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特許7368375エネルギー案内チェーン用の射出成形部品へのマーキング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】エネルギー案内チェーン用の射出成形部品へのマーキング
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/37 20060101AFI20231017BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20231017BHJP
   F16G 13/16 20060101ALI20231017BHJP
   G06K 19/06 20060101ALI20231017BHJP
   H02G 11/00 20060101ALI20231017BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B29C45/37
B29C33/38
F16G13/16
G06K19/06 037
H02G11/00 060
H02G3/04 075
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020555411
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2019058926
(87)【国際公開番号】W WO2019197392
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】202018102000.5
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507336499
【氏名又は名称】イグス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ブレイズ フランク
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-093926(JP,A)
【文献】特開2014-209846(JP,A)
【文献】特開2014-176044(JP,A)
【文献】国際公開第2016/072177(WO,A1)
【文献】特開2008-279604(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03305498(EP,A1)
【文献】特開2000-120807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
B29C 45/00 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプラスチック射出成形部品(2A、2B;3A、3B;4)を含むエネルギー案内チェーンのチェーンリンク(1)であって、
前記射出成形部品(2A、2B;3A、3B;4)は、第1の表面(13)を有する第1の側面、および、第2の側面を有する、全体を通して同じままである配色のプラスチックから一部品型のプラスチック体の形態で射出成形方法で製造され、前記第1の側面で可視的な少なくとも1つのマーキングが設けられ、
前記少なくとも1つのマーキングは、データを符号化する2Dコード、すなわち、QRコードを有するデータコードマーキング(10;20)を含み、前記QRコードを有する前記データコードマーキングは、前記射出成形方法で視覚的に黒のプラスチックから前記プラスチック体に取り入れられ、かつ前記第1の側面(6)に機械可読式に設けられ、
前記少なくとも1つの射出成形部品(2A、2B;3A、3B;4)は、繊維強化射出成形可能プラスチックから製造され、
前記少なくとも1つの射出成形部品(2A、2B;3A、3B;4)は、強化用繊維を有するポリアミドを主な重量比で含有するプラスチックから製造される、チェーンリンク。
【請求項2】
前記2Dコード(10;20)は、ISO/IEC 18004によるQRコードである、請求項1に記載のチェーンリンク。
【請求項3】
前記2Dコード(10;20)は、マトリックスコード、ISO/IEC 16022によるDataMatrixコードであり、および/または前記2Dコードは、前記プラスチック体との材料統一関係で一体的に成形または形成される、請求項1に記載のチェーンリンク。
【請求項4】
符号化するための前記2Dコード(10;20)は、第1の記号要素(11)および第2の記号要素(12)を含み、前記第1の記号要素は前記第2の記号要素と異なる表面性を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のチェーンリンク。
【請求項5】
前記射出成形部品の前記第1の記号要素(11)および前記第1の表面(13)は同じ表面性を有し、ならびに/または、前記第2の記号要素(12)は前記第1の表面(13)と異なる表面プロファイルを有する、請求項4に記載のチェーンリンク。
【請求項6】
前記第1の記号要素(11)は、前記第2の記号要素(12)より小さい粗さ深さを有する、請求項4または5に記載のチェーンリンク。
【請求項7】
前記第1の記号要素(11)は、0.5~3.5μmの範囲の算術平均粗さ値Raを有し、前記第2の記号要素(12)は、5~12μmの範囲の算術平均粗さ値Ra、粗さ深さを有する、請求項4から6のいずれか一項に記載のチェーンリンク。
【請求項8】
前記第1の記号要素(11)は、前記データコードマーキング(10;20)に隣接する領域で前記第1の表面(13)との水平面の関係にある、請求項4から7のいずれか一項に記載のチェーンリンク。
【請求項9】
前記第2の記号要素(12)は、前記射出成形部品の前記第1の側面の前記表面(13)に対して突出する領域によって形成される、請求項4から8のいずれか一項に記載のチェーンリンク。
【請求項10】
前記データコードマーキング(10;20)は、前記第1の表面(13)に対してへこんだ、前記第1の側面の領域(7)に設けられ、および/または、前記第2の記号要素(12)は、前記射出成形部品の前記第1の側面の前記表面(13)に対してへこんだ領域によって形成される、請求項4から8のいずれか一項に記載のチェーンリンク。
【請求項11】
