(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】ディスプレイ用途のための導波路要素及び導波路スタック
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20231017BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20231017BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B27/01
G02B5/18
(21)【出願番号】P 2020545639
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(86)【国際出願番号】 FI2019050188
(87)【国際公開番号】W WO2019185977
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-21
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】520184365
【氏名又は名称】ディスペリックス オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロムステット、カシミール
(72)【発明者】
【氏名】オルッコネン、ユーソ
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0299864(US,A1)
【文献】特表2008-535032(JP,A)
【文献】特開2017-090562(JP,A)
【文献】国際公開第2018/039278(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0363871(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 - 27/02
G02B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波路ディスプレイ要素であって、
導波路層と、
前記導波路層に配置される入力結合格子と、
前記入力結合格子の異なる側の2つの第1の反射格子又は第1の射出瞳拡大器格子と、
を備え、
前記入力結合格子は、反対の回折次数を用いて入射光を前記導波路層内に前記異なる側に対応する2つの別々の方向に結合し、前記入射光の視野を分割するように構成され、前記入射光の前記結合は、前記入力結合格子が可視波長範囲内にある閾値波長未満の波長のみで起こるように構成され、前記入力結合格子は、前記閾値波長超の波長の前記導波路層内への結合を防止するのに十分短い周期を有し、
前記導波路ディスプレイ要素は、
それぞれ前記2つの第1の反射格子又は第1の射出瞳拡大器格子からの光を受け取るように構成される少なくとも1つの第2の射出瞳拡大器格子と、
前記少なくとも1つの第2の射出瞳拡大器格子からの光を受け取るように構成される単一の出力結合格子と、
をさらに備え、
前記第2の射出瞳拡大器格子からの光が前記
単一の出力結合
格子を回折せずに通過できるように
、前記入力結合格子の格子ベクトル、前記第1の反射格子又は前記第1の射出瞳拡大器格子の格子ベクトル及び前記少なくとも1つの第2の射出瞳拡大器格子の格子ベクトルが構成される、導波路ディスプレイ要素。
【請求項2】
前記閾値波長は、500~540nm、620~660nm、510~530nm、630~650nm、520nm、および640nmから選択される、請求項1に記載の導波路ディスプレイ要素。
【請求項3】
前記導波路層は、1.8より高い屈折率、または1.9~2.1の屈折率を有する、請求項1又は2に記載の導波路ディスプレイ要素。
【請求項4】
単一の第2の射出瞳拡大器格子を備える、請求項1に記載の導波路ディスプレイ要素。
【請求項5】
前記出力結合格子の異なる側に2つの第2の射出瞳拡大器格子を備える、請求項1に記載の導波路ディスプレイ要素。
【請求項6】
前記第2の射出瞳拡大器格子は、前記第1の射出瞳拡大器格子から見られると、前記出力結合格子の反対側に延在する、請求項5に記載の導波路ディスプレイ要素。
【請求項7】
前記光の少なくとも一部は、前記出力結合格子が位置する前記導波路層の領域を介して、前記第1の射出瞳拡大器格子から前記第2の射出瞳拡大器格子まで進行し、前記出力結合格子にさらに戻るように構成される、請求項5又は6に記載の導波路ディスプレイ要素。
【請求項8】
前記入力結合格子は、1次のプラス及び1次のマイナスの回折次数を用いて、前記導波路層内に光を結合するように構成される、請求項1から7のいずれかに記載の導波路ディスプレイ要素。
【請求項9】
回折ディスプレイ用の導波路スタックであって、前記導波路スタックは、少なくとも2つの導波路層を備え、前記導波路層の少なくとも1つは、請求項1から8のいずれかに記載の導波路ディスプレイ要素である、導波路スタック。
【請求項10】
少なくとも3つの導波路層を備え、前記少なくとも3つの導波路層のうちの少なくとも2つは、請求項1から8のいずれかに記載のものであり、異なる閾値波長を有する、請求項9に記載の導波路スタック。
【請求項11】
前記導波路層の第1は、第1の閾値波長未満の光のみを第1の導波路層に結合するように構成される第1の入力結合格子を備え、
