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特許7368380封止材及びその製造方法、並びに全固体二次電池
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  • 特許-封止材及びその製造方法、並びに全固体二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】封止材及びその製造方法、並びに全固体二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20231017BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20231017BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20231017BHJP
   H01M 50/122 20210101ALI20231017BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M50/119
H01M50/121
H01M50/122
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020562946
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2019045950
(87)【国際公開番号】W WO2020137298
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2018242530
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】小林 智一
(72)【発明者】
【氏名】芋田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中野 修治
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-222644(JP,A)
【文献】特開2011-124084(JP,A)
【文献】特開2008-103288(JP,A)
【文献】特開2000-225180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0562
H01M 50/119
H01M 50/121
H01M 50/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄を含む固体電解質を備える全固体二次電池用の封止材であって、
樹脂と、前記樹脂に分散させた脂肪酸金属塩粒子とを含み、
前記脂肪酸金属塩粒子が、平均粒子径が1000nm以下の金属粒子の表面に脂肪酸が配位された脂肪酸金属塩粒子であり、
前記封止材中の前記脂肪酸金属塩粒子の含有量が0.0005~5質量%であり、
前記樹脂がポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)からなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記脂肪酸金属塩における金属が、銀、銅、ニッケル、コバルト、金、パラジウムからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする封止材。
【請求項2】
前記脂肪酸金属塩における脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1記載の封止材。
【請求項3】
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に配置された前記固体電解質と、
請求項1又は2に記載の封止材と、
を備える全固体二次電池。
【請求項4】
前記封止材の少なくとも一部を覆う水分バリア層をさらに備える請求項に記載の全固体二次電池。
【請求項5】
硫黄を含む固体電解質を備える全固体二次電池用の封止材の製造方法であって、
平均粒子径が1000nm以下の金属粒子の表面を脂肪酸が覆った脂肪酸金属塩粒子と、樹脂とを混合する工程を含み、
前記封止材中の前記脂肪酸金属塩粒子の含有量が0.0005~5質量%であり、
前記樹脂がポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)からなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記脂肪酸金属塩における金属が、銀、銅、ニッケル、コバルト、金、パラジウムからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする封止材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止材及びその製造方法、並びに全固体二次電池に関するものであり、より詳細には、硫黄を含む固体電解質を備えた全固体二次電池から放出された硫黄を効率よく捕捉可能な封止材、及びこの封止材を備えた硫化水素の発生が抑制された全固体二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、電気自動車やハイブリッド車等の自動車、パーソナルコンピュータや携帯端末等の情報端末に使用されており、さらなる高容量化、高安全性、小型化等が望まれている。二次電池の中でも固体電解質を用いた全固体二次電池は、有機系電解液を用いないため、高温での安全性が高く、また真空プロセスにより製造できるため容易に電池を薄膜化することができる。近年では、高いイオン導電率が得られる観点から、固体電解質として硫黄を含む固体電解質が用いられている。
