(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】イロプロストの製造のための方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/09 20060101AFI20231017BHJP
C07C 59/46 20060101ALI20231017BHJP
C07B 61/00 20060101ALI20231017BHJP
C07D 309/12 20060101ALI20231017BHJP
C07C 67/327 20060101ALN20231017BHJP
C07C 69/732 20060101ALN20231017BHJP
【FI】
C07C51/09
C07C59/46
C07B61/00 300
C07D309/12 CSP
C07C67/327
C07C69/732 A
(21)【出願番号】P 2020556884
(86)(22)【出願日】2019-04-16
(86)【国際出願番号】 HU2019050016
(87)【国際公開番号】W WO2019202345
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-07
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HU
(73)【特許権者】
【識別番号】594129552
【氏名又は名称】キノイン・ジヨージセル・エーシユ・ベジエーセテイ・テルメーケク・ジヤーラ・ゼー・エル・テー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】イムレ・ロジャムバルシュキー
(72)【発明者】
【氏名】ジュジャンナ・カルドス
(72)【発明者】
【氏名】イレーン・ホルトバージ
(72)【発明者】
【氏名】ティボル・サボー
(72)【発明者】
【氏名】チャバ・ヴァラディ
(72)【発明者】
【氏名】タマーシュ・バーン
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特表昭63-502665(JP,A)
【文献】特開昭60-166644(JP,A)
【文献】特開昭59-134787(JP,A)
【文献】特開2003-055368(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103102256(CN,A)
【文献】Carbohydrate Research,1989年,Vol.192,p.43-49
【文献】Journal of the American Chemical Society,2005年,Vol.127(50),p.17910-17920, Surpporting Information
【文献】Angewandte Chemie, International Edition,1981年,Vol.20(12),p.1046-1048
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,1993年,Vol.3(2),p.199-204
【文献】Journal of Organic Chemistry,1981年,Vol.46(9),p.1954-1957
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
のイロプロストの製造のための方法であって、
a.)式II
【化2】
のコーリーラクトンは、リチウムジアルキルアミドの存在下にて、ジメチルメチルホスホネートで選択的にアルキル化され、
b.)結果として得られた式III
【化3】
のラクトールの環は、酢酸ピリジニウムを用いて弱酸性媒体中で開環され、次いで、得られた第2級ヒドロキシル基は、二クロム酸ピリジニウムで酸化され、
c.)結果として得られた式IV
【化4】
の化合物は、18-クラウン-6試薬の存在下で炭酸カリウムと反応させ、
d.)こうして得られた式V
【化5】
の化合物は還元され、
e.)結果として得られた式VI
【化6】
の化合物は、カリウム第3級ブチレートの存在下でカルボキシブチルトリフェニルホスホニウムブロミドと反応させ、
f.)結果として得られた式VII
【化7】
のEおよびZ異性体のTBDMS保護基は除去され、異性体は、重力クロマトグラフィーによって分離され
、
g.)結果として得られた式VIII
【化8】
の化合物は、エステル化され、
h.)結果として得られた式IX
【化9】
の化合物は酸化され、
i.)結果として得られた式X
【化10】
の化合物は、固体水酸化カリウムの存在下での
ホーナー- ワズワース- エモンズ反応で
、式XIの化合物に転換され、
j.)結果として得られた式XI
【化11】
の化合物のオキソ基は、
ジ-tert-ブチルメチルフェノールと水素化ジイソブチルアルミニウムの反応生成物である、DIBAL-Fで還元され、
k.)こうして得られた式XII
【化12】
の化合物のテトラヒドロピラニル保護基は除去され、化合物は重力カラムクロマトグラフィーによって精製され
、
l.)結果として得られた式XIII
【化13】
の化合物のエステル基は除去され、得られた式Iの化合物は精製される
ことを含む前記方法。
【請求項2】
リチウムジアルキルアミドは、工程a)においてリチウムジイソプロピルアミドまたはリチウムジシクロヘキシルアミドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程c)における反応は
、30~45倍の希釈度にて
、90~110℃で実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程c)における反応は、式IVの化合物の溶液を、試薬の還流する溶液中に滴下により添加するというやり方で実行される、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程f)におけるシリル保護基の除去は、フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物を用いて行われる、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程f)におけるEおよびZ異性体の分離は、ステップ勾配溶離液混合物を適用し、トルエン:メチル第3級ブチルエーテル混合物を溶離液として使用して実行される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程f)にお
いて、Z異性体
(VIIIz)はE異性体へ異性化され、該異性化は、ジメチルジスルフィ
ドの存在下で
UV照射によって実行される、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程h)における酸化は、DCCもしくはDICを含有するリン酸-DMSO混合物を用いるPfitzner-Moffatt酸化によって、またはAnelli酸化(次亜塩素酸ナトリウム、TEMPO触媒)によって実行される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
式Xの化合物は、工程i)において単離せずに式XIの化合物に転換される、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程i)において、クロマトグラフィーによって分離された式XIIIbの15R異性体は、酸化および11-OH基のTHP保護の後、合成へリサイクルされる、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
式XIIの化合物は、工程k)において単離されない、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
式Iの粗最終生成物は、重力クロマトグラフィーおよび/または分取HPLCによって精製される、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
式XI
【化14】
の化合物。
【請求項14】
式XII
【化15】
の化合物。
【請求項15】
式(S)-XII
【化16】
の化合物。
【請求項16】
式(R)-XII
【化17】
の化合物。
【請求項17】
イロプロストが
【化18】
である16(S)-イロプロストであって、方法は、式X
【化19】
の化合物
を(S)-ILO-ホスホネート
【化20】
と反応させることを含む
、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
イロプロストが
【化21】
である16(R)-イロプロストであって、方法は、式X
【化22】
の化合物
を(R)-ILO-ホスホネート
【化23】
と反応させることを含む
、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
我々の発明の対象は、新たな中間体を介する式Iのイロプロストの製造、固体形態のイロプロストの単離、ならびに式(S)-Iおよび(R)-Iの16(S)-イロプロストおよび16(R)-イロプロスト異性体の製造、ならびに固体の結晶性形態の式(S)-Iの16(S)-イロプロストの単離のための方法である。
【0002】
【背景技術】
【0003】
イロプロストは、カルバサイクリン誘導体である。カルバサイクリン骨格は、修飾されたプロスタサイクリンであり、ここで、酸素含有5員環の酸素原子は、炭素原子と置き換えられている。カルバサイクリンは、非常に反応性の高いエノールエーテル構造部分を含有せず、そのため、それらはプロスタサイクリンよりも化学的に安定である。カルバサイクリン構造の化学的および生化学的特性、ならびに初期の合成は、論文の非特許文献1に要約されている。
【0004】
【0005】
イロプロストは、6つの不斉中心を含有し、2種のジアステレオ異性体のおよそ1:1の比の混合物であり、これは、16位における炭素原子の立体配置が、メチル基の立体的位置に関して(R)または(S)であり得るからである。現在、16(R)-イロプロストおよび16(S)-イロプロストのほぼ1:1の比の混合物が治療において使用されるが、2種の異性体の活性は異なり、16(S)-イロプロストがより有効である(非特許文献2;非特許文献3)。規制当局は、薬学的活性成分への16(S)-イロプロストの開発を促している。
【0006】
なお、ここで、下方鎖の炭素原子は、各場合において、プロスタグランジン化学において許容されているルールに従って番号付けられている。この番号付けは、一部の場合において、ケミカルアブストラクト(CAS)名およびIUPAC名と異なる。実施例において、今まで知られている化合物についてはCAS名称が、一方新たな化合物についてはIUPAC名が使用される。
【0007】
【0008】
治療において、イロプロストは、末梢動脈疾患(末梢動脈閉塞性疾患、PAOD)(1992、Bayer Schering Pharma)および肺高血圧症(2004、Bayer Schering Pharma)を処置するために使用される。
【0009】
イロプロスト合成の鍵となる工程は、2つの5員環を含有する適切に置換されている二環の構築である。
【0010】
適切に置換されている二環式ケトンを製造するための最も頻繁に用いられる方法についての引用は、光学活性16(S)-イロプロストの合成を記載する最近の文献に見出すことができる:
非特許文献4;
非特許文献5;
非特許文献6。
【0011】
二環式ケトンは、グリオキサールとジメチル-1,3-アセト-ジカルボキシレートとを反応させることによって合成した(非特許文献7;H.Dahl(Schering AG)、特許文献1、非特許文献8)。(スキーム1.)
【0012】
【0013】
cis-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3,7-ジオンはネオペンチルグリコールで選択的にケタール化し、モノケタールを水素化ナトリウムの存在下で炭酸ジメチルと反応させ、オキソ基を還元し、アルコールをアセチル化し、アセテートを酵素的加水分解によって分解した(H.Dahl(Schering AG)、特許文献1)。(スキーム2.)
【0014】
【0015】
Scheringの研究者らは、メトキシカルボニル基で二置換されているモノケタールの酵素的な選択的モノ-メトキシカルボニル化も成し遂げた(非特許文献9)。(スキーム3.)
【0016】
【0017】
適切に置換されている二環は、プロスタサイクリン誘導体のための最も頻繁に使用される出発材料である適切に置換されているキラルコーリーラクトンからも形成することができる。
【0018】
SkuballaおよびVorbruggenの方法では(非特許文献10)、ベンゾイル保護基を含有するコーリーラクトンの第1級ヒドロキシル基を、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMSCl)で保護した。
【0019】
TBDMS-ベンゾイル-コーリーラクトンは、THF中のリチウム化酢酸エチルと(-)70℃で反応させ、次いで水を、結果として得られたヒドロキシエステルから排除した。TBDMS-ベンゾイル不飽和エステルのベンゾイル保護基を、炭酸カリウムの存在下でのメタノリシスによって切断し、第2級ヒドロキシル基を、クロムを用いる酸化によってオキソ基に変換した。TBDMS-不飽和エステルの反応性エノールエーテル環は、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)を用いる処理で、開環およびケトンへ環化させた。11-オキソ基を、水素化ホウ素ナトリウムを用いてワンポット反応にて第2級アルコール基に還元した。還元の選択性は、隣接している基の参加によって確保されたが、エピマー純度は、これが光学純度にとっておよび光学異性体の量にとって鍵となる重要なものであるにもかかわらず与えられなかった。開環およびオキソ基還元の概略収率は70%であった。エトキシカルボニルケトンのエトキシカルボニル基を、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DBO)の存在下で水性トルエン中の還流によって除去し、第2級ヒドロキシル基をベンゾイル基で保護し、第1級ヒドロキシル基のシリル保護基を切断した。これらの3つの工程の概略収率は43%であった。(スキーム4.)