前記第2の記号要素(12)は、前記第1の記号要素(11)より大きな光散乱を生じさせる、請求項4から10のいずれか一項に記載のチェーンリンク。
【請求項12】
前記第2の記号要素(12)は、等方性の光散乱を生じさせる、および/または非周期的な表面プロファイルを有する、請求項4から11のいずれか一項に記載のチェーンリンク。
【請求項13】
前記2Dコードを有する前記データコードマーキング(10;20)は、前記プラスチック体(2A、2B;3A、3B;4)と同じプラスチックから一体的に製造される、請求項1から12のいずれか一項に記載のチェーンリンク。
【請求項14】
前記データコードマーキング(10;20)は永久マーキングであり、前記2Dコードによって符号化される前記データは少なくとも1つの製造業者関連のURLまたはPURL識別子を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のチェーンリンク。
【請求項15】
前記2Dコードによって符号化される前記データは、暗号化および/または射出成形部品固有のデータコンテンツを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のチェーンリンク。
【請求項16】
前記少なくとも1つの射出成形部品(2A、2B;3A、3B;4)はQRコードを有する第1のデータコードマーキング(10;20)を有する側面部品(2A、2B;3A、3B)であり、少なくとも1つのさらなる射出成形部品(2A、2B;3A、3B;4)はQRコードを有する第2のデータコードマーキング(10;20)を有する開放棒(14)である、請求項1から15のいずれか一項に記載のエネルギー案内チェーンのチェーンリンク(1)。
【請求項17】
前記少なくとも1つのプラスチック射出成形部品(2A、2B;3A、3B;4)が側面部品(2A、2B;3A、3B)である、請求項1に記載のエネルギー案内チェーンのチェーンリンク(1)。
【請求項18】
前記第1の側面が前記側面部品(2A、2B;3A、3B)の外側(6)であり、前記第2の側面が前記側面部品(2A、2B;3A、3B)の内側(5)である、請求項1に記載のエネルギー案内チェーンのチェーンリンク(1)。
【請求項19】
前記第1の記号要素(11)と前記第2の記号要素(12)との間の高さの前記差異が0.5mm未満である、請求項9に記載のエネルギー案内チェーンのチェーンリンク(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、エネルギー案内チェーン用のプラスチック射出成形部品をマーキングすることに関する。
【0002】
エネルギー案内チェーンは、2つの相対的に移動可能な接続位置の間の、ケーブルやホースなどのようなラインの保護された動的案内の役割を果たす。エネルギー案内チェーンは、典型的には、それぞれが1つまたは複数のプラスチック射出成形部品を含む個々のチェーンリンクで構成されている。例えば、多部品チェーンリンク用の板状側面部品が既知である。この板状側面部品は、一部品型のプラスチック体の形態で射出成形プロセスを使用して製造される。プラスチック構成部品の外側および内側はそれぞれ、選択されたプラスチックによって、特に、使用される射出成形金型によって性質が判断される表面を含んでいる。射出成形方法によって一体的に製造されるチェーンリンクも既知である。射出成形方法を使用して、エネルギー案内チェーンの直接使用できる成形部品は、大規模にまたは大量生産で安価に製造可能である。
【0003】
本発明は、より詳細には、エネルギー案内チェーンの示される一般的な種類のこのようなプラスチック射出成形部品、例えば、チェーンリンクの側面部品に関する。この場合、射出成形部品は、第1の側面、特に、第1の表面を有する側面部品の外側、および、第2の側面、特に、側面部品の内側を有する一体型のプラスチック体の形態で射出成形方法で製造される。少なくとも1つのマーキングは、射出成形方法でプラスチック体に施され、かつ第1の側面で可視的に設けられる。
【背景技術】
【0004】
射出成形方法では、ネガ形状の適した構成により、例えば、商品番号および製造業者によって、例えば、表面のまたは表面上の突出したもしくはへこんだ刻印のようなマーキングを生じさせることが可能である。射出成形では、例えば、製造日に関連する可変のマーキングを施すことも既知である。これは典型的には、複数のいわゆる「ダイカスティング機構(casting clock)」、すなわち、射出成形金型で回転可能であり、かつ全般的に外部で視認できる一種のタイムスタンプをプラスチック体に施すパンチによって行われる。
【0005】
上述されるような二種類のマーキングは、本出願人(igus GmbH)によるエネルギー案内チェーン用のカタログ製品として入手可能な多くの射出成形部品上で見出されるものになる。ここでのマーキングは、特に、人間が読めるおよび/または機械可読かどうかにかかわらず、情報の光学的に読み取り可能なものを示す。
【0006】
特許文献1は、エネルギー案内チェーンのチェーンリンクを開示している。このエネルギー案内チェーンの側面部品には、製造月および年を指定する従来のやり方での射出成形を使用して2つのタイムスタンプが施される(該文献の図2を参照)。
【0007】
現在かなり一般的である製品のマーキングおよび識別技術は、いわゆる2Dコード、特に、マトリックスコードの使用を伴うことが増えてきている。例えば、特に、ISO/IEC 18004によるいわゆるQRコード(登録商標)、または、特に、ISO/IEC 16022によるいわゆるDataMatrix(商標)コードが普及している。これは、いずれの場合にも、光学的に機械可読の記号を含んでいる。これらの記号は、特に、英数字ラベルまたはEANバーコードと比較してより高い情報密度をもたらす。二次元コードは、製造時の、例えば、利用可能性および品質制御などに関するプロセスオートメーションでの部品識別に使用される。信頼でき、迅速で精確な識別は、製造後にも、特に、ユーザにとって有利である。
【0008】
ますます使用されてきている技法は、直接部品識別、または部品表面上の二次元コード(2Dコード)による(「直接部品マーキング」:DPMという)部品の直接マーキングである。DPMは、製品の表面に耐久性のあるマーキングを直接施す方法に関係する。ラベルなどを後に施すことと比較して、直接マーキングはより信頼でき、かつ自動化するのが容易である。