前記導波路層の第2は、前記第1の閾値波長超の第2の閾値波長未満の光のみを第2の導波路層に結合するように構成される第2の入力結合格子を備え、
第3の導波路層は、前記第2の閾値波長超の光を第3の導波路層に結合するように構成される入力結合格子を備え、
前記導波路スタックは、
前記第1及び前記第2の導波路層の間に配置され、前記第2の入力結合格子に入射する前記第1の閾値波長未満の波長を防止するように構成される第1の波長フィルタ要素と、
前記第2及び前記第3の導波路層の間に配置され、第3の入力結合格子に入射する前記第2の閾値波長未満の波長を防止するように構成される第2の波長フィルタ要素と、
をさらに備える、請求項10に記載の導波路スタック。
【請求項12】
前記第1及び/又は第2の波長フィルタ要素は、反射フィルタ又は吸収フィルタである、請求項11に記載の導波路スタック。
【請求項13】
透明のディスプレイ・デバイスであって、
請求項1から8のいずれかに記載の導波路ディスプレイ要素又は請求項9から12のいずれかに記載の導波路スタックと、
前記入力結合格子において方向付けられ、前記閾値波長超の波長及び前記閾値波長未満の波長の両方を備える多色画像を提示することができる導波路ディスプレイ・イメージ・プロジェクタと、
を備える、透明のディスプレイ・デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波路ベースのディスプレイに関する。特に、本発明は、この種のディスプレイ用の光入力結合構成に関する。本発明は、現代のパーソナル・ディスプレイ、例えばヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD:head-mounted display)及びヘッド・アップ・ディスプレイ(HUD:head-up display)において使用可能である。
【背景技術】
【0002】
回折導波路に基づく透明の拡張現実(AR:augmented reality)ディスプレイの視野を最大にするために、一般的な方法は、互いにスタックされた複数の導波路を用いることである。最適化プロセスに対処可能にするために、各々導光体が、単一波長(例えばレーザー光)又は狭波長帯域(例えば単色LEDのスペクトル)のみを入力結合することが望ましい。偏光に基づくいくつかの方法は、以前、例えば米国特許出願第2014/0064655号において示されている。典型的には、表面レリーフ格子は、大きい視野(FOV:field of view)にわたりあまり偏光感度が高くなく、これは、プレート間にクロス結合を生じ、均一な白色画像上の色変化につながる。
【0003】
いくつかの従来の入力結合の解決法はまた、導波路上の比較的大きな領域を必要とし、及び/又は、いくつかの望ましくない制限を導波路の形状因子に課し、実際的な用途におけるそれらの使用を限定する。
【0004】
したがって、入力結合方式を改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述の問題に対処し、特に、新しい導波路要素及び導波路スタックを提供することであり、これにより、クロス結合を減少でき、及び/又は、導波路の表面領域をより良好に使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様によれば、導波路本体及び導波路本体に配置される入力結合格子を備える導波路ディスプレイ要素が提供される。入力結合格子は、反対の回折次数を用いて入射光を導波路本体内に2つの別々の方向に結合し、入射光の視野を分割するように構成される。さらに、入力結合格子は、典型的には、その周期を適切に短く設定することによって、前記結合が可視波長範囲内にある閾値波長未満の波長のみで起こるように構成される。
【0008】
他の態様によれば、回折ディスプレイ用の導波路スタックが提供され、スタックは、少なくとも2つの導波路層を備え、導波路層の少なくとも1つは、上述した種類の導波路要素である。
【0009】
さらなる態様によれば、上述したような導波路又はスタックと、入力結合格子において方向付けられる多色イメージ・プロジェクタと、を備える透明のディスプレイ・デバイスが提供される。
【0010】
特に、本発明は、独立請求項において述べられるものによって特徴付けられる。
【0011】
本発明は、重要な利点を提供する。中でも注目すべきは、本発明は、高品質の操作しやすい多色ディスプレイの実現のために使用可能な選択的な入力結合器を提供する。特に、大きいFOVを提供する能力を維持しながら、層間のクロス結合が防止される。
【0012】
従属請求項は、本発明の選択された実施例に向けられる。
【0013】
いくつかの実施例では、閾値波長は、500~540nm又は620~660nm、例えば510~530nm又は630~650nmの範囲から選択される。閾値波長は、例えば520nm又は640nmとすることができる。これは、青及び緑の波長を互いから分離し、他方では、緑及び赤の波長を互いから分離する可能性を提供する。特に、第2の分離は、特にインコヒーレントLED光源が用いられるとき、色のオーバラップする波長範囲のため、高いFOVの用途では挑戦的であった。
【0014】
いくつかの実施例では、導波路本体は、1.8より高い屈折率、例えば1.9~2.1の屈折率を有する透明材料でできている。
【0015】