【0020】
【0021】
保護された二環式ヒドロキシ-ケトンから、イロプロストの下方鎖および上方鎖は、Wittig反応または修飾Wittig反応によって形成することができる。
【0022】
該方法の利点は、カルバサイクリンの合成に必要とされる光学活性二環式ケトン中間体が、プロスタグランジン化学において広く使用される光学活性コーリーラクトンから出発して形成されることである。しかしながら、欠点は、コーリーラクトンと酢酸エチルのリチウム化合物との反応が多数の副生成物も与え、収率を著しく減少させることである(参照されている文献において、その工程の収率は与えられていない)。
【0023】
Upjohn方法(非特許文献11)によれば、下方鎖をすでに含有する保護コーリーラクトンは、カルバサイクリンの製造に適当な中間体に変換される。
【0024】
第1の工程において、ビス-THP-コーリーラクトン誘導体(THP=テトラヒドロピラニル)をジメチルメチルホスホネート(DMMP)のリチウム塩で処理した。結果として得られたビス-THP-ヒドロキシ-ホスホネートを、修飾Collins酸化によってビス-THP-ケト-ホスホネートに酸化させた。ビス-THP-ケト-ホスホネートの分子内ホーナー-ワズワース-エモンズ(HWE)反応により、ビス-THP-二環式エノンが得られた。エノンの二重結合を移動水素化(ビス-THP-二環式ケトン)によって飽和し、THP保護基を次いで、酸性加水分解(二環式ケトン)によって除去した。下方鎖をすでに含有する二環式ケトンの上方鎖を、Wittig反応によって形成した。該反応に必要とされるホスホランを、4-カルボキシブチルトリフェニルホスホニウムブロミドからその場で製造した。該反応は、E形状(65%)の二重結合を有する所望の生成物の他に、著しい量のZ異性体(35%)も生成した(スキーム5.)
【0025】
【0026】
該方法は、良好な収率を有するスケーラブルな工程を含有し、それの欠点は、上方鎖の形成が選択的でないことであり、生成物は著しい量のZ異性体混入を含有する。後の文献(非特許文献12)において、著者は、より高い収率を有する上記の化学的工程を記載している。
【0027】
【0028】
上方鎖を形成するWittig反応の選択性を改善するため、多くの試みがなされてきた。
【0029】
Scheringの研究者らは(非特許文献13)、下方鎖をすでに含有する二環式ケトンの保護基およびWittig反応の反応条件がどのように反応の選択性に影響を及ぼすかを調査した。
【0030】
【0031】
実験に基づき、彼らは、THP保護基(R1=R2=THP)およびDMSO-THF溶媒混合物の使用により、最も悪い異性体比(E:Z=60:40)が得られたと述べた。
【0032】
最良の異性体比(E:Z=90:10)は、二環式ケトンが保護基(R1=R2=H)を含有しないとともにジメトキシエタンが溶媒として選択された場合に達成された。
【0033】
H-J.Gaisおよび彼の同僚は(J.Am.Chem.Soc.、2005、127、17910~17920頁)、イロプロストのキラル下方鎖を含有するコーリーラクトンから出発するその反応を繰り返したが、彼らは、はるかに好ましくない異性体比(E:Z=62:38)を得た。
【0034】
文献データを詳査し、上方鎖を構築するための今まで知られている最も選択的な方法は、H-J.Gaisおよび彼の同僚によって成し遂げられた(非特許文献6;非特許文献5)。該方法は、キラル下方鎖を含有するイロプロストの合成のために成し遂げられた。
【0035】
上方鎖は2つの工程で構築した。選択性を確保する第1の工程を、キラルホスホネートを用いて実施した。キラルホスホネートのリチウム塩を、(-)78-(-)62℃で、イロプロストに対応するがキラル下方鎖を含有する保護された二環式ケトンと反応させた。キラルHWE反応を、二環式ケトン300mgから出発して実施した。該反応において、Z異性体を2%のみ形成した。エステル基を水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)でアルコールに還元し、アルコールをアセチル基で保護した。適切な数の炭素原子を有する上方鎖を、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基で保護された銅塩試薬でアセチル誘導体を処理することによって構成した。第1級アルコールの保護基を温和な脱シリル化(ヘキサン中の中性酸化アルミニウムを用いる処理による)によって除去し、第1級アルコールをDMSO-ピリジン試薬でアルデヒドに酸化させた。アルデヒドを硝酸銀で酸に酸化させることで、保護基の除去後に、キラル下方鎖を含有する(16S)-イロプロストを得た(スキーム7.)。
【0036】
【0037】
16(S)-イロプロストの製造量は20mgであり、それの物理的状態は特性評価されなかった。
【0038】
上記方法の利点は、上方鎖の構築中、Z異性体不純物が2%のみ形成されることである。欠点:スケールアップすることが難しく、それは極端な反応条件を適用し、多工程合成で製造される高価な試薬を使用する。
【0039】
特許明細書特許文献2には、ラセミのTBDMS-エノンの分別結晶化によって得られるキラル(S)-TBDMS-エノンの製造が記載されている(
図8.)。
【0040】
キラル(S)-TBDMS-エノンから、16(S)-イロプロストは製造することができる。
【0041】
【0042】
該方法は、16(S)-イロプロストのホルマール合成である。該特許出願は、キラルエノンの製造のみを含有する。16(S)-イロプロストの製造および物理的な特性評価に関しては、製造例も物理的特徴も与えられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【文献】DE 3816801
【文献】CN 107324986
【非特許文献】
【0044】
【文献】R.C.Nickolson、M.H.Town、H.Vorbruggen、Prostacyclin-analogues、Medicinal Research Reviews、VoI.1985、5(1)、1~53頁
【文献】Biochimica et Biophysica Acta、Biomembranes 1988、942(2)、220~6
【文献】Prostaglandins、1992、43、255~261頁
【文献】S.Chandrasekhar、Ch.Sridhar、P.Srihari、Tetrahedron Asymmetry、2012、23、388~394頁
【文献】H-J.Gais、G.J.Kramp、D.Wolters、L.R.Reddy、Chem.Eur.J.、2006、12、5610~5617頁
【文献】G.J.Kramp、M.Kim、H-J.Gais、C.Vermeeren、J.Am.Chem.Soc.、2005、127、17910~17920頁
【文献】A.Gawish、U.Weiss、Org.Synth.、1986、64、27~38頁
【文献】J.A.Caedieux、D.J.Buller、P.D.Wilson、Org.Lett.、2003、5、3983~3986頁
【文献】K.Petzoldt、H.Dahl、W.Skuballa、M.Gottwald、Liebigs.Ann.Chem.、1990、1087~1091頁
【文献】Angew.Chem.Int.Ed.Engl.、1981、20、1046~1048頁
【文献】P.A.Aristoff、P.D.Johnson、A.W.Harrison、J.Org.Chem.、1981、46、1954~1957頁
【文献】P.A.Aristoff、P.D.Johnson、A.W.Harrison、J.Org.Chem.、1983、48、5341~5348頁
【文献】J.Westermann、M.Harre、K.Nickish、Tetrahedron Letters、1992、33、8055~8056頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
我々は、今まで知られている方法よりも良好な収率を提供する、イロプロストのための代替の合成を成し遂げることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0046】
本出願において主張されている本発明による方法は、スキーム9に概説されている。
【0047】
【0048】
本発明による方法において、最初に、上方鎖が式IIの保護コーリーラクトン中に構成される。
【0049】
化合物IIIの製造の過程で、ホスホネートを形成するため、強塩基が、ジメチルメチルホスホネートを脱プロトン化するのに必要とされる。しかしながら、例えばブチルリチウムとして、過剰量で適用される強塩基は、ラクトン環を開環する(潜在性カルボン酸エステル)。
【0050】
強塩基、例えばブチルリチウムが使用される場合、開環ラクトン環から形成されたアニオンは、ホスホネートによってアルキル化されず、後処理後、出発材料は、反応条件に依存して20%もの量で戻し得られる。
【0051】
本発明による方法において、メチルジメチルホスホネートを選択的に脱プロトン化するリチウムジイソプロピルアミドまたはリチウムジアルキルアミドが適用され、ラクトン環は開環せず(そのままで残る)、したがって、化合物IIの全体量がホスホネートによってアルキル化され、ホスホン酸エステルが形成され、後処理後の出発材料の量は2%未満で残る。
【0052】
上記化合物の場合において、好ましくはリチウムジイソプロピルアミドが適用されるが、これは、試薬から放出されるジイソプロピルアミンは生成物から除去することができるからである。
【0053】
【0054】
ラクトール環は開環しなければならず(ケタール切断)、遊離された第2級ヒドロキシル基は酸化しなければならない。該反応は明らかに、酸性媒体中で行わなければならず、なぜならば、塩基性条件下で、非制御HWE反応は、III排除副生成物を供給し始める(スキーム10.)
【0055】
文献において(「Synthesis of a carbaprostacyclin intermediate-6β-[(tert-butyldimethylsiloxy)methyl]-7-α-[(tetrahydropyran-2-yl)oxy]bicyclo[3.3.0]octan-3-one」Huaxue Xuebao、1987、45(7)、727-9;US4420632A1、US9831213、GB2070596、GB2070596)、単純に、Collins酸化体の酸性条件:CrO3.ピリジン、ジョーンズ試薬:CrO3.硫酸水溶液、PCCおよびPDC酸化が利用されて該環を開環するが、しかしながら、強酸性条件下で、ケタールは、約20~30%における脱水を介して、二重結合を含有するいわゆる排除化合物IIIをもたらす。
【0056】
本発明による方法において、ラクトール環は、非常に温和な酸性条件下で酢酸ピリジニウムを用いて開環され、ラクトール開環に続いて、遊離されたヒドロキシル基は、PCCよりも温和な条件下で働くPDCで酸化させる。酸化はゆっくり行われるが、いわゆる排除不純物および分解生成物の量は、はるかに少なく5%未満である。
【0057】
式Vの化合物の製造のため、文献から知られている方法と同様に、本発明による方法はその上トルエン媒体中で炭酸カリウムを使用し、分子内HWE(ホーナー-ワズワース-エモンズ)反応の触媒は18-クラウン-6試薬である。しかしながら、公知の方法は我々によって開発された。この反応工程において、2つの反応、分子内および分子間のHWE反応が競合している。適切な条件、例えば高い(好ましくは30~45倍)希釈度、高温(90~110℃)、および適用された添加方法は、分子内HWE反応を好む。我々の添加方法で、試薬の還流する溶液に、IVの溶液が非常にゆっくり滴下により添加され、そのため、それは分子内で直ちに反応する。過剰のIVがないので、二量体を形成するとともに分子間Wittig反応に関与する可能性がない。結果:二量体の比が15%から3%未満に落ちた。収率は35%から50%に増加した(スキーム11.)
【0058】
【0059】
式VIの化合物を製造するため、木炭上のパラジウムを用いる還元、文献においても使用されている方法が適用され、溶媒としてトリエチルアミンを含有するトルエンが適用されて、THP保護基を保護する。中間体は、クロマトグラフィーによって精製される。該還元は、ラネー-ニッケル触媒を使用して実施することもできる。
【0060】
本発明による方法において、上方鎖は、式VIIの化合物がWittig反応によって製造される工程で構築される。所望の化合物VIIのTBDMS保護基、および副生成物として得られる所望されない異性体不純物VIIzのそれは、フッ化テトラブチルアンモニウム(Bu4NF)で除去され、結果として得られた化合物VIII(E異性体)およびZ異性体不純物VIIIzは、重力クロマトグラフィーによって分離される。高速クロマトグラフィー精製によって、Z異性体不純物の量は、0.2~0.5%(光学純度、ジアステレオマー過剰(de)=99.0~99.6%)に減少することができる。比較のため:立体選択的Wittig反応、文献に記載されている方法で達せられた純度は、de=96%のみであった。(スキーム12.)