【0009】
特許文献2の導入部に見られるように、さまざまなDPM技術が既知である。例えば、部分的にプラスチック部品にも適しているレーザ刻印が既知である。よって、例えば、別種の部門からの特許文献3および特許文献4では、レーザ刻印に対して特定の追加のプラスチック層を有するプラスチック注入バルブ用の射出成形部品が記載されている。
【0010】
ドットピーニング工具、スクライバ、針スクライビング彫刻方式、およびマーキングを部品表面に直接取り入れるための同様の彫刻盤も既知である。これらは大部分が金属部品に使用されている。レーザ彫刻の場合のように、これは、例えば、2Dコードを有する所望のデータコードマーキングを施すために構成部品の表面を後に制御しながら変える介入的方法またはサブトラクティブ法を含んでいる。
【0011】
非介入的手順、特に、媒質層を表面に後に施すことによってマーキングするアディティブマーキング法、例えば、インクジェットマーキングも既知である。非特許文献1において詳細を参照されたい。
【0012】
前述のDPM手順は、製造プロセスに統合可能であるが、後に別個のステップで構成部品にマーキングできる。これによって、さらに複雑かつ高費用になり、混乱状態に対する防衛策は本来備わっていない(すなわち、部品の虚偽表示が可能である)。
【0013】
金属鋳造技術の分野では、成形部品を最初に成形するという文脈において、部品はさらなる加工作業なく光学的に読み取り可能なコードマーキングが与えられることも既に提案されている。
【0014】
特許文献5は、所望のマトリックスコード、例えば、タービンの回転翼用の、例えば、中空型のDataMatrix(商標)コードのネガ形状を生じさせるセラミック鋳型の製造における特殊なインサートの使用を提案している。この場合、具体的なインサートは、流体状態からの後の成形のための中空型(メス型)の製作に役立つモデル(オス型)に統合される。インサートおよびモデルは、ワックス状の融解性材料から作られる。この両方共が、加熱することによって中空型から取り外されることで、残っているものは中空型における所望の2Dコードのメス型である。
【0015】
原版成形プロセス(流体状態からの原版成形)中に金属鋳造部品をマーキングするためのさらなるアプローチが、特許文献6に記載されている。これは、原版成形プロセス中に鋳物の安全に操作できるマーキングを可能にすることを目的としている。この配置構成では、符号化の点では調節可能であり、かつ溶解した金属に向けた鋳型壁でのマトリックスコード要素に対する可変的に調節可能なネガ形状をもたらし、かつ鋳造作業によって溶解した材料が充填されて2Dコードを形成するパンチが設けられている。このように、コードは1つの部品から次の部品に再設定可能である。このような成形金型は、複雑で費用が掛かる上、頻繁な保守を要し、故障が起きやすい。
【0016】
鋳造技術からの2つの上述したアプローチは、比較的高い圧力を使用するプラスチック射出成形方法(プラスチック状態からの原版成形)に容易に適するものではない。
【0017】
エネルギー案内チェーン用のプラスチック射出成形部品に関して、完成部品が高強度を有するようにすることはさらに困難であり、動作時に典型的には摩耗を受ける。従って、特殊プラスチックを含むこのような部品には、仮にあったとしても、直接マーキングのための通常の手順では限定的にしか確実なマーキングを施すことができない。レーザ刻印も全てのプラスチックでは容易に可能ではない。
【0018】
しかしながら、追加情報を有する射出成形部品をマーキングすることはまた、工業用プラスチックを使用するエネルギー案内チェーンの製作の過程では望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】独国特許出願公開第112004000584号明細書
【文献】国際公開第2016/054647号
【文献】独国特許発明第102005017807号明細書
【文献】独国特許発明第102005017808号明細書
【文献】国際公開第02/09018号
【文献】独国特許発明第102008024906号明細書
【非特許文献】
【0020】
【文献】技術報告書ISO/IEC TR 24720(第1版、2008年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、本発明は、エネルギー案内チェーンの射出成形部品をマーキングすることを可能にする安価で信頼できる手順を提供することを目的とする。この手順は、特に、大多数の品目を扱う時にも、混乱状態がなくできるだけ信頼できるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的は、請求項1に記載のエネルギー案内チェーン射出成形部品、およびこれとは独立して、請求項19に記載のプラスチック射出成形金型によって達成される。
【0023】
請求項1の前提部分によると、エネルギー案内チェーンのプラスチック射出成形部品、例えば、射出成形方法で製造される、一体型のプラスチック体の形態のチェーンリンクの側面部品が最初に提案されている。プラスチック体は、第1の側面、例えば、第1の表面を有する側面部品の外側、および、第2の側面、例えば、向かい側に配設される側面部品の内側を有する。この場合、少なくとも1つのマーキングは、マーキングが第1の側面で可視的であるように射出成形方法を使用する製作の過程で前もってプラスチック体に取り入れ可能である。
【0024】
本発明の最も簡易な実施形態では、マーキングは射出成形方法を使用する製作時に前もってプラスチック体に取り入れられ、かつ第1の側面に機械可読式に設けられる2Dコードを有するデータコードマーキングを含むことが提案される。2Dコードは、データ符号化に役立ちまたはデータを符号化し、かつデータ検出装置によるこのようなデータの検出に適している。検出は、商業的には一般的なデータ検出装置またはコード読み取り装置によって、光学的に、特に、電気光学的に行われ得る。
【0025】
本発明によると、データコードマーキングはそのように、射出成形方法を使用する、または適した構成の成形金型または射出成形金型における製作の過程で実際の射出成形体と共に生じさせる。成形金型との一定の関連性により混乱状態は除外される。
【0026】