【0003】
しかしながら、硫黄を含む固体電解質を備える全固体二次電池では、前記硫黄が固体電解質を覆う封止材内を通って大気中の水分と反応し、硫化水素が発生する場合がある。前記硫化水素の発生を抑制するため、例えば特許文献1では、前記封止材として、Zn、Cu、Fe、Cd及びClのいずれかの元素を含む、硫黄を捕捉するトラップ材料が添加された封止材を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-222644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、封止材は硫化水素の発生効果を得るためにトラップ材料を10~20%の割合で含有する必要があり、絶縁性や成形性の点で未だ十分満足するものではなく、硫黄を含む固体電解質を備える全固体二次電池用の封止材の更なる改良が望まれている。
【0006】
本発明は、硫化水素の発生を効率よく抑制可能な全固体二次電池用の封止材、及び該封止材を備える全固体二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、硫黄を含む固体電解質を備える全固体二次電池用の封止材であって、樹脂と、前記樹脂に分散させた脂肪酸金属塩粒子とを含み、前記脂肪酸金属塩粒子が、平均粒子径が1000nm以下の金属粒子の表面に脂肪酸が配位された脂肪酸金属塩粒子であり、前記封止材中の前記脂肪酸金属塩粒子の含有量が0.0005~5質量%であり、前記樹脂がポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)からなる群から選択される少なくとも一種であり、前記脂肪酸金属塩における金属が、銀、銅、ニッケル、コバルト、金、パラジウムからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする封止材が提供される。
【0008】
本発明の封止材においては、前記脂肪酸金属塩における脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸からなる群から選択される少なくとも一種であること、が好適である。
【0009】
本発明によればまた、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された前記固体電解質と、上述した本発明の封止材と、を備える全固体二次電池が提供される。
本発明の全固体二次電池においては、前記封止材の少なくとも一部を覆う水分バリア層をさらに備えることが好適である。
【0010】
本発明によれば更に、硫黄を含む固体電解質を備える全固体二次電池用の封止材の製造方法であって、平均粒子径が1000nm以下の金属粒子の表面を脂肪酸が覆った脂肪酸金属塩粒子と、樹脂とを混合する工程を含み、前記封止材中の前記脂肪酸金属塩粒子の含有量が0.0005~5質量%であり、前記樹脂がポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)からなる群から選択される少なくとも一種であり、前記脂肪酸金属塩における金属が、銀、銅、ニッケル、コバルト、金、パラジウムからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする封止材の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硫黄を含む固体電解質を備える全固体二次電池において、硫化水素の発生を抑制可能な封止材、及び該封止材を備える全固体二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る全固体二次電池の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る封止材は、硫黄を含む固体電解質を備える全固体二次電池用の封止材である。ここで、前記封止材は、樹脂と、前記樹脂に分散させた脂肪酸金属塩粒子とを含む。また、前記脂肪酸金属塩粒子は、平均粒子径が1000nm以下の金属粒子の表面に脂肪酸が配位している。
【0014】
本発明では、封止材が、平均粒子径が1000nm以下の金属粒子の表面に脂肪酸が配位した脂肪酸金属塩粒子を含んでいることが重要な特徴であり、これにより、固体電解質に含まれる硫黄が放出された場合にも、封止材内において脂肪酸金属塩粒子と硫黄が反応し、硫黄を捕捉して封止材内に留め置くことが可能になる。したがって、外部からの水と硫黄とが反応することを抑制でき、結果として硫化水素の発生を低減することができる。
【0015】
本発明で用いる脂肪酸金属塩粒子は、金属粒子の表面に脂肪酸が配位しているため、粒子同士の凝集が抑制されており、封止材内において高い分散性を維持できる。これにより、配合ムラが少なく、封止材中の脂肪酸金属塩粒子の含有量が少量であっても十分に硫黄を捕捉することができる。さらに、金属粒子の周囲に脂肪酸が存在するので、封止材の絶縁性は維持される。