【0061】
【0062】
本発明による方法において、所望されないZ異性体(VIIIz)は、合成へリサイクルすることができる。我々のリサイクル方法で、所望されないZ異性体は、UV反応器の中でトルエン媒体中にて感受剤(sensibiliser)(ジメチルジスルフィド10mol%)の存在下で異性化され、10~30%のE異性体を含有する混合物から、我々は、およそ55%のE異性体含有量を有する生成物を得、これはクロマトグラフィー精製後にE異性体(VIII)を41%の収率で提供し、これは精製プロセスへリサイクルすることができる。中間体VIから出発する中間体VIIIの収率は、65%である。我々の方法の技術的実現可能性および費用を、HWE反応においてキラルホスホネートが適用されるH-J.Gaisおよび彼の同僚のそれと比較して、我々は、本発明による方法がより経済的であり、それが多くの工程で製造される高価なキラルホスホネートを必要としないことを明記することができる。
【0063】
式VIIIの化合物は、公知の方法によってアセトン中にてヨウ化メチルを用い、炭酸カリウムの存在下でエステル化され、式IXのエステルを提供する。
【0064】
化合物IXから式Xの化合物を製造するため、3つの方法、DCCまたはDICを含有するDMSOおよびリン酸を用いるPfitzner-Moffatt酸化、ならびにAnelli酸化(次亜塩素酸ナトリウム、TEMPO触媒)が緻密化されている。得られた式Xの化合物から、下方鎖をHWE方法によって構成した。
【0065】
Pfitzner-Moffatt酸化が適用される場合、HWE反応中、ホスホネートは、好ましくはワンポットで遊離される。酸化後、式Xの化合物はトルエン溶液中にあり、溶液に、少量のTHF、次いでILO-ホスホネート、および次いで固体KOHが添加される。KOHの好都合な効果は、それが反応混合物中で溶解せず、したがって、それは唯一ILO-ホスホネートと反応し、実際にアルデヒドXとの反応を与えず、そのため、アルデヒドから形成される不純物の量が非常に低いことである。
【0066】
Pfitzner-Moffatt酸化と比較した場合のTEMPO触媒を用いる酸化の利点は、除去するのが困難である高量のカルバミド誘導体を生成しないことである。
【0067】
式XおよびXIの化合物は、新たな化合物である。
【0068】
本発明による方法において、式XIの化合物は還元される。
【0069】
4つの異なる還元剤(塩化セリウム(III)/NaBH4、カテコールボラン-CBS-オキサアザボロリジン触媒、ジイソボルネオール-オキシ-ジイソプロピルアルミネート、DIBAL-F)が試みられている。他のパラメータ(例えば温度)の効果も調査した。
【0070】
最も好都合な還元剤はDIBAL-Fであると判明し、この試薬を、水素化ジイソブチルアルミニウムと2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールとを反応させることによって製造した。
【0071】
主な不純物は、還元の副生成物、11-THP-15-エピ-イロプロストメチルエステルである。(スキーム13。)
【0072】
【0073】
還元における生成物および15-エピマーの比は、DIBAL-F還元剤の使用により75:25であった(塩化セリウム/水素化ホウ素ナトリウム試薬を使用する第1の実験において、この異性体比は60:40であった)。
【0074】
還元剤の分解および水溶性副生成物の除去の後、THP-基は、メタノールおよびパラトルエンスルホン酸で切断される。好ましい方法において、トルエン溶液は後処理されないが、保護基は、式XIIの化合物の単離せずに除去される。
【0075】
式XIIの化合物は新しい。
【0076】
式XIIIの化合物は、クロマトグラフィーによって精製することができる。順相重力クロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル)中、還元の主な副生成物エピマー不純物からの精製は、およそ95%で行われ、加えて、イロプロストの精製を困難にしている一部の不純物の量も著しく減少される。
【0077】
式XIIIの化合物は、逆相および分取HPLC方法によって精製することもできる。C18シリカゲルおよびポリスチロール樹脂の両方で、逆相で適用可能な溶離液、先ずはアセトニトリル:水またはメタノール:水溶離液を使用することによって、化合物XIII(イロプロストメチルエステル)は、関連のおよび他の不純物から良好に精製することができる。関連の不純物を除去するため、最も強力な方法は、分取HPLCによるイロプロストの精製である。
【0078】
本発明による方法において、副生成物として得られる化合物XIIIbは、合成へリサイクルすることができ、酸化によって、それは化合物XIbを与え、これは、THPを用いる11-OH基の保護後に式XIの中間体を提供する。(スキーム14.)
【0079】
【0080】
化合物XIIIbは、酢酸エチル中に溶解させ、活性化二酸化マンガンパッキングを介して濾過される。濾液は、パッキングに繰り返して注がれ、濾過される。第2の濾過後、生成物XIbは、水で飽和された酢酸エチルを用いてパッキングから洗浄され、液体濾液は洗浄液と合わされ、蒸発される。蒸発された粗生成物は、トルエンを添加および留出することによって水から乾燥される。
【0081】
ジヒドロピランおよび触媒、パラ-トルエンスルホン酸は、11-ヒドロキシル基をTHP基で保護するためにトルエン溶液中に添加される。反応はトリエチルアミンで停止され、反応混合物は蒸発される。得られた濃縮物は、立体選択的還元工程へリサイクルされて、XIIを製造する。
【0082】
副生成物XIIIbから得られた中間体XIをリサイクルすることによって、選択的還元の収率は、56%から63%に増加する(XI-XIII)。
【0083】
式XIIIのメチルエステルの加水分解は、イロプロストを提供し、加水分解は、THF中にてNaOH水溶液を用いて強撹拌下で実施される。
【0084】
反応の終わりに得られたイロプロストは、また、測定可能なレベル関連の不純物、15-エピ-イロプロストおよび15-オキソ-イロプロストならびに酸化からの副生成物を含有する。イロプロストの精製は、分取HPLCによって実施される。2つの方法が成し遂げられ、15-オキソ-イロプロストが混在されていない材料についてはアセトニトリル:水を含有する溶離液、高レベルの15-オキソ-イロプロストが混在されているイロプロストについてはアルコール:水を含有する溶離液が適用される。精製中、イロプロストの異性体Zも除去される。
【0085】
我々の方法は、ラセミのILO-ホスホネートの代わりに、キラル(S)-ILO-ホスホネートまたはキラル(R)-ILO-ホスホネートを使用するHWE反応が実施されるならば、16(S)-イロプロストおよび16(R)-イロプロストの製造に同等に適用可能である。
【0086】
キラル(S)-ILO-ホスホネートを使用するエナンチオ選択的な合成で製造された16(S)-イロプロストは、結晶性形態で単離することもできる。
【0087】
上記に従って、本発明は、式I
【化18】
のイロプロストの製造のための方法であって、
【0088】
a.)式II
【化19】
のコーリーラクトンは、ジメチルメチルホスホネートを用いてリチウムジアルキルアミドの存在下で選択的にアルキル化される、
【0089】
b.)結果として得られた式III
【化20】
のラクトールの環は、酢酸ピリジニウムを用いて緩酸性媒体中で開環され、次いで、得られた第2級ヒドロキシル基は次いで、二クロム酸ピリジニウムで酸化される、
【0090】
c.)結果として得られた式IV
【化21】
の化合物は、18-クラウン-6試薬の存在下で炭酸カリウムと反応させる、
【0091】
d.)得られた式V
【化22】
の化合物は、還元される、
【0092】
e.)結果として得られた式VI
【化23】
の化合物は、カリウム第3級ブチレートの存在下でカルボキシブチルトリフェニルホスホニウムブロミドと反応させる、
【0093】
f.)得られた式VII
【化24】
のEおよびZ異性体のTBDMS保護基は除去され、異性体は、重力クロマトグラフィーによって分離され、所望であれば、Z異性体(VIIIz)はE異性体に異性化される、
【0094】
g.)結果として得られた式VIII
【化25】
の化合物は、エステル化される、
【0095】
h.)得られた式IX
【化26】
の化合物は酸化される、
【0096】
i.)結果として得られた式X
【化27】
の化合物は、HWE反応において固体水酸化カリウムの存在下で、式XIの化合物に転換される、
【0097】
j.)こうして得られた式XI
【化28】
の化合物のオキソ基は、DIBAL-Fで還元される、
【0098】
k.)式XII
【化29】
の化合物のテトラヒドロピラニル保護基は除去され、化合物は重力カラムクロマトグラフィーによって精製され、所望であれば、分取HPLCによってさらに精製される、
【0099】
l.)式XIII
【化30】
の化合物のエステル基は除去され、得られた式Iの化合物は精製される
というやり方における方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0100】
本発明による方法の好ましい実施形態において、リチウムジアルキルアミドとして、リチウムジイソプロピルアミドまたはリチウムジシクロヘキシルアミドが適用される。式Vの化合物の製造のため、HWE反応は、高い希釈度にておよび高温で、好ましくは90~110℃で、式IVの化合物の溶液を試薬の還流する溶液に滴下により添加するというやり方で実施される。
【0101】
式VIIIのEおよびZ異性体の分離は、トルエン:メチル第3級ブチルエーテルのステップ勾配混合物を溶離液として使用して実施される。
【0102】
Z異性体の異性化は、ジメチルジスルフィド感受剤の存在下での照射によって実施され、シリル保護基の切断は、フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物を用いて行われる。
【0103】
式IXの化合物の酸化は、DCCもしくはDICを含有するリン酸-DMSO混合物を用いるPfitzner-Moffatt酸化によって、またはAnelli酸化(次亜塩素酸ナトリウム、TEMPO触媒)によって実施される。
【0104】
本発明による方法の好ましいバージョンにおいて、式XおよびXIIの化合物は単離されない。
【0105】
本発明による方法の別の好ましい実施形態において、式XIIIbの15R異性体は、クロマトグラフィーによって分離され、酸化次いで11-OH基のTHP保護の後、合成へリサイクルされる。
【0106】
式Iの粗最終生成物は、重力クロマトグラフィーおよび/または分取HPLCによって精製される。
【0107】
式X、XIおよびXIIの化合物は、新たな化合物である。
【0108】
イロプロスト最終生成物について、純度は最も重要なパラメータであり、なぜならば、異なる純度の生成物は異なって挙動するからである。ある特定のレベルの純度に達するイロプロストから、固相生成物は製造することができる。
【0109】
我々の発明のさらなる対象は、油性生成物の質量と同じ量の極性溶媒中で式Iの精製油性化合物を溶解させること、溶液が乳白色に変わるような量のアルカンをそれに添加すること、次いで、(-)60℃から(-)20℃で溶液をガラス状の塊に固化すること、および高真空中で溶媒を除去することによる、イロプロストの固体形態の製造である。