いくつかの実施例では、要素は、前記別々の方向に対応する入力結合格子の異なる側の2つの第1の反射格子又は第1の射出瞳拡大器格子と、それぞれ2つの第1の格子からの光を受け取るように構成される少なくとも1つの第2の射出瞳拡大器格子と、少なくとも1つの第2の射出瞳拡大器格子からの光を受け取るように構成される単一の出力結合格子と、をさらに備える。出力結合格子は、入力結合器内で分割される視野を再構成する。典型的には、単一の第2の射出瞳拡大器格子又は2つの第2の射出瞳拡大器格子は、少なくとも部分的に出力結合格子の異なる側にあり、この場合、第2の射出瞳拡大器格子は、第1の格子から見られると、出力結合格子の反対側に延在してもよい。これは、実際的な用途のための導波路の表面領域の使用を最適化するのを助ける。なぜなら、光の少なくとも一部が、出力結合格子が位置する導波路層の領域を介して、第1の射出瞳拡大器格子から第2の射出瞳拡大器格子まで進行し、出力結合格子にさらに戻るように構成されるからである。
【0016】
いくつかの実施例では、入力結合格子は、1次のプラス及び1次のマイナスの回折次数、例えば1次のプラス及び1次のマイナスの伝送回折次数を用いて、導波路層内に光を結合するように構成される。
【0017】
次に、本発明の実施例及びその利点は、添付の図面を参照してより詳細に述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施例に従って、本発明の動作及び利点を示す波数ベクトル図を示す。
【
図2】単一の第2のEPE格子を有する1つの実際的な導波路レイアウトを平面図で示す。
【
図3】2つの第2のEPE格子を有する他の実際的な導波路レイアウトを平面図で示す。
【
図4】
図3の実施例の動作及び利点を示す波数ベクトル図を示す。
【
図5】一実施例に従って、導波路スタックを側面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一実施例では、本方法は、入力結合器を用いて、閾値未満の波長のみを独自に入力結合するステップを含み、入力結合器は、+/-1次の回折次数によってFOVを2つの部分に分割し、閾値超の波長が、ゼロ次回折のみを経験するこの種の小さい格子周期を提示する。
【0020】
これは、y軸に平行な格子ベクトルを有する入力結合格子のための波数ベクトル解析を示す
図1に示される。導光体が2.0の屈折率を有し、xy平面内にあり、虚像が16:9のアスペクト比を有する52度斜めのFOVを有すると仮定される。+/-1次は、中心から環内にFOVボックスを移動する。環の内径は、空気の屈折率(=1.0)によって定義され、外径は、導波路の屈折率(=2.0)によって定義される。環の内側のFOV点は、導波路の内側で全内部反射を介して伝搬する。環の外側のFOV点は、決して存在しない禁止モードである。
図1から、520nm未満の波長のみが導光体内に結合するということが分かる。450nmでの全FOVは、+/-1次によって入力結合されるFOV部分を組み合わせることによって得られる。同じことは、450nmより小さく、依然として環の内側にあるすべての波長に当てはまる。これは、入射光が、例えば、波長帯域B=[430,450]nm及びG=[520,550]nmから成る場合、入力結合器は、B波長のみを結合し、G波長は、ゼロ次回折を有する格子を通して伝搬することを意味する。
【0021】
提示された入力結合の方式を、従来の導波路格子構成によって用いることができる。
図2に実例が挙げられる。入力結合格子21は、入力結合光線26A、26Bを射出瞳拡大(EPE:exit pupil expansion)格子24に向ける2つの反射格子22、23によって囲まれ、射出瞳拡大(EPE)格子24は、最後に、光線27B、28Bを出力結合格子25に向ける。
【0022】
図3に代替方式が示される。入力結合格子31は、第1のEPE格子32A、32Bに関連付けられ、第1のEPE格子32A、32Bは、光を第2のEPE格子33A、33Bに向けて拡大する。光は、出力結合格子34Aによって出力結合される。この構成において格子ベクトルを適切に選択することによって、光線は、いかなる回折もなく、EPE格子33A、33B上の出力結合器を通して供給可能である。これは、
図4に示される波数ベクトル解析の実例から分かる。出力結合器は、環の外側の第1のEPE格子から入射する光線を回折させる、すなわち、回折は発生しない。EPE格子上の出力結合器を通る光伝送は、より小さい格子面積、したがってより良好な導波路用の形状因子を可能にする。
【0023】
示された入力結合方式は、RGB導波路スタックにおいて直接利用可能である。
図5は、例示的なスタックを示す。導波路51A、51B及び51Cは、それぞれ、青色光、緑色光及び赤色光のために指定され、入力結合格子52A、52B、52Cを含む。青色光が緑色光及び赤色光の導波路に入力結合するのを防止するために、青色光を導波路51Aに戻して反射する光学フィルタ53Aは、導波路51Aと51Bとの間に配置される。同様の方法で、緑色光を反射する光学フィルタは、導波路51Bと51Cとの間に配置される。導波路51Cは、赤色光のみを受け取る。フィルタ53A及びBは、吸収フィルタとすることもできる。
【0024】
すべての提示された実施例は、導波路ディスプレイの当技術分野で知られているインコヒーレント(LED)及びコヒーレント(レーザー)光のイメージ・プロジェクタ及びプロジェクション方式によって利用可能である。
【0025】
本発明の実施例が、透明のニアアイ・ディスプレイ(NED:near-to-the-eye display)デバイス又は他のHMDにおいて最も適切に用いられる。