データコードマーキングは、射出成形体の一体構成部品であるまたは一体構成部品になるため、これらを分離することはできず、またはいずれの場合においても、その破壊が生じないことはない。
【0027】
このような特殊なデータコードマーキングの製作費は、製作に一回限りの費用しか掛からない、または後に射出成形金型を採用するように、射出成形方法への統合によって最小化される。
【0028】
二成分法を使用する製造は基本的に可能であるが、射出成形体が含む全く同一のプラスチックからの2Dコードを有するデータコードマーキングの材料統一製造が好ましい。よって、2Dコードは、プラスチック体、特に、同じプラスチックからの単一材料によって一体的に製造または成形される。この解決策によって、特に、比較的簡易な金型を使用する低費用の製作が可能になる。
【0029】
好ましい実施形態では、既に普及しているまたは標準のフォーマットでのマトリックスコードは、データコードマーキングにおける2Dコードとして使用される。例として、特に、ISO/IEC 18004によるQRコードは、特に好ましい。この場合、QRコードという用語はまた、マイクロQRコード、SQRC、およびiQRコードまたはデザインQRコードなどのようなQRコードの変形を示すために使用される。
【0030】
ISO/IEC 16022によるいわゆるDataMatrix(商標)コード、またはさらにはいわゆるGS1 DataMatrixのフォーマットも普及している。他の既知の2Dコード、例えば、EZコード(商標)も可能である。
【0031】
「コード」という用語はここでは、光学的に認識可能な記号でのデータの再生を示すために使用される。このような、符号化目的のためのコードは、実際のデータコード記号を合わせて含む、2つの光学的に異なるタイプの表面要素、コードフィールド、またはいわゆる記号モジュール(以降、記号要素という)の空間的に二次元の配置構成を使用する。以降、2つの異なる要素タイプは、第1の記号要素および第2の記号要素という。
【0032】
この場合の記号要素は、さらなる記号要素と合わせた光学作用および/または形状による2Dコード記号を表す表面領域である。第1の種類の記号要素は、実質的にはかなり類似している光学作用および/または形状を有し、かつ光学的に互いに同じ作用を有する。対応する点は第2の記号要素にも該当する。しかしながら、第1の記号要素は、この光学作用および/または成形において、第2の記号要素と大幅に異なっている。従来の印刷されたマトリックスコードは、光学的にうまく区別される、一般的には、黒/白とすることができる2つの異なる対比色での記号モジュールと典型的には等しいサイズの正方形セルを含んでいる。
【0033】
第1の記号要素および第2の記号要素は、この場合、プラスチック体の一体構成部品であり、すなわち、これらの記号要素は、結果として、例えば、施したり印刷したりする必要なく形成される。
【0034】
しかしながら、好ましい実施形態によって、第1の記号要素は第2の記号要素と異なる(実)表面性を有する。記号要素の異なる表面性によって、特に、物質の異なる着色によって記号要素が表されることさえなく、異なる光反射の意味で光学コントラストを認識することが可能になる。
【0035】
本発明によるアプローチによって、好ましくは、全く同一のプラスチックが、エネルギー案内チェーン構成部品およびデータコードマーキングに使用される。記号要素の異なる着色は提供されない。
【0036】
第1の記号要素が、射出成形部品の第1の表面がまた、いずれにせよ、第1の表面の主な表面比率に対して有する同じ表面性を有する場合、製作時のさらなる簡略化が提供可能である。この場合、第2の記号要素は、特に、実表面性の点で異なっている表面プロファイルまたは異なるプロファイル性を有することができる。この点で、表面プロファイルという用語は、主要方向のうちの少なくとも1つに沿った、好ましくは両方向に沿った断面の実表面プロファイルを意味する。プロファイルは好ましくは、第2の記号要素全ての表面にわたって連続して同一であるまたは光学的に等価の性質を有する。この場合の表面またはプロファイル性は、無秩序、不規則、および/または混沌状態であり得る。
【0037】
第1の記号要素および第2の記号要素は、特に、これらの粗さ特性(DIN EN ISO 4287)の点で異なっている可能性がある。
【0038】
好ましい実施形態によって、特に、第1の記号要素は、より滑らかな表面、すなわち、結局のところ第2の記号要素より小さい粗さ深さを有する。この場合、第1の記号要素全ては、技術的意味で互いに同一である表面粗さを有するが、表面性は第2の記号要素全てに対して明らかに異なっている。粗さ深さは、測定手順によって記号要素の表面においてこれ自体が既知である技術方法を使用して確認可能である。
【0039】
好ましい実施形態によって、第1の記号要素は、0.5~3.5μm(マイクロメートル)の範囲、好ましくは、0.75~2.75μmの範囲における算術平均粗さ値Raを有し、第2の記号要素は、5~12μmの範囲、好ましくは、6.50~10.50μmの範囲の算術平均粗さ値Raを有する。算術平均粗さ値Raの測定は、特に、表面プロファイル方法を使用する標準のDIN EN ISO 4288(1997年版)に従って行われ得る。ここで、RaはDIN EN ISO 4287(1998年版)による標準パラメータである。
【0040】
型製造を簡略化するために、第1の記号要素が、データコードマーキングに隣接する第1の表面の領域と比較した、面一の関係または水平面の関係で配置されるようにすることができる。第1の記号要素は、射出成形部品の周面に無段階に移行できる。この配置構成によって、オプションとして、特定の機械加工が第2の記号要素にのみ必要であるように、型構成が簡略化される。
【0041】
特に、適したまたは既存の射出成形金型の簡易な初期製作または後の適用は、第2の記号要素が、射出成形部品の第1の側面の表面に対して突出するまたはこれが隆起した領域によって形成される場合に可能である。これは、特に、射出成形部品の(巨視的な)幾何学的形状を変更しない薄肉の構成部品との関連で利点を有する。このことは、マーキングがいずれの肉厚の低減も引き起こさない場合有利であるが、これは、チェーンリンク、特に、エネルギー案内チェーンの側板がこの動作時に非常に大きな力を受ける時があるからである。
【0042】