【0110】
好ましくは、それの不純物からすでに精製されたイロプロストは、特殊処理にかけられ、それはアセトン中に溶解され、次いでペンタンが、溶液が乳白色に変わるまで添加され、溶液は次いで、(-)60℃に急速に冷却され、ここで油がアセトン-ペンタン溶液から完全に沈殿し、得られた沈殿物は固化し、半透明のガラス状の非晶質固体になる。固化後、イロプロストは(-)20℃で保持され、この期間中、アセトン-ペンタン媒体中で、ガラス状固体は白色の塊状固体材料に転換する。固化中、溶媒はデカンテーションによって数回除去され、n-ペンタンが混合物に添加されることで、アセトン含有量を減少させる。
【0111】
最後のデカンテーション後、溶媒は、高真空中にて(-)20℃で懸濁液から除去され、ここで、生成物は固体粉末に転換する。
【0112】
A:粗イロプロスト(利用可能な純度:93%)
イロプロストメチルエステルは、THF中に溶解させ、1M NaOH溶液で酸に加水分解される。加水分解後、イロプロストは、それのナトリウム塩の形態で、溶液中の水性アルカリ相中にある。該混合物は、メチル第3級ブチルエーテルで抽出されることで、無極性不純物の量を減少させ、次いで、イロプロストは、硫酸水素ナトリウムを用いてそれのナトリウム塩から遊離され、メチル第3級ブチルエーテルを用いて水溶液から抽出される。有機相の乾燥および蒸発後、粗イロプロストは油の形態で得られ、これは固化することができず、高レベルの不純物のためにそれの固体形態になる。得られた粗イロプロストの純度:93%(油)。
【0113】
本発明による方法において得られる粗イロプロストの精製のため、我々は、いくつかの方法を開発した:
【0114】
【0115】
B:重力クロマトグラフィーによる粗イロプロストの精製、および固化(達成純度:95.0%)
粗イロプロストは、ステップ勾配溶離液混合物ならびに粒子サイズ0.063~0.2mmおよび孔サイズ60オングストロームの不規則シリカゲルをパッキングとして使用する重力クロマトグラフィーによって精製される。該材料はアセトン中に溶解させ、次いで、それが乳白色に変わるような量のアルカンがそれに添加される。溶液はカラム上に注がれ、溶離液で濯がれ、溶出される。溶離液は、アルカン:アセトン、アルカン:メチルエチルケトン、アルカン:酢酸エチル、またはアルカン:イソプロパノールの混合物であり、ここで、アルカンは、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサンまたはヘプタンである。
【0116】
重力クロマトグラフィーの主な生成物は、溶媒の蒸発後、95.0%よりも高い純度を有し、この生成物はすでに、下に記載されている技法を適用することによる固体イロプロストの製造に適当である。
【0117】
重力クロマトグラフィーによって精製されたイロプロスト油は、油の質量と同じ量のアセトン(または酢酸エチルまたはメチルエチルケトンまたはイソプロパノール)中に溶解され、溶液に、それが乳白色に変わるような量の通常のペンタン(またはヘキサン、またはシクロヘキサンまたはヘプタン)が添加され、溶液は次いで(-)60℃で、撹拌せずに貯蔵される。6時間後に、溶液は、ガラス状の生成物の形態で固化する。このガラス状の固化材料は次いで、(-)20℃で少なくとも16時間の間貯蔵され、ここで、それは白色の塊状の固体形態に転換する。溶媒の主な部分は、デカンテーションによって除去される。固化の終わりに、残りの溶媒は、高真空中にて(-)10℃から(-)30℃で除去される。
【0118】
得られた精製イロプロストは、95.0%の純度を有する白色の粉末である。
【0119】
C:分取HPLCによる粗イロプロストの精製、続いてシリカゲルでの濾過、および固化(達成純度:98.0%)
粗イロプロストは、分取HPLC方法によって直接精製される。該材料は、それの質量と同じ量のアセトニトリル中に溶解され、次いで、水がそれに添加される。溶液は、粒子サイズ10ミクロンおよび孔サイズ120オングストロームのC18シリカゲルで作製された逆相プレカラムを介して濾過される。濾過ストック溶液の精製は、C8またはC18パッキングまたはポリスチロール樹脂パッキングおよび水-有機溶媒混合物を溶離液として使用する高圧分取液体クロマトグラフィーによって逆相で行われる。溶離液の有機溶媒構成成分は、アセトニトリル、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールである。
【0120】
クロマトグラフィーの合わせた主画分は、真空中にて40℃で濃縮され、濃縮溶液はメチル第3級ブチルエーテルで抽出され、合わせた有機相は、飽和塩溶液で洗浄され、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中にて30℃で濃縮される。
【0121】
該濃縮溶液に、第1のアセトン、次いで慎重に、それが乳白色に変わるまで、n-ペンタンが添加される。こうして得られた溶液は次いで、0.063~0.2mmの粒子サイズおよび60オングストロームの孔サイズの不規則シリカゲルベッドならびにn-ペンタン:アセトンのステップ勾配混合物を溶離液として使用する順相クロマトグラフィーによってさらに精製される。主画分は、高真空中にて(0.1mbar)30℃で蒸発される。シリカゲルを介して濾過されたイロプロスト油は、記載されている通りに方法B下で、固体生成物に転換される。
【0122】
上記方法によって精製されたイロプロストは、98.0%の純度を有する白色の粉末である。
【0123】
D:重力および分取HPLCによる粗イロプロストの精製、続いてシリカゲルでの濾過、および固化
粗イロプロストは、方法Bに記載されている通りに重力クロマトグラフィーによって精製される。得られたイロプロスト油は、方法Cに記載されている通りに分取HPLC方法によってさらに精製される。得られた濃縮溶液に、アセトン、および次いで慎重に、それがわずかに乳白色に変わるまでn-ペンタンが添加される。結果として得られた溶液は次いで、n-ペンタン:アセトンのステップ勾配混合物を溶離液として使用し、0.063~0.2mmの粒子サイズおよび60オングストロームの孔サイズの不規則シリカゲルで製造されたベッド上で順相クロマトグラフィーによってさらに精製される。主画分は、高真空中にて30℃で蒸発される。シリカゲルを介して濾過された結果として得られたイロプロスト油は次いで、記載されている通りに方法Bの下で、固体生成物に転換される。
【0124】
上記方法によって精製されたイロプロストは、98.5%の純度を有する白色の結晶である。
【0125】
分取HPLCによって分離されたジアステレオマーのうち、16(S)-イロプロストは結晶化することができる。好ましくは、アセトン中に溶解およびペンタンでの析出によって、それは結晶性形態で分離する。
【0126】
本発明のさらなる対象、結晶性形態の16(S)-イロプロストは、新規である。
【0127】
上記と一致して、本発明による方法によって、以下が製造できる:
結晶相における16(S)-イロプロスト異性体。
少なくとも98.5%の純度を有する油性または固体粉末相のイロプロスト、ここで、関連の不純物の総量は1.6%以下であり、非同定不純物の総量は0.5%以下であり、非同定不純物の量は各々が0.1%以下である。
少なくとも98.5%の純度を有する油性または固体粉末相のイロプロストは、以下の品質要件を満たす:
【0128】
【0129】
少なくとも98.0%の純度を有する油性または固体粉末相のイロプロスト、ここで、関連の不純物の総量は1.6%以下であり、非同定不純物の総量は1.0%以下であり、非同定不純物の量は、各々は0.1%以下である。
少なくとも98.0%の純度を有する油性または固体粉末相のイロプロストは、以下の品質要件を満足させる:
【0130】
【0131】
少なくとも95.0%の純度を有する油性または固体粉末相のイロプロスト、ここで、関連の不純物の総量は3.5%以下であり、非同定不純物の総量は2.5%以下である。
【0132】
結晶相における16(S)-イロプロストは、実証された化学経路によって製造することもでき、
m.)式Xのアルデヒドが、固体水酸化カリウムの存在下で(S)-ILO-ホスホネートとの反応によって、式(S)-XIの化合物に転換されるならば、
【化31】
【0133】
【0134】
n.)得られた式(S)-XI
の化合物のオキソ基は、DIBAL-Fで還元され、
【0135】
o.)式(S)-XII
【化33】
の化合物のテトラヒドロピラニル保護基は切断され、化合物はクロマトグラフィーによって精製され、
【0136】
p.)結果として得られた式(S)-XIII
【化34】
の化合物のエステル基は除去され、得られた式(S)-Iの化合物は精製され、
【0137】
q.)式Xのアルデヒドが、固体水酸化カリウムの存在下で(R)-ILO-ホスホネートとの反応によって、式(R)-XIの化合物に転換されるならば
【化35】
【0138】
r.)得られた式(R)-XI
【化36】
の化合物のオキソ基は、DIBAL-Fで還元され、
【0139】
s.)式(R)-XII
【化37】
の化合物のテトラヒドロピラニル保護基は切断され、化合物はクロマトグラフィーによって精製され、
【0140】
t.)結果として得られた式(R)-XIIIの化合物のエステル基は除去され
【化38】
得られた式(R)-Iの化合物は精製され、次いで、16-(R)-イロプロスト異性体も製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【
図1】イロプロストのXRPDパターン(実施例1m.)を示す図である。
【
図2】16-(S)-イロプロストのXRPDパターン(実施例1n.)を示す図である。
【
図3】イロプロストのDSC曲線(ピーク:67.58℃、実施例1m.)を示す図である。
【
図4】16-(S)-イロプロストのDSC曲線(ピーク:104.62℃、実施例1n.)を示す図である。
【
図5】500MHzでDMSO中にて獲得されたイロプロストの
13Cおよび
1H NMRデータ(実施例1m.)を示す図である。
【
図6】500MHzでDMSO中にて獲得された式XIの化合物の
13Cおよび
1H NMRデータ(実施例1h.)を示す図である。
【
図7】500MHzでDMSO中にて獲得された式(S)-XIの化合物の
13Cおよび
1H NMRデータ(実施例1o.)を示す図である。
【
図8】500MHzでDMSO中にて獲得された式(S)-XIIの化合物の
13Cおよび
1H NMRデータ(実施例1p.)を示す図である。
【
図9】500MHzでDMSO中にて獲得された16-(S)-イロプロストの
13Cおよび
1H NMRデータ(実施例1n.)を示す図である。
【実施例】
【0142】
本発明の対象は、実施例に記載されている方法の変異形に請求項を限定することなく、実施例に詳述されている。
【0143】
本発明による方法において適用された測定の条件:
X線回折:
開始位置[°2シータ]:2.0074
終了位置[°2シータ]:39.9854
測定の温度[℃]:25.00
アノードの材料:Cu
K-アルファ1[L]:1.54060
K-アルファ2[L]:1.54443
