変形によって引き起こされる、部品への損傷の理由である。
【0011】
さらに、機械的摩耗に基づく系は、塑性変形を伴う金属部品上の表面を生成し、そうすることによって、それらは、必然的に、かなりの量の異物を吸蔵し、多くの場合、材料の表面層の汚染のために、処理を不適切にする。
【0012】
同様に、ガルバニ処理によって実行される研磨系が知られており、処理される金属部品は、電解質液中に浸漬され、電解研磨として知られる陽極などの固体粒子を含まない。
【0013】
前記プロセスは、前述の機械的研磨プロセスとは異なり、表面汚染のない表面を生成するという利点を有する。
【0014】
現在、達成される数ミクロンを超える粗さの平坦化効果は、多くの場合、不十分であり、したがって、前記処理は、主に、先行する機械的摩耗プロセスのための仕上げとして使用される。
【0015】
さらに、処理される金属部品が内部を自由に移動する固体(粒子)を含有する電解質液中に浸漬されるガルバニプロセスがある。
【0016】
前記プロセスのために開発された電解質液は、粒子を伴わないガルバニプロセスよりも厚い陽極層を生成し、したがってその中に含まれる粒子が陽極層と機械的に相互作用するとき、粗さが効率的に1ミリメートルまで平滑化される。
【0017】
しかしながら、両方の場合において、今日まで使用されてきたガルバニプロセスは、処理される金属の結晶構造および組成に関連する、孔食または段差表面などの欠陥をしばしば生成し、その使用は、多くの場合、それらの組成(合金)ならびに鋳造および成形処理のために、それらが前記の許容されない欠陥なしに処理され得ることを経験的に実証した部品に限定される。
【0018】
これらの欠点を解決するために、本出願人は、自由固体によるイオン輸送によって金属を平滑化し、研磨するためのプロセス、ならびに前記プロセスを実施するための導電性固体を開示し、装置に関連するクランプ要素によって電流発生器の正極に部品を接続するステップと、間隙空間を占有し、電流発生器の陰極(カソード)に電気的に接触する、ガス環境を伴う容器に組み込まれた導電性の自由固体の粒子との摩擦に、直接容器またはカソードとして機能する環を介して供され、固体は、電解質液を飽和量未満に保持することができる空隙率および親和性を有する粒子であり、その結果それらは導電性を有する、特許出願特許文献1の保有者である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】スペイン国特許第2604830A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ここで、本発明の目的は、この種の方法のための理想的な電解質として、さらに、最適な結果を得るために研磨される部品の金属または合金の種類に基づく溶液中のその理想的な比率でのHSOの使用を市場に提供することである。
【0021】
公知のように、HSOは、多種多様な金属上での剥離、エッチングおよび電解研磨工程に広く使用されている酸である。ポリプロトン酸であるため、ほとんどすべての金属と可溶性塩を形成し、電解研磨を可能にするアノード層の存在を実証する。
【0022】
同様に、これまで見られるように、HNO、HF、HCl等のような高蒸気圧の酸を使用すると、ポリマー球の核および研磨されるべき部品の表面での気化およびその後の凝縮による電解質の避けられない輸送がある。これは、球と研磨されるべき表面との間の厳密な幾何学的関係に限定されない電気化学的攻撃をもたらし、その結果、欠陥のある結果をもたらす。
【0023】
一方、蒸気圧が非常に低いHSOを使用すると、前記攻撃の危険性がより少なくなる。従って、例えばTiに対する結果は非常に適しており、見事に光沢のある表面及び非常に低い最終的な粗さをもたらす。
【0024】
一方、現在の技術水準の基準として、出願人は、自由固体を介するイオン輸送または他の電解研磨プロセスによる金属の平滑化および研磨のための方法における電解質としてのHSOの使用を認識していないことが確認され得る。
【課題を解決するための手段】
【0025】
具体的には、先に示したように、本発明は、自由固体を介したイオン輸送による金属の平滑化および研磨のためのプロセスにおける電解質としてのHSOの使用、より具体的には、ガス環境中で電気伝導性である自由固体(粒子)を用いて実施されるイオン輸送に基づいて、金属部品、例えば宝飾品類の片を平滑化および研磨するための使用を提案するが、これに限定されず、前記固体は、特定の量の前記電解質液を保持するのに十分な多孔性および親和性を有する球状粒子からなり、したがって、それらは、かなりの導電性を有する。
【0026】
好ましくは、前記方法に使用される前述の自由固体は、スルホン化ポリスチレンのイオンを交換するマクロ多孔性ポリマー球、より具体的には、スルホン官能基SO-を有する固体スチレン-ジビニルベンゼンコポリマーマトリックスによって構成され、1.24Kg/mの密度を有し、1.7eq/L以上のイオン交換容量を有し、0.6~0.8mmの直径を有し、52~58%の保水容量を有し、例えば、AMBERLITE 252RFH(登録商標)の名称で市販されているものなどの樹脂からなる球である。