光検出について、第1の記号要素の表面と第2の記号要素の表面との間の高さの平均差が0.5mm以下である場合は有利である。このように、比較的小さい、例えば、正方形の基面を有する記号要素でさえも、データ検出装置の光軸に対して大きく傾斜した配向でも確実に読み取ることが可能である。さらに、構成部品の幾何学的形状は感知できる程には変化しない。
【0043】
データコードマーキングは、特に、射出成形部品の構造領域と共に、すなわち、マーキングまたは対応する材料利用のためのさらなる別個の部分なく製造可能である。
【0044】
代替的にまたはさらに、データコードマーキングは、全体で、第1の表面に対してへこんだ、射出成形部品の第1の側面の領域に設けられることが可能である。これによって、特に、例えば、干渉エッジなどでの摩損からマーキングが保護される。さらにまたは代替的に、射出成形部品の第1の側面の表面に対してへこんだ、またはこれに対して引っ込められた領域によって第2の記号要素を形成することは等しく可能である。データコードマーキングは、これに関係なく、可能な限り、摩耗の影響を受けにくいまたはこのような影響を少ししか受ける可能性がないプラスチック体のよく見える表面領域に設けられるものとする。
【0045】
2Dコードの両方の種類の記号要素の選択された表面性に関係なく、好ましい実施形態によって、第2の記号要素は、これらの表面が同一の光照射を有することにより、第1の記号要素より、大きな光散乱またはかなり顕著な乱反射を引き起こすまたは生じさせる。異なる光散乱は、材料性が変更されることなく、輝度の違いを光学的にまたは視覚的に知覚できるようにすることが可能である。換言すれば、記号要素は好ましくは、着色されるのではなく、単に、異なる光散乱により光学コントラストをもたらす。
【0046】
よって、異なる記号要素の光学コントラストまたは光学識別性は、異なる光散乱性質によって引き起こされるのが好ましい。第1の記号要素は、例えば、技術的にできるだけ小さいある程度の粗さを有する可能性があり、それに応じて、入射光を比較的良く反射する通常の反射面のように近似的に作用する(材料依存の吸収度を考慮して、入射角=反射角)。比較して、所定の異なる種類の表面性により、例えば、射出成形金型における適した粗化により、第2の記号要素は、入射光に関して所定の著しく大きくなった光散乱効果を有する。第1の記号要素と比較して第2の記号要素のより大きい光散乱は、例えば、それ自体が既知の光学方法による散乱係数または散乱断面積により確認可能であり、場合によっては最適化可能である。
【0047】
第1の記号要素と比較して第2の記号要素によるより大きい光散乱は、商業的に通常の装置、例えば、一般的なスマートフォンによって、従来のマトリックスコード、例えば、QRコードを確実に認識するために、十分な光学識別性をこれまでに示していることが試験によって示されている。
【0048】
第2の記号要素による光散乱は、理想的には、乱反射にできるだけ近づくようにするべきである(ランバート光源)。この目的で、第2の記号は、特にこれらの表面において、可視光の波長範囲に対して高い粗度を有することができる。第1の記号要素および第2の記号要素は、基本的に、同じ測定配置に対して、例えば、少なくとも20%異なっている可能性がある異なる光拡散反射度を有し得る。第1の記号要素は、部分的に滑らかな反射面を有することができる。
【0049】
好ましい実施形態では、第2の記号要素はまた、光学的におおむね等方性の光散乱を生じさせる。(例えば、第1の記号の表面と面一の)赤道面として2Dコードの基面における面法線に平行な極軸またはZ軸による球面座標系を前提として、おおむね等方性の光散乱はここでは、一定の方位角による選択された方向での光散乱の品質が、実質的に極角に依存していないことを意味する。これは一般的に、例えば、Z軸を中心として構成部品の回転時に、および同じままである光入射によって、第2の記号要素における輝度の大きな変化が観測者によって知覚できない場合、視覚的に試験され得る。
【0050】
このようなおおむね等方性の光散乱は、例えば、極角範囲全体(0~2π)にわたる量的偏差が、例えば、15%以下の偏差を有する極角範囲全体にわたる所定の閾値未満であるように設定される、非周期的な、例えば、技術的混乱の表面プロファイルによって実現可能である。全方向でほぼ同じである(等方性の)光散乱は、特に、第2の記号要素における理想的に滑らかな表面からの粗さまたは偏差が、両面方向から全く独立しているまたはランダムである場合に実現可能である。
【0051】
例えば、回析格子または同様の周期構造、例えば、表面の規則的なハッチングによって、異方性の光散乱も考えられるものになる。しかしながら、等方性の光散乱の利点は、極角の点では、データ検出装置の光学系に対するデータコードマーキングの相対配向はそのように重要ではないことである。これは特に、エネルギー案内チェーンの場合に有利であるが、これは、これらの最終使用時に所定の配向を有さないからである。エネルギー案内チェーンは、最も大きく変動する空間定位で使用され、ほとんどの応用では、互いに対して180度向きを変える2回の連続運転を形成する。
【0052】
射出成形または射出成形金型における2Dコードを有するデータコードマーキングの本発明による作成によって、特に、第1の記号要素および第2の記号要素の可視面を含む2Dが実際のプラスチック体と同じプラスチックから一体的に製造されることが可能になる。この点において、特に、エネルギー案内チェーンの射出成形部品について、特に、ポリアミドの主な重量割合による、オプションとして、強化用繊維による通常のポリマーまたはプラスチック混合物が使用可能である。データコードマーキングは、特に、視覚的に黒のプラスチック、すなわち、2Dコードにおける2種類の記号要素において関わった材料に関して異なる配色もなく、全体を通して同じままであるプラスチックの配色によって可能である。
【0053】
本発明によるデータコードマーキングは、特に、繊維強化射出成形可能プラスチックを含む射出成形部品と組み合わせると有利である。
【0054】
提案された解決策によって、特に、いずれのその後の加工もなく前もって機械可読であるようにプラスチック体によるオフツールモードで2Dを有するデータコードマーキングを生じさせることが可能になる。データコードマーキングはその結果として、特に、同じ射出成形型における射出成形部品と共に直接マーキングの形態で製造可能である。これによって、特に、2Dコードまたはマトリックスコードによる安価なマーキングが可能になる。