DSC:
機器:METTLER TOLEDO DSC1 STARe System、Stare basic V9.30
方法:出発温度:30℃
最終温度:200℃
加熱速度:5℃/min
量:5~9mg、穿孔したアルミニウムるつぼ(40μl)
NMR:
機器:Bruker Avance III 500MHz
溶媒:DMSO
【0144】
1a/[[4-[[[(1,1-ジメチルエチル)ジメチルシリル]オキシ]メチル]ヘキサヒドロ-2-ヒドロキシ-5-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ]-2H-シクロペンタ[b]フラン-2-イル]メチル]ホスホン酸ジメチルエステル(III)の製造
【化39】
無水テトラヒドロフラン50L中に、不活性雰囲気下で、ジメチルメチルホスホネート4.2Lを溶解させ、反応混合物を(-)75℃に冷却した。所定温度を保持しながら、1.6Mヘキサン溶液中のn-ブチルリチウム22.5L、次いで無水テトラヒドロフラン溶液15L中のII 7.5kgを添加した。反応の終わりに、反応混合物を1M硫酸水素ナトリウムでクエンチした。クエンチされた反応混合物をトルエンで抽出し、塩化ナトリウムを含有する炭酸水素ナトリウム溶液で有機相を洗浄し、トルエン溶液を真空中にて50℃で蒸発させた。
収量:9.6kg(96%)、油。
【0145】
1a/B
LDA溶液を製造した:テトラヒドロフラン28.7kg中に、ジイソプロピルアミン5.8kgを添加し、溶液を0±5℃に冷却し、次いで1時間の期間、窒素流、連続的撹拌および冷却下で、1.6Mブチルリチウム溶液21kgをそこに添加しながら、温度を0±5℃に保持した。添加後、冷却を停止し、混合物を5±10℃で1時間の間撹拌した。
【0146】
第2の器具において、テトラヒドロフラン32.3kg中に、II 7.5kgを溶解させ、溶液に、4.2Lのジメチルメチルホスホネートを添加し、混合物を(-)5±5℃に窒素流および撹拌下で冷却し、次いで、予め製造されたLDA溶液を混合物に添加しながら、温度を(-)5℃から(+)5℃の間で保持した。
【0147】
反応の後にTLCを続けた。予想反応時間:60分。
【0148】
反応の終わりに、混合物を吸引によって1M硫酸水素ナトリウム溶液上に移し、トルエンをそれに添加した。水性相をトルエンで2回抽出し、合わせた有機相を15%塩化ナトリウム溶液および1N炭酸水素ナトリウム溶液で逐次洗浄した。有機相を真空中にて蒸発させた。
収量(乾燥材料含有量に補正した):9.6kg(96%)。無色の油。
【0149】
1b.[1R-(1α,2β,3α)]-[3-[2-[[[(1,1-ジメチルエチル)ジメチルシリル]オキシ]メチル]-5-オキソ-3-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ]シクロペンチル]-2-オキソプロピル]ホスホン酸ジメチルエステル(IV)の製造
【化40】
【0150】
酢酸ピリジニウム試薬の製造:
蒸留ジクロロメタン170kgに、ピリジン11.5kgを秤量し、撹拌下で、酢酸6.9kgを添加した。混合物を撹拌下で25±5℃に冷却した。
【0151】
ケタール加水分解および酸化
ピリジニウムアセテート溶液に、ジクロロメタン14L中に溶解させたIII 9.6kgを添加した。混合物を窒素雰囲気下で撹拌した。
【0152】
撹拌の30分後、二クロム酸ピリジニウム9.6kgを添加し、所定の変換に達するまで混合物を25±5℃で撹拌した。反応の後にTLCを続けた。予想反応時間:24~48時間。所望の変換に達した時、反応混合物を40±5℃に加熱し、30分間撹拌し、25±5℃に冷却して戻し、次いで、トルエンおよびペルフィル(perfil)を添加した。固体材料を遠心分離によって除去した。生成物を含有する濾液を2M硫酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、相を分離した。水性相をトルエンで抽出し、合わせた有機相を、塩化ナトリウムおよび20%塩化ナトリウム溶液を含有する炭酸水素ナトリウム溶液で逐次洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中に50℃で定義体積に濃縮した。シリカゲルカラムおよびジイソプロピルエーテル:アセトン溶離液のステップ勾配混合物を使用するクロマトグラフィーによって、濃縮残留物を精製した。
収量:6.0kg(62.8%)、油。
【0153】
1c.[5R-(5α,6β,6aα)]-6-[[[(1,1-ジメチルエチル)ジメチルシリル]オキシ]メチル]-4,5,6,6a-テトラヒドロ-5-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ]-2(1H)-ペンタレノン(V)の製造
【化41】
無水トルエン50Lに、不活性雰囲気下で、18-クラウン-6 0.34kgおよび炭酸カリウム3.4kgを秤量した。反応混合物を90℃に加熱し、無水トルエン中のIV 6kgの溶液をそれに添加した。
【0154】
反応混合物を撹拌しながら、該温度を保持した。所望の変換に達した後、混合物を室温に冷却し、炭酸カリウムを濾別し、濾液を真空中にて45℃で濃縮した。
収量:4.4kg(98.5%)、油。油性生成物は、精製することなく次の工程で使用することができる。
【0155】
所望であれば、該生成物は、ヘキサン:ジイソプロピルエーテルの勾配混合物を使用するクロマトグラフィーによって精製することができ、主画分の収量:2.23kgの油(50%)。
【0156】
1d.[3aS-(3aα,4α,5β,6aα)]-4-[[[(1,1-ジメチルエチル)ジメチルシリル]オキシ]メチル]ヘキサヒドロ-5-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ]-2(1H)-ペンタレノン(VI)の製造
【化42】
トルエン50L中に溶解させたV 6.5kgに、トリエチルアミン100mlを添加し、10%のパラジウムを含有するパラジウム炭素触媒を使用して3.5バールの圧力下にて室温で、混合物を水素化した。反応の終わりに、触媒を濾別し、トルエンで洗浄し、濾液を真空中にて45℃で濃縮した。n-ヘキサン:ジイソプロピルエーテルおよびジイソプロピルエーテル:アセトン混合物を溶離液として使用するシリカゲルカラム上のクロマトグラフィーによって、濃縮残留物を精製した。カラムの製造のために使用されたn-ヘキサン:ジイソプロピルエーテル溶媒混合物に、体積により0.03%量のトリエチルアミンを添加した。
収量:1.5kg(23%)、油。
【0157】
1e.[3aS-(2E,3aα4α,5β,6aα)]-5-[4-[[[(1,1-ジメチルエチル)ジメチルシリル]オキシ]メチル]ヘキサヒドロ-5-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ]-2(1H)-ペンタレニリデン]ペンタン酸(VII)の製造
【化43】
カルボキシブチルトリフェニルホスホニウムブロミド7.0kgを無水テトラヒドロフラン35Lに秤量して入れ、反応混合物を5℃に冷却し、カリウムtert-ブチレート3.8kgを添加した。混合物を室温で15分間撹拌し、次いで、5℃に冷却し、テトラヒドロフラン8L中のVI 1.7kgの溶液を添加した。撹拌を続けながら、所望の変換が達せられるまで温度を保持し、次いで水を添加し、混合物を真空中にて45℃で濃縮した。濃縮された反応混合物を10℃に冷却し、沈殿された固体材料を濾別し、液体濾液を水で希釈し、メチルエチルケトン:n-ヘキサン混合物で洗浄した。水性相のpHをpH=7~7.5に1N硫酸水素ナトリウム溶液で設定した。水性相をジイソプロピルエーテルで抽出した。有機相を20%塩化ナトリウム溶液で洗浄し、トリエチルアミンの添加後、それを真空中にて45℃で蒸発させた。
収量:1.71kg(82%、VIIおよびVIIzの混合物)、油。
【0158】
1f/A [3aS-(2E,3aα,4α,5β,6aα)]-5-[ヘキサヒドロ-4-(ヒドロキシメチル)-5-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ]-2(1H)-ペンタレニリデン]ペンタン酸(VIII)の製造
【化44】
フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物3kgをトルエン10L中に懸濁させ、トルエンを留出することによって水から乾燥させた。無水懸濁液を20℃に冷却し、テトラヒドロフラン24L中に溶解させたVII 2.3kgを添加した。混合物を60℃で撹拌した。所望の変換に達した時、水、トルエンおよびトリエチルアミンを反応混合物に添加した。撹拌後、相を分離し、水性相をトルエンで洗浄し、合わせた有機相を水で抽出した。合わせた水性相のpHをpH=4~6に1M硫酸水素ナトリウム溶液で設定した。酸性化された水性相をジイソプロピルエーテルで抽出した。合わせた有機相を20%塩化ナトリウム溶液で洗浄し、ピリジンの添加後、それを真空中にて45℃で蒸発させた。蒸発の残留物を、トルエンとの共沸蒸留によって水から乾燥させ、次いでクロマトグラフィーによって精製した。
【0159】
クロマトグラフィー精製中、所望されないZ異性体(VIIIz)も分離し、それを次いで、UV反応器の中で二重結合異性化にかけた。
【0160】
トルエン:メチル第3級ブチルエーテルのステップ勾配混合物を使用して、VIIIおよびVIIIzの溶出を実施した。溶離液混合物は、体積により0.5%量のピリジンを含有していた。
【0161】
クロマトグラフィー中、所望されないZ異性体を、酢酸の体積により0.2%量を含有するアセトンで洗浄した。Z異性体を含有する画分に、トリエチルアミンを添加し、溶液を濃縮した。濃縮物を次いで、10倍量のメチル第3級ブチルエーテルで希釈し、生成物から無機塩を除去するために、それを水でおよび飽和塩溶液で抽出した。有機相を蒸発させた(VIIIz異性体)。
【0162】
クロマトグラフィー精製の後に得られた化合物VIIIの濃縮された主画分を、1M炭酸カリウム溶液で抽出し、合わせた有機相をメチル第3級ブチルエーテルで洗浄した。水性相のpHをpH=4~6に1M硫酸水素ナトリウム溶液で設定した。酸性化溶液をメチル第3級ブチルエーテルで抽出した。合わせた有機相を20%塩化ナトリウム溶液で洗浄し、トリエチルアミンの添加後、それを真空中にて45℃で蒸発させた。
収量:0.7kg(41%)VIII、油。VIIIzをリサイクルすることによって、中間体VIIIをさらに0.41kg製造でき、中間体VIIIの収率はしたがって65%であった。
【0163】
1f/B.UV照射によってVIIIzをリサイクルすることによるVIIIの製造
【化45】
【0164】
異性体VIIIzをUV照射によって異性化し、それから、トルエン溶液中にてジメチルジスルフィド感受剤の存在下で、VIII(E異性体)を製造した。該反応は平衡比が達せられるまで進行し、1:1比の混合物を生じた。反応混合物の後処理および精製をカラムクロマトグラフィーによって実施した。
【0165】
照射:
照射を多口フラスコの中で窒素雰囲気下にて17~19℃で行った。フラスコに、VIIIz 0.99kgを秤量し、次いでメタノール130.7mlおよびトルエン19.8L、ならびに完全な溶解後、ジメチルジスルフィド感受剤99mLを添加した。冷却を開始し、中圧水銀蒸気ランプのスイッチを入れ、反応混合物を1.5時間の間照射した。反応の後に15分毎にTLCを続けた。異性体の比が50:50%に達した時、反応を停止させた。溶液を最大45℃で最大10mbarの真空中にて蒸発させた。濃縮残留物をカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0166】
トルエン:メチル第3級ブチルエーテルのステップ勾配混合物を使用して、溶出を実施した。溶離液混合物は、体積により0.5%量のピリジンを含有していた。
【0167】
クロマトグラフィー精製の蒸発された主画分を1M炭酸カリウム溶液で抽出し、合わせた水性相をメチル第3級ブチルエーテルで2回洗浄した。水性相のpHをpH=4~6に1M硫酸水素ナトリウム溶液で設定した。酸性化溶液をメチル第3級ブチルエーテルで抽出した。合わせた有機相を20%塩化ナトリウム溶液で洗浄し、トリエチルアミンの添加後、それを真空中にて45℃で蒸発させた。
収量:0.41kg(41%)、油。
【0168】
1g.[3aS-(2E,3a,4,5,6a)]5-[ヘキサヒドロ-4-(ヒドロキシメチル)-5-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ]-2(1H)-ペンタレニリデン]ペンタン酸メチルエステル(IX)の製造
【化46】
VIII 0.7kgのアセトン溶液に、炭酸カリウム0.75kgおよびヨウ化メチル1.4kgを添加し、混合物を45℃に加熱し、その温度で撹拌した。所望の変換が達せられた時、反応混合物を室温に冷却し、水で希釈し、メチル第3級ブチルエーテルで抽出した。合わせた有機相を20%塩化ナトリウム溶液で洗浄し、トリエチルアミンを添加した後、それを真空中にて45℃で蒸発させた。
収量:0.69kg(95%)、油。
【0169】
1h.(5E)-5-[(3aS,4R,5R,6aS)-5-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ]-4-[(1E,3S,4RS)-4-メチル-3-オキソ-オクテン-6-in-1-イル]ヘキサヒドロペンタレン-2(1H)-イリデン]ペンタン酸メチルエステル(XI)の製造
A.方法:Pfitzner Moffatt酸化、続いてワンポットHWE反応
【化47】
IX 282gを蒸留トルエン1L中に不活性雰囲気下で溶解させた。反応混合物を13℃に冷却し、トルエン1.5L中に溶解させたジシクロヘキシルカルボジイミド473gおよび次いでDMSO溶液中の1Mリン酸238mLを添加した。反応物を45℃に加熱し、その温度で撹拌した。所望の変換に達した後、得られたXアルデヒド
*を含有する反応混合物を室温に冷却し、不活性雰囲気下で、テトラヒドロフラン1L中に溶解させた水酸化カリウム78gおよびILO-ホスホネート218gを添加した。反応物を撹拌しながら、該温度を保持した。所望の変換に達した時、ペルフィルを反応混合物に添加し、それを次いで濾別し、固体濾液をトルエンで洗浄し、液体濾液を真空中にて50℃で濃縮した。濃縮残留物を、n-ヘキサンの添加後に、シリカゲルカラムおよびトルエン:ジイソプロピルエーテルのステップ勾配混合物を使用するクロマトグラフィーによって精製した。蒸発された主画分をクロマトグラフィーの繰り返しによってさらに精製した。
収量:282g(77%)、油。
*所望であれば、アルデヒドXは、クロマトグラフィー精製によって単離することができる。
式XIの化合物の
13Cおよび
1H NMRデータは、
図6に示されている。
【0170】
B.方法:DMSO-リン酸およびDICによる酸化、続いてワンポットHWE反応
IX 28gを蒸留トルエン100mL中に不活性雰囲気下で溶解させた。反応混合物を13℃に冷却し、トルエン150mL中に溶解させたジイソプロピルカルボジイミド50gおよびDMSO溶液中の1Mリン酸24mLを添加した。添加後、反応混合物を45℃に加熱し、その温度で撹拌した。所望の変換に達した後、反応混合物を室温に冷却し、不活性雰囲気下で、テトラヒドロフラン100mL中に溶解させた水酸化カリウム8gおよびILO-ホスホネート22gを添加した。反応物を撹拌しながら、該温度を維持した。所望の変換に達した時、ペルフィルを反応混合物に添加し、次いで濾別し、濾過された固体をトルエンで洗浄した。液体濾液を真空中にて50℃で濃縮し、残留物を、n-ヘキサンの添加後、シリカゲルカラムおよびトルエン:ジイソプロピルエーテルのステップ勾配混合物を使用するクロマトグラフィーによって精製した。蒸発された主画分をクロマトグラフィーの繰り返しによってさらに精製した。
収量:27g(74%)、油。
【0171】
C.方法:Anelli酸化(TEMPOおよび次亜塩素酸ナトリウム)
オキシダント溶液を、水100mL、5%次亜塩素酸ナトリウム溶液100mLおよび重炭酸ナトリウム36gから製造した。溶液のpHは9.4±0.2であった。pH>9.6ならば、それを重炭酸ナトリウムで調整した。
【0172】
IX 6gをジクロロメタン(DCM)70mL中に溶解させ、次いで、TEMPO触媒0.01gおよび臭化カリウム0.2gを添加した。混合物を0℃に冷却し、オキシダント溶液をそれに、温度が10℃未満のままでいる速度で添加した。予想反応時間30分。
【0173】
反応混合物を次いで、10%チオ硫酸ナトリウム溶液でクエンチし、10~15℃で30分間撹拌した。水性相をDCMで3回抽出した。有機相を合わせ、15%塩化ナトリウム溶液で洗浄した。
【0174】
不活性雰囲気下で、テトラヒドロフラン20mL中に溶解させた1M水酸化ナトリウム溶液20mLおよびILO-ホスホネート4gを添加した。反応混合物を撹拌しながら、該温度を保持した。反応の終わりに、相を分離し、有機相を、1M硫酸水素ナトリウム溶液、15%塩化ナトリウム溶液および飽和塩溶液で逐次洗浄した。有機相を真空中にて45℃で濃縮した。残留物を、n-ヘキサンの添加後、シリカゲルカラムおよびトルエン:ジイソプロピルエーテルのステップ勾配混合物を使用するクロマトグラフィーによって精製した。蒸発された主画分をクロマトグラフィーの繰り返しによってさらに精製した。
収量:5.75g(74%)、油。
【0175】
(5E)-5-[(3aS,4R,5R,6aS)-4-ホルミル-5-テトラヒドロピラン-2-イルオキシ-3,3a,4,5,6,6a-ヘキサヒドロ-1H-ペンタレン-2-イリデン]ペンタン酸メチルエステル(X)の製造
【化48】
IX 28.2gを蒸留トルエン100mL中に不活性雰囲気下で溶解させた。反応混合物を13℃に冷却し、次いでトルエン150mL中に溶解させたジシクロヘキシルカルボジイミド47.3gおよびDMSO溶液中の1Mリン酸23.8mLを添加した。添加後、反応混合物を45℃に加熱し、その温度で撹拌した。所望の変換に達した後、反応混合物を室温に冷却し、水(2×300mL)で洗浄し、有機相を、真空中にて50℃で濃縮することによって水からおよそ80mL体積に乾燥させた。シリカゲルカラムおよびトルエン、トルエン:ジイソプロピルエーテル=3:1および1:1の溶離液混合物を使用するクロマトグラフィーによって、トルエン濃縮物を精製した。アルデヒドXを含有する画分を合わせ、蒸発させた。
収量:23.82g(85%)。
【0176】
1i.メチル(5E)-5-[(3aS,4R,5R)-5-ヒドロキシ-4-[(E,3S)-3-ヒドロキシ-4-メチル-オクタ-1-エン-6-イニル]-3,3a,4,5,6,6a-ヘキサヒドロ-1H-ペンタレン-2-イリデン]ペンタノエート(XIII)の製造
【化49】
DIBAL-F試薬を製造するため、ジ-tert-ブチルメチルフェノール350gを蒸留トルエン650mL中に不活性雰囲気下にて室温で溶解させ、得られた溶液に、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)102.8gのトルエン溶液を添加した。試薬を0℃で製造したが、添加の終わりに、反応混合物を1時間の間室温で、次いで6時間の間45℃で、不活性雰囲気下にて撹拌した。試薬混合物を次いで5℃に冷却し、不活性雰囲気下で、トルエン溶液中のXI 94gを添加した。添加中、温度が上昇していった。所望の変換に達するまで反応混合物を室温で撹拌し、次いで、2M硫酸水素ナトリウム溶液でクエンチした。クエンチ混合物をトルエンで抽出することで、保護されたエノール異性体XII
*およびXIIbが得られ、これらを単離せずにさらに反応させた。合わせた有機相に、p-トルエンスルホン酸7.05gのメタノール溶液を添加した。反応混合物を室温で撹拌した。所望の変換に達した後、反応混合物のpHをpH≧7.5にトリエチルアミンで設定し、真空中にて45℃で濃縮した。濃縮残留物をn-ヘキサン中に溶解させ、シリカゲルカラムおよびn-ヘキサン:酢酸エチルのステップ勾配混合物を使用するクロマトグラフィーによって精製した。
収量:43.1g(56%)、油。
*所望であれば、保護されたエノールXIIは、クロマトグラフィー精製によって単離することができる。
【0177】
分取HPLCによるXIIIの精製
XIII 50gをアセトニトリル100mL中に溶解させ、溶液に、アセトニトリル:水=3:1比に達するまで水を滴下した。10ミクロンの粒子サイズおよび120オングストロームの孔サイズのC18逆相シリカゲル5gで作製されたプレカラムを介して、ストック溶液を濾過した。10ミクロンの粒子サイズおよび120オングストロームの孔サイズのC18逆相シリカゲルパッキング400gならびに水:アセトン溶離液混合物を使用する高圧分取液体クロマトグラフィーによって、濾過ストック溶液を精製した。クロマトグラフィーの合わせた主画分を、真空中にて40℃で濃縮し、濃縮溶液をメチル第3級ブチルエーテルで抽出し、合わせた有機相を塩溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中にて30℃で蒸発させた。
分取HPLCの収量:32g(64%)、油。
【0178】
XIIIbからXIの製造
XIIIbからXIbの酸化およびTHP保護
【化50】
XIIIb 7gを酢酸エチル75mL中に溶解させ、活性化MnO
2 110gで作製されたフィルターベッドを介して濾過し、酢酸エチルで湿らせた。濾液をフィルターベッドに繰り返して通した。MnO
2ベッドを、水で予め飽和された酢酸エチルで2回洗浄した。
【0179】
変換をTLCでチェックし、それが十分でなかったならば、新鮮なMnO2フィルターベッドを介して、濾液を繰り返して濾過した。濾液を蒸発させ、得られた粗生成物を、トルエンを留出することによって水から乾燥させた。濃縮物に、トルエン100mL、ジヒドロピラン4gおよびパラトルエンスルホン酸0.01gを添加し、THP保護の後にTLCを続けた。反応の終わりに、それをトリエチルアミンの添加によって停止し、反応混合物を水上に注ぎ、有機相を水で2回抽出し、次いで有機相を蒸発させた。
収量:4.8g(56.3%)、油。生成物は、選択的還元工程に使用することができる。
【0180】
(5E)-5-[(3aS,4R,5R,6aS)-4-[(E)-3S-ヒドロキシ-4-メチル-オクタ-1-エン-6-イニル]-5-テトラヒドロピラン-2-イルオキシ-3,3a,4,5,6,6a-ヘキサヒドロ-1H-ペンタレン-2-イリデン]ペンタン酸メチルエステル(XII)の製造