また本発明の封止材は樹脂を基材とするため可撓性を有し、加工の自由度を有すると共に、封止材を充放電時の全固体二次電池の膨張収縮に対応して変形する形態にすることもできる。なお、封止材は固体電解質の少なくとも一部を覆うことができ、固体電解質、正極及び負極を覆っていてもよい。
【0016】
(脂肪酸金属粒子)
本発明の封止材に含有される脂肪酸金属塩粒子は、平均粒子径が1000nm以下の金属粒子の表面に脂肪酸が配位している。なお、金属粒子の表面に脂肪酸が配位していることは、脂肪酸と金属との結合に由来する1518cm-1(カイザー)付近に赤外線吸収ピークを有することにより確認することができる。前述したとおり、脂肪酸金属塩粒子は、金属粒子の表面に脂肪酸が存在するため、脂肪酸金属塩粒子同士の凝集が抑制され、また封止材の絶縁性を阻害することがない。
【0017】
金属粒子の平均粒子径は1000nm以下であり、0.1~500nmであることが好ましく、0.1~100nmであることがより好ましく、0.1~50nmであることがさらに好ましい。金属粒子の平均粒子径が50nm以下であることにより、金属粒子の比表面積が増加するため硫黄との反応性が向上し、より効率よく硫化水素の発生を低減することができる。
なお、金属粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定することが可能である。金属粒子単独の平均粒子径は、金属粒子をランダムに50個選択し、透過型電子顕微鏡によってその各銀粒子の投影面積円相当径を測定し、個数平均することで求めることができる(個数基準平均径)。
【0018】
脂肪酸金属塩における金属成分としては、銀、銅、ニッケル、コバルト、金、パラジウム等を例示することができ、これらの少なくとも1種を使用することができる。中でも、銀、銅が好適であり、銀が最も好適である。これらの金属成分は、単体、混合物、合金などであってもよい。
脂肪酸金属塩における脂肪酸としては、飽和、不飽和のいずれであってもよい。脂肪酸の炭素数は3~30であることが好ましく、8~20であることがより好ましく、12~18であることがさらに好ましい。脂肪酸としては、例えば、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられる。これらの脂肪酸は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明の封止材における脂肪酸金属粒子の調製方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、樹脂に脂肪酸金属塩と共に酸変性樹脂を配合し、脂肪酸金属塩の熱分解開始温度未満の温度で加熱混合する方法(特開2012-36282号公報)、高沸点溶媒に、脂肪酸金属塩とサッカリンを添加し、これを加熱混合することにより脂肪酸金属塩粒子分散高沸点溶媒を調製し、該脂肪酸金属塩粒子分散高沸点溶媒を低沸点溶媒と混合した後、前記高沸点溶媒及び低沸点溶媒を二相分離すると共に、高沸点溶媒から低沸点溶媒中に脂肪酸金属塩粒子を移行する方法(特開2013-241643号公報)等が挙げられる。
【0020】
封止材中の脂肪酸金属塩粒子の含有量は、0.0005~5質量%であることが好ましく、0.0005~1質量%であることがより好ましく、0.0005~0.5質量%であることがさらに好ましい。前述したように、本発明の封止材における脂肪酸金属塩粒子は、金属粒子の表面に脂肪酸が配位していることから金属微粒子の凝集が有効に防止されており、脂肪酸金属塩粒子は封止材内において高い分散性を維持できる。そのため、封止材中の脂肪酸金属塩粒子の含有量が5質量%以下であっても、硫黄を十分に、かつ長期にわたり捕捉することができる。また、封止材中の脂肪酸金属塩粒子の含有量が5質量%以下であることにより、製造コストを低減することができると共に、封止材の絶縁性や成形性を阻害するおそれもない。一方、封止材中の脂肪酸金属塩粒子の含有量が0.0005質量%以上であれば、固体電解質から放出される硫黄を十分に捕捉することができる。
【0021】
(樹脂)
本発明に係る封止材は、封止材の基材として樹脂を含有する。すなわち、樹脂は前述した脂肪酸金属塩粒子を分散させるマトリックスになると共に、封止材としての絶縁膜を形成する。封止材が樹脂から成ることで封止材に柔軟性が付与されるため、充放電時に全固体二次電池が膨張収縮した場合にも、封止材が前記膨張収縮に対応して変形することができる。
【0022】
樹脂としては、全固体二次電池は一般に60~400℃の高温で作動することから、高温に耐え得る樹脂を用いることが好ましく、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)等を好適に使用することができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。前記樹脂を用いることにより長期にわたって封止材の劣化を防ぐことができる。
【0023】
また、樹脂として、感光性塗布材料を用いることもできる。感光性塗布材料を用いることで、封止材を固体電解質等の上に付与して層を形成させる際に、電極等を高温にさらさずに、UV等の光を用いることで封止させることができる。感光性塗布材料としては、特に限定されず公知材料の中から適宜選択することができる。例えば感光性絶縁膜用塗布材料AHシリーズ(商品名、日立化成株製)、ファルダ(商品名、東レ株式会社製)等が挙げられる。