【0055】
第2の記号要素に対する第1の記号要素の光学的に明確に可視の異なる表面性は、一方で、第1の記号要素が、放電処理または放電加工除去(DIN 8580)によって成形金型の型彫放電加工によって生じさせることができる表面性を有する場合に実現可能であることが試験によって示されている。他方では、第2の記号要素にとって適した表面性は、これらの表面性がレーザ彫刻、特に、射出成形型(成形金型)の深さレーザ彫刻または3Dレーザ彫刻に対応する場合に実現可能である。この場合、データコードマーキング外の射出成形部品の第1の側面の第1の表面はまた、型彫放電加工に対応し得る。この場合、第1の側面は、目的通りに、射出成形部品の外側とすることができる。射出成形部品の第2の側面は、少なくとも主として、第1の側面と同じ表面性、すなわち、また、放電加工(EDM:放電加工機)によって生じた表面品質を有する第2の表面を有することができる。
【0056】
放電加工機によって、第1の表面、および場合によっては第1の記号要素の点で比較的小さい粗さ深さ、すなわち、望ましくは滑らかな表面を実現することが可能である。さらなる利点は、異なる方法が、第2の記号要素の光学コントラストだけに対する成形金型の金型製造、例えば、射出成形金型のレーザ加工で必要とされることである。
【0057】
データ技術に関して、データコードマーキングは好ましくは、射出成形部品全てにわたって、すなわち、射出成形金型において常に、同じままである永久マーキングによって施される。この場合、2Dコードによって符号化されるデータは、特に、製造業者関連のURL識別子またはPURL識別子を含むことができる。このように、ユーザ、例えば、保全技術者は、2Dコードをスキャンするためのソフトウェア、例えば、QRコードリーダーを有する商業的に通常のスマートフォンを使用して、その場の最も簡易なやり方で、エネルギー案内チェーンから製造業者の適した所定のインターネットページに連れてこられ得る。
【0058】
特に、製品の偽造を認識するために、2Dコードによって符号化されたデータが暗号化および/または射出成形部品固有のデータコンテンツを含む場合に有利である。この理由で、例えば、SQRCコード(安全なQRコード)を使用することが可能である。
【0059】
具体的なデータコードマーキングに加えて、射出成形部品は、さらに、従来のユーザ読み取り可能マーキング、特に、製造時間を確立することを可能にする時間マーキングを有することができる。これはまた、例えば、時間変化のダイカスティング機構マークパンチによって射出成形プロセスでプラスチック体に取り入れ可能である。このような従来のユーザ読み取り可能マーキングは好ましくは、データコードマーキングも設けられる射出成形部品の第1の側面に設けられる。
【0060】
本発明は、エネルギー案内チェーンの多部品型または一部品型のチェーンリンク、およびこの構成部品(例えば、分離バー、横断板、端部固定具、および張力緩和手段など)の製造に適用可能である。よって、2Dコードを有する本発明によるデータコードマーキングは、例えば、チェーンリンクの一方または両方の側面部品(チェーン側板)と、および側面部品を接続する少なくとも一方の開放バーとの両方において設けられ得る。それ故に、それぞれの個々の射出成形部品は、対応するデータコードマーキングにおいてこれ自体固定して関連付けられた2Dコードをそれぞれ有することができる。よって、特に、エネルギー案内チェーンのそれぞれの個々の部品はユーザには容易に識別可能である。最も大きく変動する範囲の個々の部品は、ユーザによる識別が部分的にのみ困難であり得る、特に、偏向半径、チェーン幅、およびチェーン高などに応じて、所与の製品シリーズのエネルギー案内チェーンに関して、前もって可能になっている。
【0061】
本発明は、この結果として、エネルギー案内チェーンに対するプラスチックの射出成形部品の製造のためのプラスチック射出成形金型にも関係する。射出成形金型は、特に鋼鉄から製造可能である。本発明によると、射出成形金型は射出成形キャビティを画定するために成形壁に組み込まれるまたは形成される2Dコード用の射出成形金型において固定してあらかじめ定められるマーキング領域を有する。マーキング領域は、例えば、射出成形部品の第1の表面に対する画定壁の製造と共に、特に、型彫放電加工によって製造されるいくつかの第1の記号領域を有する。さらに、成形金型のマーキング領域は、第1の記号領域と異なる表面性、特に、第1の記号領域より大きい粗さ深さを有するいくつかの第2の記号領域を有する。第2の記号領域はこの場合、特に、射出成形金型のレーザ彫刻によって、特に、初期製作の過程でまたはその後にも、提供可能または生じさせることが可能である。特に、射出成形型または成形金型の深さレーザ彫刻または3Dレーザ彫刻は、レーザ彫刻手順とみなされる。
【0062】
従って、第1の記号領域は第1の記号要素を作成するのに役立ち、第2の記号領域は第2の記号要素を作成するのに役立つ。射出成形金型という用語は、特に、データコードマーキングが片側にある場合に十分であるような二部品型の成形金型の型半部(ハーフシェル部分)を示すために使用される。
【0063】
エネルギー案内チェーン部品の提案されたデータコードマーキングは、使用中に広範な種々の利点をもたらす。2Dコードを有するエネルギー案内チェーン射出成形部品は、種々のさらなる使用をもたらすことができる。よって、例えば、組立および/または保守は、例えば、エネルギー案内チェーンの構成、組立、および/または保守に関連する情報を呼び出すことによって、簡略化または支援可能である。交換部品の注文も、2Dコードを使用することによって可能とされ得る。この点において、ユーザは、プラスチック射出成形部品上で直接、例えば、QRコードにおけるURLによって、例えば、このプラスチック射出成形部品に関連する製品シリーズと関連付けられた製造業者のウェブサイトに、スマートフォンまたはタブレットなどによる2Dコードのデータ検出によって案内可能である。ウェブサイトは、例えば、組立または保守の説明書、ならびに、個々の部品および/またはエネルギー案内チェーン用の仕様データなどのような製品情報を含むことができる。注文機能は、さらにまたは代替的に、予備部品を注文するために設けられ得る。
【0064】