【化51】
DIBAL-F試薬を製造するため、ジ-tert-ブチルメチルフェノール35gを蒸留トルエン65mL中に不活性雰囲気下にて室温で溶解させた。得られた溶液に、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)10.3gのトルエン溶液を添加した。試薬を0℃で製造したが、添加の終わりに、反応混合物を1時間の間室温で、次いで6時間の間45℃で、不活性雰囲気下にて撹拌した。試薬混合物を5℃に冷却し、不活性雰囲気下で、トルエン溶液中のXI 9.4gを添加した。添加中、混合物の温度が上昇していった。所望の変換に達するまで反応混合物を室温で撹拌し、次いで、それを2M硫酸水素ナトリウム溶液でクエンチした。クエンチされた反応混合物をトルエンで抽出した。トルエン相を真空中にて50℃で約30mLに濃縮した。濃縮されたトルエン残留物を、シリカゲルカラムおよびn-ヘキサン:酢酸エチルのステップ勾配混合物を使用するクロマトグラフィーによって精製した。保護されたエノールXIIを含有する画分を合わせ、合わせた主画分を蒸発させた。
収量:7.22g(76.5%)。
【0181】
1j.粗イロプロストの製造
XIII 43.1gをテトラヒドロフラン22mL中に不活性雰囲気下にて室温で溶解させ、次いで、1M水酸化ナトリウム溶液520mLをそれに、反応混合物の温度が20~30℃との間のままである速度で添加した。所望の変換に達した後、相を分離し、水性相をメチル第3級ブチルエーテルで2回抽出し、有機相を合わせ、1M水酸化ナトリウム溶液で2回洗浄した。合わせたアルカリ相をメチル第3級ブチルエーテルで希釈し、撹拌下で、pHをpH≦3に2M硫酸水素ナトリウム溶液で設定した。酸性化された水性相をメチル第3級ブチルエーテルで抽出し、合わせた有機相を20%塩化ナトリウム溶液で洗浄し、真空中にて30℃で蒸発させた。
【0182】
生成物の純度は93%であり、関連の不純物の総量は5%以下であり、他の非同定不純物の総量は4%以下であった。
【0183】
この材料から、イロプロストの固体形態を製造するのは、上記で詳述されている純度のレベルのために可能でない。
【0184】
1k.重力クロマトグラフィーによる粗イロプロストの精製、および固化
粗イロプロストの精製、方法B。
粗イロプロスト64.5gを蒸留アセトン25mL中に溶解させ、溶液に、それが乳白色に変わるまでn-ペンタンおよそ50mLを添加し、次いで、n-ペンタン:アセトンのステップ勾配混合物を使用し、Si60順相(粒子サイズ0.063~0.2mm)シリカゲルがパッキングされた重力カラム上で、それを精製した。TLCによる調査後に画分を合わせた。5ミクロンのテフロン膜を介して主画分溶液を濾過し、次いで、真空中にて最大35℃の浴温で蒸発させた。
【0185】
クロマトグラフィーにかけられたイロプロスト相生成物50gに、濾過した蒸留アセトン200mLを添加した。混合物を20~25℃で完全な溶解まで振盪し、次いで連続的振盪下で、濾過ペンタン1080mLを溶液に添加し、ここで、イロプロストは混合物から油の形態で完全に沈殿した。
【0186】
混合物を撹拌せずに(-)60℃に冷却し、6時間後、それを(-)20℃に加温させておき、その温度で撹拌せずに少なくとも16時間の間保持した。溶媒を次いで油性結晶塊からデカンテーションによって除去し、濾過ペンタン650mLを生成物上に注ぎ、結晶塊を(-)20℃で最小2時間の間保持した。溶媒をデカンテーションによって再び除去した。
【0187】
溶媒を生成物から高真空中にて(-)30℃で留出し、温度を(-)20~(-)30℃の間で保持した。溶媒の除去中、固体生成物を時々撹拌した。溶媒除去を不活性雰囲気下で行い、それはおよそ120時間かかった。
【0188】
生成物の純度は95.0%であり、関連の不純物の総量は3.5%以下であり、他の非同定不純物の総量は2.5%以下であった。
【0189】
1l.分取HPLCによる粗イロプロストの精製、続いてシリカゲルを介する濾過、および固化
粗イロプロストの精製、方法C。
粗イロプロスト64.5gをアセトニトリル100mL中に溶解させ、溶液に、アセトニトリル:水=3:1比に達するまで水を滴下した。10ミクロンの粒子サイズおよび120オングストロームの孔サイズのC18逆相シリカゲル5gで作製されたプレカラムを介して、ストック溶液を濾過した。10ミクロンの粒子サイズおよび120オングストロームの孔サイズのC18逆相シリカゲルパッキング400gならびに水:アセトニトリル溶離液混合物を使用する高圧分取液体クロマトグラフィーによって、濾過ストック溶液の精製を実施した。クロマトグラフィーの合わせた主画分を真空中にて40℃で濃縮し、濃縮溶液をメチル第3級ブチルエーテルで抽出し、合わせた有機相を飽和塩溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中にて30℃で100mLに濃縮した。濃縮溶液をアセトンで150gに完成させ、慎重に、それがわずかに乳白色に変わるまでn-ペンタンを添加した。n-ペンタン:アセトンのステップ勾配混合物を使用し、シリカゲルを介する濾過によって、得られた溶液をさらに精製した。主画分を30℃で高真空中にて蒸発させた。
【0190】
分取HPLCによって精製するとともにシリカゲルを介して濾過したイロプロスト相生成物50gに、濾過した蒸留アセトン200mLを添加した。混合物を室温で完全な溶解まで振盪し、次いで濾過ペンタン1080mLを添加し、ここで、イロプロストは混合物から油の形態で完全に沈殿した。
【0191】
混合物を撹拌せずに(-)60℃に冷却し、6時間後、それを(-)20℃に加温させておき、その温度で撹拌せずに少なくとも16時間の間保持した。溶媒を次いで油性結晶塊からデカンテーションによって除去し、濾過ペンタン650mLをそれの上に注ぎ、結晶塊を(-)20℃で最小2時間の間保持した。溶媒を再びデカンテーションによって除去した。
【0192】
溶媒を生成物から高真空中にて(-)30℃で留出し、温度を(-)20~(-)30℃の間で保持した。溶媒のこの除去中、固体生成物を時々撹拌した。溶媒除去を不活性雰囲気下で行い、それはおよそ120時間かかった。
【0193】
生成物の純度は98.0%であり、関連の不純物の総量は1.6%以下であり、他の非同定不純物の総量は1.0%以下であった。
【0194】
【0195】
1m.重力および分取HPLCクロマトグラフィーによる粗イロプロストの精製、シリカゲルを介する濾過、および固化
粗イロプロストの精製、方法D。
粗イロプロスト80gを蒸留アセトン40mL中に溶解させ、溶液が乳白色に変わるまでn-ペンタンおよそ70mLを添加し、次いで、n-ペンタン:アセトンのステップ勾配混合物を使用し、Si60順相(粒子サイズ0.063~0.2mm)シリカゲルがパッキングされた重力カラム上で、それを精製した。TLCによる調査後に、画分を合わせた。5ミクロンのテフロン膜を介して、主画分溶液を濾過し、真空中にて最大35℃の浴温で蒸発させた。
【0196】
重力クロマトグラフィーによって精製した粗イロプロスト相生成物60gを、アセトニトリル110mL中に溶解させ、溶液に、アセトニトリル:水=3:1比に達するまで水を滴下した。10ミクロンの粒子サイズおよび120オングストロームの孔サイズのC18逆相シリカゲル5gで作製されたプレカラムを介して、ストック溶液を濾過した。10ミクロンの粒子サイズ、120オングストロームの孔サイズのC18逆相パッキング400gならびに水:アセトニトリル混合物を溶離液として使用する高圧分取液体クロマトグラフィーによって、濾過ストック溶液の精製を実施した。クロマトグラフィーの合わせた主画分を真空中にて40℃で濃縮し、濃縮溶液をメチル第3級ブチルエーテルで抽出し、合わせた有機相を飽和塩溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、100mLに真空中にて30℃で濃縮した。濃縮溶液をアセトンで150gに完成させ、次いで慎重に、それがわずかに乳白色になるまでn-ペンタンを添加し、次いでシリカゲルを介して濾過した。主画分を高真空中にて30℃で蒸発させた。
【0197】
分取HPLCによって精製するとともにシリカゲルを介して濾過したイロプロスト相生成物50gに、濾過した蒸留アセトン200mLを添加した。混合物を室温で完全な溶解まで振盪し、次いで、濾過ペンタン1080mLを添加し、ここで、イロプロストは混合物から油の形態で完全に沈殿した。
【0198】
混合物を撹拌せずに(-)60℃に冷却し、6時間後、それを(-)20℃に加温させておき、その温度で撹拌せずに少なくとも16時間の間保持した。溶媒を次いで油性結晶塊からデカンテーションによって除去し、濾過ペンタン650mLを生成物上に注ぎ、結晶塊を(-)20℃で最小2時間の間保持した。溶媒を再びデカンテーションによって除去した。
【0199】
溶媒を生成物から高真空中にて(-)30℃で留出し、温度を(-)20~(-)30℃の間で保持した。溶媒除去中、固体生成物を時々撹拌した。溶媒除去を不活性雰囲気下で実施し、それはおよそ120時間かかった。
【0200】
得られた固体生成物は、静置で結晶化する粉末であった。
【0201】
得られた生成物の純度は98.5%であり、関連の不純物の総量は1.6%以下であり、他の非同定不純物の総量は0.5%以下であった。
【0202】
X線粉末ディフラクトグラムは
図1に、DSC曲線は
図3に、
13Cおよび
1H NMRデータは
図5に示されている。
【0203】
生成物のXRPDパターンは、以下の値(±0,2°の2シータ度)で特徴的なピークを含有していた:5.43、7.51、7.81、15.19、15.57、15.85、16.25、16.84、17.08、17.26、18.14、18.59、19.17、20.32、20.53、21.69、22.12、および23.28
【0204】
【0205】
1n.16(S)-イロプロスト((S)-I)の製造
A:クロマトグラフィー分離および結晶化による
A1:アセトニトリル:水溶離液混合物を使用するクロマトグラフィー
【化52】
粗I((S)-I含有量:20g)50gをアセトニトリル100mL中に溶解させ、溶液に、アセトニトリル:水=3:1比に達するまで水を滴下した。10ミクロンの粒子サイズおよび120オングストロームの孔サイズのC18逆相シリカゲル5gで作製されているプレカラムを介して、ストック溶液を濾過した。10ミクロンの粒子サイズおよび120オングストロームの孔サイズC18逆相シリカゲルパッキング400gならびに水:アセトニトリル溶離液混合物を使用する高圧分取液体クロマトグラフィーによって、濾過ストック溶液の精製を実施した。
【0206】
イロプロストのジアステレオマーのうち、16(S)-イロプロストジアステレオマーは、より高い保持時間を有していた。分取HPLCによって、それは、良好な効率で16(R)-イロプロストジアステレオマーから分離した後にそれを溶出することができた。
【0207】