【0024】
封止材は、前述した脂肪酸金属塩粒子、樹脂以外にも、機能を損なわない範囲で必要に応じて公知の各種添加剤,改質剤等を含むことができる。
【0025】
(封止材の製造方法)
本発明に係る封止材の製造方法は、平均粒子径が1000nm以下の金属粒子の表面に脂肪酸が配位した脂肪酸金属塩粒子と、樹脂とを混合する工程を含む。
【0026】
脂肪酸金属塩粒子と樹脂との混合は、樹脂の種類にもよるが、例えば熱可塑性樹脂であれば、押出成形、射出成形、圧縮成形等の加熱成形加工工程において溶融した樹脂に、脂肪酸金属塩を配合して加熱混合することにより直接樹脂中に脂肪酸金属塩粒子が分散した樹脂組成物を調製することもできるし、或いは前述した調製方法により作成された脂肪酸金属塩粒子を配合して混練して混合することもできる。またこのようにして調製された脂肪酸金属塩粒子と樹脂から成る樹脂組成物は、脂肪酸金属塩粒子を高濃度で含有するマスターバッチとして使用することもできる。
また感光性塗布材料等の液状材料であれば、前述した調製方法により作成された脂肪酸金属塩粒子を直接混合する或いは脂肪酸金属塩粒子が移行した低沸点溶媒を配合して混合することができる。
【0027】
(全固体二次電池)
本発明に係る全固体二次電池は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された硫黄物系固体電解質と、本発明に係る封止材と、を備える。本発明に係る全固体二次電池では、前述した脂肪酸金属塩粒子を含む封止材が用いられているため、硫化水素の発生を抑制できる。
【0028】
本発明に係る全固体二次電池の一例を図1に示す。図1に示される全固体二次電池10は、正極集電体11と負極集電体12とが離間して配置されている。正極集電体11上には正極13が設けられている。負極集電体12上には負極15が設けられている。
【0029】
また、正極13と負極15の間には、固体電解質14が設けられている。固体電解質14の材料は硫黄を含む材料であり、例えばLiPS等が挙げられる。さらに、全体を覆うように本発明に係る封止材16が設けられている。電気の取り出しは、正極集電体11および負極集電体12にそれぞれ接続された取り出し電極17、取り出し電極18により行う。取り出し電極の形状は、例えばリード状および箔状等を挙げることができる。
【0030】
また、図1には示していないが、全固体二次電池は封止材の外側に少なくとも一部を覆う水分バリア層をさらに備えることが好ましい。水分バリア層とは外部からの水分の透過を抑制する機能を有する層であり、封止材よりも外側に水分バリア層を設けることで、大気中の水分の全固体二次電池内への侵入を抑制することができ、硫化水素の発生をより抑制することができる。
水分バリア層としては、例えば、DLCコーティングやアルミナ、酸化ケイ素の無機蒸着膜を用いることができ、例えばEVOH層やアルミ層の両面を樹脂層で積層したフィルムを用いることができ、例えばP、ゼオライト、シリカゲル、活性炭等の水分を吸着可能な材料を用いることもできる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【実施例
【0031】
図1に示した全固体二次電池において、本発明の封止材を用いて硫化水素の発生量を測定した。
封止材として、平均粒子径がそれぞれ10nm,100nm,1000nmの3種類の銀粒子の表面に脂肪酸(ステアリン酸)が配位した脂肪酸銀粒子をそれぞれポリイミド樹脂に配合させて成膜したフィルムを用い、この封止材で封止した全固体二次電池について硫化水素の発生量を調べた。
【0032】
ここで、封止材の脂肪酸銀粒子の含有量はそれぞれ0質量%,0.0005質量%,0.001質量%,0.1質量%,0.5質量%、1質量%,5質量%とした。
【0033】
硫化水素量の測定は、1000ccのデシケータ内に同一の封止材を用いて製造した全固体二次電池を10個入れ、デシケータを密閉した状態で測定した。デシケータ内は、大気雰囲気とし、温度は26℃、湿度は80%に調整し、30日間放置した後に硫化水素の濃度を測定した。硫化水素の検出には、硫化水素検知センサー(理研計器製、品番GX-2003)を用いた。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示した結果から明らかなように、脂肪酸銀粒子を、0.0005質量%,0.001質量%,0.1質量%,0.5質量%,1質量%,5質量%の含有量で含有する封止材を用いた全固体二次電池は、硫化水素は検出されなかった。これに対して、脂肪酸銀粒子を配合しない以外は同様にして作成された封止材を用いた全固体二次電池10では、0.6cc/lであった。
このように、脂肪酸銀粒子の含有量を0.0005質量%以上とした封止材を用いた全固体二次電池では、硫化水素の発生を防止できることがわかった。
【0036】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的思想及び範囲から逸脱することなく、それに対して種々の変更、置換及び変形を施すことができる。
【符号の説明】
【0037】
10 全固体二次電池
11 正極集電体
12 負極集電体
13 正極
14 固体電解質
15 負極
16 封止材
17 取り出し電極
18 取り出し電極
図1