【0027】
これらのタイプの球体を使用する理由は、それらが有機ポリマーで構成され、順に、高い割合の相互接続された細孔を含み、球体の核内に均一に分布することを考慮すると、それらは、電解質液の剛性と保持容量との間の適切な妥協、ならびに同時に、圧力下での電解質液の一時的放出のための容量および結果として生じる球体の変形を提供する材料を形成することである。
【0028】
さらに、耐薬品性も高く、硫酸HSOなどの強酸の高濃度にも耐える。
【0029】
それらはまた、金属歯科補綴物のための部品の大部分に存在する粗さを有利に研磨し、平坦化するための適切な直径を有する。
【0030】
いずれにしても、上述のように、使用される電解質液は、研磨される部品の金属または合金の種類に基づいて濃度が可変のHSOの水溶液である。この電解質液の使用は、鋼、ステンレス鋼、Cr-Co合金、ならびにニッケル、チタンおよびアルミニウム合金について特に研究されてきた。
【0031】
鋼、ステンレス鋼またはCr-Co合金
具体的には、吸収された電解質として、および研磨される鋼、ステンレス鋼またはCr-Co合金製の部品に対して適用するために、乾燥ポリマー上の電解質の8~25%(好ましくは15%)の濃度、および好ましくは40~50%の割合のHSOの水溶液の使用が、想定される。
【0032】
NI合金
「インコネル」型Ni合金製の部品を加工するために吸収される電解質として、15~30%(好ましくは20%)の濃度を有するHSOの水溶液の使用が想定される。
【0033】
Ti
Tiおよびその合金製の部品を加工するために吸収される電解質として、100未満の分子量を有するアルコール中のHSOの溶液の使用が想定され、前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールなどの単純またはポリオールであり得、別個にまたは同時に使用される。
【0034】
Tiに使用される電解質液は、非常に低い水分量、5%未満を有し、それによって、Ti+2HO=Ti+4H+4eに従って、酸化によって不動態化される前記金属の強い傾向を打ち消す。
【0035】
メタノールおよびエタノールなどの低粘度を有するアルコールを使用することによって(メタノール:0.5cps、水:1cps)、一方で、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマーのポリマー粒子における良好な吸収能力、および他方で、粒子細孔ネットワークを通じての高い電解質液移動度を達成し、それによって、鋼およびCr-Co合金のためのプロセス(2~10ミクロンの厚さ/分)と同様の速度での平滑化および研磨プロセスをもたらすことが可能である。
【0036】
好ましくは、および前述の理由により、メタノールに対して硫酸濃度が10~30%、好ましくは20%である、メタノールおよび硫酸から構成される電解質液が使用される。
【0037】
水分量は、好ましくは、最大5%に制限しなければならない。
【実施例
【0038】
実施例:HO:80% HSO:18% HO:2%
この方法は、好ましくは、Oを含まない無水ガス雰囲気(例えば、N、CO、Arなど)中で展開される。
【0039】
好ましくは、印加電圧が30~80Vであり、周期的な極性の反転があり、半周期が一時的に卓越し、研磨される部品が陽極である。例えば、2秒+0.5秒。
【0040】
0.05~0.4%の割合でのハロゲン化物、好ましくは塩化物および/またはフッ化物の添加は、好ましくは、プロセスを促進するための添加剤として想定される。
【0041】
実施例:HO:80% HSO:17.8% HO:2% NaCl:0.2%
Cl原子の小さなサイズは、Tiの塩化物が容易に可溶であるという事実に加えて、酸化物層の形成による不動態を効率的に打ち消す可能性を正当化し、したがって、効率的なイオン輸送をもたらす。
【0042】
アルミニウムを平滑化し、研磨するためには、Tiに適したものと同様であるが、水および塩化物含有量がより多い電解質液が、好ましく使用される。
【0043】
メタノール:30% 水:40% HSO:17% NaCl:13%
ポリマー吸収体に対する電解質液含有量は、好ましくは40~50%である。
【0044】
本発明の性質、ならびにそれを実施する方法を十分に説明してきたが、技術水準におけるいかなる専門家も、その範囲およびそれから派生する利点を理解するためにその説明を拡張する必要はないと考えられ、その本質内で、例によって提供されるものとは詳細において異なり、かつ、要求された保護によっても網羅される他の実施形態で実施することができることを特定し、ただし、それらは、その基本的原理を変化、変更または修正しない。