クロマトグラフィーの16(S)-イロプロストの合わせた主画分を、真空中にて40℃で濃縮し、濃縮溶液をメチル第3級ブチルエーテルで抽出し、合わせた有機相を飽和塩溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中にて30℃で蒸発させた。残留物をアセトン32mL中に溶解させ、次いで慎重に、溶液がわずかに乳白色に変わるまでn-ペンタンを添加した。こうして得られた溶液を、n-ペンタン:アセトンのステップ勾配混合物を使用するシリカゲルを介して濾過することによってさらに精製した。主画分を高真空中にて30℃で蒸発させた。
【0208】
分取HPLCによって精製するとともにシリカゲルを介して濾過した16(S)-イロプロスト相生成物15gに、濾過した蒸留アセトン15mLを添加した。混合物を室温で完全な溶解まで振盪し、次いで連続的振盪下で、溶液が乳白色に変わるまで濾過ペンタン100mLを添加した。混合物を(-)40℃に冷却し、その温度を保持しながら、それを不活性雰囲気下で16時間の間撹拌した。沈殿された結晶性材料を濾別した。
【0209】
生成物を(-)10から(+)10℃の間の温度で高真空中にて不活性雰囲気下で乾燥させた。乾燥はおよそ120時間かかった。
【0210】
生成物の純度は98.0%であり、関連の不純物の総量は1.6%以下であり、他の非同定不純物の総量は1.0%以下であった。
【0211】
X線粉末ディフラクトグラムは
図2に、DSC曲線は
図4に、
13Cおよび
1H NMRデータは
図9に示されている。
【0212】
生成物のXRPDパターンは、以下の値(±0,2°の2シータ度)で特徴的なピークを含有していた:7.46、7.80、12.69、14.91、15.58、16.82、17.27、20.31、20.62、23.30、28.13、31.38、32.05、34.88、および38.88。
【0213】
A2:メタノール:2-プロパノール:水溶離液混合物を使用するクロマトグラフィー
粗製I 64.5gを2-プロパノール100mL中に溶解させ、溶液に、2-プロパノール:水=1:1比に達するまで水を滴下した。10ミクロンの粒子サイズおよび120オングストロームの孔サイズのC18逆相シリカゲル5gで作製されたプレカラムを介して、ストック溶液を濾過した。10ミクロンの粒子サイズおよび120オングストロームの孔サイズC18逆相シリカゲルパッキング400gならびに水:メタノール:2-プロパノール溶離液混合物を使用する高圧分取液体クロマトグラフィーによって、濾過ストック溶液の精製を実施した。
【0214】
クロマトグラフィーの合わせた主画分を真空中にて40℃で濃縮し、濃縮溶液をメチル第3級ブチルエーテルで抽出し、合わせた有機相を飽和塩溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中にて30℃で蒸発させた。残留物をアセトン32mL中に溶解させ、溶液がわずかに乳白色に変わるまで慎重にn-ペンタンを添加した。こうして得られた溶液を、n-ペンタン:アセトンのステップ勾配混合物を使用するシリカゲルを介して濾過することによってさらに精製した。主画分を高真空中にて30℃で蒸発させた。
【0215】
分取HPLCによって精製するとともにシリカゲルを介して濾過した16(S)-イロプロスト相生成物15gに、濾過した蒸留アセトン15mLを添加した。混合物を室温で完全な溶解まで振盪し、次いで、溶液が乳白色に変わるまで濾過ペンタン100mLを添加した。混合物を(-)40℃に冷却し、その温度を保持しながら、それを不活性雰囲気下で16時間の間撹拌した。沈殿された結晶性材料を濾別した。
【0216】
生成物を(-)10から(+)10℃の間の温度で高真空中にて不活性雰囲気下で乾燥させた。乾燥はおよそ120時間かかった。
【0217】
生成物の純度は98.0%であり、関連の不純物の総量は1.6%以下であり、他の非同定不純物の総量は1.0%以下であった。
【0218】
1o.化学合成による16(S)-イロプロストの製造
(5E)-5-[(3aS,4R,5R,6aS)-5-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ]-4-[(1E,4S)-4-メチル-3-オキソ-オクテン-6-in-1-イル]ヘキサヒドロペンタレン-2(1H)-イリデン]ペンタン酸メチルエステル((S)-XI)
B:化学合成による
B1:Pfitzner Moffatt酸化、続いてワンポットHWE反応
【化53】
IX 140gを蒸留トルエン1L中に不活性雰囲気下で溶解させた。反応混合物を13℃に冷却し、トルエン0.75L中のジシクロヘキシルカルボジイミド235gの溶液、およびDMSO溶液中の1Mリン酸118mLを添加した。添加後、反応物を45℃に加熱し、その温度で撹拌した。所望の変換に達した後、得られたXアルデヒドを含有する反応混合物を室温に冷却し、不活性雰囲気下で、テトラヒドロフラン0.5L中に溶解させた水酸化カリウム39gおよび(S)-ILO-ホスホネート(光学活性)109gを添加した。反応混合物を撹拌しながら、該温度を保持した。所望の変換に達した時、ペルフィルを反応混合物に添加し、次いで、それを濾別し、濾過固体をトルエンで洗浄し、液体濾液を真空中にて50℃で濃縮した。濃縮残留物を、n-ヘキサンの添加後、シリカゲルカラムおよびトルエン:ジイソプロピルエーテルのステップ勾配混合物を使用するクロマトグラフィーによって精製した。蒸発された主画分をクロマトグラフィーの繰り返しによってさらに精製した。
収量:140g(77%)、油。
式(S)-XIの化合物の
13Cおよび
1H NMRデータは、
図7に示されている。
【0219】
B2:Anelli酸化(TEMPOおよび次亜塩素酸ナトリウム)
オキシダント溶液を、水100mL、5%次亜塩素酸ナトリウム100mLおよび重炭酸ナトリウム36gから製造した。溶液のpHは、9.4±0.2であった。pH>9.6ならば、それを重炭酸ナトリウムで調整した。
【0220】
IX 6gをジクロロメタン(DCM)70mL中に溶解させ、次いで、TEMPO触媒0.01gおよび臭化カリウム0.2gを添加した。混合物を0℃に冷却し、オキシダント溶液を、温度が10℃未満のままである速度で、それに添加した。予想反応時間は30分であった。
【0221】
反応混合物を次いで、10%チオ硫酸ナトリウム溶液でクエンチし、10~15℃で30分間撹拌した。水性相をDCMで3回抽出した。有機相を合わせ、15%塩化ナトリウム溶液で洗浄した。
【0222】
不活性雰囲気下で、テトラヒドロフラン20mL中に溶解させた1M水酸化ナトリウム溶液20mLおよび(S)-ILO-ホスホネート4gを添加した。反応物を撹拌しながら温度を保持した。反応の終わりに、相を分離し、有機相を、1M硫酸水素ナトリウム溶液、15%塩化ナトリウム溶液および飽和塩溶液で逐次洗浄した。有機相を真空中にて45℃で濃縮した。残留物を、n-ヘキサンの添加後、シリカゲルカラムおよびトルエン:ジイソプロピルエーテルのステップ勾配混合物を使用するクロマトグラフィーによって精製した。蒸発された主画分をクロマトグラフィーの繰り返しによってさらに精製した。
収量:5.75g(74%)、油。
【0223】
1p.メチル(5E)-5-[(3aS,4R,5R)-5-ヒドロキシ-4-[(E,3S,4S)-3-ヒドロキシ-4-メチル-オクタ-1-エン-6-イニル]-3,3a,4,5,6,6a-ヘキサヒドロ-1H-ペンタレン-2-イリデン]ペンタノエート((S)-XIII)の製造
【化54】
DIBAL-F試薬を製造するため、ジ-tert-ブチルメチルフェノール350gを蒸留トルエン650mL中に室温で不活性雰囲気下にて溶解させ、得られた溶液に、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)102.8gのトルエン溶液を添加した。試薬を0℃で製造したが、添加の終わりに、反応混合物を1時間の間室温で、次いで6時間の間45℃で、不活性雰囲気下にて撹拌した。試薬混合物を次いで5℃に冷却し、不活性雰囲気下で、トルエン溶液中の(S)-XI 94gを添加した。添加中、温度が上昇していった。所望の変換に達するまで反応混合物を室温で撹拌し、次いで、2M硫酸水素ナトリウム溶液でクエンチした。クエンチされた反応混合物をトルエンで抽出することで、保護されたエノール異性体(S)-XII
*および15-エピ-(S)-XIIが得られ、これらを単離せずにさらに反応させた。合わせた有機相に、p-トルエンスルホン酸7.05gのメタノール溶液を添加した。反応混合物を室温で撹拌した。所望の変換に達した時、反応混合物のpHをpH≧7.5にトリエチルアミンで設定し、それを真空中にて45℃で濃縮した。残留物を、n-ヘキサン中に溶解させ、シリカゲルカラムおよびn-ヘキサン:酢酸エチルのステップ勾配混合物を使用するクロマトグラフィーによって精製した。
収量:43.1g(56%)、油。
*所望であれば、保護されたエノール、(S)-XIIは、クロマトグラフィー精製によって単離することができる。
式(S)-XIIの化合物の
13Cおよび
1H NMRデータは、
図8に示されている。
【0224】
粗16(S)-イロプロストの製造
【化55】
(S)-XIII 43.1gをテトラヒドロフラン50mL中に室温で不活性雰囲気下にて溶解させた。溶液に、1M水酸化ナトリウム溶液520mLを、反応混合物の温度が20~30℃の間のままである速度で添加した。所望の変換に達した後、相を分離し、水性相をメチル第3級ブチルエーテルで2回抽出し、有機相を合わせ、1M水酸化ナトリウム溶液で2回洗浄した。合わせたアルカリ相をメチル第3級ブチルエーテルで希釈し、撹拌下で、pHをpH≦3に2M硫酸水素ナトリウム溶液で設定した。酸性化された水性相を、メチル第3級ブチルエーテルで抽出し、合わせた有機相を20%塩化ナトリウム溶液で洗浄し、真空中にて30℃で蒸発させた。
【0225】
生成物の純度は93%であり、関連の不純物の総量は5%以下であり、他の非同定不純物の総量は4%以下である。
【0226】
この材料の純度は、固体16(S)-イロプロストを製造するのをすでに可能にしていた。
【0227】
重力クロマトグラフィーおよび結晶化による粗16(S)-イロプロストの精製
粗16(S)-イロプロスト40.2gをアセトン60mL中に溶解させ、溶液がわずかに乳白色に変わるまで慎重にn-ペンタンを添加した。n-ペンタン:アセトンのステップ勾配混合物を使用するシリカゲルを介する濾過によって、得られた溶液を精製した。主画分を高真空中にて30℃で蒸発させた。
【0228】
シリカゲルを介して濾過した16(S)-イロプロスト相生成物37gに、濾過した蒸留アセトン12mLを添加した。混合物を室温で完全な溶解まで振盪し、次いで連続的振盪下で、溶液が乳白色に変わるまで濾過ペンタン90mLを添加した。混合物を(-)40℃に冷却し、その温度を保持しながら、それを不活性雰囲気下で16時間の間撹拌した。沈殿された結晶性材料を濾別した。
【0229】
生成物を高真空中にて(-)10℃から(+)10℃の間の温度で不活性雰囲気下にて乾燥させた。乾燥はおよそ120時間かかった。
【0230】
生成物の純度は98.0%であり、関連の不純物の総量は1.6%以下であり、他の非同定不純物の総量は1.0%以下であった。
【0231】
1q.化学合成による(R)-イロプロスト((R)-I)の製造
【化56】
(R)-IX 140mgのトルエン溶液から出発し、(R)-ILO-ホスホネートを使用して上に記載されている化学的工程を実施し、16(R)-イロプロスト51.1mgを製造した。