特に、所与のエネルギー案内チェーンシリーズのそれぞれの個々の部品は、この種類のさらなる使用をもたらすために一意に関連付けられた固有の2Dコードを備えることができる。
【0065】
さらに、場合によっては、2Dコードのスキャン後、例えば、プラスチック射出成形部品の少なくとも1つのパラメータに関する補足的な問合せは、具体的に対象とされる情報を供給するようにユーザにウェブベースの関係で向けられ得る。また、製品に関連する追加の使用を供給する端末装置上でのアプリケーションを呼び出すことも考えられる。
【0066】
データコードマーキングはまた、例えば、暗号化された追加データに基づいて製品の偽造を認識するために採用可能である。さらにおよび/または代替的に、ユーザはプラスチック射出成形部品と関連付けられた製造業者のウェブサイトに、プラスチック射出成形部品上の2Dコードのデータ検出によって案内可能である。このように、特に、プラスチック射出成形部品の少なくとも1つの検出特徴に関する補足的な問合せは、例えば、真正性または偽造品についての情報を提供するためにユーザに向けられ得る。
【0067】
本発明のさらなる詳細、特徴、および利点は、例として、添付の図面を参照して、好ましい実施形態の以降の詳細な説明から限定されることなく明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】それ自体が既知の構成のチェーンリンクを含むエネルギー案内チェーンの一部分の斜視図である。
図2A】データコードマーキングを示すために図1に示されるようなチェーンリンクの射出成形部品の形態の側板(外板)を示す側面図である。
図2B】データコードマーキングを示すために図1に示されるようなチェーンリンクの射出成形部品の形態の側板(外板)の拡大図である。
図3図2Bの切断線III-IIIに沿った、図2A図2Bに示されるデータコードマーキングにおける第1の記号要素および第2の記号要素の表面プロファイルの図式断面図である。
図4】ここで、開放バー上のデータコードマーキングを有する、図1と同様のチェーンリンクの図式平面図である。
図5図2A図2Bに示されるような側板の製造用の射出成形金型の型半部の写真を示す図である。
図6A図4に示されるような開放バーの製造用の射出成形金型の型半部におけるDIN EN ISO 4288:1997による測定装置によるデータコードマーキングの第1の記号要素に対する粗さ深さRaの測定値の写真を示す図である。
図6B図4に示されるような開放バーの製造用の射出成形金型の型半部におけるDIN EN ISO 4288:1997による測定装置によるデータコードマーキングの第2の記号要素に対する粗さ深さRaの測定値の写真を示す図である。
図6C】測定距離(1r)にわたって、図3における第2の記号要素と同様に、非周期的な表面プロファイル(Z(x))での算術平均粗さ値Ra(DIN EN ISO 4287:1998によるパラメータ)に関連する原理を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図1および図4は、特に、軽量構造であるにもかかわらず非常に頑丈である、例えば、igus GmbHによる商品名E4.1L(D-51147 Cologne)が記載してある製品シリーズの、個々のチェーンリンク1を含む既知のエネルギー案内チェーンの一部分を示す。図1は3つのチェーンリンク1を示す。ここで、中央のチェーンリンク1は、側板としての2つのいわゆる外板2A、2B、および2つのさらなるいわゆる内板3A、3Bを有する。外板2A、2Bは内板3A、3Bと重なり合い、それぞれの2つの側板2A、2B;3A、3Bは、解除可能な横断バー4(開放バー)によってチェーンリンク1を構成するために共に接続される。側板2A、2B;3A、3Bは、エネルギー案内チェーンの全長にわたって伸張する並んだ板の列を形成する。図1および図4それぞれに示されるエネルギー案内チェーンについては、国際公開第2014/161761号により詳細に記載されている。
【0070】
側板2A、2B;3A、3Bおよび横断バー4は、技術的に固く丈夫なプラスチック、例えば、強化用繊維によるポリアミドを含むプラスチック部品であり、射出成形を使用して製造される。しかしながら、エネルギー案内チェーンおよびチェーンリンク1の具体的な構造はこの点において重要な懸念事項ではなく、本発明はエネルギー案内チェーン用のいずれの射出成形部品にも適用可能である。射出成形部品2A、2B;3A、3B;4は、特に、おおむね光不透過性の、できる限り不透明の、特に、黒または非常に暗い色のプラスチックから製造される。側板2A、2B;3A、3Bおよび横断バー4はそれぞれ、チェーンリンク1の列の受入空間との関連で、内側5および反対側の外側6を有し、かつ、全体的に、比較的浅い、例えば板状の構成である。
【0071】
図2A図2Bは、単に本発明を例示するための例として、図1に示されるようなチェーンリンク1の外板2Aを示す。この点において、いずれの種類の側板または一部品型のチェーンリンクにも関係なく考慮される。側板2Aの外側6の横に突出する中央領域には、例えば、製造日または製造月および年が回転可能なダイカスティング機構マークパンチによって指定される、製造者刻印および2つのタイムスタンプ領域8を有するマーク面7がある。
【0072】
外板2Aまたはチェーンリンク1の外側6の端部が内方にずれた領域では、平坦な二次元マトリックスコード、ここでは、例えば、記号モジュールまたは記号要素に対するそれぞれのバージョン21×21~177×177に応じた個々のフィールドを有する正方形コード記号の形態による、ISO/IEC 18004によるQRコードを有するデータコードマーキング10がある。データコードマーキング10は、動作時に明確に可視であり、かつ、データ読み取り装置、例えば、スマートフォンに対して一定の距離からも機械可読であるように、例えば少なくとも15×15mmのサイズを有する。データコードマーキング10としてISO/IEC 18004によるQRコードの符号化は、これ自体既知であり、ここでより詳細に説明されない。図2AにおけるQRコード10をスキャンすることによって、さらなる利益が試験可能である。
【0073】
図3は、ここでは例として、図2Aの左上に示される位置マーカーに制限される、図2Bにおける線III-IIIに沿った方向の断面の線図である。図3が示すように、個々の記号要素、すなわち、第1の記号要素11および第2の記号要素12はそれぞれ、異なる表面性を有する。第2の記号要素12は、特に、より粗い断面プロファイルを有する、すなわち、第1の記号要素11より粗さ深さが大きい。第2の記号要素12のかなり顕著になった粗さ深さは、特に、例えば、好ましくは>3の、少なくとも2倍で、第1の記号要素11より第2の記号要素12の方が知覚的に大きくなる算術平均粗さ値Raを参照することにより測定可能である。表面に関してより滑らかである第1の記号要素11は、射出成形部品2Aの外側6における残りのまたは主な第1の表面13と同じ表面性を有することができる。記号要素11および12の両方の種類の表面または断面プロファイルはそれぞれ、図2Bにおける平面の面方向x、y両方で同様の性質を有し、図3に図式的にかつ代表的にのみ示される。第2の記号要素12の粗さが大きくなることで、第1の記号要素11よりも光散乱効果が大幅に大きくなるように設定される。さらに、射出成形部品2Aの主平面の面方向x、y両方における第2の記号要素12の表面プロファイルは、おおむね等方性の光散乱を引き起こすように非周期的である。
【0074】
図4は、データコードマーキング20としてQRコードを有する射出成形部品のさらなる特徴として、図1に示される幾何学的形状の横断バーまたは開放バー4を示す。関連付けられた一意のコードは、コードがデータコードマーキング10および20それぞれの2Dコードで符号化され、かつ例えば、問合せパラメータとしての認識済みURLによって製造業者のインターネットページに通信される、それぞれの構造サイズでオプションとしてそれぞれの構成部品に個々に割り当て可能である。
【0075】
図5は、図1図2に示されるような外板2A、2Bの製造用のプラスチック射出成形金型の鋼鉄の型半部30の写真を示す。マーキング領域33は、射出成形方法で直接、射出成形部品2A、2Bと共にデータコードマーキング10のオフツール製造のために(図1を参照)図5に示される射出成形金型の型半部30に常に組み込まれる。マーキング領域33は、図2A図2Bに示されるデータコードマーキング10の所望の2Dコード、例えば、QRコードのメス型に対応する。それに応じて、マーキング領域33は、第1の部分的に正方形でフィールド状の記号領域31を有する。記号領域31は、表面と面一とすることができ、かつ、特に、型彫放電加工(EDM:放電加工機)によって、型半部30の滑らかな画定壁の残りに対する表面性のいずれの差異もなく設計可能である。マーキング領域33はさらに、記号領域31に対してへこんだ第2の部分的に正方形でフィールド状の記号領域32を有する。第2の記号領域32は、型半部30または射出成形型の深さレーザ彫刻または3Dレーザ彫刻によってその後取り入れられ得る。第2の記号領域32の製造のためのレーザ彫刻によって、第2の記号要素12の所望の非周期的な等方的に散乱する表面プロファイルを製造するための鋭角遷移およびパラメータ設定が可能になる(図3を参照)。
【0076】
このような型半部30は、射出成形部品2A、2B;3A、3B、および4のプラスチック体との単一材料関係でデータコードマーキング10または20を製造する(図2A図2B図4)ためにオフツール式に使用可能である。データコードマーキング10および20のコードの機械可読認識にはその後の機械加工は必要とされない。
【0077】
図6A図6Bは、図4に示されるような開放バー4を製造するための鋼鉄のさらなる型半部40を示す。図6A図6Bはまた、例として、放電加工またはレーザ彫刻によって適切に製造される記号領域41、42においてDIN EN ISO 4288(1997年版)による表面プロファイル方法を使用して、粗さ深さの測定値、ここでは、算術平均粗さ値Raを示す。第1の記号領域は、射出成形部品4の主要面13の残りと同じ表面性を有する。射出成形方法において、プラスチック射出成形部品の表面13ではほぼ同じ粗さ深さが形成可能であり、すなわち、成形金型のマイクロメータ範囲の、場合によってはさらにはサブマイクロメータ範囲の構造さえも、完成品の射出成形部品2A、2B;3A、3B、および4の成形のやり方に比較的忠実に製造されることは留意されたい。よって、記号領域32および42によって生じた表面(実表面プロファイル)の光学的な光散乱性質は、第2の記号要素12で経験的に最適化可能である。
【0078】
原型の比較測定値によって、図5および図6A図6Bに示される成形金型では、第1の記号要素11(および第1の表面13)は、0.75~2.75μmの範囲の、特に、2μm未満の算術平均粗さ値Raが実現可能であり、他方では、第2の記号要素12における表面プロファイルは、6.50~10.50μmの範囲のまたはこれ以上の算術平均粗さ値Raが実現可能であることが示される。それに応じて、射出成形方法でプラスチック体に取り入れられるQRコード10および20は、市販のスマートフォンで広く異なる角度から光学的に容易に検出可能である。
【0079】
図6Cは、粗さパラメータとして、DIN EN ISO 4287(1998)によるパラメータとしての算術平均粗さ値Raを示す。Raは、プロファイル値全ての量からの算術平均値である。プロファイルはまた、電気表面ならい装置によって、例えば、平均粗さ深さRzのような、他のパラメータを見る時測定可能である。図6Cは、実表面プロファイルを単に図式に示すZ(x)を示し、これは測定結果を含まない。非常に滑らかな表面は、射出成形金型、ひいては射出成形部品の表面プロファイルにおける顕著な山と谷が回避され、かつRaが有益であるように、型半部30、40の画定壁として型彫放電加工によって実現可能である。
【符号の説明】
【0080】
図1図2A図2B
1 (エネルギー案内チェーンの)チェーンリンク
2A、2B 外板
3A、3B 内板
4 横断バー(開放バー)
図3図4
2A 側板(例えば、外板)
4 横断バー(開放バー)
5 内側
6 外側
7 マーク面
8 時間パンチ
10、20 データコードマーキング(例えば、QRコード)
11 第1の記号要素
12 第2の記号要素
13 第1の表面
x、y (主平面の)面方向
図5図6
30、40 型半部
31、41 第1の記号領域
32、42 第2の記号領域
33、43 マーキング領域
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C